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軟骨形成不全症モデル動物を用いた長管骨の成長を制御する遺伝子の解析

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特別講演要 旨

軟骨形成不全症モデル動物 を用いた長管骨の成長 を制御する遺伝子の解析

岡山大学大学院 自然科学研究科

1

.背 景 骨格 は、頭蓋 を構成す る頭蓋顔面骨、椎骨や肋 骨 な どの体 の中心部 を構成す る体軸骨、手足 な ど を構成す る四肢骨 によ り構成 され る。 これ らの骨 は、軟骨内骨化 と膜内骨化 の

2

つの異 なる様式 に よ り形成 される。 軟骨 内骨化 では、最初に軟骨が 形成 され、その後 に骨- と置 き換 え られ る もので、 長管骨、椎骨、骨盤 な ど骨格 の大部分 を形成す る。 軟骨 内骨化 にお いて重 要 な役 割 を担 う軟骨組織 は、静止軟骨細胞 、増殖軟骨細胞 、肥大軟骨細胞 と呼 ばれる長軸方向に配列 した特徴 的な形態変化 を示すい くつかの軟骨細胞層 か ら構成 され、骨 に 置 き換 わるまでに順次変化 してゆ く。 骨が効率 よ く成 長す るためには、 これ ら一連 の連続的な過程 が正常 に機能す ることが非常 に重要 となる。 これ らの過程 は非常 に複雑 であ り、多 くの遺伝 子 によ り時 間的 に も空 間的 に も厳 密 に制御 され てい る (1)。 しか し、ある重要 な遺伝子 の変 異は、軟骨 内骨化 の過程 に異常 をもた らし、長管骨や椎骨 な どの軟骨内骨化 によ り形成 され る骨 の成長が阻害 される。 ヒ トでは低 身長や四肢 の短縮 な どが特徴 的な症状 として現れる先天性 の疾患 として知 られ ている。 また、家畜 において もこの ような疾患の 発症 は、経済形質 に悪影響 を及 ぼす 可能性が高 く、 畜産農家 にとって も深刻 な問題 となる。 したが っ て、骨 の形成過程 に関与す る重要 な遺伝子 を同定 し、その機能 を解析す ることは、 ヒ トの臨床面 だ けでな く畜産分野 に とって も非常 に重要 な課題 の 1つである。 これ までに、 さまざまな骨系統疾患 の原 因遺伝 子が同定 されつつあるが、未だ原因遺 伝子が明 らかにされていない疾患や、原 因遺伝 子 が同定 されて も機能が解明 されていない ものな ど が多数あ り、今後 さらに、 これ らの課題 を解決す る必要がある。 本稿では、我 々が これ まで に行 っ て きたモデル動物 を利用 した骨系統疾患 の原因遺 伝 子の同定お よび機能解析への取 り組みについて 説明す る。

2.E=S-vanCreveld症候群 の原 因遺伝子である FV

C

,⊥β〟に関する解析 Ellis-vanCreveld症候群 は、軟骨の形成不全 によ る四肢 の短小 を特徴 とす る遺伝 性 の疾患 で あ り (2)、近 年 、原 因遺伝子 と してEllis-vanCreveld (EVC)が同意 された(3).一方、 これ まで に我 々 を含む共同研究 によ り、四肢 の短小 、関節 の変形、 歩行 困難 を特徴 とす る骨系統疾患 を示 す ウシか ら、新規 の遺伝子 であるLIMBIN(LBN)を原 因遺 伝 子 と して同定 した

(

4)

。 その後 、非常 に興味深 い こ とにLBNは ヒ トのEllis-VanCreveld症候群 の うち、EVCに変異が認 め られない患者 において変 異が報告 され、EVCとLBNの異 なる遺伝 子がEllis -vancreveld症候群 の原 因遺伝子 であ ることが示 された (5、6)。 この こ とは、EVCとLBNは四肢 の 形成過程 において重 要 な役割 を担 うだけで な く、 機能的に も何 らかの関連性があるのではないか推 測 される。 しか し、 これ までに両遺伝子が四肢 の 骨形成過程 において、 どの ように関与す るのかは 全 く明 らか にされてい ない。そ こで、EVCとLBN の骨形成過程 にお ける役割 と関連性 を明 らか にす るために、 まず、骨組織 における発現パ ター ンに ついて解析 を行 った。 (1)各組織 にお けるEvcとLbnの発現パ ター ンの 解析 胎生期 か ら生後

8

週齢 までのラ ッ ト腰骨お よび 4週齢 ラ ッ トの各組織 にお けるEvcとL,bnの発 現 について解析 した。 まず、軽骨 における発現パ タ ー ンは、両遺伝 子 ともに胎生期 で最 も強 く、生後 個体 の腰骨では週齢 を増す に したが って発現量が 減少 していた (図1A)。 また、各組織 にお ける 発現 を調べ た ところ、Evcはすべ ての組織 で発現 してい る こ とが確認 された。Evcの発現 は肺 にお いて最 も強 く発現 してお り、腎臓、脳 において も 強い発現が確認 され、肝臓、心臓、筋で もわずか に発現 してい る こ とが確認 された。一方、LIbnも すべ ての組織 での発現が確認 され、肺 において最 も強い発現が認め られ、次 いで脳 、腎臓で も強 く 発硯 し、 これ らの結果 はEvcの発現 パ ター ンと類 似 していた (図1B)。

(2)

A B E-・i

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-同l RT-PCRによるEvcとLbn遺伝子のラット組織で の発現解析 A :胎生17日(E17)、生後1日(Pl)、28日(P28)、 56日(P56)の腰骨における苛税 B :肝臓 (Li)、脳(Br)、肺(Lu)、心臓(He)、腎臓 (Ki)、筋肉(Mu)、腰骨(Tl)における発現 (2)成 長板軟骨組織 にお け るEv(とLbnの発現局 在 についての解析 腔骨 の成 長板 軟骨 にお け るEvcとLbnの 党規 后5 在 をinsituハ イブ リダ イゼー シ ョンに よ り解析 し たoEvrは主 に成熟層 か ら肥大Jdの軟骨細胞 に強 く発現 していた (図2A)。一 方、静 止層 お よび 増殖層 の軟骨細 胞 には発 現が 認め られ なか った。 同様 の方 法 に よ りLbnの発 現 JFJ在 を検 証 した結 果、増殖層 に もっとも強い発現が認め られ、成熟 層 において も、増殖層 ほ ど強 くはないが発現 して い るこ とが確認 された (図2B)。 また、静止軟 骨細胞層 では発現 していなか った。 a 図 2 L'"LtuhybrLdF'zal10'7によるEvc(A)とLbn(B)遺伝 子の陛骨成長板軟骨での発現解析 R :静止軟骨細胞層、P :増殖軟骨細胞層、 M :成熟軟骨細胞層、H :肥大軟骨細胞層 以 上の結果 よ り、両遺伝子 とも長管骨 における 発現が確認 され、EllisIVanCreve)d症候群 における 四肢 の短小 への関与を支持す る結果であ った。 ま た 、EvcとLbnは今 回調べ たすべ ての組織 で 発現 が確認 され、両遺伝子 とも組織 間における発現パ ター ンは非常 に類似 してい ることが明 らか になっ た。 これ らの遺伝子 は同 一染色体 Lで約2Kb離 れ てhead-to-headとして向 き合 っていることか ら(6)、 両遺伝子 がプロモー ターを共有 してい る可能性が あ り、機能的 に も関連 している可能性が推測 され た。 さ らに 、 両遺 伝 子 の発 現 局 在 はE11)S-van creveld症候群 を発 症 した ヒ トの成長板軟骨 で報 告 されてい る増殖 お よび肥大軟骨細胞 での異常 と 一致 してお り(7、8)、両遺伝子がそれぞれ特異 的 な時期 に機能 していることが示唆 された。つ ま り、 Evcが発 現 してい た成 熟層 か ら肥 大層 へ の発 現 は、軟骨細胞 が活発 に増殖 している増殖層 か ら肥 大化 へ と移行 す る時期 に相 当 し、Evcが肥大化軟 骨細胞への移行 に関与す ることが予想 された。一 方 、Lbnは増殖 層 か ら成熟層 にかけて発現 してい るこ とか ら、Lbnが軟骨細胞 の増殖 と肥大化 に関 与 す る こ とが考 え られ た。EvcとLbnの発 現 局在 を比較す る と、それぞれの遺伝子が最 も強 く発現 している軟骨細胞 の範 囲は完全 には一致 していな かったが、成熟層 か ら肥大層 においては両遺伝子 の発現が確認 された。 したが って、両遺伝子 の機 能が完全 に関連 してい るか どうか は不明 なままで あ るが、発現が 一致 している成熟層 か ら肥大屑 に かけて向冶伝子が機能 している可能作 も考 え られ た。EvcとLbllともに膜 貫 通 ドメイ ン、 ロイシ ン ジ ッパ ー ドメイ ン、核 移行 シ グナルか らなるが 、 他 に類似 した構造 を もつ遺伝子 はみつか っていな い。今後 さらに、 これ らの遺伝子の標 的分子の同 定や機能解析 を進め るこ とで、新 たな骨成 長の制 御機構が 明 らか になる こ とが期待 される。 また、 現在我 々はLbnの ノ ックア ウ トマ ウスにつ いて解 析 を進 め てお り、Lbnの機 能 を解 明 しつつEvcと の関連性 について も明確 に したい と考 えている。

3.achondroplasia(cn/cn)マ ウスの原 因遺伝子

の同定 achondroplasia(cn/cn)マ ウスは、 ジャクソン研 究所 で維持 してい るAKR/J系統 よ り出現 した常染 色体劣性 の突然変異マ ウスである(9)0cnJt・nマ ウ スの特徴 と しては体 のサ イズが小 さ く、特 に四肢 と尾 の短縮 が顕著 に現 れ る (図 3A)。 これ らの 表現型 は生後 1週齢 までに認め られ、週齢が増す につれて正常個体 との差が明確 にな り、四肢骨 の 長 さは正常 の約60%程度 に しか成長 しない (10)0 これ までの骨組織 の組織学的解析 に よ り、成長板 軟骨 における増殖軟骨細胞層 と肥大軟骨細胞層 の 減少が認め られてお り (図3B) (ll)、 ヒ トの軟 骨形成不全症 のモ デル動物 と して知 られてい る。 これ まで に原 因遺伝子 (Ln)の詳細 な位置 は明 ら かに されてお らず 、原 因遺伝 子 も同定 されていな か った。我 々は cIJcnマ ウスの原 因遺伝子 を同定 す ることで、軟骨 内骨化 を制御す る新 たな遺伝子 を同定す るこ とにつ なが る と考 え、連鎖解析 によ るマ ッピングに よ り C円の詳細 な位 置 を明 らか に し、 さらに原 因遺伝 子 を同定す るこ とを試みた。

(3)

A

図3 +/+マウスとrn/L・nマウスの外純 と成長板軟

.

汁の縄 織偲 A :14週齢同腹の+/+マT'JスとcrL((nマウス B :4週齢+/+マウスとL・n/cn-yrウ,7.の腔骨成長板軟骨

R:

静止軟骨細胞,Rd

、P:

増殖軟骨細胞層 .

H:

肥大軟骨細胞層

(

i

)

cn/cnマ ウスの原 因遺伝子 マ ッピング 他 系統 マ ウス との交配 に よ り得 られ たF2マ ウ スの うちホモ (cn/cn)個 体 につ い てマ イ クロサ テ ラ イ トマ ー カー に よる タイ ピ ング をお こな っ た。 その結果、第4染色体上の近位端側 のマーカ ー と表現型 との有意 な連鎖が認 め られ、原因遺伝 子 はD4Mil182か らD4Mil109の間の約0.8cMの領域 に存 在す るこ とが明 らか にな った (図4)。 この 連 鎖 の認 め られた約0.8cMの領域 は、マ ウスゲ ノ ムデー ターベースか らの物理地図 と比較す る と約 0.8Mbに相 当 してお り、30個程度 の機 能的遺伝子 が存 在 してい る こ とが報告 され てい た。 さ らに cn/cnマ ウスの原 因遺伝 Fの候補 を絞 り込 むため に、骨形成 との関連性が知 られてい る遺伝子 を検 索 した ところ、natriuI・etLCpePtlde1.eCePtOr2 (Npr2)

の遺伝 子 が見 つか った (図 4).Npr2は、ナ トリ ウム利尿 ペ プチ ドファ ミリーの一つであるC型 ナ トリ ウム利 尿 ペ プチ ド (CNP) の レセ プ ター (NPRB) をコー ドしてお り、CNPは ノ ックア ウ トマ ウスな どの解析 か ら局所調節 因子 と して軟骨 内骨化 による骨形成の促進 因子 と して知 られてい

る(

12)

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04MI't23 -地 理 (429〉 DJIMuk2 D4MIF109 同 4 cn遺伝子座の連鎖解析によるマ、:′ビング 右側にマイクロサテライトマーカーの位置を、左 側にマーカー間の距離 (cM)を不 している。 (2)cn/cnマ ウスのNpr2に関する解析 Npr2のすべ ての翻訳 領域 を含 むcDNA断 片 を RT-PCRに よ り増 幅 し、cn/cnと+/+マ ウスの塩 基 配列 について比較 した ところ、2654番 目の tが g に変異 してい る塩基置換 が確認 された。 さらに、 この塩基置換 はLeuか らArgへ の ア ミノ酸置換 を 伴 う ミスセ ンス変異 であ った (図 5)0NPRBの 叫 J2CONA L叫 8.Kh.伽 . Km zLbeHwEr'P.Okw GLJ"d yvh (''')篭 戸篭 ⊆% A霊 宝吉憲 篭 芳

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(cn/cn)

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驚き驚 慧 慧 驚き

図5 +/+マウスとcn/cnマウスのNpr2cDNA塩基配列の 比 較 構造 は、細胞外 の リガ ン ド結合 ドメイ ン、膜質通 ドメイ ン、キナーゼホモ ロジー ドメイ ン、 グアニ ル酸 シクラーゼ ドメイ ンか らなる。NPRBの細胞 外 ドメイ ンに リガ ン ドが結合す るとグアニ ル酸 シ クラーゼ ドメインの活性化 によ りセ カン ドメ ッセ ン ジ ャー で あ るcGMPが 合 成 され る。 そ こで 、 我 々は突然変異が グアニル酸 シクラーゼ ドメイ ン に よるcGMP合 成 に影 響 を及 ほ してい る と予 想 し、cn/cnと+/+マ ウスの肋骨 か らの培養軟骨細胞 でCNP刺 激 に よるcGMPの 合成 能 につ いて解析 を 行 った。 そ の結 果 、+/+マ ウスの軟 骨細 胞 で は CNPの 濃 度 依 存 的 にcGMP濃 度 が 上昇 した が 、 cn/cnでは全 く上昇が認 め られなか った (図 6). 帥 S! 仰

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d ≡ 9 3 -9 -8 -7 .ち LogECNF'(M)) 伺 6 +/+てウスとcn/cnマウスの軟骨細胞′\のCNP添加 後のcGMP畳 以上 の結 果 か ら、Npr2にお け る ミスセ ンス変 異 は、NPRBの グアニル酸 シクラーゼ トメインの 楼能欠損 を もた ら しす ことが明 らか となった。 こ れ まで に、cGMPは培 養 条件 下におけ る長管骨 の 成上主を促 進 す る こ と (13)、 さ らに、cGMPの下

(4)

1

3

の ノ ックア ウ トマ ウス は軟骨 内骨 化 の異常 に よ り 骨 の伸 長 異常 を示 す こ とか ら (14)、cGMPは骨 伸長 に重 要 な役 割 を果 たす こ とが 明 らか に され て い る。 したが って、cn/cnマ ウスの骨伸 長 阻害 は、 Npr2にお ける ミスセ ンス変 異 に起 因す るNPRBの cGMP合 成能 の損失 に よ りもた らされ る こ とが示 唆 され た。 これ まで にCNPが骨伸 長 の促 進 因子 で あ る こ と は、最近 の研 究 か ら明 らか に されつつ あ る。一 方、 レセ プ ターで あ るNPRBにつ い て は軟骨細胞 にお け る発 現 は確 認 され てい る もの の (

1

5)

、骨伸 長 作 用 に関与 す る こ とを示 す 直接 的 な証拠 は無 く、 NPRBか らの シグナルが本 当 に骨伸 長 に関 わ って い るか は不 明 で あ った。 我 々がcn/cnマ ウスの原 因遺伝 子 を見 つ けた同 じ頃 、四肢 短縮 を伴 う低 身 長 を特徴 とす る疾患 であ る ヒ トでのマ ロ ト-型 の 遠位 中 間肢異 形 成症 の原 因遺伝 子 がw R2で あ る こ とが報告 され、NPRBを介す る シ グナルが骨伸 長作 用 に重 要 で あ る こ とが初 めて示 され た(16)。 cn/cnマ ウ ス につ い て は、 ヒ トの場 合 と異 な りこ れ まで に多 く組織学 的解析 を中心 と した解 析報 告 が あ り、cn/cnマ ウス は軟 骨 内骨 化 にお け るNpr2 の役割 や発 症 メ カニ ズム を解 析 す る うえで非常 に 有用 で あ る と思 われ る。 また、 ヒ トの小 人症 で最 も発 症頻度 が高 い軟骨 無形 成症 の原 因遺伝子 であ るFGFR3の ノ ックア ウ トマ ウス にお い て、軟骨無 形成 症 の症状 がcNPに よ り改 善 され た こ とか ら、 cNPが軟骨無形成症 の治療 に有効 で あ る可 能性 が 報告 され て い る (17)。 したが って、今 後 さ らに CNP/NPRBに よる軟骨 内骨化 の制御 機構 の解 明 は 確 実 に重 要性 を増 す と予想 され 、cn/cnマ ウス は 有用 な研 究対象 と してその一 役 を担 うこ とが期待 され る。

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