氏 名 鹿 野 央 学位(専攻分野の名称) 博 士(環境共生学) 学 位 記 番 号 甲 第 660 号 学 位 授 与 の 日 付 平 成 25 年 9 月 30 日 学 位 論 文 題 目 国営公園整備の変遷にみる発展過程に関する研究 論 文 審 査 委 員 主査 教 授・博士(生物環境調節学) 濱 野 周 泰 名誉教授・農 学 博 士 進 士 五十八* 教 授・博士(造園学) 金 子 忠 一 論 文 内 容 の 要 旨 研究の背景と目的 国が整備する国営公園は,一の都府県の区域を超える ような広域の見地から設置する都市計画施設である公園 又は緑地,もしくは国家的な記念事業や我が国固有の優 れた文化的資産の保存及び活用を図るため閣議決定を経 て設置する都市計画施設である公園又は緑地で,都市公 園法に基づき国(国土交通大臣)が設置している都市公 園である。これまでに国営公園は,社会資本として大規 模かつ永続性のある公園緑地として担保され,国民のレ クリエーションの多様化が進む中,時代や地域のニーズ に呼応して,平成 23(2011)年度末までに全国で 17 公 園,3,024ha が整備されてきた。年間入園者数は 3,199 万人となっている。 多くの入園者が国営公園を利用しているが,国営公園 事業をとりまく社会状況は大きく変化しており,特に近 年では,公共予算の縮減・見直し,地方分権の進展,社 会資本の維持管理方法の変化,少子高齢化に伴う人口減 少社会の到来,国民所得の変化,レクリエーションの多 様化,国営公園入園者の減少傾向などの状況がみられ る。 本研究は,こうした社会背景等を踏まえ,これまでの 国営公園整備ストックについて,変遷を振り返り,その 過程を通観し,整理することで,第一に国営公園の多様 なレクリエーション需要への対応や歴史的・文化的資源 を保全利用するといった国営公園の持つ機能が,その整 備した時代の社会的要請や国民ニーズに対して,適切に 対応してきたか明らかにしようとするものである。 第二に国が都市内に直接オープンスペースを整備・管 理する手法を引き続き,保持することがオープンスペー ス整備を主体とした様々な国の政策実現に必要であり, 今後も保持すべき手法の一つであることを明らかにしよ うとするものである。 第三に近年実施されている運営維持管理の動向を踏ま え,国営公園事業が国民ニーズに適切に対応していくた めの課題を明らかにする。 これらにより国営公園事業の将来展望を行い,人口減 少の時代へ向けて今後対応すべき国営公園整備の方向性 についての示唆を得ることを目的としている。 研究の方法と論文の構成 本研究では,研究の目的を達成するために,第 1 章か ら第 4 章及び終章から構成されている。 第 1 章では,戦後の国による都市部における直接的な 公園整備事業について,閣議決定等の国の方針決定,法 令等の制定状況,都市計画法上の都市計画決定,都市公 園法上の設置すべき区域の設定・供用告示の一連の変遷 を振り返り,その過程を通観して整理を行い,分析・考 察した。 国の方針決定,法令制定,整備状況について,これま での法制度上の分類ではなく,①社会背景,②公園区域 設定・整備形態の変遷,③公園毎の基本方針・基本計画 の策定主体の変遷の観点から通観した。通観にあたり国 が直接的に整備してきた都市内オープンスペース整備事 業における変化の特徴を抽出し,整備事業の類型化を行 い,様々な事象に対応し,発展してきた過程について時 代ごとの類型化を行い考察した。 第 2 章では,これまでの都市公園関連予算の中での国 営公園整備費の推移を踏まえ,これまで供用された国営 公園において正確に把握することができる入園料を支 払っている有料入園者の数に着目し,有料入園者数と国 営公園の供用面積及び国の豊かさを示す経済指標である 一人当たり国民所得の推移を比較し,分析を行った。ま た,国営公園の多様なレクリエーション需要や歴史的・ 文化的資源を保全利用するといった国民のニーズへ適切 ─ 12 ─ *大日本農会副会長(造園学)
に対応し,一定の整備効果のあったことを明らかにする とともに,整備効果が十分に発揮されていない点につい ても考察した。さらに,近年の国営公園入園者数の減少 について,少子高齢社会や一人当たり国民所得の減少に よる事象であるのか,あるいは国営公園の整備内容が国 民のニーズと乖離しはじめていることによるものである のかを考察した。 第 3 章では,現在の少子高齢社会からこれから迎える 人口減少社会を見据えて,これまでの国営公園整備面積 及び国営公園の入園者数の推移を比較することにより, 国営公園の多様なレクリエーション需要への対応や歴史 的・文化的資源を保全利用するといった国営公園の持つ 機能が国民ニーズに対応してきたことを明らかにした。 また,国営公園入園者のうち,有料入園者の数に着目 し,全体入園者数と有料入園者数の関係を明らかにす る。さらに有料入園者のうち「小人」料金を支払ってい る小中学生の動向を整理することにより,これまで十分 に施策の効果が発揮されていない点についても考察し た。小中学生の動向を明らかにすることで,人口減少の 時代へ向けて今後対応すべき国営公園整備の方向性につ いての示唆が得られた。 第 4 章では,平成 18(2006)年 6 月に内閣官房の公 共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議「公益法人等 との随意契約の適正化について」(平成 18 年 6 月 13 日) において,これまでの契約方法を見直すこととなり,国 営公園の維持管理業務の契約手続きの改善を図ることと なった。これを契機に「競争の導入による公共サービス の改革に関する法律」に基づく民間競争入札の手続き, いわゆる「市場化テスト」により進められることとなっ た東京都江東区に整備した国営東京臨海広域防災公園の 運営維持管理業務の契約手続きを事例として,「市場化 テスト」経緯と一連の手続きの中で顕在化した技術的な 課題について考察した。 終章では,これまでの国営公園整備がその時代の国民 ニーズへ対応してきたこと。国営公園整備及び運営維持 管理の今後の方向性について,どうあるべきかについ て,考察し,将来への展望として示した。 審 査 報 告 概 要 国営公園事業は,第二次世界大戦後の旧皇室苑地整備 による国営公園事務所の設置から始まり,昭和 40 年代 の 高 度 経 済 成 長 期 を 経 て,今 日 ま で 全 国 に 17 公 園 3,024ha の整備が進められ開園した。本研究では,昭和 20 年代から現代までの国営公園整備の進展状況につい て,利用主体となる国民生活の変化等を含めて社会状況 の変化に基づいて整備の特徴を区分することで,適切な 整備が継続的に行われてきたことを示した。これまでの 国営公園事業の予算・面積・入園者の動向を整理し,入 園者とその中の有料入園者数を分析するとともに,少子 高齢社会の到来やレクリエーション需要の多様化を踏ま えて考察を行った。その結果,開園面積の増加とともに 入園者も増加し,有料入園者も増加していることから国 営公園事業が,その時代の国民のニーズに適切に対応し てきたことを明らかにした。また有料入園者が増加して いる中で,小中学生の入園者が減少しており,少子高齢 社会へ向けての危惧を示した。今後,少子高齢社会の到 来により入園者の減少傾向が予想される状況下におい て,利用者の視線に近い民間事業者の管理運営を導入す ることで国民の多様な期待に応えられることを示した。 国が,こうした事業手法を引き続き保持することで, オープンスペース整備を主体とした様々な国の政策実現 に今後も有効であること,また,これからの国営公園の あり方と整備における方向性について新知見が得られ た。 よって,審査員一同は博士(環境共生学)の学位を授 与する価値があると判断した。 ─ 13 ─