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https://dspace.jaist.ac.jp/ Title 公的資金による研究開発プロジェクトのマネジメント : 機械システム分野におけるNEDOの取組と運営上の課 題に関する一考察 Author(s) 和佐田, 健二; 齋藤, 輝明; 金山, 恒二; 落合, 成年 Citation 年次学術大会講演要旨集, 23: 208-211 Issue Date 2008-10-12 Type Conference Paper Text version publisherURL http://hdl.handle.net/10119/7537
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1D18
公的資金による研究開発プロジェクトのマネジメント
~機械システム分野における NEDO の取組と運営上の課題に関する一考察~
Management of public-funded R&D projects
-Study for NEDO's approach and challenge in project management in machinary systems-
○和佐田 健二*、齋藤 輝明*、金山 恒二*、落合 成年*
Kenji Wasada*, Teruaki Saito*, Koji kanayama*,Shigetoshi Ochiai*
*独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 機械システム技術開発部 1.はじめに 政府主導の研究開発プログラムの資金配分を担ってきた新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)は、200 3年の独立行政法人化を契機に、我が国の研究開発体制をより柔軟化、機動的にするための機能を果たす重要な位置付け をされてきている。公的資金を原資とする研究開発プロジェクトにおいては、その規模や体制に合わせた効率的・効果的な 進捗管理とともに、研究開発成果の最大化に向けマネジメントの改善を図っていくことが重要である。 本稿ではNEDOで実施している研究開発マネジメントを例に、プロジェクトに参加した事業者、プロジェクトリーダー(以下 PL)、NEDO担当者間の意思疎通と進捗管理の高度化を目指した「研究進捗確認シート」の機械システム分野における導 入とその結果について考察を行う。また、研究開発の進捗状況の把握及びその検討結果と今後の課題について報告する。 2.NEDO技術開発機構の取組 (1)独立行政法人化後の研究開発マネジメント NEDOは2003年10月に独立行政法人として生まれ変 わるまでは、年度途中での計画変更にも限界があり、複数 年度に亘る事業の契約をすることもできなかった。NEDO はこのような制約の下で、研究開発事業を推進しなければ ならなかったが、こうした中、政府の行政改革の一環として、 1999 年(平成 11 年)に独立行政法人通則法が成立した。※1) NEDOは政府全体の基本的な方針の下に、①自律性・裁 量性・専門性・機動性の最大限の活用、②従来の個別プロ ジェクト別・単年度の補助金に代わる、より広範・弾力的な使 用が可能な運営費交付金制度の大幅な導入が行われた。 これは、柔軟性・機動性が求められる研究開発業務の実施 においては、極めてふさわしいものであるといえる。この結 果、NEDOは独立行政法人化に伴って、次のような事業の 遂行が可能となった。 ①事業遂行上の自主性の向上を踏まえて、従来の、あらか じめ政府に設定された個々具体的なプロジェクトについ ての単なる資金提供機関から転換し、「具体的な研究開 発プロジェクトの選定・フォーメーションの設定」、「研究開 発プロジェクトの評価・管理」、「各研究開発プロジェクト間 の相互連携の追求」等の総合的な研究開発マネジメント を主体的に実施。 ②運営費交付金制度の導入による予算執行制約の縮小に 伴い、企業等の実施者の立場に立脚した柔軟な仕組み (複数年度契約、年複数回採択、事業の中止、加速化等) を導入。 NEDOは、上記のような独立行政法人化の効果を最大限 生かした業務改善のほか、成果を挙げるための取り組みと して、様々なマネジメント上の工夫を併せて実施している。 ①出口を見据えた研究開発の実施 ・NEDOはあくまでも現実的な産業、社会の要請に応える ことを最大の狙いとしており、研究開発の社会的効用(雇 用の創出、新産業の創出等)を意識して、出口を見据えて 研究開発を実施 ②現場主義の徹底 ・日頃から産業界、学界等との徹底的な議論を行うととも に、研究現場の最新のニーズを把握 ③選択と集中 ・日本の産業競争力強化につながるテーマへの「選択と 集中」 ・真に競争力ある企業のみによるフォーメーションへの 「選択と集中」 ・より新しいブレークスルーのある分野への「選択と集中」
④研究開発の効率化 ・ピアレビュー・審査などの審査体制整備 ⇒ 外部有識 者の知見を最大限活用 ・『強い産業をさらに強く』 ⇒ 安易な業界横並び体制を 排す ・『世界のフロンティアとして大胆に取り組む』 ⇒ 日本オ リジナルの技術で世界一を目指す ⑤厳格な評価制度の導入 ・中間評価結果に基づき、当該プロジェクトの中止・縮小・ 加速・拡充など、臨機応変に対応 ・研究開発プロジェクト終了後の追跡調査・評価の結果得 られた知見を蓄積し、その後のNEDO全体の事業の改 善に活用 (2)機械システム技術分野におけるマネジメント 上述の通り、NEDOは独法化のメリットを最大限活用した マネジメントを実施しており、また、各技術分野の担当部に おいては、NEDO全体での研究開発成果の最大化・有効な 公的資金活用を目的として、委託先・助成先における予算執 行状況・見通しを密接に把握し、現場の要望や世の中の情 勢変化への早期対応を図っている。 今回事例対象とした分野を担当するNEDO機械システム 技術開発部は、「機械、製造加工、航空及び宇宙技術に係る 研究開発の企画及び運営に関すること」を事務所掌として担 っており、その推進にあたっては、経営意識・当事者意識 (sense of ownership)を持ち、優勝し観客を集める(=世界ト ップレベルの研究開発成果、実用化・事業化を実現する)ア ウトプットを目指している。本分野においては、市場ニーズ 又は技術シーズのどちらかが不明確であるため、研究開発 プロセスや社会情勢を勘案した現場での柔軟な対応が求め られるという特徴を有している。NEDOに与えられた裁量と 責任を全うするため、必要に応じてプロジェクトの基本計画 変更、加速・縮小・中止等の柔軟な研究開発マネジメントを 実施している。 これらの具体的な方策に繋げるためにも、特に日々の進 捗管理はマネジメントの基本であり、且つ重要である※2。し かし、一つのプロジェクトで数十の事業者を抱えることもあ り、限られた人的資源で各事業者との意思疎通を図ることは 困難である。NEDO機械システム技術開発部では、プロジ ェクト計画の中で策定されたスケジュールと、実際の進行状 況との間の「ズレ」を常に把握し、スケジュール変更や、作 業手順の見直しなどを必要に応じて行う事で、ズレを最小限 におさえることを目的として、通常の研究現場確認や技術委 員会に加えて、平成18年度より図1のような「研究進捗確認 シート」を導入した。本シートは、現場主義に基づき、NEDO 担当者が、プロジェクトに参加している事業者、PL 間のコミ ュニケーションを円滑にとるためのツールであり、意思疎通 と進捗管理の高度化を目指したものである。 3.「研究進捗確認シート」の導入 「研究進捗確認シート」による進捗管理を行った対象プロ ジェクト及び事業者数は表1の通りで、機械システム分野の 全プロジェクトの事業者約150の企業・研究機関に対して導 入した。本シートの作成は4半期毎に、研究を実施する事業 者、PL、NEDO担当者の各々が、「進捗状況(計画との対 比)」と「成果実用化の見通し」の項目それぞれにおいて、S ABCの4段階で自己評価を行い(絶対評価)、さらに、この2 軸では判定できない研究レベルの高さ・難易度や経理処理 の適正さ、実用化の本気度などをトータルで判定するため、 総合評価の項目を設けた。各評価基準は以下の通り。 ○進捗状況(計画との対比) S : 前倒しで実施 A : 計画通り B : 少々遅れあり C : 大幅に遅れあり (コメント欄には具体的内容を記載。評価がB、Cの場合は下記「今 後の懸念事項と対策」の項目へ対応策を記載。) ○成果実用化の見通し S : プロジェクト終了後速やかな上市・製品化が見込まれる。 (既に具体的な引き合いがある等) A : 計画通り、実用化が見込まれる。 B : 実用化に向け、やや障害が生じている。(原因例:競合の台 頭、ニーズの変化・消失等) C : 実用化に大きな障害がある。 ○総合評価 S : 研究開発及び経理処理が優秀。計画以上の成果が見込ま れ、事業化・実用化の実現性が非常に高い。 A : 研究開発及び経理に問題がない。計画通りの成果が見込ま れ、事業化・実用化シナリオもきちんと描かれている。 B : 研究開発又は経理に多少問題がある。計画している成果の 見込みが乏しく、事業化・実用化の可能性が低い。 C : 研究開発又は経理に大きな問題がある。計画中止または大 幅な変更(計画・体制等)が必要である。 4.実践結果と考察 前述した通り、独法化後のNEDOプロジェクトにおいては、 進捗に応じて基本計画変更、加速・縮小・中止等の柔軟な研 究開発マネジメントを実施している。本シートの導入によっ て、個別プロジェクトにおいては、関係者間の対話ツールと なるだけでなく、全テーマを横並びで評価するための指標と なり、個別テーマを加速する等の選択と集中が可能となった。 また、部内においては、集計結果を用いたプロジェクト間の 比較(今、注力すべきプロジェクトの選定)や具体的なマネ ジメント事例の水平展開を行うことが可能になった。なお、 部内評価においては以下の基準を設け、注力すべき事業者、 水平展開すべき事例を導き出した。
③リスクマネジメントに寄与 MCP(most controversial project:最も問題のプロジェクト)
NEDO担当者が研究進捗確認シートの記載内容から、 難易度の高い研究開発に取り組んでいる事業者が計画通り に進まず、予定より遅れていることを事前に把握。不確実な 状況の中でNEDOがコントロールできる領域を最大化、す なわち「契約期間の延長」をできる体制を事前に準備してお いたことで、「最後の一押し」が可能となり、無事目標を達成 することができた。
MMP(most managed project:最もNEDO担当者が工夫しているプ ロジェクト) 表1.「研究進捗確認シート」の導入プロジェクト及び 事業件数・事業者数 ・高集積・複合MEMS製造技術開発 ・高度機械加工システム開発事業 ・エコマネジメント生産システム技術開発 ・戦略的先端ロボット要素技術開発 ・人間支援型ロボット実用化基盤技術開発 ・次世代ロボット共通基盤開発プロジェクト ・環境適応型高性能小型航空機研究開発 ・環境適応型高性能能小型航空機用エンジン研究開発 ・宇宙等極限環境における電子部品等の利用 ・次世代輸送系システム設計基盤技術開発 ・次世代衛星基盤技術開発プロジェクト ・高性能ハイパースペクトルセンサ等研究開発プロジェクト ・福祉用具実用化開発推進事業 ・ 福祉機器情報収集・分析・提供事業 (1)グッドプラクティス例 「研究進捗確認シート」を用いた結果、効果的なマネジメ ントに繋がった実際の事例は以下の通り。 ① 「目標のズレ」をリアルタイムで修正 NEDO担当者が研究進捗確認シートの記載内容から、 最終目標が「三社の連携による全体統合システムの開発」 から「各社毎に要素技術の実用化を目指す」に方針が変化 していたことを早期に発見。目標の「ズレ」を迅速に確認で きたことから、急遽打ち合わせを実施することにより、当初 の基本計画通りに軌道修正することができた。 ②関係者間の「認識のズレ」を修正 PLが研究進捗確認シートの記載内容から、「事業者は 実用化を目指しているのでは無く、技術志向に偏っていな いか」と指摘。NEDO担当者は現場における事業者との対 話からそのような印象は受けなかったため、三者の打ち合 わせの場を設けて事業者の真意を確認。結果的に三者の 目指す方向にズレはなく、事業者が注力した説明ポイントが PLに誤解を与えたことが判明した。これにより、意識共有 のみならず、研究評価を受ける際の説明方法についても議 論することができた。 ④予算執行管理に寄与 開始から半年以上経過しているのに予算執行額がゼロ であったり、年度末が近づいているにも関わらず1/3しか 予算執行していない等の「問題プロジェクト」の早期発見に つながった。これによりNEDOの資金マネジメントである縮 小・加速を行い、真に必要な研究開発へ限られた資源を注 力することができた。 (2)考察 研究進捗確認シート導入の最大のメリットは、一言で言え ば「現状の課題点を見える化して議論の土台を形成」できた 点である。これにより、プロジェクト進行に当たって足りない 部分や、三者の認識の「ズレ」について確認することが可能 になった。事業者、PL、NEDOのそれぞれの立場において、 各々が評価を行う以上、認識の違い、温度差はあって当然 であり、このシートを作成することで意識の共有のみならず、 自己評価をしつつ、状況を振り返る良い機会になったことが 大きな成果といえる。また、マネジメントで得た情報を NEDO 担当者にとどまらせることなく、NEDO管理職、PL、実施者で 共有して、問題点や解決法を形式知化できた意義も大きい。 平成18年度 平成19年度 事業件数 19件 18件 事業者数 152件 158件 予算額 133億円 139億円 5.まとめと今後の課題 グッドプラクティス例で示した通り、本シートが様々な「ズ レ」の補正やリスクマネジメントに寄与する効果は明らかで あるが、今後はさらに「どういう改善を行った」という点に留 意して情報を蓄積し、改善を行っていくことが必要である。 プロジェクトマネジメントの使命は、プロジェクトをうまく推 進し、目的を達成してアウトプットを出し、アウトカムにつな げていくことであるが、さらに、プロセス資産を蓄積すること も重要な使命だと言える。そのため、プロジェクトの結果だ けでなく、本シートのような推移を記録し残していくことで、 後任者においても、そのナレッジを生かしたマネジメントの 維持・高度化が期待される。 [参考文献] 1)山田 宏之:「ナショナルイノベーションシステムにおける研究 開発独立行政法人の今後の役割について」日本知財学会 第5回年次学術研究発表会(2007) 2)特定非営利活動法人 日本プロジェクトマネジメント協会:「P2M プロジェクト&プログラムマネジメント 標準ガイドブック(下巻) 個別マネジメント編」(2003)PHP研究所
プロジェクト名 担当テーマ名 事業者名 事業者 S PL(SPL) A NEDO B 事業者 A PL(SPL) B NEDO B A B B 開発テーマ進捗状況 <開発テーマ> 円 総合評価(現時点) 今後の懸念事項と対策等(前回記載事項の経過含む) 進捗状況1.の記載事項における対策:他の材料への変更を検討した上で供試体を製作する予定。その結果、新工法開 発の遅れは生じない見込み。 事業者 PL(SPL) NEDO 最終目標 中間目標 年度目標 成果実用化の見通し