無限個の
phase
を持つある作用素の
Stokes geometry
について 青木貴史 (近畿大・理工) 河合隆裕 (京大・数理研) 小池達也 ($\text{京大}\cdot$ 理) 竹井義次 (京大・数理研)1
Introduction
以下の結果は研究会後に得られたものであるが, 研究会における話題と密接に関係してお り, 興味深いと思われるので, この講究録に収録させてもらうことにした. 本稿では large $\mathrm{P}^{\mathrm{a}}\mathrm{r}\mathrm{a}\mathrm{m}\mathrm{e}\mathrm{t}\mathrm{e}\mathrm{r}$ $\eta$ を含んだ無限階の方程式$P(x, \partial_{x}, \eta)\psi=0$, $(\alpha\in \mathrm{C})$ (1)
を考える. (後に主に考えるのは $\alpha=i$ の場合である)
我々が現在興味を持っている作用素 $P(x, \partial_{x}, \eta)=P(X, \partial x/\eta)$ は, その Borel変換$P_{B}(x, \partial_{x}/\partial)y$
が $x$ に正則に依存する $\zeta=\xi/\eta$ の整函数を表象とする ($0$階の)microdifferential operator
となるものである. そのような作用素に関しては 3 階の作用素に対する局所理論 ([AKTI],
Theorem 14 等) の自然な拡張が存在し, 又, $P_{B}$ に対する超局所解析を通して “new turning
point” を導入できることも判ってきている. (詳細は現在準備中の論文に譲る) 従ってその ような作用素に対しては本稿で論じるような Stokes geometry を考えることが出来るのであ る. そのような作用素の中には, 例えば$\exp(\partial_{x}^{2}/\eta^{2})-a(x)$ と云う形の作用素も含まれてお り, これ等ひょっとしたら現実的な応用を持つのではないか (例えば [BB] 参照) とも期待し ているが, 特にここで, よりおとなしそうな上述の作用素に限って議論を行う主な理由は次 のような際立った特徴をこの作用素が持つことにある: 以下に見るようにこの作用素の変わり点は2点 $(x=\pm 1)$ しかなく, これらの変わり点か ら出る Stokes
curve
は無限重の重なりを示している. 従って WKB解の “接続公式” と云っ たものがあり得るのかどうかはアプリオリには全く明らかではない. 勿論上に触れたよう に局所理論が確立された今 (平成12年7月) は“当然成り立つ” と言い切れるけれど, 我々自 身最初–抹の不安があったことは事実である. 本稿で示すような解の積分表示における最急 降下路のパターンの切り替わり方 (4節) から “成り立つに違いない. 自信を持って前進しよ う” と思ったのであった. さて今 (1) のWKB 解を $\psi=\exp(\int^{x}(\eta S_{-1}(x)+S_{0}(x)+\eta^{-1}S_{1}(X)+\cdots)dx)$ (2) の形で構成することにすれば, $S_{-1}$ は次の方程式を満たすことがわかる: (3) 以下 $f(x, \zeta)=\cosh(\sqrt{\zeta/\alpha})-x$とおこう. この時 $f(x, \zeta)=0$ を解くと $\zeta=f_{n}(x)$ が得られる. 但し
$f_{n}(x)=\alpha(2n\pi i+\log(x+\sqrt{x^{2}-1}))^{2}$ $(n\in \mathrm{Z})$ (5)
である. つまり, phase を記述する $S_{-1}$ は無限個存在する. (以下$S_{-1}=$ 几で始まる WKB
解を$\psi_{n}$ で表わすことにする)
こうした無限個の phase を持つ方程式 (1) の Stokes
curve
やnew Stokescurve
を, コンピ$=-$タを用いた数値計算により求めることが本稿の目的である. さらに, そうして求めた
Stokes geometryが, 解の積分表示における steepest descent path の配位と密接に関係して
いることも数値的に検証する. (本稿で行う数値計算及び図の作成にあたっては Mathemat-$\mathrm{i}\mathrm{c}\mathrm{a}4.0$ を用いた)
2
Stokes
curves
この節の目的は有限階の方程式の場合の議論をもとに (1) 式に対する変わり点,及び Stokescurve
について考察し, それらを図示することである. まず,$f(x, \zeta)=\frac{\partial f}{\partial\zeta}(X, \zeta)=0$ (6)
の解$x$ を変わり点と呼ぶことにしよう. 簡単な計算により
$x=1,$$-1$ (7)
が変わり点であることがわかる.
次にこれらの変わり点から出る Stokes
curve
について考える. 以下では $\log(x+\sqrt{x^{2}-1})$の分枝を, まず, $x=1$ (resp. $x=-1$) からカットを正の (resp. 負の) 実軸にそって無限遠 に引き, $\sqrt[-]{x^{2}-1}|_{x0}==i$, $\log(_{X+}\sqrt{x^{2}-1})|_{x=0}=\frac{\pi}{2}i$, (8) として定めることにする. この時 $x=1$ から出るカットを反時計回りに横切って原点の近傍 から原点の近傍に至る経路に沿って (5) 式で定められている $f_{n}$ を解析接続すると $f_{-n}$ にな ることがわかる. 従って次式により定まる $x$ 平面内の曲線を $x=1$ から出る Stokes
curve
と呼ぶことにする.$\propto s\int_{1}^{x}(fn(x)-f-n(x))dX=0$ $(n\geq 1)$. (9)
この (9) は
$s^{\infty}|^{x}i\alpha\log(x+\sqrt{x^{2}-1})dx=0$ (10)
に同値であることがわかる. この (10) は $n$ に依らないので, 変わり点$x=1$ から出る Stokes
curve
は無限重に重なっていることがわかる. 同様に $f_{n}$ を $x=-1$ から出るカットを反時計回りに横切って原点の近傍に解析接続すると $f_{-n-1}$ になることがわかるので,
により定まる曲線を $x=-1$ から出る Stokes
curve
と呼ぶことにする. この (11) は$\propto s\int_{-1}^{x_{i\alpha(i\pi+}}-\log(X+\sqrt{x^{2}-1}))dX=0$ (12)
と同値であるから, やはり $x=1$ から出る Stokes
curve
と同様に (12) で定義される Stokescurve
も無限重に重なっていることがわかる.この (10) と (12) により定まる Stokes
curve
を以下に図示しよう. 以下の図は$\alpha=ie^{i\theta\pi}$
(13)
3
New Stokes
curves
2節における Stokes
curve
の図からわかるとおり, 今考えている方程式に対しては, 一般に, Stokes
curve
は交叉している. 有限階の方程式の場合の議論と同じ$\text{く}$ , Stokes geometryを決定するためにはその交点から出る new Stokes curve についての考察も必要となるであ
ろう. 以下 $\alpha=i$, つまり, $P(x, \partial_{x}, \eta)=\cosh(\sqrt{\partial_{x}/i\eta})-x$ (14) の場合について議論を進めることにする. (この方程式に対する Stokes
curve
は図2-1であ る) 上半平面にある Stokes curve の交点を $x_{0}$, 下半平面にある交点を $x_{1}$ として, 最初に上半平面の交点 $x_{0}$ から出る
new
Stokescurve
について考察しよう.まず, $x=1$ から出て $x_{0}$ に向かう Stokes
curve
に沿って$\Re\int_{1}^{x}(f_{n}(X)-f-n(x))dX>0$ $(n>0)$ (15)
が成り立つことに注意する. つまり, この Stokes
curve
上では$\psi_{n}$ が $\psi_{-n}$ に対して dominantとなる. (以下 [AKTI] にならって, この事を “
$n>-n$”
と表わすことにする) さらに $x=$
$-1$ から出て $x_{0}$ に向かう Stokes
curve
に沿って$\Re I_{-}^{(f()-}x_{1})nxf_{-}n.-1(x)d_{X}<0$ $(n\geq 0)$, (16)
つまり,
$”-n-1>n$
” となっていることもわかる. これらの 2 つのことから $x=x_{0}$ において
. . .
$>3>-3>2>-2>1>-1>0$
(17)となっている事がわかる. (結果を先取りするようだが, 図4-4-2も参照) Borel平面で考え
ればこの (17) ?は WKB解$\psi_{n}$ の特異点 $y=g_{n}(x)$, 但し$g_{n}(x)= \int^{x}f_{n}(x)d_{X}$, が実軸に平行 な直線上に
.
$..<\Re g_{3}(X)<\Re g-3(x)<\Re g_{2}(X)<\Re_{g_{-2}}(X)<\Re g_{1}(X)<\Re g_{-1}(X)<\Re g_{0}(x)$ (18)と並んでいることを意味する. 従って次で定義される $x$平面における曲線が new Stokes
curve の候補となることがわかる.
$s^{\infty} \int_{x_{0}}^{x}(f_{m}(x)-f_{n}(x))dX=0$ $(m, n\in \mathrm{Z}, m\neq-n, m\neq-n-1)$. (19)
(ここで $m=-n$, および
$m=-n-1$
をはずしているのは, それぞれ$x=1,$ $x=-1$ から出る Stokes
curve
となるからである) 簡単な式変形の後, この (19) は$\propto s\int_{x_{0}}^{x}(k\pi i+\log(x+\sqrt{x^{2}-1}))dx=0$ $(k=m+n\neq 0, -1)$ (20)
まず, $k=1,2,3$ の場合は次の様になる.
図からわかるとおり上半平面の交点$x_{0}$ から伸ばした new Stokes curve が驚くべきことに下
半平面の交点 $x_{1}$ を通過している. また $k$ が大きくなると new Stokes
curve
は虚軸に近づいていくこともわかる. 実際 $k=100$ の場合は次の通り.
以上をまとめて $k=1,2,$$\ldots,$
$6$ に対応する
new
Stokescurve
を重ねて図示すると次の様に
$1^{\urcorner}$
lgulc $O^{-\mathrm{d}}$
次に $k=-2,$ $-3,$ $-4$ の場合に new Stokes curve を図示する.
flgure $\mathrm{O}^{-}0$ rlgul
$\cdot$
c $0-_{l}$ rl 呂$\mathfrak{U}1\mathrm{C}0^{-}0$
やはり $k$ の絶対値が大きくなると new Stokes
curve
は虚軸に近づいていくことがわかる. 例$\Gamma \mathrm{l}\mathrm{g}\mathrm{u}\mathrm{r}\mathrm{e}$ -ソ
先ほどと同様に $k=-2,$ $-3,$$\ldots,$ $-6$ のに対応する new Stokes
curve
を重ねて図示すると次のようになる:
New Stokes
curve
で $-6\leq k\leq 6(k\neq.0, -1)$ に対応するものを重ねて図示すると次のよ$\mathrm{k}=- 6,- 5,$ $\ldots,$ $6$
ここで簡単に
new
turning point との関連について触れておくことにする. まず,new
turning point を [AKTI] に倣って定義すると, 詳しい計算は省略するが, 方程式(14) に対
する new turning point は
$x=\pm\cos w$ (但し $w$ は $w=\tan w$ を満たす) (21)
となることがわかる. (これらの new turning point (は $-1\leq x\leq 1$ にあり, 原点に集積す
る)
有限階の方程式の場合, [AKTI] において議論されている通り, new Stokes curve は new
turning point から出るものとして考えることが出来た. 今考えている方程式についても同
様のことが成り立つことが期待される. 以下の表はnew Stokes
curve
と実軸の交点を数値この結果から上記のことが数値的には成り立っていることがわかる.
また有限階の方程式の場合の議論から, $x=0$ を含み$x=\pm 1$ からでる Stokes
curve
によって囲まれる領域に含まれる new Stokes
curve
の当該部分は, 上の結果から new turningpoint を通っていると考えられるのでStokes geometry には無関係である (すなわち WKB
解はそこでStokes 現象を起こさない) ことが期待される. これらの部分を点線で表わしたも
Figure 3-12
この節の締め括りとして $\alpha=ie^{i\theta\pi}$ として $\theta$ を $0$から 1.0 まで 0.1 ずつ増やした場合の $k=$
1000に対する
new
Stokes curve を図示することにする. やはり片側の Stokes curve の交点から出た new Stokes curve が反対側の交点を通過していることに注意して貰いたい.
4
Steepest
descent paths
有限階の Laplace型方程式
(
係数が1
次函数である方程式)
の場合は, 点$x$ 力\leq Stokescurve
あるいは new Stokes
curve
上にあるという状況が, 積分表示の方で見れば, 2つの鞍点を結ぶsteepest descent path が存在するという条件に対応していた $([\mathrm{A}\mathrm{K}\mathrm{T}2], [\mathrm{T}])$.
今考えている方程式
$P(_{X,\partial_{x}}, \eta)\psi=0$, $P=\cosh(\sqrt{\partial_{x}/i\eta})-x$ (22)
は$x$ についての無限階の Laplace型方程式と考えられ, 従って上記の有限階の場合の結果が 同じように成立していると期待される. 以下では (22) の解の積分表示として $\psi=\int\exp(\eta h(_{X,\zeta}))d\zeta$ (23) ($\int\underline{\mathrm{B}}1$ “ $h(x, \zeta)=x\zeta-2i\sqrt{\zeta/i}\sinh(\sqrt{\zeta/i})+2i\cosh(\sqrt{\zeta/i})$ (24) である) を考え, $x$ をいろいろ動かした時の積分表示 (23) の鞍点 $\zeta_{n}=i(2n\pi i+\log(x+\sqrt{x^{2}-1}))^{2}$ (25) (この鞍点は (5) で与えられた $S_{-1}$ に–致することに注意) と, その鞍点を通る steepest
de-scent path を図示することにより, 2節や3節で調べた Stokes
curve
及びnew Stokescurve
の図や, この期待の正当性を検証する.
41 $x=1$ の近傍
まず, $x$ が変わり点 $x=1$ の近傍を動く時の steepest descent path の配位について考える
ことにする. 具体的には次の図の様に$x=1+0.2e^{i\theta\pi}$ (但し $\theta$ は $0$ から2まで0.1ずつ増や
す) として考える.
この様に $x$ を動かした時の鞍点 $\zeta_{n}$ $(n=0, \pm 1, \ldots , \pm 3)$ と steepest descent path を調べて
みると次の様になる.
Figure 4-1-al Figure 4-1-a2 Figure
4-1-a3
Figure 4-1-a4 Figure
4-1-a5
Figure4-1-a6
Figure 4-1-al0 Figure 4-1-all Figure 4-1-al2
Figure 4-1-al3 Figure 4-1-al4 Figure 4-1-al5
Figure 4-1-al9 Figure 4-1-a20 Figure 4-1-a2l
$\text{以}\ovalbox{\tt\small REJECT}$
上の図では鞍点 $\zeta 0,\zeta_{\pm 1}$ から出る steepest descent pathが見えにくいので改めてそれらの
鞍点から出る steepest descent path を以下に図示する.
rlgure $4-\perp- 0\perp$ rlgure $4-1-\mathrm{D}\angle$ $\mathrm{r}$lgure $+\perp-\mathrm{U}\mathrm{o}$
rlgure $4- 1-0\perp\epsilon$
以上の図から steepest descent path のパターンは $\theta=$ 0(図 $\mathrm{a}1$ あるいは図 $\mathrm{b}1$) の前後, $\theta=$
0.6\mbox{\boldmath $\pi$}(図$\mathrm{a}7,$ $\mathrm{b}7$) と $\theta=$ 0.7\mbox{\boldmath $\pi$}(図$\mathrm{a}8,\mathrm{b}8$) の間, 及び$\theta=$ 1.3\mbox{\boldmath$\pi$}\mbox{\boldmath$\pi$}(図 $\mathrm{a}14,$ $\mathrm{b}14$) と $\theta=$ 1.4\mbox{\boldmath $\pi$}(図
$\mathrm{a}15,$ $\mathrm{b}15)$ の間において切り替わることが見て取れるが, これらは丁度
$x$ が $x=1$ から出る
Stokes
curve
を横切る時である. その Stokescurve
を横切る際に鞍点 $\zeta_{n}$ と $\zeta_{-n}$ が steepestdescent path により結ばれるということも, $x=1$ から出る Stokes
curve
が (9) で定義されていることと整合している. また, このことが全ての $n$ について–斉に起きていることが
Stokes
curve
が無限重に重なっていることと対応している. さらに, 例えば, $x=1$ から左上に出る Stokes
curve
は3節で見たように$\psi_{n}$ が $\psi_{-n}$ に対して dominant であったが, 図$\mathrm{a}7$ と図 a8(
あるいは図 $\mathrm{b}7$ と図$\mathrm{b}8$) を見比べるとこの Stokes
curve
上では$\zeta_{n}$ から出ている
steepest descent path が $\zeta_{-n}$ に入っていることも確認できる. つまり, こうした WKB解の
dominance の関係もうまく対応していることがわかる.
42 $x=-1$ の近傍
次にもう –つの変わり点 $x=-1$ の近傍において考える. 以下の図の様に$x$ が $x=-1+$ $0.2e^{i\theta\pi}$ ($\theta$ は$0$ から 2 まで 0.1 ずつ増やす) と動く場合を考える.
$\mathrm{p}_{1}.\mathrm{g}\mathrm{u}\mathrm{r}\mathrm{e}4-.\Delta-\perp$
以下に鞍点$\zeta_{n}(n=0, \pm 1, \ldots, \pm 3, -4)$ から出る steepest descent path について考える.
Figure 4-2-al Figure 4-2-a2 Figure 4-2-a3
Figure 4-2-a7 Figure
4-2-a8
Figure4-2-a9
Figure 4-2-al0 Figure 4-2-all Figure 4-2-al2
Figure 4-2-al6 Figure 4-2-al7 Figure 4-2-al8
Figure 4-2-al9 Figure 4-2-a20 Figure 4-2-a2l
やはり以上の図では鞍点 $\zeta_{0},\zeta\pm 1$ から出る steepest descent pathが見えにくいので改めてそ
れらの付近の鞍点から出る steepest descent path を以下に図示する.
$\Gamma \mathrm{l}\mathrm{g}\mathrm{u}\mathrm{r}\mathrm{e}4^{-}\angle-04$ $\Gamma$lgurc $\angle\neq-\angle^{-}\mathrm{u}_{\dot{\mathrm{t}}}$) rlgure 4-z-ot)
$\Gamma 1\mathrm{g}\mathrm{U}\mathrm{l}\mathrm{C}^{l}4-\Delta^{-}\mathrm{U}$’ $\Gamma$lgurc $l\neq- z- \mathrm{u}\mathrm{o}$ rlgure $+\angle-0y$
4.1 節と同様に steepest descent path のパターンが切り替わるのは $x$ が $x=-1$ から出る
Stokes
curve
を横切るときであることが見て取れる. なお $x=-1$ から出る Stokescurve
は (11) で定められていたが, その Stokes curve を横切る際に $\zeta_{n}$ と $\zeta_{-n-1}$ の鞍点が steepest
descent path によって結ばれていることもわかる. やはり, この事が全ての $n$ について–斉
43 上半平面上で実軸に沿って
続いて $x$ が実軸に沿って上半平面において動く場合を考えよう. 具体的には次の図の様に
$x=t+0.2i$ (ただし, $-1.5\leq t\leq 1.5$ で垣ま 0.1 ずつ増える) として考える.
以下に鞍点 $\zeta_{n}(n=0, \pm 1, \ldots, \pm 3)$ から出る steepest descent path を図示する.
Figure 4-3-al Figure 4-3-a2 Figure 4-3-a3
Figure
4-3-a7
Figure 4-3-a8 Figure4-3-a9
Figure 4-3-al0 Figure 4-3-all Figure 4-3-al2
Figure 4-3-al6 Figure 4-3-al7 Figure 4-3-al8
Figure 4-3-al9 Figure
4-3-a20
Figure 4-3-a2lFigure 4-3-a25 Figure 4-3-a26 Figure 4-3-a27
Figure 4-3-a26 Figure 4-3-a27 Figure 4-3-a28
Figure 4-3-a29
これらの図においても $\zeta_{0},\zeta_{\pm 1}$ から出る steepest descent path が見えにくいので改めてそれ
Figure 4-3-bl Figure 4-3-b2 Figure 4-3-b3
Figure 4-3-b4 Figure 4-3-b5 Figure 4-3-b6
Figure 4-3-bl0 Figure 4-3-bll Figure 4-3-bl2
Figure 4-3-bl3 Figure 4-3-bl4 Figure 4-3-bl5
Figure 4-3-bl9 Figure 4-3-b20 Figure 4-3-b2l
rlgure $4-\delta^{-}0^{-}\angle^{-}\angle$ $\mathrm{F}$
$\Gamma$lgure $4-\delta^{-}0\angle 0$ $\Gamma \mathrm{l}\mathrm{g}\mathrm{u}\mathrm{r}\mathrm{e}$4-s-Oz$l$ $\mathrm{r}$lgure $+0-ozo$
以上の図において steepest descent path のパターンの切り替わりが起きるのは, 図 $\mathrm{a}6$ から
図$\mathrm{a}8$ にかけて (あるいは図 $\mathrm{b}6$ から図 $\mathrm{b}8$ にかけて) と, 図 $\mathrm{a}24$ から図 $\mathrm{a}25$ にかけて (あるい
は図 $\mathrm{b}24$ から図 $\mathrm{b}25$ にかけて) であることがわかる. これらはそれぞれ, $x=-1$ から出る
Stokes curve, 及び, $x=1$ から出る Stokes curve を横切る時である. (また退化の仕方, つま
り, steepest descent path を結ぶ鞍点の対についても 4.1 節, 及び42節の結果と整合してい
る)
それ以外のところでは steepest descent path のパターンは変わらない. 従って, 今考えて
いた経路と横切る new Stokes
curve
(図3-12において点線である部分) は Stokes geometryに関与してこないこともわかる.
44 Stokes
curve
の交点 $x=x_{0}$ の近傍次に Stokes curve の上半平面の交点 $x=x_{0}$ の近傍における鞍点と steepest descent path
について考えよう. まず以下の図のように $x=x_{0}+0.2e^{i\theta\pi}(\theta$ は$0$ から 2 まで 0.1 ずつ増や
rlgure 4-4-1
以下, 鞍点 $\zeta_{n}(n=0, \pm 1, \ldots, \pm 3)$ について考える.
Figure 4-4-al Figure 4-4-a2 Figure
4-4-a3
Figure
4-4-a7
Figure 4-4-a8 Figure 4-4-a9Figure 4-4-al0 Figure 4-4-all Figure 4-4-al2
Figure 4-4-al6 Figure 4-4-al7 Figure 4-4-al8
Figure 4-4-al9 Figure 4-4-a20 Figure 4-4-a2l
まず, 交点 $x_{0}$ の下側, すなわち $\theta$
が1から2まで変わる場合については, steepest descent
path のパターンの変化を読み取るのは易しい. 実際図 $\mathrm{a}13$ から図 $\mathrm{a}15$ にかけて, 及び図
a17
から図 $\mathrm{a}19$ にかけての2 $t$所においてのみパターンが切り替わっていることがわかる. それ らはそれぞれ, $x=-1$ から出る Stokes curve, 及び $x=1$ から出る Stokes
curve
を横切る場合である. また点線で表わした
new
Stokescurve
を横切る時には steepest descent pathのパターンは変化しないこともわかる. これは43節の結果とも整合する.
次に, $\theta$ が $0$ から1に変化する場合, つまり, $x$ が実線で表わした new Stokes curve を横
切る際の steepest descent path の変化について見てみよう. 上記の図から読み取れるのは,
$\text{少なくとも}.x=-1$ から出る Stokes curve を横切る図$\mathrm{a}3$ から図 $\mathrm{a}5$
にかけて, 及び $x=1$ か
ら出る Stokes
curve
を横切る図 $\mathrm{a}7$ から図 $\mathrm{a}9$ にかけては, パターンの切り替わりが起こっているということである. しかし, 問題の
new
Stokescurve
を横切る図 $\mathrm{a}5$ から図 $\mathrm{a}7$ にかけて(図$\mathrm{b}5$ から図 $\mathrm{b}7$ にかけて) は, 図が粗過ぎてどのような変化が起こっているのか読み取りに
くい. そこで, 以下に $x=x_{0}+0.2e^{i\theta\pi}$($\text{但し}\theta$ は 0.25 から 0.5 まで 0.01 ずつ増やす) の場
合に対応する鞍点 $\zeta_{n}(n=-3, -2, -1, \mathrm{o}, 1,2)$ 付近の様子を図示してみる. (以下の図に限っ
て $\zeta_{n}(n=-3, -2, -1, \mathrm{o}, 1,2)$ 以外の鞍点から出る steepest descent path についても図中
Figure 4-4-bl Figure 4-4-b2 Figure 4-4-b3
Figure 4-4-b4 Figure 4-4-b5 Figure 4-4-b6
Figure 4-4-bl0 Figure 4-4-bll Figure 4-4-bl2
Figure 4-4-bl3 Figure 4-4-bl4 Figure 4-4-bl5
Figure 4-4-bl9 Figure 4-4-b20 Figure 4-4-b2l
Figure 4-4-b22 Figure 4-4-b23 Figure 4-4-b24
これらの図を順に見ていくことにする. まず, 図 $\mathrm{b}5$ から図 $\mathrm{b}7$ にかけて (
あるいは図 $\mathrm{c}5$ から
図 $\mathrm{c}7$
にかけて) 一度鞍点同士が steepest descent path により結ばれていることがわかる.
これは, 前にも述べた通り, $x=-1$ から出る Stokes
curve
を横切る際の変化である. (4.2次の steepest descent path の変化は図 $\mathrm{b}17$から図 $\mathrm{b}19$ にかけて (図 $\mathrm{c}17$ から図 $\mathrm{c}19$ にか
けて) 起きている. New Stokes curve の図と $\theta$
の値を見比べると, これは
$s^{\infty} \int_{x0}^{x}(f_{n}(X)-f-n-2(_{X}))dx=0$ (26)
で定められていた new Stokes
curve
を横切る場合の変化である. また, 鞍点も $\zeta_{n}$ と $\zeta_{-n-2}$が steepest descent path によって結ばれていることが見て取れる. さらに次の変化は図 b21
から図 $\mathrm{b}22$ にかけて (図$\mathrm{c}21$ から図 $\mathrm{c}22$ にかけて) 起きているが, これは
$\propto s\int_{x_{0}}^{x}(fn(X)-f-n-3(_{X}))dx=0$ (27)
により定められていた
new
Stokes curve を横切る場合である. この時$\zeta_{n}$ と $\zeta_{-n-3}$ がsteep-est descent path によって結ばれている.
図から確実に読み取れるのはこの辺りまでだが, ここまでのパターンの切り替わり方から,
$s^{\infty} \int_{x_{0}}^{x}(fn(x)-f_{-}n-k(x))dX=0$ $(k=4,5, \ldots)$ (28)
で定義された new Stokes
curve
の上でどんな現象が起こっているかを推測することは難しくないだろう. 例えば, かなり下の方に位置する鞍点 $\zeta_{-k}$ から出た steepest descent path が
上の方まで上がってきて, (28) という new Stokes curve の上では最も上に位置する鞍点 $\zeta_{0}$
に入る訳である. (この時, $\zeta_{n}$ と $\zeta_{-n-k}$ が各$n$ について–斉に steepest descent path によっ
て結ばれる. )
3 節で見たように,
new
Stokescurve
(28) は $k$ が大きくなるにつれ次第に虚円に漸近して行く. 従って, $k$ が非常に大きい時の状況を数値的に検証するのは原理的に困難であ
る. しかしその–方で, ある–つ固定した $n$ に対して WKB 解 $\psi_{n}$ を考えると, 交点 $x_{0}$ で
の dominance の関係が (17) の様になっていることから判るように, 最初の有限個の (new)
Stokes
curve
を除いて $\psi_{n}$ は Stokes 現象を起こさない (他の無限個の new Stokes curve 上では $\psi_{n}$ は subdominant). つまり, steepest descent path の言葉で言えば, 鞍点 $\zeta_{n}$ を通る
steepest descent path の配位は, 最初の有限個の (new) Stokes curve を横切った後には安
定する. (虚心の近傍では, 他の鞍点から出た steepest descent path が $\zeta_{n}$ に入ってくるだけ
で, $\zeta_{n}$ から出る path の方は他の鞍点には入らない. ) 上に挙げた図の中で, $x$ が虚軸上に在
る場合に対応する図 b26(及び図 $\mathrm{c}26$) が非常に簡明なのは, これが理由である.
4.5 もう$-$つの交点 $x=x_{1}$ の近傍
最後に, 下半平面にある Stokes
curve
の交点 $x=x_{1}$ の近傍において考える. 以下の図のように $x=x_{1}+0.2e^{i\theta\pi}$($\theta$ は$0$
から2まで0.1ずつ増やす) と $x$ を動かして考える.
$p$lgure 4-0-1
以下, 鞍点 $\zeta_{n}(n=0, \pm 1, \ldots, \pm 3)$ から出る steepest descent path を図示する.
Figure
4-5-a4
Figure 4-5-a5 Figure4-5-a6
rlgure $\angle\pm- \mathrm{O}^{- \mathrm{a}\perp 0}$ $E$lgure q-o-al/ Plgure+0-a\perp o
Figure 4-5-al9 Figure 4-5-a20 Figure 4-5-a2l
44 節と同様, 交点 $x_{1}$ の上側, すなわち new Stokes curve が点線で表わされている側では,
$x=\pm 1$ から出る Stokes curve を横切るところでのみ, steepest descent path のパターンが
変化していることが見て取れる.
方, 実線で表わした new Stokes curve を横切る際のパターンの変化を調べるために,
$(n=-3, -2, -1, \mathrm{o}, 1,2)$ 付近の様子を図示してみよう.
Figure 4-5-bl Figure 4-5-b2 Figure 4-5-b3
Figure 4-5-b4 Figure 4-5-b5 Figure 4-5-b6
Figure 4-5-bl0 Figure 4-5-bll Figure 4-5-bl2
Figure 4-5-bl3 Figure 4-5-bl4 Figure 4-5-bl5
Figure 4-5-bl9 Figure 4-5-b20 Figure 4-5-b2l
Figure 4-5-b22 Figure 4-5-b23 Figure 4-5-b24
まず図 $\mathrm{b}5$ から図 $\mathrm{b}7$ にかけて, つまり $x=1$ から出る Stokes
curve
を横切る際に最初の 変化が起きている. 続いて図 $\mathrm{b}17$ から図 $\mathrm{b}19$ 番目にかけて, そして図 $\mathrm{b}21$ から図 $\mathrm{b}22$ にかけてそれぞれ
の $k=1$ 及び $k=2$ により定義される
new
Stokescurve
を横切る際に, steepest descentpath のパターンが変化している. これらの図から容易に推測されるように
,
一般の $k$ に対する
new
Stokescurve
(29) の上では, 最も上に位置する鞍点 $\zeta 0$ から出た steepest descentpath がうまく折れ曲がりながら下へと降りて行って
,
かなり下の方の鞍点 $\zeta_{k}$ に入るものと考えられる. (この時 $\zeta_{n}$ と $\zeta_{-n+k}$ が各$n$
について–斉に steepest descent pat 旧こよって結
ばれる. )
: このように, 下半平面の Stokes
curve
の交点 $x=x_{1}$ の近傍においても, 実線で表わされる new Stokes
curve
を横切る際に確かに steepest descent path のパターンが変化する. 但し, その変化の仕方は44節で見た上半平面の交点 $x=x_{0}$ の近傍におけるものとは異なっ
ており, 実際, 例えば鞍点 $\zeta_{0}$ を通る steepest descent
path の配位は, 虚軸の付近で無限回 変化する. ($x$ が虚軸上に在る場合に対応する図$\mathrm{b}26$ を 44 節の図 4-4-b26(及び, 図4-4-c26) と比較して欲しい. この
45
節の図の方が44
節の図と比べて格段に複雑であることがわか る) 従って, 対応する WKB 解$\psi_{0}$ を考えれば, これは虚軸の付近で Stokes 現象を無限回起 こしている訳である. 参考文献[AKTI] T.Aoki, T.Kawai and Y.Takei: New turning points in the exactWKBanalysisfor
higher-order ordinary differential equations, Analyse alg\’ebrique des perturbations
singuli\‘eres. I, Hermann, 1994, pp.69-84.
[AKT2] T.Aoki, T.Kawai and Y.Takei: 完全最急降下法を目指して, in this volume.
[BB] $\mathrm{H}.\mathrm{L}$.Berk and $\mathrm{D}.\mathrm{L}$.Book: Plasma
wave
regeneration in inhomogeneous media, Phys.
Fluids, 12(1969),
649-661.
[T] Y.Takei: Integral representaion for ordinary differential equations of Laplace type and exact WKB analysis, in this volume.