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ヴィクトリア朝ソネット集について(III)

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Academic year: 2021

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(1)ヴィクトリア朝ソネット集について(Ⅲ) 岡. On. Victorian. 琴. 田. Sonnet. Mineo. 雄牛. Sequences. (Ⅲ). OKADA*. (5) Gabriel. Dante. The. House. of Lifeの第一部(`Youth and Change')は`Love Enthroned'と題された作品で始まる。上田敏が「懸の玉座」 という題で訳していて,日本の読者にも知られている作品である。ここで登場するのは `Truth',. `Hope',. Rossettiのソネット連作集,. `Fame',. `Death',. べてに君臨するものとして,. `Life'といった存在であり,こうした`Powers'す. `Love'がそのsestet,. 9行以下で登場する。これはallgory. の手法であって,この-篇はTheHouseofLifeの中でその特徴がはっきり一貫して現 われている作品である。ソネットで, allegoryの手法が使われいるものとして,思い浮 かぶのは, Michael Drayton (1563-1631)の`Since there's no help-.'で始まる作品で あるが,この2篇の特色を比べて見ることが,何か話の糸口となるかも知れない。 Draytonの作品(〟eα,61)でも擬人化された`Love'が登場するのは9行以下であ る。そこでは`Love'は今際の床にある病人にたとえられ,そのまわりを`Passion', `Faith',. `Innocence'などが取り巻いている。 9-12行でこうした状況を記した後で,負 後のカプレットで, (始めの1-8行のつき放した,別れのポーズとは逆の),恋人の心 を取り戻そうとする説得となる。 Now. if thou. wouldst,. when. all have. glVen. him. over,. (ll.13-14) (him-Love) mightst him yet recover.(I) この作品において,カブレットのこうした効果的使用,見事な逆転を可能ならしめてい From. death. to. life thou. るのは,. allegoryの手法による`Love'の具体的描写であり,それを取り巻く`figures' の描写も結果として見れば,恋人のJL、をっなぎとめる説明の道具立てとなっていること に気付く。こうしたことが可能であったのは,エリザベス朝ソネット集が極めて洗練さ れた文学形式であり,決った主題の表現が詩人によって多様に行われたということがあっ たと考えられる。あえて言えば,ここに一種の`wit'とも言うべきものが働いていると いえようか(そしてCruttwellは,ヴィクトリア朝の恋愛詩で排除されたものの一つに `wit'があるとする(2))0 *英語教室(°ept.. of. English).

(2) 岡. 34. 田. 琴. 雄. Rossettiの作品においては,. allegoryのfiguresは最初から登場し,その中でも Youth, single golden `Youth'の記述は実に具体的で感覚的である(And with some his shoulder. hair/Unto. `Love'の記述には何かはっきりした. clinging-)のに対して, イメジが浮んで釆ないという感じがする。 Love's. throne. was. All passionate He. sat. not. but far above. ;. of welcome. wind. in breathless. these. with. bowers. they. and. farewell. dream. not. of;. (3). (ll.9-ll) TheHouseofLifeの第一部では,こうした「玉座」を与えられた`Love'の姿が,そ の充足と高揚をもって語られていて,そこに感覚性,更に官能性が見られることは否定 できない。しかしこうしたことがこの作品の最大の特質であるようには思われない。我々 の関心を惹くのは,最初に宣言された愛の高揚が,作品の番号が先に進むにつれて,特 「時間」と「死」によって,詩人のJL、で如何 に第二部(`ChangeandFate')において, に崩壊して行くか,その様々な過程と様相が記され,語られているということである。 ソネットという形式が宮廷風恋愛の伝統と結びっいていて,ルネサンス期のソネット 連作集がそれを反映したテーマを表現していたことは一般に言われていることであろう。 そのconventionsの一部として,そこに充たされざる愛の想い,不幸な愛の姿が陰を差 していたことは,エリザベス朝のソネット連作集について否定できないであろう。 SpenserのAmorettiの場合 sidneyのAstrophelの場合にそれは典型的に見られるし, ShakespeareのSonnetsについて, 「青年」の ら,少なくとも途中まではそうである。 詩篇にせよ, 「黒い女」の詩篇にせよ,そこに充分にみたされた愛の姿が表わされてい TheHouseofLifeでは,これに対して精神的にも感覚的に. るとはいえないであろう.. も充足した世界が少なくともその始めの部分において見られることは,エリザベス朝の ものには見られない特質といってよいであろう。有名なVIa,. `NuptialSleep'に見られ. る官能性はこの連作集のある一面を示しているが(4),次のような大胆な詩行 I fain. Lady, Thy Thee. would. soul l know from. myself,. not. tell how. evermore. from. thy body,. neither. our. nor. love from. God.. (Ⅴ,Heart's. Hope). を読んで,それをどのように受け取るか,そう簡単に決めることばできないように思わ れる。. 勿論こうした面だけがこの作品の特質すべてを表わしている訳ではない。. `Love. Enthroned'で始まった連作集はすでにⅠⅤ, `Lovesight'において「死」の影が姿を見せ る。詩篇ⅩLIあたりから`Love'は`Death'を意識して語られるようになる。第二部に 至ると,過ぎ去った時間への悔恨が一度とならず語られるようになる。連作集最後の CI,. `OneHope'という作品は`vaindesire'と`vainregret'が手をたずさえて「死」へ 赴く時,という書き出しで始まり,最後は`tbeoneHope'sonename'への祈願に終る0 Baumは`desire'について`the. thwarted. love?',. `regret'に`for. a. life wasted,. for. one.

(3) 35. ヴィクトリア朝ソネット集に っいて(Ⅱ). love `Love. injured. and. another. itself', `the ultimate. unenjoyed'と注をっけ, mystical. `the. one. Hope's. Love'のことで,それはSon.. one. name'とは. Ⅰ.の玉座に座った. `Love'であり,この点でCIとⅠの二つの作品は呼応しているとする。(5)このことはこの. 連作集の世界がいかに悔恨とみたされない愛に支配されていたかを物語っている。. (6) BaumはCIの`desire'について`thwartedlove?'という注をっけ,又その他の作品 の注においても彼の生涯の不幸な恋愛体験について度々言及している。しかしこうした `Stella'も 状況を扱ったRossettiの作品には,不幸な恋愛の対象は直接措かれず, `DarkLady'も登場せず,擬人化され,抽象化された`Love'についてのesotericな表. 覗,記述が多くを占める。そのようにして描かれた`Love'の姿が彼のJL、象風景と呼応 しているのである。この点がエリザベス朝の詩人達の場合とは違っている。彼等のソネッ. ト連作集に歌われた,報われざる愛のテーマは,ソネット連作集のconventionsの一部 であり,共通に表現すべき内容の一部であって,詩人の体験とは直接には関係がなかっ た。 `When. Campionの undergrouud'で始まるThomas 有名な作品がある。これはソネットではないが,当時のソネットで扱われているテーマ thou. must. を見事に表している。. home. to. shades. of. NorthropFryeによると,. Campionは多忙な人間であって,袷. 酷な恋人に「殺される」ような余裕はなかった。従ってこの作品は全くのconvention である。(6)しかし又逆に当時の詩人にしてみれば,こうしたconventionalなテーマとし て自分の体験を書くことも可能であったと言える。. conventionとはその時代を支配し た精神的milieuともいうべきものの一部であって,どこまでが個人の体験でどこまで がそうでないかを決めるのが難しい場合もあったであろう。追求されたのは,共通のテー マについての表現の多様性であり,そのsophisticationであった。冒頭に挙げた Draytonのソネットの結末も,こうしたsophisticationが生み出したものといえよう0 ソネットという形式は,イギリスにおいては17世紀前半を最後に恋愛詩から他の主題 を表現する形式に変って行った。ヴィクトリア朝において、`love'を主題にした連作集が 書かれた時,ルネサンス時代のconventionsは失われていた。その代わりこの時代にお いて重視されたのは,自分の感情,経験と作品との直接な結びつきを`sincerity'とし て重視する見方であった。 BrowningのSoTmetS from RossettiのTheHouse. とは知られているし,. Barret. Cruttwellはそうした典型的な例をElizabeth the. Portugueseに見出している。(7). ofLifeが彼の生涯,その数々の恋愛体験から生み出されたこ Banmの注釈にも伝記的コメントがっいて,その製作年代によっ. て如何なる女性との恋愛体験をもとにしているか,といった推測が行なわれている場合 も少なくない。しかし文学作品は体験の記録そのものではないのは勿論であって,. The. HouseofLifeにおいて多く見られるのは,複雑な論理とレトリックに彩られた`Love' という抽象的な存在についてのesotericな記述であり-それに`Death',. `Time'といっ. た存在が加わることもある-すべての作品が必ずしも理解しやすく,共感できるも のではないように思われる。.

(4) 36. 岡. 田. 琴. 雄. こうした作品の中で,我々の心を捉えるのは,自然の情景の中で詩人の感情が唱われ ている場合であることを,前回指摘した。(8)だが,彼の詩に見られる自然の情景には 必ずしも明るい光が差しているとは限らない。藤村の『春』の中で引用されていた `SilentNoon'(ⅩⅠⅩ)の美しい自然の世界は,それに対応した暗い,不安に充ちた風景 をⅩCVIII, `He and This. the little fold of separate. was. Whose. pasturing. Drew How. I'に率いて見出す.. Lo!. this. With A. in the soul's atmosphere. clouds. living light from. one. Self. new. now. He,. wanders. for every. plaints. wind's. I?. or. field,. my. round. flower,. the sighing. moan,. year:. continual. he find it lifeless?. should. sky. for each. and. tree. auxiliary:. 題名の`He'とは詩人の分身であって,この人物が詩人を取り巻く自然を`1ifeless'と感 じているのである。 同様に,. ⅩⅠⅤの`Youth's. On. l lay, and And. see. Look. Spring-Tribute'における明るい春の季節の情感-. bank. your. head. spread. your. hair. this sweet. the newborn. through. thrice sweet on. either side, bashfuトeyed. woodflowers tresses. the golden. dear. and. here and. there.. をLXXXIII,. `BarrenSpring'における同じ春の描写,感じ方と比べてみると,そこに 全く逆の心象風景が展開する。 So Spring No. これは正に,. from. Smile. the dead. whom. towards. merry. answerlng. With And. comes. boughs. no. earns. life is twin'd. whose. winter. the Spring. to-day. `Youth's. me,. that. here, but. me. still must. more. bind,. concerns.. Spring-Tribute'の世界に呼応する,正反対のネガの世界に他な. らない。. こうした状況をうたった作品にⅩCVII, `ASuperscription'がある。これには悔恨と 失意と自責の念でさいなまれている心が痛切にうたわれている。 Look I. in my am. face. name. ; my. also called No-more,. is Might-have-been Too-late,. ;. Farewell. ;. こうした,不安や失意を具象化した作品がヴィクトリア朝において書かれていたとい うことば,. Rossettiという詩人の特異性を示すものかも知れない。この点で「幸福な」 愛の過程をうたったMrs.Browningなどのものとは違った意味を持っかも知れない。 Joan …. Reesは The. attitude. to love. of poets. flected. their beliefs about. sonnet. sequence. for. a. from. the nature. deliberately. Dante. and. of life and structured. Petrarch death. to Spenser. but. confession. none. of. and. of them the. Sidney. re-. used. the. findings. of. a.

(5) 37. ヴィクトリア朝ソネット集について(Ⅱ). lifetime, quence. as. Rossetti. further. than. did. Yet. in developlng. be. they,. was. the self-expressive. drawlng. Out. potentiality,. character not. of the. distorting. se-. the. form.(9). と述べている.. Reesのいう`the. character. self-expressive. どういうことを指すのか,はっきり分からないが,. of the sequence'というのが,. loveの問題の表現については,. Rossettiはエリザベス朝の詩人達は根本的に違うのではないか,と思うようになって 釆た。 Reesのいうように,. Rossettiがソネットという形式からpotentialityを引き出. したとすれば,それは彼の功績であり,それは実に痛ましい代価を払ってなされたとい (続く). えよう。. 注 English Verse Gardner (1) textはHelen (1972)による. (ed): The New OxfordBook of Cruttwell: The English Sonnet Work no. (2) Patrick (Writers and their 191) 1966, p.42. by Paul Rossetti: The House Notes (3) textはD.G. and of Life, with an Introduction HozLSe Franklin Baum, Harvard Univ. Press. 1928,による.以下The OfLifeからの引用. も同様。 (4) Cruttwellはヴィクトリア朝的制約への反抗という意味がある,と考えている。 op.. °it.p.43). (5) Baum,. op.. cit. p.225. 1968, p. 25.. (6) N. Frye: TheEducatedITnagination,鶴見書店, (7) Cruttwell, op. °it. p. 42.. (8)横浜国立大学人文紀要Ⅱ, (9). (Cruttwell,. Joan. Rees,. ThePoetry. No.. of. 38,. Dante. 1991年10月, Gabriel. pp,. 142-3.. Rossetti,. Cambridge. U.. P. 1981,. p・. 165・.

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