プラズマ発生を伴う電磁波の非線形放射
(昭和47年8月31日受理)
伊藤洋
武藤真三
Nonlinear Radiation of Electromagnetic Waves due to
Ionization by an Antenna
ShinzoMUTO HiroshiITO Synopsis In this paper, nonlinear radiation of electromagnetic waves due to ionization by a unipole antenna is studied, This antenna is immersed in an evacuated glass cylinder. Plasma has been produced in this glass cylinder by high powered microwave at frequency of 2450MHz and power of 100W of magnetron oscillator. We have observed the wave・ form of microwave radiated by this antenna and measured the input impedance of the antenna. It is concluded from the results of the experiment that(1)plasma is produced near the antenna at argon gas pressures of O.6∼5mmHg, and(2)the radiated microwave signal is distorted and the input impedance of this antenna changes, when the ionization is initiated.1,緒
論 近年,通信衛星」P Pケットおよび宇宙船などによる 宇宙空間での通信がさかんになり,一方わが国をはじ めとして各国でも放送衛星による直接放送などの宇宙 空間からの大電力通信が企画されているようである。 このように大電力マイクロ波を用いて通信を行なう場 合,特に宇宙空間のように気圧の低いふん囲気中で はアンテナから放射されたマイクロ波電力によってア ソテナ付近にプラズマが発生し,信号の送信にきわめ て大きな妨害を与えることが予想される1)。またその 際に起こりうる非線形現象は,発展途上にある宇宙通 信において重要な問題であるように思われる。 筆者らはこのような問題に関心をもち,実験室内 に宇宙空間に近似した実験装置を製作し,プラズマの 発生を伴う電磁波の非線形放射について研究を行なっ た。 さて,プラズマと電磁波の相互作用の研究はすでに 数多くなされているが,非線形問題を取り扱ったもの は少ないようである。その中で宇宙空間における非線 形現象には,電離層でのルクセンブルク効果などがあ るが,それらのいくつかはV.A. Bailyや0. E. H・ Redbeck らによって研究されている2}3}。しかし,こ の種の研究においては大電力電磁波の平面波が入射す ることによってプラズマ中の電子密度や衝突周波数が 変化するとして非線形現象を解析しており,本研究の ようなアンテナからの大電力電磁波放射によるプラズ マ発生を伴った非線形放射の研究に類するものはまだ なされていないようである。 本論文では,まず理論的検討としてマイクロ波電力 によって発生するプラズマの電子密度を求め,そのよ うな電子密度のプラズマ発生を伴う非線形放射の電磁 界を近似計算して,プラズマ発生により受信信号はひ ずみを受けることを示している。つぎに実験的検討と して宇宙空間に近似した実験装置を製作し,マグネト ロン発振器によって発生する大電力マイクP波が送信 用ユニポールアンテナから放射されるときに生じる非 線形現象を調べたところ,種々の興味ある結果を得る にいたった。また,実験結果のいくつかは理論との定 性的一致が得られた。このように圧力の低いふん囲気中(宇宙空間)にお かれたアソテナによる大電力通信では,アンテナ付近 のプラズマ発生に伴う通信障害があり,このときの非 線形現象は宇宙通信の大電力化等における重要な問題 であるように思われ,本研究の結果は今後より発展す る宇宙通信に対して有用な資料を与えるものと思われ る。 2. 理論的検討 2.1マイクロ波放電プラズマの電子密度 定常電界による有電極放電に比べて高周波でははる かに弱い電界での放電が可能となり,また無電極であ っても放電が起こるようになる。このようにマイクロ 波電力によって発生するプラズマの電子密度を求める。 気体中にわずかに存在する自由電子は高い周波数で 振動する外部電界により力をうけて運動する。いま, 外部電界は角周波数ωで振動するとすればE−E。cos totとあらわされるから運動方程式は 勿{㌃一一・E・c・・ω・−mvv (2・1) となる。ただし,vは電子の速度, vは電子が単位時 間に気体分子と衝突する回数すなわち衝突周波数であ る。mは電子の質量, eは電子の電荷である。このと き一個の電子が電界より吸収する瞬時電力は 1)=−eEv で与えられるから,(2.1)式からvを求めて代入すれ ぽ P− Q嘉鑑)(1+…2・t+÷・i・2ωり (2.2) を得る。 さて,このように外部電界からエネルギーを吸収し た電子は運動エネルギーを増大させ,気体分子と衝突 して電離をひきおこすであろう。すなわち(2.2)式で与 えられるエネルギーを吸収した一個の電子が単位時間 にレ掴の中性分子と衝突してこれを電離するとすれぽ 1)=yieVi (2.3) となる。ただし,V,は気体の電離電圧である。 (2.2)と(2.3)式より 炉2諾葺ノ)(・+…2・・+三・i・2・・t) (2.4) を得る。 しかし,このようにして生成した電子の一部は付着 や拡散によって消滅するであろう。問題を簡単にする ために拡散を無視して考えると連続の式より,
晋一(・一Ya)N (2・・5)
となる。Nは電子密度, y、は単位時間に電子が付着に よって消滅する回数すなわち付着度数である。いま, t=Oでは」V=」Voであり,またt==Oで外部電界が 印加されるとすれば N=No exp(−Yαt)・exp〔κ(t)Eo2〕 (2.6) を得る。ただし ・( eレの一@ 2〃zVi(ω2+レ2)(・+かオ・i・2ω・一㌃…2ω・) (2・7)
である。 すなわち(2.6)式がマイクロ波電力によって発生す るプラズマの電子密度を与える式である。 2.2 非線形放射の電磁界 (2.6)式で与えられるような電子密度のプラズマ発 生を伴う電磁波の放射の例として,解析を簡単にする ために図一1のように領域(1)はふつうの大気あるい は完全真空,領域(ll)は気圧の低いふん囲気で,この 領域は無限長線状アンテナから放射される大電力マイ クロ波によってプラズマが発生するというモデルを仮 定しよう。すなわち領域(ll)において発生するプラズ マの電子密度は(2.6)式で与えられるが,式中のEoは マイクP波の電界強度であるから場所的変化があり, これは領域(II)中におけるつぎのMaxwe11の方程式 によって決定される。物理量H,E, vはexp(ブωD なる時間因子をもつものとすれば 7 ×’ ff一ブωε。E−Nev (2.8) ク×E=一元ωμoπ (2.9)」ωmv−−eE−myv (2.10)
となる。(2.8)∼(2.10)式を円筒座標を用いて成分表 示するとつぎの波動方程式を得る。 警+÷晋+t・・・…( 2Vθ2 11一ω・㈱。’1一ル/ω) 2’ ・ミ ’α キ’・ ...ウ.(触∂ テナぷ ◆㌢ ≒・・ s .♪ ひ1・2膓 :・二 一 :・一 ♪∴ :」 ミ∴・ 暫 .㌃ :;;∵ ’1さ’ φρ ㍗}. 察ゴ 角乳εo. :1二(ロ) 窒 気圧の低いモん囲気. 芸 (、)] ・. ・ G:\ マイグロ波放電 ふつう 1の大気 プラズマ 図一1無限長線状アンテナからの非線形放射×Ez・=O ’ (2.11) (2.11)に(2.6)式を代入して 箒+÷晋+k・・[・−L・xp(一・・t) ×exp(κ(t)Eo2)]Ez==O ただし (2.12)
le・一ω后L一隠・1−}、/ω
(2.12)式が領域(皿)における波動方程式である。 一方,領域(1)におけるMaxwellの方程式は 7×H・=joε。E+J (2.13) ク×E=一ノωμoπ (2.14) である。また電流源はDiracのδ関数を用いて」一ろ監
(2・・15) と円筒座標表示できる。ここでゾoは電流の大きさ, Zoはz方向の単位ベクトルである。(2.13)∼(2.15)か ら領域(1)におけるつぎの波動方程式を得る。 裟+÷晋+le・2Ez一ノω昧雲1(2・・16) つぎに放射電磁界を求める。 まず,領域(1)における電磁界を求める。(2.16)式に つぎのHankel変換を行なう。㌶蕊主∫1⇒
その結果 a・−2t’Sf°・le。,≒, (2・・17) を得る。したがってHanke1逆変換から Ez一ノωォ1謬ξ4ξ
一ωμッ)石H・…(le・・) (2.18) となる。しかるに(2.18)式は境界のない場合の解に相 当する。一般に境界が存在するときはつぎのように仮 定する必要がある。 E、i−eEts}Lg°一゜[H・1・・(k・ρ)+AJ・(le・・)](2・・19) またこれによって Hμ一」”誓゜[H,…(k・・)+AJ,(k・ρ)コ(2・・2・) となる。添字は領域(1)での解を示す。 一方,領域(ll)における電磁界は(2,12)式を解くこ とによって得られるが,式中のEoはIE、1のことであ るから(2.12)式は一般的な非線形微分方程式であって 厳密に解くことは難しい。そこで電子密度N=2Vo, 衝突周波数レなる定常プラズマ中の電界(これを0次 近似解とする)を求めてその絶対値をE。とし,(2.12) 式に代入してその結果得られる解を第一次近似解とす る。つぎに第一・次近似解の絶対値をE。として第二次 近似解を求めていく逐次近似法によって解を求めてい くものとする。 さて,2V=2Voなる定常プラズマ中の電磁界は(2.11) 式にN・=N。を代入して得られるつぎの微分方程式を 解くことによって得られる。 le・ノ1(ゐoα)H。(2)(ちα)一〃。1。(々。α).Hl‘2)(ちα) (2,25) ωμ。・ダ。le。[ゐ(le。a)H。(2)(le。a)−1。(le。a)H,(2)(le。a)]B=
4ko/1(カoα)Ho(2)(lepa)−kpノ(koa) Hi (2}(lepa) (2.26) を得る。さて,(2.6)式中のE。はIE、1のことである から Eo=IBHo(2)(lepρ)1 (2.27) ここでBは(2.26)式の値である。これを(2.12)式に 代入して警+÷晋+鵬一・・ le・一かv1−L
(2.21) この解は簡単に得られ Ea2:=BHo(2)(lepρ) (2.22) となる。また磁界はHづ絢∂診一蕊β蝋ち・)(2・・23)
となる。係数A,.Bはρ=αにおける境界条件 Ezi ==Ez2, Hφi =Hp2 (ρ==a) (2.24) から決定される定数である。その結果 A_醐・(2’魎⊇旦巴(le・a)一〃・H1巴く@)H・(2’(左迎 警+÷晋+好[1−L・xp(一・・t) ×exp(κ(t)B’lHo(2}(克ρρ)12]Ez=0 (2.28) ただし,Bt=IBI2 をえる。しかし,(2.28)式も厳密に解くことは難し い。そこで11epρ]>1のときについて解析する。 またlep一β一元αとおいて,αor Oのときを考えると H・… (lep・)イ毒・xp(一α・)・xp[V’(β・一・/4)] したがって IH・…(lep・)1・=☆・xp(−2α・) 希(1−2α・) であり,またβρ>1であるから, 2κ(t)B「 exp[2κ(彦)B’/πβρコ=1+ πβρとなり,これらを(2.28)式に代入して整理すると 誓芸+÷晋+(K一÷)Ea−・(2・・29) を得る。ただし,
:二㌶蕊=β]}
(2.30) β一 U( Noe2 11一ω・m,。’1+、・/ω・)2 +(2V。e2 y/ωω2〃2ε。1+レ2/ω2)2]1/2 +(1一藷i。・、+ス/。,)}1/2 α一 c(・一藷i。・1+6/ω・)2+牒。・1≠編2]1/2
−(1一諜。・1+表/。・)}1/2 つぎに(2.29)式に変数変換 ぎ ≧竺10
レα=10 Lo=0.5 10 レ/ω=0,1 ρ=0.21m 5 ω偽Jo @4 =30 50 1.0 10 、100 0.5 5 300 0.1 0 1 2 3 4 5 ぎ ≧ 竺1.0 0.5 t[msec〕 (a)アンテナ電流特性 0 1 ’・2 3 (c)付着度数特性処=50
ヱ=α5
tu2mεO γ/th=住1 り“=100 50 10 0.1 4 5 t〔msecユ‘芸震} (2・・31)
を行なうと A __ 警+(一t+ブK・/i㎡頁1+警)▲一・ (2.32) となり,Whittakerの微分方程式に帰着する。したが って(2.32)式の一般解は,ノK2/2∼/K,−qとおけば S、−M,,。(ζ),Wq,。(ζ) (2.33)となる。ここでM,WはWhittakerの関数である.
ところでρ→。。すなわちζ→。。のときM−・。。,W→0 であるから物理的に意味ある解は,(2.31)式の逆変換 より脇一D
曝h) (2. 34)
また磁界は 1 ∂Ez2 H.P2=. ・ ∂ρ ノωμo D1’2VliliT,ρW6,。(元2㎡瓦ρ)一・rv,,。(ノ2㎡瓦ρ) 一∫ωμ。 (ノ2VK1ρ)1/2 (2.35) となる。すなわち(2.34),(2.35)式が領域(II)にお ・魁=5 10 ぎ ≧ 旦1・0 0.5 0.1 。 レα=10 り/ω=0.1 N。 e2 =0 ω2mεe O.3 0.5 0 1 2 3 4 −.. t〔msec〕 (b)電子密度特性 〔 ≧ 亘1・o −0.5 5 図一2非線形放射の受信電界 (d)衝突周波数特性 0.03. 0.05 0.1 t〔msec〕ける電磁界を与える。 一方,このときの領域(1)における電磁界は(2.19), (2.20)式と同様に
輪ωμ
Q〕石[H・1・・(le・・)+C・・(〃・ρ)](2・・36) H、,i− q°”°[H・・2・⑭+C刀(le・・)コ(2・・37) である。ここで係数C,L)はρ=aにおける境界条件 (2.24)式から決定され,その結果つぎのように与えら れる。 (4KlaW’一ト」2VlkT,W)Ho(2)(koa) 一ノ2∼/瓦α〃。WH、(2)(k。a) C=一 d (2.38) k。(元2、/Kla)3/2[ノ。(le。a)H、(2)(k・a) ωμ。ノ。 一ノ、(le・a)H・(2)(le・α)] 現象を現わすものであり,これらは非線形放射の一般 的傾向を示していると考えられる。しかし計算値は拡 散の影響を無視した上での第一次近似解であって厳密 に非線形放射現象を示すものではなく,厳密な解析に はより高次の近似が必要であるが,これらは複雑な非 線形微分方程式となって解析は難しい。 3. 実験的検討 1)= 4 (2.39) ただし=露=}(2・・4・)
したがって非線形放射の電磁界の第一次近似解が与え られた。さらに第二次近似解はE。−IE、21とおいて (2.12)式の解析を進めれぽよいが,これは複雑な非線 形微分方程式となって解法は難しい。図一2は(2.34), (2.35)式に基づいて計算した領域(ll)における受信電 界強度である。計算においてはa=・O.2mとし,電磁 波の周波数は2,450MHzとして実験に使用するマグ ネトロン発振器の発振周波数に合わせてある。 さて,図一2は第一次近似の受信電界であって厳密 な非線形現象を示すものではないが,放射電力の強 さ,電子密度および衝突周波数などの変化によって受 信信号は大きくひずむことを示しており,非線形放射 の一般的傾向を示していると思われる。すなわち, 図一2(a)はアソテナからの放射電力が小さいときはプ ラズマの発生がなく,したがって受信信号のひずみは ないが,放射電力が大きくなるとプラズマが発生して 送信信号はひずみを受けてくること,そして放射電力 が大きいほどプラズマ発生は顕著であることなどを示 していると考えてよい。図(b)は電離層などのようにプ ラズマが存在する空間から大電力マイクロ波を放射す る場合の非線形現象を示すものと考えられ,このとき は送信信号はより著しいひずみを受けることが示され る。図(c)は付着によって電子密度が減少するときの現 象を示し,また図(d)はプラズマ中に損失があるときの 3.1実験装置 宇宙空間のような気圧の低いふん囲気中では,アン テナからの大電力マイクロ波放射によるプラズマ発生 によって受信波形は著しいひずみをうけることが理論 的に導かれた。そこで実験的検討として,宇宙空間に 近似した装置を実験室内に製作し,プラズマ発生を伴 う電磁波の非線形放射現象を種々調べてみた。 実験装置を図一3に示す。装置内には反射による影 響をとり除くために電波吸収壁①をはりめぐらしてあ る。中央のベルジャ②内は排気装置で排気され,同時 にアルゴンガスが封入できるようになっている。その 中心部にユニポールアンテナ③が設置され,つぎに最 大1.5kWのマグネトロン発振器より発生した2,450 MHzのマイクロ波電力を水負荷減衰器を通して約100 Wの電力がアンテナから放射される。またアソテナ付 近で磁束密度最大lkGaussまで得られるコイル④を 本装置上下面に設置してある。さて放射されたマイク ロ波信号は送信アンテナから4波長程度離れた受信用 11200 @ ④ 、, .1:・:九〉・“い∴ . ’ゾ・ ・…・’ .・・こ・‘.・ .一..… 」言’:・’. ㌔宇二’ ’: @、1ゴ @”■ f・ ① ③ /② . ・’ O隅ー i 5°°一一 ム寸 ⑤\ Image−Plane ∼ Magnetron OSC㊥
2,450MHz,1.5kWmax 図一3実験装置 CRO (入力電力=80W, X軸0.5msec/cm, Y軸0.5V/cm) 図一4 マグネトロン発振器の出力波形アンテナ⑤で受信され,検波器で検波してオシロスコ ープで観測される。ところでAC50Hz,7kVの全波非 平溜整流波電圧をマグネトロソの陽極に印加してある ので,マグネトロン発振器の出力波形は図一4のよう になる。これは大気圧の場合の受信波形である。 3.2 実験結果 さてベルジャ内を排気し,アルゴソガスを封入して, 10i7 τ 言i°16 1015 送信用ユニポールアソテナから2.450MHz,約100W のマイク、ロ波が放射されると,アルゴソガス圧が0.08
∼8mmHgの範囲でアソテナ付近にはプラズマが発
生する。そのときの様子を図5(a)∼(d)に示す。圧力の 低い方がプラズマの発生が顕著であることが認められ る。このようにアソテナ付近にはプラズマが発生する が,このプラズマの電子密度測定にはダブルプローブ 法を用い,できるだけアンテナ付近の電磁波の擾乱を 少なくなるようにして測定した4)。 ところでプラズマ を発生させる大電 測定点 \ アフターグロー (b)1)=3.OmmHg (c)P=1.OmmHg 0 1・ 10i7 冨 言1・・6 .1015 2 3 t〔msec〕 (a)プラズマの電子密度 ■ 20 10 ■ 4 測定点 z=1.0 cm P=O.7mmHg : ・ ・ \ 5 1016 丁 旦 ≧二1015 1014 0 2 4 6 , (b)平均電子密度の分布特性 (入力電力=80W)8
ρ[cm] 測定点 P=5.Ocm z・=1.Ocm/
グ/
3.0 (d)P==0.5mmHg 図一5 アンテナ付近のプラズマ状態 (入力電力=100W) 40 80 120 入力電力〔W〕 (c)入力電力特性 図一6 カマイクロ波信号 は図一4のように周期100Hzのパ
ルス波で振幅変調 されているので電 子密度も時間的に 変化し,その測定 結果が図一6(a)で ある。またアルゴ ンガス圧,入力電 力の変化に対する プラズマ状態測定 のために時間平均 の電子密度を測定 して図一6(b),(c) に示してある。こ れらの測定結果を 検討してみると, 図一6(a)から信号 入射時には時間経 過とともに電子密 度は急激(指数関 数的)に増加する こと,図(c)から電子密度Nはexp
(入力電力)にだ いたい比例する, すなわちN・×exp (Eo2)であること などが得られ,理 論式(2.6)と比較 的よく一致してい るようである。ま た,図(b)の分布特 性はプラズマ状態(a)P=5.OmmHg (b)P=30.mmHg (c)P=2. OmmHg (d)P=1.OmmHg (入力電力=・80W, X軸0.5msec/cm, Y軸0.01V/cm) 図一7受信波形のひずみ 1.0 無放電(大気圧) (a) Bo=400gauss (b) Boニ600gauss 尊 亘 0.1 0.01 (c)B。ニ800gauss (d) Bo=1000gauss (入力電力=80W, P=0.8mmHg, X軸0.5msec/div, y軸0.01V/div) 図一9静磁界による受信波形のひずみ 一 烏一. 一● ●
一〆
1.0 0 1 2 3 4 t〔msec〕 図一8受信信号のひずみ(入力電力=80W) の発光の強さと一致しており,この場合も圧力の低い 方が発生するプラズマの電子密度も高いことがわか る。つぎにこのようなプラズマが発生したときの受信 アンテナに受信される受信波形を観測してみると図一7 (a)∼(d)のようになり,図一4の受信波形と比べてみると, プラズマの発生によって受信波形は著しくひずむこと がわかる。またプラズマの発生がないときの受信電界 強度に対する相対受信電界強度を測定した結果が図一 8である。このように受信波形のひずみは圧力が低い ほど著しいが,これは圧力が低くなるほど発生するプ3.0 52.0 1.0 P=O.2mmHg
,ノー㍉_:=
:・一一v’一’“”− P6’”一一 L6 冨 尽 陪1.4 一■一●一◆一●一’一一→一一ρ一●一・ Bo=O Gauss 戸一』S00 5 1.2 1.0 1 一■・“−e−一一●一一一t−・一● 2 3 一一_−600 800 2.0 冨 題 〉くLO 0 1 2 3 (a)入力抵抗 4 t〔msec〕ヘノ1
∠二_一一〉く一
〇.5 .一1.2 巳 題 1.0 0.8 0.6 (a)入力抵抗 4 一1.0 t〔msec〕 800 5 短・ (b)入力リアクタンス 図一10 プラズマ発生中のアンテナ入力インピーダンス (入力電力=80W) ラズマの電子密度が高いからであり,入力電力が大き いほど受信波形のひずみは著しいという実験結果など と合わせて検討してみると,図一7,図一8に理論との定 性的一致がみられる。またこの状態で静磁界を印加す るとプラズマ状態に不安定性が現われてくることが認 められ,同時に受信波形にはプラズマの不安定性によ ると思われる数kHzから数10kHzの周波数の振動が 現われてくる。そしてその振動は200∼800Gaussにお いて特に著しく,さらに強い静磁界(1,000Gauss程 度)では少なくなっている。なおこの振動はマグネト ロン発振器の発振不安定やその他の外的によるもので はないことが実験的に確認されている。 さらにプラズマ発生中のアソテナ入力インピーダン スを定在波法によって測定した結果を図一10,図一11に 示す。このようにアンテナ入力イソピーダンスはプラ ズマ発生によって大きく変化し,特に静磁界が印加さ れたときは静磁界の増加とともに減少しており,異方 性プラズマ中の線形の場合の研究結果5)と同様な結果 が非線形の場合にも得られることは興味深い。4.結
論 このように気圧の低いふん囲気中におかれたアンテ 1 2 3 4 5 t[msec〕 (b)入力リアクタンス 図一11 プラズマ発生中のアンテナ入力インピーダンス (入力電力=80W, P・・1.OmmHg) ナから大電力マイクロ波が放射されると,アンテナ付 近にはプラズマが発生し,信号の送信に大きな妨害を 与えることがわかる。またプラズマの発生による受信 波形のひずみやプラズマの電子密度の測定結果のいく つかは理論との定性的一致がみられた。しかし理論計 算は拡散の影響を無視した上での第一次近似解であっ て厳密に非線形現象を説明していないので,より高次 の解析が残された問題である。 一方,実験結果をまとめてみると ① 大電力マイクロ波をアソテナから放射すると,ア ルゴンガス圧0.08∼8mmHgの範囲でアソテナ付近に プラズマを発生し,この範囲では圧力の低いほどプラ ズマの発生が顕著であり,電子密度も高いこと, ②プラズマが発生すると放射波形は著しくひずみ, そのひずみは圧力,入力電力によって変化すること, ③そのとき静磁界を印加すると受信波にはプラズマ の不安定によるものと思われる数kHz∼数10kKzの 周波数の振動が現われること, ④プラズマの発生によってアソテナ入力インピーダ ンスは著しく変化すること, などが結論される。そしてこれらの非線形現象は宇宙 通信の大電力化等における重要な問題であるように思われ,本研究はこのような宇宙空間での通信障害に対 して基礎的資料を与えるものである。 参考文献 1)伊藤,下井,平出:プラズマ中の非線形伝搬について, 信学論(B),B−53,4,p.210(昭45−04). 2) V・A・Bailey:Some Nonlinear Phenomena in the ionosphere, Radio Science, J of Res, NBS/USNC− URSI, vol.69D, No.1 Jan 1965. 3) 0・E・H・Rydbeck:Electro・magnetic wave refrec・ tion from an oscillating, Collision・Free Magneto’ Ionic Medium, 同上. 4)E・O・Johnson and L Malter:AFIoating Double Probe Method for Measurement in Gas Dischar・ ges, Phys. Rev, Vol.80, No.10ct 1950. 5)伊藤,虫明:異方性プラズマ中のアンテナインピーダ ンス,信学論⑧,B−51,2, p.69(昭43−02). 6) 伊藤,武藤:プラズマ発生を伴う電磁波の非線形放射, 信学論(B)B−54,7,p.440(昭46−07). 7) 後藤:プラズマ物理学,p.71∼p.105共立出版.