• 検索結果がありません。

グループスーパービジョン経験者の変化のプロセスと要因に関する研究―成長を支える視点から―

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "グループスーパービジョン経験者の変化のプロセスと要因に関する研究―成長を支える視点から―"

Copied!
15
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本福祉大学社会福祉論集 第 126 号 2012 年 3 月 要 旨 スーパービジョンの目的は, スーパーバイジーである援助者の成長であり, 援助者が 成長することで利用者へよりよい援助ができるようになることである. 本研究では, スー パービジョンの定義を 「援助者の援助」 と位置づけ, 支持的なスーパービジョンを経験 することでスーパーバイジーにどのような成長があったのか, そのプロセスを示し成長 の促進要因を明らかにすることを目的とする. グループスーパービジョンの参加者に対 し, グループインタビューを行い, 定性的 (質的) コーディングを行った. 本研究の結 果, グループスーパービジョンを経験することで, スーパービジョンの場が安心できる 場として機能し, 促進要因としてルール, メンバーや事例, スーパーバイザーからの学 びなどが示された. そのベースには, 支えられ感があった. スーパービジョンの終了後, 実践の変化がみられ, スーパーバイジーからスーパーバイザーへ成長しようとしていた. これらを踏まえ, 成長を支える視点の必要性について述べる. キーワード:グループスーパービジョン, 支持的機能, 成長を支える

はじめに

スーパービジョンは, ソーシャルワーカーや介護支援専門員など対人援助の専門職 (以下, 「援助者」 という.) の養成において, 必須のものと考えられている. 社会福祉士の養成課程では 新カリキュラムへの移行に伴い, 相談援助実習において, 実習指導者と担当教員からの実習スー パービジョン1)が明確に位置づけられた. これから社会福祉士となりゆく者は, 相談援助実習の 際, スーパーバイジー (実習生) として実習指導者と教員の二者からスーパービジョンを受ける 〈研究ノート〉

グループスーパービジョン経験者の

変化のプロセスと要因に関する研究

成長を支える視点から

小松尾

(2)

ことを必須とした実習教育を受けていく. このように専門職が専門職を育てる過程で, スーパー ビジョンが活用される仕組みができた. このことは, 当初スーパーバイジーであった者が経験を 重ねるなかで専門職として成長し, そのうえでスーパーバイザーとしての役割を果たすことが求 められていることを意味している. しかし, スーパービジョンの実践状況については, 暗黙の了解のもとに行われるなど, 職場内 においても定着しているとは言いにくい状況にある. その原因として, 渡部 (2007) は, スーパー バイザーがいないことがひとつの大きな要因であると言っている. スーパービジョンの必要性については一致しているものの, 先行研究では, スーパービジョン 概念の曖昧さやスーパービジョン機能の不十分さを指摘するものが多い (村田 2010). スーパー ビジョンの概念そのものが曖昧であるゆえに, スーパービジョンの実践方法は, それぞれのスー パーバイザーによって異なっている現状がある. つまり, どのスーパーバイザーの教えを受けた かによって, その視点や具体的方法論が異なっており, 現場では, それらが混在し, それゆえに スーパービジョンの概念や方法論も曖昧なままになっているのが現状である. このようにスーパービジョンが現場に定着しにくい状況にありながらも, 現場の援助者は, 経 験年数を重ねることで次第にスーパーバイザーとしての役割を求められるような立場になってい く. 多くの援助者は, 自分自身がスーパービジョンを体験することなく, 数日間のスーパービジョ ン研修を受けただけで, スーパービジョンの実践を職場や地域の中で求められるようになってい る実態がある2). つまり, 座学やロールプレイで学んだだけでスーパービジョンの実践を求めら れ, スーパーバイザーの役割を求められているのである. 援助場面では, クライエントに対する援助方法だけでなく, 制度や社会など援助者個人の誠意 や努力などでは解決できない問題も多くあり援助者はジレンマを感じやすい状況にある (副田 2005). それに加え, 援助者としての経験を積むことで, スーパービジョンの実践を求められな がらも, 実践できないあるいは実践に自信がないというもうひとつのジレンマを抱えている援助 者の現状がある. スーパービジョンの機能には, 管理的機能, 教育的機能, 支持的機能の 3 つがあり, どの機能 を重要視するか研究者によって意見が分かれている. ニール・ソンプソンは 「スーパービジョン の焦点が, 仕事が行われているかどうかといった点に絞られてしまうと, かえって有害になって しまう」 「人々が信頼されており, 支えられており, 評価されていると感じられるよう援助する ことが, スーパービジョンが必要な理由である」 と, 管理的機能が重要視されすぎることに警鐘 を鳴らしている (ニール・ソンプソン 2004). スーパービジョンの名称を用いた組織管理として の抑圧や規制もありうるという指摘 (浅野 2011) もあり, スーパービジョンをどのように位置 づけ取り扱うかによって, スーパービジョンは全く異なるものとなる. また, スーパーバイザー とスーパーバイジーのスーパービジョン関係がうまくいかないと, スーパービジョンそのものが ストレスの要因となる (植田 2005) ことも指摘されている. スーパービジョンの方法には, 個人スーパービジョン, グループスーパービジョン, ピアスー

(3)

パービジョンなどがあり, スーパーバイザーが少ない我が国では, グループスーパービジョンが 一般的に実践されている. グループスーパービジョンのメリットとして, 複数のスーパーバイジー がいることによるグループダイナミクスの活用を図る (浅野 2011) ことやグループメンバーと の関係において自己覚知が深まること (塩村 2000) がある. デメリットとして, 他のスーパー バイジーが参加していることによる緊張感や葛藤など (浅野 2011) がある. スーパービジョンの目的は, スーパーバイジーである援助者の成長であり, 援助者が成長する ことで利用者へよりよい援助ができるようになることである. 援助者が利用者へよりよい援助が できるよう, 成長を促すことがスーパービジョンの最終的な目標であるならば, 成長を支える視 点が重要であり, 成長を支えるためのスーパービジョンの方法論を確立することが求められる.

研究目的

スーパービジョンの実践方法については, 統一されたものがあるわけではない. スーパーバイ ザーによって異なるスーパービジョンが実施されているのが現状である. したがって, 管理的機 能, 教育的機能, 支持的機能のどの機能を重要視して実践するのかも, スーパーバイザーによっ て異なっている. 本研究は, スーパービジョンの 3 つの機能のうち, 援助者の成長を支えるために, 支持的機能 に焦点を当て, 支持的スーパービジョンを経験した援助者がどのように変化していったのか, そ のプロセスと要因を明らかにすることを目的とする. 支持的機能の定義については, 図 1 にあるように, 支持的スーパービジョンをすべてのスーパー ビジョンの土台と位置づけ, そこで形成される対人援助専門職同士の信頼関係を基盤として, そ こからスーパービジョンの管理的機能や教育的機能が発現してくるという村田のものを採用する (村田 2010). つまり, スーパービジョンを 「援助者の援助」 と位置づけることとする.

研究方法

この研究に先立ち, A 県で実施したグループスーパービジョンの参加者とスーパービジョン の経験のない B 市の地域包括支援センターの社会福祉士に, スーパービジョンをどのようなも のと考えるか, スーパービジョン経験者がどのように成長したか, アンケート調査を実施した. また, グループスーパービジョンの参加者が提出しているふりかえり表と合わせて分析を行った. 図 1 スーパービジョンの構造:新たな枠組み 出典:村田久行 援助者の援助 p. 5 一部改編 管理的スーパービジョン 教育的スーパービジョン 支持的スーパービジョン (援助者の援助)

(4)

その結果, 当初はスーパービジョンに対し, 両者ともアドバイスや回答がもらえる場と認識して いたが, スーパービジョンの経験者は 「答えをもらえる場ではなくふりかえる場である」 と認識 が変化していた. グループスーパービジョンを受けることにより, 自分の実践をふりかえり, 自 分の実践の傾向に気づき, それを修正しようと努力して, 実践の場に還元していた. そしてその ように成長したことのキーワードとして 「支えられる体験」 が共通していた. 本研究はその結果を踏まえ, A 県で実施したグループスーパービジョンの参加者がどのよう に成長したのか, スーパーバイジーの変化や成長に何が影響しているのか, 成長を支える視点か らスーパーバイジーの変化のプロセスを明らかにし, 成長に影響を与えている要因を検証する. A 県において筆者が実施していたグループスーパービジョンの第 5 期生3)に対し, すべての回 が終了した 2010 年 1 月にグループインタビューを実施した. グループスーパービジョンの実施内容は表 1 のとおりである. 案内文書に 「支持的機能」 をベー スとしていることを明記し, 参加者を募った. 事例を用いて実施するが事例検討会ではないこと を説明し, そのことを了解したうえで参加の契約をしている. 月に 1 回の開催で, 1 クール 10 回である. このグループスーパービジョンの参加者の中から 4 名に, グループスーパービジョンのすべて の回が終了した 2010 年 1 月にグループインタビューを実施した. インタビューの対象者は以下 の表 2 のとおりである. 表 2 インタビューの対象者 性別 年齢 職 種 資 格 A 氏 女 50 代 主任介護支援専門員 社会福祉士, 主任介護支援専門員 B 氏 女 40 代 主任介護支援専門員 主任介護支援専門員 C 氏 女 50 代 主任介護支援専門員 主任介護支援専門員 D 氏 女 50 代 介護支援専門員 社会福祉士 表 1 グループスーパービジョンの実施内容 参 加 者 数 9 名 (男性 2 名, 女性 7 名) 参加者の職種 社会福祉士, 主任介護支援専門員等保健・医療・福祉の専門職 年 齢 20 代∼50 代 頻 度 と 期 間 メンバーは固定で, 毎月 1 回 2 時間程度実施する. 10 回で終了する (2009 年 3 月∼12 月) 具体的な内容 1 回目はオリエンテーションで, 支持的スーパービジョンの目的とルール等について説明 した. その内容に賛同し, 毎回参加できる人と契約した. 2∼10 回目は, メンバーの一人 が提出した事例をもとに実施した. 事例を用いているが, 焦点は利用者が抱える問題の解 決方法の検討ではなく, 「援助者 (事例提供者) の苦しみ・気がかり」 である. 毎回, 終 了後に, スーパービジョン中の自分をふりかえり, ふりかえりシートに記入する. 募 集 の 方 法 A 県社会福祉士会の会員と, 介護支援専門員の指導者4) に案内文書を送付し, 希望者を募っ た. その結果, 県内各地から年齢, 経験年数は異なるが, 支持的スーパービジョンを受け たいと意思表示した人が集まった.

(5)

インタビューの時間は 2 時間程度である. インタビューデータはすべてを逐語録にしたうえで, 分析を行った. 分析の手順は以下のとおり行った. ①インタビューデータのテープ起こし, ②データのコーディ ング作業, ③オープンコーディングから焦点的コーディングを行い, カテゴリー表を作成, ④研 究協力者による作業の点検, ⑤研究協力者の点検をもとにカテゴリーの修正. なお, ②∼⑤の作 業は常に繰り返された.

倫理的配慮

倫理的配慮として, 調査対象者に対して研究の目的, 方法, 意義, 匿名性の保持, 結果の公表 の方法等について口頭と文書で説明し, 調査協力への同意を得た.

結果と考察

本研究の結果と考察について, グループスーパービジョン前と経験中, 終了後に分けて説明を 行う. 1 【グループスーパービジョン (GSV) 前の状況】 グループスーパービジョン前の状況を示したのが表 3 である. 援助者は, スーパーバイザー的 役割を求められるという 「実践環境」 と, 「自分の実践の傾向」 の間で揺れ動き, 「グループスー パービジョンに期待」 して参加に至っていた. そして参加の動機づけのひとつとして, あの講師 のスーパービジョンを受けてみたいという 「目標とするワーカー像としてのスーパーバイザーの 姿」 があった. 表 3 カテゴリー表 (1) グループスーパービジョン (GSV) 前の状況 カテゴリー コ ー ド ( 一 部 ) 実践環境 他から相談を受ける立場で適切な助言ができない. ケアマネ資格取得後 10 年たっ てもいいアドバイスができない. 地域包括支援センターができてからの仕事で, 事例に慣れていない. 個人スーパービジョンの経験はない. 自分の実践の傾向 自分の相談の傾向は内容に入り込み過ぎる. 感情的な部分が出てくる自分の傾向. 一生懸命するだけではだめ. ついついケアマネの立場で考える現状があった. グループスーパー ビジョンへの期待 スーパービジョンで事例に慣れて自分も勉強したい. 冷静な部分, 客観的な部分 を持ちたい. 対応困難ケースを出してスーパービジョンを受けたい. 目指したい ワーカー像としての バイザーの姿 バイザーの話し方・受け答えに対してあこがれがあった. バイザーと接点を多く 持ちたくて参加した. バイザーの話を聞こう, お土産をもらおうという意識が違 う. 冷静だけど温かい眼差しと言葉使い.

(6)

<実践環境> 援助者のおかれている実践環境として, 「地域包括支援センターができてから援助職になった ので, 事例に慣れていない」, 「他から相談を受ける立場であるが, 適切な助言ができない」, 「スー パービジョンの経験はない」 など, スーパービジョンや事例検討会になじみがないながらも, そ の実践を求められる実践環境があった. これは対象者が, 社会福祉士や主任介護支援専門員であ ることも影響していると思われる. 特に平成 18 年の介護保険法改正以降, 地域包括支援センター の創設等により, 現場でスーパービジョンや事例検討会が求められるようになった. 研修を受け てスーパービジョンのことを 「知る」 ことと, 「実践できる」 ようになることは異なる. 援助者 はそのなかで, 求められる役割を必死に果たそうとしている状況がある. 社会福祉士や主任介護支援専門員の資格があれば, 援助技術が上達するわけではない. スーパー ビジョンを 「適切なアドバイスをすること」 と捉えると, 適切な助言をできない状況や環境は, 援助者自身を苦しめることになる. スーパービジョンを受けるきっかけはそれぞれ異なっているが, 共通しているのはアドバイス や助言ができないなどの求められている役割を実践できないという 「現場での苦しみや悩み」 で あった. 村田は, 支持的スーパービジョンでは, クライエントの苦しみを和らげ, 軽くする援助 が実現できない, つまり利用者を援助できないという援助者の苦しみに対して, 援助することが 求められると述べている (村田 2010). グループスーパービジョンを受ける前の援助者の状況は, 求められる援助を実践できないという苦しみのある実践環境であった. <自分の実践の傾向> まわりからスーパーバイザー的な役割を求められる立場であることを自覚している援助者は, 実際に自分の実践をどのように自己評価しているのか. 「相談内容に入り込み過ぎる傾向がある」, 「感情的な部分が出る」, 「一生懸命するだけではだめ」, 「ついついケアマネジャー (援助者側) の立場で考える」 など, 自分自身の実践については自己評価が低い傾向があった. スーパービジョンを求められ, 自分なりに実践しているが, 一生懸命取り組むだけでは効果も 上がらず, 自信がないことがうかがえる. このことはスーパービジョンの概念や機能が不十分な ままの研修を受けていることも影響している. また, スーパービジョンの研修では事例検討会5) の形式をとっているものも多く, 事例の対応方法や解決方法についてアドバイスができないと悩 む援助者の姿もある. つまり, 援助者はどのようなスーパービジョンが現場に必要であるのかよくわからないまま, 事例検討会とスーパービジョンを混同し, アドバイスをすることに行き詰りを感じ, その結果, 自分の実践の傾向について 「できていない」 ととらえていると考えられる. <グループスーパービジョンへの期待> スーパーバイザー的役割を求められる実践環境と実際の自分の実践をふりかえり, そのギャッ

(7)

プを埋めるためにもグループスーパービジョンへの期待がある. 当初の期待は, 「対応困難ケー スを出したい」, 「事例に慣れて自分も勉強したい」 などであった. 求められる役割と自分自身が 現在実践している内容とのズレに援助者は悩み, そのズレを少しでも小さくするために, スーパー ビジョンを受けることで実践内容が変わることを期待している様子がうかがえる. <目指したいソーシャルワーカー像としてのスーパーバイザーの姿> スーパービジョンを受ける前の状況として, 「実践環境」 と 「自分の実践の傾向」 が援助者の 悩みや苦しみの原因であった. スーパービジョンを受ける動機づけとして, その悩みや苦しみと, 「目指したいワーカー像としてのスーパーバイザーの姿」 があった. スーパーバイザーは社会福 祉士会や介護支援専門員協議会の対人援助技術の講義・演習の講師をしていた影響もあり, 援助 者は以前からスーパーバイザーを知っていた. 「スーパーバイザーと接点を多く持ちたい」, 「スー パーバイザーの話し方に対してあこがれがあった」, 「冷静だけど温かい眼差しと言葉使い」 など, スーパーバイザーを目指したいワーカー像, あるいは目標として見ている. 近寄りがたい存在のスーパーバイザーでなく, 身近で現場にいるスーパーバイザーだからこそ, 援助者自身が 「私もできるかもしれない」 と, 積極的になれたのではないか. 身近でちょっと頑 張れば近くなるスーパーバイザーの存在は, スーパービジョンを実践するにあたって大きな動機 づけになる. 新人のソーシャルワーカーであっても, 経験を積んだ援助者であっても 「あのワーカーのよう な技術を身につけたい」 という援助者の目標となる存在は, 援助者が専門職として成長するうえ で有効に働く. 援助者のめざすべき方向性を示し, 身近な手本となるスーパーバイザーの存在は 重要である. 2 【グループスーパービジョン (GSV) の経験】 グループスーパービジョンの経験による成長のプロセスと要因を示したのが表 4 である. 実際 のグループスーパービジョンではルールがあり, メンバーがそのことをしっかり守ることで, 何 でも言えて安心できる場として機能した. そのことを通して, 「メンバーからの学び」, 「事例か らの学び」, 「スーパーバイザーからの学び」 があった. 自分の事例や参加者の事例を通して, あ るいはスーパーバイザーとスーパーバイジーのやりとりを目の当たりにすることで, 受容や傾聴, 問いかけなど 「対人援助技術を具体的に学ぶ」 場となっていた. そのベースには, 支えられてい ることを実感する 「支えられ感」 があった. これらの要素が成長を促す要因になったと考えられ る. <グループスーパービジョンのルール> 研修会や事例検討会では, そのルールについて暗黙の了解のもと行っている場合も多くあるが, このグループスーパービジョンでは, 最初に約束事を提示し, それを守れる人だけが契約し, 参

(8)

加している. そのルールは, 「意見を否定しない, 非難しない」 を筆頭に 「自分の場合は……と 擬似例を出さない, 秘密を守る」 などがある. このルールは, 専門職にとって基本的なルールである. それゆえ, 多くの研修会では改めて示 さないことも多い. この当然のルールを改めて約束事として明確に示すことでルールが意識化さ れる. その結果, 参加者全員がルールを徹底して守ることにつながった. そのことが 「どんなこ とを言っても大丈夫」 という安心感につながった. このようにルールを示すことが 「支持的機能」 を明確に示すことにつながり, その結果グルー プスーパービジョンの場が安心できる場として機能していったと考えられる. <事例からの学び> このグループスーパービジョンは, 毎回一人のメンバーが事例を提供し, それを材料に進めて 表 4 カテゴリー表 (2) グループスーパービジョン(GSV)の経験 カテゴリー コ ー ド ( 一 部 ) グループスーパー ビジョンのルール 他の研修会では約束事をしないが, ここでは約束事があり, みんなが守る. 約束事 は意見を否定しない, 非難しない, 秘密を守る. 自分の場合は……と擬似例を出さ ない. 月に 1 回来られて事例の出せる人. どんなことを言っても大丈夫という安心 感がある. 職場を離れフリーで来られる良さ. いい意見を言われるとプレッシャー で少し落ち込むことがデメリット. 接点のない人との出会いがあったのがメリット. 事例からの学び 事例提出のやりとりをバイザーとする中で提出前に半分以上解決していた. 事例を 出すときこれでいいのかなという不安があった. 事例提供が最初は苦痛で, プレッ シャー. 事例を出すことでいろいろな視点に気がつく. 事例様式がない理由も知っ ているが, 様式があったほうがいい. 自分の事例だけでなく他の人の事例でも気づ きがあった. 自分ではできていると思っていたことが, 実は視点がずれていて援助 できていないことに気づいた. メンバーからの 学び メンバーの意見をもらう中で自分の傾向を再確認する. みんなの意見が聴けるのが メリット. メンバーも悩んでいることがわかると安心感が出る. 会を重ねるごとに メンバーの個性も出てきて視点の違い, その人らしさが出てくる. 違う職場, 違う 視点の話が新鮮, 参考になる. 回数を重ね意見をもらうことでメンバーに親しみを 感じてくる. バイザーからの 学び 聴いて受け止めて問いかけ (質問) をする, その視点に気づかされた. 知識だけじゃ なくこんな話し方がすごい大事な面接技術だと思う. バイザーの視点やまとめで納得 でき, 勉強になる. バイザーの言動・姿勢を見ることで自分の意識が変わり, 態度も 変わる. 本人が気づくような質問をしていく, 気づきを促す質問がすごいと思った 使える技術 としての学び 利用者の良さ・強さに気づいてそれを活かす援助方法に気づく. 人がよいことが援 助に悪影響になり, 自立を阻害することを感じた. 傾聴と同意は違うことを学んだ. ただ一生懸命なだけではだめなことに気づいた. 業務としてやるべきことばかり見 ていて, 聴くことをしてない実践に気づいた. 利用者の立場に立って考えることが 一番勉強になった. 支えられ感 バイザーは 「支持的機能」 と言っていたが実際それが実践されて前面に出ていた. 支えてもらってから意見を言われるとバイザーに全体的に支えられていると感じた. 安心感があるから自分の問題をちゃんと話ができる. 大変さを理解してくれている ことが言葉で伝わり安心できる. メンバーの意見に支えられている感じがする.

(9)

いく. 焦点は事例の対応方法ではなく, 事例提供者の気がかりな点である. 事例提供者は原則と して, 実施日の 1 週間前には, スーパーバイザーに事例を提出する. その際, わからない点や不 安な点があると, スーパーバイザーに相談して事例をまとめていく. 最初は 「事例を出すときこれでいいのかなという不安があった」 参加者も 「事例提出のやりと りをする中で半分以上問題が解決」 したり, 「事例を出すことでいろいろな視点に気がついて」 いった. 事例をまとめる作業を通して, スーパーバイザーから問いかけがあり, 事例提供者はそれにこ たえようとする作業を繰り返す. そのやりとりによって言語化が促されていった. 事例を発表する際も, 事例にかかわっていたとき, 事例をまとめたとき, 発表したとき, それ ぞれの思いを言語化し, 伝えることがスーパーバイザーから求められる. そのことでスーパーバ イジーはそのときどきの自らの実践を見直し変化を見つめ, 言語化し, 伝える作業を繰り返す. このことは自分なりのふりかえりではなく, スーパーバイザーを鏡として自分の実践を厳しく問 い直すことを意味している. このことを 「自分ではできていると思っていたことが, 実は視点が ずれていて援助できていないことに気づいた」 と表現した参加者もいた. このふりかえりは辛く厳しいものである. しかし, 他者の事例のやりとりや他者がふりかえる 場面をみることで, 自分のときと比較して一歩距離を置き, 冷静に考えることができる. 自分の 事例だけでなく, 他者の事例を通して客観的に学ぶことができ, より学びが広がり, 深まったと 考えられる. このように, 当初は事例のまとめ方など苦手意識があったが, 事例をまとめる作業を通して, 自分の実践をふりかえることを行い, 気づきへとつながっていった. このほか, 事例の書式につ いては, 定型化することで書きやすくなるという意見もあった. <メンバーからの学び> 批判, 非難しないルールがあることで, グループの意見は活発になる. 「メンバーの意見をも らう中で, 自分の傾向を再確認」 したり, 「メンバーも悩んでいることがわかり安心感」 を感じ たりしている. そのような中で, 「回数を重ねることでメンバーに親しみを感じる」 ようになる. 回数を重ねることで, スーパーバイジー同士の関係性が醸成されていった. そして, 「待つ」 こ とのできるメンバーの存在に支えられた. グループスーパービジョンでは他のスーパーバイジーが存在する. このことは緊張や葛藤が生 まれる要因ともなるが, 他者を通して学ぶことにもつながる. 悩み苦しんでいるのは自分だけで はないことに気づき, 他者を通して自分自身の姿を客観的に見るきっかけにもつながる. そのメ ンバーに支えられ学ぶことは, スーパーバイザーからの支えられ感とはまた異なる意味がある. また職場外のスーパービジョンのため 「接点のない人との出会い」 があったり, 「職場を離れ フリーで来られる良さ」 がある. その反面, 他の参加者からいい意見を言われると, プレッシャー を感じ落ち込むという意見もあった.

(10)

<バイザーからの学び> スーパービジョンの成否はスーパーバイザーとのスーパービジョン関係にかかっているといえ る. 参加者の多くは, スーパーバイザーのことを知っており, 目指したいワーカー像としてとら えていた. スーパーバイザーの態度は, 聴いて受け止めて問いかけ (質問) をすることである. 問いかけの内容は, 情報収集することや知りたいことではなく, スーパーバイジーの気づきを促 す問いかけである. スーパーバイジーにとって, 自分の悩みや苦しみを受け止めてもらえ, 気づ きを促す問いかけをされることで自分のふりかえりへとつながる. 今まで事例の対応方法や解決 方法に意識が向いていたスーパーバイジーにとってこの違いは大きな意味があった. そのため, スーパーバイザーの言動・姿勢を見ることで自分の意識が変わり学びにつながったと考えられる. また, 他のメンバーとスーパーバイザーとのやり取りをみることが, 参加者にとってはライブ スーパービジョンの役割を果たしたともいえる. <使える技術としての学び> 援助者であれば, 「聴く」 「問いかけ」 「待つ」 などの対人援助技術が必要であることは誰でも 知っている. しかし, うまく聴けない, あるいは自信がない, 待てないなど, それらの技術に対 し, 自信がないまま実践を積み重ねている状況がある. グループスーパービジョンの場では, さまざまな援助技術を活用し, 援助者の援助をしていく. スーパーバイザーはスーパーバイジーの話を聴き, 問いかけ, 答えるまで待つことを実践する. スーパービジョンのなかでスーパーバイジーはこれらの技術を援助される側の立場で体験する. 問いかけに答えることで言語化が促され, 聴いてもらえることで満足感が得られることを体験す ることで, 今まで知識として知っていた, あるいは実践できているはずの知識を使える技術とし て再び学び, 身につけていった. <支えられ感> このスーパービジョンは支持的機能をベースにしていることを明示し, そのことを了解したメ ンバーが参加している. したがって, どのように支持的機能を発揮するか, 厳しく問われている. 参加者は支えてもらってから意見を言われることで, スーパーバイザーに全体的に支えてもらっ ていると感じていた. また, 援助者の大変さを理解してくれていることが, 言葉や態度で伝わり 安心できた. 支持的機能は, スーパーバイジー自身が支えられていると感じられることが重要で ある. そのためには, 言葉や態度で伝えることが求められる. 支持的機能の評価は, スーパーバ イザー側が 「支えている」 と自己評価するのではなく, スーパーバイジー側が 「支えられている」 と感じられるかどうかが重要である. また, スーパーバイザーだけでなく, 他のメンバーも支持的態度を示すため, メンバーからも 支えられ感を感じていた. この支えられ感があるからこそ, 安心できる場となり, 事例やメンバー, スーパーバイザーからの学びが効果的につながった.

(11)

3 【グループスーパービジョン (GSV) 終了後の変化】 グループスーパービジョン終了後の変化を示したものが表 5 である. グループスーパービジョ ンを積み重ね, 学んだことを実践することで, 援助場面で 「実践が変わり」 そのことを通して, 現場に還元したい, 変えたいという思いが出てきた. このことは, 今までスーパーバイジーの立 場であった援助者が, 地域のなかで, スーパーバイザーとして実践に還元したいという思いや行 動へと変化していった. そのことが, いずれはスーパーバイザーへと成長し実践することを意識するようになった. 当 初の, どのように実践していいかわからない状況から, 具体的に何に取り組むべきか考え実行す ることで, スーパーバイザーとしての成長へつながっていった. <実践の変化> スーパービジョンを経験するまでは, アドバイスができないと悩んでいたが, グループスーパー ビジョンを経験することで, 援助者として成長するためにはアドバイスが必ずしも効果的でない こと, 必要でないことに気づいていった. アドバイスをする前に相手の話をよく聴き, 問いかけ をするような実践を心がけるようになった. そうすることで, 相手が話してくれるようになり, その体験が喜びにつながり, 実践内容が具体的に変化した. スーパービジョンを経験することで, 援助者の意識が変化し, 具体的な行動が変化し, 実践が 変わることにつながったと考えられる. <実践環境への働きかけ> スーパービジョンを経験するまでは, その実践を求められてもうまくできないという苦しい実 表 5 カテゴリー表 (3) グループスーパービジョン (GSV) 後の変化 カテゴリー コ ー ド ( 一 部 ) 実践の変化 検討する中で自分のやり方の癖がわかった. 面接場面で自分の都合で進めている自 分の傾向に気づいた. 自分の中では気づいていたつもりだったが実際自分の視点は 別のところに向いていたことに気づく. 現場に戻って相手が気づける助言ができれ ばと思っていたがそれができるようになった. 職員から相談を受けるときに冷静さ が持てるようになった. 待てるようになった. アドバイスではなく, 受け止めるこ とがまず大事. 援助者ではなく利用者が答えを出すことに気づく. 自分が引き出し を増やすことで援助技術を向上させたい. 実践環境への 働きかけ 指導ではなく聴くことがわかりあえるといい. 利用者への援助の質が上がる. たく さんバイザーがいたらいい. 気づきを促す話し方 (技術) を持った援助者が増える といい. 私みたいに 「ああ参加してよかった」 と言う人をたくさん作りたい. スーパーバイジーか らスーパーバイザー への成長 勉強不足でバイザーにはまだなれないと自分では思う. まだまだスーパービジョン を受ける立場でいたい. バイザーからはメンバーがバイザーに成長してほしいと言 われた. 地域でこの GSV を広げることでケアマネの質も上がっていく. 現場に戻っ て, 相手が気づける働きかけができるようになりたいと思っていたが, できるよう になった. 利用者本位の援助を広げたい.

(12)

践環境であった. グループスーパービジョンを経験することで, 自分たちの地域にもスーパービ ジョンを広げたいと意識が変化し, 実際に現場で取り組むための方法を考えるようになった. その根底には, 自分がスーパービジョンで支えられ成長したという実感があり, その体験した ことを地域に広げたいという援助者の思いがある. そのためにも, スーパーバイザーがもっと地 域にいたら, 現場がよくなるという思いも大きくなっていった. <スーパーバイジーからスーパーバイザーへの成長> それぞれの地域で, スーパーバイザーがほしいと思いつつ, 実際にスーパーバイザーがいない 現状のなかで, なんとか地域にスーパービジョンを広げようと援助者は考えるようになった. 地 域には悩み苦しんでいる援助者が数多くいる. スーパーバイザーから 「次はあなたたちがスーパー バイザーになる番よ」 と言われたことがきっかけとなり, どのように実践していくのか真剣に考 え, 実践方法を考えるようになった. 支持的スーパービジョンで自分が成長できたという実感も あり, それを現場で実践したいという思いへつながっていった. ただし, スーパーバイジーからスーパーバイザーへ成長したとしても, 自分自身がスーパーバ イジーでいられる場所はほしいと援助者は考えている. 熟達者になっても定期的なふりかえりは 必要である. そのためにもスーパーバイザーになっても, 定期的なスーパービジョンを受ける必 要がある.

まとめ

1 変化のプロセスと要因 本研究は, 支持的機能に焦点を当て, スーパービジョンを経験した援助者がどのように変化し ていったのか, そのプロセスと要因を明らかにすることが目的であった. 分析の結果, 実践環境 や自分の実践の傾向から悩み苦しんでいる援助者が, 支持的なスーパービジョンを経験すること により, 実践に変化が現れ, スーパーバイザーへと成長しつつあることが明らかになった. 図 2 に示すように, 成長を支える要因として 「ルール」 や 「メンバー」, 「スーパーバイザー」 の存在が相互に関係し, 現場で使える技術として体得していった. そのベースには, 「支えられ 感」 があり, その支えられ感があることで安心できる場として, スーパービジョンの場が機能し ていた. このことがスーパーバイジーからスーパーバイザーへの成長に大きく影響していると考 える. なぜ, スーパーバイジーは, 事例への解決方法へのアドバイスがなくても, 自分の実践をふり かえり, 援助者として成長していけたのか. グループスーパービジョンを受けるきっかけに, 実 践環境と自分の実践の状況のなかで, 苦しんでいる援助者の姿があった. 村田は, 苦しみを構造 化し, 客観的状況と主観的な思い・願い・価値観のずれが苦しみを生み, 苦しみを和らげ, 軽く するためには, 客観的状況を変化させる 「キュア」 と主観的な思い・願い・価値観が変わるのを

(13)

支える 「ケア」 の二つのアプローチがある (村田 1998) と述べている. スーパーバイザーは, スーパーバイジーのできていないところを指摘するのではなく, できて いないと思っているスーパーバイジーの苦しみに意識を向け, 言語化を促す. そうすることで, スーパーバイジーが支えられ感を体験し, 自分自身の実践をふりかえる余裕が出てくる. 他者か らの指摘ではなく, 自身の気づきによるものが実践の変化へとつながる. スーパーバイザーが支 持的でなければ, スーパーバイジーはふりかえりや気づきをすることなく, 自分を守るために防 衛をしてしまう. そうなると援助者としての成長は望めない. 成長のプロセスを図式化したものが図 3 である. 援助者はさまざまな苦しみを抱えながら実践 をしている現状がある. 支持的スーパービジョンを受けることで, 援助者は支えられ感を感じる ことができた. 支えられる体験を通して, 自分自身の実践が援助として成立しているかどうかふ りかえり, 援助者の意識と行動が変化していく. その結果, 利用者本位の実践や 「聴く」 ことや 「待つ」 ことができるようになった. そしてその実践を積み重ねることで援助者としての成長に つながっていった. 援助者として成長したらスーパービジョンは必要なくなるのではなく, 成長 することで新たな援助者の苦しみが出現する. このように, 援助者である限り, 図 3 のように循 環していくと考えられる. 図 2 グループスーパービジョン (GSV) 参加者の変化のプロセスと要因 ޣGSV ೨ߩ⁁ᴫޤ ޣGSV ߩ⚻㛎ޤ ޣGSV ᓟߩᄌൻޤ ታ〣 ⅣႺ GSV ߳ߩᦼᓙ ታ〣ߩ ௑ะ GSV ߩ⚻㛎 ࡔࡦࡃ࡯߆ ࠄߩቇ߮ ੐଀߆ࠄ ߩቇ߮ ࡃࠗࠩ࡯߆ ࠄߩቇ߮ ࡃࠗࠫ࡯߆ࠄࡃࠗ ࠩ࡯߳ߩᚑ㐳 ታ〣ⅣႺ߳ߩ ௛߈߆ߌ ታ〣ߩᄌൻ 㧳 㧿 㨂 ߩ ࡞ ࡞ ⋡ᜰߒߚ޿ ࡢ࡯ࠞ࡯௝ ߣߒߡߩࡃ ࠗࠩ࡯ߩᆫ ᡰ߃ࠄࠇᗵ ૶ ߃ ࠆ ᛛ ⴚ ߣ ߒ ߡ ߩ ቇ ߮ េഥ⠪ߩ⧰ߒߺ ࡯ 図 3 成長のプロセス 援助者の 苦しみ 支えられ感 意識と行動 の変化 援助者の 成長

(14)

2 成長を支える視点の必要性 なぜ支持的機能が援助者の成長の促進要因となるのか. スーパービジョンの目的は, 利用者へ よりよい援助ができるよう援助者が成長することである. 対人援助の専門職は自分自身をひとつ の道具として活用しながら援助をおこなう. 道具を使いこなすためには, その長所や短所を理解 し, それを活かしながら使いこなすことが求められる. つまり, 道具の熟知と手入れが必要であ る. その道具を手入れし磨くための手段が自己覚知である. 援助者には自己覚知が欠かせない理 由がそこにある. 自分自身の姿を過不足なく正当にふりかえるための方法のひとつとしてスーパー ビジョンがある. 渡部は, 自分自身をふりかえるためには, 信頼ができて, 批判されないという保証がある相手 に対して可能になると述べている (渡部 2007). 自分自身の実践をふりかえり, 成長するために は, まず受容され, 支えられることが必要である. 支持的な関係性がうまれることではじめて, 指導や教育を受け入れられるようになる. そのため, スーパーバイザーには, まず成長を支える視点をもつことが求められる. そのうえ で管理的・教育的視点を加えていく. スーパーバイジーのもつ力をアセスメントし, どのような スーパーバイズが適切であるか, 見極める力が求められる. そして, 支持的態度の実践, ルール の徹底, スーパーバイジーの実践力を見極めたスーパービジョンの実施が求められる. 3 今後の課題 今回の研究結果から支持的機能が援助者の成長に効果的であることが示された. 今回の調査対 象者は人数が少なく, 一般化するにはもっと多くの検証や, 支持機能を中心としていないスーパー ビジョンの参加者との比較も必要であろう. また, スーパービジョンでは管理的機能や教育的機能も必要である. 支持的機能だけ発揮すれ ばよいわけではない. 3 つの機能が効果的に機能するためのスーパービジョンの検討が必要であ る. また, 支持的機能をベースにしたスーパービジョンの実践のための方法論の確立も今後求め られる. 本稿は, 2010 年度日本社会福祉教育学会第 6 回大会 (大会テーマ 「社会福祉専門職養成教育 における基礎教育は如何にあるべきか−教養教育見直しの機運の中で, あるべき姿を探る−」 2010 年 9 月 4 日∼9 月 5 日 於:金沢工業大学, アパ・ホテル金沢駅前) において 「援助者への スーパービジョンのあり方に関する一考察−グループインタビューからみた支持的機能−」 と題 して, 筆者が報告した内容に, 若干の説明と考察を加えて文章化したものである. 注 1 ) 実習指導者になるには, 社会福祉士の資格取得後 3 年の相談援助の経験に加え, 「社会福祉士実習指 導者講習会」 の受講が必要である. その講習会では, 実習スーパービジョンに関して, 講義と演習を合

(15)

わせて 7 時間となっている. 実習指導者のおこなう実習スーパービジョンの特徴として, ①実習契約に 基づいて行われる, ②実習指導者と実習生との間で実施される, ③すべての実習生に対して行われる, ④定期的に, また必要に応じて随時行われる, ⑤利用者ならびに実習生の権利擁護に着目する, ⑥養成 校の行うスーパービジョンを連動する, の 6 つがある. 2 ) 例えば, 介護保険の分野では, 主任介護支援専門員や地域包括支援センターの職員等にスーパービジョ ンの実践が求められている. 主任介護支援専門員研修では, 対人援助者監督指導 (スーパービジョン) を, 講義 6 時間, 演習 12 時間受講する (その他の講義を含め, 全体で 64 時間以上の講義・演習となる) ことで, スーパービジョンの実践を求められるようになる. また, その研修内容についても, スーパー ビジョンの全過程を体験するものではなく, その多くは理論学習とスーパービジョンの一部のロールプ レイに留まっている. 3 ) このグループスーパービジョンは, 2005 年から 10 回 1 クールで約 1 年かけて実施している. 5 年目 ということもあり, 参加者はスーパーバイザーのことや実施される内容についてある程度の予備知識を 持ったうえで参加していた. 4 ) A 県では, 介護支援専門員の実務研修・現任研修・主任介護支援専門員の研修を担う講師を養成する ために, 指導者研修を開催している. その指導者研修会を受講し, 研修会講師として活動している指導 者に対して案内した. 5 ) 副田は事例検討会を 「特定のケースの記録情報をもとにその介入方法を評価検討し, 今後の介入方法 を学習するためのもの」 と定義している (北島他 2002). スーパービジョンは事例検討の形をとって行 うことも多いため, 混同されがちであるが, 事例検討会とスーパービジョンはその焦点が明らかに異なっ ている. 参考文献 渡部律子編著 (2007) 基礎から学ぶ気づきの事例検討会 中央法規出版. 村田久行 (2010) 援助者の援助−支持的スーパービジョンの理論と実際− 川島書店. 副田あけみ (2005) 社会福祉援助技術論 誠信書房. ニール・ソンプソン (2004) ソーシャルワークとは何か 晃洋書房. 浅野正嗣編 (2011) ソーシャルワーク・スーパービジョン実践入門−職場外スーパービジョンの取り組 みから− みらい. 植田寿之 (2005) 対人援助のスーパービジョン 中央法規. 塩村公子 (2000) ソーシャルワーク・スーパービジョンの諸相 中央法規. 村田久行 (1998) 改訂増補ケアの思想と対人援助 川島書店. 相澤譲治 (2005) 福祉職員のスキルアップ−事例研究とスーパービジョン− 勁草書房. 北島英治他編著 (2002) 社会福祉士養成テキストブック 2 社会福祉援助技術論 (上) ミネルヴァ書房. 佐伯胖 (1995) 「学ぶ」 ということの意味 岩波書店. 佐藤郁也 (2008) 質的データ分析法―原理・方法・実践 新曜社. 社団法人日本社会福祉士会編 (2008) 社会福祉士実習指導者テキスト 中央法規. 村田久行 (1999) 在宅ケア・悩みの相談室 中央法規. 小松尾京子 (2011) 「2010 度社会福祉実習教育研究センター年報第 8 号」 日本福祉大学 pp. 71−79. 中田直美 (2008) 関西学院大学研究紀要 「公的介護保険におけるスーパービジョンの現状と課題−主任 ケアマネジャーのインタビュー調査から−」. pp. 1−10 日本ケアマネジメント学会 (2009) 「介護支援専門員に対するスーパービジョンのあり方に関する研究調 査報告書」.

参照

関連したドキュメント

前章 / 節からの流れで、計算可能な関数のもつ性質を抽象的に捉えることから始めよう。話を 単純にするために、以下では次のような型のプログラム を考える。 は部分関数 (

これはつまり十進法ではなく、一進法を用いて自然数を表記するということである。とは いえ数が大きくなると見にくくなるので、.. 0, 1,

点から見たときに、 債務者に、 複数債権者の有する債権額を考慮することなく弁済することを可能にしているものとしては、

ているかというと、別のゴミ山を求めて居場所を変えるか、もしくは、路上に

 親権者等の同意に関して COPPA 及び COPPA 規 則が定めるこうした仕組みに対しては、現実的に機

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

賠償請求が認められている︒ 強姦罪の改正をめぐる状況について顕著な変化はない︒

信号を時々無視するとしている。宗教別では,仏教徒がたいてい信号を守 ると答える傾向にあった