99mTc-MIBIの集積した
気管支カルチノイドの一例
山梨医科大学 放射線科 白須昌代 小泉潔 アリ・S・アルバブ
市川智章 山口元司 荒木力
同 第二外科 鈴木章司 保坂茂 吉井新平 橋本良一
同 第二内科 西川圭一 小澤克良
同 第二病理 逸見明博
はじめに 99mT・−MBI(H,xaki、・2−m,th。。y・2・ isobuty1 isonitorile)は、本来心筋血流を評 価するために開発された薬剤であるが、同 じく心筋血流評価に用いられる201Tlと同 様に腫瘍での集積が報告されている。した がって、核医学的手法による腫瘍イメージ ング検査において、その性質から201Tlと 同等以上の診断能を期待される医薬品であ る。 今回我々は99mTc−MIBI腫瘍シンチグラフイ ーにおいて、明らかな集積のみられた気管 支カルチノイドの症例を経験し、その集積 機序について考察を加えたので報告する。 1.症 例症例:57歳 女性
主訴:胸部異常陰影精査 現病歴:平成6年5月の検診で胸部X線 写真上、異常陰影を指摘され、当院第2内 科受診し精査のため入院となった。 既往歴:特記すべきことなし 患者背景:タバコ(一) アルコール(一) 入院時現症:異常なし ゜ 入院時検査成績:呼吸機能も含め、特に 問題なし 胸部単純X線写真 正面像(図1):右 第2弓のシルエットサインが陽性で、右中 葉に無気肺あるいは何らかの病変の存在が 疑われた。胸部CT(図2、3):単純CTでは右
下肺静脈中枢部に接して直径22mmの石灰 化を伴う腫瘤影がみられ、造影によりその 腫瘤は比較的強く造影された。 201T1シンチ(図4):201Tl 222MBq静 注投与3時間後に後期像を撮像したが、腫 瘤に相当する部位への集積ははっきりしな かった。 99mTc・MIBI(図5):99MTc−MIBI 600MBq静注の直後より早期像を撮像し、 4時間後に後期像を撮像したところ、腫瘤 に相当する部位に集積が認められた。無気 肺の部位にも早期像で集積を認めたが、後 期像ではぬけてきていた。 気管支鏡:中葉枝を完全閉塞する腫瘤を 認め、同部の生検の結果、aden㏄arcinoma と診断された。 精査の結果より、右中下葉切除がおこな われた。 肉眼的所見:腫瘤は3xlxl cmで気管支 内腔ヘポリープ状に突出していた。 組織学的所見:クロモグラニン染色で分 泌穎粒の染まりを認めた。 電顕写真上、ミトコンドリアの有意な増加 は認めなかった。一11一
E.考察 99mT,・MIBI(H,xakis−2・m,th。xy−2・ isobutyl isonitorile)は、心筋血流を評価す るために開発されたTc製剤であり、201Tl と同様に腫瘍での集積が報告されている。 腫瘍イメ・・一一ジングとしての比較については、 (99mTc・MIBIの集積についての報告はまだ 少ないけれども)201Tlで集積のみられる 腫瘍にはほぼ同様に99mTc−MIBIも集積を認 めるといわれている。さらにそのsensitivity については99mTc,MIBIが82.3%となってお り、201Tlの76.4%をやや上回っていると の報告もある。また集積機序については、 99mTc・MIBIは受動拡散によるとされ、能動 輸送を介する201Tlとは異なっている。さ らに、両者とも血流を反映する点は共通し ているが、99mTc・MIBIはその取り込み、保 持に関して、細胞の膜電位、特にミトコン ドリア膜の陰電荷との相互作用が重要な factorとされ、ミトコンドリアの関与が報告 されている。 今回の症例において、99mTc−MIBIの集積は みられたが201Tlの集積がみられなかった ことは、この肺腫瘤が典型的な肺癌とは異 なる、ということを思わせる。99mTc−MIBI が集積したことについては、カルチノイド が一般的にhypervascularな腫瘍であること から、その豊富な血流に比例して99mTc・ MBIが集積したと考えられたが、これのみ では同様に血流に比例して集積するといわ れている201Tlとの集積の差を説明するこ とができない。そこで99mTc・MIBIは、ミト コンドリアの豊富な細胞に多く集積するこ と、また、カルチノイド腫瘍がミトコンド リアを多く含む腫瘍のうちのひとつである こと、などから我々は今回の99mTc−MIBIの 集積は本症例が多量のミトコンドリアを含 んでいたためと推測した。しかし、電顕写 真上、本症例のミトコンドリアの数につい ては有意な増加を認めなかった。これらの ことから、99mTc−MIBIの集積は血流および ミトコンドリアの数に比例するだけでなく、 ミトコンドリア膜の活動電位の増大、すな わち活動性にも関連しているのではないか と思われた。 結 語 1 99mTc’MBIが集積し病理組織からカル チノイドと診断された肺腫瘍の1例を経験 した 2 自験例においては 99mTc・MBIの集積 は認めたものの201Tlでの集積は認めず 通常の肺癌とは違う集積パターンを示し 3 99mTc−MIBI野集積には血流のみではな く腫瘍細胞内のミトコンドリアの活動性も 重要なfactorとなっていることが考えられた ■文献 1)Akutolun C,Bayhan H,and KirM:Clinical experience with Tc・99m MIBI imaging in patients with malignant tu皿ors:preliminary results and comparison with Tl・201. Clin Nucl Med 17:171−176,1992. 2)Hassan IM,Sahwei1 A,Constantinides C,et al :Uptake and kinetics of Tc・99m Hexakis 2− methoxy isobutyl isonitri le in benign and malignant lesions in the lungs. Clin Nucl Med 14:333−340,1989 3)Desai SP,and Yuille DL:Visualization of a recurrentcarcinoid tumor and an occult distant metastasis by Technetium・99m−Sestamibi.J Nucl Med 34:1748・1751,1993. 4)Sutter CWJoshi rvll,and Stadalnik RC: Noncardiac Uptake of Technet.ium・99m MIBI. Seminars in Nuclear Medicine 24:84・86,1994 5)池上 匡,杉山正人:腫瘍シンチグラフィ 99mTc・MIBI検査の実践.映像情報:1059− 1062,1994. 6)橋本 順,久保敦司:テクネシウム標識心 筋血流製剤による心筋イメージング.臨床 放射線38:1653−1662,1993.