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研究会推薦博士論文速報

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Academic year: 2021

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(1)特集. 研究会推薦博士論文速報. ★. ★. ★. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. 編集にあたって 松崎 公紀:高知工科大学.  情報処理学会誌では,学生の学位論文の成果を迅速に.  博士論文の研究内容は専門的なものとなるが,それを. 社会に紹介することを推進している.「研究会推薦博士. 読者に分かりやすく紹介するため,単に博士論文の概要. 論文速報」は,情報処理の各研究分野をカバーする約 40. とするのではなく,研究背景を含めた研究紹介となるよ. 研究会の主査の推薦により,優れた博士論文の研究成果. う各著者に執筆を依頼した.また,読者の理解を助ける. を読者に紹介するものである.2008 年 6 月にその最初. ための図・キーフレーズ・推薦文・著者からの一言を継. の特集が企画され,本特集は第 6 期目となる.速報性を. 続して含めるようにしている.. 高めることを狙い,特集間を少し詰めて企画した..  本特集が,読者にとって各研究分野の最新研究動向に.  本特集では,2010 年 4 月から 2011 年 3 月までの博. 関する理解と今後の展望を考える上で役立つことを願っ. 士論文を対象として各研究会の主査より推薦された合計. ている.最後に,多大なご支援ご協力をいただいた各研. 37 本の優れた博士論文について,その研究内容を紹介. 究会の主査の方々,またご執筆いただいた著者の方々に. する.コンピュータサイエンス領域からは 16 本,情報. 厚くお礼を申し上げたい.. 環境領域からは 8 本,フロンティア領域からは 13 本の 論文がそれぞれ推薦された.. 262 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. (2012 年 1 月 19 日).

(2) ★ ★ ★ ★ ★. 特集. 研究会推薦博士論文速報. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. 氏名. ★ ★ ★ ★ ★. 学位論文題目. 研究会 DBS. 山本 祐輔. ウェブ情報の信憑性分析に関する研究. DBS. 鄭 容朱. A Study on the Evolution and Emergence of Web Spam. DBS. Djelloul Boukhelef. A Study on Complex Query Processing in Structured Peer-to-Peer Overlays. DBS. 服部 昇. A Study on Schema-Based Requirements Validation and Allocation for Information Systems. SE. 熊澤 努. 高信頼性ソフトウェアシステムの実現のためのモデル修正技術に関する研究. SE. 塩谷 亮太. 面積効率を指向するプロセッサの研究. ARC. 間瀬 正啓. マルチコアプロセッサにおける C プログラムの自動並列化と低消費電力化に関する研究. ARC. 清水 正明. Heterogeneity-transparent Operating System Structures for High Performance Computer Clusters. OS. 吉田 哲也. CPU の仮想化に着目した仮想マシン技術の応用に関する研究. OS. 奈良 竜太. Scan-based Attacks against Cryptography LSIs and their Countermeasure. SLDM. 李 蓮福. エラートレース解析に基づく VLSI 設計のデバッグ支援. SLDM. 堀江 倫大. Tool Support for Modularized Documentation at the Design and Implementation Phase. PRO. 水島 宏太. Packrat Parser 生成系における空間計算量の改善手法. PRO. 松原 豊. 組込みリアルタイムアプリケーション統合のための階層型スケジューリング. EMB. 斎藤 卓也. 高性能なヒューマノイド・ロボット用総合プラットフォームに関する研究. EMB. 五味 愛. Human-oriented Browsing and Retrieval of Image Collections. HCI. 土田 貴裕. 議論内容の獲得と再利用に基づく知識活動支援システムに関する研究. GN. 宮部 真衣. 機械翻訳を介した多言語間コミュニケーションの高信頼化に関する研究. GN. 藤井 彩恵. Range Free Trajectory Estimation on Mobile Ad Hoc Networks. MBL. 封威. ネットワーク利用効率向上のための資源予約方式に関する研究. MBL. 勝間 亮. A Study on Maximizing k-coverage Lifetime of Wireless Sensor Network. MBL. 松田 隆宏. Security Notions and Generic Constructions of Chosen Ciphertext Secure Public Key Encryption Schemes. CSEC. 森 信一郎. 測位を利用したサービス技術に関する研究. CDS. Michal Ptaszynski. Affect Analysis of Textual Input Utterance in Japanese and Its Application in HumanComputer Interaction. NL. 村脇 有吾. Automatic Acquisition of Japanese Unknown Morphemes. NL. Christian Nitschke 武富 貴史. Image-based Eye Pose and Reflection Analysis for Advanced Interaction Techniques and Scene Understanding 拡張現実感のためのランドマークデータベースに基づくカメラ位置・姿勢推定の高速化と高 精度化に関する研究. CVIM CVIM. Aesthetic Quality Classification of Photographs. CVIM. 山下 隆義. 画像局所特徴量を用いたオンライン学習による物体追跡と行動認識に関する研究. CVIM. Source Separation of Musical Instrument Sounds in Polyphonic Musical Audio Signal and Its Application Raczynski, Stanislaw Harmonic acoustical models and polyphonic probabilistic musicological models applied to Andrzej multiple pitch transcription of musical signals. MUS MUS. 西村 良太. 人間同士の対話現象を組み入れた音声対話システムの研究. 橋本隼一. A Study on Domain-Independent Heuristics in Game-Tree Search. GI. DAO Vinh Ninh. A 3D Acquisition Technique in Dynamic Environments Using Structured Light Patterns. EC. Muhammad WANNOUS. Development of a Web-Based Laboratory for ICT Online and On-Campus Courses, and Linking it with a Collaboration and Learning Environment Estimating learners' impressions of difficulty level for learning content from their nonverbal behaviors in e-Learning. 中村 和晃. フロンティア領域. 西山 正志. 糸山 克寿. 情報環境領域. A Study on Privacy Preserving Query Processing for Relational Databases on the Internet. コンピュータサイエンス領域. Hasan Kadhem. SLP. CLE CLE. 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 263.

(3) ★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. A Study on Privacy Preserving Query Processing for Relational Databases on the Internet. ★. 基 応 専 般. 特集. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. DBS. (邦訳:インターネット上のリレーショナルデータベースに対するプライバシを保護した問合せ処理に関する研究). Hasan Kadhem. ★キーフレーズ. ィ. [背景]オープンな環境におけるデータベース検索をセキュ アに [問題]関係データベースのプライバシ保護検索. Multivalued Order Preserving Encryption Scheme (MV-OPES). • – X1 < X2 < X3 < < Xn – Ek(X1) < Ek(X2) < Ek(X3) <. [貢献]順序保存暗号化法に一対多写像を導入し,セキュリ ティを改善. • V1 = V2 •.  情報セキュリティ,情報プライバシの重要性が急速に増し ている.特に,クラウド環境では,データベースがインター. Ek(V1). Dmin. Ek(V2) Dmax. ネットなどオープンな環境に置かれることがあるため,デー タのプライバシを保護したまま,問合せを行う「プライバシ. . < Ek(Xn). •. Random BDmin. BDMax. BDmin+1. BDMax+1. 保護検索」が重要である.このため本研究ではリレーショナ ルデータベースを対象としたプライバシ保護検索に関する研. の大域的な順序が保存されているため,攻撃者が何度も問. 究を行った.. 合せを発行できるような環境では,その特徴からセキュリ.  まず,リレーショナルデータベースの数値属性を対象とし. ティが破られる可能性がある.このため,数値属性の定義. た新たな暗号化方式 MV-OPES(Multivalued Order-Preserving. 域をいくつかのパーティションに分割し,そのパーティシ. Encryption Scheme)を提案した.既存の暗号化方式である順. ョンの順序を入れ替えることにより,さらに安全性を高め. 序保存暗号化法(OPES; Order-Preserving EncryptionScheme). た MV-POPES(Multivalued-Partial OrderPreserving Encryption. は,数値の大小関係を保存したまま数値を別の分布に写像す. Scheme)を提案した.パーティションの順序がランダムにな. ることにより,暗号のまま問合せ処理を可能とする技術であ. るため,従来手法に比べてより安全である.問合せ性能につ. る.しかしながら,1 つの値が必ず別の 1 つの値に写像され. いては,従来手法(MV-OPES)に比べて落ちてしまうが,パ. るため,頻度に基づく攻撃により容易にセキュリティを破ら. ーティションのランダム化に制約を設けることによって改善. れるという問題があった.このため,本研究では,1 つの値. 可能であることを示した.. をある一定の範囲内の任意の値にランダムに写像する手法を. (2011 年 12 月 7 日受付). 提案した.値の大小関係は保存されているものの,1 つの値 が複数の値に写像されるため,オリジナルの OPES の欠点は 克服される.さらに,MV-OPES では,複数の関係表の結合 演算やその他の多くの関係演算を実現可能である点が特徴で ある.  MV-OPES は OPES に比べて安全ではあるものの,暗号文 推薦研究会:データベースシステム 推薦文:本論文では,クラウドなどオープンな環境におけるデータ ベースを対象に,新たなプライバシー保護検索のためのフレーム ワークと問合せ処理方式を提案している.著者は,本論文に関する 研究発表で 優秀若手研究賞(iDB Workshop 2010),学生ベストペー パ(KMIS 2010)を受賞しており,国際的に高く評価された研究と して推薦する.. 264 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(工学) 大学:筑波大学. 著者からの一言. It was really excited to do rese arch and pursue Ph.D. program at KDE lab. The enviroment for research is excellent. The main difficulty I have encountered in completing the Ph.D. prog ram was the time limit ation s to purs uing the rese arch goal s. My visio n is to exte nd my exis ting work to ensu re secu rity and privacy of data in cloud envir onments..

(4) ★ ★ ★ ★ ★. 特集. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. 学位論文題目. ウェブ情報の信憑性分析に関する研究. ★. 基 応 専 般. DBS. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 山本 祐輔:京都大学大学院 情報学研究科 特定助教. ★キーフレーズ. [背景]玉石混淆のウェブ情報 [問題]ウェブ情報の信憑性 [貢献]社会学とデータ工学を横断した信憑性指向の情報検 索の提案  今日,ウェブ情報は検索エンジン等を通じて誰でも簡単に 取得できることもあり,ウェブはテレビや新聞よりも重要な 情報メディアとして認知されつつある.しかし,ウェブ情報. るためのモデルを提案した.提案モデルでは,任意のウェブ. の質が既存のメディア情報のように発信の前段階で検証され. 情報の信憑性評価を行うために,評価対象のウェブ情報とそ. ることはほとんどない.それゆえ,ウェブ情報のすべてが正. の関連情報を何らかのデータの対で表現し.データ対間のサ. 確であるとは限らない.一方で,ウェブを利用する多くのユ. ポート関係の強さを分析することで,ウェブ情報の信憑性を. ーザがウェブ情報はある程度信用できると感じているとの調. 評価する.. 査報告もある.ユーザが信憑性を意識せずにウェブ情報を取.  ユーザや対象となっている情報によって異なる信憑性を評. 得した場合,誤った情報を鵜呑みにしてしまう可能性がある. 価するためには,情報の信憑性判断において,ユーザがど  ユーザが安心してウェブ情報の検索・閲覧を行うためには, のような指標を重視しているかを知る必要がある.そこで, ウェブ情報の信憑性を分析する機構やユーザがウェブ情報の. 2 つ目の研究課題として,ユーザの検索結果に対する信憑性. 信憑性を判断するための支援機構が必要となる.本研究では, フィードバック情報をもとにユーザの信憑性判断モデルを推 社会心理学分野とデータ工学分野を横断し,信憑性指向の情. 定し,それを用いてウェブ検索結果を対話的に再ランキング. 報検索・閲覧のための信憑性分析方法に関する議論をするこ. する検索システムについて提案した.. とを目的としている..  信憑性が高いウェブ情報を獲得するために,さまざまな判.  本研究における研究課題を図に記す.ウェブ情報の信憑性. 断情報をもとに閲覧しているウェブ情報の信憑性判断を行い. の分析が必要になるケースの 1 つは,検索エンジンを通じて. たいケースもある.しかし,現状では信憑性の判断情報を効. 情報を検索しているケースである.信憑性の評価観点は,ユ. 率的に収集することは難しい.そこで,3 つ目の研究課題と. ーザや検索対象の情報の種類によって異なる.しかし,既存. して,センテンス形式で表された主張・意見の信憑性を判断. の検索エンジンのランキングは検索ワードとの適合性やウェ. するための情報を,ウェブ情報の集約によって収集・提示す. ブ情報の人気度に焦点が当てられている.それゆえ,既存の. ることでユーザの信憑性判断を支援するシステムを提案した.. 検索エンジンでは信憑性の高いウェブページを効率良く探す ことは難しい.そこで,1 つ目の研究課題として,集合知的 アプローチによってさまざまなウェブ情報の信憑性を評価す 推薦研究会:データベースシステム 推薦文:本論文では,社会心理学の知見を取り入れ,ウェブ情報検 索分野で着目されてきた適合性や人気度とは異なる信憑性という尺 度に着目した分析モデルおよび情報検索・閲覧システムを提案して いる.これにより,ユーザは安心して信憑性の高い情報をウェブか ら獲得できるようになり,国際的にも評価された論文として推薦 する.. (2011 年 11 月 29 日受付) 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(情報学) 大学:京都大学. 著者からの一言. 1 年目は,希望に満ちあふれた研. 究を夢想.2 年目は,積極的 に論文投稿をするものの研究成果が 出ないことに焦る.3 年目 は,研究計画と現実とのギャップに苦 しむ……という博士生活 でした.その過程で色々なことを学 び,考えることができました. 私にとって学位は決して足の裏の 米粒ではなく,これからの人 生の大きな糧になったことは間違い ありません.. 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 265.

(5) ★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. A Study on the Evolution and Emergence of Web Spam. ★. 基 応 専 般. 特集. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. DBS. (邦訳:ウェブスパムの進化と出現に関する研究. 鄭 容朱:楽天技術研究所 アソシエイト. ★キーフレーズ. [背景]ウェブ検索とウェブスパム [問題]リンクスパムの分布と進化 [貢献]新規ウェブスパムへの有効な対応策に繋がる知見  インターネットの普及に伴い , ウェブは重要な情報源かつ マーケットとなった.ウェブ上に存在するページの数は急激 に増加し,2008 年にはグーグルが 1 兆以上のウェブページ をインデックスしたと発表している.一方,ほとんどの人が 大量のページの中で検索結果の上位に表示されるページしか クリックしないため,あるページが注目されるためには検索. て精度良く分類する手法を提案し,スパムのトピック分布を. 結果において高いランキングを得る必要がある.ランキング. 示した.その上で,リンクファームの経時的な変化の分析か. を上げるためにページのコンテンツを充実させるのではなく, ら,リンクファームの多くは,一度作られると放置されるか ページの内容とは無関係な,多数の人に検索される人気キー. 破棄されることを見出した.さらに,スパムホストと正常な. ワードをページの中に大量に埋め込んだり,情報のないペー. ホストの境界において,スパムへのリンクが多く出現するホ. ジを大量に作ってランキングを上げたいページへリンクを貼. ストを精度良く検出する手法を提案し,検出した多くのホス. ったりすることで,検索結果ランキングを操作しようとする. トが,現在もスパムリンクを生成していることを確認した.. 不適切な行為をウェブスパムという.ウェブスパムによって.  ウェブにおけるリンクスパムの出現と変化に関する研究は,. 作られたスパムページは,検索結果の質を低下させることは. 我々の知る限り本研究が初めて試みたものである.本研究は. もちろん,正しくない情報を含むページを増やすことでウェ. 大規模ウェブアーカイブを用いて,リンクスパムの抽出手法. ブ解析研究と検索エンジンのページ収集の妨げになるため検. およびトピック分類手法を提案するとともに,リンクスパム. 出し除去する必要がある.. の分布,スパムのトピック,およびそれらの経時的変化を分.  本研究では,ウェブスパム手法のうちウェブのリンク構造. 析した結果に基づいて,スパムへの新たなリンクの発生個所. の操作に基づくリンクスパムに着目し,複数年にわたり大規. を精度良く特定する手法を提案した.その結果リンクスパム. 模に収集された日本語のウェブアーカイブを用いて,リンク. のさまざまな性質を明らかにすると同時に,新規スパムへの. スパムの特徴を明らかにした.まず,リンクスパムが構成. 有効な対応策に繋がる知見を得ることに成功した.. する密なリンク構造であるリンクファームを,ウェブグラフ. (2011 年 11 月 30 日受付). から抽出する再帰的強連結成分分解手法を提案し,ウェブグ ラフにおけるリンクファームの分布図を得ることに成功し た.次に,リンクファームのトピックを,URL 情報を用い 推薦研究会:データベースシステム 推薦文:本論文は,検索エンジンのランク操作を目的としたスパム に着目し,複数年かつ大規模な日本のウェブアーカイブを分析し て,スパムのさまざまな性質および系時的変化を明らかにするとと もに,スパムに対する新たなリンクの発生個所を精度良く特定する 手法を提案している.成果は PAKDD のフルペーパとして採択され る等国際的な評価も高い.. 266 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(情報理工学) 大学:東京 大学. 著者からの一言. 5 年間 の研 究の 末, 無事 に学 位を. 自分がなりたいものになれたと. 取得 する こと がで きた. いう自信感を持つようにな. り,周りの人たちの有り難さを 実感できた.ウェブスパム 検出研究で得た知識で,これか らは企業の研究所で実世界 のウェブデータの中で,不適切 なデータの検出に力を注い でいきたい..

(6) ★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. A Study on Complex Query Processing in Structured Peer-to-Peer Overlays. ★. 基 応 専 般. 特集. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. DBS. (邦訳:構造型 P2P オーバレイにおける複雑な問合せの処理に関する研究). Djelloul Boukhelef:Scientific software developer of European XFEL (Hamburg, Germany). ★キーフレーズ. [背景]P2P システムの応用の広がり [問題]P2P システムにおける多次元データと集約問合せの サポート [貢献]Long Link の導入により多次元問合せの効率的なサ ポートが可能に  P2P ネットワークは,モバイルネットワークやコンテンツ 配信など,多くのネットワークアプリケーションで重要な役 割を担っている.P2P システムがさまざまな応用に利用され るようになるにつれ,多次元データに対する問合せや集約計. 追加の際に Long Link を利用して過負荷となっているピアを. 算など,より複雑な問合せに対する要求が高まっている.前. 探索することで,ピア間での負荷分散を行うことが可能とな. 者は類似検索や位置依存情報提供等を実現する上で,後者は. っている.. P2P ネットワーク管理,コンテンツ配信等の応用において重.  ALAM は,全ピアからデータを受け取るような集約問合. 要な処理である.. せを対象とするもので,集約問合せ元となるピアを根とし全.  本研究では,より複雑な問合せを実現する手法について. ピアから構成される A 木と V 木という 2 つの全域木を組み. 研究した.具体的には,P2P システムにおける多次元データ. 合わせることが基本アイディアである.A 木を用いて全ピア. 管理を目的としたフレームワークである Multi-Ring Content. に集約問合せを伝播し,V 木を用いてデータ収集を行うこと. Addressable Network(RCAN)の提案と,P2P 環境における効. で,単一の全域木のみを用いて集約問合せ処理を行う従来方. 率的集約処理を目的とした Application Level Aggregation and. 式に比べて,問合せ処理時間の短縮と各ピアの処理負荷の均. Multicast(ALAM)の提案を行った.. 衡化を図ることが可能となる.シミュレーション実験や処理.  RCAN で は, 多 次 元データ空間 を空 間分 割 し,各 ピ ア. 効率の分析を通じて,本提案の有効性を示している.. がそれぞれの領域に対応するデータを管理する方式をとる.. (2011 年 12 月 7 日受付). RCAN の特徴は,データ自身のもつ特徴空間で領域分割を 行うことと,O (log N) 本(ただし,N はピア数)の遠方のピ アに対する Long Link を有する点にある.データ自身のもつ 特徴空間で領域分割を行うことによりデータの局所性が維持 されることと,問合せ処理に Long Link を利用することによ り,多次元データに対する範囲検索や近傍検索等の空間問合 せを効率的に実行することができる.また,新たなノードの 推薦研究会:データベースシステム 推薦文:本論文では,P2P システムにおける多次元データ管理を目 的とした新たなフレームワークの提案と,効率的集約処理方式の提 案を行っている.著者は,本論文に関する研究発表で,優秀若手研 究賞(iDB Workshop 2010)を受賞しており,高く評価された研究 として推薦する. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(工学) 大学:筑波大学. 著者からの一言. Doin g a PhD thes is at KDE Lab with Prof . Kita gaw a was a pleasure and challenge at the same time. During my PhD, I was trying to always keep in touc h with the professors and peer s in the domain, and continuously reading high-quality articles in all related fields to keep myself up-to-date and broaden my vision and perspectives and help me adjusting my research goals at the right moment.. 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 267.

(7) ★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. A Study on Schema-Based Requirements Validation and Allocation for Information Systems. ★. 基 応 専 般. 特集. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. SE. (邦訳:要求スキーマに基づく情報システム要求の検証及び割付に関する研究). 服部 昇:(株)NTT データ技術開発本部プロジェクトマネジメントイノベーションセンタ. ★キーフレーズ. [背景]情報システム開発プロジェクトにおける要求の漏れ や誤りの早期検出の重要性 [問題]要求の完全性確認手法と IT に割付ける要求の明確化 [貢献]アクタの相互作用に基づく要求の完全性確認手法 , ,.  情報システムの開発プロジェクトの成否は,企業や社会に大 きな影響を与えるものとなっている.その成否に最も大きな. ,. ,. ,. 影響を与えるのは,最上流の要求定義工程であるという調査. (. ) -. 報告が多く存在する.このため,要求定義工程に適用する技. -. 術やプロセスを研究対象とする要求工学に近年注目が集まり,. -. (. ) -. -. -. -. -. -. -. (. ) -. (. ). -. (. ). さまざまな研究が行われている.  要求定義工程における開発プロセスは,基本的には ( 1) 要求. 方法として,アクタの相互作用に基づく要求検証の基準と手. 抽出(2)要求仕様化(3)要求検証(4)要求割付の順に進められ. 法の提案を行った.相互作用をもつ各アクタの状況と,アク. る.このため,要求が正しいかどうかを確認する要求検証と, タ間で送受される観測事象,観測応答を記述した状態遷移表 要求を IT の機能と人間の運用にどう割り付けるのかを明ら. を用いてアクタの相互作用を検証することで,観測事象,観. かにする要求割付は,要求定義の完成度を高めるためにも重. 測応答の漏れや誤りを指摘できる.この手法は,典型的には. 要なプロセスである.しかし,これまでの要求検証,要求割付. 情報システムが管理する資源と,その利用者の間の相互作用. においては,IT の機能のみが最初に注目されることが多い. の検証に適用できる.提案手法の有効性の評価のため,2 つ. ため,現実世界で発生する状況を網羅的に抽出し,それに対. の事例研究を行った.第 1 例では,ある日本企業の受発注シ. して人間による運用を含む情報システムがどう対応できるか. ステムの開発プロジェクトで発生した要求誤りの分析を行い,. という検証が不十分であるという課題があった .. これらのうち観測事象,観測応答に関する要求誤りが,提案.  本研究では,上記の課題の解決のため,要求スキーマに基. する手法で検出できたと考えられることを示した.第 2 例で. づく情報システム要求の検証及び割付の基準・手法の提案を. は,提案手法をある日本企業の資格管理システムの要求仕様. 行った.要求スキーマは,情報システムに対する要求の構成. 書のレビューに用いた際に,実際に検出できた要求誤りの例. 要素であり,アクタ,アクタ事前状況,観測事象,入力,処理,. を示した.これらの成果により要求定義の完成度を高める. 出力,観測応答,アクタ事後状況から構成される.日本のあ. ことで,開発プロジェクトの成功に寄与できることが期待さ. る実開発プロジェクトで発生した 332 件の要求誤りの約 86%, れる. 機能要求に関する誤りの 100%が,要求スキーマの 1 つ以上 の構成要素の誤りによることを確認した.また,要求検証の 推薦研究会:ソフトウェア工学 推薦文:情報システム開発において最上流工程である要求定義は大 きな重要性を持っている.本論文は,要求スキーマに基づく要求の 妥当性検証と,その要求のシステムへの割り付けの手法を提案し, 産業界の事例によってその評価を行っている.社会人学生の問題意 識に基づく実用性の高い研究としてここに推薦する. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 268 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. (2011 年 11 月 28 日受付). 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(工学) 大学:和歌山大学. 著者からの一言. IT だけでなく,運用全体を理解す. 入手できないことも多く,追加. るための情報はすぐには 情報の収集,確認や関係者. へのヒアリング等を行いながら 仮説の構築,検証,修正を 繰り返していくのがなかなか大 変でした.貴重な機会をい ただいた開発現場の方々,ご指 導いただいた先生方,ご配 慮をいただいた周囲の方々に感謝い たします..

(8) ★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. 高信頼性ソフトウェアシステムの実現のためのモデル 修正技術に関する研究. ★. 基 応 専 般. 特集. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. SE. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 熊澤 努:(株)SRA 産業第一事業部. ★キーフレーズ. [背景]信頼性の高いソフトウェアの開発の支援 [問題]モデル検査に基づくモデル修正技術の提案 [貢献]開発者によるモデル作成の支援技術の開発  近年のソフトウェア開発は,システムの要求分析,設計を 行った後にプログラムを実装するという手順で進められる. 要求分析,設計工程では,状態遷移機械などのモデルを用い て,開発者が対象システムの振る舞いが記述されることが多 い.開発したシステムが正しく動作し,高い信頼性を持つた めには,モデルが所望の性質や性質を正しく表現していなけ ればならない.そのため,モデルの正しさを形式的に検証す るモデル検査技術が数多く開発されている.. 者にとって無意味なモデルを生成する恐れが少ない..  モデル検査技術は,モデルが与えられた性質を満たすこと.  モデルの誤り特定法は,反例と類似し,かつ性質を満たす. を自動的に判定し,モデルに誤りがある場合には性質違反の. 正例を求める.そして,反例と正例の違いを求めることで,. 証拠である反例を提示する.この場合,開発者は反例を手が. その違いからモデルの誤りを特定する.本手法は,既存のモ. かりとしてモデルの誤りの特定し,正しいモデルへと修正す. デル検査技術が前提とする無限長の反例の形状に注目するこ. る.しかし,反例はモデルの誤りを直接的には表さないので, とで,無限長の反例を直接扱う方法である.先行研究の多く 開発者は反例を手作業で分析して修正作業を行わなければな. は有限長の反例を対象としているので,無限長の反例を扱う. らない.プログラム修正を対象とする多くの先行研究を,抽. ことが難しい.さらに,正例というモデルを修正する際の手. 象的な記述であるモデルの修正に適用することも難しい.. 掛かりとなる情報を開発者に提示できる..  本研究では,システム開発の上流工程でモデル検査技術が.  両者の方法に関して,プロトタイプツールを実装し,複数. 活用されることを想定し,モデル検査に基づくモデル修正技. の事例研究を行い有効性を確認した.モデルの誤り特定法に. 術を提案した.提案するモデル修正技術は,反例を用いたモ. 関しては,正例の探索空間の規模を変化させたときの実行時. デル修正法とモデルの誤り特定法の 2 つの手法によりなる.. 間の変化を調べ,実用的な実行性能を持つことを確認した..  モデル修正法は,開発者参加型の反復手続きであり,モデ.  今後の課題として,モデル検査技術とモデル修正技術の統. ル合併技術を用いて開発者に性質から反例を除いたモデルを. 合によって,開発者が作成するモデルの正しさを保証する技. 修正候補として提示する.モデルの合併操作は自動化が可能. 術を確立することが挙げられる.. であり,計算機による支援ができる.また,対象領域の知識 と開発者による決定工程を導入することで,対象領域や開発 推薦研究会:ソフトウェア工学 推薦文:大規模複雑化するソフトウェアへの信頼性要求は高まる一 方であり,より高信頼な開発技術が求められている.本論文は形式 検証技術であるモデル検査技術を活用したソフトウェア修正支援の ために,モデル上の誤り特定法や修正法を提案するものであり,大 きな将来性を持つ研究としてここに推薦する. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. (2011 年 11 月 23 日受付). 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(学術) 大学:東京大学. 著者からの一言. 自分自身が実際にモデル検査技術を 使い,使い辛さを感じた ことが本研究を始めたきっかけだっ た.私が研究したモデル 修正技術は実用性を求められる分野 であり,研究は試行錯誤 の連続だった.自分の身近な経験を 研究成果としてまとめら れたことは,非常に喜ばしいと感じ ている.今後も実際に活 用可能な技術を確立していきたい.. 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 269.

(9) ★ ★ ★ ★ ★. 特集. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. 学位論文題目. 面積効率を指向するプロセッサの研究. ★. 基 応 専 般. ARC. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 塩谷 亮太:名古屋大学大学院工学研究科 電子情報システム専攻 助教. ★キーフレーズ. [背景]マルチコアの普及と回路面積の重要性の変化 [問題]スーパスカラ・プロセッサの回路面積増加 [貢献]性能を保ちつつ回路面積増加を解決  近年では,単一のチップ上に複数のプロセッサ・コアを集 積するマルチコア・プロセッサが広く普及している.このマ ルチコアでは,コアとして用いられるスーパスカラ・プロセ ッサの面積効率が重要となる.かつて,シングルコアの時代 には,面積効率の向上は,チップ・コストの削減に直結する ため重要であった.これに対し,今日のマルチコアの時代で は,面積効率の向上は,チップ上へ搭載可能なコアの総数を. 図 -1 Block diagram of Non-Latency Oriented Register Cache System. 増やすことに繋がる.このため,より高い性能を狙える点に.  スーパスカラ・プロセッサでは,同時に多数の命令を処理. おいて,以前とは違う意味でその面積効率が重要となる.. するために,非常に大きなレジスタ・ファイルを持つ.この.  一般に,プロセッサの回路面積は,演算器と,それら演算. レジスタ・ファイルの複雑さを緩和するため,レジスタ・フ. 器の制御部に分けることができる.スーパスカラ・プロセッ. ァイルの一部を保持するレジスタ・キャッシュが提案されて. サは,この制御部に多くの資源をつぎ込むことによって高い. いるが,ミス・ペナルティにより大きく性能が低下してしま. 性能を達成している.しかし,その反面,制御部が占める面. うことが多かった.これに対し,筆者は非レイテンシ指向レ. 積により面積効率は大きく低下する.. ジスタ・キャッシュ・システムを提案した.提案手法は,従.  筆者は,そのような制御部のうち,リネーム・ロジックと. 来のレジスタ・キャッシュのペナルティを,それよりも発生. レジスタ・ファイルの面積効率を向上させる研究を行った.. 確率の大幅に低い分岐予測ミス・ペナルティに転化させる..  スーパスカラ・プロセッサでは,命令間の偽の依存を取り. これにより,性能低下をほとんど起こすことなく,レジスタ・. 除くためにレジスタのリネーミングが行われる.これは,通. ファイルを大幅に縮小することができる.. 常レジスタ・マップ・テーブル(RMT : Register Map Table)と.  以上の研究成果と既存研究を統合することにより,同時実. 呼ぶ表を引くことによって実現される.同時に多数の命令の. 行命令数 1 ∼ 2 程度のコアより面積効率に優れた同時実行. リネーミングを行うため,この RMT は非常に大きな回路と. 命令数 4 ∼ 8 程度のコアを構成できることを示した.これ. なる.これに対し,筆者は,リネーム結果のキャッシュを行. により,スーパスカラ・プロセッサの回路面積効率の低さは. うリネームド・トレース・キャッシュを提案した.提案手法. (2011 年 12 月 1 日受付) 克服されたと結論づけることができる.. では,ミス時にのみリネーミングを行うため,RMT を大幅 に縮小することができる. 推薦研究会:計算機アーキテクチャ 推薦文:スーパスカラ・プロセッサの回路面積増加を独創的なアイ ディアによって解決している点は高く評価できる.研究成果の一部 は当該分野のトップカンファレンスである MICRO に採録され,国 際的にも高く評価されている.また,同会議に学生から採録される ことはきわめて異例のことである.以上の理由により,当論文を推 薦する.. 270 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(情報理工学) 大学:東京 大学. 著者からの一言. 博士課程中は研究活動などを通. を学べました.この数年間は,. して本当にたくさんのこと 今まで生きてきた中でも最. も内容の濃いものであったと思 います.博士課程に進んで 本当に良かったです.指導していた だいた先生方や先輩方, 一緒に研究を進めた同期や後輩 のみんなに深く感謝すると ともに,今後も研究や教育活動を頑 張っていきたいです..

(10) ★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. マルチコアプロセッサにおける C プログラムの自動並 列化と低消費電力化に関する研究. ★. 基 応 専 般. 特集. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. ARC. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 間瀬 正啓:(株)日立製作所 中央研究所. ★キーフレーズ. [背景]マルチコアプロセッサの普及と自動並列化コンパイラ [問題]コンパイラによる C プログラムの自動並列化と低消 費電力化 [貢献]自動並列化のためのポインタ解析とマルチコアにお ける低消費電力化制御  組込み機器から PC,ハイエンドサーバに至るあらゆる情 報機器においてマルチコアプロセッサの普及が進んでおり, 並列ソフトウェア開発の生産性向上が大きな課題となってい る.マルチプロセッサシステムを用いて高性能・低消費電力 を実現するには,並列化を含む高度な最適化技術を駆使した. して Element-Sensitive ポインタ解析および,コンパイラの解. ソフトウェア開発が必須となる.しかしながら,並列処理の. 析精度を考慮したプログラム記述法として Parallelizable C を. プログラミングは難易度が高く,長期間の並列チューニング. 提案し,C プログラムの自動並列化コンパイラフレームワー. を要する.そのため,シングルプロセッサ用の逐次プログラ. クを構築した.Element-Sensitive ポインタ解析は,従来のア. ムから自動的に並列性を抽出して,マルチプロセッサ上での. ルゴリズムの解析情報に 1 ビットのデータ構造を追加する. 効率的な並列処理による高性能化と低消費電力化を可能とす. だけの簡易な拡張であるが,自動並列化に必要な解析精度が. る自動並列化コンパイラが求められている.. 得られた..  本研究では,マルチコアプロセッサにおける C プログラ.  また,自動並列化コンパイラによる低消費電力化手法およ. ムの自動並列化と低消費電力化に関する問題を扱っている.. びソフトウェアコヒーレンシ制御手法とあわせて,それらの最. C プログラムの自動並列化は一般的に困難とされており,市. 適化を適用するための並列処理 API として OSCAR API を提. 販コンパイラではほとんど自動並列化できないのが現状であ. 案した.逐次プログラムから OSCAR API で記述された並列. る.コンパイラによる並列性抽出において,C プログラムの. プログラムを自動生成することで,各社マルチコア上でコンパ. 解析,特にポインタ解析の精度が問題となる.これに対し,. イラによる自動並列化および低消費電力化が利用可能となっ. 自動並列化の特性を考慮したポインタ解析の精度向上やコン. た.NEDO“リアルタイム情報家電用マルチコア”プロジェク. パイラが解析しやすいプログラミング記述法が必要となる.. トで新たに開発した 8 コア集積の情報家電用マルチコア RP2. また近年,コンピュータシステムの消費電力が大きな問題と. において,マルチコアにおけるコンパイラによる低消費電力化. なっており,低消費電力化のための周波数・電圧制御やクロ. 制御を世界で初めて実現した.. ック・電源制御等が求められている.  本研究では,自動並列化向けのポインタ解析の精度向上と 推薦研究会:計算機アーキテクチャ 推薦文:本博士論文は著者の C プログラムの自動並列化と低消費 電力化におけるこれまでの取り組みをまとめたものであり,特にソ フトウェアコヒーレンシ制御の研究は今後のメニーコア用並列化の 基礎として将来性・実用性が期待でき高く評価できる.よって本論 文を推薦する ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. (2011 年 12 月 23 日受付). 取得年月:2011 年 2 月 学位種別:博士(工学) 大学:早稲田大学. 著者からの一言. 研究を進める上で「よいと思う. を心がけていました.スケジュ. モノを作ろう」ということ ールや成果目標の制約の中. で,必ずしも理想的な技術ばか りを実装できたわけではあ りませんでしたが,結果的に, その理想と現実のギャップ の中に面白さがあり,ポインタ 解析や低消費電力化制御の 論文のアイディアにつながりました .. 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 271.

(11) ★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. Heterogeneity-transparent Operating System Structures for High Performance Computer Clusters. ★. 基 応 専 般. 特集. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. OS. (邦訳:高性能計算機クラスタのための異機種透明なオペレーティングシステム構成法). 清水 正明:(株)日立製作所 中央研究所 主任研究員. ★キーフレーズ. [背景]高性能計算機における高性能と低消費電力の両立 [問題]演算専用プロセッサは OS 処理が苦手 [貢献]異種プロセッサの OS 間で機能分担しつつ単一 OS 環 境を提供  高性能計算機への性能要求は年率 1.8 倍で向上しつづけて いる.計算機のアーキテクチャは高速化・低コスト化のため に,旧来の専用開発のベクトル型や超並列型から,現在では 高性能で安価な汎用プロセッサを利用したクラスタ型が主流 になっている.今後,さらなる性能向上および性能/電力効 率向上のために,MIC(Many Integrated Core)や Cell/B.E. の ような数値演算性能を向上したプロセッサを採用していくこ. 用 OS として利用できるようにヘテロジニアスバイナリロー. とが考えられる.しかし,これらの数値演算に特化したプロ. ダおよびリモートシステムコールを用意する.. セッサではファイル I/O などのリッチな OS 処理で必要とさ.  我々は,このアプローチを Harmonix という OS として実. れるスカラ演算が苦手という問題がある.. 装した.16 台の Cell/B.E. 演算プロセッサノードに 4 台の.  本研究の目標は,高性能計算機クラスタにおいて,演算専. x86_64 の汎用プロセッサノードを追加したヘテロジニアス. 用プロセッサなどの新しいアーキテクチャの高い演算性能と. クラスタにおける評価の結果,演算プロセッサノードのみの. 汎用プロセッサの高い OS 実行性能を両立することである.. 場合と比較して,並列プログラムの起動速度は 3.2 倍に高速.  この目標に対し,数値演算を得意とする演算プロセッサノ. 化できた.また,Lustre ファイルシステムを用いた並列 I/O. ードのクラスタに,スカラ演算を得意とする汎用プロセッサ. 性能は,最大 2.6 倍に高速化できた.単一 OS 化においては,. ノードを追加し,この汎用プロセッサノードが高性能な汎用. ヘテロジニアスバイナリローダにより,利用者は汎用プロセ. OS 機能を提供するアプローチで取り組む.このとき,演算. ッサノードから演算プロセッサノードのアプリケーションを. プロセッサノードと汎用プロセッサノードの OS は機能を分. 透過的に実行できるようになった.またリモートシステムコ. 担しつつも協調し,単一 OS 環境を提供する.. ールにより,演算プロセッサノードのアプリケーションは汎.  演算プロセッサノードでは OS を軽量化しユーザプログラ. 用プロセッサノードが提供する Lustre ファイルシステム等の. ムの実行に専念する.汎用プロセッサノードの汎用 OS は演. 機能を透過的に利用できるようになった.  (2011 年 11 月 30 日受付). 算プロセッサノードの並列プロセス,ユーザファイルを集中 管理し,演算プロセッサノードからのファイル I/O 要求の代 行処理を行う.また,利用者やアプリケーションが単一の汎 推薦研究会:システムソフトウェアとオペレーティング・システム 推薦文:本論文は,高性能計算向けのシステムソフトウェアとして 重要視されている異種 OS 連携法を論じている.メニーコアなどの 演算専用 CPU に計算専用 OS を搭載し,汎用 CPU は汎用 OS 機能 を実行する,異種 OS を連携させ単一 OS として扱う OS アーキテ クチャは将来性があり,実用性を持つことから推薦博士論文として 推薦する.. 272 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(情報理工学) 大学:東京 大学. 著者からの一言. 今後登場するメニイコア等のプ. 能と低消費電力を両立するため. ロセッサを利用しつつ高性 には,本論文のアプローチ. が有効です.さらに継続して, 演算プロセッサノードと汎 用プロセッサノードの接続性能 に応じて OS 機能の配分を 最適化する研究を行っていきます. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★.

(12) ★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. CPU の仮想化に着目した仮想マシン技術の応用に 関する研究. ★. 基 応 専 般. 特集. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. OS. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 吉田 哲也:慶應義塾大学 特任助教. ★キーフレーズ. [背景]仮想マシン技術の普及 [対象]仮想マシン技術の応用可能性 [貢献]CPU 仮想化に着目した仮想マシン技術の応用拡大  仮想マシン技術とは,1 つの物理計算機を抽象化し,複数 の仮想マシン(VM)としてオペレーティングシステム(OS) に提供する技術である.仮想マシン技術では,仮想マシン モニタ(VMM)というソフトウェア階層が物理計算機の抽象 化を行う.VMM による仮想化の利点として,1)複数の VM を 1 つの物理計算機上で動作させて計算資源を共有すること でより柔軟かつ効率的に計算資源を活用できる,2)実ハー ドウェアとは異なる仮想化を行うことで OS を含めた全ソフ トウェア階層の監視・制御を行うことができるという 2 点 がある.これらの利点を活用し,仮想化技術がさまざまな分. なる VM 上のタスクも組み合わせて柔軟にスケジュールで. 野に応用されている.たとえば,異なる VM 間で同一内容. きる.提案手法を Xen3.4.1 上に実装し,SPEC CPU2006 を. のメモリページを共有し,メモリ使用量を削減する手法があ. 用いて提案手法の有用性を示した.. る.また,OS の動作を再現するデバッグ環境を実現するため,  次に,OS を含めたソフトウェア全体の制御という点に 割込みとそのタイミングを監視・記録しておき,仮想デバイ. ついて,実 CPU と異なる速度に CPU を仮想化することで,. スを用いてデバッグ時に割込みを再現する方法がある.. 実時間組込みソフトウェアの動作速度の検証支援を行う手法.  本論文では CPU の仮想化に着目することで,上記の 2 点. を示している.提案手法は,仮想 CPU の速度を実運用環境. それぞれについて VMM の応用範囲を拡大する手法につい. と同等にすることで,実運用環境におけるソフトウェアの動. て論じている.まず,資源の有効活用という点について,マ. 作速度を再現する.CPU の仮想化を利用することで,OS を. ルチコア CPU の電力資源を有効活用する手法を示している. 含めたソフトウェアスタック全体の動作速度を制御できるた マルチコア CPU では,スケジュールするタスクに応じてコ. め,プロセススケジューラや割込み処理の影響も含めてソフ. ア周波数を変更することで消費電力を削減できる.さらに,. トウェアの動作を正確に再現できる.提案手法を Xen 3.0.4. 全コアを同周波数にすることで電力効率が高くなるという特. 上に実装し,MPEG ビデオプレイヤを用いた実験で本手法. 性がある.そこで,同周波数の仮想 CPU を組み合わせてス. の有効性を示した.. ケジュールすることで,VM 間で共有するマルチコア CPU の電力効率を高くする手法を提案する.仮想化環境では,異 推薦研究会:システムソフトウェアとオペレーティング・システム 推薦文:CPU の仮想化を工夫することによる仮想化技術の新たな 応用を提案している.具体的には,組込みシステムのテスト支援と サーバの省電力化への応用を提案しており,仮想マシン技術の応用 可能性を拡げる興味深い研究である.本研究の成果として本会論文 賞を受賞しており,将来性のある研究であるといえる.よって,研 究会を代表する博士論文として相応しい.. (2011 年 11 月 30 日受付). 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(工学) 大学:慶應義塾大学. 著者からの一言. 博士論文の研究を完成させるに. は何よりも根性が必要でし た.特に,実験環境の設定のように ,研究の本筋ではないけ れど必要不可欠なものに苦労させら れる場面がとても多かっ たです.しかし,そういった苦労の 末だからこそ,博士号を 取得したときは言葉にできないほど 感動しました.今後も博 士号を活かし,研究にかかわる仕事 をしていく所存です.. 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 273.

(13) ★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. Scan-based Attacks against Cryptography LSIs and their Countermeasure. ★. 基 応 専 般. 特集. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. SLDM (邦訳:暗号 LSI に対するスキャンベース攻撃とその対策に関する研究) 奈良 竜太:(株)東芝 研究開発センター. ★キーフレーズ. [背景]LSI はテスト効率を高めるスキャンパスが使われている [対象]セキュリティ LSI のスキャンデータを解析するのは大変 [貢献]スキャンパステストを安全に実装する必要を示す  LSI の大規模化に伴い,トランジスタの不良を効率的にテ スト・検証するスキャンパステストの重要性が高まっている. その一方で,LSI 内部のレジスタを直接観測・制御するとい うスキャンパスの性質を利用して暗号回路の秘密鍵を復元す るスキャンベース攻撃が注目されている.暗号回路はセキュ リティの根幹をなす重要な機能であるため,暗号回路はあら ゆる攻撃手法に対して安全であることを評価する必要がある. 実装時の脆弱性をついて鍵を盗み出すサイドチャネル攻撃は. Number of encryption/ decryption cycles. 対策が必須となっており,暗号回路に対する新たな脅威とし てスキャンベース攻撃を研究することが求められている.. ため,従来のスキャンベース攻撃が対象としていた AES 暗.  従来のスキャンベース攻撃は解析対象のスキャンパスが暗. 号方式だけでなく公開鍵暗号方式の RSA 暗号と楕円曲線暗. 号回路のレジスタのみで構成されているという前提が必要で. 号に対して提案するスキャンベース攻撃を使うことで秘密鍵. あった.しかしながらセキュリティ用の LSI が暗号回路だけ. を解読できることを世界で初めて示した.. で構成されることはなく,通常メモリやマイクロプロセッサ.  スキャンパスをトランジスタの不良検出だけでなく,LSI. など多くの周辺回路が含まれる.つまりセキュリティ LSI の. 出荷後の動作検証に利用し,実機テストの高速化を図るイン. スキャンパスは暗号回路のレジスタと周辺回路のレジスタで. フィールドテストという研究が注目されている.その際,暗. 構成されている可能性が高い.そのため従来のスキャンベー. 号回路のレジスタがスキャンパスに含まれるためスキャンベ. ス攻撃手法では暗号回路の秘密鍵を復元することが困難であ. ース攻撃に対する耐性を持つ必要がある.またその耐性を定. った.. 量的に評価する必要がある.本論文が提案するスキャンベー.  提案するスキャンベース攻撃は秘密鍵を特定するための暗. ス攻撃の研究がスキャンベース攻撃に対する耐性を持つ回路. 号処理中の中間値を 1 ビットのレジスタの出力から特定す. の設計,およびその安全性の評価を行う際の手助けになると. ることができる(図参照) .そのため,暗号回路以外の周辺回. 思われる.. 路のレジスタを含む現実的なスキャンパスに対して秘密鍵を 復元することができる.また提案手法は秘密鍵の特定につな がる中間値を求められる暗号方式すべてに適用できる.その 推薦研究会:システム LSI 設計技術 推薦文:本論文は,暗号 LSI のサイドチャネル攻撃に関する論文で あり,中でも LSI テスト設計で利用されるスキャンパスに着目しそ のデータを観測することで内部に秘匿されている秘密鍵を解読でき ることを論じ,実回路にて実証している.またこれを防御するスキャ ンパス設計を提案しているなど優れた論文であり高く評価できる. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 274 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. (2011 年 10 月 29 日受付) 取得年月:2011 年 2 月 学位種別:博士(工学) 大学:早稲田大学. 著者からの一言. 学部・修士のころはあまりできの良 い学生ではなく,博士課程 に進学するときは周りに心配された ものでした.それがすばら しい指導者と多くの人に助けられな がら,良い研究テーマにも 恵まれ,気づいたら英語で博士論文 をまとめるまでになりまし た.ただこれで終わりではなく,長 い研究者生活の始まりなの で,これからも日々精進していきた いと思います..

(14) ★ ★ ★ ★ ★. 特集. 研究会推薦博士論文速報. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. ★ ★ ★ ★ ★. 学位論文題目. エラートレース解析に基づくVLSI 設計のデバッグ支援. ★. 基 応 専 般. SLDM. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 李 蓮福:サムスン電子 総合技術院 研究員. ★キーフレーズ. [背景]VLSI 設計の大規模化・複雑化によるデバッグコスト 増加 [対象]効率的なエラー原因分析手法の必要性 [貢献]動的依存関係分析や上位設計の有効活用によるエ ラー原因分析手法を提案  VLSI 設計の大規模化・複雑化に伴い,デバッグ,特に製 造後デバッグにかかるコストが増大している.一般的には, エラートレースを用いて設計の状態や信号値をたどることに よってデバッグは行われているが,大規模で複雑な設計では 非常に手間がかかる作業となっている.さらに,製造後デバ ッグでは,観測・制御可能な内部信号が大きく制限され,ま. ョンやチップ実行で発見されたエラーに対する振る舞い. た,分析すべきエラートレースが非常に長いため,より大き. が,上位設計で分析可能となる.本手法では有限状態機. な手間がかかる.. 械として表現されたインタフェースの仕様をマッピング.  そこで,本研究では次のことに着目する.. に用いている.実験により,幅広い通信方法に適用でき. • エラートレース上で対象のエラー値に直接関連がある信号. ることを示した.. 値は全体の一部である. (3)上位設計を用いたチップ/下位設計のデバッグフロー:. • 等価な上位設計がある場合,それをデバッグに利用できれ ば有用である. 上位設計において,エラーに関係のある設計記述個所を バグ候補として抽出し,各候補が実際にバグである可能.  以上を踏まえ,本研究では次の 3 つの手法を提案した.. 性によって順位付けする手法を提案した.図で示すよう. (1)エラートレースの動的スライシング:各信号に対して各. に下位設計やチップのデバッグに上位設計を有効活用す. 時刻における他の信号に対する依存性を 1 ビットの変. るための新たなデバッグフローを提案した.このフロー. 数で表し,分析によりエラートレースからエラー値が依. を実施した結果として,バグである可能性の高さによっ. 存を持つ信号値を自動的に抽出する.それにより,関連. て順序付けられた,上位設計中のバグ候補を得ることが. のない信号値の解析にかかる手間を減らすことができる.. できる.これにより,より早い段階でバグを見つけるこ. (2)上位設計とチップ/下位設計間の入出力シーケンスマッ. とが期待できる.  (2011 年 11 月 30 日受付). ピング:RTL 以下の下位設計のシミュレーションやチ ップ実行の入出力トレースを等価な上位設計の入出力ト レースに変換する.これにより,下位設計シミュレーシ 推薦研究会:システム LSI 設計技術 推薦文:本論文は,LSI 設計のためのデバッグに関する論文であり, とりわけエラートレースからエラー値に依存関係を持つ信号値を小 さい計算量で抽出する手法や上位設計とチップ/下位設計間の入出 力シーケンスマッピング手法を構築し,さらにこれらを利用した総 合的なデバック環境を構築するなど優れた論文であり高く評価で きる.. 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(工学) 大学:東京大学. 著者からの一言. 博士課程で得た一番の資産は何. て方や解決のためのアプローチ. よりも対象問題の定義の立 でした.たとえばエラーや. デバッグのような用語は人や分 野によって非常に多様な意 味で使われ,それらの定義に一 番苦労しました.今後は産 業界で今まで身につけた検証・ デバッグの専門知識や研究 方法を活かし信頼できる製品開発に 貢献したいと思います.. 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 275.

(15) ★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. Tool Support for Modularized Documentation at the Design and Implementation Phase. ★. 基 応 専 般. 特集. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. PRO. (邦訳:実装時ドキュメントへのモジュール構造の導入と支援ツールの提案). 堀江 倫大: 日本アイ・ビー・エム(株)東京基礎研究所 リサーチャー. ★キーフレーズ. [背景]ソフトウェア開発におけるドキュメントの重要性 [問題]モジュール構造を持たないドキュメント記述 [貢献] プログラミング言語に沿ったドキュメントのモ  . ジュール化.  ソフトウェア開発で主体となるのはプログラミングだが, 重要な情報を含むドキュメントがソースコード中にコメント の形式で頻繁に記述されるため,ドキュメントの役割も非常 に大きい.また,読み手に誤解を与えないように正確にドキ ュメントを記述することが求められる.理想は,ドキュメン. 合することができる.支援ツールは 2 つの尺度に基づいて. トを モジュール化して記述することである.そうすること. 開発されている.モジュール化されたドキュメントの織り. で,ドキュメントの保守性や再利用性が向上する.. 込み精度と,開発者が与えなければならないヒントの量であ.  しかし,Java 用のドキュメント作成ツールである Javadoc. る.ヒントは,タグを用いてコメントの中で記述する.たと. では,ドキュメントをうまくモジュール化して記述すること. えば,ライブラ リやフレームワークのリリース時には,API. はできない.また,プログラムがモジュール化できていたと. ドキュメントを生成するためのツール CommentWeaver を提. しても,それに伴ってドキュメントもモジュール化されるわ. 供する.リリース時には,正確に記述された API ドキュメ. けではない.一方,ドキュメントを主体にしてプログラミン. ントをユーザに提供するために,織り込み精度が高くなけれ. グを行うための技法である文芸的プログラミングでは,ドキ. ばならない.その代わり,コメント中にタグの形で織り込み. ュメントに 対応してプログラムの断片が割り当てられるた. のためのヒントを開発者が多く記述する.メソッド間におけ. め,ドキュメントをモジュール化しやすい.しかし,文芸的. るドキュメントの横断・継承関係によるドキュメントの横断・. プログラミングは関数型プログラミング言語用に開発された. アスペクトによるドキュメントの横断に対し,それぞれモジ. ため,オブジェクト指向などのさまざまな言語パラダイムに. ューラにドキュメントを記述するためのタグを提供している.. 適応させにくいという問題がある.. さらに,実際に広く使用されている J2SE や Eclipse などとい.  そこで本研究では,コメント形式で記述するドキュメント. ったライブラリやフレームワークにおいてドキュメントの横. にモジュール構造を導入することを提案する.開発者はプロ. 断があることを確認し,提案手法を用いることでドキュメン. グラミング言語のモジュール構造に 合わせてドキュメント. トの記述量が削減されたことを確認している.. もモジュールごとに一度だけ記述すればよい.さらに,実装・ リリース・保守の各開発段階に対しそれぞれに最適な支援ツ ールを提供し,モジュールに分割したドキュメント同士を結 推薦研究会:プログラミング 推薦文:本論文の研究は,従来プログラムのモジュール化に用いら れてきたさまざまな機構が,ソフトウェアの付属文書の作成にも有 用であることを初めて指摘し,現実のソフトウェアのコードを分析 することでそれを実証したものである.文書のモジュール化という 新しい領域を切り開く独創的な研究で,その成果の一部は有力な国 際会議でも発表済みで優れた博士論文として推薦できる.. 276 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. (2011 年 12 月 5 日受付) 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(理学) 大学:東京工業大学. 著者からの一言. 私の場合,学部 4 年生に始めた研究 テーマを練りあげて博士論 文にまとめた経緯があります.その ため,物事を突き詰めて考 えることができた反面,最初に設定 したテーマに縛られてしま いました.これからは, 幅広い視野を持っていろいろな研究 テー マに手を出していきたいと考えてい ます. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★.

(16) ★ ★ ★ ★ ★. 特集. 研究会推薦博士論文速報. ★ ★ ★ ★ ★. Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs. 学位論文題目. Packrat Parser 生成系における空間計算量の改善手法. ★. 基 応 専 般. PRO. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 水島 宏太:(株)ユビレジ ソフトウェアエンジニア. ★キーフレーズ. [背景]主流の構文解析手法の限界とその解決手法 [問題]Packrat Parsing のメモリ効率の悪さ [貢献]Packrat Parsing のメモリ効率改善. 消費メモリ.  プログラミング言語処理系は,通常,いくつかのサブプロ グラムから構成される.その中でも,プログラミング言語で. 入力文字列. 書かれた文字列を読み取って,その文字列を,抽象構文木と いう形式に変換する部分を構文解析器と呼ぶ.構文解析器を. メモ化のために消費するメモリ量の比較. 言語設計者が手で書くのは手間がかかるために,構文解析 器生成系と呼ばれるプログラムが発明された.構文解析器生. こから生成される構文解析器がどの程度のメモリを余分に消. 成系を使えば,言語設計者は,簡潔な文法定義を書くだけ. 費するかをおおまかに推定する手法を提案した.. で,そこから構文解析器を自動生成することができる.しか.  これらの手法の有効性を実証するために,Packrat Parsing. し,yacc などの主流の構文解析器生成系が基盤としている構. に基づく構文解析器生成系 Yapp を開発した.実験のために,. 文解析手法である LALR(1)では,Ruby や Perl などの複雑. Java,JSON,XML のサブセット,ESLL(実験のために開発. な文法を持った言語をうまく取り扱えず,ad hoc な対応が必. した,従来手法では解析しづらい文法を持った簡易プログラ. 要になるという問題点があった.. ミング言語)の 4 つの文法定義を作成し,Rats! と Yapp で消.  近年,Packrat Parsing という構文解析手法が提案された.. 費メモリ量の比較を行った.なお,Rats! は Packrat Parsing に. Packrat Parsing に基づいた構文解析器生成系には,主流の構. 基づく構文解析器生成系の 1 つである.実験の結果,文法. 文解析器生成系ではうまく取り扱えない文法を容易に取り扱. 定義に対して人手でカットを埋め込むことによって,メモ化. える上に,線形時間で構文解析を行うことができるという特. のための余分なメモリ領域をほとんど必要としない Packrat. 長がある.しかし,線形時間の構文解析を行うためにメモ化. Parser を生成できることを実証した.また,カットの自動. を用いるため,入力文字列長に比例するメモリ領域を余分に. 挿入アルゴリズムや,メモリ消費量を推定する手法もある. 消費するという問題点が存在する.. 程度有効に機能することが判明した.提案手法を,Packrat.  筆者はこの問題を解決するために,カットという概念を文. Parsing に基づいた既存の構文解析器生成系に対して適用す. 法定義に導入した.言語設計者は,文法定義の中にカットを. ることで,よりメモリ効率の良い構文解析器を生成できるよ. 適切に埋めこむことで,入力文字列長にかかわらず余分なメ. うになる可能性がある.. モリ領域をほぼ一定量しか消費しない構文解析器を生成でき るようになる.また,文法定義の中にカットをある程度自動 的に挿入するためのアルゴリズム,文法定義を解析して,そ 推薦研究会:プログラミング 推薦文:カット演算子およびその自動挿入などの空間計算量の改善 手法と有界性の判定手法によって,従来の手法では取り扱うことが 困難であった複雑な文法を扱える Packrat parsing の実用性を高め, 今後のプログラミング言語処理系に利用可能な文法の範囲を広げた ことは,学術的に大きな貢献であると評価できる. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. (2012 年 1 月 12 日受付) 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(工学) 大学:筑波大学. 著者からの一言. 修士の時から 5 年間にわたり,1 つの 構文解析手法の改善につ いて研究してきました.実験によっ て,自分自身の考えた手法 が有効であることを確認できた時や ,新しいアイディアを思い ついた時は非常に楽しいものでした .現在は職業エンジニアで すが,時間があればまた研究を再開 したいと考えています. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★. 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012. 277.

図 -1 Block diagram of Non-Latency Oriented Register Cache System基

参照

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