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高校生における月経教育が月経痛に対するセルフケアの変容に与える効果

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高校生における月経教育が月経痛に対する

セルフケアの変容に与える効果

Effects of menstruation education in high school students

on changes in self-care to manage menstrual pain

松 竹 ゆには(Yuniha MATSUTAKE)

*1

永 橋 美 幸(Miyuki NAGAHASHI)

*2 抄  録 目 的 高校生を対象に月経教育を行うことにより月経痛に対するセルフケアの変容につながるかどうか,ま た,セルフケアの変容に与える要因について検証する。 対象と方法 A高校の女子生徒124名を対象に自記式質問紙調査,月経教育直後と3ヵ月後のセルフケア23項目の 実施状況の比較調査を行った。 結 果 セルフケア実施状況については,セルフケア23項目のうち7項目において月経教育直後と3ヵ月後の 実施人数に有意差が認められた。【月経記録をつける】(p=0.004),【横になる】(p<0.001),【腹・腰部の マッサージをする】(p=0.004),【十分な睡眠をとる】(p=0.029),【病院の受診】(p=0.021),【浴槽に浸か る】(p=0.031),【食事を3食しっかりとる】(p=0.041)であった。 月経教育直後と 3ヵ月後におけるセルフケア実施状況と身体・心理・社会的要因との関連をみた結 果,身体的要因の一つである「月経痛」のあり群がなし群に比べ教育後に新たに実施したセルフケアが 有意に多かった(p=0.025)。その他の要因では有意な関連は認められなかった。 月経教育直後と3ヵ月後におけるセルフケア23項目の実施人数の変化と身体・心理・社会的要因の関 連では,3項目において有意な関連が認められた。【月経記録をつける】では「看病や気にかけてくれる 人」のあり群がなし群に比べ(p=0.022),【腹部・腰部のマッサージをする】では「月経痛」のあり群がな し群に比べ(p=0.045),有意に実施者が増加していた。一方,【食事を3 食しっかりとる】では「情報を 与えてくれる人」のなし群があり群に比べ(p=0.005),有意に実施者が減少していた。 結 論 月経教育により,月経痛を持つものには行動変容がみられた。セルフケアの実施と継続を支える要因 として「月経痛」と「月経のサポート状況」が示唆された。 2019年7月16日受付 2019 年12月29日採用 2020年5月12日早期公開

*1長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻(Health Sciences Master Course, Nagasaki University Graduate School of Biomedical

Sciences)

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キーワード:高校生,月経教育,月経痛,セルフケアの変容

Abstract Objective

To determine whether menstruation education in high school students leads to changes in self-care to manage menstrual pain and to determine factors that influence such changes in self-care.

Subjects and Methods

The use of 23 self-care items was compared between immediately after and three months after intervention via menstruation education in 124 female students at High School A using a self-administered questionnaire.

Results

There were significant differences in the number of students performing seven of the 23 self-care activities between immediately after and three months after education: [Keep a menstrual cycle record] (p=0.004), [Lie down] (p<0.001), [Massage the abdominal and lower back area] (p=0.004), [Get enough sleep] (p=0.029), [Visit the hospital] (p=0.021), [Soak in a bath] (p=0.031), and [Eat three meals a day] (p=0.041).

In analyzing associations between the status of performing self-care activities after education and physical, psy-chological, and social factors, students with the physical factor“menstrual pain” carried out significantly more self-care activities three months after education than immediately after education, compared to those without menstrual pain (p=0.025). Significant associations were not detected for other factors.

Three items showed significant associations between changes in the number of students performing each of the 23 self-care items from immediately after to three months after education and physical, psychological, and social

factors. Significantly more students with“someone who takes care of me or cares about me when I am unwell” vs.

those without performed the activity [Keep a menstrual cycle record] three months after intervention (p=0.022).

Similarly, significantly more students with“menstrual pain” vs. those without performed the activity [Massage the

abdominal and lower back area] three months after intervention (p=0.045). On the other hand, significantly fewer

students without“someone who provides me with information” vs. those with performed the activity [Eat three meals

a day] three months after intervention (p=0.005). Conclusion

Menstruation education in students with menstrual pain leads to changes in self-care to manage menstrual pain. The significance of“menstrual pain” and “status of menstruation support” as factors that aid in carrying out and continuing self-care.

Key words: high school students, menstruation education, menstrual pain, changes in self-care

Ⅰ.緒   言

一般の女性において,約 3分の1は月経痛に何らか の医学的介入を必要とし,若年齢かつ未産の者ほど月 経困難が強く(厚生労働省,2000),特に,初経が発 来してまもない思春期の頃は,月経異常を示す割合が 高いと報告されている(松本他,2005)。また,思春 期の時期に重度の症状を抱える者が存在するとの報告 もあり(安達,2007),思春期の月経に対するケアや 教育の必要性が認識されている。月経に伴う症状は, ストレスや食習慣,健康状態,公衆衛生などと関連し (池田他,2011;Jeon GE, et al. 2014),症状の軽減や 改善のためにはセルフケアが重要であると報告されて いる(川瀬,2011;緒方他,2008)。したがって,自 分自身の身体症状を自覚して対応できるよう,早期か らセルフケアへの理解と実践が必要であると考える。 日本における月経教育は,小学 3,4 年生で体の発 育・発達の中で月経がおこること,中学校で妊娠や出 産が可能となるような成熟が始まるという観点から受 精・妊娠を取扱い,高校では生殖に関する機能につい ては必要に応じて関連づけて扱う程度としている(文 部科学省,2017a;文部科学省,2017b;文部科学省, 2018)。このような状況では月経に関する知識不足と, 健康相談の場の不足が生じる可能性がある。中高生の うち7割以上が月経痛を有しており,月経痛の対処法 として薬を使用している者は約半数で,薬以外の対処 法を知る者は半数以下であるという報告や(泉澤他, 2008),月経教育に対し,生徒の 1/3 は満足しておら ず,月経痛についての知識・対処の仕方など教育の不 十分さを感じていると報告がある(小澤他,2004)。 さらに,我が国においては高校までの学校教育で月経 教育がほぼ100%近く行われているが,必ずしもその

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後の継続した知識やセルフケアに繋がっていないこと や(戸田他,2008),思春期女子の行動変容につなが る成果が得られていないことが指摘されている(蝦名 他,2010)。 一方,高校生に対し,月経痛に対して適切な対処行 動がとれることを目的に教育や指導を行った結果,教 育後に月経随伴症状の対応として,規則正しい生活や 自己の月経状況や症状を把握する必要性の認識,セル フケアの意識の向上につながったと報告されている (池田他,2013a)。成人女性に対し,月経時の疼痛な どを主症状とする月経困難症や月経前の身体的・精神 的変化を伴う月経前症候群などの軽減を目的とした教 育や実践を踏まえた看護介入を行った結果,介入前後 でセルフケアの行動量と内容に改善が認められたとい う報告がある(渡邊他,2007)。また,保健行動の実 現のためには自己を管理する認知的スキルが重要で, 自己管理スキルが豊富であるほど自己管理ができてい ると述べている(高橋他,2000)。これらのことより, 月経の症状を正しく理解し,月経痛に対する対処法を 知ることは,月経におけるセルフケアの認識だけでな く,セルフケア行動の促進につながるのではないかと 考える。 これまで思春期に対する月経教育の必要性や重要性 が認識されているが(池田他,2013b),実際に思春期 に対して月経教育を行ったものやセルフケアの変化に ついて調査したものは少ない。高校生は,初経から数 年経ち中学時代と比較して心身共に成熟が進んでいく 時期であり,クラブ活動,修学旅行,文化祭や体育祭 のイベント,大学受験,そして毎日の授業など,月経 によって影響を受ける状況が多く存在する。した がって,月経の調整や月経痛の軽減を図ることは QOLの向上につながることが考えられる。また,こ の時期はその後のリプロダクティブヘルスの維持向上 のための生活習慣を確立する上で重要な時期である。 そこで,本研究では高校生を対象に,月経に関する正 しい知識の提供と対処法の指導により,月経痛に対す るセルフケアの変容につながるか否かを明らかにする ことと,セルフケアの変容に関連する要因について検 討することを目的とする。

Ⅱ.研 究 方 法

1.研究デザイン 自記式質問紙を用いた月経教育による介入直後と 3ヵ月後の月経痛に対するセルフケア実施状況の比較 研究法 2.研究対象 1)対象者 A高校の同意を得られた女子生徒2年生127名 対象校の選定には協力を得やすかった施設1校を便 宜的に選択した。2年生を選んだ理由としては,初経 から数年経ち中学時代と比較して心身共に成熟が進ん でいく時期であるという点と,受験を控える3年生と 交代して主力として責任を任される立場となりイベン ト事が増えていく時期でもあるという点から,月経コ ントロールに悩む場面も多いと考えた。 2)データ収集期間 平成27年5月21日-平成27年8月20日 3.データの収集方法と収集内容 1)データの収集方法 A高校の学校長に対し,研究者が研究の趣旨につい て文書及び口頭で説明し,調査の協力に承諾していた だいた。研究者が研究協力者(A 高校の体育教員)に 依頼し,保健体育の授業の一環として「月経教育」の 受講および受講直後と3ヵ月後の質問紙調査を実施す る旨を,研究協力者が女子生徒のみ集め口頭で説明 し,生徒の参加を募った。その際,生徒には参加は自 由意思であることを研究協力者から伝えた。また,月 経教育当日も参加は強制ではなく自由意思であること を,研究者から伝えた。研究者が「月経教育」を行い, 教育終了直後に自記式質問紙調査に回答していただい た。月経教育をおこなった会場に回収ボックスを設置 し,研究者が回収した。 月経教育3ヵ月後は,研究協力者より女子生徒に自 記式質問紙調査票配布していただき,回収ボックスを 設置し,研究協力者が回収した。その際,生徒には参 加は強制ではなく自由意思であることを,研究協力者 から伝えた。月経教育直後と 3 か月後の調査ともに, 回答・回収をもって同意とみなした。 2)データの収集内容 (1)月経教育直後の自記式質問紙調査 調査票は一部記述を含みほとんどが択一式であっ た。月経教育終了直後の質問紙調査では,月経教育当 日までの対象者の属性(身長,体重,部活動の有無), 月経状況(初経年齢,経血量,月経持続日数,月経痛 の頻度,月経痛の生活への影響,鎮痛剤使用),身体

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・心理・社会的要因(身体要因は月経痛,心理的要因 は自身の楽観性・自身の自覚的ストレス・主観的健康 感,社会的要因は月経のサポート状況の 5項目)につ いては「とてもよく当てはまる~全くあてはまらな い」の4 段階から選択してもらい,これまでに実施し ていた月経痛に対するセルフケア(病院を受診した, 月経記録をつけた,基礎体温を測定した,腹部・腰部 のマッサージをした,食事を3食とった,十分な睡眠 をとったなど)23項目について尋ねた。病院の受診に ついてはその理由についても尋ねた。 なお,身体・心理・社会的要因の 5 項目について は,先行研究(池田他,2011;野田,2003;渡邊他, 2007;渡邊他,2011)をもとに「セルフケアの変容」 に与えると考えられる項目を著者が選択し,これらを 身体・心理・社会的要因に分類した。セルフケア 23 項目については,先行研究(池田他,2013a;泉澤他, 2008;野田,2003;緒方他,2012;小澤他,2004)を もとに「月経痛に対するセルフケア」について選択し, 抽出されたものである。例えば,下腹部の温罨法は子 宮血流の増加によって,またマンスリービクスは骨盤 を動かすことで骨盤内の充血を取り,筋肉や靭帯を弛 緩させることによって月経痛に対し効果があると言わ れている(井関他,2011;茅島他,2004)。 (2)月経教育終了3ヵ月後の自記式質問紙調査 月経教育3ヵ月後の質問紙調査では,月経教育が月 経痛に対するセルフケアの変容に効果があったかをみ るために,月経教育当日から3か月間の月経痛に対す るセルフケア,月経教育に関する満足度等を尋ねた。 保健体育の授業内に研究協力者に女子生徒に調査票を 配布していただき,記入後教室内に設置した回収箱へ 投函してもらった。 月経状況(月経周期),月経痛に対するセルフケア, 月経教育に対する満足度(学校での月経教育の満足 度,今回の月経教育の満足度)については「とても~ いいえ」の 5段階から選択してもらった,月経教育を 受講してみての感想や意見,質問等に関して自由記載 を求めた。 なお,月経教育直後と月経教育終了3ヵ月後の各個 人の変化をみるために調査票に ID 番号を付けて連結 可能匿名化とした。 4.月経教育の内容 性教育等の経験がある研究者が保健体育の授業に月 経教育を行った。月経教育は今回の研究のために特別 に組み込んだプログラムである。研究協力者には同席 してもらい,授業を一緒に聞いてもらった。 月経教育は 124 名の対象者に対し 1 回行った。研究 協力者より教育当日は男女分かれて授業を行うことを 説明してもらい,女子生徒が月経教育を受けている 間,男子生徒は別教員による体育の授業を受けても らった。 月経の正常と異常,月経随伴症状のメカニズム,月 経痛の対処法(マッサージ・ツボ押し・アロマセラ ピー・マンスリービクス・生活習慣の改善・薬物療法 ・月経記録),生活習慣の影響,薬物療法の種類と活 用方法について教育した。45 分の保健体育の授業時 間内で実施し,パワーポイントを用いて講義形式で 行った。なお月経痛の対処法であるマッサージ・ツボ 押し・マンスリービクスに関しては,腹部のマッ サージ(①お腹に手のひらをあて温めるように上下に 50回位こすり合わせる②温まった手を痛い部分にあ てて温める③お腹を膨らませながらゆっくり深呼吸 ④お腹を手のひらで円を描くようにさする),ツボ押 し(合谷,三陰交,腎愈,膀胱愈),月経を和らげる 体操であるマンスリービクス(①立った姿勢,②椅子 に座った姿勢,③仰向けの姿勢,④四つん這いの姿 勢)について資料を配布して,実演で指導しながら生 徒と一緒に行った。「月経の管理」という項目では,月 経記録の見本と記録用紙を3ヵ月分配布し記録するよ うに説明した。配布するのみで回収はしなかった。 月経教育の内容については研究者と母性看護学分野 の教員二人で検討し作成した。 5.データの分析方法 対象者の属性,月経状況,身体・心理・社会的要因, 月経教育直後と3ヵ月後におけるセルフケア23項目の 実施状況,月経教育後に新たに実施したセルフケアの 有無について単純集計を行った。「月経教育直後」と 「月経教育3ヵ月後」におけるセルフケア23項目の実施 人数の変化はMcNemar検定を行った。また,身体・心 理・社会的要因は独立変数としてそれぞれ2群に分け, 新たに実施したセルフケアの有無との比較,セルフケ ア 23 項目の実施人数の変化との比較は χ2 検定を行っ た。データ解析には統計ソフト IBM SPSS Statistics Version22.0を使用し,統計的有意水準5%未満とした。 6.倫理的配慮 研究者は A 高校の学校長および研究協力者に対し,

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研究内容,研究の目的,意義,方法,期待される利益 および研究に伴う不利益などを文書及び口頭で説明 し,調査の協力に承諾していただいた。対象者に対し ては研究協力者から,研究協力は自由意思であるこ と,辞退されても不利益を被らないこと,調査用紙は 連結可能匿名化することで個人が特定できないよう配 慮し,個人が特定できる形での集計はしないこと,他 者の目に触れないよう厳重に管理し,統計処理後は破 棄し,調査結果を研究として公開する際には集団的な 集計結果のみを公開すること,得られたデータは研究 以外の目的で一切使用しないことを文書及び口頭で説 明していただいた。また,時間の拘束に関しては,講 義と質問紙調査を同時に行うことで,精神的および肉 体的負担がかかることが予想されたため,生徒の体調 を十分に確認し,疲労時や体調不良時は調査を中止す ることとした。なお本研究はヘルシンキ宣言及び疫学 研究に関する倫理指針に従い実施した。また, 長崎 大学大学院医歯薬学総合研究科倫理委員会の審査を受 け,承認(承認番号15010803)を得て開始した。

Ⅲ.結   果

1.対象者の属性 女子生徒 127 名に調査協力を依頼し,1 回目は 127 名の生徒から(回収率100%),2回目は124名の生徒か ら(回収率 97.6%)回答・回収された。1 回目・ 2 回目 の調査ともに回答・回収されたのは124名,有効回答 数は 124 名(有効回答率 100%),そのうち月経未発来 の生徒1名を除く123名を分析対象とした。 対象者の年齢は16~17 歳,身長の平均は 157.5(SD 5.2)cm,体重の平均は 50.4(SD 5.9)kg,BMI(Body Mass Index)の平均は 20.3 SD 1.9kg/m2,部活動は, 運動部41 名(33.1%),文化部83 名(66.9%)であった。 2.月経状況 対象者の月経状況について表1に示す。初経年齢の 平均は 11.8(SD3.6)歳であった。【月経周期】におい て,正常周期である「25~38 日」と回答した者は全体 の約 7割であり,異常周期が全体の約 2 割,不整周期 が約1割であった。このうち,初経の発来は認められ 表1 対象者の月経状況 N=123 人数 (%) 月経周期 24日以内 16 (13.0) 25~38日 84 (68.3) 39~3カ月 7 (5.7) 3カ月以上月経がない 3 (2.4) 不整周期 13 (10.6) 経血量 多量 13 (10.6) 中等量 94 (76.4) 少量 11 (8.9) 不規則 1 (0.8) 無回答 4 (3.3) 月経持続日数 2日以内 2 (1.6) 3~7日以内 102 (82.9) 8日以上 5 (4.1) 不規則 10 (8.1) 無回答 4 (3.3) 月経痛 頻度 毎月 30 (24.4) ほぼ毎月 35 (28.5) 時々 30 (24.4) ほとんどない 18 (14.6) 全くない 6 (4.9) 無回答 4 (3.3) 生活への影響 1日中横になっている 5 (4.1) 生活に支障を来す(対策をしても学校を休むことがある) 1 (0.8) 生活に差し支える(対策をすると学校を休むことはない) 40 (32.5) 普通に過ごすことができる 72 (58.5) 無回答 5 (4.1) 鎮痛剤 使用する 43 (35.0) 使用しない 77 (62.6) 無回答 3 (2.4)

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ているが,調査期間の3ヵ月間に月経がきていない続 発性無月経が3名存在した。また,【月経痛の頻度】に お い て,「毎 月」30 人(24.4%),「ほ ぼ 毎 月」35 人 (28.5%),「時々」30 人(24.4%)と回答した月経痛のあ る者は,全体の約8割であった。 【月経痛の生活への影響】において,約6割は普通に 過ごすことができると回答していたが,約4割は生活 に影響していた。影響していたと回答した者の中で “動くことも辛く1日中横になっている”の5名,“生活 に支障を来たす。対策をしても学校を休むことがあ る”の 1 名は,病院の受診や低用量ピルの服用はして いなかった。また,このうち2名は鎮痛剤の使用もし ていなかった。 【鎮痛剤の使用】において,使用している者は 43 名 で全体の35.0%であったが,月経痛がある者での使用 者は45.3%と約半数であった。 3.月経教育直後と3ヵ月後におけるセルフケアの実 施状況 月経教育直後と3ヵ月後におけるセルフケアの実施 人数について表2に示す。セルフケアの実施について 複数回答を得た。月経教育直後と3ヵ月後で実施人数 が有意に増加した項目は4項目あり,【月経記録をつけ る】(p=0.004),【横になる】(p<0.001),【腹部・腰部の マッサージをする】(p=0.004),【十分な睡眠をとる】 (p=0.029)であった。 一方,月経教育直後と3ヵ月後で実施人数が有意に 減少した項目は3項目あり,【病院の受診】(p=0.021), 【浴槽に浸かる】(p=0.031),【食事を 3 食しっかりと る】(p=0.041)であった。 【病院の受診】に関しては,月経教育直後までに受 診していた者は11名で,その理由は「頻発月経」2名, 「続発性無月経」1名,「月経未発来」3名,「月経痛がひ どい」2名,「月経が何ヶ月も止まらない」2名,「体質改 善」1 名であった。病院を受診した者の自由回答の欄 に「症状の改善がみられ受診して良かった」と感じて いる者がいた。病院を受診しない者には「病院には行 かなくてもいいと思ってしまう」と回答していた者が いた。月経教育後に新たに病院を受診した者は2名で あり,受診した理由は「低用量ピルを処方してもらう ため」1名,「続発性無月経」1名であった。 4.セルフケアの変化と身体・心理・社会的要因との 関連 月経教育後に新たに実施したセルフケアの有無と身 体・心理・社会的要因との関連を調べた(表3)。その 結果,身体・心理・社会的要因のうち,「月経痛」のみ 有意な関連が認められた。つまり,新たに実施したセ 表2 月経教育直後と3ヵ月後のセルフケア23項目の実施人数(複数回答) N=123 セルフケア項目 教育直後人数 (%) 3カ月後人数 (%) p値a 病院を受診する 11 (8.9) 3 (2.4) 0.021 基礎体温を測定する 0 (0.0) 1 (0.8) ― 低用量ピルを服用する 1 (0.8) 3 (2.4) 0.500 月経記録を付ける 33 (26.8) 49 (39.8) 0.004 横になる 31 (25.2) 50 (40.7) <0.001 腹部を保温する 30 (24.4) 32 (26.0) 0.839 暖かい服装をする 17 (13.8) 16 (13.0) 1.000 浴槽に浸かる 21 (17.1) 11 (8.9) 0.031 腹部・腰部のマッサージをする 16 (13.0) 30 (24.4) 0.004 ツボ押しをする 5 (4.1) 5 (4.1) 1.000 アロマを焚く 2 (1.6) 0 (0.0) ― 軽い体操ストレッチをする 10 (8.1) 10 (8.1) 1.000 マンスリービクスをする 0 (0.0) 2 (1.6) ― 食事を3食しっかりとる 25 (20.3) 15 (12.2) 0.041 カフェインを控える 3 (2.4) 2 (1.6) 1.000 塩辛いものを控える 1 (0.8) 0 (0.0) ― 甘いものを控える 1 (0.8) 2 (1.6) 1.000 十分な睡眠をとる 16 (13.0) 29 (23.6) 0.029 定期的に運動をする 11 (8.9) 7 (5.7) 0.344 便秘を予防する 6 (4.9) 7 (5.7) 1.000 気分転換をする 14 (11.4) 13 (10.6) 1.000 ストレスを発散する 15 (12.2) 8 (6.5) 0.188 月経をポジティブに捉える 2 (1.6) 2 (1.6) 1.000 aMcNemar検定

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ルフケアが1項目以上ある者は,月経痛なし群に比べ あり群で有意に多かった(p=0.025)。その他の要因で は有意な関連は認められなかった。 また,月経教育直後と3ヵ月後のセルフケア実施人 数と身体・心理・社会的要因との関連を調べた(表4)。 月経教育直後と3ヵ月後ともに未実施だった者の人数 と,月経教育直後は未実施だったが月経教育3カ月後 に実施した者の人数の比較,また,月経教育直後と 3ヵ月後ともに実施していた者の人数と,月経教育直 後までは実施していたが月経教育 3ヵ月後に未実施 だった者の人数の比較を行った。その結果,有意な関 連が認められた項目は【月経記録をつける】【腹部・腰 部のマッサージをする】【食事を3食しっかりとる】3項 目であった。まず1つ目に,【月経記録をつける】の項 目において,「看病や気にかけてくれる人」のあり群は なし群に比べ,月経教育3ヵ月後に有意に実施者が増 加していた(p=0.022)。2つ目に,【腹部・腰部のマッ サージをする】の項目において,「月経痛」のあり群は なし群に比べ,月経教育3カ月後に有意に実施者が増 加していた(p=0.045)。3つ目に,【食事を3食しっかり とる】の項目において,「情報を与えてくれる人」のな し群はあり群に比べ,月経教育後に有意に実施者が減 少していた(p=0.005)。 5.月経教育に対する満足度と自由記載について 学校での 月経教育の満足度 は「とても」が 21 名 (16.9%),「まあまあ」が 76 名(61.3%)で約 8 割を占め ており,今回の月経教育の満足度は「とても」が80名 (64.5%),「まあまあ」が 40 名(32.3%)でほぼ 100% で あった。自由記載については,「月経の捉え方が変 わったのでよかったです。」,「受講後,月経の記録をつ けるようになりました。」,「月経のしくみを教えても らってありがたかったです。」など月経に関する知識 について,「ツボ押しとか体操とかで,ほんの少しは 効いているように感じた。」,「月経痛もちゃんと対応で きるようになり,やわらぎました。ネガティブに感じ ないようにしたい。」など月経痛の効果について,ま た「ナプキンの取り換え頻度について」質問があった。

Ⅳ.考   察

1.対象者の背景 対象者の平均身長は 157.5(SD5.2)cm,平均体重は 50.4(SD5.9)kg であり,文部科学省の調査結果におけ る高校 2 年生の平均身長 157.6cm と平均体重 52.4kg と 比 較 し て も 平 均 的 な 結 果 で あ っ た(文 部 科 学 省, 2015)。部活動は,運動部 41 名(33.1%)であり,ス ポーツ庁(2017)の調査では平成16年度から平成28年 度の高校女子の運動部活動参加率は25.7% から 27.1% と横ばいであり,全国に比べ対象者はやや高い割合で あった。対象者の平均初経年齢は 11.8(SD3.6)歳で あった。初経年齢は体質・栄養・職業・人種・文化程 度・遺伝などの関係により個人的に遅速はあるが,わ が国ではだいたい 10~16 歳の範囲で,一般に 12 歳前 表3 新たに実施したセルフケアの有無と身体・心理・社会的要因との関連 要因 n 新たなセルフケア無 新たなセルフケア有 p値a 人数 (%) 人数 (%) 月経痛 119b あり群 40 (33.6) 55 (46.2) 0.025 なし群 17 (14.3) 7 (5.9) 月経の サポート状況 3項目 8 > > > > > > < > > > > > > : 情報を与えてくれる人 120 あり群 25 (20.8) 33 (27.5) 0.267 なし群 33 (27.5) 29 (24.2) 気兼ねなく話せる人 120 あり群なし群 46 (38.3) 46 (38.3) 0.508 12 (10.0) 16 (13.3) 看病や気にかけてくれる人 119b あり群 42 (35.3) 46 (38.7) 0.71 なし群 16 (13.4) 15 (12.6) 楽観性 120 あり群 35 (29.2) 41 (34.2) 0.511 なし群 23 (19.2) 21 (17.5) 自覚的ストレス 120 あり群なし群 38 (31.7) 39 (32.5) 0.765 20 (16.7) 23 (19.2) 主観的健康感 120 あり群 50 (41.7) 48 (40.0) 0.214 なし群 8 (6.7) 14 (11.7) aχ2検定 b1名が無回答のため n=119

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表4 教育直後と3ヵ月後のセルフケア実施人数の変化と身体・心理・社会的要因との関連 【月経記録をつける】 要因 n 教育直後と 3ヵ月後ともに未実施 教育直後未実施,3ヵ月後実施 p 値a 人数 (%) 人数 (%) 月経痛 87b あり群 53 (60.9) 20 (23.0) 0.035 なし群 12 (13.8) 2 (2.3) 月経の サポート状況 3項目 8 > > > > > > < > > > > > > : 情報を与えてくれる人 90 あり群 31 (34.4) 8 (8.9) 0.448 なし群 37 (41.1) 14 (15.6) 気兼ねなく話せる人 90 あり群 51 (56.7) 16 (17.8) 0.832 なし群 17 (18.9) 6 (6.7) 看病や気にかけてくれる人 89c あり群 44 (49.4) 20 (22.5) 0.022 なし群 23 (25.8) 2 (2.2) 楽観性 90 あり群 42 (46.7) 14 (15.6) 0.875 なし群 26 (28.9) 8 (8.9) 自覚的ストレス 90 あり群 43 (47.8) 14 (15.6) 0.973 なし群 25 (27.8) 8 (8.9) 主観的健康感 90 あり群 55 (61.1) 17 (18.9) 0.713 なし群 13 (14.4) 5 (5.6) a χ2 検定 b 3名が無回答のため n=87,c1名が無回答のため n=89 【腰部・腹部のマッサージをする】 要因 n 教育直後と 3ヵ月後ともに未実施 教育直後未実施,3ヵ月後実施 p 値a 人数 (%) 人数 (%) 月経痛 103b あり群 63 (61.2) 18 (17.5) 0.045 なし群 22 (21.4) 0 (0.0) 月経の サポート状況 3項目 8 > > > > > > < > > > > > > : 情報を与えてくれる人 104 あり群 39 (37.5) 10 (9.6) 0.043 なし群 47 (45.2) 8 (7.7) 気兼ねなく話せる人 104 あり群 66 (63.5) 14 (13.5) 0.925 なし群 20 (19.2) 4 (3.8) 看病や気にかけてくれる人 103c あり群 64 (62.1) 14 (13.6) 0.823 なし群 21 (20.4) 4 (3.9) 楽観性 104 あり群 53 (51.0) 12 (11.5) 0.688 なし群 53 (31.7) 6 (5.8) 自覚的ストレス 104 あり群 53 (51.0) 10 (9.6) 0.632 なし群 33 (31.7) 8 (7.7) 主観的健康感 104 あり群 71 (68.3) 13 (12.5) 0.312 なし群 15 (14.4) 5 (4.8) a χ2 検定 b 1名が無回答のため n=103,c1名が無回答のため n=103 【食事を 3 食しっかりとる】 要因 n 教育直後と 3ヵ月後ともに実施 教育直後実施,3ヵ月後未実施 p 値a 人数 (%) 人数 (%) 月経痛 25 あり群 9 (36.0) 13 (52.0) 0.802 なし群 1 (4.0) 2 (8.0) 月経の サポート状況 3項目 8 > > > > > > < > > > > > > : 情報を与えてくれる人 25 あり群 9 (36.0) 5 (20.0) 0.005 なし群 1 (4.0) 10 (40.0) 気兼ねなく話せる人 25 あり群 9 (36.0) 10 (40.0) 0.181 なし群 1 (4.0) 5 (20.0) 看病や気にかけてくれる人 25 あり群 9 (36.0) 9 (36.0) 0.102 なし群 1 (4.0) 6 (24.0) 楽観性 25 あり群 5 (20.0) 12 (48.0) 0.115 なし群 5 (20.0) 3 (12.0) 自覚的ストレス 25 あり群 8 (32.0) 11 (44.0) 0.702 なし群 2 (8.0) 4 (16.0) 主観的健康感 25 あり群 9 (36.0) 12 (48.0) 0.504 なし群 1 (4.0) 3 (12.0) aχ2検定

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後であるとされていた(我部山他,2013)。本研究の 対象者の初経年齢もこれとほぼ一致していた。また, 高校1~3年生の女子生徒1,339名を対象とした研究で は,高校2年生の月経痛の状況は,月経痛があるもの は80.2%,月経痛がある者の生活への影響として,影 響がある者が 54.0%(横になる 1.3% ・支障をきたす 10.2%・差し支える 42.5%),普通に過ごせる者 46.0% であった(池田他,2011)。また,鎮痛剤の使用では, 使用する 50.0% であったと報告されていた(池田他, 2011)。本研究でも約 8 割の生徒が月経痛を経験し, その約半数が鎮痛剤を使用していることから,先行研 究と同様の結果が得られた。その他,経血量,月経持 続日数においても先行研究(蝦名他,2010;池田他, 2011;池田他,2013a;泉澤他,2008;野田,2003; 戸田他,2008;渡邊他,2007;渡邊他,2011)とほぼ 一致していた。したがって,本研究では,一般的な高 校生の結果が得られていると考える。 2.月経教育直後と3ヵ月後のセルフケアの実施状況 月経教育直後と3ヵ月後のセルフケア23項目の実施 人数において【医療機関の受診】【月経記録をつける】 【横になる】【浴槽に浸かる】【腰部・腹部のマッサージ をする】【食事を 3 食しっかりとる】【十分な睡眠をと る】の7項目で有意な変化が認められた。月経教育3ヵ 月後に有意に増加していたのは,【月経記録をつける】 【横になる】【腰部・腹部のマッサージをする】【十分な 睡眠をとる】であった。【月経記録】に関しては,月経 教育直後に 26.8% が付けていると回答した。これは, 蝦名他(2010)の高校2年生の月経記録の状況32.7%と 比較するとやや低い結果であったが,本研究では月経 教育 3ヵ月後に 39.8% の生徒が月経記録を付けるよう になっていた。月経の記録をすることによって,自分 の月経周期,月経周期に伴う心身の変化を自覚するこ とができ,効果的なセルフケアおよび身体の異常の早 期発見につながったと言われている(野田,2004)。 本研究において,月経記録を付ける人が増えた理由と しては,月経教育で月経のメカニズムと月経周期に 伴って起こる体調の変化を教えたことで,自分の身体 の変化を知ったこと,さらに,月経教育と併せて, 3ヵ月分の記録用紙を配付し,記録の仕方についても 説明を行ったことで,その管理が意識づけられたので はないかと考える。また,その他,有意な結果が得ら れたものとして【横になる】【腰部・腹部のマッサージ をする】【十分な睡眠をとる】があった。Pender(1987/ 2002)はヘルスプロモーションモデルについて,「人間 は健康を追及する際に周りの環境と多元的に作用し合 い,相互作用を表すモデルであること,ヘルスプロ モーションの前提として保健行動を作り上げそしてそ れを維持し,またそのために環境を調整していくうえ でのクライアント自身の積極的な役割である」ことを 述べていた。さらにヘルスプロモーションへの影響と して,過去の関連行動や価値観などの「個人の特性と 経験」が自分で乗り越えることができるか,などの 「行動に特異的な認識と感情」に影響し,「行動の成果」 につながることが示されていた。つまり,これら3項 目については過去におこない効果があったセルフケア の可能性がある。また高校生にとって負担がなく実施 可能な内容であったことも実施者が増えた理由である と考えられた。 一方,月経教育直後と3ヵ月後で有意に減少したの は,【病院の受診】【浴槽に浸かる】【食事を 3 食しっか りとる】であった。【病院の受診】に関しては,月経教 育直後に受診していた 11 名のうち,月経教育後に新 たに病院を受診した者は 2 名,月経教育 3ヵ月まで継 続して受診していた者は1名のみであった。病院の受 診に関しては【これまでに月経に関することで病院を 受診したことがありますか】という質問を行ってお り,受診の継続が少ないことの理由の一つとして質問 の範囲が広かったこと,1度は受診したがその後月経 に関する問題が軽減もしくは消失した可能性,または 月経に問題を抱えていてもそのまま放置している,鎮 痛剤等で対応している等も考えられた。 また,【浴槽に浸かる】に関しては,月経教育直後の 調査が5月,3ヵ月後の調査が9月であったため,季節 が影響していると考えられる。【食事を3食しっかりと る】に関しては,調査期間に夏期休暇や文化祭,体育 祭の準備期間をはさんだため,生活習慣が変化したこ とや,夏の暑さによる食欲や体調管理の難しさが影響 しているのではないかと考えられる。 3.月経教育直後と3ヵ月後におけるセルフケアの変 容と身体・心理・社会的要因との関連 本研究では,セルフケアの変容に関連する要因とし て,月経痛,月経のサポート状況,楽観性,自覚的ス トレス,主観的健康感との関連を調べた。その結果, セルフケアの変容には月経痛および月経のサポート状 況に関連が認められた。

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1)月経痛 セルフケアの変容に関連する要因として「月経痛」 に関連がみられた。 セルフケア行動に最も影響しているのは月経痛であ るという報告や(野田,2003),月経随伴症状が強い 者ほどセルフケアを実施するという報告がある(渡邊 他,2011)。本研究においても月経痛のあり群はなし 群よりも,教育後に新たなセルフケアを実施した者が 有意に多く,また,セルフケアの項目では【腹部・腰 部のマッサージをする】の項目において,月経痛のあ り群がなし群よりも有意に実施者が増加していた。こ れより,月経痛がセルフケアを行う要因のひとつであ ると考えられる。月経痛は状況を改善したいという意 思につながり,また,セルフケアを行うことで苦痛が 軽減するという期待が,セルフケアの実施につな がっているのではないかと考えた。 2)月経のサポート状況 セルフケアの変容に関連する要因として「月経のサ ポート状況」に関連がみられた。 セルフケアに対する効果的な支援の一つに,情報の 提 供 や 情 緒 面 へ の サ ポ ー ト が 有 効 で あ る こ と や (Lemaire,2004),またセルフケア行動を行っている 女子学生のサポート機能得点が有意に高いという報告 がある(渡邊他,2011)。 本研究においては,セルフケア項目では【月経記録 をつける】と【食事を3食しっかりとる】の項目におい て月経のサポート状況と関連が認められた。2 つと も,あり群がなし群よりも有意に実施者が増加してい た。一方,【食事を 3 食しっかりとる】の項目でもサ ポート状況と関連が認められたが,この項目では,な し群があり群よりも有意に実施者が減少していた。サ ポート状況のある者はない者と比較してセルフケアの 実施や継続につながっていることから,サポート状況 はセルフケアの実施と,継続に関連する要因のひとつ であると考えられる。月経のサポート状況は,痛みや 悩みなどに対する共感や安心感となり,行動しようと する意思や継続の支えとなっているのではないかと考 えた。 また,今回,月経教育を行ったことが,情報提供と なりセルフケアの実施が増えたとも考えられるため, 情報提供は重要であるということが示唆された。月経 教育の中で,将来の安全な妊娠・出産に関する知識や 健康管理へとつなげて教育していくことが重要である と考える。 4.研究の限界と課題 本研究の対象者である高校 2 年生は,1 校のみで データ収集を行ったため,今回の結果を一般化するに は限界がある。また,月経痛に関するセルフケアの指 標はなく,尺度を用いない独自の質問紙調査である。 さらに,月経状況やセルフケア行動は回想法・自己申 告による回答であり,質問内容の理解度や回答結果に ばらつきがあると考えられることから,信頼性,妥当 性の確保が十分であるとはいえない。月経教育の効果 については,質問紙によるセルフケアの方法の提示 が,情報提供となり結果に影響したことも考えられ る。また,本研究では,月経教育前後におけるセルフ ケアの実施,つまりプロセスのみの評価を行った。今 後は,行動定着のための支援と,セルフケアの月経痛 改善における効果,アウトカムまで評価する必要があ る。しかし,それには長期的,継続的な支援が必要で ある。

Ⅴ.結   語

高校生を対象に月経教育を行った結果,以下3点が 明らかとなった。 1. 月経教育直後には実施していなかったが,月経 教育3ヵ月後に新たに実施したセルフケアが1つ 以上ある者は全体の約半数であった。また,実 施者が増えたセルフケア項目は【月経記録をつ ける】【十分な睡眠をとる】【横になる】等であっ た。 2. 月経教育直後から 3ヵ月後のセルフケア 23 項目 の実施人数の変化において,7項目に有意な差が 認められた。実施者が有意に増加した項目は 【月経記録をつける】【横になる】【腹部・腰部の マッサージをする】【十分な睡眠をとる】であっ た。一方,有意に減少した項目は【病院の受診】 【浴槽に浸かる】【食事を 3 食しっかりとる】で あった。 3. 身体・心理・社会的要因のうち,セルフケアの 変容と関連が認められたのは,「月経痛」と「月経 のサポート状況」であった。 謝 辞 本研究を遂行するにあたり,研究の趣旨をご理解い ただき快くご協力下さった,A高校の先生方,生徒の 皆様に心より感謝致します。

(11)

本研究の内容の一部は第 31 回日本助産学会学術集 会(2017)において発表した。なお本研究は,長崎大 学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻修士論文を加 筆・修正したものである。 利益相反 論文内容に関し開示すべき利益相反の事項はない。 文 献 安達智子(2007).クリニカルカンファレンス(生殖内分泌 領域);2.思春期の女性医学 3)月経困難症.日産 婦誌,58(9),454-460. 蝦名智子,松浦和代(2010).思春期女子における月経の 実態と月経教育に関する調査研究.母性衛生,51(1), 111-118. 池田智子,鈴木康江,前田隆子,原田省(2011).高校生 における月経痛と関連する因子の実態調査とリラク セーション法による月経痛の軽減効果.母性衛生, 52(1),129-138. 池田智子,鈴木康江,前田隆子(2013a).高校生における 月経教育の教育評価.日本医学看護学教育学会誌, 22,33-37. 池田智子,鈴木康江,前田隆子(2013b).高校生における 月経随伴症状と生活習慣および冷えの自覚関連.母 性衛生,53(4),487-496. 井関多久美,田口優,紺野剛良(2011).適用度の異なる2 種類の上記温熱シート使用により月経痛症状の緩和 効果.日本産婦人科学会誌,63(2),482. 泉澤真紀,山本ハ千代,宮城由美子,岸本信子(2008). 思春期生徒の月経痛と月経に関する知識の実態と教 育的課題.母性衛生,49(2),347-356.

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文部科学省(2017b).中学校学習指導要領 第 2 章第 7 節 保健体育.http://www.mext.go.jp/component/a_menu/ education / micro_detail / __icsFiles / afieldfile /2019/09/26/ 1413522_002.pdf [2019/10/28]

文部科学省(2018).高等学校学習指導要領 第 2 章第6 節 保健体育.http://www.mext.go.jp/component/a_menu/ education / micro_detail / __icsFiles / afieldfile /2019/09/26/ 1384661_6_1_2.pdf [2019/10/28] 野田洋子(2003).女子学生の月経の経験 第 2 報 月経の経 験の関連要因.女性心身医学会雑誌,8(1),64-78. 野田洋子(2004).女性と月経.吉沢豊予子.女性生涯看 護学(初版).204-218,東京:真興交易. 緒方妙子,大塔美咲子(2012).大学生の月経前症候群 (PMS)と日常生活習慣及びセルフケア実態.九州看 護福祉大学紀要,13(1),57-65,2012. 緒方妙子,宇野亜紀(2008).女子学生の「月経の捉え方」 「月経痛及びセルフケア行動」との関連.九州看護福 祉大学紀要,11(1),3-9. 小澤範子,久米美代子(2004).月経痛とそれに対するセ ルフケアの実態調査 ― 月経教育と関連させて ―.日 本ウーマンズヘルス学会誌,3,87-96. Pender, N.J.(1987)/小西恵美子訳(2002).ペンダーヘル スプロモーション看護論.東京:日本看護協会出版 会. スポーツ庁(2017).運動部活動の在り方に関する総合的 なガイドライン作成検討会議(第 1 回).http://www. mext.go.jp / sports / b_menu / shingi /013_index / shiryo / __ i c s F i l e s / a f i e l d f i l e / 2 0 1 7 / 0 8 / 1 7 / 1 3 8 6 1 9 4 _ 0 2 .

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表 4 教育直後と3ヵ月後のセルフケア実施人数の変化と身体・心理・社会的要因との関連 【月経記録をつける】 要因 n 教育直後と3ヵ月後ともに未実施 教育直後未実施,3ヵ月後実施 p 値 a 人数 (%) 人数 (%) 月経痛 87 b あり群 53 (60.9) 20 (23.0) 0.035 なし群 12 (13.8) 2 (2.3) 月経の サポート状況 3 項目 8&gt;&gt;&gt;&gt;&gt;&gt;&lt;&gt;&gt;&gt; &gt; &gt; &gt; : 情報を与えてくれる人

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