• 検索結果がありません。

SNSが援助資源としての機能を有することの質的検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "SNSが援助資源としての機能を有することの質的検討"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-84 464

-SNSが援助資源としての機能を有することの質的検討

○伊藤 千夏1)、高橋 史2) 1 )信州大学大学院教育学研究科学校教育専攻臨床心理学専修、 2 )信州大学学術研究院教育学系 【目的】 現 代 に お い て イ ン タ ー ネ ッ ト を 介 し た コ ミ ュ ニ ケーションは増加している。インターネットは特に若 い世代での普及が進んでおり,総務省(2017)によれ ば20代の99.2%,13〜19歳の98.4%がインターネットを 利用している。 6 〜12歳の子ども達でも,80%以上が インターネットを利用している。特にインターネット を介したコミュニケーションツールであるSNS(Social Networking Service)は中高生,20代の若者の 3 分の 2 以上が利用している(内閣府, 2017)。 インターネットが広く利用されるようになったこと で,過剰利用によるネット依存が問題視され,多く取 り上げられてきている。特に心身の健康への悪影響が 指摘されており,ネット依存は睡眠時間の短縮による 生活習慣の乱れ,不安や抑うつを引き起こすとされて いる。また,SNSのようなソーシャルメディアが友人 関係や精神的健康にネガティブな影響を与える可能性 が示唆されている(河井,2014)。 しかし,広く普及したインターネットやSNSの利用 はもはや避けられず,制限による問題対策は難しい。 指摘されてきた問題を避けるためには,SNSを積極的 に活用していくことも必要である。その 1 つとして, 援助資源としての活用が考えられる。例えば長野県で は2017年に中高生向けにLINEを使った相談窓口を開設 したところ, 2 週間で前年度の電話相談の件数の 6 倍 にも上る相談が寄せられた(LINE株式会社, 2017)。 これは,現代の人々がSNSにおいて援助要請を行って いるためだと考えられる。しかし,SNSが援助要請 ツールとして機能するものの,日常生活の利用におい て援助資源としての機能を有するかどうかは定かでは ない。 そこで,本研究ではSNSの利用方法とそのプロセス についての面接調査を通して,SNSが援助資源として の機能を有するのかを質的に検討する。 【方法】 対 象 甲信越地方の 4 年制大学に在籍する大学 生・大学院生計 5 名(男性 3 名,女性 2 名,平均年齢 22.80歳,SD = 0.45)を対象に面接調査を行なった。 手続き まず研究参加にかかわる権利事項を説明 し,研究参加についての同意を得た。その後,以下の 質問を中心に面接調査を行った。 1 . SNSでのコミュニケーションと対面でのコミュニ ケーションではどのような違いがありますか? 2 . SNSを利用していてよかった経験,よかったと 思ったことはありますか?それはどのようなもので すか? 3 . SNSを利用していて不快な経験,嫌な思いをした こ と は あ り ま す か? そ れ は ど の よ う な も の で す か? 面接中の発話内容はすべてICレコーダーを用いて記 録した。所要時間は 1 人当たり30分であった。 会話音声の取り扱い 全ての面接について個人情報 は伏せて逐語録を作成した。逐語録作成後は速やかに 音声データを破棄した。 【結果】 各研究者の語りを分析し,SNSでの援助要請に関す る行動とその結果を抽出した。その結果,図に示すよ うなプロセスが得られた。 解決に至るプロセス 困難に直面した際にSNSで援 助要請を行なったとき,解決できるプロセスとして 「自分のやっていることをSNSで発信することで,近く にいない人や直接関わりはないが同じ取り組みをして いる人から助けてもらえた。」という語りを中心に, 「頑張っている自分や自分のやっていることをアピー ルすることで適切なサポートを得られる」ことがわ かった。適切なサポートとは,専門家によるアドバイ スや対面・非対面での指導など,問題解決に至るサ ポートである。 解決に至らないプロセス SNSで援助要請を行った とき,解決できないプロセスとして「構ってほしい, 私を見てほしいアピールをしてちやほやされると,強 化されて悪循環に陥ってる。」という語りを中心に, 「弱い自分,弱っている自分をアピールして注意を引 くことで表面的かつ不適切なサポートを得られる」こ とがわかった。不適切なサポートとは,直接問題を解 決するものではなく,主に構ってほしいという欲求を 満たすサポートである。 【考察】 SNSの利用方法とそのプロセスから,SNSは援助資源 としての機能を有することが明らかになった。具体的 には困難への対処に際して援助要請をSNSで発信した 結果,解決に至るプロセスと至らないプロセスの両方 が得られた。 プロセスの分岐点となったのは,SNSで発信する際 の「自己表現」の違いであった。解決に至るプロセス では自分自身が何で困っているのかを発信すると適切

(2)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P2-84 465 -なサポートが得られ,解決に至らないプロセスでは 困っている自分自身を発信すると適切ではないサ ポートが得られる,という分岐になった。しかし,こ れらは発信する側の表現の違いのみに絞られている。 援助要請とサポート提供は一方通行ではなく,相互コ ミュニケーションによりサポートが獲得できる。その ため,今後は受信する側の認知の影響や発信対象・範 囲のような他の要因についても検討が必要である。 また,SNSを援助資源とするには援助要請者だけで はなく,援助者側の認知やスキル,行動プロセスにつ いても明らかにする必要がある。 【引用文献】 総務省 (2017). 平成28年通信利用動向調査の結果 h t t p : / / w w w . s o u m u . g o . j p / j o h o t s u s i n t o k e i / statistics/data/170608_1.pdf 内閣府 (2017). 平成28年度青少年のインターネット 利用環境実態調査 調査結果(速報) http://www8. cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/h28/net-jittai/pdf/sokuhou.pdf LINE株式会社 (2017). 長野県とLINE株式会社による L I N E を 活 用 し た い じ め 等 相 談 の 中 間 報 告 資 料 https://scdn.line-apps.com/stf/linecorp/ja/pr/ NaganoPrefectureReportMaterial.pdf 河井大介 (2014). ソーシャルメディア・パラドクス ―ソーシャルメディア利用は友人関係を抑制し精神的 健康を悪化させるか― 社会情報学, 3( 1 ), 31-46.

参照

関連したドキュメント

(実被害,構造物最大応答)との検討に用いられている。一般に地震動の破壊力を示す指標として,入

これらの定義でも分かるように, Impairment に関しては解剖学的または生理学的な異常 としてほぼ続一されているが, disability と

次に、第 2 部は、スキーマ療法による認知の修正を目指したプログラムとな

ヒュームがこのような表現をとるのは当然の ことながら、「人間は理性によって感情を支配

この大会は、我が国の大切な文化財である民俗芸能の保存振興と後継者育成の一助となることを目的として開催してまい

「欲求とはけっしてある特定のモノへの欲求で はなくて、差異への欲求(社会的な意味への 欲望)であることを認めるなら、完全な満足な どというものは存在しない

   遠くに住んでいる、家に入られることに抵抗感があるなどの 療養中の子どもへの直接支援の難しさを、 IT という手段を使えば

雇用契約としての扱い等の検討が行われている︒しかしながらこれらの尽力によっても︑婚姻制度上の難点や人格的