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埼 玉 工 業 大 学 ( 小 西 克 享 ) 熱 力 学 講 義 ノート( 第 7 版 ) 表 紙 & 目 次 はじめに 熱 力 学 は 熱 の 概 念 を 教 える 科 目 である. 熱 は 工 業 生 産 や 日 常 生 活 とは 切 っても 切 れない 関 係 に あり, 機 械 工 学 の

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熱力学講義ノート

(第 7 版)

埼玉工業大学工学部機械工学科

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はじめに 熱力学は熱の概念を教える科目である.熱は工業生産や日常生活とは切っても切れない関係に あり,機械工学のみならず物作りに関連するあらゆる分野において重要な科目の一つとなってい る.一般に,熱力学は機械系と化学系によってその内容が若干異なり,科目の呼び名も工業熱力 学,応用熱力学,化学熱力学などと変化する.市販のテキストが多数存在し,内容も千差万別で あるため,教員としては教科書選びに事欠かない.しかしながら教科書はその性質上,関係式の 結果のみが示され導出過程は省略される場合が多く,熱力学も例外ではない.しかも,熱力学は 厄介なことに概念の解説が多く視覚的に捉えにくいため,理解が難しく習得が困難である.実際, 熱力学を勉強し始めると,専門用語の意味だけでなく,式の導出が意味不明で,内容が理解でき ないことが少なくない. 本書は,このように難解な部分を多く含む熱力学を工科系大学生に教育する目的から,講義ノ ートとして記述したものである.市販のテキストの要点を整理し,用語や法則の意味を解説する とともに,関係式をその導出過程とともに記述しており,講義では実際に本書の内容に従って解 説を行っている.なお,一部説明を省略した項目があり,それらについては,他の参考図書を参 照していただきたい. なお,本書には各章ごとの基本事項の理解度を判定するための理解度チェックが用意されてい るが,これ以外にも本書の各章の内容に対応した練習問題 http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/Lecture/Thermodynamics/ThermodyanmicsQuestions_4th.pdf も用意しているので,理解をより確実なものとするため,これらの問題を解くことを推奨する. 本書の内容は今後とも加筆修正の予定である.内容に関して不明な点やお気付きの点があれば 著者までご連絡いただきたい. 第 7 版 平成 25 年 4 月 1 日 埼玉工業大学 工学部 機械工学科 小西克享

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目次 第 1 章 熱と温度 1.1 圧力と熱の本質 1.2 熱と温度 ・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.2.1 熱の種類 ・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.2.2 温度 ・・・・・・・・・・・・・・ 6 1.2.3 比熱 ・・・・・・・・・・・・・・ 8 1.2 単位 1.2.1 次元 ・・・・・・・・・・・・・・ 9 1.2.2 基本量と基本単位 ・・・・・・・・・・・・・・ 9 第 2 章 熱力学第 1 法則 2.1 エネルギー保存則 ・・・・・・・・・・・・・・ 11 2.2 非流動系のエネルギー変換 ・・・・・・・・・・・・・・ 12 2.3 流動系のエネルギー変換 ・・・・・・・・・・・・・・ 15 2.4 状態量 ・・・・・・・・・・・・・・ 17 第 3 章 理想気体 3.1 理想気体 ・・・・・・・・・・・・・・ 18 3.2 理想気体の状態方程式とその意味 ・・・・・・・・・・・・・・ 18 3.3 比熱と比熱比 ・・・・・・・・・・・・・・ 19 3.4 エントロピー ・・・・・・・・・・・・・・ 19 3.5 理想気体の状態変化 3.5.1 等温変化 ・・・・・・・・・・・・・・ 21 3.5.2 等圧変化 ・・・・・・・・・・・・・・ 21 3.5.3 等容変化 ・・・・・・・・・・・・・・ 22 3.5.4 断熱変化 ・・・・・・・・・・・・・・ 23 3.5.5 ポリトロープ変化 ・・・・・・・・・・・・・・ 24 3.6 可逆変化と不可逆変化 ・・・・・・・・・・・・・・ 25 3.7 混合気体の性質(ドルトンの法則) ・・・・・・・・・・・・・・ 25 第 4 章 熱力学第 2 法則 4.1 サイクルと仕事 ・・・・・・・・・・・・・・ 27 4.2 熱効率と動作係数 ・・・・・・・・・・・・・・ 28 4.3 カルノーサイクル ・・・・・・・・・・・・・・ 28 4.4 熱力学の第 2 法則 ・・・・・・・・・・・・・・ 29 4.5 クラジウスの積分とエントロピー ・・・・・・・・・・・・・・ 30 4.6 有効エネルギーと無効エネルギー ・・・・・・・・・・・・・・ 32

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4.7 最大仕事 ・・・・・・・・・・・・・・ 33 第 5 章 熱力学の一般関係式 5.1 基礎式 ・・・・・・・・・・・・・・ 36 5.2 マクスウェルの関係式 ・・・・・・・・・・・・・・ 36 5.3 応用 ・・・・・・・・・・・・・・ 37 5.4 ジュール効果,ジュール・トムソン効果 ・・・・・・・・・・・・・・ 40 第 6 章 蒸気 6.1 蒸発の基礎 ・・・・・・・・・・・・・・ 42 6.2 pvT状態曲面 ・・・・・・・・・・・・・・ 43 6.3 蒸気の熱的状態量 6.3.1 圧縮液と飽和液 ・・・・・・・・・・・・・・ 44 6.3.2 湿り蒸気と乾き飽和蒸気 ・・・・・・・・・・・・・・ 45 6.3.3 過熱蒸気 ・・・・・・・・・・・・・・ 45 6.4 蒸気表と蒸気線図 ・・・・・・・・・・・・・・ 45 6.5 湿り空気 ・・・・・・・・・・・・・・ 46 第 7 章 熱力学のサイクル 7.1 熱機関の概要 ・・・・・・・・・・・・・・ 48 7.2 ガスサイクル機関 7.2.1 熱力学的サイクルの実現 ・・・・・・・・・・・・・・ 48 7.2.2 熱力学的サイクルの種類 ・・・・・・・・・・・・・・ 49 7.2.3 熱力学的サイクルの 3 基本形 ・・・・・・・・・・・・・・ 49 7.2.4 サイクルの熱量と仕事 ・・・・・・・・・・・・・・ 51 7.2.5 サイクルの理論熱効率 ・・・・・・・・・・・・・・ 52 7.2.6 サイクル理論熱効率の比較 ・・・・・・・・・・・・・・ 55 7.2.7 ガスタービンのサイクル ・・・・・・・・・・・・・・ 58 7.2.8 ジェットエンジンのサイクル ・・・・・・・・・・・・・・ 59 7.3 蒸気サイクルの機関 ・・・・・・・・・・・・・・ 59 第 8 章 気体の流れ 8.1 流れの基礎式 ・・・・・・・・・・・・・・ 62 8.2 ノズル内の流れ 8.2.1 ノズル出口速度と熱落差 ・・・・・・・・・・・・・・ 64 8.2.2 臨界状態 ・・・・・・・・・・・・・・ 65 8.3 音速,およびマッハ数 ・・・・・・・・・・・・・・ 65 第 9 章 燃焼

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9.1 燃料の種類と燃焼によって発生する熱 9.1.1 燃料の種類 ・・・・・・・・・・・・・・ 66 9.1.2 発熱量 ・・・・・・・・・・・・・・ 67 9.1.3 反応熱・標準生成熱 ・・・・・・・・・・・・・・ 68 9.2 燃焼に必要な空気量と燃焼ガス量 9.2.1 理論酸素量と理論空気量 ・・・・・・・・・・・・・・ 71 9.2.2 燃焼ガス量とその組成 ・・・・・・・・・・・・・・ 73 9.3 燃焼温度 ・・・・・・・・・・・・・・ 73 9.4 燃焼により生成する大気汚染物質 9.4.1 排ガス成分とその有害性 ・・・・・・・・・・・・・・ 74 9.4.2 窒素酸化物 ・・・・・・・・・・・・・・ 75 9.4.3 一酸化炭素 ・・・・・・・・・・・・・・ 76 9.4.4 硫黄酸化物 ・・・・・・・・・・・・・・ 76 9.4.5 未燃炭化水素 ・・・・・・・・・・・・・・ 76 第 10 章 伝熱 10.1 伝熱の形態 10.1.1 熱伝導 ・・・・・・・・・・・・・・ 77 10.1.2 熱伝達(対流熱伝達 ・・・・・・・・・・・・・・ 78 10.1.3 熱放射 ・・・・・・・・・・・・・・ 78 10.2 熱伝導と熱通過 10.2.1 平板 ・・・・・・・・・・・・・・ 78 10.2.2 円管 ・・・・・・・・・・・・・・ 80 10.2.3 フィン ・・・・・・・・・・・・・・ 82 10.3 熱伝達率の式 10.3.1 無次元数について ・・・・・・・・・・・・・・ 85 10.3.2 対流熱伝達の実験式 ・・・・・・・・・・・・・・ 88 10.4 熱放射 10.4.1 熱放射 ・・・・・・・・・・・・・・ 88 10.4.2 黒体および実在物体からの熱放射 ・・・・・・・・・・・・・・ 89 10.4.3 黒体 2 面間の放射伝熱 ・・・・・・・・・・・・・・ 91 10.4.4 灰色体系の放射伝熱 ・・・・・・・・・・・・・・ 92 10.4.5 形態係数に関する法則 ・・・・・・・・・・・・・・ 93 10.5 非定常熱伝導 ・・・・・・・・・・・・・・ 94 理解度チェック ・・・・・・・・・・・・・・ 95 理解度チェック解答用紙 ・・・・・・・・・・・・・・ 102 理解度チェック解答例 ・・・・・・・・・・・・・・ 110

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第 1 章 熱と温度

1.1 圧力と熱の本質 圧力も熱も共に分子の運動に起因して発生する事象である.運動の形態によって圧力となった り熱となったりする. 圧力(pressure)は,分子間および分子と容器壁間の衝突によって発生する.衝突のエネルギー が大きいほど(衝突が激しいほど)圧力が大きくなる. 熱(heat)は,分子の振動および回転によって発生する.振動・回転のエネルギーが大きいほど 温度が高くなる. 1.2 熱と温度 1.2.1 熱の種類 熱には次のような種類がある (1)顕熱(sensible heat)=温度変化を伴う熱 (2)潜熱(latent heat)=温度変化を伴わない熱.(次の 2 種類がある) ①融解熱(heat of fusion)=物質が溶けるのに必要な熱(溶ける間は温度が変化しない) ②気化熱(蒸発熱,heat of evaporation)=物質が蒸発するのに必要な熱(蒸発する間は温度 が変化しない) 1.2.2 温度 物体を加熱する(熱エネルギーを直接与える)と,物体の温度が上昇する.また,物体を摩擦 すると暖かくなる(物体の温度が上昇する)が,これは運動エネルギーが熱エネルギーに変換さ れ,温度を上昇させたことを意味している.このように熱と温度は密接な関係にあるが,概念の 違いに注意が必要である. 熱:エネルギーの大きさを表す. 温度(temperature):寒暖の度合いを表す. 注意:100℃のお湯 1kg に 100℃のお湯 1kg を混ぜると,2 ㎏のお湯ができる.このとき,2 ㎏の お湯の熱は 1kg のお湯の 2 倍となるが,温度は 200℃とはならず,100℃のままである.このよう に 2 つの系が混ざるとき,エネルギーは加算されるが,温度は加算されないことに注意が必要で ある. (1) 経験的温度

摂氏(Celsius temperature)(℃) 華氏(Fahrenheit temperature)(F) 標準大気圧における 氷点=0 沸点=100* と,その間を 100 等分する温度を摂氏(℃) といい,t で表す. 標準大気圧における 氷点=32 沸点=212 とし,その間を 180 等分する温度を華氏(F) という. * 100℃は標準大気圧(0.101325MPa=1013.25hPa)における温度である.水の沸点は,雰囲気 圧力の発生 熱の発生 エネルギーが周囲に伝播 回転 振動 衝突 衝突 熱(エネルギー)が移動 高温 ↓ 激しい 振動 低温 ↓ 緩やか な振動 熱伝導 振動が伝わる

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の圧力によって異なる.詳細は第 6 章参照のこと. (2) 熱力学的温度(thermodynamic temperature) 分子が運動(衝突および振動・回転)を停止する温度を 0 とし,標準大気圧における氷点=273.15 とする温度を絶対温度(absolute temperature) T という.単位はケルビン,単位記号は K. 注:0K(絶対零度)では,圧力も 0 となる. 関係式

 

K

t

 

273

.

15

T

(3) 熱平衡と温度計 2 つの系の間で熱の移動がないとき,2 つの系は熱平衡 (thermodynamic equilibrium)状態にあるという.物体 A と B が熱平衡で,かつ B と C が熱平衡なら A と C も熱平 衡の状態にある.これを熱力学の第 0 法則(the zeroth law of thermodynamics)という.この法則より,B を温度計と して用いることができる. 一次温度計 絶対温度を直接測定できる温度計 二次温度計 通常の温度計.目盛は目安.指示値がどの程度正しいか 不明 (4) 実用温度計 ① 白金抵抗温度計 白金線の電気抵抗が温度によって変化する性質を利用する. ② 熱電対 2 種類の金属線の両端を接合すると,接合点間の温度差に応じて起電力が発生する.これをゼ ーベック効果 (Seebeck effect)注という.起電力と温度差の関係を求めておくと,温度計として 利用することができる.注:逆はペルチェ効果(Peltier effect)という. ③ 液体膨張温度計 水銀,アルコールなどの液体が温度によって体積膨張する性質を利用した温度計. 温度が t1から t2に変化すると,温度計に充填された液体の体積は V1から V2に変化する.液体の 体積膨張係数(体積膨張率)をβとすると,V2は

2 1

1 2 V 1 t t V  

で表される.この時,液だめ自体も膨張により体積が Vb1から Vb2に変化す る.液だめの材質(ガラス)の線膨張係数をαとおけば,体積変化は

1

2 1

3 1 2 1 2 V 1 t t V 1 3 t t Vbb    b    となる.温度変化により,液面が h1から h2に変化するから,毛細管の直径 を d とし,毛細管の膨張を無視すれば,V2と Vb2には次の関係が成立する.

2 1

2 2 2 4 h h Vb d V    ここで,温度 t1において液だめと液体の体積が等しい,すなわちVb1V1と 起電力 E が発生 金属線 A 金属線 B 温度 t1 温度 t2 起電力 温度差 熱電対の起電力と温度差の関係 B A C 平衡 平衡 平衡 温度計 既知の温度場 未知の温度場

(8)

おけば,



2 1

1 2 1 2 1 2 1 1 2 2 1 2 1 3 4 3 1 4 1 t t V d h h t t V h h d t t V                   となり,水柱の高さの変化は,温度変化に比例することが分かる. ④ 放射温度計 あらゆる物体は,その温度によって決まる特定の波長分布をもった電磁波を放出している.電 磁波を半導体で受け止めると,光電子効果によって電流に変換することができる.電流と温度の 関係を校正しておくと温度の計測に利用できる. 1.2.3 比熱 熱容量(heat capacity) J/K ある質量の物質・物体を 1℃上昇させるのに必要な熱量のこと 参考:熱量(heating value)=熱の量を数字で表したもの.厳密には 2 つ状態におけるエンタ ルピーの差と定義される.(第 2 章参照のこと.) 比熱(specific heat)c[J/(kgK)] 物質・物体を単位質量あたり 1℃上昇させるのに必要な熱量のこと 単位質量あたりの熱容量でもある. dT dQ c比熱の値は温度によって変化する.a, b, c, d を定数として

 

2 3 dT cT bT a T c     で表される.定数の値は文献に掲載されている. モル比熱(molar specific heat)J/(kmolK)

一般に,比熱の単位は,J/(kgK)であるが,化学では kmol 当たりの熱容量としてモル比熱 J/(kmolK)がよく用いられる.

定圧比熱(specific heat at constant pressure)と定容比熱(specific heat at constant volume) 物質が気体の場合,圧力一定のまま加熱するときは,容積一定の状態で加熱するときより, 物質を 1℃上昇するのに必要な熱量が多くなる.前者の場合の比熱を定圧比熱c ,後者をp 定 容比熱c という.一般に, v v p c c  となり,全ての気体で成立する.詳細は下記資料を参照のこと. 『埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) 定圧比熱 cp>定容比熱 cvとなる 理由』

http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/L_Support/SupportPDF/SpecificHeat.pdf

2 つの比熱の比を比熱比(heat capacity ratio)といい, v p c c   で表す.ガスの種類により,次の ようになる.   12 v p c c 単原子ガス(Ar, Ne など)

3→

5 3 2 原子ガス(N2, O2など)

5→

7 51.4 3 原子以上のガス(H2O など)

6→

86 ただし,ν は気体分子の自由度

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1.2 単位 1.2.1 次元 比重や比率などの例外を除き,たいていの物理量(長さ,重さなど)には単位(unit)がある.物 理量の数は多数あるものの,基本となる単位(基本単位)は長さ[m],質量[kg],時間[s],温度[K], 物質量[mol],電流[A],光度[cd]の 7 つで,基本単位の組み合わせによって物理量の単位が決定さ れる.特に力学系物理量に限れば,基本単位は長さ[m],質量[kg],時間[s],温度[K]の 4 つだけで ある.たとえば,圧力の単位は N/m2=(kgm/s2)/m2=kg/(ms2)となり,長さ[m],質量[kg],時間[s]の 3 つであることが分かる. 物理量が単位を持つとき,物理量は次元(dimension)を持つともいう.(次元は空間の軸を示す ことがある.例.3 次元空間) 物理量に単位がない場合,その物理量は無次元量(dimensionless quantity)であるという.例. 比重,比率など 1.2.2 基本量と基本単位 (1) 基本量 物理量の基本となる単位を基本単位(base unit)という.力学系物理量の場合,基本単位は4つ ある.それらを記号 M,L,S,T で表す.基本単位のみで表される量は基本量(base quantity)という. (2) 基本単位 すべての力学系物理量は,基本単位の組合せた組立単位(derived unit)で表すことができ,こ のような物理量を,組立量(derived quantity)という.記号 M,L,S,T を用いて表した物理量の単 位を次元式(dimensional formula)という.次元は次元式に含まれる基本単位の指数を意味する. 例)仕事 単位 m・g・h→kg・m/s2・m→kg・m2/s2 ↓ ML2/S2:基本単位の組合せで表すことができる. この数字が次元 仕事:ML2/S2 次元式 仕事の次元式は ML2/S2で表される.仕事は,質量が次元 1,長さが次元 2,時間が次元-2 の物理 量である. (3) 物理系と工学系の次元式 すべての力学系物理量は M,L,S,T の 4 つで表すことができるが,これに副次元として,力[F]と 熱量[Q]を加えると,次元式が簡素化できる.たとえば,仕事は,ML2/S2が FL となる.M,L,S,T の 4 つのみで表す場合は,物理系(もしくは MLST 系)次元式といい,M,L,S,T,F,Q の 6 つで表す 場合は工学系(もしくは MLSTFQ 系)次元式という. 主な物理量の次元式は次表の通り. 物理量 記号例 SI 単位 物理系 (MLST 系) 工学系 (MLSTFQ 系) 質量 M kg M M 長さ L, l m L L 時間 t s S S 温度 θ, T K, ℃ T T 力 F N=kgm/s2 ML/S2=MLS-2 F

M: 1 乗

L: 2 乗

S: -2 乗

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熱量 Q J=Nm=kgm2/s2 ML2/S2=ML2S-2 Q 仕事 W J=Nm=kgm2/s2 ML2/S2=ML2S-2 FL=Q エネルギー E J=Nm=kgm2/s2 ML2/S2=ML2S-2 FL=Q 動力,仕事率 P W=J/s ML2/S3=ML2S-3 QS=QS-1 速度 u, v, w m/s L/S=LS-1 L/S=LS-1 加速度 α m/s2 L/S2=LS-2 L/S2=LS-2 重力加速度 g m/s2 L/S2=LS-2 L/S2=LS-2 質量流量 G kg/s M/S=MS-1 M/S=MS-1 体積流量 Q m3/s L3/S=L3S-1 L3/S=L3S-1 圧力 p Pa=N/m2=kg/(ms2) M/(LS2)=ML-1S-2 F/L2=FL-2 応力 σ Pa=N/m2=kg/(ms2) M/(LS2)=ML-1S-2 F/L2=FL-2 体積弾性率 =1/圧縮率 K N/m 2 M/(LS2)=ML-1S-2 F/L2=FL-2 比重量 γ N/m3=kg/(m2s2) M/(L2S2)=ML-2S-2 F/L3=FL-3 密度  

g

kg/m3 M/L3=ML-3 FS2/L4=FS2L-4 粘性係数 μ Pa・s=Ns/m2 M/(LS)=ML-1S-1 FS/L2=FSL-2 動粘性係数  

 

m2/s L2/S=L2S-1 L2/S=L2S-1 比エンタルピー h J/kg=Nm/kg=m2/s2 L2/S2=L2S-2 Q/M=QM-1 比内部エネルギー u J/kg=Nm/kg=m2/s2 L2/S2=L2S-2 Q/M=QM-1 比熱 c, cp J/(kgK) L2/(S2T)=L2S-2T-1 Q/(MT)=QM-1 T-1 熱伝導率 λ W/(mK) ML/(S3T)=MLS-3T-1 Q/(LST)=QL-1S-1T-1 熱拡散率           p c a m2/s L2/S=L2S-1 L2/S=L2S-1 熱伝達率 h W/(m2K) M/(S3T) =MS-3T-1 Q/(L2ST)=QL-2S-1T-1 (4) 熱の仕事当量と仕事の熱当量 SI 単位では,熱も仕事も単位は J であるが,工学単位では,熱量は cal,仕事は kgm で表す. 工学単位系では,熱と仕事の関係を求める場合には,単位変換が必要となる. AW W J Q JQ W    1 J を熱の仕事当量 A を仕事の熱当量 という.

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第 2 章 熱力学第 1 法則

熱力学第 1 法則(the first law of thermodynamics)=「熱はエネルギーの一種であり,熱を仕 事に変換,もしくはその逆も可能である」

2.1 エネルギー保存則 エネルギーの種類

物体や系が保有するエネルギーには,表に示すようない くつかの種類がある.運動エネルギー(Kinetic Energy, KE) や位置エネルギー(Potential Energy, PE)は力学的エネルギ ーと呼ばれる.熱もエネルギーである.(熱力学第1法則 の意味)熱エネルギーはエンタルピー(enthalpy) H[J]と呼 ばれる.単位質量当たりのエンタルピーは比エンタルピー (specific enthalpy) h [J/kg]という. 注意:単位モル当りのエンタルピー[J/mol]を用いるこ ともある. エンタルピーは系の温度のみの関数である.エンタルピ ーは熱的エネルギーレベルを表すことになり,Potential Energy の一種と言える.エンタルピー差=熱量となる.エ ンタルピーは次式で定義される. dT C n H

T p 0 [J] | h C dT T p

 0 [J/kg, J/mol] 本来,系の持つ全エネルギーは熱エネルギーや力学的エネルギーなどすべてのエネルギーの総 和である.系の持つ全エネルギーは常に一定に保たれる.これをエネルギー保存の法則(the law of the conservation of energy)という.

エネルギーの保存則

系の持つ全エネルギー=熱エネルギー+力学的エネルギー+・・・=一定

問題を扱う場合には,物体や系に含まれるエネルギーのうち,必要なエネルギーだけを考慮す ればよい.例えば,運動する物体は運動エネルギーと位置エネルギーを持っており,理想状態で はこれら 2 つのエネルギーの和は一定(エネルギー保存則)となることを考慮する.実際には物 体や系には温度があるため,力学的エネルギーだけではなく熱エネルギーも持っているわけであ るが,問題を解く際に温度が変化しないと仮定できれば,力学的エネルギーだけ考慮すれば良い ことになる.一方,熱力学が扱う系(開いた系,閉じた系)の場合,運動するしないにかかわら ず系の温度が変化するため,常に熱エネルギーを考慮しなければならない.開いた系では熱エネ ルギーだけでなく作動流体が運動するため,力学的エネルギーを含めた全エネルギーを考えなけ ればならない.一方,閉じた系では作動流体の運動は無視できるため,熱エネルギーのみを考慮 すればよい. 高さ[m] z 0 v v=0 m 自然落下 運動エネルギー,位置エネルギー 相対的な 基準位置 絶対零度 0 温度[K] エンタルピー h=0J T 力学的エネルギー 熱エネルギー 宇宙不変の基準 ↓ エネルギーの種類 ① 力学的エネルギー 運動エネルギー 位置エネルギー 弾性エネルギー ② 熱エネルギー=エンタルピー ③ 化学エネルギー ④ 電磁気学的エネルギー

(12)

参考: 熱エネルギーは運動系のエネルギー保存を考える上でも重要な場合がある。次に 2 つの 運動を考える。 ① 物体を水平に動かす場合 力 F を作用させて床に置かれた質量 m[kg]の物体を水平にゆっくり移動するとき,F は摩擦抵抗

m gに等しい.すなわち, m g F この物体を l[m]移動するのに要するエネルギーE は, m gl Fl E  移動が完了したとき,移動に要したエネルギーは,摩擦熱に変換されて周囲に散逸したことにな る.この系では移動に要したエネルギーと摩擦熱の間でエネルギー保存が成立する. ② 物体を鉛直上方に動かす場合 力 F を作用させて質量 m[kg]の物体を鉛直上方に等速度で移動するとき,F は物体の重量

mg

に 等しい.すなわち, m g Fこの物体を l[m] 持ち上げるのに要するエネルギーE は, m gl Fl E  移動が完了したとき,移動に要したエネルギーは,位置エネルギーに変換されて物体自体に蓄え られることになる.この系では移動に要したエネルギーと位置エネルギーの間でエネルギー保存 が成立する. 2.2 非流動系のエネルギー変換 (1) 気体の仕事 ① 膨張仕事,外部仕事 シリンダ・ピストンでは,シリンダ内圧

p

によって内側からピストンを押す力

F

pA

(A は シリンダ断面積)が作用し,この力がピストンを動かす駆動力となる.シリンダ内の気体を加熱 して気体が膨張し続けると,この駆動力を利用してピストンに仕事をさせることができる.気体 の膨張に伴ってピストンが x1から x2まで移動するとき,ピストンは外部に対して,

2 1 x x

Fdx

W

の仕事をする.このようにシリンダとピストンを用いると,気体の膨張を利用して熱量を仕事(力 学的エネルギー,機械的エネルギーともいう)に変換することができる.W は気体の膨張によっ て発生する仕事であることから膨張仕事と呼ばれる.また,この例のように系が外部に対して行 う仕事を外部仕事(external work)という. 参考: 大気圧による背圧

p

bが作用するため,ピストンには押し戻す力

F

b

p

a

A

も同時に作用する. このため,実際に仕事として利用できるのは

0

,

0

2 1 2 1

x b b x b x x ex

Fdx

F

dx

W

W

W

W

W

となる. 注意: ①物体を水平に動かす場合 ②物体を鉛直上方に動かす場合 l[m]移動 F m[kg] 摩擦抵抗力 摩擦係数 l[m]持ち上げる m[kg] F

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一般に,シリンダ内の気体が膨張してピストンが外部に仕事を発生するとき,仕事の符号を正 とする(W > 0).ピストンを押してシリンダ内の気体を収縮させるとき,ピストンには逆に外部 から仕事を与えなければならない.このとき仕事の符号は負(W < 0)と符号を定義する. ② 排除仕事 ここで,外気の圧力が p のとき,空っぽの袋に体積 V の気体を充填することを考える.この作 業(仕事)を行うには,圧力 p に逆らって体積 V だけ外気を押しのけなければならないから,作 業を行うのに必要な仕事(エネルギー量)は p と V の積に等しい.外気を押しのける(排除する) 意味から,p と V の積を排除仕事という.

pV

は圧力 p [Pa]での理想気体 V [m3]の排除仕事[J]であり,

pv

は圧力 p [Pa]での理想気体 1kg も しくは 1mol の排除仕事[J/kg or J/mol]となる. (2) 内部エネルギー エンタルピーから排除仕事分を差し引いた値を内部エネルギー(internal energy) U[J]と呼ぶ. 単位質量当たりの内部エネルギーは比内部エネルギー(specific internal energy) u [J/kg]という. 詳細は下記資料を参照のこと. 『埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) 内部エネルギーの意味』

http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/L_Support/SupportPDF/InternalEnergy.pdf

注意:単位モル当りの内部エネルギー[J/mol]を用いることもある. 容積 V 1 2 熱量 Q pb Q シリン ダ内 圧力 p 内側か らピ スト ン を押す 力 F 位置 x 力の大きさはシリンダ 内圧力の変化に応じて 変化する. 気体が膨張する際に圧 力変化が生じる.圧力変 化の形は,熱の与え方に よる. p 1 2 Fb F ピストンに作用する力 F この面積分が有効に取 り出せる仕事 p p p V V [m3]の気体 を充填 V

p

(V, p) 容積 袋は圧力 p の気体を体積 V だけ排除. 排除に要したエネルギ(排除仕事)は pV 線図上の面積で表される 充填後の袋

排除仕

pV 線図 0 圧力 p n [kg]

(14)

エンタルピーH と内部エネルギーU の関係(比エンタルピーh と比内部エネルギーu の関係)は次 式で定義される. pV U H  [J] | hupv [J/kg, J/mol] 内部エネルギーは系の温度のみの関数である.等温変化では,系の圧力・容積が変化しても温度 が等しいため内部エネルギーの値は同じである.

n TCvdT U 0 [J] | u

TCvdT 0 [J/kg, J/mol] 閉じた系で体積が変化できない場合,外部から与えられた熱量 dQ はすべて内部エネルギーの 増加量となる. dU dQ [J] | dqdu [J/kg, J/mol] (3) 熱力学の第 1 基礎式 閉じた系で体積が変化できる場合,外部から熱量 dQ を与えると,一部が仕事 dW12に変わり, 残りは内部エネルギーの増加量 dU となる.与えた熱量がすべて仕事に変換される訳ではないこ とに注意が必要である. 12 dW dU dQ  [J] | dqdudw12 [J/kg, J/mol] ここで,仕事の変化分 dW12は pdV dW12 [J] | dw12pdv [J/kg, J/mol] だから,代入すれば pdV dU dQ  [J] | dqdupdv [J/kg, J/mol] この式を熱力学の第 1 法則から導かれた熱力学第 1 基礎式(エネルギー式)という. (4) 熱力学の第 2 基礎式 比エンタルピーh の式は pv u h  両辺の全微分を取ると,

 

pv du vdp pdv du pdv vdp d du dh        ここで,熱力学の第 1 基礎式dqdupdvを適用すれば vdp dq dh  よって vdp dh dq  となる.これを熱力学の第 2 基礎式という. 熱量が内部エネルギーと仕事に変換される比率は状態変化の仕方によって異なる. まとめ        vdp dh dq pdv du dq 基礎式 熱力学の第 基礎式 熱力学の第 法則 熱力学第 2 1 1 ① 等温変化 等温変化ではジュールの法則*)より内部エネルギーの変化 du は 0 であるため,すべての熱量が 仕事に変換される. dQ dW dU0,  [J] | du0, dwdq [J/kg, J/mol] *) ジュールの第 2 法則.理想気体の内部エネルギーはその圧力や体積には依存せず、温度に のみ依存するという法則.U=f(T).第 1 法則は,電流と発生熱の関係を示す法則.Q=i2Rt ② 等圧変化 等圧変化では熱量は,次のように内部エネルギーと仕事に配分される. 体積が変化しない閉じた系 体積が変化する閉じた系

(15)

dQ dW dQ dU    1 ,    [J] | du dq dw dq    1 ,    [J/kg, J/mol] ただし,比熱比 v p c c   ③ 等容変化 等容変化は体積の変化しない閉じた系であり,熱量はすべて内部エネルギーに変換される. 0 ,  dQ dW dU [J] | dudq, dw0 [J/kg, J/mol] (5) 絶対仕事 シリンダとピストンからなる往復動エンジンでは,内部に閉じ込められた気体に熱量を与える と気体が膨張してピストンを押すことによりピストンは外部に対して仕事を行う.このような閉 じた系では,気体が外部に対して行う仕事は絶対仕事(absolute work) W12と呼ばれる. 熱力学の第 1 法則の式を積分すると 12 1 2 2 1 2 1 2 1 W U U Q dW dU dQ      

[J] | 12 1 2 2 1 2 1 2 1 w u u q dw du dq      

[J/kg, J/mol] 気体を膨張させるために外部から与えた熱量は仕事を発生させるとともに,内部エネルギーを 増加させることになる. 絶対仕事 W12は pV 線図(pv 線図)の圧力を積分することで求まる.

 2 1 12 pdV W [J] | 

2 1 12 pdv w [J/kg, J/mol] 2.3 流動系のエネルギー変換 (1) 工業仕事 タービンでは作動流体が一方方向に流れ,タービンブレードに力を与えて軸を連続的に回転さ せることで仕事を発生する.このように,開いた系で気体が外部に対して行う仕事は工業仕事 (technical work) Wtと呼ばれ,絶対仕事と区別される.工業仕事は pV 線図(pv 線図)の圧力を 積分することで求まる.

  2 1 1 2Vdp Vdp Wt [J] | 



2 1 1 2vdp vdp wt [J/kg, J/mol] 容積 V 1 2 面積=絶対仕事 熱量 Q Q 圧力 p

(16)

エネルギー保存の法則から,タービンが外部にする仕事(工業仕事)Wtは入口と出口の作動流 体のエンタルピー差に等しい. 2 1 H H Wt   [J] | wth1h2 [J/kg, J/mol] タービン入口 1 において作動流体の持つエンタルピーは 1 1 1 1 U pV H   [J] | h1u1p1v1 [J/kg, J/mol] タービン出口 2 において作動流体の持つエンタルピーは 2 2 2 2 U pV H   [J] | h2u2p2v2 [J/kg, J/mol] であるから 2 2 2 1 1 1 2 2 2 1 1 1 V p U U V p W W V p U V p U t t         [J] | 2 2 2 1 1 1 2 2 2 1 1 1 v p u u v p w w v p u v p u t t         [J/kg, J/mol] となる.一方,熱力学の第 1 法則において,断熱変化では 0  dQ より dq0より 0   dU dW dQ [J] dqdudw0 [J/kg, J/mol] 1 から 2 までの間で積分すると 2 1 12 12 1 2 2 1 2 1 0 0 U U W W U U dW dU        

[J] 2 1 12 12 1 2 2 1 2 1 0 0 u u w w u u dw du        

[J/kg, J/mol] となるから,工業仕事は次のように表すことが出来る. 2 2 12 1 1V W pV p Wt    [J] | wtp1v1w12p2v2 [J/kg, J/mol] 1 1V p (もしくはp1v1)はタービン入口 1 に投入された作動流体の持つエネルギーの一部であり, 作動流体を入口から押し込むのに必要な仕事に等しい.これは正の仕事に変換できる(外部に対 して仕事を発生できる)エネルギーである.W12

 

w12 は作動流体が 1 から 2 まで断熱変化する際 にタービンブレードに与える絶対仕事であり,入口出口間の内部エネルギー差に等しい.p2V2(も しくはp2v2)はタービン出口から作動流体を排出するのに必要な負の仕事である.タービンが外 部にする仕事はこれらの仕事の総和である. (2) エネルギー保存則 図に示す流動系のエネルギー保存を考える.

容積 V

1 2 面積=工業仕事 1 2 圧力 p V 1 2 排除仕事 V 1 2 絶対仕事 1 2 排除仕事 + + V 1 2 工業仕事 + + = p p p p

(17)

出口における作動流体のエネルギーは,入口におけるエネルギーに系の外から流入する熱量と系 の外に発生する仕事が加味されたものとなるから,次のエネルギー保存則が成立する. 2 2 2 2 12 12 1 2 1 1

2

1

2

1

mgy

mw

H

W

Q

mgy

mw

H

t

ただし,H1:単位時間当たりに流入するエンタルピー[J/s],H2:単位時間当たりに流出するエン タルピー[J/s],Q12:単位時間当たりに供給される熱量[J/s],Wt12:単位時間当たりに発生する工業 仕事[J/s],w:流速[m/s],m:質量流量[kg/s]. 式を変形すると,

12

2 1

2 1 2 2 1 2 12 2 1 y y m g W w w m H H Q      t   2 2 1 1 m h, H m h H   なので

12 2 2 2 2 12 1 2 1 1 1 2 12 2 1 2 2 1 2 12 2 2 2 1 t t W gy w h m Q gy w h m y y m g W w w m h h m Q                               さらに,h1u1p1v1, h2u2p2v2を代入すれば 12 2 2 2 2 2 2 12 1 2 1 1 1 1 2 2 gy Wt w v p u m Q gy w v p u m                        2.4 状態量 状態量(quantity of state)=系もしくは物質の状態を表す量. 示量性(extensive property) (系全体の量が部分系の量の和に等しい) 示強性(intensive property) (示量性でないもの) 体積 質量 物質量(mol) エントロピー エンタルピー 内部エネルギー 圧力 密度 濃度 温度 化学ポテンシャル 注意:熱量 Q,仕事 W などは状態量ではない.理想気体では,圧力 p・温度 T・比容積 v のうち, 2 つが決まると,残りの一つは決定される. 1 2 m

(18)

第 3 章 理想気体

3.1 理想気体 理想気体(ideal gas)は気体分子の体積および分子間力を無視した仮想の気体である.理論計算 を行う上で便利であるが,実際には存在しない気体である.実在する気体は,総称として実在気 体(real gas)という. 理想気体と実在気体の比較 理想気体 実在気体(半理想気体) 比熱 温度に関係なく一定 温度の関数 状態変化 次項の理想気体の状態方程 式で記述される ・単原子分子および 2 原子分子 (N2, O2, ・・・): 狭い 温度範囲において,理想気体の状態方程式を適用可 ・3 原子分子 (CO2, H2O, ・・・): 理想気体の状態方程 式が適用できない 3.2 理想気体の状態方程式とその意味 理想気体に成立する法則として代表的なものには次のものがあげられる. ボイルの法則(Boyle's law):温度一定のもとで,圧力と体積は互いに反比例する。 シャルルの法則(Charles' law)(ゲイ・リュサックの法則ともいう):圧力一定のもとでは, 体積は熱力学温度に比例する. ボイル・シャルルの法則(Boyle-Charles' law):体積は,圧力に反比例し,熱力学温度に比 例する.

これらの関係を整理したものは,理想気体の状態方程式(equation of state of ideal gas)と 呼ばれ,理想気体の温度・圧力・比容積(状態量)の関係を表す. 理想気体の状態方程式 系全体 単位質量当り

mRT

pV

=

T

nR

pV

=

u

pv

=

RT

ただし,m は系に含まれる気体の質量[kg],n はモル数[mol]である.R はガス定数(gas constant) [J/(kgK)]で,気体成分ごとに異なる.Ruはガス定数 R に分子量 M [g/mol=kg/kmol]を乗じた値で, 一般ガス定数(universal gas constant) [J(/mol K)]という.

3 . 8314 = = MR Ru J/(kmol K) 一般ガス定数は気体の種類に関係なく一定である. 注意:実在する気体(実在気体)は気体を構成する原子数が増えるほど,理想気体の状態方 程式に従わなくなる. 式から分かるように,状態方程式とは気体の圧力,容積,温度の関係を示すものであるが,こ の方程式が持つ意味はそれだけではない. ① (等温変化では)圧力と体積は反比例する. ② 式の単位はエネルギーである. 系全体 単位質量当り or 単位モル数当り

(19)

系全体 pV =mRTの場合 左辺:p

[

Pa=N/m2

] [ ]

, V m3 ⇒pV

[

N/m2×m3=Nm=J

]

右辺:m

[ ]

kg , R

[

J/kg/K

]

, T

[ ]

K ⇒ mRT

[

kg×J/kg/K×K=J

]

すなわち系全体のエネルギー[J] となる. 単位質量当り pv=RTの場合 左辺:p

[

Pa=N/m2

] [

, vm3/kg

]

pv

[

N/m2×m3/kg=Nm/kg=J/kg

]

右辺:R

[

J/kg/K

]

, T

[ ]

K ⇒ pv

[

J/kg/K×K=J/kg

]

すなわち単位質量当りのエネルギー([J/kg])となる. ③ pVは圧力p [Pa]での理想気体V [m3]の排除仕事[J]に等しい. pv は圧力 p[Pa]での理想気体 1kg の排除仕事[J/kg]に等しい. 3.3 比熱と比熱比 ジュールの法則(Joule’s law):実験により,内部エネルギーは温度のみの関数であることを発見. 熱力学の第 1 基礎式および第 2 基礎式より, vdp dh pdv du dq= + = − 比熱の定義より dT dh dT vdp dh dT dq c dT du dT pdv du dT dq c p p p v v v  =      − =       = =       + =       = , よって dT c dh dT c du= v , = p これらを,熱力学の第 1 基礎式および第 2 基礎式に代入すれば, vdp dT c dq pdv dT c dq= v + , = p − 両辺を引くと

(

cpcv

)

dTvdppdv=

(

cpcv

)

dTd

( )

pv = 0 理想気体の状態方程式は,pv=RT なので,この両辺の全微分はd

( ) ( )

pv =d RT となる.

(

)

( )

(

)

( )

(

)

R c c RdT dT c c RT d dT c c pv d dT c c v p v p v p v p = − ∴ − − = − − = − − = 0 3.4 エントロピー ある温度 T の下で,単位質量あたり熱量が dq 変化した場合,dq と T の比dq /Tは,一つの状態 量となる.(注:dq 自体は状態量ではない.) そこで,クラジウスは変化量が T dq ds= で表される状態量 s をエントロピー(entropy)と名付けた.(この場合,正確には比エントロピー) 気体の状態変化を考察する際に,縦軸に圧力 p と,横軸に比容積 v としたグラフ(pv 線図)だけ でなく,縦軸に温度 T,横軸に比エントロピーs としたグラフ(Ts 線図)を併用すると理解が容易 となる. 3.5 理想気体の状態変化 要点 温度,圧力,比容積などの状態量が変化することを状態変化(change of state)という.一般に, 変化前を 1,変化後を 2 で表し,必要に応じて数字を追加する.状態変化の様子を表すために,

(20)

pv 線図(pv diagram),Ts 線図(Ts diagram),hs 線図(hs diagram)が用いられる.このうち,理想 気体では pv 線図,Ts 線図の 2 種類,湿り空気では hs 線図を加えた 3 種類が用いられる. 記号は大文字と小文字で意味が異なる場合がある. p, P:圧力 T:絶対温度,t:摂氏 v:比容積(比体積),V:容積(体積) h:比エンタルピー,H:エンタルピー s:比エントロピー,S:エントロピー 状態変化の仕方は無数にある.そのうち,特徴的なものは ① 等温変化(isothermal change) ② 等圧変化(isobaric change) ③ 等容変化(isochoric change) ④ 断熱変化(adiabatic change) の 4 種類である.これらの状態変化は ⑤ ポリトロープ変化(politropic change) の一種であり,ポリトロープ変化は全ての状態変化の総称である.状態変化を考える上で重要な ことは, 発生する仕事(もしくは外部から与えられる仕事) 供給する熱量(もしくは,奪い去る熱量) を求めることである.仕事は,pv 線図で圧力 p を積分することで求まる.

= 2 1 12 pdv w ここで,圧力 p は ① 等温変化 T=const.→pv=const. ② 等圧変化 p=const. 比容積 v 圧力 P 比エントロピーs 温度 T 比エントロピーs 比エン タル ピー h T1 T2 T1<T2 比容積 v 圧力 P T1 T2 T T1 T2 重ね合わせると 熱量dq 仕事dw 比容積 v 圧力 P 1 2 変化の仕方は無数 に考えられる

(21)

③ 等容変化 v=const.→p/T=const. ④ 断熱変化 pvκ =const. ⑤ ポリトロープ変化 pvn =const. の関係から,求めることができる.また,熱量は,熱力学の第 1 基礎式と第 2 基礎式から求める ことができる. 3.5.1 等温変化 等温変化では,温度が変化しないから,内部エネルギーは, 0 = du 熱力学第一法則から pdv pdv du dq= + = となり,気体に与えられた熱量

q

12はすべて,仕事

w

12に変換される. 12 12 w q = m[kg]では 12 12 12 mq mw Q = = 理想気体の状態方程式は const RT pv= = → v v p p v p pv= 1 1→ = 1 1 とおけば,外部仕事は

[ ]

(

)

1 2 1 1 1 2 1 1 2 1 1 1 2 1 1 1 2 1 1 1 2 1 12 ln ln ln ln v v v p v v v p v v p v dv v p dv v v p pdv w =

=

=

= = − = さらに,次のようにおくこともできる. 2 1 1 2 1 1 1 12 ln ln p p RT p p v p w = = 3.5.2 等圧変化 等圧変化では圧力が変化しないから, 比容積 v pv 線図 比エントロピー

s

圧力 p 温度 T Ts 線図 等温変化 等温変化 1 2 1 2 比容積 v Pv 線図 比エントロピーs 圧力 p 温度 T Ts 線図 等温変化 1 2 1 2 等圧変化 等圧変化 体積が変化する閉じた系

(22)

0 = dp よって,熱力学の第 2 基礎式(熱力学の第一法則)から dh vdp dh dq= − = となる.加えられた熱量は,すべてエンタルピー変化に変わる.ここで dT c dh= p であるから

(

2 1

)

2 1 2 1 12 dh c dT c T T q =

=

p = p − 外部仕事は

(

2 1

)

(

2 1

)

2 1 12 pdv pv v RT T w =

= − = − よって,比をとると 12 12 12 12 1 w 1q c c c c R q w p v p p κ κ κ κ− = − = − = = となる.内部エネルギーは

dT

c

du

=

v であるから

(

2 1

)

2 1 2 1 1 2 u du c dT c T T u − =

=

v = v − 比をとると κ κ 2 1 12 12 1 2 1 u u q c c q u u p v = = = − となる.等圧変化では,加えられた熱量は内部エネルギーと外部仕事に配分される. 3.5.3 等容変化 等容変化では容積が変化しないから, 0 = dv よって,熱力学の第 1 基礎式(熱力学の第一法則)から du pdv du dq= + = となる.加えられた熱量は,すべて内部エネルギー変化に変わる.ここで dT c du= v であるから

(

2 1

)

2 1 2 1 12 du c dT c T T q =

=

v = v − 外部仕事は,体積変化がないから 0 2 1 12=

pdv= w 比容積 v Pv 線図 比エントロピーs 圧力 p

温度

T

Ts 線図 等温変化 1 2 1 2 等容変化 等圧変化 等容変化 体積が変化する閉じた系 体積が変化しない閉じた系

(23)

3.5.4 断熱変化 断熱変化では,変化の過程で気体と周囲との間に熱交換が行われない(断熱されている).また, 摩擦による内部発熱も発生しない.熱交換がないから, 0 = dq よって,熱力学の第 1 基礎式(熱力学の第一法則)から 0 = + = + =du pdv c dT pdv dq v (3.1) となる.ここで,理想気体の状態方程式 RT pv= の両辺を微分すると RdT vdp pdv+ = (3.2) (3.2)式より v p c c vdp pdv R vdp pdv dT − + = + = (3.1)式に代入すると

(

)

(

) (

)

0 0 0 1 0 = + ∴ = + → = − + + → = + + − p dp v dv vdp pdv pdv vdp pdv pdv vdp pdv c c c v p v κ κ κ 積分すれば const pv const pv const p v const p v+ = → κ + = → κ = →∴ κ = κln ln ln ln ln となる. 注:断熱変化では圧力と比容積の関係が,比熱比κを用いて表すことができるため,κは断 熱指数ともいう. κ κ κ κ v v p p v p pv = 1 1 → = 1 1 とおけるから,外部仕事は

[ ]

(

)

              − − =         −       − =         −       − = − − = + − = = = − − − − − − + −

1 2 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1 1 2 1 1 2 1 1 1 1 2 1 1 1 2 1 12 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 κ κ κ κ κ κ κ κ κ κ κ κ κ κ κ κ κ v v v p v v v p v v v v p v v v p v v p dv v v p pdv w ここで κ κ κ 1 1 2 2 1 2 2 1 1       = → = p p v v v p v p 比容積 v Pv 線図 比エントロピーs 圧力 p 温度 T Ts 線図 等温変化

2

1

1

2

等容変化 等圧変化 等容変化 体積が変化しない閉じた系

(24)

κ κ κ κ 1 1 2 1 1 1 2 1 1 2 1 2 1 1 2 2 − + − −       =       =       = p p p p p p p p v p v p などの関係を代入すると

[

1 1 2 2

]

[

1 2

]

1 1 2 1 1 12 1 1 1 1 1 T T R v p v p p p v p w − − = − − =                 − − = − κ κ κ κ κ となる. 3.5.5 ポリトロープ変化 変化の過程で,気体と周囲との間で熱交換が行われる場合,一般に,圧力と比容積の関係は const pvn= ∴ の形で表すことができる.n をポリトロープ指数という. 代表的な状態変化では 等圧変化:n=0 等温変化:n=1 等容変化:n=∞ 断熱変化:n=κ の場合に等しい.外部仕事は,断熱指数をポリトロープ指数で置き換えたもの等しい.

(

1 1 2 2

)

(

1 2

)

1 1 2 1 1 1 2 1 1 1 12 1 1 1 1 1 1 1 n T T R v p v p n p p n v p v v n v p w n n n − − = − − =                 − − =               − − = − − 熱量は,熱力学の第 1 基礎式(熱力学の第一法則)から pdv dT c pdv du dq= + = v + 積分すれば

(

2 1

)

12

(

2 1

)

(

1 2

)

(

2 1

)

2 1 2 1 12 1 1 n T T R c T T n R T T c w T T c pdv dT c q v v v v  −      − − = − − + − = + − = + =

ここで,ポリトロープ変化の比熱として

(

)

(

)

1 1 1 1 1 1 − − = − − = − − − − = − − − = − − = n n c n c n c n c c n c n c c c n R c c v p v v p v v p v v κ を定義すれば

(

2 1

)

12 cT T q = − κ = n を境にして,ポリトロープ変化の比熱の正負が逆転するため,1 の状態から 2 の状態に膨張 (温度が低下するからT2 <T1)の場合 κ < n ならq12 >0:加熱しないと状態変化を実現できない κ = n ならq12 =0:断熱しないと状態変化を実現できない κ > n ならq12<0:放熱しないと状態変化を実現できない 1 の状態から 2 の状態に圧縮(温度が上昇するからT2 >T1)の場合 κ < n ならq12<0:放熱しないと状態変化を実現できない κ = n ならq12 =0:断熱しないと状態変化を実現できない κ > n ならq12 >0:加熱しないと状態変化を実現できない ことになる.

(25)

3.6 可逆変化と不可逆変化 状態変化を起こす系が完全に断熱されるとともに,内部で摩擦などによるエネルギーの散逸が なければ,1→2 の状態変化をさせても,逆のプロセスで再び 2→1 のように元の状態に戻すこと ができる.これを可逆変化(reversible change)という3).実際の現象では,断熱やエネルギー散 逸を伴うので元の状態には戻らない.この場合,不可逆変化(irreversible change)という. シリンダ内のピストンが移動するとき,可逆変化では,断熱変化により 1 と 2 の状態変化を繰 り返すことができる.不可逆変化では,1→2 にポリトロープ変化後,ピストンを押し込めば,ポ リトロープ変化により 2→3 の状態変化を起こすことになる.1 と 3 の状態は一致しない. 可逆変化は断熱変化において起きる理想的な変化であるため,特に可逆断熱変化(reversible adiabatic change)ともいう.ただし,断熱変化でも内部摩擦等が発生する場合には,不可逆断熱 変化(irreversible adiabatic change)となる.

3) 詳細は下記資料を参照のこと. 『埼玉工業大学 機械工学学習支援セミナー(小西克享) 可逆変化と不可逆変化』

http://www.sit.ac.jp/user/konishi/JPN/L_Support/SupportPDF/ReversivleChange.pdf

3.7 混合気体の性質(ドルトンの法則) 数種類の理想気体が反応せずに,拡散・混合する場合,出来上がった混合気はドルトンの法則に よって,質量・温度・圧力・容積の状態量を求めることができる. ドルトンの法則(Dalton's law):混合気の圧力は各成分の分圧の和に等しい. 混合前の各成分気体の質量,圧力,温度,容積をそれぞれmi, pi,Ti,Vi,混合後をm,p,T,Vとす る.関係式は mRT pV T R m V pi i = i i i, = 比容積 v pv 線図 比エントロピーs 圧力 p 温度 T Ts 線図 (等温) (断熱) (等圧) (等容) (等温) (断熱) (等圧) (等容) V 1 2 p V 3 2 1 p 可逆変化 不可逆変化 断熱変化 ポリトロープ変化

(26)

= = n i i m m 1

= = n i i V V 1

(

i

)

i vi

(

i

)

i u u mc T T m − = − 全体では

(

)

(

)

(

)

(

)

= = = = = = = = = = = − = − − = − − = − − = − n i i vi i n i vi i n i i i n i i vi i n i vi i n i n i i i i n i i vi i vi i n i i i i n i i vi i n i i i T c m c m T u m um T c m T c m u m u m T c m T c m u m u m T T c m u u m 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 容器が断熱されている場合,全体の内部エネルギーは混合前後で保存される.

= = n i i iu m mu 1 よって

(

)

= = = = = = = = − − = = = → − = n i i i i i n i i i i n i vi i i i i n i i i i vi n i vi i n i i vi i n i i vi i n i vi i T V p V p c T R V p R V p c c m T c m T T c m c m T 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 κ κ 気体成分の分圧

p

i

'

は,その成分のみが体積 V,温度 T になった場合の圧力に等しいから T R V p T R V p m i i i i i i i ' = = より i i i i T T V V p p'=

(

)

= = = = =       =       = = n i i i n i i i i n i i i i n i i m R V T T V p V T T T V V p p p 1 1 1 1 ' 混合前 混合後

(27)

第 4 章 熱力学第 2 法則

4.1 サイクルと仕事 熱エネルギーを仕事(動力)に変換する機械を熱機関(heat engine)という.もっとも単純な熱 機関はシリンダとピストンで構成される.高熱源からシリンダ内の気体に熱を供給すると気体は 膨張してピストンを動かすから,ピストンに仕事をさせることができる.しかし,ピストンの移 動量には限界があるため,気体を無限に膨張させることは出来ない.そこで,熱機関が連続的に 仕事を発生するには,ピストンを何らかの方法で一旦元の位置に戻し,再度膨張させる繰り返し を行なわなければならない.これをサイクル(cycle)という.熱機関ではサイクルを実現すること により,間欠的に連続した仕事を取り出す事ができるようになる.図で,サイクルが行う仕事は, 気体の膨張により発生する膨張仕事と,気体を圧縮することに費やされる圧縮仕事との差となる. 加熱と放熱の組み合わせたサイクル 加熱と押し戻しの組み合わせ このとき,サイクルが有効な仕事を発生するためには 容積 V 1 2 膨張 圧縮 1 サイクルに外部に取り出せる仕事 熱機関のサイクル 圧力 p 容積 V 1 2 膨張仕事 供給 熱量 Q>0 V 1 2 圧縮(収縮)仕事 放熱 熱量 Q<0 熱量を奪う (等温圧縮) V 1 2 外部になす仕事

Q

熱量を与える (等温膨張)

Q

圧力 p p

p

容積 V 1 2 膨張仕事 供給 熱量 Q>0 V 1 2 圧縮仕事 外力で押戻す (断熱圧縮) V 1 2 外部になす仕事 3

Q

熱量を与える (等温膨張) 3

圧力 p p p

(28)

膨張仕事>圧縮仕事 でなければならない.サイクルは,pV 線図(pv 線図)で閉曲線の状態変化を描く事になる.閉曲 線内部の面積がサイクルから取り出せる仕事を表す.周積分記号を用いるとサイクルの仕事は以 下のように定義できる.

= pdV W シリンダ内の気体を膨張させるには,気体に熱量を与えればよい.一方,膨張した気体から熱量 を奪えばピストンを押し戻すことが出来るが,熱損失を無視できるとすると膨張過程と圧縮(収 縮)過程の経路が同じとなり,膨張仕事(正の仕事)と圧縮仕事(負の仕事)が等価となる.こ の場合,サイクルは外部に何も仕事をしないことになる.また,放熱を行わずに力を加えてピス トンを押し戻すと,圧力が元の状態より大きくなるため 膨張仕事(正の仕事)<圧縮仕事(負の仕事) となって,仕事を取り出すどころか逆に仕事を与えなければならなくなる.このため,単に熱量 を奪ったり,ピストンを力ずくで戻しても有効なサイクルを形成できない.有効なサイクルを形 成するには,ピストンを元の位置に戻すための圧縮仕事を気体の膨張で得られる膨張仕事より小 さくしなければならない. 4.2 熱効率と動作係数 熱機関では,高熱源から熱量を得て低熱源に放熱することでその熱量差を仕事に変換できる. 高熱原から供給する熱量のうち,何%を仕事に変換できるかが熱機関の性能を示す重要な指標と なる.この指標を熱効率(thermal efficiency) ηといい,次式で表すことができる. 1 2 1 2 1 1 1 Q Q Q Q Q Q W == = η 熱機関のサイクルを逆向きに動作させると,低熱源から熱量を奪い(吸熱),高熱源に放熱す ることができ,これを冷凍機もしくはヒートポンプという.冷凍機では低熱源側からの吸熱を冷 却に応用したもので,ヒートポンプでは高熱源側への放熱を暖房に応用したものである.冷凍機 もしくはヒートポンプの性能を表す指標は動作係数(coefficient of performance)といい,次式 で表される.冷凍機の動作係数は 2 1 2 2 Q Q Q W Q r = = ε ヒートポンプの動作係数は 2 1 1 1 Q Q Q W Q h = = ε 4.3 カルノーサイクル カルノーは,温度 T1の高熱源と温度 T2の低熱源を用いて,次の 4 つの行程を順に行うことで, あらゆる熱機関の中で最大の熱効率を与える熱力学的理論サイクルを構成できることを見出した. ①等温膨張 容積 V 1 2 熱機関のサイクル 圧力 p 容積 V 1 2 冷凍機のサイクル(Q2を利用) ヒートポンプのサイクル(Q1を利用) 圧力 P

表 2 に炭化水素の化学式,常温での状態を示す.表 3 に石油製品の成分比率を示す.表 4 に石 油の元素含有量を示す.  表 2.  燃料の化学式と常温における状態  名称 化学式 状態 名称 化学式 状態 メタン CH 4 エチレン C 2 H 4 エタン C 2 H 6 プロピレン C 3 H 6 プロパン C 3 H 8 ブテン1 C 4 H 8 ブタン C 4 H 10 1ペンテン C 5 H 10 ペンタン C 5 H 12 1ヘキセン C 6 H 12 ヘキサン C 6 H 14 1ヘプテン

参照

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