- 1 - 2020 年 6 月 1 日
節約の美徳が生む“管理組合の貧困”
「節約」と「倹約」──どちらも同じ意味に思えるが、実は大きな違いがある。 辞書によると、まず倹約は「費用を切り詰めて無駄遣いしない」とあり、節約は「無駄を省いて切り詰める」 とある。つまり倹約とは、お金の無駄を省くことであり、またそれを拡大し解釈すれば「貯め込んだお金はこ こぞという時に投資する」ということにつながるのだろう。一方節約の解釈といえば、お金だけでなく、なんで もかんでも切り詰めることに本意があるともとれる。 たとえば「電気や水道を節約する」とはいうが、「電気や水道を倹約する」とはいわない。「あれが欲しかった けど“お金”を節約して買わなかった」という言い方にはなるが、「あれが欲しかったけど倹約して買わなかっ た」というと、国語的には正しいはずだ。- 2 - この“美徳”ともいえるこれらの単語、正確には、なんでもかんでも切り詰める“節約”の方ではあるが、マン ションの管理組合に呪縛のように取りついてしまって、その結果、“貧困”をもたらしているのでは? と思う ようなケースに出くわすことがある。
長期修繕計画などへの節約発想が招く、将来へのツケ
修繕積立金を値上げすることは大変だ。 当然ながら個人の負担が増えるのだから、合意形成やその根拠をしっかりご理解いただけないことには、は じまらない。輪番制で仕方なく引き受けることになった理事長なら、住民の不満が爆発するかもしれない 修繕積立金の値上げの総会議案は、できることなら来期以降の理事長にバトンタッチしたいと思うはず だ。 とはいえ、3 年後に控えている大規模修繕工事の費用が足りない状況だったらどうしよう。 積立金を値上げし、資金が貯まるまで工事を多少先延ばしするなど、思い切った方針を示さなければな らないタイミングにもかかわらず、判断をせずに来期以降に委ねる。次の期も、また次の期も、そんなバトン タッチが続き、本来、修繕積立金を増額して貯めるべき“お金”を節約してしまう。結果、劣化は進み、建 物は限界性能を超え、工事費用はかえって増加してしまう。お金が不足し、費用は増加するという、そん な“貧困”の呪縛に陥るケースもあるのではないだろうか。 ここ数年、工事コストは上がり基調だ。東日本大震災以降、そして東京オリンピックの建設ラッシュで職人 が不足し、とりわけ仮設足場のコストは震災前と比較し 2 倍以上にもなったと聞く。分譲当時に売主が 作った長期修繕計画のままで、管理組合として見直しをかけていないのなら、工事費用が足りなくなるの は当然だ。しかし、意外と多いケースは、長期修繕計画の見直しをせず、また根拠なく修繕周期をずっと 先送りしたり、工事範囲を削除し工事費用をカットしたりで、現在の積立金で何とかなることにしてしまうと いう、無責任な節約術に心当たりはないだろうか。これも節約という“美徳”が生んだ“貧困”といえよう。 1 回目の大規模修繕工事でそのことに気付けたら、まだ手の打ちようはあるだろうが、30 年・40 年と呪 縛から逃れぬまま、建物と人の“2つの老い”を迎えてしまったら、住まう魅力の乏しいマンションになってし まうことは間違いない。管理費の節約策とは? なんだろう
- 3 - 前述のようなことにならずに、修繕積立金を増やし資金を確保しようという前向きな話を重ねてきた管理 組合も多数ある。その場合、まずは管理費での支出を抑え積立金に回すために管理費会計の“節約” 議論は多くなされたことだろう。 管理費会計の節約策をいくつか挙げてみよう。 電気代は、節電ブレーカーや高圧一括受電、また電力自由化に伴い、より安い電力会社との契約見直 しが最近のトレンドだろう。 たとえば、マンション共用部分の電灯を省エネタイプの LED に変更する。電気代を浮かせて 15 年程度 で工事にかかった費用を回収できるなら、6%を超える効率の良い投資ともいえる。エレベーターのメンテナ ンス会社をメーカー系から非メーカー系に変更する。また、フルメンテナンスから POG(parts oil and
grease=消耗品の交換は含まれるが、その他部品の交換や修理は別途費用が発生する契約形態)に変更し、メン テナンスコストを抑えるなども、よく行われている節約策だが、後々の修繕費用との兼ね合いも考慮しなけ れば、かえって費用が増えるケースもありえる。 今までは、管理会社の見直しもよく議論されてきた。管理会社に支払う管理委託費は、管理費会計の 支出の 6 割~7 割程度を占める場合もあるからだ。「安かろう、悪かろう」とまでは言わないまでも、とんで もなく安い管理会社に切り替えて、ついでに区分所有者から徴収する管理費も減額改定してしまったケ ースもある。修繕積立金に振替えれば良いものを個人が今まで支払ってきた管理費を減額してまで、貯 めるべきお金さえも“節約”してしまったケースもあると聞く。 しかし、最近は管理会社側から管理委託費の値上げをお願いしてくる時代になってしまった。品質を求め るならいざ知らず、安さのみを求めて見積り比較を行おうとしても、大手はもちろん、その他、多くの管理会 社がコンペに参加しない状態になったことは、申し添えておこう。