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適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動-香川大学学術情報リポジトリ

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香 川 大 学 経 済 論 叢 第72巻 第 2号 1999年 9月 325-366

適切な苦情処理がもたらす効用と

抑制される苦情行動

藤 村 和 宏

し は じ め に モノやサービスの提供にかかわる組織の多くはこれまで顧客からの苦情を脅 威あるいは問題として扱ってきた。しかし,適切な苦情処理は顧客ばかりでな くその組織にも大きな恩恵をもたらすことが明らかにされ,さらに関係性マー ケティングにおいても重要な役割を果たすことが指摘されている。このことか ら組織は苦情を積極的且つ適切に処理していくようなシステムを構築していか なければならないが,問題は顧客はモノやサービスの消費過程で不満を経験し たとしても苦情行動をほとんど取らないということである。顧客側から不満経 験にかかわるネガティブ情報が組織にフィードパックされなければ,組織はそ の提供物やその開発・生産・提供過程にかかわる問題を解決することで,顧客 の不満足を解消することも,さらに関係性を構築・維持することもできない。 すなわち,不満を経験した顧客にそれを苦情として出してもらうことが改善や 関係性マーケティングの出発点であるが,それが顧客側から起こりにくいとい うことである。 本稿では,適切な苦情処理がもたらす重要性を指摘するとともに,なぜ顧客 は不満経験をしたとしても苦情行動を取らないのか,について考察したい。さ らに,苦情行動やその処理のあり方に関する研究は欧米を中心に研究され,重 要な概念や理論が提唱されているが,それらが日本人の苦情行動やそれに対す る処理システムの構築に直接的に適用可能であるかどうかについても若干の検

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-326- 香川大学経済論叢 634 討を行いたい。 それは, ヒアリング結果からの推論に過ぎないが,文化的違い のために日本人と欧米人とでは満足形成過程及び苦情行動のあり方が異なって いる可能性があるからである(藤村,

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)

。そして,この検討を通じて, 日本 人を対象とした苦情行動研究の必要性やそこにおける課題についても示した しユ。 II.適切な苦情処理の重要性 モノやサービスの提供においては, その提供組織がその開発・生産・提供に かかわる全ての要因を完全にコントロールすることは不可能であるため,顧客 が不満を経験することは避けられない問題である。特にサービス・デリパリー の場合には, それが様々な参加者(経営者,従業員,顧客)の協働過程で行われ るために問題が発生しやすい(藤村,

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。また日本人のサービス消費の場合, 満足/不満足形成の基準となる期待が状況依存的であり,他者との相互作用で 形成される傾向があるために,文化的に不満が形成されやすい(藤村,

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。 そ モノやサービスの消費において不満を経験した顧客は苦情行動をとるが, れらの提供組織は伝統的にこれを脅威あるいは問題として扱ってきた。 しカ〉し ながら,不満を感じても苦情を出さなかった顧客よりも,苦情を出した顧客の 方が, たとえ彼らの苦情が満足できるような形で処理されなかったとしても, 再購買意図が高いことが発見されている

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。さらに,苦情が満足で きるようなかたちで処理された場合には, その傾向がより顕著になることが明 らかにされている

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藤村,

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も,苦情に対する迅速な対応あるいは金銭的弁償を伴う対応は顧客を満足させ, 再購買意図に影響を与えることを発見している。 このことは,効果的な苦情処 理は不満足な状況を顧客にとって満足な出来事に変え, その顧客のロイヤル ティの強化を促すということである。 また,顧客維持に劇的な影響を及ぽし,ネガティブな口コミの流布を抑制し, さらに収益性を改善することも明らかにされている

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-327-適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動

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コミットメントにポジティブな影響 は,適切な苦情処理は顧客の満足,信頼, を及ぼすことを明らかにし,苦情処理は顧客との関係性の構築・維持において 重要な役割を果たすことを指摘している。 また,苦情はモノやサービス, あるいはその提供組織のパフォーマンスに関 マーケティング意思決定に有益な情報を するフィードパック情報として働き,

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-提供するために

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,効果的な苦情処理はマーケテイ ング情報の改善

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,企業イメージや取引関係の改善

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などを可能にすることも明らかにされている。 従って,顧客からの苦情は企業にとっての厄介な問題ではなく,顧客維持の ための絶好の機会であるため,苦情処理は効果的なマーケティング・ツールと

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, して利用可能である

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。そして問題なのは,苦情行動をとらずに,モノやサービス,あるいはそ

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の提供組織から離れて行ってしまう顧客である。 以下では,適切な苦情処理がモノやサービスの提供組織にもたらす効用の中 で,顧客満足の向上,関係性の向上,ネガティブな口コミ流布の抑制について さらに,苦情処理システムが適切に構築・維持されていな 詳細に検討したい。 い場合に生じる苦情の悪循環についても検討したい。 1 .顧客満足の向上 あるいはその提 供組織に対する満足を向上させ,顧客維持に貢献する

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。サービス 消費では,効果的な苦情処理はサービス経験やサービス・エンカウンターに対 適切な苦情処理は不満経験を引き起こしたモノやサービス,

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する評価を高めることが指摘されている

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さらには他者へ サービス消費過程におい て不満を経験しなかった顧客よりも,不満を経験したが,苦情を出すことでそ の原因が解決された顧客の方がサービスに対する評価や満足,

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-321予 香川│大学経済論叢ー 636 の推薦意向や再利用意向が高いことが明らかにされている。このような状況を,

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は“サービス・リカバリーのパラドックス" と呼んでいる。 表

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は,医療サービスにおけるこのようなパラドックス関係の存在を分析し たものである。患者を「不満経験の有無j,r苦情行動の有無」及び「不満原因 の解決の有無」の三軸で四グループに分類し r満足である」あるいは「やや満 足である」と回答した人の割合を見ると,分析1と分析3では「不満経験があ り,それを苦情として出し,解決されたグループ」が最も高く,次に「不満経 験のなかったグループ」が高くなっている。分析

2

では,この順位が逆転して いる。また r利用したい」あるいは「やや利用したい」と回答した人の割合を 見ると,分析3では「不満経験があり,それを苦情として出し,解決されたグ ノレープ」が最も高くなっているが,分析l及び分析2では r不満経験のなかっ たグループ」が最も高くなっている。逆に r不満経験があり,苦情を出したが, 解決されなかったグループ」においては,満足及び再利用意向とも最も低くな る傾向が見られる。調査対象者を四グループに分類することで,各グノレープに 属する人数が少なくなり,さらにグループ間で人数格差が存在するという問題 はあるが,苦情の解決は満足や再利用意向を高めることに貢献し,逆に不適切 な解決はそれらを低下させる方向に働く傾向がありそうである。 同様な分析はIBM製品利用者を対象としても行われており,同様な結果が 得られている。そこでは利用者は「不満経験の有無j,r苦'情行動の有無」及び 「不満原因解決の程度」で五グループ (r問題を経験しなかったグループJr問 題を経験したが苦情を出さなかったグループjr苦'情を出して満足に解決された グループj r苦情を出して軽減されたグループj r苦情を出したが不満足が残っ (1) 分析lのデータは, 1994年10月に神奈川県に立地する T総合病院において外来患者を 対象として実施した調査で得たものである。調査実施概要については,藤村(1995,56-58 頁)を参照のこと。 分析2及び分析 3のデータは, 1996年2月に神奈川県に立地する K総合病院において 外来及び入院患者を対象として実施した調査で得たものである。調査笑施概要について は,藤村(1996,53-54頁)を参照のこと。

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637 適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 ~329 [ 分 析 外 来 患 者 ] 表1 適切な苦情処理と満足度・再利用意向との関係 と ち ら雷 とえ もな U‘ 2: 1: 32: 44 23 I 102 不 満 経 験 な " : ':"": ,..~. 1 ー一一一一一一一一一一"J..(~9!,..(~9!,gl~1.:.(主主~lよ巴~;;!.l(~~?!. 不満経験があり 苦情を出 1: 3: 11 L、解快された一一一一一一ー巾ー一一ーーー・ーー・ーーーーー・一α0.0)川 0.._0.):.hα..0..0ー山,ゅ1(20) ι・ ー 不満軽駐があり 苦情を出 1 : 5: 2 I IS

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-330ー 香川大学経済論叢 638 たグ、ループJ)に分類されているが,各グループの再利用意向と他人への推薦意 向とを比較した結果では I苦情を出して満足に解決されたグループ」において 両意向ともに最も高く,次に両意向が高いのは「問題を経験しなかったグルー プ」であった。逆に両意向とも最も低いのは「苦情を出したが不満足が残った グ?ループ」であった(Oliver,1997)。 このように苦情処理が満足できるようなかたちで行われた場合には,顧客の モノやサービスの消費に対する満足や再利用意向は高まるのに対して,苦情処 理が不満足な結果で終わった場合には,満足や再利用意向は低下する傾向があ る。では,苦情処理に対する満足/不満足の形成はどのような過程を経て行わ れるのであろうか。これに関しては様々な提案や検証が行われているが,代表 的なものに期待不確認パラダイムを適用したモデルと“公正さ(justice)"概念 を用いたものがある。 Oliver (1997)は,苦情処理に対する満足/不満足形成過程の記述・説明・予測 に,モノやサービスの消費に対する満足/不満足形成過程の記述・説明・予測 において中心的な役割を果たしている期待不確認ノfラダイムを適用している。 期待不確認パラダイムとは,消費に対する満足/不満足を形成する際に,顧客 はモノやサービスを消費することで知覚されたそれらの成果と彼が保有する基 準(期待,衡平性,ノノレム,スクリプトなど)とを比較するが(藤村, 1992, 1999), その基準として購買意思決定過程で形成される期待を用いるとする考え方であ る。この比較基準として期待を採用するモデルを苦情行動にも適用し,苦情行 動に対する満足/不満足は苦情行動の成果に対する期待と苦情処理の結果とを 比較することで形成されるというモデ、ルを提唱している。そして,モノやサー ビスの消費に対する満足/不満足を“第一次(基本的)満足/不満足ヘ苦情行動 に対する満足/不満足を“第二次(派生的)満足/不満足"と呼んでいる。 Bitner, Booms, and Tetreault (1990)はサービス・デリノfリーの文脈で苦情 処理の失敗を二重の逸脱と見倣しているが,それはサービス・デリパリー・プ ロセスだけでなくリカバリー・プロセスでも,顧客の期待からの逸脱が起こっ ているためである。苦情処理が満足なかたちで行われない場合には,顧客はこ

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639 適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 -331 のようなこ重の逸脱あるいは二重の不満を経験するために,第一次満足や再利 用意向が低下すると考えられる。また, Ke

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ey and Davis (1994)によると,最 初の失敗により顧客のリカバリーに対する期待は高まる傾向があるために,苦 情処理の失敗はコミットメントや信頼に重大な影響を及ぽすことになる。そし て,このようなことは特に,ロイヤノレティの高い顧客に当てはまるとしている。 しかし逆に,苦情処理における対応が顧客の期待を上回る場合には,それにか かる時間にかかわりなし顧客の満足を大きく高めることが明らかにされてい

る(Clark,Kaminski, and Rink, 1992)。

苦情処理に対する満足/不満足形成に“公正さ"概念を用いた研究もあり, そこでは公正であるとの知覚は満足にポジティブな影響を及ぽすことが明らか にされている。 Tax,Brown, and Chandrashekaran (1998)は公正さは「配分 の公正さJr手続きの公正さJr相互作用の公正さ」という三次元から構成され ており,各次元は相互に関連しているとともに,苦情処理に対する満足にポジ ティブな影響を及ぽすことを明らかにしている。尚,配分の公正さとは苦情処 理にかかわる投入物(コスト)と産出物(ベネフィット)の配分に焦点、を当て (2) Tax, Brown, and Chandrashekaran (1998)は,事前経験の役割をどのように評価す るかによって,苦情処理の失敗がコミットメントや信頼にネガティブな影響を及ぼすと いう仮説と及ぼさないという仮説が導かれる,と論じている。 彼らによると,ネガティブな影響があるという仮説は,苦情行動の成果に対する期待は 事前経験によって更新され,苦情処理の失敗は期待からの二重の逸脱を意味することか ら導かれる。そして,不十分な苦情処理は,事前の経験がポジティブでリカバリーに対す る期待が高い場合には関係性に最もダメージを与え,逆に事前の経験が粗末で期待が低 い場合には関係性に対する夕、メージは最も小さくなるとしている。 逆に,ブランド・エクイティの効果を重視すると,苦情処理の失敗はコミットメントや 信頼にネガティブな影響を及ぼさないという仮説が導かれる。満足経験を通じて蓄積さ れたエクイティ(あるいはgoodwil1)は不十分な苦情処理がもたらすネガティブな効果を 低減させる。つまり,非常にポジティブな経験をしてきた顧客の場合,リカバリーが1回 ぐらい不十分なものであっても,それはコミットメントあるいはトラストには影響を及 ぼさないということである。しかしながら,過去に不満足な経験をしている顧客の場合に は,苦情処理があまり満足できるものでなければ,それはコミットメントや信頼に最悪の 影響を及ぽすことになる。 (3 ) 組織研究でもこの見解は支持されており,不公正な扱いは(それ以前に)組織に対して 最もコミットしていた従業員に最もネガティブな影響を及ぽすことが発見されている (Brockner, Tyler and Cooper-Schneider, 1992)

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332- 香川大学経済論叢 640 たもので,配分の適切性の基準として衡平原理(equity),平等原理(equality), 要求原理(need)などが働くとされている (Reis,1986)。手続の公正さとは,目 的達成手段の知覚された公正さである(Lindand Tyler, 1988)。また,相互作 用の公正さとは,苦情処理手続きの実施過程で,人々が受ける対人関係での待 遇についての公正さである (Biesand Shapiro, 1987; Gilliland, 1993)。 2. 関係性の向上 前述の医療サービスやIBM製品利用者の調査結果における再利用意向の高 さが示しているように,適切な苦情処理は,モノやサ}ビスの消費に対して不 満 を 感 じ た 顧 客 の ブ ラ ン ド ・ ス イ ッ チ ン グ を 抑 制 す る こ と を 可 能 に す る (Fornell and Wernerfelt

1987

1988)

Fornell (1991)は,効果的な苦情処理は顧客のロイヤルティに対してポジティ ブな影響を及ぽすことから,ロイヤルティを次のような関数として表現してい る。 ロイヤノレティ=f (顧客満足,スイッチング・バリア,苦情) そして,彼はスウェーデンにおける

3

0

以上の産業における顧客満足調査の中 で,苦情の有無とロイヤルティの関係を分析している。その結果では,ロイヤ yレティに対する苦情の影響は比較的小さし産業によってはマイナスの場合も あった。苦情がロイヤルティに対してネガティブな影響を及ぼしていることに ついて,彼は,企業が顧客の苦情を適切に処理できていないために,苦情を出 した顧客がその企業から離れていっているということを示している,と解釈し ている。

前掲のTax,Brown, and Chandrashekaran (1998)は,苦情処理に対する満

足は信頼及びコミットメントと有意に強く関連していることを経験的に明らか

( 4 ) Kelley, Hoffman, and Davis(1993)は,返金や交換による苦情処理だけでは不満経験 及び苦情行動によって顧客が負担する経済的コスト及び心理的コスト(たとえば,フラス トレーション,怒り,ストレスなど)をカバーできないので,このような苦情処理は失敗 の段階的拡大を導き,顧客維持率を低下させる危険性を苧んでいることを指摘している。

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641 適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 -333 にすることで,苦情処理に対する組織の好ましい(公正な)行動は顧客に企業 の信頼性を立証するとともに,苦情処理への投資はサービス品質の評価を改善 し,顧客との関係性を強化し,そして顧客のコミットメント構築を可能にする ことなどを示している。そして彼らは,苦情処理は関係性マーケティングと密 接に結び付いているという命題を支持している。 また, Ping (1993)は,ハードウェアの供給業者と小売業者の関係を分析する ことで,顧客企業が供給者に苦情を出すのはその供給者に最も満足している顧 客であり,苦情を出すのはそうすることが満足(報酬)につながることを知っ ているからであることを明らかにしている。そして,顧客は企業との関係に満 足しているが故に苦情を出すのであり,その苦情が満足な形で解決されるなら ば顧客の満足はさらに高まるという循環的上昇(好循環)が生じ,このことは 顧客の無視や退出を削減し,長期的な関係を固めるのに役立つ,と論じている。 さらに,顧客との長期的関係や戦略的アライアンスの強化に関心のある企業は 苦情が出されることを心から望み,相互に満足できる方法でその解決に取組む べきであることも指摘している。 3 .ネガティブな口コミの流布の抑制 購買意思決定において,顧客はポジティブな情報やマーケティング情報より も,ネガティブな情報や非マーケティング情報源からの情報をより重視する傾 向がある(Lutz,1975)。また,口コミはモノやサービスのパフォーマンスに関す る情報源としては劣っているが,信頼性があり,心理・社会的な予測価値のあ る情報源として知覚されているために(Cox,1967),購買意思決定過程において 高いリスクが知覚された場合には,その削減手段として重視される傾向がある (藤村, 1991)。このように口コミは購買意思決定過程において重要な役割を果 たすために,組織が提供しているモノやサービスに関してネガティブな口コミ 情報が流布することは,組織が潜在的顧客を失う危険性を高めることになる。 しかし,顧客は満足な結果よりも不満足な結果の方をより話す傾向がある (T ARP, 1979, 1981, 1986)。また,不満経験者の半分以上が彼らの不満経験を友

(10)

-334ー 香川大学経済論叢 642 人や親族に話し,このタイプの口コミは他者の行動に非常に大きな影響を及ぽ すことも明らかにされている (Richins,1984)。表 2は医療サービスの利用にお いて不満を経験した患者のネガティブな口コミの発信状況を分析したものであ るが,外来患者においても入院患者においても 6割以上の人がネガティブな口 コミを発している。また,表3でネガティブな口コミを発信し相手をみると, どちらの患者においても家族が最も多くなっている。 また, Richins (1983)は,不満経験をした顧客が口コミを発信するのは,問題 が深刻な場合や苦情に対する小売業者の反応が消極的であると知覚された場合 であることを明らかにしている。さらに,口コミは不満足の原因帰属にも影響 され,原因が小売業者に帰属される場合にネガティブな口コミが発せられるこ とを明らかにしている。 このようにネガティブな口コミは流布しやすい上に,企業の不適切な苦情処 理はその発信を促すために,顧客の不満経験を苦情として出してもらい,それ を適切に解決することは企業にとって重大な課題である。 ( 5 ) Engel, Kegerreis, and Blackwell(1969)は,革新的な自動車診断センターに満足を感 じた顧客と不満足を感じた顧客が行う口コミの還を考察することで,両グループの聞の 口コミ活動の程度に差異はないことを発見している。またHolmesand Lett(1977)は, 不満足を感じた顧客よりも,満足を感じた顧客の方がより多く口コミに参加することを 発見している。 このように,満足な場合と不満足な場合とを比較してどちらにおいてより多くの口コ ミが発せられるか,に関しては経験的証拠は一致していなし3。このような矛盾した結果に ついて, Richins(1984)はそれらのコンテクストにおける違い,特にコミットメントの違 いを考慮することで解釈が可能であるとしている。彼は,製品に対するコミットメントが 増大するほど,顧客は苦情を出したり,あるいは他人に苦情を話したりするのにより多く の労力を注ぎ込もうとする,という仮定に基づいて,ポジティブな口コミに比べて,ネガ ティブな口コミは顧客の製品に対するコミットメントの増大とともに埼加するであろう と論じている。 ( 6 ) この分析結果は,注1)で示している, 1996年2月に神奈川県に立地するK総合病院に おいて外来及び入院患者を対象として実施した調査で得たものである。以下であげる病 院における分析結果はすべてこの調査結果を用いたものである。

(11)

643 適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 表2 不満経験に関する口コミ発信の有無 外来患者 入院患者 不満経験の発話の有無 人数 構成比(%) 人数 構成比(%) I 不満経験を話した 150 62 8 35 68..6I 話さなかった 71 29 7 8 15..7 無回答 18 7..5 8 15..7 dEbコh 計 239 100 0 51 100..0I 表3 ネガティブな口コミを発信した相手 外来患者 入院患者 不満経験を話した相手 人数 構成比(%) 人数 構成比(%) 病院内の他の患者 23 15.3 15 42..9 友人・知人 82 54.7 10 28..6 家族 130 86..7 29 82..9 その他 6 4..0

注1)構成比(%)は,不満経験を話した人全体(外来患者の場合には150人, 入院患者の場合には35人)に占める苦情を話した相手それぞれの割 合である。 注2)回答は複数回答形式(MA)で聴取している。 4.苦情の悪循環 -335-適切な苦情処理は不満経験者の満足を高め,関係性の構築・維持に貢献する だけでなく,潜在的顧客にネガティブな口コミが流布することを抑制するため に,関係性マーケテイングにおいて苦情処理は重要な役割を担っている。

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は,苦情処理を企業が失敗を解決し,そこ から学ぶことで,顧客の目に組織の信頼性を(再)確立することを目的とする ものであると位置づけている。

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は,不満足な顧 客からの苦情は多くの企業が行っているように最小化されるのでなく,コスト の制約のもとで最大化させるべきである,と論じている。また彼らは,苦情マ

(12)

-336'-- 香川大学経済論叢 644 ネジメントによって行う防御的戦略は,攻撃的戦略に必要なコストを実質的に 削減することで全体的なマーケティング支出の削減を可能にするだけでなく, 顧客のロイヤルティを高め,彼らを金銭的価値のある顧客にすることが可能で あることを指摘している。 しかし現実には,必ずしも適切な苦情処理は行われていないために, Fornell

and Westbrook (1984)が「消費者苦情の悪循環 (viciouscircle of consumer complaints)Jと呼ぶものが存在している。苦情の悪循環とは,顧客から企業に 伝達される情報に占める苦情の割合が増加するにつれて,組織は顧客の苦情に 耳を傾けなくなり,そのことはまた顧客の苦情を増加させるというような悪循 環である。このような悪循環は,企業内コミュニケーションにおける情報の送 り手と受け手の双方に自分に不利な情報や好ましくない情報を発信あるいは受 信することを回避しようとする傾向があることから生じている。顧客からの苦 情はマーケティング部門や経営者が計画・実施したマーケティング戦略の失敗 や不適切さを示すものであるために,マーケティング戦略の計画・実施に携わっ た人々はそれらを聞きたがらないし,苦情を受け取った部門も伝達しようとし (7) Fornell and Wernerfelt(1987, 1988)は,防御的戦略という用語で苦情マネジメント・ モデルを構築し,適切な苦情処理の必要性を指摘している。彼らは事業戦略を攻撃的戦略 と防御的戦略に分類しているが,前者は新規顧客の獲得を目的として,市場の拡大と市場 シェアの獲得を重視する戦略である。後者は既存顧客の維持を目的として,スイッチン グ・バリアの構築や顧客満足の増大を図るような戦略である。 彼らによると,企業はこれまで攻撃的戦略と防御的戦略を組み合わせて用いてきたが, どちらかといえば前者の方により多くの資源を投入してきた。しかし,競争の激化と市場 の成熟化のために新規顧客の獲得は困難になっており,今日においては既存顧客維持戦 略の重要性が憎している。この既存顧客の維持率の向上が企業に高い利益率をもたらす ことについては, Reichheld and Sasser(1990)によっても明らかにされている。 しかしながら,製品ライフサイクルの各段階ごとにとるべき戦略が決まっている,すな わち成熟期だから防御的戦略をとるべきであるという考えは危険性を苧んでいるであろ う。なぜならば“if-then"式の戦略ツールがあり,もし製品ライフサイクル上の段階を 明らかにできるならば用いるべき戦略が自動的に浮かび上がってくると考えることは, 経営者やマーケターの思考や行動を狭めてしまうことになるからである。製品や事業は マネジリアルな創造物であり,人間の操作を受け,それによって変化するものである。す なわち,製品ライフサイクルの段階が人間の行動を決定するのではなく,人間の創造的な 行 動 が 製 品 の ラ イ フ サ イ ク ル を 変 化 さ せ る か ら で あ る(Varadarajan,Clark and Pride, 1992)

(13)

645 適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 -337-ー ない傾向がある。従って,顧客からょせられる情報に占める苦情の割合の増加 はマネジメント意思決定から消費者関連部門あるいは苦情処理部門を隔離する 方向に作用し,そのことは情報伝達を歪曲することになる。その結果,苦情処 理活動はその場その場の個別的なものになってしまい,苦情の根本的な原因を 除去するための全社的なマーケティング活動の遂行や現行のマーケティング・ プログラムの修正・改善が行われないために,苦情は減少しないということに なる。そして,顧客から企業に伝達される情報に占める苦情の割合が高いとい う状態が続くと,それは消費者関連部門をさらに孤立させることになり,悪循 環が永続することになる (Fornelland Westbrook, 1984)。 このような悪循環を断ち切るためには,コミュニケーションの開放性を維持 する必要がある。つまり,部下が上司に対して,あるいは消費者関連部門がマー ケティング部門に対して好ましくない情報でも伝達し易くしたり,上司あるい はマーケティング部門もそのような情報に進んで耳を傾けたりするようなコ ミュニケーション関係の構築が必要である。それは,組織における参加やコミュ ニ ケ ー シ ョ ン の 遮 断 は 個 人 の パ フ ォ ー マ ン ス を 著 し く 低 下 さ せ る こ と や (0' Reilly, 1977; 0' Reilly and Roberts, 1977; Roberts and 0' Reilly, 1974), 組織におけるコミュニケーションの開放性は直接的にその組織のパフォーマン スと関連していること(Jablin, 1979),などが明らかにされているからである。 III.苦情行動の実体と影響要因 1 .抑制される苦情行動の実体 モノあるいはサービスの消費において顧客が不満を経験した場合,それを苦 情として出してもらい,提供組織はそれを適切に処理し原因や問題を解決する ことで,顧客も満足を得られるし,提供組織も顧客との聞に良好で長期的な関 係性を構築・維持できる。さらに,苦情が出されることで,提供組織は提供し ているモノあるいはサービス自体やその開発・生産・提供システムにおける問 題点、を明らかにし,それらを組織的に解決する機会を得ることができる。この ようなことのために,モノやサービスの消費において不満を経験した顧客が苦

(14)

-338ー 香川大学経済論叢 646 情行動をとることはそれらの提供組織にとっては好ましいことである。 しかし現実には,モノやサービスの消費に関して不満を経験したとしても, 大部分の顧客はどのような種類の救済も求めないことが指摘されている。サー ビス提供組織に関する米国の研究では,不満を感じた顧客の96%は苦情を出し ていないし, 65~90% は新しい供給者を選んでいる (Edvardsson,

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, 1994)。また,

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(1981)

は米国とカナダにおける消費者調査の結果から,モノあるいはサービスについ て不満足を経験した顧客のうち苦情を出した顧客の割合は何もしなかった顧客 の割合より少ないことを示している。不満足顧客に占める苦情を出した人の割 合を耐久消費財,非耐久消費財,サービス別に見ると,耐久消費財(米国38%:: カナダ53%)が最も高く,次に非耐久消費財(米国24%::カナダ36%),サー ビス(米国20%:カナダ17%)となっている。逆に,何もしなかった顧客の割 合が最も高いのは非耐久消費財(米国40%:カナダ46%)で,次に耐久消費財 (米国39%:カナダ42%),サービス(米国22%::カナダ41%)となっている。 この何もしなかった顧客の割合は調査によって大きな違いが見られるが

3

分 のlから2分のlという高い割合の顧客は何もしない傾向がある(たとえば,

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, 1992;

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,1975;

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, 1979)。

筆者が病院及びビジネスホテルで実施した調査でも,苦情が出される割合は 少なかった(表4及び表5参照)。病院の外来患者については約33%が,入院患 者については37%が医療サービスのデリパリー・プロセスで不満を経験してい るが,その中で苦情行動をとった人の割合は,外来患者で約19%,入院患者で 約22%にすぎない。ビジネスホテルの宿泊客でも約41%が不満を経験している が,その中で苦情を出したのは約29%に過ぎない。病院においてもビジネスホ (8 ) ビジネスホテルにおける調査は, 1997年9月にあるビジネスホテルチェーンにおける 2つのホテルで実施したものである。調査実施概要については,藤村 (1998,p“202)を 参照のこと。また,以下であげるビジネスホテルにおげる分析結果はすべてこの調査結果 を用いたものである。

(15)

647 適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 -33少ー 表 4 不満経験の有無 病 院 ビジネスホテル 不満経験の有無 外来患者 入院患者 の宿泊客 人 数 構成比(%) 人 数 構成比(%) 人数 構成比(%) 不満を感じる経験あり 239 32..8 51 37.2 82 41.4 不満を感じる経験なし 283 38 8 42 30 7 102 515 無回答 207 28..4 44 32..1 14 7..1 メE』コ 計 729 100 0 137 100.0 198 100.0 表5 不満経験者による苦情行動の有無 病 院 ビジネスホテル 苦情行動の有無 外来患者 入院患者 の宿泊客 人 数 構成比(%) 人 数 構成比(%) 人 数 構成比(%) 苦情を出した 45 18.8 11 21 6 24 29.3 苦情は出さなかった 174 72..8 35 68..6 56 68..3 無回答 20 8..4 5 9..8 2 2..4 ぷ口』 239 100.0 51 100 0 82 100.0 テノレにおいても,不満経験者の約 7割は苦情を出しておらず,苦情行動がとら れることは少なくなっている。 2.不満経験後の行動選択肢 モノやサービスの消費において不満を経験したとしても顧客は苦情行動をと らない傾向があるが,これは不満経験に対する行動選択肢として苦情行動以外 のものが存在するし,意思決定によって選択されるためである。 経済学者 Hirschman(1970)は,営利あるいは非営利組織の提供するモノや ( 9) Hirschmanは,組織の提供するモノやサービスの品質の低下に対する顧客の行動だけ でなく,組織に所属する成員の内部サービスの低下に対する反応行動についても同様に 論じているが,ここでは,顧客の反応行動に限定して取り上げている。

(16)

340ー 香川大学経済論叢 648 サービスの品質が絶対的または相対的に低下した場合の顧客の基本的な反応と して,二つの行動選択肢,すなわち「退出(exit)Jと「苦情(voice)Jがあると論 じている。退出とは関係を終結させることであり,苦情は状況の改善を意図し て不満を積極的Eつ建設的に表出することである。さらにHirschmanは第三 の反応として「ロイヤルテイ」概念を導入しているが,彼の理論枠組みでは, ロイヤJレティは二つの役割を担っている。第ーは,個人が退出や苦情ではなく, ロイヤノレティ (留まること)を選択することによる結果そのものである。この 意味ではロイヤルティは退出の正反対のものであり,受動的だが楽観的に状況 が改善されるのを待つことであるため,提供組織に対する深いコミットメント は必ずしも必要とされない。第二に,ロイヤノレティは媒介変数としての役割を 果たし,ロイヤルティの高さは苦情行動を促し,そのすべての努力が失敗に終 わるまで退出を見合わせる方向に作用する。 このHirshmanの理論枠組みは消費経験や職務に対する不満足研究に広く 適用され,それらの研究においてはこれら以外の行動選択肢も提案されている。

Rusbult, Rusbult, Zembrodt, and Gunn (1982)は第4の行動選択肢として「無

視(neglect)Jを追加しているが,これは冷静な心理的退出反応である。つまり 関係性に無関心になり,不満の程度を伝達しようとはしないで,受動的に関係 の衰退を許しておくような行動である。さらにPing(1993)は,第五の行動選択 肢として「ご都合主義(opportunism)J概念を追加しているが,これは関係を自 己利益の追求のために投滑に利用する行動である。 このように不満経験後の行動選択肢として様々なものが提案されているが, Farrell (1983)は職務不満足に対する反応を多次元尺度法(MDS)を用いてプ ロットすることで i苦情Ji退出JiロイヤノレテイJi無視」という四つの行動 選択は「建設的/破壊的」と「能動的/受動的」というこ軸で分類できると論 (10) Hirschman (1970)によると,苦情行動と退出は企業が顧客の不満に関する情報を得る 径路であり,それらに対する感応性に組織の回復カや成育カは依存している。組織の収益 性低下は需給関係の変化や競争の変化,コストの増加などによっても起こるが,品質低下 による場合には,それにより引き起こされる顧客の退出及び/あるいは苦情行動に対し て組織が敏感であれば回復メカニズムが始動する。

(17)

649 適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 341ー じている(図

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参照)0

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によるこの分類は体系的であり,各行動選択肢 の差異を理解しやすいものにしている。しかしながら,この分類は継続的(長 期的)取引関係を前提として行われているために,単発的取引関係においても, このような位置づけ,あるいは分類軸自体が適用可能でおあるかどうかについて は問題が残っている。たとえば,単発的取引関係での苦情行動は能動的ではあ るが,建設的ではないであろう。 また,この分類は欧米人の不満経験後の行動を調査対象として得られた結果 であり,日本人にも当てはまるかどうかは疑問である。たとえば,日本人にお ける苦情行動は建設的であろうか。日本人は他者との関係性を強く意識する傾 向があるために,関係性を維持したいという意思が強い状況では苦情行動を取 り難く,苦情行動はむしろ関係性からの退出を決定した場合において採用され やすいと考えられる。このような考えが支持されるとするならば,日本人にお ける苦情行動は破壊的である。 不満経験後の行動についての研究は欧米を中心に行われているために,そこ で得られた知見が,文化の異なる日本人のそれにも直接的に適用可能かどうか については今後の研究課題である。しかし,欧米人においても日本人において も同様に,不満を経験したとしてもその反応として苦情行動が選択されること は少なくなっている。それは過去の研究が示すように,苦情行動は不満経験に 対する多様な行動選択肢の一つにすぎず,意思決定の結果として選択されるか 能動的 退出 苦情 破壊的 建 設 的 無視 ロイヤノレティ 受動的 図1 不満に対する反応としての退出・苦情・ロイヤルティ・無視の分類

(18)

342- 香川大学経済論叢 650 らである。では, どのような要因が苦情行動の選択を促進あるいは抑制するの であろうか。次章では,不満経験に対する反応としての様々な行動選選択肢の 選択意思決定に影響を及ぽす要因について検討したい。

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苦情行動に影響を及ぽす要因 苦情行動は不満足の程度と直接的に結びついていると仮定されていることが 多いが

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それは不満足度の関数ではなく,他のいく っかの要因(たとえば,顧客特性, 原因帰属,期待,必要なコスト,製品タイ プ,衡平性など)の関数であることが明らかにされているの

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苦情行動に関しては様々なモデルが提案されているが, たとえば‘

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は,三モデル(資源モデル,学習モデル,パーソナリティ・ モデル) を提案している。資源モデノレは公然と苦情を出すには資源が必要であ るという仮定に基づいており,アクセスに必要な時間や金銭,パワーが苦情行 動の決定要因として扱われている。学習モデルでは,経験のある顧客ほど彼ら の権利をよく熟知しているために,苦情を出すであろうと仮定されている。パー ソナリティ・モデノレでは, ある特定のパーソナリティ特性は不満足を知覚し, 苦情を処理する能力と関連しており,苦情を出す人は苦情を出さない人よりも 自信過剰で,口論好きであると仮定されている。これら三モデルをテストした 結果,苦情行動の予測力に最も優れているのは購買経験であり,全体的にどの モデルも苦情を出す顧客と出さない顧客の違いを中程度にしか示さなかった。 また

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は,顧客は不満足を感じたとしても苦情行動をとろうとし ないことのモデルとして経済モデルと行動モデルを提示している。経済モデル は図2のように,苦情行動を起こすかどうかは,顧客側のコスト,便益及びそ の成功可能性に対する合理的分析に基づいて決定されるとするモデルである。 行動モデルは,顧客が苦情を出そうとしないことを顧客の能力とモチベーショ

(19)

651 適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 343 ンによって説明するモデルであり,図3のような要因がもたらす心理的コスト が不満足顧客にとって大きな負担となる場合には,苦情行動を起こす価値はな いという感覚が生じ,苦情行動は行われないとするものである。 このようなモデノレも提案されているが, 以下では苦情行動の選択を促進ある いは抑制する要因と仮定されている, あるいは経験的に影響を及ぽすことが明 らかにされている要因の主なものについて簡単に検討したい。尚,

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をはじめとする苦情行動研究のほとんどすべてが継続的(長期的)取引関係を 前提としたものであるため,以下で検討する要因を単発的取引関係における苦 また,苦 情行動にも適用可能であるかどうか,については問題が残っている。 情行動に関する研究は欧米を中心として行われているために, そこで明らかに された要因が日本人の行動にも直接的に適用可能であるかどうか, 疑問が残っている。 金銭的損失(購入価格) 二次的損失(部品の購入費等) 時間 努力(苦情を出し,それをフォローアップするための) 消費者にとっての製品の重要性 返金 交換 追加賠償 現在抱えている問題 謝罪のかたちでの企業責任の承認 カタルシス (出来事に対するフラストレーションを発散する機会) 苦情処理に対する企業の評判 ビジネスに対する脅威 知覚された効力 知覚されたコスト 知覚された便益 成功の可能性 図2 苦情行動の経済モデル についても 出所:Oliver, R. L.(1997), p 362.一部加筆。

(20)

-344 苦情手段と手続きに関する知識 苦情手段の利用しやすさ コミュニケーション・スキル 文化的規範 公式的苦情手段の存在 常習的苦情者と見倣されることの受容 企業の威嚇に対する脅威 香川大学経済論叢 652 能 力 モチペーション 図3 苦情行動の行為モデル 出所:Oliver, R.L (1997), p 363一部加筆。 1 .経済的要因

Hirschman

は苦情行動を退出行動の補足であるばかりか,その代用として機 能すると捉えており,以下のような場合に顧客は苦情行動を選択し退出を延期 すると論じている。 (1)競争的な消費代替案が存在しない場合

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現在顧客となっているモノやサービスの元の(品質低下前に備えていた) 品質が,他の消費代替案の品質に比べて,大きく卓越している場合 (3)自らの苦情行動によって,あるいは他者の苦情行動により,品質改善に対 して影響力の行使が可能な場合 (4)苦情行動に伴うコストよりも,退出に伴うコスト(スイッチング・コスト) が大きい場合

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ロイヤルティが高い場合(ロイヤルティの高い人は改善のための活動に積 極的に関与)

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)

消費するモノあるいはサービスの重要性が高い場合 (7)苦情を訴える人たちの全般的な斉合性が高い場合 (8)安価にしかも効果的に苦情を伝達できるような制度とメカニズムが利用可 能な場合

(21)

653 適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 -345 また彼は,以下のこつの仮定に基づいて,苦情行動は低品質域の製品におい てよりも高品質域の製品の品質低下においてより重要な役割を果たす,という 命題を提示している。 (1)顧客を価格志向型と品質志向型に分類した場合,品質低下に対して,前者 は安価劣品質に,後者は高価良品質に移行する。

(

2

)

製品の品質分布は,低・中品質域における密度よりも高品質域における密 度の方が低い。 つまり,品質志向型の顧客は高品質を望むがために品質低下により他の高品 質な消費代替案を探索するが,高品質領域では消費代替案が少ないために,そ こに留まらざるを得ない。その結果として,苦情行動を取れ品質の回復を図 ろうとする,というものである。 このような

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の理論に基づく苦情行動研究は様々な分野で行われ おり,そこでは「満足j

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スイッ チング・コスト」などが不満経験後の行動選択に影響を及ぽすことが経験的に 明らかにされている。尚,ここでの「満足」とは個人間あるいは個人と組織聞 における関係性に対する満足の程度を意味しており,不満経験の原因となった 個々の出来事に対する不満足(ネガティブな評価)とは異なるものである。

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も同様な区別をしており,前者を「パフォーマンスの劣イじj, 後者を「修復可能な過失」としている。

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の理論から導かれる以下の三つ の予測をエアラインの不満足シナリオという実験室的状況でテストしている。 その結果,(1)と (2)はすべて支持され, (3)については苦情行動以外は支持されて いる。 (1)不満足の程度が高いほど退出や苦情行動を増加させ,ロイヤルティを低下 させる。 (2)退出障壁の存在は退出を低減させ,苦情を増加させ,ロイヤルティを低下 させる。

(22)

346 香川大学経済論叢 654

(

3

)

代替的なエアライン・運搬オプションの魅力は退出と苦情行動を増加させ, ロイヤルティを低下させる。 またPing(1993)は,ハ}ドウェアの供給者と小売業者との関係性において不 満が経験された場合の小売業者の行動選択肢として「ロイヤルテイJi苦情行動」 「退出J iご都合主義的行動J i無視」を挙げ,それらに対する「満足J i関係性 構築・維持への投資J i代替物の魅力J iスイッチング・コスト」のポジティブ あるいはネガティブな影響を考察している。その結果,関係性に対する満足や 関係性構築・維持への投資は苦情行動を促す方向に作用することを明らかにし ている。 表 B 代替的行動の選択に影響を及ぼす経済的要因 9待要綱、Hと、宅も増、的、桁、勉との悶碕研怖努究R、缶S象、、} 目08(1993) Rusbult et al (ハードウェア (1988) の 供 給 者 と 小 (従業員と職務 売業者の関係) の関係) ロイヤルティ ns + 苦情行動 + + 満 足 退出行動 ご都合主義 ns 無視 ロイヤルティ ns + 関係性槽築制 苦情行動 + + 維 持 へ の 投 資 退出行動 ns こ都合主義 ns 無視 ロイヤルティ ns 苦情行動 ns + 代 替 物 の 魅 力 退出行動 + + こ都合主義 + 無視 + ns ロイヤルティ + スイyチンゲ 苦情行動 ns コスト 退出行動 ns ご都合主義 ns 無視 ns 控 ) + 先行堅固と代替的行動に有意にポジティプな閑揺が存在する場合。 ー ネガテイプな関晶が存在する場合。 目。有意な関係が存在しない場合 Rusbultetal (1982) (恋愛関係) + + + + ns + Anderson(1988) (電子部品の販 売人) +

(23)

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5

適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 347 表

6

はこれらの研究のほんの一部を整理したものであるが,関係性に対する 満足や関係性構築・維持への投資,スイッチング・コストが高まるほど,苦情 行動やロイヤルティ(状況が改善されるのを待つ)という行動が選択される可能 性が高まる傾向がある

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。また,このような状況では,関係性を壊す ような反応,たとえば退出

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はあまり選択されない傾向があ る。なぜならば,そのような行動を選択することで,個人あるいは組織は多く のものを失うことになるからである。 2.個人的要因 苦情行動の選択に影響を及ぽす個人的要因としては,年齢や知識水準がある。

Bearden and Mason (

1

9

8

4

)

によると,製造業者や小売業者に苦情を出し,救

済(補償,問題解決)を求める人のタイプとしては年齢が若く,平均以上の収 入と学歴があるという傾向がある。 (1) 年 齢 前掲の医療サービス及びビジネスホテルにおける調査結果を用いて,不満経 験者に占める苦情行動の選択者の割合を年齢別にみると,どちらのサービスに おいても

5

0

代以上の層において苦情行動を選択した人の割合が有意に高く なっている(表

7

及び表

8

参照)。この結果は

Beardenand Mason

の結果とは 逆の傾向となっているが,これは欧米人と日本人の行動特性の違いから生じて いるということが考えられる。つまり日本人の行動特性として,周囲の他者と の関係性を強く意識するということやその結果として「恥」意識が高いという ことがあるが(藤村,

1

9

9

9

)

,年齢が高くなるほどこれらを意識する程度が低下

(24)

--348 香 川 大 学 経 済 論 叢 656 表7 年齢別による苦情行動の有無(年代別) 【病院の外来患者] [病院の入院患者] 【ビジネスホテルの宿泊客]

¥

苦情行動有 苦情行動無

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苦情行動有 苦情行動無

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苦情行動有 苦情行動無 10

2 10

2 10

代 (-) (1000) 代 (-) (100 0) 代 (-) (ー) 20 6 40 20 l 4 20 1 9 代 (13 0) (870) 代 (20 0) (80 0) 代 (10 0) (90 0) 30 7 48 30 2 9 30 8 18 代 (12.7) (873) 代 (18 2) (81 8) 代 (30.8) (69 2) 40 4 27 40 1 7 40 3 10 代 (129) (87.1) 代 (12 5) (87 5) 代 (231) (769) 50 9 18 50 3 3 50 6 13 代 (33.3) (667) 代 (50 0) (50 0) 代 (316) (68 4) 60 12 24 60 3 6 60 5 3 代 (33 3) (667) 代 (333) (66 7) (625) (37 5) 70 5 7 70

2 70 2 代 (41 7) (583) 代 (-) (100 0) 代 (333) (667) 80 l 6 80 1

80

代 (143) (85 7) 代 (100 0) (-) 代 (ー) (100 0) Pearsonのカイ二乗値:15132 Pearsonのカイ二乗値:7 673 P間 sonのカイ二乗値:6700

I

注1)カッコ無し数値は各セルに該当する人数であり,カッコ付き数値はその年代での構成 比である。 注2)

*

*は5%水準で有意である。 表8 年齢別による苦情行動の有無 (50歳を基準に分類) [病院の外来患者] [病院の入院患者】 【ビジネスホテルの宿泊客]

¥

苦情行動有 苦情行動無

¥

苦情行動有 苦情行動無

¥

苦情行動有 苦情行動無 40 40 40 代 以 (15.4 4) (82426) (241 52) (753 57) 下 代 以 (121 77) (l8l773) 下 50 50 50 代 以 (38 97 ) (61111) (381 72) (61193) 上 代 以上 27 55 (329) (671) Pearsonのカイ二乗値:12~848 Pearsonのカイニ乗値:3.134 Pearsonのカイ二乗値:1828 」 ー 注1)カッコ無し数値は各セルに該当する人数であり,カッコ付き数値はその年代での構成 比である。 注2)****は0.1%水 準 で , 牢 は10%水準で有意である。

(25)

657 適切な苦情処理がもたらす効用と抑制される苦情行動 -349 し,その結果として苦情行動が多く選択されていると考えられる。 しかし一方で,この結果は以下のような年齢と他の要因(変数)との聞に存 在する相関関係のために生じた疑似相関と考えることも可能である。 (1)年齢が高くなるほど利用経験が多くなり,学習により知識水準が高くなる。 (2) 50代以上の年齢層においては時間的余裕が多くなる。

(

3

)

年齢が高くなるほど,損失に対して敏感になる。 このように年齢と苦情行動の関係を導いた要因としては様々なものが考えら れるが,分析に用いた調査においてはどの要因の影響が確からしいかを判断す る項目が含まれていないために,これに関する検討は今後の課題である。 (2) 知識水準 Singh (1990, 1991)は Hirshmanの理論的枠組から導かれる仮説の検証をメ デイカル・ケアとグロサリー・ストアを用いて行っている。前者は顧客の知識 が無く,独占的構造の産業として,後者は消費者に知識があり,ほとんど独占 のない産業として調査対象とされている。そして分析では,不満足な顧客は, メディカlレ・ケアにおいては退出行動を,グロサリー・ストアにおいては苦情 行動をより多く選択する傾向があることが明らかにされている。一般的に独占 は退出を抑制するが, Singhはこの直観に反する結果を,苦情行動が成功する ことに対する知覚された可能性によって説明している。すなわち,成功の可能 性はグロサリー・ストアの場合は高く,メディカル・ケアの場合は低いために, 前者においての方が苦情行動が多く選択されていると説明している。 しかし,この結果は,グロサリー・ストアに対しての方が顧客の知識水準が 高いということからも説明が可能であろう。すなわち,消費対象となるモノや (11) Andreasen(1985)もHirschmanの概念をメデイカル・ケア産業に適用しているが,そ こで得られた結果ではメディカ1レ・ケアに対する不満足の程度は期待していたよりも低 くなっていた。 Andreasenはこの結果について,原因はこの産業に属するモノやサービ スに対する顧客の知識水準が低いことに原因があると説明している。さらに,不満足を知 覚できるほど十分に知識がある顧客の場合には, Hirschmanの予測通りに退出行動が多 く選択されていた。

(26)

35(ト 香川大学経済論叢 658 サービスに関する知識水準が高いほど,顧客はそれらの機能や便益に対してど のようなことをどの程度期待してよいのか,あるいはそれらの消費過程におい て問題が発生した場合にはその原因がどこにあるのかを比較的容易に理解する ことができるために,顧客は苦情をその提供組織に出しやすいと考えられる。 逆に,モノやサービスを構成する諸属性に占める信頼属性の割合が高く,専門 的知識が無ければ品質を評価できない場合には,何をどこまで要求できるのか や問題の原因がどこにあるのかを正確に把握できないために,苦情を出しにく いであろう。 このような知識水準が苦情行動に及ぽす影響については,医療サービスとビ ジネスホテルにおける苦情行動を比較した結果からも推測できる(表9及び表 10参照)。両サービスを比較すると,ビジネスホテノレにおいての方が苦情が多く 出される傾向がある。さらに,医療サービスにおける苦情行動の有無を不満原 因別に見ると,医師が不満原因となっている場合に特に苦情行動は少なくなっ ている。このような結果が生じている原因のーっとして,医療サービスに関わ る知識に関して医師と患者聞に大きな格差が存在し,それがサービス・エンカ ウンターにおいて上下関係意識(パワー関係)を生み出していることがあると 考えられる。 また,表

7

でビジネスホテルの宿泊客における苦情行動をみると,

2

0

代にお いて特に苦情行動が少なくなっている。この結果は,この年齢層はビジネスホ テルの利用経験が少なしそのためにビジネスホテルの利用に関わる知識水準 が低いために苦情行動が少なくなっていると解釈することもできるであろう。 このようなことから,消費対象となるモノやサービスに関する個人の知識水 準も苦情行動の選択に影響を及ぽす要因であると考えることができる。

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