香 川 大 学 経 済 論 叢 第66巻 第3号 1993年12月 139-158
ガストアルパイター雇用の特質
は じ め に佐 藤
忍
は じ め に I 労 働 移 民 1 ブラセロ計画 2 ターンキ一方式 II ガストアルバイター雇用 1 職場の性格 2 受け入れ国相互の競争 3 労働組合活動 III 非 市 民 1 ネットワーク化 2 滞在の一時性 む す び 国際労働力移動は,第二次世界大戦後のおよそ4
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年のあいだに,世界的な, まさにグローパルな拡大を示した。世界中のいたるところで生活している外国 人労働者の数を正確に把握することはきわめて困難である。1
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年代の初頭に おける最低限の数字として,ひとまず2
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万人とおさえておけばよいであろ う。彼らの主たる活動の場所は,アメリカ合衆国,西ヨーロッパ諸国,南アメ リカ諸国,アラブ湾岸諸国,西アフリカ,そして南アフリカである。それぞれ の地域で働く外国人労働者数は, JI慣に 500万人~650万人,6
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万人である。国際労働力移動の経済的な役割は,たとえ ( 1) W R Bohning, Studies in lnternational Labour Migration, St Martin's Press 1984, pp 16-25-140- 香川│大学経済論叢 632 ば送金という形の外国人労働者によって生み出される国家聞を移動するお金の 流れの大きさにみることができる。 1989年時点で610億ドルに達するといわれ る。その額は,原油の貿易額につぎこ番目に大きし途上国開発援助(510億ド ル)とコーヒー豆の貿易額 (90億ドル)との合計をも超える。 今日における国際労働力移動のグローパノレな展開を理解するためには,迂遠 なようだが,労働力商品化の歴史的制約に遡ってみるとよい。資本が生産過程 をとらえたとき,つまり労働力を商品として把握したとき,その労働力は地域 的に限られた限界のなかでしか形成されえなかった。なぜ、なら,労働力という 商品は,資本が自由に生産しえないものであるというだけではなしさらに歴 史的・文化的・人種的特殊性を引きず、って生きる生身の人間と不可分の存在で あり,移動に制約をともなうものだからである。現実の資本主義がイギリス資 本主義あるいはドイツ資本主義といった固有名詞の国民性を刻印されざるをえ なかったのは,労働力商品化のこうした限界によると考えられる。国際労働力 移動も労働力の国境をこえた商品化という意味では,労働力商品化の無理を免 れるものではない。にもかかわらず,国際労働力移動のグローパルな展開は, かの「歴史的・文化的・人種的特殊性」という労働力商品化の歴史的制約を乗 り越える動きであるという側面も無視してはならない。
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世紀後半の資本主義 は,あえていえば,資本主義の根幹にかかわる労働力商品化に内在する歴史的 制約を突破しようとする壮大な実験を展開したー画期であったといえるかもし れない。その最初の舞台が,西ヨーロツパ地域である。われわれは,この地域 に展開された国際労働力移動の歴史的な実験を,ガストアルパイタ一時代とよ ぶ。受け入れ国ドイツがその時代を典型的に代表する。時期的にいえば,およ そ60年代の初頭から80年代の中葉,遅くとも80年代の末までのほぼ四半世紀が それに該当する。そしてガストアノレパイタ一時代における労働移民の独特な受 ( 2) Sarah Collinson, Europe and International Migration, Pinter Publishers 1993, p..4 (3 ) 柴垣和夫「資本主義の世界性と国民性JW社会科学の論理』東京大学出版会, 1979年, 所収。 (4 ) 拙稿「ガストアルバイタ一時代の構造JW大原社会問題研究所雑誌JNo.413 (1993年4月 号)所収。633 ガストアルバイター雇用の特質 -141-け入れ様式を,ガストアノレパイター雇用とよぽう。本稿は,ガストアノレパイター 雇用の特質を,国際労働力移動の戦後的特徴と地域的特徴というこ重の観点か ら考察しようとするものである。国際労働力移動の戦後的特徴とは,特定の雇 用関係にはいることを目的として国境を越える労働者の移動,すなわち労働移 民(Arbeitsmigranten)の世界的な拡がりをいう。受け入れ国の国籍を取得しな いかぎり,労働移民は基本的には外国人労働者である。ガストアノレパイター雇 用は,労働移民の世界的拡大という戦後的特徴のうえに,さらに西ヨーロッパ の地域的特徴を重ね合わせたものと考えられる。したがってガストアルパイ ター雇用の特殊性は,西ヨーロッパ以外の他の地域に展開された労働移民との 異同を明らかにすることによって,より的確に把握することができるであろう。 │ 労 働 移 民 1.. ブラセロ計画 ガストアノレパイター雇用の特質を理解するための対照的事例として,ここで はアメリカ合衆国とアラブ湾岸諸国における労働移民をとりあげよう。 アメリカ合衆国は,いうまでもなく古典的な移民受け入れ国である。移民は, 原則として,永住移民(permanentimmigration)であれアメリカ国籍の付与 が予定されている。現在,アメリカ合衆国には
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万人から1
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万人の外国 生まれの労働者がいる。労働人口のだいたい10%にあたる。そのうちおよそ1,0
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万人が合法的な永住移民である。これにさらに2
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万人の外国人 の不法労働者が加わる。 1952年の移民・国籍法(Immigrationand N ationality Act)は,永住移民の 原則とは別に,労働移民の受け入れに門戸を聞いている。そのさいの主たる在 留資格は r優れた能力を有する一時的労働者 (temporaryworker) J, r企業内 転勤者J,そして「その他の一時的労働者」である。とりわけ rその他の一時 的労働者」という在留資1
各一一在留資格の分類上では,H-2
と略称される (5) PhilipL Martin, Foreign-born Workers in theUSA: Past, Present, and Future, in:Regional Development DialogueVol12, N 0..3 (1991), p.163142ー 香川大学経済論叢 634 一ーは,外国人の不法就労を減少させる手だてとして,その後,アメリカ合衆 国の移民政策のなかで幾度となく論議の対象になってきたものである。不法就 労の減少に効果をあげるためには, H-2の在留資格で就労する外国人の数は, 年間50万人から 75万人の規模でなければならないとされているが,実際にはき わめて少ない。最高でも
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年の7
万人弱であり,その後は2
万人前後でしか ない。しかもそのほとんどは農業労働者で占められている。自動車,鉄鋼といっ た基幹産業への就労は,きわめて限られている。合法的な労働移民はアメリカ 合衆国ではあくまで例外的な存在でしかないのである。 H-2の先例といわれるプラセロ計画も,移民受け入れ国の例外的事例に属す るといってよい。それは,戦時中の1
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年に非常事態措置として始まり,1
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年にピリオドが打たれるまで,延べ約500万人のメキシコ人労働者を労働力不足 に悩むアメリカ合衆国の農業部門に投入した。 50年代のピーク時には年間43万 人強を,農繁期に導入し,農閑期に再び帰郷させている。ちなみに,ブラセロ (brasero)とは腕を意味するスペイン語の靴で,肉体労働者をさす。 ブラセロ計画は,政府間協定にもとづき,法的な裏付け(公法45,78)をもっ て実施された。法律は,募集の公的な手続きを規定している。たとえば,次の ごとくである。労働力の選別は,メキシコ政府があたる。選別された労働力の 中継地までの輸送は,アメリカ労働省の財政負担で行われる。雇主は斡旋手数 料として1
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ドノレ支払う。中継地から職場までの輸送と,住居の提供は,雇主の 義務である。こうした募集にかかわる規定は,西ヨーロツパの政府間協定にも みられるものである。 労働契約上の賃金は,法律によれば,労働力の不足している地方の平均的な 賃金(prevailingwages)でなければならないことになっている。この「平均的 な賃金」は,たとえば労働組合と経営者団体との団体交渉によって,あるいは 最低賃金制度によって決定される場合には,社会的にみて適正な水準といえる(6) Vemon M..Briggs, lmmigration Policy and the American Labor Foκe, The Johns Hopkins University Press 1984, pp 103-107, 113-117
( 7) J ohn Bendix, lmporting Foreign Woγ-kers. A Comparison of German and
635 ガストアルパイター雇用の特質 -143 かもしれない。けれどもアメリカ農業には労働組合は存在しなかったし,また 最低賃金制度もなかった。「平、均的な賃金」を決めたのは 4人の大規模農場経 営者からなる地方賃金委員会であった。この委員会は,アメリカ人労働者にた いする通常の賃金を大きく下回る水準を平均として設定し,それによって労働 力不足の状態を作り上げたのである。実際, 1951年から 1959年にかけて,ブラ セロを雇用する農場では時間給が70セントで固定しているのにたいし,ブラセ ロを雇用しない農場では96セントから 1ドル20セントに上昇してい
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。ブラセ ロ計画は,賃金水準を切り下げる合法的手段として農場経営者によって悪用さ れたのである。フ、ラセロを社会保険制度から免除する規遣は,ブラセロ雇用の 経営者にとっての短期的な採算性をよりいっそう強化する作用をもった。 民主党は, 1958年に政権の座につくと,ブラセロ雇用の実態調査を開始して いる。そして 1963年,あと 1年間のみの延長という条件で,ブラセロ雇用に政 治的な幕をヲ│いたのである。ブラセロを多く雇用していたカリフォルニアのメ ロン,イチゴ産業の賃金は,これにより 12%から 67%もの上昇をみたといわれ ている。アメリカ合衆国の合法的な労働移民は,文字どおり安価な労働力であ るといってよしそれゆえにこそアメリカ労働市場の例外的現象にとどまった と考えられる。 2ゅ ターンキ一方式 1960年代から 70年代の前半にかけて,労働移民の主要な流れは西ヨーロッパ に向かったが, 1980年代にはアラブ湾岸諸国がそれに代わった。原油価格の急 騰にもとづく莫大な貿易収入を,産油諸国は圏内基盤整備に重点的に振り向け, そのための労働力をもっぱら国外に依存した。 1985年時点、でみると,労働移民 ( 8 ) lbid., pp..130-131 ( 9) lbid, p..131 (10) Vernon M.. Briggs, opcit, p.99 (11) Mark R Killingsworth, Effects of Immigration into the United States on the U.S Labor Market: Analytical and Policy Issues, in: Mary M. Kritz (ed), U. S. lmmi-gration and Rφ
1gee Poliり Globaland Domestic 155uι5, D. C.Heath and Company 1983, p 260-144 香川大学経済論叢 636 の64%にあたる330万人がアジアからの労働者で占められている。そのさいの最 大の受け入れ国サウジアラビアには,アジア人労働者の80%強が集中している。 また彼らの60%から70%は,建設業に従事している。 湾岸諸国へ向かう,とりわけアジアからの労働移民の流れは,次のような3 つの顕著な特徴をもっている。まず第1は,政府間協定にもとづかない国際労 働力移動が支配的であるという点である。パングラデッシュはリビア,オマー ン,イラン,イラクとのあいだに,パキスタンはヨ/レダンとのあいだに,そし てフィリピンはカタール,イラク,ヨルダンとのあいだに政府間協定を締結し てはいるが,それらはきわめて簡単な意志表明といった程度のものでしかない。 とりわけ最大の受け入れ国であるサウジアラビアは,この程度の政府間協定す ら締結を拒否しており,レツセ・フェーノレの立場を鮮明にしている。労働力輸 入にたいする受け入れ国政府の公的な責任は,ここでは問題外であるといって よい。 開発プロジェクトの受注企業による私的な組織化が受け入れ国政府の公的な 責任の肩代わりをしている。これが第
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の特徴である。韓国,日本,中国,シ ンガポール,あるいはトルコなどの企業が,建設プロジェクトの受注とともに, その事業の遂行に必要な労働力の調達・管理(在留管理を含む)についても, 一括して責任をもって請け負っている。こうしたやり方が,ターンキー (turn -key)方式と呼ばれているものである。 韓国企業がターンキ一方式を代表している。韓国が1
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年にかけ て輸出した延べ88万人の労働力の76%は中東向けであり,さらにその71%はサ ウジアラビアに向けたものである。中東で働く韓国人労働者の95..5%は,そこ(12) Manolo 1.Abella, Contemporary Labour Migration from Asia: Policies and Perspectiv巴sof Sending Countries, in: Mary M. Kritz, Lin Lean Lim, Hania Zlot
-nik (ed), lnternational Migration $ystem吉 A Global Approaιh, Clarendon Press
Oxford 1992, pp.263-265;Fred Arnold, Nasra M. Shah, Asia's Labor Pipeline: An Overview, in: F. Arnold, Nasra M Shah (ed), Asian Labor Migration Pilりelineto
the Middle East, Westview 1986, p 6
(13) Narsa M Shah, F Arnold, Government Policies and Programs Regulating Labor Migration, in: F.. Arnold, Narsa M Shah (ed), ibid, p 70; Manolo L Abella, op
637 ガストアルパイター雇用の特質 145-で事業を展開する韓国企業 (82年時点で54社)の従業員である。従業員の構成 をみると,不熟練労働者はわずか14%を占めているにすぎず,むしろ種々の技 術者が73%と圧倒的に多い。残りの 13%は企業の管理運営にたずさわる者たち である。韓国企業には,韓国の労使関係,韓国の労働条件が韓国企業の責任に もとづいて適用されている。賃金は本国の
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倍程度とされている。労使協議や 福利厚生施設も韓国の現状に合わせて設置されている。適用されるべき受け入 れ国の労働基準といったものは,ここでは存在しない。賃金の一部も,出身国 の通貨で支払われているという。それゆえ現地の労働者との直接的な賃金比較 もむずかしい。そして現地の社会,政治からほとんど隔離された,職住一体の 生活環境のなかで濃密な共働作業が遂行されている。プロジェクトを納期に間 に合わせる韓国企業の高い作業能率を下支えしているのは,こうした韓国式経 営のまるごとの移植にあるといえる。 一方,韓国のような企業の組織力を持たない送出諸国(フィリピン,パング ラデツシュ,タイなど)は,輸出する労働力商品の安さに依拠した戦略を展開 せざるをえない。受け入れ国の側に適用されるべき労働基準というものがなし また市場原理から身を守る労働者の自主的な組織活動も制限されている状況下 では,たとえ送出国政府が規制の働きかけを試みたとしても,労働市場には需 給の市場原理が貫徹してしまう。湾岸諸国への国際労働力移動に観察される第 3の特徴である送出国聞の歯止めなき輸出競争がかくして出現することにな る。労働力輸出の商業化(commercialization)ともいうべき事態がアジアの送 出諸国において急速に進展したのは,こうした事情によると考えられる。労働 力の輸出を仲介する斡旋業者(リクルータ)の数は,たとえばパングラデツシュ の場合, 1977年の55から1980年には300にもなっている。スリランカの場合には もっと激しく,閉じ期間に 4から一挙に 544へと急増している。労働力輸出の経(14) Mostafa H Nagi, Determinants of Current Trends in Labor Migration and the Future Outlook, in: F Arnold, Narsa M. Shah (ed), op.cit, pp.. 50-54; Sooyong Kim, Labor Migration from Korea to the Middle East: Its Trend and Impact on the Korean Economy, in: ibid, pp.. 165-168 桑原矯夫「国境を越える労働者』岩波書庖, 1991年, 84-85頁,参照。
一146- 香川大学経済論叢 638 験豊かなフィリピンでは,リクルータの数はもともと多く, 1980年にはすでに 650あったが 5年干妥:には964に増えている。 H ガストアルパイター雇用 西ヨーロツパの地域に展開されたガストア/レパイター雇用は,上にみたアメ リカ合衆国とアラブ湾岸諸国という 2つの地域に観察されたタイプの労働移民 とは明らかに異質な内容をもっている。それをつぎの3点において捉えよう。 まず第
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は,労働移民の担当する職場の性格である。労働移民たちの働く職場 は,よくいわれるように,限界企業の不安定な職場か杏か。第2は,受け入れ 国と送出国との関係の質である。とりわけ受け入れ国相互の競争関係が重要で ある。第3は,労働組合活動の余地である。以下,これらの諸点を順に考察す ることによって,ガストア/レパイター雇用の特徴を明らかにしよう。 1 職場の性格 西ヨーロッパにやってくる労働移民たちの多くは,大経営の従業員として採 用されている。たとえば1968年のドイツでは労働移民の60%,つまり60万人が 製造業で働いている。そのうちの7割近くは従業員500人以上の大経営に属して いる。この割合を代表的な業種についてみると,鉄鋼84%,工作機械59%,自 動車81%, 電 子 工 学 協 , 化 学 協 と な っ て いZ
。フランスをみよう。労働移 民の2人に1人 (47%)が製造業に,そして3人にl人 (33%)が建設業で働 いている (1976年)。建設業に働く労働者の平均で27%が労働移民であるとき, 従業員500人以上の大経営におけるその比率は41%である。製造業をみると,労 働者の平均10%が労働移民であるとき,従業員500人以上の大経営ではその比率 は12%であZ
。ドイツでもフランスでも,労働移民は大企業の従業員であるこ とが多い。雇用の安定性は中小の経営よりも大経営のほうが相対的な意味で安 (15) Maolo 1 Abella, op.. cit, pp..266-275(16) Marios Nikolinakos, Politische Oko向omiederGastarbeite~frage. Migration und
Kapitalismus, Rowohlt 1973, S..64 (17) W R Bohning, 0.ραt, S..136
639 ガストアルパイター雇用の特質 -147ー 定していると仮定してよいとすれば,彼らの職場それ自体は必ずしも不安定な ものであるとはいえない。 このことは就業構造にも反映されている。一般的にいえば,労働移民たちは 製造業のなかでも賃金率が低く,労働集約的で,半熟練労働者が多く,また経 営業績もあまり芳しくない業種,たとえば繊維,皮革,縫製などに集中する傾 向がみられる。たとえば,ニューヨークでは外国人,とりわけアジア出身の女 性労働者の
7L3%
は縫製・皮革業種で集中的に働いている。特定業種への過度 な集中は,ブヱノスアイレスにも観察されている。こうした就業構造の過度な 偏りは,技術革新の停滞や下請け制度の広がり,労働密度の強化といった当該 業種における生産技術や雇用慣行に無視しえないほどのマイナス影響を与えて いるといわれている。それがまた労働移民にたいする吸引力として働いてい2
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80 70 50 40 302
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-30 1970年 第1図 企業の投資活動と外国人雇用 (出典 MariosNikolinakos, Poli,的cheδkonomieder G尉おれbei加升-age,Rowohlt1973, S 49(18) Adriana Marshall, Immigrant W orkers in the Labour Market: A Comparative Analysis, in; Char1es Stahl (ed.), lnternational Migration Toda'yVolume 2
148- 香川大学経済論議ー 640 特定業種への過度な集中は,上述のように,ブラセロにも湾岸諸国のアジア人 労働者にも観察される。 ところが,西ヨーロツパの場合には,労働移民の就業構造にこのような過度 な集中は起きていない。むしろそこでは,就業構造の拡散現象こそが特徴的な 事実となっている。労働移民の雇用は,労働集約的な業種ばかりではなく,資 本集約的な業種にもかなりの比重で広がっているのである。フランスにおける 外国人労働者の1967年から1973年にかけての雇用の年平均の伸び率をみると, 建設業,消費財産業が4..3%から4..8%のとき,中間財,投資財工業では8 %か
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ら9 %に達している。また第1図は, 1961年から1970年までのドイツにおける 企業の投資活動と労働移民の雇用量との密接な相関関係を描写したものであ る。西ヨーロッパにおいては,企業による,とりわけ大企業による活発な投資 活動,積極的な合理化こそが労働移民の雇用を牽引したといってよいのである。 大企業の合理化投資によって生み出される労働力への追加的需要が,未曾有の 高度成長のなかで,労働移民の就業構造における拡散現象をもたらしたと考え らオLる。2
リ 受け入れ国相互の競争 西ヨーロッパの国際労働力移動には 6つの主たる送出国(イタリア,スペ イン,ギリシャ, トルコ,ポルトガル,ユーゴスラビア)にたいして 8つの 主たる受け入れ国(ドイツ,スイス,フランス,オランダ,ベルギー,スウェー デン,イギリス,オーストリア)が対応している。一定の空間のなかで隣接し あう受け入れ諸国が労働力の輸入をめぐって相互に激しい競争を展開している ことは,西ヨーロッパの国際労働力移動を刻印するいまひとつの特徴である。 湾岸諸国へ労働者を輸出するアジアの送出諸国のように,もっぱら労働移民を 供給する側にではなしむしろ受け入れ諸国のあいだに,つまり労働移民を需 (19) lbid, pp.75-80(20) James F. Hollifield, lmmigrants, Maγ-keお,and States The Politiω1 Economy oj Postwar Europe, Harvard University Press 1992, pp..146
641 ガストアルバイター雇用の特質 149-要する側に市場競争のメカニズムが作用した。それによって,送出諸国の側に おける労働力輸出の過度な商業化にたいしても一定の歯止めがかかったと考え られるが,受け入れ諸国の側にたいしては次のような
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点の効果が発生した。 まず最初に,受け入れ国の労働移民にたいする公的責任が受け入れ国相互の 監視下におかれることになった。ブラセロ計画の場合には,アメリカ合衆国と メキシコとのあいだで政府間協定が締結されているにもかかわらず,それは事 実上無視される結果となってしまっている。送出国メキシコにとってアメリカ 合衆国は唯一の受け入れ固となっており,後者のいわば需要独占が存在してい たことに注目する必要がある。国際労働市場に供給されるメキシコ人の労働力 にはアメリカ合衆国の農場経営者しか買い手がいないとなれば,後者としても 前者にたいして政府間協定の趣旨を尊重する,あるいはそうせざるをえないと いうような経済的インセンティヴが働かないであろう。西ヨーロッパにおける 受け入れ諸国相互の競争は,アメリカ合衆国における需要独占とは全く異なる 状況を作り出したといってよい。受け入れ諸国の雇主たちも,政府間協定にう たわれた労働基準の適用や社会保険制度への労働移民の加入といった諸点を遵 守せざるをえなくなった。さもなければ必要な労働移民にそっぽを向かれかね ないからである。西ヨーロッパには,一方で,旧植民地の出身者にたいして特 別の配慮をしなければならないオランダやフランスのような旧宗主国がある。 他方では,ナチス下における外国人や異民族の強制労働,虐殺行為にたいする 責任を世代から世代へと背負い続けようとするドイツのような非宗主国もあ る。いずれの場合にも,旧植民地や隣国からやってくる労働移民はできるだけ 公正に処遇されなければならないという考えは,戦後ヨーロッパに形成された 一種の規範であるともいえる。こうした観念は,しかしながら労働力輸入をめ ぐる受け入れ国相互の競争という市場の強制力を通じて絶えず覚醒されつづ け,それによって持続力を獲得したのである。 受け入れ国相互の競争がもたらすいまひとつの効果は,西ヨーロッパの国際 労働力移動における一定の均質化である。ドイツとフランスは,西ヨーロツパ における国際労働力移動の両極を代表しているとよくいわれる。ドイツはスイ-150- 香川大学経済論叢 642 スとともに,労働力輸入を労働力政策として追求し,それゆえ労働者の家族の 同伴にたいしては消極的姿勢をとっている。フランスはむしろ労働力輸入を人 口政策として展開し,それゆえ労働者の家族の同伴を積極的に推進した。両国 の当初におけるこうした対照的な出発点は,しかしながらタイム・スパンを
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年の長さに設定すれば,その後の経過のなかで収赦する傾向を示していること に気付く。 フランスは, 1970年に労働力輸入のピークを迎えている。労働力輸入はそれ 以降,急速に減少し,かわって家族の流入が急増しはじめる。それは募集停止 (1974年)によってさらに加速される。 1980年には,新規入国の70%を労働者 家族の再統合が占めている。この時に入国した妻や子供たちは, 1975年頃から 労働市場に登場しはじめるようになる。労働者家族の労働市場への参入は,た とえば1980年時点でみると,国外からの新規参入(17,500人)よりもず、っと多 くなっている(43,000人)。ドイツは,フランスが経験した国際労働力移動のサ イクノレ(労働力輸入→家族の流入→家族の労働市場への参入)を,およそ4
年 のズレをもって,追体験していることがわかる。すなわち,労働力輸入のピー クと家族の流入の開始はフランスよりもだいたい4年遅い1973/74年にある。 家族の労働市場参入も 4年遅れの1979/80年から急増している。スイスも多か ω れ少なかれドイツと似たような経過をたどっている。 つまり,西ヨーロツパにおける国際労働力移動は, 3つの連続的な局面を, それぞれの受け入れ国が,市場における相互の競争を媒介とすることによって, 同じように,しかし一定のタイム・ラグをもって展開したのである。募集停止 措置の同期化 (73/74年)は,このタイム・ラグの短縮をもたらしたといえる かもしれない。いずれにしても,受け入れ国それぞれの歴史的経緯に由来する 出発点にお砂る相違よりも,タイム・ラグをともなう収数化の傾向こそが西ヨー ロッパにおける国際労働力移動の顕著な特徴の一つであり,それをもたらした (21) Georges P Tapinos, European Migration Pattems: Economic Linkages and Po-icy Experiences, in: Mary M. Kritz (ed), U S.Immigration and R
φ
tgee Polic,YGlobal and Domestic Issues, D.C.Heath and Company 1983, pp.53-70川
643 ガストアlレパイター雇用の特質 -151ー ものは,労働力輸入をめぐる受け入れ国相互の競争である。 3.. 労働組合活動 労働移民の労働組合活動は,ガストアJレパイター雇用の原則である。西ヨー ロッパの受け入れ諸国は,労働移民にたいして,当初から,労働組合に加入し, 労働組合のなかで活動し,そして労働組合とともに行動を起こす権利を認めて いた。それはなによりも,西ヨーロッパの労働組合が長い歴史と闘争のなかで 獲得してきた,働く者たちの利害を代表する自主的な組織としての信頼と名声 とによるところが大であると思われる。政府間協定にもとづく政府による公的 責任の引き受けは,労働組合活動によって補完されることによって,実効性を 発揮しうるのである。 労働移民の労働組合への組織率は,もとより受け入れ固によって異なる。受 け入れ固における本国人労働者の組織率を基準にして労働移民の組織率をみる 倒) と,それは
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つの集団に分かれる。ひとつは本国人の組織率よりも労働移民の 組織率のほうが著しく高い場合である。スウェーデンがそれである。ここでは 後者の組織率自体も79%ときわめて高いが,前者はそれすらも上回っている (90%)。一方,労働移民の組織率は本国人のそれよりも明らかに低い国々があ る。オランダでは本国人の組織率が29%であるが,労働移民たちの組織率は16% でしかない。フランスでは本国人の20%にたいして外国人は15%である。ベル ギーでは本国人の組織率は90%ときわめて高く,労働移民のそれも70%と高率 であるが,タイプの分類上ではオランタやフランスと同じ集団に属する。本国 人も労働移民もほぽ同程度の組織率を示している受け入れ諸国をひとつのグ ループとすれば,そこにはイギリス, ドイツ,スイスといった諸国が属してい る。それぞれの組織率は,イギ、リス50%,ドイツ35%,スイス25%である。前 ご者では労働移民の組織率のほうが本国人よりも若干高い。 西ヨーロッパの労働移民はたいてい労働組合が伝統的に高い組織率と団結力(23) Jan Vranken, Industria! Rights, in: Zig Layton-Henry (ed), The Political Righお
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Migrant Workers in Western Europe, SAGE Pub1ications 1990, pp..47-73-152- 香川大学経済論叢 644 とを保持している産業分野(製造業)で働いている。フランスの例外的に低い 組織率は,労働移民の主たる就業先のひとつが組織化の遅れた建設業であるこ とによる。労働組合は基本的に企業の外に組織をもち,労働者の経営横断的な 利害を代表している。これにたいして経営内の具体的な諸問題については労働 組合とは別の組織が従業員の利害を代表している。その組織の呼称,設置の根 拠,形態はさまざまであるが,経営権を規制する程度において最も先進的とい われているのが, ドイツの経営評議会である。この経営レベルの従業員組織へ の労働移民の選挙権,非選挙権は,ベルギーでは1971年から,そしてドイツ, フランスではその翌年から導入された。従業員によって選ばれたこの組織の委 員たちのなかに占める労働移民の比率は,ドイツでは3“3%(1981年),ベルギー では64% (1983年)になる。西ヨーロッパのいずれの受け入れ国においても, 労働移民はかなりの程度で労働組合に組織され,かつ経営組織のなかにも一定 の利害代表を送り込んでいるといってよい。 西ヨーロッパにおける労働移民たちの働く職場の性格,あるいは労働組合活 動の余地などをみてみると,いわゆる二元的労働市場論 (dual labor market hypothesis)はガストアルパイター雇用には妥当しないといわざるをえない。そ の仮設によれば,労働移民は安い労働力をもとめる斜陽業種の限界企業に働く ことが多い。そして彼らは,大企業の安定した雇用関係のなかにいる労働者た ちが形成する第一次労働市場にたいして,それとは制度的にも峻別された第二 。 由 次労働市場を構成している,というのである。こうしたこ元的労働市場論とい うのは,なによりもまずアメリカ合衆国における経験一一ーたとえばブラセロ計 画一ーのなかから構想されたものであり,歴史,文化,制度を異にする西ヨー ロッパへのそれの適用にははじめから限界があるといわなければならない。事 実,西ヨーロツパにおける労働移民の多くは,大企業の正規従業員として働き, また労働組合にも車e.織されているのである。 (24) Ibid.., pp..67-70 (25) M J Piore, Birds oj P.αssage Migrant Labour and Industrial Societies, Cambrid -ge University Press1979 ベーニングによる批判を参照されたい(M..J Bohning,ψ ci.,l.pp..137-139)。
645 ガストアルバイター雇用の特質 153-川 非 市 民 担日 1 ネットワークイヒ 政府間協定は,労働移民の労働許可,滞在許可の更新回数にあらかじめ上限 を設定することはしていない。滞在期聞は,ブラセロ計画のように農繁期のあ いだに限られているわけではなしあるいはまたターンキ一方式のように長く とも受注工事の完成までと決められているわけでもない。労働移民が受け入れ 固にどれだけ長く滞在することになるかという点は,もっぱら雇用関係にある 当事者(経営者,労働移民)の選択と意志にかかっているといってよい。そこ で西ヨーロッパの受け入れ諸国が背負うことになった問題は,労働移民の非市 民(non-citizen)としての生活をどのようにするかという容易ならざる課題で ある。この種の問題は,労働移民自身の描いている生活設計あるいは労働移民 にたいして寄せている送出諸国の期待といったものにも大きく左右されざるを えず,しばらく事態の推移を見守ることが賢明であると考えられた。受け入れ 諸国は,職場外における労働移民の社会的,文化的欲求の充足については,さ しあたり送出国による労働移民のネットワーク化に依存し,それを奨励するこ とになる。ネットワークは,労働移民の民族文化,アイデンティティの保持に 必要な宗教活動を含み,送金の便宜をはかる銀行の設立にも及ぶ。 ネットワーク化のあり方は,送出国によって異なるが,基本的には
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つのタ イプに分類される。第1のタイプは,国家による調整をベースにするタイプで ある。ここには,イタリア,スペイン,ギリシャ,ポ/レトガルなど,移民経験(26) Barbara E. Schmitter, Immigrants and Associations: Their Role in the Socio -PoIitical Process of Immigrant Worker Integration in West Germany and Switzer -land, in:lnternational Migration Review (以下,IMRと略称)VoL 14 N 0 2(1980),
pp 179-192; Barbara Schmitter Heisler, Sending Countries and the PoIitics of Emigration and Destination, in:zbid, Vol.16 N o. 3(1985), pp.. 469-484; Barbara Schmitter Heisler, Immigrant Settlement and the Structure of Emergent Immigrant Communities in Western Europe, in: Martin 0.Heisler, Barbara Schmitter Heisler (ed.), From Foreign Worker.s to Settlers' Transnational Migration and the Emer -gen正eof New Minorities, SAGE Publications 1986, pp 76-86
-154- 香川大学経済論叢 646 の豊かな送出諸国が属している。とくにイタリアが典型といわれている。政府 は,国政選挙に際しての帰還旅費を国費から支給し,それゆえ労働移民のあい だにおける政党の活動もきわめて活発に行われている。領事館は,通常業務以 外に,労働移民の生活を助けるためのソーシャノレーワーカーや言語,文化を教 える教師などをも雇用している。労働組合は社会福祉事務所
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の開設 を通じて苦情相談にのっている。これらの各種ネットワークは,外務省の専門 部局をつうじて調整されている。これにたいして,旧ユーゴスラビアやアルジエ リアといった非資本主義国は,ネットワークの国家による一元的管理を実施し ている。ソーシャノレ・ワーカーの選考・派遣は政府機関によって直接行われて おり,ユーゴスラビアの場合には,余暇,文化,教育,スポーツといった生活 のあらゆる領域が“国家の延長した手"といわれる“ユーゴスラビア・クラブ" によって一元的に管理されている。 上記の2
つのタイプのネットワークは,受け入れ諸国からみれば r送出国の 組織された飛地」にあたる。これらに比べると,組織化のレベルは低く,それ ゆえ政治的にも細分化してしまっている第3のタイプがある。移民経験が浅く, しかも国内の政治状況も混乱しているような国,とくにトルコがこれに属する。 一方の極には,イスラム原理主義,右翼民族主義を標梼し, トルコ国内でも非 合法化されているような団体によるネットワークがある。国民運動党,イスラ ム文化中央党,イスラム連合などがそれである。他方の極には,左翼組織のネッ トワークがあり,たとえばトルコ労働者クラブ連盟, トルコ人民革新組織連盟 などである。左翼組織に特徴的なことは,受け入れ国の労働組合との連携を積 極的に推進し,逆に送出国の政府,領事館との関係を切断していることである。 トルコの場合には,さらに非抑圧民族であるアルメニア人,クルド人による独 自組織の活動もみられる。労働移民の受け入れ国における生活の送出国による 上からの組織化は, トルコ人労働者の場合には,そのほかの労働移民にくらべ て~~いといえる。647 ガストアルパイター雇用の特質 -155ー
2
引 滞在の一時性 アメリカ合衆国などの古典的な移民受け入れ国は,移民が社会に活力を与え, 社会の資質向上に寄与してきたという自己理解をもっており,そうした理解は いわば国家的なイデオロギーですらあるといえよう。これにたいして西ヨー ロッパの受け入れ諸国は,その国民国家としての発生史に規定されて,文化, 言語,宗教の共有こそが一つの国家を形成しうるという自己理解のうえに成立 している。移民を国民形成のいわば手段とはみなしていない。労働移民にたい して受け入れ諸国は,いわば,自分の家に労働者を丁重に招待するきわめて礼 儀正しい紳士として振る舞うのであるが,しかし彼らが自分の世帯の一員とし て,世帯の名声に寄与してくれる者であるとまでは考えていないのである。あ くまで,丁重に遇すべきお客一ーまさしくガストアルパイター一ーとしてであ 仰) る。国籍取得にたいする制限は,その現れであると解釈できる。国籍取得の資 格をもった者のうち,実際に受け入れ国の国籍を取得した者の割合は, ドイツ でo
45%
,フランスでL6%
でしかない。これにたいして,アメリカ合衆国では, 自 由1
9
7
0
年に入国した移民の25%
が1
9
7
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年までにアメリカ国籍を取得している。 西ヨーロツパの労働移民は,雇用関係が続くかぎり,本人の希望する期間, 受け入れ国に滞在することができるが,しかしいつかは帰還しなければならな い。彼らが永住移民ではなく,一時的移民(temporaryimmigrants)であるの は,この意味においてである。滞在の一時性は,誤解されているような2,3 年という短期間ではなく,実際はもっと長い。具体的に何年とは定められない, 仰) 一時的だが長期にわたる(long-term-temporary)ような期間と考えればよい。 いずれにしても,受け入れ国は労働移民の滞在の一時性を予定している。それ はまた送出諸国の希望するところでもある。労働移民の国籍取得を容易にしよ うとする提案が受け入れ国でなされたとき,送出国の側からただちに抗議が起 (27) Massimo Livi-Bacci, South-North Migration: A Comparative Approach toNorth American and European Experiences, in: The Changing Course
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Interna -tional MigratiOn, OECD 1993, pp.. 41-42(28) Ibid., p.. 42
(29) Barbara Schmitter Heisler, Sending Countries and the Politics of Emigration and Destination, in: IMR Vo.l16 No..3 (1985), pp..471-472.
-156- 香 川 大 学 経 済 論 叢 648 第 1表 ドイツにおける労働移民の帰還率(%) 国¥¥籍¥』対¥、象¥期¥間¥ 1961~68年 1969-v73年 1974~76年 1961~76年 ギ リ シ ャ 63 53 1,482 68 イ タ リ ア 89 78 200 91 ス ペ イ ン 74 65 2,681 82 ト lレ コ 42 21 159 30 ユーゴスラビア 41 43 757 52 言十 72 51 321 69 そ の {也 75 41 136 66 総 計 73 49 236 68 (出典) W R Bohning, op口t,Table 6 7, pp 144-145を簡略化したものである。 (注) 帰還率のt'7,出方法は本文をみよ。 こっ
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ことは,滞在の一時性にかかわる送出国の利害を示唆するに十分であろつ
。
第1表は, ドイツにおける労働移民の帰還率を示している。表は, 1961年か ら1976年までを対象とし, 16年間をさらに3つの時期に分けている。帰還率は, その当該期間に送出国へ帰還した労働移民の数を,同じ期間のなかで新規に入 国した労働移民の数で割ったものである。帰還した労働移民の数は,次のよう にして計算されている。(帰還した労働移民の数)= (当該期間の当初における 労働移民の数)十(当該期間における新規入国数)一(国籍取得者数)一(死亡者 数)一(未登録の失業者数)一(当該期間の最後における労働移民の数) 表から,石油危機直後の激しい帰還の流れをみてとることができる。ギリシャ 人労働者の場合が最も極端に現れている。 1974年から1976年にいたる 3年間の あいだに,新規入国者の15倍の労働移民がギリシャに帰国しているのである。 全期間をとおして,最も高い帰還率を示しているのは,イタリア人の91%であ る。 61年から76年までに労働移民としてやってきた311万人のイタリア人のう (30) Mark J Miller, Policy Ad-Hocracy: The Paucity of Coordinated Perspectives and Policies, in: Martin0 Heisler, Barbara Schmitter Heisler (ed), 0.ραt, p.73649 ガストア1レパイター雇用の特質 -157ー ち, 283万人が帰還し, 76年時点で残っているのは28万人である。一方,トルコ 人労働者の帰還率は,全期間をとおして30%しかなく,最も低い。これは,さ きのネットワーク化とのかかわりでいえば,労働移民にたいする送出国の影響 力の低さを,逆にいえば労働移民自身の自律性の高さを反映していると考えら れる。労働移民全体の帰還率は68%である。つまり, 10人中7人が帰還してい る。労働移民の新規の募集は1973年に停止されているから,帰還率は85年あた りにはもっと高くなっているであろう。受け入れ国と送出国の期待する労働移 民の滞在の一時性は, トルコ人をやや例外として,ほぽ実現されているとみな すことができる。期待外れは,予想以上に高度成長が持続し,想像を上回る規 模の労働移民の流入が生起したことである。期待どおりの帰還率にもかかわら ず, 192万人もの労働移民が1976年時点でなおもドイツに滞在しているのは, けっしてガストアルパイター雇用の失敗のゆえではなく, ドイツ経済が必要と した600万人という規模の労働移民の巨大さのゆえであり,ガストアルバイター 雇用のまさに成功によってもたらされた結果と考えなければならない。 1980年 時点で西ヨーロッパに滞在する630万人の労働移民の数から,上の帰還率にもと づいて過去20年間における西ヨーロツパの労働移民の総数を推計すると,2,400 万人に達する。 630万人の労働移民の数を2,400万人と対比するならば,西ヨー ロッパにおける労働移民の滞在の一時性は否定すべくもない事実である。 む す び ガストアノレパイター雇用は,滞在の一時性を前提とした労働移民の合法的な 受け入れ様式のひとつである。ガストアルパイター雇用とは臭なる労働移民の 受け入れ様式として,ブラセロ計画およびターンキ一方式があげられる。ブラ セロ計画は,アメリカ合衆国とメキシコとのあいだの政府間協定にもとづ、いて, 1942年から1965年まで実施されている。ブラセロ計画の最も顕著な特徴は,そ れが政府間協定の意思とは別に,明らかな賃金切り下げ手段として悪用された ことである。ひとつには労働組合運動の不在,いまひとつには受け入れ国の需 要独占という諸条件がそれを可能にしたと考えられる。アラブ湾岸諸国で展開
-158ー 香川大学経済論議 650 されたターンキ一方式は,送出国,あるいは第三国の資本による私的な組織化 を特徴とする。労働力だけでなく,労働基準もまた,送出国によって輸出され る。それゆえ資本力を持たない送出国の側における安い労働力をめぐる輸出競 争が激しさを増す。 西ヨーロッパにおける労働移民は,アメリカ合衆国やアラブ湾岸諸国とは まったく異なる状況のもとにおかれていた。大企業の積極的な合理化投資に よって生み出された非暫定的な職場が提供され,隣接しあう受け入れ国は相互 に労働力の輸入をめぐる競争を展開していた。そしてまた労働移民の職場には, 影響力を行使しうる労働組合の活動がある。これらの諸条件が合流しあうこと によって,ガストアルパイター雇用という労働移民の受け入れ様式は次のよう な特徴を具備するにいたった。すなわち,1)労働移民の大企業への就労と, 就業構造の拡散, 2)受け入れ国の労働基準の実質的な適用, 3) 自由意志に もとづく労働移民の滞在の一時性,そして 4)受け入れ国の政策のタイム・ラ グをともなう収散化の傾向,一一以上がそれである。