d 指導者 水田 陽子 ○ 単元観 本単元は,中学校学習指導要領国語科第二学年,「C 読むこと」の指導事項「イ 文章全体と部分との 関係,例示や描写の効果,登場人物の言動の意味などを考え,内容の理解に役立てること」の内容を受 けて設定したものである。 本単元では、学習指導要領の「C 読むこと」の言語活動例「ア 詩歌や物語などを読み、内容や表現 の仕方について感想を交流すること」を基に「語り手はなぜメロスを勇者と呼んだのか」という問いに ついて作者にインタビューしたと想定し、インタビュー記事を書くという言語活動を位置付ける。生徒 が抱くであろう「本当にメロスは勇者なのか」や「なぜ物語はこのような終わり方になっているのか」 といった疑問を活かして単元を構成し、それらの問いについて考えたことを活かして、「なぜ語り手は、 メロスを勇者と呼んだのか」という作者の意図にまで読みを深める。まず、全体を読んで問いを見つけ、 細かな問いについて考えることで、作品全体に現れたものの見方や考え方を捉えることができると考え る。登場人物の言葉や行動、情景や人物の描写が、文章全体や、作者の意図にどのように関わっている かを考える力を育成する。作者の意図というところまで、読み方を広げることで、第3 学年の文章を読 んで評価する活動につながっていくと考える。 教材文「走れメロス」は長年教科書に掲載され続けている代表的な作品である。メロスと王ディオニ スという対照的な人物像が描かれており、人物描写も大変鮮明な作品である。描写や人物の言動の意味 について考え、小説全体の主題や作者の意図を探っていく学習活動に、適した教材だと言える。 ○ 生徒観 生徒は、1年次「少年の日の思い出」の単元で、問いを見つけ単元を通して問いの答えを探っていく という学習活動を行っている。自分達で考えた課題であるため、意欲的に取り組み、生徒同士で自然と 討論になる場面もあった。その中で、根拠となる文章を探したり、何度も本文を読み直したりと、主体 的に読みを深めることができていた。本単元においても、自らが見つけた問いから課題を設定し、学習 活動を進めることで主体的に学習に取り組むことができると考える。 ○ 指導観 課題の設定では、初読の感想として疑問を出させ、生徒自らが単元の見通しを持てるようにしたい。 まず本文を通読して疑問に思ったことや気付いたことを書き出し、交流させる。その中から授業で検討 していきたい問いをいくつかに絞り、生徒自身に単元の見通しを持たせる。また、生徒から出た疑問と 関連付けたり、切り替えしの発問をしたりして、「なぜ作者太宰治は、メロスを勇者と呼んだのだろう か」という大きな問いに気付かせ、この問いについて単元を通して考えていくのだという課題意識を持 たせる。 単元の見通しを持った上で、問いについて本文の情報を元に考えていく。例えば、「メロスは勇者かど うか」といった問いには、生徒が興味を持ちやすいと考えられ、二者択一の問いであるため、ディベー ト形式で学習していきたい。その際、なぜそのように考えるかという理由を本文から言わせたい。作品 中の登場人物の言動や、表現の描写等の細部について考えたことを生かして、本単元の課題で、作品の 主題とも言える「なぜ太宰治はメロスを勇者と呼んだのか」について考えさせたい。 本文を元に考えたこと、他者と意見を交流したことを整理し、表現させるために「謎解きインタビュ ー記事」を作成させる。「なぜメロスを勇者と呼んだのか」と太宰治にインタビューしたと想定し、記事 を書かせる。その際、語り手がメロスを勇者だと思っているのか、それとも勇者だと思っていないのに 勇者だと呼んでいるのか、いずれかの立場を明確にして書かせるよう注意する。また、これまで学習し た「引用」等を活用して、本文を根拠にして論理的に説明させたい。完成した記事を元に他者と感想を 交流し、更に多様な読み方に触れさせ、今後の読書活動に広がるよう工夫する。 第2学年5組 国語科 学習指導案
単元名:謎解きインタビュー記事を書こう
教材文:
「走れメロス」
男子 21 名 女子 16 名 計 37 名単元について
振り返りにおいては、疑問を持ちながら小説を読むことで、より深く小説を読むことができ、作品 に表れているものの見方や考え方について考えることにも繋がるということに気付かせたい。今後の読 書活動等に生かす意欲も育みたい。 〇 作品を読んで問いを探し、言動や描写が作品全体の物の見方や考え方にどのように関係しているか 考えようとしている。 【関心・意欲・態度】 ○ 文章全体と部分との関係・例示や描写の効果、登場人物の言動の意味等を考え、内容の理解に役立 てること。 【読むこと イ】 ○ 抽象的な概念を表す語句,類義語と対義語,同音異義語や多義的な意味を表す語句などについて理 解し、語感を磨き語彙を豊かにすること。 【伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 イ】 国語への 関心・意欲・態度 読む能力 言語についての 知識・理解・技能 【言語活動】「なぜ語り手はメロスを勇者と呼んだのか」ついて考え、謎解きインタビューを書く。 作品を読んで問いを探し、言 動や描写を注意深く読み、どの ような意味・意図があるのか考 えようとしている。 登場人物の言動や作品中の描 写が、作品全体のものの見方や 考え方にどのように関わってい るか、作者の意図とどのように 関わっているか、考えながら読 みを深めている。 作品に使われている抽象的な 言葉等を理解し、言葉が作品の 中でどのような役割をしている か考えている。 A B 【主 体 性】 ・記事作成に向けて、問いについて自分で考えた り、他者の意見をメモしたりして、考えを深め ようとするとともに、作者に関する情報を集 め、作品に込められた作者の意図について考え ようとしている。 ・記事作成に向けて、問いについて自分 で考えたり、他者の意見をメモしたり して、考えを深めようとしている。 【思 考 力】 ・作品の中の人物や情景の描写・登場人物の言動 の意味について考え、作品全体の理解に活かす とともに、作者の意図について考えている。 ・作品の中の人物や情景の描写・登場人 物の言動の意味について考え、作品全 体の理解に活かしている。 【自己理解】 ・疑問を持って作品を読むことで、小説の内容理 解が深まり、小説を読むことがより楽しくなる ことに気付くとともに、今後の読書につなげよ うとしている。 ・疑問を持って作品を読むことで、小説 の内容理解が深まり、小説を読むこと を楽しむことができていることに気 付いている。
単元の目標
単元の評価規準
単元で育成したい資質・能力
全 10 時間 次 時 学習内容 評 価 関 読 言 評価規準 評価方法 一 1 ○「走れメロス」を読んで作品に対する問いを見つけ、作品への関心を高める。 ・全文を通読する。 ・作品を読んで、疑問に思ったこと・気付い たこと等を書き出す。 ○ ・走れメロスを読ん で問いを探し、作品 に 関 心 を持 っ てい る。 ノート 2 ○メロスは勇者かどうか考える。 ・メロスが勇者かどうかについて、本文を 根拠に自分の立場を決める。 ・班で討論を行う。 ・本単元を通して「太宰治はなぜメロスを 勇者と呼んだのか」について考えること を確認し、見通しを持つ。 ○ ○ ・他者と意見を交換 しながら、作品の 矛盾点に気付き、 単元を通して「太 宰 治 が メ ロ ス を 勇 者 と 呼 ん だ 理 由」を探っていこ うとしている。 ・メロスの言動を根 拠 に メ ロ ス が 勇 者 か ど う か 判 断 している。 ノート 二 3 ○メロスとディオニスの相互関係を読み取 る。 ・メロスとディオニスは互いにどのように 考えているかを読み取り、関係性の変化 を捉える。 ○ ○ ・メロスと王ディオ ニ ス の 相 互 関 係 を 読 み 取 っ て い る。 ・本文中の語句を理 解 し て 読 み 取 っ ている。 ノート 4 ○メロスとセリヌンティウスの相互関係 を読み取る。 ・メロスとセリヌンティウスは互いにど のように考えているか読み取り、関係性 の変化を捉える。 ・メロスはいつ裏切ったのかを考える。 ○ ○ ・メロスとセリヌン テ ィ ウ ス の 相 互 関係を読み取る。 ・本文中の語句を理 解 し て 読 み 取 っ ている。 ノート 5 ○語り手はメロスを勇者だと思っている のか考える。 ・語り手のメロスに対する評価を読み取 る。 ・語り手はメロスを勇者だと考えている のかどうかを考える。 ○ ・語り手がメロスを 勇 者 だ と 考 え て い る か ど う か を 考えている。 ノート 6 ○なぜ語り手はメロスを勇者と呼んだの かについて考える。 ・語り手がメロスを勇者だと考えている か考えていないか、自分がどちらの立場 をとるかを明確にする。 ・語り手がメロスを勇者と呼んだ理由に ついて、それぞれの立場で考える。【本時】 ○ ・語り手がメロスを ど う 評 価 し て い るか読み取り、語 り 手 が メ ロ ス を 勇 者 と し た 理 由 に つ い て 考 え て いる。 ノート
指導と評価の計画
情報の収集(4) 太 宰 治 に 関 す る 書 籍 ・ 太 宰 治 の 他 の 作 品 を 並 行 読 書 課題の設定(2)(1)本時の目標 ○語り手からメロスへの評価や、登場人物の言動の意味を活かして、語り手がメロスを勇者と呼ん だ意味について考えることができる。 (2)本時の評価規準 ○「語り手」という視点を理解し、語り手からメロスへの評価や登場人物の言動の意味を活かし て、語り手がメロスを勇者と呼んだ意味について自分なりの考えを持つことができる。 【読む能力】 (3)本時の学習展開(6時間目/全 10 時間) 学習活動 ○主な発問 ・予想される生徒の反応 □思考の場の工夫 ◇指導上の留意事項 ★めざす生徒の姿 ◆「努力を要する」状況と判断した生徒へ の指導の手立て 評価規準[観点] (評価方法) ◎本時で付けたい力 1 本時の学習課題を確認する 〇前時を振り返って、語り手の 視点から見てメロスは勇者か勇 者でないか、立場を決めましょ う。 ◆語り手という概念が分かっていない生徒 には、前時のプリントの人物相互関係表で 確認するよう指示する。 次 時 学習内容 評 価 関 読 言 評価規準 評価方法 三 7 ○これまでの学習を振り返って、記事の下書きをする。 ・これまでの学習を活かして、記事の下書 きをする。 ○ ・これまで考えたこ と・他者から聞いた こと・調べたことを 整理して、レポート の下書きをしてい る。 ノート 四 8 ○謎解きインタビュー記事を作成する。 ・「語り手はなぜメロスを勇者と呼んだの か」についてレポートを書く。 ○ ・これまでの学習を 活かしてレポート を作成している。 レポート 9 ○インタビュー記事を交流する。 ・書いたレポートを元に他者に考えを伝 える。 ○ ・作成した記事をも とに他者と意見を 交流している。 行動観察 五 10 学びのモニタリング ○自らの学びや学び方を振り返る。 ・疑問を持ちながら作品を読むことで、小 説を深く読むことができることや、自己の 見方や考え方の深まりに気付く。 ○ ・登場人物の言動か ら、作品全体に表れ たものの見方や考 え方など、自分のも のの見方や考え方 の変容や自らの学 びや学び方を振り 返ろうとしている。 学びのモニタリング
本時の学習
整理・分析(1) 太 宰 治 に 関 す る 書 籍 ・ 太 宰 治 の 他 の 作 品 を 並 行 読 書 まとめ・創造・表現(2) 振り返り(1)〇前時を振り返って、勇者派・ 勇者でない派それぞれの課題を ペアで確認しよう。 勇者派 ・なぜメロスという人物を勇者 としたのか。 勇者ではない派 ・語り手は勇者ではないメロス をなぜ勇者と呼んだのか。 2 個人で課題について考えて 書く。 〇まずは個人で自分の立場の課 題について考えて書いてみまし ょう。 勇者派 ・「メロスほどの男にも・・」とあ る。その部分からあえて、完璧では ない人物を勇者とすることで、人間 だれしも弱い部分はあると伝えてい るのだと考えた。 ・一度裏切りがあって、それを告白 したからこそ王の心を変えたのだと 思う。だから弱い部分があるが真っ 直ぐな人物のメロスを「勇者」とし たのだと考える。 勇者でない派 ・あえて「勇者」と呼ぶことで、善 人に見える人も本当は裏切りやうそ があり、「勇者」と呼べる人など、い るのだろうか、と読者に呼びかけた かったから。 3.グループで交流する。 〇次に、同じ立場の人とグルー プになり、意見交流をしましょ う。 ◇ペアで確認後、全体でそれぞれの立場か ら 1 名ずつ発表させ、全体で課題を確認す る。 ◇まずは、個人でじっくりと考える時間を 確保する。 ◇これまでのノートを振り返り、語り手の メロスへの評価や、登場人物の言動を根拠 に「なぜメロスのような人物を勇者とした のか」又は、「なぜ勇者ではないメロスを 勇者と呼んだのか」について考えて、プリ ントに書くように指示をする。 ◇役割分担をさせ、進行表をもとに進める よう指示する。 役割分担 司会・書記・発表・時間 ◇意見を一つに絞るのではなく、考えが広 がるように興味のある意見には積極的に質 問するように指示する。 語り手がメロスを「勇者」と呼んだ意味について考えることができる。 めあて
4.全体で共有する。 〇記録の人は、グループ交流で の成果を黒板に貼りに来て下さ い。 ・私たちのグループでは勇者である 立場から、メロスのような欠陥のあ る人間を勇者と呼ぶことで、人間だ れしも欠陥はあり、だからこそ美し いのだと伝えたったのだという意見 が出ました。 ・私たちのグループでは勇者ではな いという立場から、語り手はメロス を勇者と呼ぶことで、一見勇者に見 える人にも裏切りや嘘があるという ことを伝えたかったのだという意見 が出ました。また、あえて勇者と呼 んだのは、嫌味ではないかという意 見もでました。 4.本時の学習のまとめをす る。 ◇模造紙に意見を箇条書きでまとめ、発表 者はどのように発表をするか考えておくよ うに指示する。 ◇全体共有では、グループ交流で出た意見 のいくつかを取り上げて発表するよう指示 をする。 ◇自分になかった意見やインタビュー記事 作りに役立ちそうな意見はプリントにメモ をするように指示をする。 ◇学習を振り返って、語り手がメロスを 「勇者」と呼んだ意味について、それぞれ の立場から考えをまとめる。 ◎語り手の視点から本 文を読み、語り手がメ ロスを勇者と呼んだ意 味について、自分なり の考えをもつことがで きる。[読む能力] (ノート) ★めざす生徒の姿 私は、語り手の視点からメロスは勇者だという立場をとります。語り手がメロスのような人物を 「勇者」としたのは、メロスのように欠陥のある人間こそ人間らしく、美しいのだと伝えたかった のだと思いました。人間味のあるメロスだからこそ、王の心を変えることができたのだと思います。 語り手もそのことを称えて「勇者」と呼んだのだと思いました。
(4)板書計画