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修士学位論文 論文題名 アルツハイマー病とレビー小体型認知症における 拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた 脳内ネットワークに関する研究 ( 西暦 ) 2016 年 1 月 8 日提出 首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士前期課程人間健康科学専攻放射線科学域学修番号 : 氏

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Title

アルツハイマー病とレビー小体型認知症における拡散

テンソル構造的ネットワーク解析を用いた脳内ネット

ワークに関する研究

Author(s)

鶴田, 航平

Citation

Issue Date

2016-03-25

URL

http://hdl.handle.net/10748/7735

DOI

Rights

Type

Thesis or Dissertation

Textversion

author

(2)

士 学 位 論 文

アルツハイマー病とレビー小体型認知症における

拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた

脳内ネットワークに関する研究

(西暦)

2016 年 1 月 8 日 提出

首都大学東京大学院

人間健康科学研究科

博士前期課程 人間健康科学専攻

放射線科学域

学修番号:

14897618

氏 名:

鶴田航平

指導教員名: 妹尾淳史 )

(3)
(4)

別紙様式3(修士申請者用)

(西暦)

2015 年度 博士前期課程学位論文要旨

注:1 ページあたり 1,000 字程度(英語の場合 300 ワード程度)で、本様式 1~2 ページ(A4 版)程度とする。

アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease: AD)とレビー小体型認知症(Dementia With Lewy Bodies: DLB)は認知症状を示す代表的な神経変性疾患である.両疾患の臨床症状は重 複することもあり,混合病理症例も頻発するため,臨床上これらの疾患の鑑別が問題とな ることも多い.

AD と DLB の画像診断法として,MRI による灰白質体積の減少による脳萎縮程度の評価 が挙げられる.一方で,水分子の挙動を画像化する拡散強調像(Diffusion-Weighted Imaging: DWI)の発展系である拡散テンソル画像(Diffusion Tensor Imaging: DTI)を用いて,テンソル解 析することで脳白質の神経束を描出する拡散テンソルトラクトグラフィ(Diffusion Tensor Tractography: DTT)という技術がある.

近年,MRI において,DTI や機能的 MRI(functional MRI: fMRI)をグラフ理論と組み合わせ ることで,脳の領域間における解剖学的な結合や機能的な結合,いわゆる“脳内のネット ワーク”の構造の特性を定量的評価することができ,脳領域間の連絡や脳全体における情 報伝達の効率などの脳内ネットワークの様々な側面を表現することが可能となっている. このグラフ理論解析は統合失調症やてんかん,多発性硬化症など多様な精神疾患や神経変 性疾患について研究が盛んに行われているが,AD と DLB において,DTI を用いてグラフ 理論解析し,それらの鑑別を試みたという報告はまだ存在しない. 本研究は,首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会(承認番号 15056)および順天 堂大学医学部附属順天堂医院病院倫理委員会(承認番号 471)の承認を受けて実施している. 対象は,神経内科医師によって AD と診断された患者 15 名と,DLB と診断された患者 7 名 である.この 22 名に対し,DTI と T1 強調像を取得し,グラフ理論解析をすることにより 算出されたネットワーク指標(Characteristic Path Length: CPL, Global Efficiency: GE, Local Efficiency: LE, Clustering Coefficient: CC, Small-World property: SW)について AD と DLB 間で 比較・検討した. 結果は,AD に比較して,DLB では,GE(p = 0.0098)および SW(p = 0.005)の有意な低下を 示した.CPL,LE,CC について有意差は認められなかった.これは DLB と比べ,AD でス モールワールド性がより保たれ,脳全体の情報交換処理効率が高いことを意味する.した がって,本研究では,DTI にグラフ理論というアプローチを加えることで,従来の拡散 MRI 解析にはなかった GE や SW といった脳内ネットワークに有意な差があることを示すことが できた.よって,DTI を用いたグラフ理論解析では,AD と DLB 間の脳内ネットワークの 変容の差異を反映し,AD と DLB の鑑別診断において有用であると考える.

学位論文題名

(注:学位論文題名が英語の場合は和訳をつけること) アルツハイマー病とレビー小体型認知症における 拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた脳内ネットワークに関する研究 学位の種類: 修士(放射線学) 首都大学東京大学院 人間健康科学研究科 博士前期課程 人間健康科学専攻 放射線科学域 学修番号 14897618 氏 名: 鶴田 航平 (指導教員名: 妹尾 淳史 )

(5)

目次

第1 章 序論 ... 1 1.1 研究背景 ... 1 1.2 研究目的 ... 2 1.3 本論文の構成 ... 2 第2 章 核磁気共鳴現象 ... 4 2.1 はじめに ... 4 2.2 核の回転と歳差運動 ... 4 2.3 RF パルスによる NMR 信号の受信 ... 6 2.4 T1 緩和時間と T2 緩和時間について ... 7 第3 章 MRI 原理 ... 9 3.1 はじめに ... 9 3.2 MRI 装置の歴史 ... 9 3.3 傾斜磁場とスライス断面選択の原理 ... 10 3.4 傾斜磁場と周波数エンコードの原理 ... 11 3.5 傾斜磁場と位相エンコードの原理 ... 12 3.6 k-space への充填 ... 14 3.7 Spin Echo 法の撮像原理 ... 15 3.8 Gradient Echo 法の撮像原理 ... 16

3.9 Echo Planar Imaging 法の撮像原理 ... 17

第4 章 拡散 MRI ... 20

4.1 はじめに ... 20

4.2 拡散現象と濃度勾配 ... 20

4.3 拡散係数について ... 23

4.4 拡散強調像(Diffusion-Weighted Imaging: DWI)の基礎 ... 23

4.4.1 拡散強調像における信号取得 ... 23

4.4.2 拡散強調像の信号強度 ... 24

4.4.3 b 値(b-value)の定義と信号強度への影響 ... 26

(6)

4.5 拡散テンソル画像(Diffusion Tensor Image: DTI)について ... 28

4.5.1 拡散の異方性と信号強度への影響 ... 28

4.5.2 拡散テンソルの数学的基礎 ... 30

4.5.3 拡散テンソルトラクトグラフィ(Diffusion Tensor Tractography: DTT)と神経線維の追跡 ... 32 第5 章 グラフ理論 ... 35 5.1 はじめに ... 35 5.2 グラフ理論における基礎と基本用語 ... 36 5.2.1 グラフの構成とその分類 ... 36 5.2.2 グラフの行列表現 ... 37 5.3 グラフ理論より計算される指標について ... 39

5.3.1 最短経路長(Shortest Path Lengths)について ... 39

5.3.2 平均経路長(Characteristic Path Lengths)について ... 40

5.3.3 クラスター係数(Clustering Coefficient)について ... 41

5.3.4 Global Efficiency について ... 42

5.3.5 Local Efficiency について ... 43

5.3.6 Small -World property について ... 43

第6 章 アルツハイマー病とレビー小体型認知症の病態と診断 ... 45 6.1 はじめに ... 45 6.2 認知症について ... 45 6.2.1 認知症の概念 ... 45 6.2.2 認知機能評価スケールの種類 ... 45 6.2.3 MMSE について ... 47 6.3 アルツハイマー病について ... 47 6.3.1 アルツハイマー病の概念 ... 47 6.3.2 アルツハイマー病の臨床所見 ... 48 6.3.3 アルツハイマー病の画像検査 ... 49 6.4 レビー小体型認知症について ... 50 6.4.1 レビー小体型認知症の概念 ... 50 6.4.2 レビー小体型認知症の臨床診断基準 ... 51 6.4.3 レビー小体型認知症の画像検査 ... 52 6.4.4 レビー小体型認知症の診断の難しさ ... 52

(7)

第7 章 アルツハイマー病とレビー小体型認知症における拡散テンソル構造的 ネットワーク解析を用いた脳内ネットワークに関する研究 ... 54 7.1 本研究の背景および目的 ... 54 7.2 対象 ... 55 7.3 使用機器と撮像パラメータ ... 56 7.4 解析方法 ... 56 7.4.1 connectivity matrix の取得方法 ... 56 7.4.2 グラフ理論を用いたネットワーク解析 ... 61 7.3 結果 ... 62 7.4 考察 ... 63 7.5 結論 ... 64 第8 章 本研究のまとめ ... 65 𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀 1 -略語一覧-... 67 𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀𝐀 2 –Connectome Mapper の導入方法- ... 69 参考文献 ... 86 謝辞 ... 91 修士課程在学中における研究業績一覧 ... 92

(8)
(9)

第 1 章 序論

1.1 研究背景

2016 年,日本は 65 歳以上の高齢者が総人口の 25%以上を占める超高齢社会となり,現 代社会において高齢化が急速に進んでいるなか,認知症発症数は著しく増加している.認 知症は脳神経細胞が変化して機能障害に陥り,知的機能が低下することで発症する.神経 細胞の長期生存性から,加齢とともに影響を受ける確率が高まるため,認知症患者の数は 年々増加傾向をたどり,医療費や介護に伴う支出は大きな社会問題となっている.とりわ けアルツハイマー型認知症(アルツハイマー病:Alzheimer’s Disease (AD))は,脳血管性認 知症(Vascular Dementia: VD)とならび,認知症全体の中で占める割合が高く,病態の解 明と治療法の開発が急がれている認知症性疾患である.そして,レビー小体型認知症 (Dementia with Lewy Bodies: DLB)は,AD に続いて 2 番目に頻度が高い神経変性疾患で あり,現在では認知症の二割を占めている1)

AD と DLB は臨床症状が重複することもあり,さらに混合病理例も頻発するため,臨床 上これらの疾患の鑑別が問題となることも多い.

AD と DLB などの認知症の臨床画像検査では,N-isopropyl-p-[I123] iodoamphetamine

(IMP)や 99mTc-ethyl cysteinate dimer (ECD)などを用いた脳血流シンチグラフィ, 18F-fluorodeoxyglucose (FDG)を用いた PET などが主であるが2),これらは放射線医薬品

を使用するため放射線による被ばくを伴う.これに対して,核磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging: MRI)は放射線による被ばくがなく,脳を高いコントラストで描出す ることができる.

MRI における AD と DLB の画像診断法として,灰白質体積の減少による脳萎縮程度の 評価が挙げられる.一方で,水分子の挙動を画像化する拡散強調像(Diffusion-Weighted Imaging: DWI)の発展系である拡散テンソル画像(Diffusion Tensor Imaging: DTI)を用いて,テ ン ソ ル 解 析 す る こ と で 脳 白 質 の 神 経 束 を 描 出 す る 拡 散 テ ン ソ ル ト ラ ク ト グ ラ フ ィ (Diffusion Tensor Tractography: DTT)という技術がある.

近年では,拡散テンソル画像に対する解析方法の発達により,脳の領域間における解剖 学 的 な 結 合 や 機 能 的 な 結 合 (connectivity と 呼ば れ る )を 包 括 的 に マ ッ ピ ン グ し た Connectome 解析が可能となり3)4),グラフ理論と組み合わせることで脳内構造のネットワ ークの効率や連結の強さを特徴づけることができ 5),脳内神経の相互作用を解明すること ができると注目されている.このグラフ理論解析は統合失調症やてんかん, 多発性硬化症 など多様な精神疾患や神経変性疾患について研究が盛んに行われているが,AD と DLB に おいて,DTI を用いてグラフ理論解析し,それらの鑑別を試みたという報告はまだ存在し ない. 1

(10)

1.2 研究目的

本研究では,拡散 MRI の撮像テクニックである拡散テンソル画像を取得し,新しい解析 法であるグラフ理論による脳白質の構造的ネットワーク解析をすることによって,AD と DLB 間の脳内ネットワーク変容を明らかにすることを目的とする.

1.3 本論文の構成

本論文は 1 章から 8 章までで構成される.各章に記載される内容は以下の通りである. 第 1 章 序論 現代社会におけるアルツハイマー病とレビー小体型認知症の現状,画像診断法と問題点 等の背景,それら問題点の解決法を実現するための本研究の目的について述べる.加えて, 本論分の構成について述べる. 第 2 章 核磁気共鳴現象

MRI 装置における信号発生の原因となる核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance: NMR) 現象について述べる. 第 3 章 MRI 原理 MRI 装置についての簡単な歴史,NMR 現象による MR 信号取得の原理について述べる. また,現在における様々なパルスシーケンスの基礎となった Spin Echo(SE)法,Gradient Echo(GRE)法および拡散 MRI においての撮像に使用される高速撮像法について述べる. 第 4 章 拡散 MRI 拡散 MRI の基礎となる拡散現象および種々の拡散係数について述べる.また,拡散強調 撮像の基礎と,その応用である拡散テンソル解析および拡散トラクトグラフィについて述 べる. 第 5 章 グラフ理論 グラフ理論の導入背景について述べ,基本的用語やグラフの構造,行列表現について述 べる.さらに,グラフから構成されるネットワークのモデルおよび本研究で用いられたグ ラフ理論を利用して導かれる指標について述べる. 第 6 章 アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の病態と診断 本研究において鑑別検討の対象としている疾患のアルツハイマー病およびレビー小体型 認知症の基本的概念,臨床症候,および従来の画像検査について述べる. 2

(11)

第 7 章 アルツハイマー病とレビー小体型認知症における拡散テンソル構造的 ネットワーク解析を用いた脳内ネットワークに関する研究 アルツハイマー病患者とレビー小体型認知症患者に対し,拡散 MRI の撮像とグラフ理論 解析をし,導かれたネットワーク指標について比較検討した.本研究の目的,研究方法, 結果,考察について述べる. 第 8 章 本研究のまとめ 本研究を総括してまとめを述べる. 3

(12)

第 2 章 核磁気共鳴現象

2.1 はじめに

核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance: NMR)現象は 1946 年に Purcell6),Bloch7)により発

見され,現在の MRI 技術の基礎となっている.NMR で利用される原子は磁気双極子モー メントを有する1H, 13C, 14N, 17O, 19F, 23Na, 31P などの原子量と質量数がともに奇数の原子核

であり,これらの核種は磁気特性を持つ.この特性から物質の分子構造や解剖学的構造を 詳細に知ることが出来る.MRI(Magnetic Resonance Imaging)では存在比,感度がともに高い といった理由から1H が主に用いられている.また,NMR 現象で放射される電磁波は X 線 やガンマ線とは異なり,FM ラジオで使用する帯域程度であるため,一般的に生体に無害 である. 本章では,MRI 装置のもっとも基礎となる NMR 現象について述べる.

2.2 核の回転と歳差運動

原子核は固有の磁気モーメントを持つものと,そうでないものに分かれる.NMR の対 象になるのは前者の原子核であり,原子核を構成する陽子と中性子はいずれも固有の磁気 モーメントを持っている.磁気モーメント𝜇𝜇は原子核のスピン𝐼𝐼に由来し,これらは比例関

𝜇𝜇 =

2𝜋𝜋1

∙ 𝛾𝛾 ∙ ℎ ∙ 𝐼𝐼

(2.1) で表すことができる.この時,𝛾𝛾は磁気回転比,ℎはプランク定数,𝐼𝐼はスピン量子数(スピ ンの方向及び大きさを表すベクトル量)である.陽子と中性子がいずれも偶数の核種であっ た場合,全てのスピンが相互に打ち消し合い,スピン量子数𝐼𝐼はゼロとなる.スピン𝐼𝐼の静 磁場方向成分𝑚𝑚𝐼𝐼は,間隔が 1 の不連続な値だけを取ることができ,𝑚𝑚𝐼𝐼の最大値を𝐼𝐼と書き, これを核スピンと呼ぶ.このとき 𝑚𝑚𝐼𝐼= 𝐼𝐼, (𝐼𝐼 − 1), … , −𝐼𝐼 となり,式(2.1)から,エネルギー E は,

𝐸𝐸 = −

2𝜋𝜋1

∙ 𝛾𝛾 ∙ ℎ ∙ 𝑚𝑚

𝐼𝐼

∙ 𝐵𝐵

0 (2.2) と表現できる.ここで,𝐵𝐵0は外部磁場である.MRI の主な対象となる1H では,スピン I=1/2 を持つ,𝑚𝑚𝐼𝐼=1/2, -1/2 の状態が存在し,𝑚𝑚𝐼𝐼=1/2 の時を𝛼𝛼スピン状態,𝑚𝑚𝐼𝐼=-1/2 の時を𝛽𝛽スピ ン状態と呼ぶ.𝑚𝑚𝐼𝐼=1/2 と𝑚𝑚𝐼𝐼=-1/2 の1H 原子核の存在比はボルツマン分布に従い,体温(37℃) で 1.5T の MRI 装置の場合,𝛼𝛼スピン状態の1H 原子核は𝛽𝛽スピン状態の1H 原子核より 4 個 ほど多くなる.これらは静磁場が存在しない状態では同じエネルギーを持っているが,静 4

(13)

磁場に置かれた状態では磁気モーメントと磁場の相互作用によって,𝐸𝐸𝛼𝛼= −1/4𝜋𝜋 ∙ 𝛾𝛾 ∙ h ∙ 𝐵𝐵0,𝐸𝐸𝛽𝛽= 1/4𝜋𝜋 ∙ 𝛾𝛾 ∙ h ∙ 𝐵𝐵0の異なるエネルギーを持つ.このエネルギー準位をゼーマン準位 と呼び,準位間のエネルギー差⊿𝐸𝐸 = 1/2𝜋𝜋 ∙ 𝛾𝛾 ∙ ℎ ∙ 𝐵𝐵0をゼーマンエネルギーと呼ぶ.静磁場 のない状態では𝛼𝛼スピン状態と𝛽𝛽スピン状態にある核の数は同じであるが,静磁場のある状 態ではエネルギーの低い𝛼𝛼スピン状態にある核の数が𝛽𝛽スピン状態の核の数より多くなり, 安定した状態になる.この状態を熱平衡状態という.そこにゼーマンエネルギーに相当す る電磁波を外部から与えると,𝛼𝛼スピン状態から𝛽𝛽スピン状態への遷移が,𝛽𝛽スピン状態か𝛼𝛼スピン状態への遷移をわずかに上回ることになり,この差にあたる分が電磁波の吸収 として観測され,NMR スペクトルが得られる.これが NMR 現象である.ゼーマンエネル ギーに相当する電磁波は,

ℎ𝜈𝜈

0

= 𝛥𝛥𝐸𝐸 = 1/2𝜋𝜋 ∙ 𝛾𝛾 ∙ ℎ ∙ 𝐵𝐵

0

(2.3) となる.つまり,共鳴周波数(ラーモア周波数)𝜈𝜈0

𝜈𝜈

0

=

𝛾𝛾𝐵𝐵2𝜋𝜋0

(2.4) と表すことができる. 図 2.1 ゼーマン分裂から NMR スペクトルの観測までの概略図 強い外部磁場𝐵𝐵0中に磁気モーメント𝜇𝜇を持つ核スピンをさらすと,トルク(回転力)が生じ, 𝑑𝑑𝜇𝜇��⃗ 𝑑𝑑𝑑𝑑

= 𝛾𝛾 ∙ 𝜇𝜇⃗ ∙ 𝐵𝐵

����⃗

0

(2.5) に従って運動をする.磁気モーメント𝜇𝜇の時間変化は常に𝜇𝜇に垂直であるため,𝜇𝜇は𝐵𝐵0のま わりを回転運動する.すなわち,𝜇𝜇⃗ = (𝜇𝜇𝑥𝑥, 𝜇𝜇𝑦𝑦, 𝜇𝜇𝑧𝑧), 𝐵𝐵����⃗ = (0, 0, 𝐵𝐵0 0)としたとき,式(2.5)は 𝑑𝑑𝜇𝜇𝑥𝑥 𝑑𝑑𝑑𝑑

= 𝛾𝛾 ∙ 𝜇𝜇

𝑦𝑦

∙ 𝐵𝐵

0 , 𝑑𝑑𝜇𝜇𝑦𝑦 𝑑𝑑𝑑𝑑

= −𝛾𝛾 ∙ 𝜇𝜇

𝑥𝑥

∙ 𝐵𝐵

0

𝑑𝑑𝜇𝜇𝑧𝑧 𝑑𝑑𝑑𝑑

= 0

(2.6) となり,𝜇𝜇𝑥𝑥𝑦𝑦を xy 平面内の磁気モーメントの大きさとし,𝜔𝜔 = −𝛾𝛾𝐵𝐵0と置き,これを解くと,

𝜇𝜇

𝑥𝑥

= 𝜇𝜇

𝑥𝑥𝑦𝑦

𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝜔𝜔𝑐𝑐 , 𝜇𝜇

𝑦𝑦

= 𝜇𝜇

𝑥𝑥𝑦𝑦

𝑐𝑐𝑠𝑠𝑠𝑠𝜔𝜔𝑐𝑐 , 𝜇𝜇

𝑧𝑧

= 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑠𝑠𝑐𝑐𝑐𝑐.

(2.7) となる.このことから,磁気モーメント𝜇𝜇⃗は静磁場𝐵𝐵0と一定の角度を保った運動,つまり 歳差運動をする8) 5

(14)

2.3 RF パルスによる NMR 信号の受信

NMR において実際に観測しているのは,個々の1H 原子核磁気モーメント𝜇𝜇の振る舞い ではなく,それぞれの𝜇𝜇のベクトル和(つまり,𝛼𝛼群に余計に含まれている𝜇𝜇のベクトル和) の巨視的磁化𝑀𝑀である.静磁場𝐵𝐵0にさらされた熱平衡状態にある巨視的磁化𝑀𝑀は,𝐵𝐵0方向 のスピン核運動量を持ち,𝐵𝐵0方向を向く大きなベクトルとなる.磁気モーメント𝜇𝜇は𝐵𝐵0と 55°or 125°の角度を成していたことによって生じた偶力を受け,歳差運動をしていたが, 巨視的磁化𝑀𝑀は𝐵𝐵0と平行であるため偶力は生じず,𝑀𝑀𝑥𝑥, 𝑀𝑀𝑦𝑦, 𝑀𝑀𝑥𝑥𝑦𝑦はともに 0 のままである. ここで𝑀𝑀𝑥𝑥𝑦𝑦は横磁化,𝑀𝑀𝑧𝑧は縦磁化と呼ぶ. 𝐵𝐵0𝑀𝑀と比べ非常に大きな磁場であり,𝑀𝑀𝑥𝑥𝑦𝑦= 0 の状態だと,𝑀𝑀は𝐵𝐵0の陰に隠れ,検出することができない.そのため,𝑀𝑀を検出するには𝐵𝐵0 と直交する成分𝑀𝑀𝑥𝑥𝑦𝑦が必要となってくる.𝑀𝑀𝑥𝑥𝑦𝑦を生じさせるには,𝑀𝑀を𝑀𝑀𝑧𝑧から傾ければよ い.それを可能とするのが共鳴周波数を持つ電磁波,つまり RF パルスという第 2 の磁場𝐵𝐵1 である.磁場𝐵𝐵1をかけられた𝑀𝑀は,z 軸から x’-y’平面に倒れながら z 軸を中心に𝐵𝐵1と同じ 速さで回転する.巨視的磁化𝑀𝑀の挙動は𝐵𝐵1の印加時間に比例し,𝐵𝐵1の印加による z 軸と巨 視的磁化𝑀𝑀の成す角𝜃𝜃は,𝐵𝐵1が印加されている時間を t とすれば,

𝜃𝜃 = 𝛾𝛾𝐵𝐵

1

𝑐𝑐

(2.8) と表現できる.𝛾𝛾𝐵𝐵1𝑐𝑐 = 𝜋𝜋/2となるように𝐵𝐵1を t 時間印加すると,𝑀𝑀は x’-y’平面に横倒しに なる.このように𝜋𝜋/2 ∙ 𝛾𝛾𝐵𝐵1時間だけ継続する RF パルスを 90°パルスと呼ぶ.同様に,𝜋𝜋 ∙ 𝛾𝛾𝐵𝐵1 時間だけ継続する RF パルスを 180°パルスと呼び,このとき𝑀𝑀は反転する.これらの RF パルスは NMR 信号を観測したり,緩和時間を計測するために頻繁に用いられる. RF 磁場𝐵𝐵1を短時間印加することで横磁化を生成し,印加終了後,巨視的磁化𝑀𝑀は共鳴周 波数𝜈𝜈0で回転しながらもとの状態へと戻っていく.このとき検出コイルを置くことにより, 横磁化の回転に伴って信号が誘起される.これを NMR 信号といい,この現象を自由誘導 減衰(Free Induction Decay: FID)と呼ぶ.

図 2.2 90°パルスと 180°パルス

(15)

2.4 T1 緩和時間と T2 緩和時間について

プロトンを x-y 平面に傾けるために励起すると,RF パルス印加が終えた直後から平衡状 態に戻ろうとして緩和が起こる.緩和には主に二つの特性があり,一つは RF パルス直後 のスピンの位相が揃った状態から位相がずれていくもの,もう一つは RF パルスから吸収 したエネルギーを失って再び z 軸に配列するものである.前者をスピン-スピン緩和過程あ るいは横緩和過程,T2 緩和時間と呼び,後者をスピン-格子緩和過程あるいは縦緩和過程, T1 緩和時間と呼ぶ9) スピンの位相のズレはそれぞれのスピン歳差周波数が微妙に異なるために起こる.ラー モア周波数での回転系で考えると,わずかに高い周波数のスピンは時計回りに位相の分散 が起こり,一方で低い周波数のスピンは反時計回りの位相角を持つことになる.FID の減 衰の支配的な効果は主磁場の不均一性であり,避けることが出来ない.もう一つの効果は 組織内を動き回っているスピン間の相互作用,つまり双極子双極子相互作用(dipole-dipole interaction: DDI)によって形成される.この作用によって生成された局所搖動磁場⊿Bと呼 ばれる時間的に変動する微小な磁場によって,位相が分散していく.これらは T2 緩和時 間によって特徴づけられ,これは磁石や磁場強度に依存しない10) 図 2.3 T2 緩和曲線と横磁化の位相分散の過程.A:RF パルス印加直後で,まだ位相が ほぼ残っている.B:しばらく後で,かなり位相分散したがまだ横磁化は残って いる.C:完全に位相分散して横磁化は 0. 7

(16)

x-y 平面上の磁化は減衰するが,横緩和過程ではエネルギーの損失はない.エネルギー の損失をするには,1H と周りのスピン-格子が相互作用をし,スピン系以外にエネルギー を受け渡す必要がある.この時の“格子”とは具体的には分子のことを指す.つまり,分 子の運動エネルギーとして,スピンから格子へエネルギーを受け渡すということになる. このエネルギーの授受は,分子運動の周波数𝜈𝜈 ≒ 1/𝜏𝜏𝐶𝐶が磁気モーメント𝜇𝜇の周波数(≒ 𝜈𝜈0= 𝜔𝜔0/2𝜋𝜋)と同じときに最もよく働く.ここで,𝜏𝜏𝐶𝐶とは相関時間のことをいい,分子が回転し ないで停止している時間のことを指す.静磁場𝐵𝐵0が高くなると組織の T1 値が延長するの は,これらのことから説明できる.静磁場𝐵𝐵0が高くなると,磁気モーメント𝜇𝜇の共鳴周波𝜈𝜈0が大きくなり,縦緩和に寄与する𝜈𝜈0と同じ回転運動周波数νの分子が減ることで,縦緩 和が進みにくくなり,組織の T1 値が延長するということである10) 図 2.4 T1 緩和曲線 90°パルスにより xy 平面に横磁化が倒された後の横磁化の減衰はブロッホ方程式より,

𝑀𝑀

𝑥𝑥𝑦𝑦

(𝜏𝜏) = 𝑀𝑀

𝑥𝑥𝑦𝑦(0)

∙ exp (

𝑇𝑇𝜏𝜏2

)

(2.9) と表され,180°パルス照射後の縦磁化の回復はブロッホの方程式より,

𝑀𝑀

𝑧𝑧

(𝜏𝜏) = 𝑀𝑀

𝑧𝑧(0)

∙ (1 − exp �−

𝑇𝑇𝜏𝜏1

�)

(2.10) 8

(17)

第 3 章 MRI 原理

3.1 はじめに

現在,MRI(Magnetic Resonance Imaging)と呼ばれている撮像技術は,核磁気共鳴(NMR) という 50 年以上前より用いられてきた化学的分析技術を基礎として成り立っている.MRI は当初,核磁気共鳴断層撮影(NMR tomography)と呼称されていたが,“核(nuclear)”という 言葉から核物質を使用していると誤った意味合いを持っているように聞こえるため,NMR から“核(nuclear)”を取り除いた MR という言葉が用いられるようになった. MRI は静磁場中におかれた生体に傾斜磁場および𝐵𝐵1磁場を印加することにより発生す る信号を計測し,画像再構成にて任意の断層像を画像化する技術であり,生体を主に構成 する1H の物理化学的な状況を計測するために,X 線を用いた手法と比較し安全性に優れ, 濃度分解能に優れるほか,生体機能を画像化することが出来る.MRI の信号を画像化する ためには,被写体からの信号の位置情報を捕捉する必要があり,静磁場空間にスライス選 択傾斜磁場,位相エンコード傾斜磁場,周波数エンコード傾斜磁場と呼ばれる三つの傾斜 磁場を印加することによって得られる磁場強度の変化を利用し,信号の位置情報を捉える. 本章では,MRI 装置の歴史に触れた後,MRI 装置を用いた断層イメージング原理とその 代表的な撮像法について述べる.

3.2 MRI 装置の歴史

MRI は 1946 年に Purcell, Bloch より発表された NMR 信号の発見から始まった.しかし, 当初は NMR 現象という物理現象の研究であった.そのような中,1950 年に Hahn により スピンエコー法11)が発見され,この時代から NMR 技術が飛躍的に向上した.そして,1971

年に CT(computed tomography)を発表した Hounsfield の画像再構成理論である projection 法

12)を参考にし,1973 年に Lautebur によってはじめて NMR の画像化13)が発表された.1975

年には Kumar ら 14)によって MRI のフーリエ化がなされ現在に至っている.その後,

Mansfield, Pykett により MRI 高速撮像法である EPI(Echo Planner Imaging)15)が発表され,急

激に MRI 画像法は進展を見せた.

拡散強調像(Diffusion-Weighted Imaging: DWI)に関する歴史は,1950 年の Hahn の論文11)

に既に記載されていたが,スピンエコー法を用いて拡散解析を本格的に行ったのは Carr と Purcell であった16).そして 1965 年,Stejskal, Tanner によって確立された Stejskal,-Tanner

法17)は現在で最も頻繁に用いられている拡散解析である.

(18)

3.3 傾斜磁場とスライス断面選択の原理

MRI では任意方向の撮像断面を画像化できることが MRI の大きな特徴の一つである. 任意の断面像を得るためには,まず断層面の位置,つまりスライスを選択する必要がある. スライスはスライス選択傾斜磁場𝐺𝐺(𝑧𝑧)と RF パルスによって決定される.傾斜磁場𝐺𝐺(𝑧𝑧)は, 捉えたい断層面(x-y 平面)と垂直な方向(z 軸方向)に沿って印加され,その磁場強度𝐵𝐵(𝑧𝑧)は z 軸方向の位置によって異なる.そのときの共鳴周波数𝜈𝜈(𝑧𝑧)は式(2.4)のような比例関係にある ため,共鳴周波数も z 軸方向の位置によって異なる.このように傾斜磁場を印加すること によって z 軸方向に共鳴周波数の勾配を生成し,捉えたいスライスに一致する RF パルス を印加することで,任意の断層面を選択的に励起することが可能となる18)19) 任意の断面層の位置𝑧𝑧1, 𝑧𝑧2における磁場強度を𝐵𝐵(𝑧𝑧1), 𝐵𝐵(𝑧𝑧2) とし,共鳴周波数を𝜈𝜈(𝑧𝑧1), 𝜈𝜈(𝑧𝑧2) とすると,磁場強度𝐵𝐵(𝑧𝑧1), 𝐵𝐵(𝑧𝑧2)

𝐵𝐵

(𝑧𝑧1)

= 𝐵𝐵

0

+ 𝐺𝐺

𝑧𝑧

∙ 𝑧𝑧

1 (3.1)

𝐵𝐵

(𝑧𝑧2)

= 𝐵𝐵

0

+ 𝐺𝐺

𝑧𝑧

∙ 𝑧𝑧

2 (3.2) と表され,共鳴周波数𝜈𝜈(𝑧𝑧1), 𝜈𝜈(𝑧𝑧2)

𝜈𝜈

(𝑧𝑧1)

=

1 2𝜋𝜋

𝛾𝛾(𝐵𝐵

0

+ 𝐺𝐺

𝑧𝑧

∙ 𝑧𝑧

1

)

(3.3)

𝜈𝜈

(𝑧𝑧2)

=

1 2𝜋𝜋

𝛾𝛾(𝐵𝐵

0

+ 𝐺𝐺

𝑧𝑧

∙ 𝑧𝑧

2

)

(3.4) となる.このとき,任意の断面層の位置𝑧𝑧1, 𝑧𝑧2における中心周波数𝜈𝜈𝑐𝑐は,次式(3.5)で表せる.

𝜈𝜈

𝑐𝑐

=

12

�𝜈𝜈

(𝑧𝑧1)

+ 𝜈𝜈

(𝑧𝑧2)

� =

1 2𝜋𝜋

𝛾𝛾𝐵𝐵

0

+

1 4𝜋𝜋

𝛾𝛾𝐺𝐺

𝑧𝑧

(𝑧𝑧

1

+ 𝑧𝑧

2

)

(3.5) また,周波数幅(バンド幅,BW: Band Width)は

𝐵𝐵𝐵𝐵 = 𝜈𝜈

(𝑧𝑧2)

− 𝜈𝜈

(𝑧𝑧2)

=

1 2𝜋𝜋

𝛾𝛾𝐺𝐺

𝑧𝑧

(𝑧𝑧

2

− 𝑧𝑧

1

)

(3.6) となる.つまり,スライス厚𝑧𝑧(= 𝑧𝑧2− 𝑧𝑧1)は次式(3.7)から導くことができる.

𝑧𝑧 =

𝛾𝛾𝐺𝐺2𝜋𝜋 𝑧𝑧

∙ 𝐵𝐵𝐵𝐵

(3.7) 10

(19)

図 3.1 スライス選択傾斜磁場𝐺𝐺𝑧𝑧によるスライス厚の決定

3.4 傾斜磁場と周波数エンコードの原理

一切の傾斜磁場を印加せずに1H から信号を得ようとすると,どの位置に存在する1H で あっても同じ周波数として観測される.しかし,傾斜磁場を印加しながら信号を観測する と,位置情報を周波数情報として検出することができる.これを周波数エンコード(𝐺𝐺𝑥𝑥)と いう.いま,図3.2 のようにスライス選択傾斜磁場により選択励起された断層面の位置 A, B に1H があるとする.この断層面に対し,周波数エンコード傾斜磁場𝐺𝐺𝑥𝑥を印加せずにFID 信号を取得し,フーリエ変換をすると,位置A, B の1H は共鳴周波数が等しいために,2 つの信号は混在してしまう.一方,周波数エンコード傾斜磁場𝐺𝐺𝑥𝑥を印加した場合,位置 A, B の共鳴周波数は別々の周波数として観測されるため,FID 信号取得後にフーリエ変換 することによって,それぞれの周波数として区別して検出することが出来る18)19).位置座 標をxとしたときの共鳴周波数𝜇𝜇𝑥𝑥は次式(3.8)で表すことができる.

𝜇𝜇

𝑥𝑥

= ��

2𝜋𝜋𝛾𝛾

� ∙ (𝐵𝐵

0

+ 𝐺𝐺

𝑥𝑥

∙ 𝑥𝑥)�

(3.8) また,この周波数エンコード傾斜磁場は read out のエンコードとも言われている.傾 斜磁場強度と計測周波数帯域は一定の限度内であれば自由に設定できるため,読み取り方 向の撮像部位の大きさ,つまりFOV(field of view)を決定することが出来る.計測周波数 帯域はデータサンプリングの逆数で決定され,バンド幅と呼ばれることもあるが,3.3 節 で述べた RF パルスのバンド幅とは異なる概念であるので,ここではスペクトル幅(𝑆𝑆𝐵𝐵𝐵𝐵) とする.read out 方向の FOV を決定する式は次式(3.9)で得ることができる.

(20)

𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑑𝑑

=

2𝜋𝜋𝛾𝛾

∙ 𝐺𝐺

𝑟𝑟

∙ 𝑆𝑆

𝐵𝐵𝐵𝐵

(3.9) このようにして,周波数方向の位置情報を周波数の違いとしてエンコードすることが可 能となるが,二次元画像を得るためにはまだ不十分であり,もう一次元の方向にも位置情 報をエンコードする必要がある.このもう一つのエンコードを位相エンコードと言い,次 項で述べる. 図3.2 周波数エンコーディングの原理

3.5 傾斜磁場と位相エンコードの原理

いま,ある断層面の全てのスピンが同位相であると仮定する(図 3.3: A).ここで RF パル スを印加し横磁化を発生させ,信号を取得するまでの間にy 方向にt時間,位相エンコード 傾斜磁場(𝐺𝐺𝑦𝑦)を印加すると,1H の歳差運動の周波数は y 軸に沿ってその位置に対応して, 位相が進むもしくは遅れる.具体的には,座標の原点に位置する 1H の歳差運動は位相エ ンコード傾斜磁場(𝐺𝐺𝑦𝑦)の影響を受けず(図 3.3: y 軸=0),相対的に高い磁場を受ける1H では 位相エンコード傾斜磁場(𝐺𝐺𝑦𝑦)が印加されている時間だけ位相が進み(図 3.3: y 軸=𝑦𝑦1),相対 12

(21)

的に低い磁場を受ける 1H では位相エンコード傾斜磁場(𝐺𝐺𝑦𝑦)が印加されている時間だけ位 相が遅れる(図 3.3: y 軸=−𝑦𝑦1).しかし,得られる信号には様々な位相が混在しているため, 周波数エンコーディングのように一度印加するだけでは各部位の信号を区別することが出 来ない.そのため,位相エンコーディングでは印加する傾斜磁場の強度を何ステップにも 変化させながら測定を繰り返すことで,その信号を区別している.1 ステップ毎に変化さ せる位相エンコード傾斜磁場強度を𝐺𝐺𝑦𝑦,傾斜磁場印加時間を𝑐𝑐としたとき,位相方向の FOV(𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟)は,𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟の両端で位相が360°ずれるように設定する必要があるので,

𝛾𝛾 ∙ ∆𝐺𝐺

𝑦𝑦

∙ 𝑐𝑐 ∙ 𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟

= 2𝜋𝜋

(3.10) となる.また,MR 画像の位相エンコーディングをする場合,強い傾斜磁場は信号のロス が生じてしまうため,通常は0 を挟んで±の双方向に傾斜磁場を印加する.つまり,式(3.10) は,位相エンコーディングステップ数を𝑁𝑁𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟とすると,次式(3.11)で表せる.

±𝐺𝐺

𝑦𝑦

= �𝜋𝜋 ∙ 𝑁𝑁

𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟

� �γ ∙ 𝑐𝑐 ∙ 𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹𝐹

𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟

(3.11) 位相エンコードによって引き起こされる位相変化は,他の傾斜磁場の印加か,もしくは MR 信号が T2 緩和によって減衰するまでは,異なった場所における信号間の相対的な位 相差は保持される18)19) 図3.3 位相エンコード傾斜磁場印加時のスピンの挙動 13

(22)

3.6 k-space への充填

k-space(k 空間)とは,上述した周波数エンコード傾斜磁場,位相エンコード傾斜磁場を受 けたスピンからのエコー信号を格納する領域である.この k-space データを逆フーリエ変 換することにより,通常我々が観察している MRI 画像となる19) k-space の座標軸は波数で表される.波数とは単位距離あたりの波の数あるいは空間周波 数のことをいい,単位距離を 1cm にした波数の単位 cm-1が kayser で,単位記号として“k” が用いられる(k=cm-1).この“k”が k-space と呼ばれる由来である. k-space は中心に近いほど小さい波数の波を,中心から離れるほど波数の大きい波を表現 する.また,k-space の中心ほど位相エンコード量が少なく,エコー信号同士の干渉が少な いため,振幅が大きく情報量も多い.この振幅はデジタル化された数値あるいはグレース ケールの濃淡などで表される20) k-space の充填法には様々な方法が提案されており,エコープラナー法19),スパイラルス キャン法20),バースト法21)などといった超高速イメージング法では一回の励起で二次元ま たは三次元の k-space をスキャンすることも可能となっている18) 図 3.4 k-space における座標と振幅の関係 14

(23)

3.7 Spin Echo 法の撮像原理

MRI において,SE(spin echo)や GRE(gradient echo), STE(stimulated echo)といった幾種類の 信号発生方法が存在する.その中で,90°パルスの後に 180°パルスを印加しスピンを再 収束(rephasing, refocusing)させて信号を発生させる方法を SE 法という.位相分散には外部 磁場の不均一性によるものと,スピン-スピン緩和作用によるものがある.180°パルスを 印加することで前者による位相分散の影響は排除できるが,後者の影響は除去できない. Spin Echo の発生機序を図 3.5 に示す.2.3 節で述べたように,巨視的磁化𝑀𝑀𝑧𝑧は外部磁場𝐵𝐵0 と同じ方向に向いているため信号を観測できない.信号を得るためには,巨視的磁化𝑀𝑀𝑧𝑧を 外部磁場𝐵𝐵0と異なった方向に向けることが必要である.90°パルスはこの巨視的磁化𝑀𝑀𝑧𝑧を xy 平面へと倒す.倒れた直後の巨視的磁化𝑀𝑀𝑧𝑧を構成する個々のスピンはすべて同位相にあ る.その後,磁場の不均一性により各々のスピン歳差周波数がわずかに変化し,次第に個々 のスピンの位相が分散することによって,巨視的磁化𝑀𝑀𝑧𝑧が減衰していく.この減衰を FID という.その後,180°パルスを印加するとすべてのスピンが 180°反転する.この時,縦 磁化と横磁化ともに反転するが,90°パルスから 180°パルスの間(この時間を𝜏𝜏とする)に 回復する縦磁化はほんのわずかであるため,ここでは横磁化についてのみ作用すると考え る.180°パルスからさらに𝜏𝜏時間経過するとスピンの位相は再び揃い,この位相が揃った 時に発生する信号を Spin Echo と呼ぶ. 磁場の不均一によって分散したスピンの位相が 180°パルスによって再収束されるので, Spin Echo の信号のピークは T2*ではなく,T2 緩和に従う20).逆に 90°パルス印加後に自 然に発生する FID は,磁場の不均一性などのスピン系外の横緩和促進因子の影響を受けて いるので T2 ではなく,T2*で減衰する信号である.この FID を観測する信号として利用で きればよいが,信号の初めの部分が 90°パルスと重なって観測することが出来ないために MRI や NMR では利用されない. SE 法の信号強度Sは次式(3.12)で表され,

𝑆𝑆 ∝ 𝑀𝑀

0

�1 − 𝑒𝑒𝑥𝑥𝑒𝑒 �−

𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇1

�� 𝑒𝑒𝑥𝑥𝑒𝑒 (−

𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇2

)

(3.12) SE 法の信号強度Sのピーク𝑆𝑆𝑝𝑝𝑟𝑟𝑟𝑟𝑝𝑝は次式(3.13)で表すことができる.

𝑆𝑆

𝑝𝑝𝑟𝑟𝑟𝑟𝑝𝑝

∝ 𝑀𝑀

0

exp (−

𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇𝑇2

)

(3.13) 15

(24)

図 3.5 SE 法による磁化の挙動

3.8 Gradient Echo 法の撮像原理

SE 法と比較し,Gradient Recalled Echo(GRE)法では 180°再収束パルスを使用せず,90° 未満のパルス(αパルス)を用いる.180°再収束パルスを使用しないので,GRE 法は T2 減 衰ではなく,T2*減衰し,磁場の不均一性や磁化率に敏感である.また,180°再収束パル スを介さないので TR を容易に短縮することができるため,高速撮像に適している20) 信号の発生には傾斜磁場を用いて位相を再収束させることで信号を発生させる.式(2.4) より,共鳴周波数が磁場強度に比例することからもわかるように𝛾𝛾を磁気回転比とする原 子核に対して傾斜磁場𝐺𝐺を印加すると次式(3.14)に従って位相∅が変化する.

∅ = ∫ 𝛾𝛾 ∙ 𝐺𝐺𝐺𝐺𝑐𝑐

(3.14) つまり,傾斜磁場によって空間的に磁場強度を変化させることで,各位置の磁場強度に応 じてスピンの位相が変化する.傾斜磁場−𝐺𝐺を∆𝑐𝑐秒だけ印加すると,前述の理由から位相が 乱れる.この位相の乱れは磁場の不均一の影響に加え傾斜磁場の影響もあるため,FID の T2*よりさらに早期に乱れる.その後,−𝐺𝐺を反転させ𝐺𝐺にすると,先ほどとは逆に−𝐺𝐺で乱 れた位相が揃いはじめ,𝐺𝐺印加∆𝑐𝑐秒後に−𝐺𝐺による位相分散が相殺され信号がピークを迎え る.さらに𝐺𝐺を印加し続けると位相がまた分散し始め,信号が山型になり,正しく観測可 能となる20).このように傾斜磁場によって発生する信号であることから Gradient Echo と呼 ばれている. 16

(25)

図 3.6 GRE 法による磁化の挙動

3.9 Echo Planar Imaging 法の撮像原理

Echo Planar Imaging(EPI)法は,臨床的に利用される撮像法の中で最速の撮像法であり, その高速性と磁化率効果の高さを生かし,灌流画像(perfusion image)や拡散強調画像 (diffusion-weighted image),BOLD(blood oxygenation level dependency)法による機能的 MRI (fMRI: functional MRI)などに利用される21)22)23)

初期の EPI は,図 3.7 に示すように励起 RF パルス印加後,弱い位相エンコード傾斜磁場

𝐺𝐺𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟を印加しながら,高速に周波数エンコード(読み取り)傾斜磁場(𝐺𝐺𝑥𝑥もしくは𝐺𝐺𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑑𝑑)の反

転を繰り返し,多数のエコーを生成し k-space の全てのラインを埋める方法である.この ように 90°励起パルス印加後から信号を取得する EPI は FID(GRE)型 EPI と呼ばれ,その 信号の包絡線は T2*で減衰する.k-space にデータを充填するときは,一定の弱い位相エン コード傾斜磁場𝐺𝐺𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟を連続して印加するため,スキャンの軌道は図 3.8(A)のようにジグ ザグに充填される.この k-space 充填法ではデータポイントが不均一に分布してしまい, 従来法と比べてフーリエ変換時にアーチファクトを生じる.この欠点を解決するために考 えられたのが blipped EPI と呼ばれる撮像法である(図 3.8(B)). 17

(26)

blipped EPI では,読み取り傾斜磁場𝐺𝐺𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑑𝑑がゼロ,つまり k-space における充填位置が𝑘𝑘𝑥𝑥軸 の端にあるときに,短時間(最小 200µsec)だけ位相エンコード傾斜磁場𝐺𝐺𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟を印加する. こうすることで充填するライン(ky軸)上下に移動する(図 3.9).本来の EPI では弱い位相エ ンコード傾斜磁場を連続して印加していたために,その軌道はジグザグになり,データポ イントは不均一に分布していたが,𝐺𝐺𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑑𝑑𝐺𝐺𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑑𝑑の間に短時間𝐺𝐺𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟を印加することで, k-space を充填する軌道は直線になり,データポイントも均一に分布する24) k-space 充填法の工夫以外にも,90°励起パルス印加後に 180°再収束パルスを印加し, その後に信号を取得する SE 型 EPI と呼ばれるシーケンスや,一回の RF 励起パルスですべ ての信号を取得するのではなく(この手法を single-shot という),複数回に分けて信号の取 得をする multi-shot などといった工夫がある.SE 型 EPI は RF 励起パルス印加後に 180°再 収束パルスを印加することで,生成信号の包絡線がスピンエコーとなり,T2 減衰する.ま た,信号取得に関しては多少時間的余裕が発生し,磁化率の影響も小さくなる.また, multi-shot という手法は,single-shot のように一回の RF 励起パルスで生成される信号すべ てにおいて十分な SNR で取得するのは難しいため,一回の RF 励起パルスですべての信号 を取得することを諦めて,何回かに分割して信号を取得する手法である.こうすることで, 装置の性能に対する要求も軽減し,SNR が上がり,磁化率の影響も少なくなる.ただし, single-shot では RF 励起が一度だけであるので,TR が無限大であり,T1 の影響がない画像 となっていたが,multi-shot では TR が存在するために,T1 の影響が加わってくる. 図 3.7 𝐺𝐺𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟連続印加による FID 型 EPI のパルスシーケンス図 18

(27)

図 3.8 k-space の充填軌跡(A:𝐺𝐺𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟連続印加による充填軌跡,

B:blipped 𝐺𝐺𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟連続印加による充填軌跡)

図 3.9 blipped 𝐺𝐺𝑝𝑝ℎ𝑟𝑟𝑎𝑎𝑟𝑟連続印加による SE 型 EPI のパルスシーケンス

(28)

第 4 章 拡散 MRI

4.1 はじめに

拡散現象とは,単位体積の溶液中の粒子数あるいは分子数の分布が非平衡な状態から平 衡な状態に自然に変わっていく現象である.この現象はブラウン運動と呼ばれる水分子の 不均衡な衝突が原因であり,1828 年に Robert Brown により発見され,1905 年に Albert Einstein が物理学的現象として理論づけた 25).これは液体中のような媒質中に浮遊する微 粒子がランダムに運動する現象であり,液体中の分子の熱運動による不規則な衝突によっ て引き起こされる.拡散現象は巨視的には物質の移動が濃度勾配に比例するという Fick の 法則に従っており,物理学での拡散係数はその係数である.微視的にはブラウン運動によ って生じる濃度勾配が非平衡な状態から平衡な状態に自然に変わっていく過程である. 拡散 MRI で通常観察しているのは,ブラウン運動で見られるような微視的な水分子の不 規則運動としての拡散現象である.実際に撮像するには,拡散を強調するために運動検出 傾斜磁場(Motion Probing Gradient: MPG)と呼ばれる一対の傾斜磁場を印加して撮像を行う. また,拡散の強調度合いは b 値(b value [sec/mm2])と呼ばれる MPG の強度や印加時間,印 加間隔などによって定義された指標で表現される.拡散を強調した画像,いわゆる拡散強 調像(Diffusion-Weighted Imaging: DWI)では,水分子の拡散運動速度やその拡散方向がわか る.前者を見かけの拡散係数(Apparent Diffusion Coefficient: ADC)といい,後者を異方性 (anisotropy)といい,これらによって数値化することができる.異方性には,相対異方性 (Relative Anisotropy: RA),異方性比率(Fractional Anisotropy: FA),体積比(Volume Ratio: VR) などの指標が存在する. 本章では拡散 MRI の基礎となる拡散現象について述べ,拡散強調撮像の基礎と,その応 用である拡散テンソル解析および拡散トラクトグラフィについて述べる.

4.2 拡散現象と濃度勾配

拡散現象の基礎として 1855 年に発表された Fick の法則と呼ばれる法則がある.これは 液体中を粒子や分子といった溶質が拡散するとき,濃度変化の向きに垂直な単位面積を単 位時間に通過する粒子は,その濃度勾配に比例するという法則である25).このとき,個々 の粒子が濃度勾配に沿って一斉に移動するのではなく,濃度勾配に逆らうものや直交方向 に移動するものなどの総和を全体的に観察すると濃度勾配に沿って移動するような振る舞 いをするということが重要である. 実際には粒子は三次元的に拡散するが,ここでは問題を単純化するために,図 4.1 に示 すような 2 つの異なる濃度 A と B の物質についての一次元の拡散について考える.いま, 20

(29)

物質 A と物質 B の間にある遮蔽板(図 4.1 中の位置±𝑟𝑟)があるとする.±𝑟𝑟の位置にある遮蔽 板を時間𝑐𝑐 = 0[ms]において瞬間的に取り除いた場合,2 つの物質は拡散現象を起こし,や がて全容積が均一な濃度となる.ここで,物質 A の濃度を𝐶𝐶𝐴𝐴[個/m3],物質 B の濃度を𝐶𝐶𝐵𝐵[/m3]とし,𝑥𝑥と𝑥𝑥 + 𝐺𝐺𝑥𝑥の間の領域𝐺𝐺𝑥𝑥に注目する.𝑥𝑥にある平面を通過する物質 A の拡散𝐽𝐽𝐴𝐴[個/m2∙ s]は,単位時間に𝑥𝑥の正方向へその平面の単位面積を通る A 分子の正味の数で ある.これは𝑥𝑥における A の濃度勾配に比例し,次式(4.1)で示される.

𝐽𝐽

𝐴𝐴

= −𝐷𝐷

𝜕𝜕𝐶𝐶𝜕𝜕𝑥𝑥𝐴𝐴

(4.1) 式(4.1)の比例定数D[m2/s]は拡散係数と呼ばれ,この値が大きいほど粒子の拡散が早く,小 さければ粒子の拡散が遅いことを示す.また式(4.1)は Fick の拡散第一法則と呼ばれている. 図 4.1 において,𝑥𝑥と𝑥𝑥 + 𝐺𝐺𝑥𝑥の間の領域𝐺𝐺𝑥𝑥における物質 A の増加分𝜕𝜕𝐶𝐶𝐴𝐴 𝜕𝜕𝑑𝑑は,この領域に流 入する A 分子と,流出する A 分子との差を容積 dx で割ったものに等しい.つまり, 𝜕𝜕𝐶𝐶𝐴𝐴 𝜕𝜕𝑑𝑑

=

1 𝑑𝑑𝑥𝑥

[𝐽𝐽

𝐴𝐴

(𝑥𝑥) − 𝐽𝐽

𝐴𝐴

(𝑥𝑥 + 𝐺𝐺𝑥𝑥)]

(4.2) と示される.ここで𝐺𝐺𝑥𝑥が十分に小さい場合,次式(4.3)が成り立つ.

𝜕𝜕𝐽𝐽𝐴𝐴 𝜕𝜕𝑥𝑥

=

1 𝑑𝑑𝑥𝑥

[𝐽𝐽

𝐴𝐴

(𝑥𝑥 + 𝐺𝐺𝑥𝑥) − 𝐽𝐽

𝐴𝐴

(𝑥𝑥)]

(4.3) 式(4.1), (4.2), (4.3)より 𝜕𝜕𝐶𝐶𝐴𝐴 𝜕𝜕𝑑𝑑

= −

𝜕𝜕𝐽𝐽𝐴𝐴 𝜕𝜕𝑥𝑥

=

𝜕𝜕 𝜕𝜕𝑥𝑥

�𝐷𝐷

𝜕𝜕𝐶𝐶𝐴𝐴 𝜕𝜕𝑥𝑥

� = D �

𝜕𝜕2𝐶𝐶𝐴𝐴 𝜕𝜕2𝑥𝑥

(4.4) と表すことができる.式(4.4)は拡散方程式と呼ばれ,Fick の第二法則のことを示す.この 式は,濃度変化がその部位の濃度勾配の変化率に比例していることを示している25)26) 図 4.1 一次元拡散系における拡散模式図(文献[26]より改変引用) 21

(30)

この拡散方程式という二階偏微分方程式の一般解は,以下のような 2 つの境界条件を与え ることで求めることができる. 1) 初期条件:𝑐𝑐 = 0 のとき,𝐶𝐶(0, 0) = 𝐶𝐶0,𝐶𝐶(𝑥𝑥, 0) = 0 最初に原点以外の拡散粒子は存在せず,原点のみから拡散するという条件. 2) 境界条件:𝐶𝐶(±∞, 𝑐𝑐) = 0 拡散時間tに関係なく拡散粒子が届かない部分がある.つまり,拡散する空間には 境界が存在せず無限に広いという条件. この条件下で式(4.4)を解法すると,

𝐶𝐶 =

𝐶𝐶0 2√𝜋𝜋𝜋𝜋𝑑𝑑

𝑒𝑒𝑥𝑥𝑒𝑒 �

−𝑥𝑥2 4𝜋𝜋𝑑𝑑

(4.5) となり,物質が距離xの位置に存在する確率を𝑃𝑃(𝑥𝑥, 𝑐𝑐)とすると,

𝑃𝑃(𝑥𝑥, 𝑐𝑐) =

𝐶𝐶𝐶𝐶 0

=

1 √4𝜋𝜋𝜋𝜋𝑑𝑑

𝑒𝑒𝑥𝑥𝑒𝑒 �

−𝑥𝑥2 4𝜋𝜋𝑑𝑑

(4.6) となる.これは標準偏差σ = √2𝐷𝐷𝑐𝑐とする原点から正規分布を示す関数を表している23).つ まり,拡散現象が正規ガウス分布することを示している(図 4.2). 図 4.2 時間 t における拡散ガウス分布曲線 22

(31)

4.3 拡散係数について

流体中を速度𝑣𝑣で移動する半径 r の小粒子には,𝐹𝐹 = 6𝜋𝜋𝜂𝜂𝑟𝑟𝑣𝑣の抵抗を受けながら移動して いるという Stokes の法則がある.この逆数(6𝜋𝜋𝜂𝜂𝑟𝑟)−1を移動度と呼び,𝜇𝜇で表す.一方,1905 年に Einstein および Sutherland によって,1906 年に Smoluchowski によってそれぞれ独立に 明らかにされたブラウン運動についての関係式の一般形𝐷𝐷 = 𝜇𝜇𝑘𝑘𝐵𝐵𝑇𝑇がある.この式は Einstein-Smoluchowski の関係式と呼ばれ,𝑘𝑘𝐵𝐵はボルツマン定数(= 1.3805 × 10−23[J/deg]), 𝑇𝑇は熱力学温度,つまり絶対温度を示している.以上のことから拡散係数 D は次式(4.7)で 示される.

𝐷𝐷 =

𝑝𝑝𝐵𝐵𝑇𝑇 6𝜋𝜋𝜂𝜂𝑟𝑟

(4.7)

4.4 拡散強調像(Diffusion-Weighted Imaging: DWI)の基礎

4.4.1 拡散強調像における信号取得

水分子の拡散現象を MRI の信号として検出する基本的な方法としては,スピンエコ ーシーケンス内の 180°再収束パルスの前後に,大きさが同じで向きが逆の一対のパル ス型傾斜磁場(Motion Probing Gradient: MPG)を印加する Stejskal-Tanner 法がある. 180°再収束パルス印加前の MPG 傾斜磁場はプロトンの位相を分散させ,180°再収束 パルス印加後のMPG 傾斜磁場はプロトンの位相を収束させる役割がある.静止してい るプロトンは一対のMPG 傾斜磁場により位相変化が相殺され,信号に変化は起こらな いが,一対のMPG 傾斜磁場の印加の間隔に MPG 傾斜磁場と同じ方向に動いたプロト ンは位相変化が残存し,結果としてそれらの信号が低下する.つまり,MPG 傾斜磁場 は,“拡散による動き”を“位相のずれ”として画像に反映させていると言える 25).現 在,臨床で撮像されている拡散強調像は,上述のStejskal-Tanner 法と 3.9 節で述べた EPI 法をベースとした DWI SE-EPI 法が用いられている(図 4.3).

拡散現象は T1 値,T2 値といった従来の MRI のパラメータとは独立した物理現象で, 組織の構築,組織の構成物ごとの物理学的性質,組織の微細構造,立体構造などの今ま で画像化するのが困難であった微細構造を反映した MR 信号を得ることが可能となる. それを利用した画像は,従来とは全く異なる物理的背景の画像となる. 臨床では,超急性期脳梗塞などの病変の検出や鑑別に有用とされ,頭部領域 MRI 検 査のルーチン撮像として多くの施設で用いられている.拡散強調像の信号は,拡散係数 が低い場合に高信号となる.また,拡散強調画像はMPG 傾斜磁場を印加する前の撮像 法(EPI の T2 強調画像)の影響を受けてしまうため,T2 強調像由来の信号の解釈には注 意が必要となる26). 23

(32)

図4.3 DWI SE-EPI のパルスシーケンスと MPG 傾斜磁場による位相変化 4.4.2 拡散強調像の信号強度 拡散 MRI では,MPG 傾斜磁場を印加することで“拡散による動き”を“位相のずれ”と して画像に反映させている.この位相のずれ,つまり位相の分散を±𝜋𝜋[rad]の範囲で測定 することで,拡散の程度を信号の低下として画像化するということである.4.2 節で述べ たように,拡散は全ての拡散粒子が原点にあり,拡散する空間に境界が存在しないこと を条件としたとき,その拡散粒子の移動距離の分布は正規分布する.原点から+𝑥𝑥に変位 して位相が+∅ずれた核磁気モーメント𝜇𝜇と,原点から−𝑥𝑥に変位して位相が−∅ずれた核 磁気モーメント𝜇𝜇の存在確率は正規分布に従い同じで,これら二つの核磁気モーメント をペアとして考えると,そのベクトル和は必ずx軸上に存在し,大きさは2𝜇𝜇 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐 ∅ (∅ ≥ 0) となる.したがって,拡散しているプロトンの磁化の大きさ𝑀𝑀は,x座標0~∞に存在する 𝜇𝜇の確率密度に2𝜇𝜇 𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐 ∅を掛けたものを全て足し合わせればよいことになる27).正規分布 24

(33)

の確率密度分布は式(4.6)より,以下の通りになる.

𝑃𝑃(𝑥𝑥, 𝑐𝑐) =

𝐶𝐶𝐶𝐶 0

=

1 √4𝜋𝜋𝜋𝜋𝑑𝑑

𝑒𝑒𝑥𝑥𝑒𝑒 �

−𝑥𝑥2 4𝜋𝜋𝑑𝑑

(4.6) したがって,

𝑀𝑀 = ∫ 2𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐 ∅ ∙

0√4𝜋𝜋𝜋𝜋𝑑𝑑1

𝑒𝑒𝑥𝑥𝑒𝑒 �

−𝑥𝑥4𝜋𝜋𝑑𝑑2

� 𝐺𝐺𝑥𝑥

(4.8) 拡散変位距離xの時間tにおける位相∅は,磁気回転比𝛾𝛾[MHz/T]MPG 傾斜磁場強度を 𝐺𝐺𝑀𝑀𝑀𝑀𝐺𝐺[T/m]としたとき,

∅(𝑥𝑥, 𝑐𝑐) = 𝛾𝛾 ∫ 𝐺𝐺

𝑀𝑀𝑀𝑀𝐺𝐺

(𝑐𝑐) ∙ 𝑥𝑥(𝑐𝑐)𝐺𝐺𝑐𝑐

(4.9) と表現できる.式(4.8)および式(4.9)より,

𝑀𝑀 = 𝑒𝑒𝑥𝑥𝑒𝑒 �−𝛾𝛾

2

𝐷𝐷 ∫ �∫ 𝐺𝐺

𝑀𝑀𝑀𝑀𝐺𝐺

(𝑐𝑐′′)𝐺𝐺𝑐𝑐′′

𝑑𝑑′ 0

2

𝐺𝐺𝑐𝑐′

𝑑𝑑 0

(4.10) となる. ここで,拡散していないプロトンの磁化の大きさ𝑀𝑀0は,式(4.7)においての∅ = 0,す なわち𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐𝑐 ∅ = 1の場合であるため,

𝑀𝑀

0

= ∫ 2 ∙

√4𝜋𝜋𝜋𝜋𝑑𝑑1

𝑒𝑒𝑥𝑥𝑒𝑒 �

−𝑥𝑥 2 4𝜋𝜋𝑑𝑑

� 𝐺𝐺𝑥𝑥

∞ 0

=1

(4.11) となる.式(4.10)および式(4.11)より

𝑙𝑙𝑠𝑠(

𝑀𝑀𝑀𝑀 0

) = −𝛾𝛾

2

𝐷𝐷 ∫ �∫ 𝐺𝐺

𝑀𝑀𝑀𝑀𝐺𝐺

(𝑐𝑐

′′

)𝐺𝐺𝑐𝑐

′′ 𝑑𝑑′ 0

2 𝑑𝑑 0

𝐺𝐺𝑐𝑐′

(4.12) これを解法すると,

𝑙𝑙𝑠𝑠(

𝑀𝑀𝑀𝑀 0

) = −𝐷𝐷 ∙ 𝛾𝛾

2

∙ 𝐺𝐺

𝑀𝑀𝑀𝑀𝐺𝐺2

∙ 𝛿𝛿

2

(∆ −

𝛿𝛿3

)

(4.13) ここで,𝛾𝛾2𝐺𝐺𝑀𝑀𝑀𝑀𝐺𝐺2𝛿𝛿2�∆ −𝛿𝛿 3� = 𝑏𝑏と置くと,

𝑙𝑙𝑠𝑠(

𝑀𝑀𝑀𝑀 0

) = −𝑏𝑏𝐷𝐷

(4.14) となる.この𝑏𝑏を b 値(b value)と呼び,�∆ −𝛿𝛿 3�を拡散時間と呼ぶ. 信号強度𝑆𝑆は磁化𝑀𝑀に比例するため,次式(4.15)が成り立つ. 𝑆𝑆 𝑆𝑆0

= 𝑒𝑒𝑥𝑥𝑒𝑒 (−𝑏𝑏𝐷𝐷)

(4.15) 25

(34)

4.4.3 b 値(b-value)の定義と信号強度への影響 b 値は,拡散強調像における MPG 傾斜磁場の影響の大きさを表すパラメータである. 4.4.2 節で述べたように b 値は次式(4.16)で定義される.

𝑏𝑏 = 𝛾𝛾

2

𝐺𝐺

𝑀𝑀𝑀𝑀𝐺𝐺2

𝛿𝛿

2

�∆ −

𝛿𝛿3

(4.16) 式(4.16)より読み取れるように b 値は,MPG 傾斜磁場の強度𝐺𝐺𝑀𝑀𝑀𝑀𝐺𝐺[mT/m],印加時間𝛿𝛿[ms], 印加間隔∆[ms]を変更することにより調整することが可能である.この b 値を制御する ことで,計測対象とする移動するスピンの位相変化を検出可能な±πの範囲内に調整し, そのとき位相変化が 0 となっている計測対象,つまり“b 値”の値の計測対象の信号が 最も高くなる. 基本的には b 値が小さいと,移動速度の速い粒子から遅い粒子までの広い範囲を対象 とし,b 値が高いと移動速度の遅い粒子のみを対象とする.しかし,大きな b 値を使用 すると,移動速度の速い粒子と静止している状態に近い粒子との位相差が検出可能な位 相差2πを超えるようになり,位相変化が2πの範囲に収まらなかった粒子の信号変化は反 映されない可能性がある28).言い換えると,2πを大きく外れて位相変化した粒子から信 号が取得できないということである. b 値を大きくするためには,MPG 傾斜磁場の強度𝐺𝐺𝑀𝑀𝑀𝑀𝐺𝐺[mT/m],印加時間𝛿𝛿[ms],印加 間隔∆[ms]を大きくすればよいが,臨床 MRI 装置において𝐺𝐺𝑀𝑀𝑀𝑀𝐺𝐺は装置の傾斜磁場性能に よって決定されるので,現実的には𝛿𝛿もしくは∆を延長することで,高い b 値を達成する. 𝛿𝛿もしくは∆を延長することは,信号の読み取りまでの時間が延長することを意味し,TE の延長に低下につながり,SNR 低下や画像歪みの増悪,信号低下を招く.このようなこ とから,b 値の大きさと信号強度はトレードオフの関係にあるといえる26) 脳神経系では,b 値は 700~1000[sec/mm2]以上を用いることが多く,灌流(毛細血管の 中の血流)の影響がほぼ取り除かれる DWI となる. 図 4.4 b 値の変化によって観察される拡散の度合い 26

(35)

図 4.5 b 値による信号強度の違い

4.4.4 みかけの拡散係数(Apparent Diffusion Coefficient: ADC)とは

拡散現象は,定量的な拡散の大きさを表すために,拡散係数Dを用いる.拡散係数Dは 式(4.15)を用いて算出するが,MRI の計測しているボクセルサイズ(数mm)は,生体内の 動き(数十µm)と比較すると非常に大きいため,毛細血管流に代表される灌流(perfusion) や他の種々の勾配もボクセル全体を巨視的に見れば,様々な方向を向いており,ランダ ムな動きと同じことになる(図 4.6).つまり,MRI で計測される拡散では,“真の拡散” と濃度勾配は他の温度の高低,イオン勾配,圧力や灌流などの要因と区別することがで きない.そのため,MRI では同程度の水分子の拡散(ランダムな動きをする拡散)をひと まとめにして“拡散”として扱い,それら拡散の動きを IVIM(IntraVoxel Incoherent Motion) と呼ぶ.よって,生体内の拡散係数は,純粋な拡散のみを扱っているわけではないので, “みかけの”拡散係数(Apparent Diffusion Coefficient: ADC)と呼ばれる.ADC は,真の拡 散係数𝐷𝐷,灌流している水分子の割合を𝑓𝑓,b 値を b とすると,次式(4.17)で近似される.

𝐴𝐴𝐷𝐷𝐶𝐶 ≈ 𝐷𝐷 + �

𝑓𝑓𝑏𝑏

(4.17) したがって,b 値が小さい場合には ADC は大きな値をとる. ここで MPG 傾斜磁場を印加しない場合の画像の信号強度を𝑆𝑆(0),b value = b としたと きの MPG 傾斜磁場を印加した場合の画像の信号強度を𝑆𝑆(𝑏𝑏)とすると,式(4.15)より

𝑆𝑆(𝑏𝑏) = 𝑆𝑆(0) ∙ 𝑒𝑒𝑥𝑥𝑒𝑒 (−𝑏𝑏 ∙ 𝐴𝐴𝐷𝐷𝐶𝐶)

(4.18) が成り立つ.これを ADC について解法すると,

𝐴𝐴𝐷𝐷𝐶𝐶 = −

1𝑏𝑏

∙ 𝑙𝑙𝑠𝑠 �

𝑆𝑆(𝑏𝑏)𝑆𝑆(0)

(4.19) と表せる.よって,ADC を求めるには,少なくとも 2 種類の以上の b 値で撮像された画 像が必要となる.多数の b 値を用いて ADC を算出するときは,各 b 値における信号値 から回帰直線を求めることによって算出可能である. 臨床的に DWI を解釈する上では,ADC を画像化することで,T2 の影響を受けている のかの判別が容易となり,また,定量評価が可能になる利点をもつ26) 27

図 2.2  90°パルスと 180°パルス
図 3.1  スライス選択傾斜磁場
図 3.5  SE 法による磁化の挙動
図 3.6  GRE 法による磁化の挙動
+7

参照

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