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第 6 章 アルツハイマー病とレビー小体型認知症の病態と診断

6.4 レビー小体型認知症について

代謝や血流を評価することのできるSPECT やPETは,理論上,アルツハイマー病の病 理変化をより早期に捉えることができると考えられている.

SPECTにおける脳血流シンチグラフィでは,123I-IMPや99mTc-HMPAO,99mTc-ECDと いった放射性医薬品を用いることにより,脳血流の分布を定性的に評価できる.アルツ ハイマー病では,最初に後部帯状回から楔前部において脳血流の低下が生じ,また,病 初期からは大脳皮質の縁上回,角回などの頭頂連合野の血流低下がある.その後,側頭 頭頂連合野全体に脳血流低下領域は広がり,さらに進行すると,前頭葉も含めた連合皮 質の血流が広範に低下する.

PET検査では,FDGやPIBなどといった放射性医薬品が用いられる.FDG-PETでは,

グルコース代謝が活発なシナプス機能を鋭敏に反映することから,世界中でアルツハイ マー病の早期診断や鑑別診断に以前より広く用いられてきた.また,脳血流より直接的 に脳神経活動を反映していることや解像度が優れているという点で,SPECTよりもアル ツハイマー病の診断精度において優れていると考えられている.しかし,わが国では,

保険適応外であるため,日常臨床には応用しがたい56).PIB-PETとは,アミロイドPET のことを指し,アルツハイマー病の原因である Aβの脳内沈着を観察することが可能で ある.しかし,対象となる放射性医薬品は 11C で標識されており,その半減期は20 分 と短く,現状サイクロトロンを保有している施設のみでしか検査は出来ないなどの制約 がある.

6.4.2 レビー小体型認知症の臨床診断基準

① 必須症状:正常な社会・食後湯機能を妨げる進行性の認知機能低下が存在する

・記憶障害は病初期に目立たないことがあるが,通常進行とともに明らかになる

・注意や遂行機能および視空間機能障害が目立つことがある

② 中核症状:以下の3項目中,1項目存在すればpossible DLB,2項目以上存在すれ ばprobable DLB

(1) 注意や覚醒レベルの顕著な変動を伴う認知機能の変動 (2) 詳細で具体的な内容の幻視

(3) 特発性パーキンソン症候

③ 示唆症状:中核症状が1項目に加え,示唆症状が1項目以上存在すればprobable DLB,中核症状はないが,示唆症状が1項目以上存在すればpossible DLB (1) レム睡眠行動障害

(2) 顕著な抗精神病薬に対する過敏性

(3) SPECTまたはPETで大脳基底核におけるドパミントランスポーター取り込み

低下

④ 支持症状:特異的ではないが,通常存在する症状

・繰り返す転倒と失神

・一過性の意識障害

・重度の自律神経症状(起立性低血圧,尿失禁)

・幻視以外の感覚様式の幻覚

・系統的な妄想

・抑うつ状態

・CTやMRI検査における,内側頭葉領域の(相対的)保持

・SPECTやPET検査における,後頭葉領域の血流低下

・MIBG心筋シンチグラフィの取り込み低下

・脳波検査における,側頭葉の一過性鋭波を伴う顕著な徐波化

⑤ DLBの診断を支持しない特徴 (1) 脳血管性障害の存在

(2) 他の身体疾患・脳疾患の存在

(3) 重篤な認知症の時期に初めてパーキンソニズムが出現

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6.4.3 レビー小体型認知症の画像検査

CTやMRIにおいては,アルツハイマー病と同じく大脳の全般的な萎縮が見られるが,

海馬の萎縮が軽度である.また,内側側頭葉が比較的保たれていることが,レビー小体 型認知症の支持特徴とされる.しかし,萎縮の程度は症例によって差があり,アルツハ イマー病とのオーバーラップも少なくないので,萎縮の有無のみでレビー小体型認知症 とアルツハイマー病を鑑別するのは困難である57)

SPECT や PET においては,アルツハイマー病と異なり,レビー小体型認知症では病

初期から後頭葉の血流・代謝の低下がみられ,鑑別に有用である 58).また,123I-MIBG 心筋シンチグラフィでの取り込み低下がみられる.2013 年には SPECT 製薬である

123I-FP-CITの薬事承認がなされ,この製剤を用いた検査をすることで,パーキンソン病

やレビー小体型認知症の特徴である黒質線条体ドパミン作動性ニューロンの変性を鋭敏 に捉えることができる.また,ドパミントランスポーターPETによる黒質変性は,運動 障害を発症する以前に検出可能であるとされる.

6.4.4 レビー小体型認知症の診断の難しさ

レビー小体型認知症は,症状が多様で個別性が高いということもあり,診断の難しさ につながっている.例えば,初期にパーキンソニズムが出現し,中期から幻視や認知障 害が発現する場合と,それとは全く逆の場合もある.レビー小体型認知症の初期には認 知障害が目立たないことが多く,CTやMRIによる脳の器質的変化は著しくない.加え て,幻覚や妄想,抑うつ症状などがみられる場合が多いため,機能的な精神障害と誤認 される可能性がある.一方,認知障害が著しい場合,それだけに注目するとアルツハイ マー病と誤診してしまうこともある.また,初期症状がパーキンソニズムを発現したり,

自律神経症状が現れたりする場合もあるので,パーキンソン病や自律神経に伴う身体疾 患などと捉えられてしまうことも少なくない59).これらことからレビー小体型認知症は,

アルツハイマー病やうつ病,遅延性パラフレニア,統合失調症,パーキンソン病などと よく誤認されてしまう.さらに,6.4.1節でも述べたが,アルツハイマー病とレビー小体 型認知症が合併している場合もあるのでより鑑別が難しくなる.ただし,両疾患には様々 に異なる特徴もある(表6.2)41)58)

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表6.2 アルツハイマー病とレビー小体型認知症の特徴の違い アルツハイマー病 レビー小体型認知症

主な障害部位 ・頭頂葉

・側頭葉

・後頭葉

特徴的な症状

・記憶障害

・見当識障害

・物盗られ妄想

・徘徊

・幻視,妄想

・抑うつ状態

・パーキンソニズム

・認知の変動

・自律神経障害

・抗精神病薬に過敏性あり

経過

緩徐に進行する 緩徐に進行することが多 いが,まれに急速に認知機

能が低下することがある

男女比 女性に多い 男性に多い

CT

/MRI所見

・海馬の萎縮

・大脳の全般的な萎縮

・海馬の萎縮は 比較的軽度 PET

/SPECT 所見

・側頭葉・頭頂葉の 血流および代謝低下

・後頭葉の

血流および代謝の低下

病理所見 ・神経原性線維変化

・老人斑

・レビー小体

蓄積蛋白 Aβ

・タウ蛋白

・αシヌクレイン

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第 7 章 アルツハイマー病とレビー小体型認知症における 拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた

脳内ネットワークに関する研究