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第 4 章 拡散 MRI

4.5 拡散テンソル画像 (Diffusion Tensor Image: DTI) について

4.5.3 拡散テンソルトラクトグラフィ (Diffusion Tensor Tractography:

拡散テンソルトラクトグラフィとは,拡散強調像とテンソル解析による可能となった 神経線維追跡技術(fiber tracking)である.これはテンソル解析により算出した各ボクセ ルの固有値𝜆𝜆1,つまり拡散楕円体における長軸方向を追跡していくことで,疑似的な特 定の神経線維束を描出することが可能である.

トラクトグラフィの追跡方法には大きく分けて 2 つに分けられ,“決定(論)的 (deterministic) トラクトグラフィ”と“確率(論)的(probabilistic) トラクトグラフィ”

がある.決定論的トラクトグラフィは,最も初期に考案された線維追跡方法であり,当 初は確率論的トラクトグラフィが考案されるまで単に“Tractography”と呼ばれ,現在 でもそのような場合がある.つまり,“決定論的”や“確率論的”という言葉は両者の線 維追跡方法を区別するために与えられたものであるといえる26)

決定論的トラクトグラフィの線維追跡方法には大きく分けて2つに分けられ,一つは ストリームライン法で,もう一つは可変ステップ法と呼ばれている.前者は,ボクセル の境界面で追跡方向を変化させる方法で,次のボクセルになった時にそのボクセル内の 固有値𝜆𝜆1方向で追跡を行い,これを繰り返していく方法である(図4.10 (A)).一方で後者 は,一定のステップ幅で逐次拡散テンソルの補正をしながら追跡方向を変化させていく

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方法である31)(図4.10(B)).

図4.10 代表的な決定論的トラクトグラフィの線維追跡方法

これらトラクトグラフィの問題点としては,1 つのボクセル内に様々な方向を持つ神 経線維が混在する場合のトラクトグラフィの不正確性が挙げられる.MRIにおける空間 分解能には限界があり,パーシャルボリューム効果によって,線維交差部(crossing)や接

吻(kissing),扇状(fannig)などに走行をしている神経線維の含まれるボクセル内のテン

ソル近似は不適切である場合が生じる.つまり,本来であれば交差・分離しているはず の神経線維がテンソル解析をした結果,1 つの楕円体として表現されてしまい,どちら の特徴も消してしまうものとなる可能性が高くなる26)(図4.11).

この決定論的トラクトグラフィの問題点を回避するために提案されたのが,確率論的 トラクトグラフィである.決定論的トラクトグラフィでは走行方向を推定する点が同一 であれば決定される走行も同一であるため,開始点が同じ位置であれば常に同じ軌跡を 辿る.したがって,1 つの追跡開始点からの追跡処理は一度しか行われない.一方,確 率論的トラクトグラフィでは,1 つの追跡開始点から何度も追跡処理を繰り返す.その 際,同じ位置の追跡開始点であっても線維の追跡方向はあらかじめ決められた確率分布 に基づきランダムに決定されるため,追跡処理ごとに異なった走行方向が描かれる(図

4.12).線維の走行方向の推定を一意に決定しないのは,パラメータ推定に対する不確実

性を考慮するためである.結果として,1 つの追跡開始点から何本もの追跡軌跡の中に 抽出したい線維束に近いものが得られる可能性が高くなる.ただ,確率論的トラクトグ ラフィでは,計算コストが高く,非常に時間を要する処理ということが欠点である.

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図4.11 パーシャルボリューム効果の影響

図4.12 確率論的Tractographyによる追跡経路

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