第 6 章 アルツハイマー病とレビー小体型認知症の病態と診断
7.4 解析方法
7.4.1 connectivity matrix の取得方法
撮像により取得したraw data(DTIと3D-T1WI)からconnectivity matrixを作成した.
connectivity matrixとは,脳内における空間的に離れた二地点間での接続の強さ(グラフ理
論におけるグラフ)を行列の形として表現したものである.connectivity matrixの作成まで には,複数のプロセスがあり,そのプロセスの一連の流れをConnectome Mapper (“http://www.cmtk.org/mapper/“から入手可能)71)”と呼ばれるソフトウェア・パイプライ ンを使用して解析処理をした(図7.1).Connectome Mapperでの処理は,Preprocessing stage, Segmentation stage, Percellation stage, Registration stage, Diffusion and tractography stage,
Connectome stageの計6個のステージに分かれており,ステージによって使用されるソ
フトウェアが異なる.この各解析をつなぐパイプラインには,Nipypeというフリーソフ トウェアが用いられている.Nipypeは,プログラミング言語のPythonでニューロイメ ージ解析の環境を作成するコミュニティであるNiPyの下で,複数のソフトウェアのパ イプラインを簡単に作成することができる.Nipype は“http://nipy.sourceforge.ne t/nipype/”から入手可能である.
本研究で著者は,VMware Player上で,Ubuntu(version 12.04)と呼ばれるLinuxディス トリビューションを導入し,そこでConnetome Mapperを動作させた.VMware Player は
“https://my.vmware.com/jp/web/vmware/downloads”から入手可能であり,Ubuntu 12.04は
“http://old-releases.ubuntu.com /releases/12.04.4.1/”から入手可能である. VMware Player は仮想化環境を構築することができ,1台のPCで複数OSの実行を可能とする.
本研究において,各ステージで実際に行われた処理概要について下記する.
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図7.1 Connectome Mapperの起動画面
・Preprocessing stage
Preprocessing stageでは,FSLの一部機能であるMCFLIRTやEddy correctを使用 して,拡散テンソル画像の動きや渦電流による歪みの補正をする.MCFLIRTは動 きの補正であり,アフィン変換により拡散テンソル画像のb=0画像に他の拡散テン ソル画像を合わせこむ機能である.Eddy correctは渦電流による歪みの補正をする機 能である.
使用ソフトフェアはFSLというOxford大学のFMRIB Analysis Groupが開発した,
脳のFMRI・MRI・DTI画像を解析するためのツール群であり,
“http://www.fmrib.ox.ac.uk/fsl/”から入手可能である.
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・Segmentation stage
Segmentation stageでは,T1強調画像をもとに白質,灰白質(皮質や皮質下構造),
脳脊髄液に領域分ける処理(以降セグメント(segment)と呼ぶ)をする.その後,皮質 下構造はさらに約40もの領域にセグメントされ,自動的に解剖学的な名前や位置情 報が付与され,これはラベリングと呼ばれる.皮質下構造の自動セグメントおよび ラベリングは,脳構造位置の確率情報を含むアトラスに基づいて解析される.特に,
FreeSurferではこの処理を“Subcortical Segmentatnion”と呼ぶ.
使用ソフトウェアはFreeSurferでMassachusetts General HospitalのMartinos Center for Biomedical Imaging が 開 発 し , 脳 の 標 準 化 機 能 を 有 す る ツ ー ル 群 で
“http://surfer.nmr.mgh.harvard.edu/”から入手可能である.
・Percellation stage
Segmentation stageでは皮質下構造のセグメントがされていたが,Percellation stage では皮質表面の自動セグメントおよびラベリングが実行される.これらは,事前に 手動でラベリングされたトレーニングセット(モデル構築に使用されるデータ)から 推定された確率情報に基づいて,Desikan-Killiany atlasやDestrieux atlasなどといっ た皮質表面モデル上に神経解剖学的ラベルを割り当てられる.本研究では,
Desikan-Killiany atlasを用いた皮質表面のパーセレーション解析をし,最終的に,皮
質および皮質下構造は83の領域(node)に分割される.
使用ソフトウェアはSegmentation stageと同様,FreeSurferである.
・Registration stage
Registration stageでは,拡散テンソル画像のb=0画像にT1強調画像を線形変換し,
重ね合わせる.この時の変換パラメータをSegmentation stageおよびPercellation stage で作成された皮質および皮質下構造の分割された領域についても適応させ,T1強調 画像と同じように変形し,拡散テンソル画像のb=0画像に重ね合わせる.
使用ソフトウェアはPreprecessing stageと同様,FSLである.
・Diffusion and tractography stage
Diffusion and tractography stage では,全脳におけるトラクトグラフィをする.
Connectome Mapperでは決定論的トラクトグラフィと確率論的トラクトグラフィの
両方とも選択が可能であるが,現状では確率論的トラクトグラフィを組み込んだパ イプラインが実装されておらず,決定論的トラクトグラフィの一択のみであるため
71),本研究では Diffusion Toolkit を用いた決定論的トラクトグラフィによる全脳の fiber trackingをした.
使用ソフトウェアはDifusion Toolkitというフリーソフトウェアで,Massachusetts General HospitalのMartinos Center for Biomedical Imagingが開発した.また,TrackVis と呼ばれる拡散MRI解析ツールの一部のソフトウェアであり,主に拡散画像に対す
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るトラクトグラフィに用いられる.“http://trackvis.org/dtk/”から入手可能である.
・Connectome stage
Connectome stage では,皮質および皮質下構造のセグメント結果と全脳トラクト
グラフィの結果を組み合わせることで,connectivity matrixを算出する.皮質および 皮質下構造は 83 もの領域にセグメントされ,その内の特定 2 領域間において tractographyが何本描かれたかがconnectivity matrixに反映される.83領域あるため,
connectivity matrixは83×83の行列として表現される.また,connectivity matrixに 反映されるものはトラクトグラフィが何本描かれたかだけでなく,FAやADC,GFA 等の値の平均値をトラクトグラフィに沿って当てはめていくことで,それに応じた 重 み づ け さ れ た connectivity matrix を 得 る こ と が で き る . し か し, 現 段 階 の Connectome Mapperでは,拡散定量値によって重み付けしたconnectivity matrixを得 ることができず,領域間の線維の本数によって定義connectivity matrixを採用した.
なお,connectiviry matrixの出力ファイル形式はいくつか選択可能であるが,グラ
フ理論解析をするときには Matlab を用いるため,Matlab で読み込める形式である
“Mat”を選択する.
connectivity matrixとグラフの簡易的な見方について概略図を図7.2に示す.また,
Connectome Mapperによる解析のフローチャートを図7.3に示す.
図7.2 グラフとconnectivity matrixの関係
本研究ではweighted graphを採用しているため,connectivity matrixに振られる値 は2領域間でのトラクトの描かれた本数を反映する.
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図7.3 Connectome Mapperによる解析のフローチャート
まず,取得したT1強調像を基に脳を83の領域に分割化する.それを線形変換し,拡 散テンソル画像に合わせ込む.これがグラフ理論で言うノードに相当する.拡散テンソ ル画像に位置合わせされた83個のノードを用いて,全ての各ノード間でトラクトを描く.
そのときに引けた神経束の本数がエッジに相当する.この得られたノードとエッジの情 報よりConnectivity matrixが作成される.
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