パンデミックインフルエンザ
A(H1N1)
による急性脳症の臨床的検討
神奈川県立こども医療センター
神経内科
渡辺好宏,大塚佳満,三谷忠宏,安西里恵,露崎悠,辻 恵,
鮫島希代子,和田敬仁,井合瑞江,山下純正,小坂仁
集中治療科
林拓也
放射線科
藤田和俊,相田典子
2010年5月21日 第52回日本小児神経学会総会
症例~臨床経過~
年齢
(歳) 性別 既往歴 神経症状意識障害 けいれん 異常言動 その他
発熱
→
神経症状 合併症
1 4 女 熱性けいれん ○ ○ - - 1日 肺炎
2 13 男 熱性けいれん
喘息 ○ ○ ○ - 12時間 肺炎
3 12 男 てんかん ○ ○ ○ 無呼吸 18時間 無気肺
4 5 女 超低出生体重児
熱性けいれん ○ ○ - - 12時間 -
5 10 男 細菌性髄膜炎後
てんかん ○ ○ ○ - 16時間 -
6 6 男 熱せん妄
喘息 ○ - ○ - 12時間 喘息
7 3 女 超低出生体重児
熱性けいれん ○ ○ - - 10時間 -
8 7 男 喘息 ○ - - - 3日 喘息
9 8 男 軽度発達遅滞
喘息 ○ - - - 1日
肺炎
喘息
10 2 男 熱性けいれん
筋ジストロフィー疑い ○ ○ - - 1時間 -
11 1 男 低出生体重児
精神運動発達遅滞 ○ ○ - - 10時間 -
12 4 男 てんかん ○ ○ - - 20時間 -
症例~検査・画像所見~
AST LDH CK Na 血清/髄液NSE 血清/髄液IL-6 高振幅徐波脳波 脳腫脹頭CT 頭脳腫脹MRI 脳梁膨大部
信号異常
1 121 455 677 130 29.1/8.3 1290/17 ○ ○ ○ -
2 91 336 1079 130 16.9/0.8 349.8/852.7 ○ ○ ○ -
3 143 360 295 127 14.1/5.3 3.0/4.3 ○ - - ○
(+錐体路)
4 42 318 313 131 25.3/8.8 174.0/109.0 ○ - - -
5 59 280 360 132 15.8/13.3 5.6/3.1 ○ - - -
6 55 406 232 127 44.8/1.4 16.4/24.1 ○ - - ○
7 44 391 732 133 31.2/ND 112.7/ND ○ - - -
8 49 351 183 133 28.4/3.3 1.6/2.3 ○ - - -
9 29 294 270 128 26.3/12.0 5.3/2.2 ○ ○ - ○
10 207 883 10020 130 22.1/8.5 2.8/12.9 ○ ○ ○ -
11 49 382 853 138 9.0/2.0 10.0/11.4 ○ - - -
12 32 315 432 128 21.2/7.4 80.1/13.0 ○ - - -
症例~治療・転帰~
治療
mPSLパルス ガンマグロブリン 脳低体温療法 シクロスポリン エダラボン 転帰
1 ○ ○ ○ ○ ○ 後遺症なし
2 ○ ○ ○ ○ ○ 後遺症なし
3 ○ ○ ○ ○ ○ 後遺症なし
4 ○ ○ ○ ○ ○ 後遺症なし
5 ○ ○ ○ ○ ○ 後遺症なし
6 ○ ○ - - - 後遺症なし
7 ○ ○ - - ○ 後遺症なし
8 ○ ○ - - ○ 後遺症なし
9 ○ - - - ○ 後遺症なし
10 ○ ○ - - ○ 後遺症なし
11 ○ ○ - - ○ 後遺症なし
12 ○ - - - - 後遺症なし
症例~治療・転帰~
治療
mPSLパルス ガンマグロブリン 脳低体温療法 シクロスポリン エダラボン 転帰
1 ○ ○ ○ ○ ○ 後遺症なし
2 ○ ○ ○ ○ ○ 後遺症なし
3 ○ ○ ○ ○ ○ 後遺症なし
4 ○ ○ ○ ○ ○ 後遺症なし
5 ○ ○ ○ ○ ○ 後遺症なし
6 ○ ○ - - - 後遺症なし
7 ○ ○ - - ○ 後遺症なし
8 ○ ○ - - ○ 後遺症なし
9 ○ - - - ○ 後遺症なし
10 ○ ○ - - ○ 後遺症なし
11 ○ ○ - - ○ 後遺症なし
12 ○ - - - - 後遺症なし
入院時脳波検査
Fp1
Fp2
C3
C4
O1
O2
T3
T4
T3-C3
C3-Cz
Cz-C4
C4-T4
ECG
後頭部から一部前頭部にかけて
高振幅徐波
50μV
1sec
入院時脳波検査
Fp1
Fp2
C3
C4
O1
O2
T3
T4
T3-C3
C3-Cz
Cz-C4
C4-T4
ECG
後頭部~前頭部に
高振幅徐波
の混入あり
50μV
1sec
症例のまとめ
国立感染症研究所感染症情報センター
120例との比較
~背景・神経症状~
背景 自験例 国立感染症研究所
年齢(中央値) 1~13歳(6-7歳) 1~70歳(7歳)
性別 男9(75%),女3(25%) 男74(62%),女46(38%)
基礎疾患・既往歴あり 12/12(100%)
(熱性けいれん5,てんかん3,喘息3) 57/119(48%)(熱性けいれん24、喘息16)
神経症状
意識障害 12/12(100%) 120/120(100%)
けいれん 8/12 (67%) 66/120 (55%)
異常行動・言動 4/12 (33%) 81/120 (68%)
症例のまとめ
国立感染症研究所感染症情報センター
120例との比較
~背景・神経症状~
背景 自験例 国立感染症研究所
年齢(中央値)
1~13歳(6-7歳)
1~70歳(7歳)
性別 男9(75%),女3(25%) 男74(62%),女46(38%)
基礎疾患・既往歴
あり
12/12(100%)
(熱性けいれん5,てんかん3,喘息4)
57/119(48%)
(熱性けいれん24、喘息16)
神経症状
意識障害
12/12(100%)
120/120(100%)
けいれん 8/12 (67%) 66/120 (55%)
異常行動・言動 4/12 (33%) 81/120 (68%)
•
季節性インフルエンザによる脳症と比べ高い年齢層.
参考:季節性インフルエンザによる急性脳症 小林ら. 日小児会誌 2007; 111: 659-665
年間発生数(日本):2002-2003シーズン 35例,2003-2004シーズン 39例
年齢:0~1歳・・・25%,2~3歳・・・34%,4歳以上・・・41%
•
全例で何らかの基礎疾患・既往あり.
症例のまとめ
~検査所見~
検査所見 自験例 国立感染症研究所
脳波検査で所見あり 12/12(100%) 66/95 (69%)
頭部CT検査で所見あり 4/12 (33%) 64/105(61%)
頭部MRI検査で所見あり 6/12 (50%) 30/90 (33%)
症例のまとめ
~検査所見~
検査所見 自験例 国立感染症研究所
脳波検査
で所見あり
12/12(100%)
66/95 (69%)
頭部CT検査で所見あり 4/12 (33%) 64/105(61%)
頭部
MRI検査
で所見あり
6/12 (50%)
30/90 (33%)
脳波で高振幅徐波
熱せん妄・非定型熱性けいれんなど非脳症例では徐波なし.
頭部
CT・MRI検査
異常所見があったのは半数以下.
また,その所見は微細で判断に難渋する症例も多かった.
⇒脳波検査の重要性を再確認
症例のまとめ
~治療~
治療 自験例 国立感染症研究所
ステロイドパルス療法 12/12(100%) 97/120(81%)
γグロブリン療法 10/12(83%) 49/120(41%)
脳低体温療法 5/12 (42%) 12/120(10%)
シクロスポリン療法 5/12 (42%) 2/120 (2%)
症例のまとめ
~治療~
治療 自験例 国立感染症研究所
ステロイドパルス療法 12/12(100%) 97/120(81%)
γグロブリン療法 10/12(83%) 49/120(41%)
脳低体温療法
5/12 (42%)
12/120(10%)
シクロスポリン療法
5/12 (42%)
2/120 (2%)
脳低体温療法
大きな合併症なく安全に行えている.
⇒明確な導入基準はなく,症状の経過,呼吸管理の有無,脳波・画像所見
などから総合的に判断
参考:長野県立こども病院での例
GCS≦8点,MRI・CT所見,β2MG≧1×104
μ/gCreatinine,血液検査所見から総合的に判断
津田ら. 日小児会誌 2010; 114: 364
シクロスポリン療法
0.5mg/kg/day持続点滴静注
(血中濃度99-130ng/mL)
⇔ガイドライン:1-2mg/kg/day,目標血中濃度100ng/mL
(200ng/mLを超えない)
⇒合併症:高血圧
5例中5例→減量やニカルジピン投与で対応
症例のまとめ
~合併症・転帰~
合併症、転帰 自験例 国立感染症研究所
脳症以外の合併症あり 6/12(50%) 37/117(32%)
うち肺炎、気管支炎 6/6 (100%) 28/37 (76%)
転帰 治癒・軽快12/12(100%) 治癒・軽快96/118(83%)
後遺症あり14/118(12%)
死亡8/118 (7%)
入院日数(中央値) 8~29日(12-13日) 2~56日(9.5日)
症例のまとめ
~合併症・転帰~
合併症、転帰 自験例 国立感染症研究所
脳症以外の合併症あり 6/12(50%) 37/117(32%)
うち肺炎、気管支炎 6/6 (100%) 28/37 (76%)
転帰
治癒・軽快
12/12
(100%)
治癒・軽快
96/118
(83%)
後遺症あり
14/118
(12%)
死亡
8/118
(7%)
入院日数(中央値) 8~29日(12-13日) 2~56日(9.5日)
•
全例で後遺症なく退院.
•
しかし,症例
2では半年後の外来で短期の記憶障害が出現.
⇒高次脳機能障害?
⇒今後のフォローアップが必要
症例
2は意識障害の進行,高度脳腫脹,IL-6高値から重症例と考えられ,
脳低体温療法により予後が改善したともいえる.