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藤本祥平
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目 次
はじめに
オノマトペとは
日常生活でどのように使われているか(1)
―広告・商品名・見出し―
日常生活でどのように使われているか(2)
―スポーツ―
学校教育とオノマトペ
まとめ
感想
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はじめに
「この言葉、聞いたことはあるけど、どういう意味だろう…」 単語自体は聞いたことがあっても、その意味はよく分からない、という言葉はありま せんか? 私にとってそのような言葉のひとつが「オノマトペ」でした。これまで「オノマトペ」 という言葉は聞いたことがありました。しかし、その意味を正確に理解しておらず、な んとなく知っている、くらいの言葉でした。そういった、なんとなく知っている言葉を この機会に理解しよう!ということで、「オノマトペ」について調べてみることにしま した。 でも、なんで数ある言葉の中で「オノマトペ」をチョイスしたのか? 私は小学校の教員を目指しています。小学校では、数ある教科のなかでも「国語」の 授業時数が多く、とりわけ小学生にとって母語である日本語を正しく理解することはと ても重要です。日本語を理解することは国語の学習だけでなく、他の教科はもちろん、 大人になるうえで身に付けるべきスキルだと思います。正しい日本語を教えるためには、 まずは教員自身が日本語について理解しなくてはならない。そう感じたため、私はマナ ナビを通して日本語と関連した「オノマトペ」というテーマに設定しました。 オノマトペとは
オノマトペとは「自然界の音・声、物事の状態や動きなどを『音(おん)』で象徴的 に表した語」のことをいいます。 オノマトペは、「擬音語」「擬声語」「擬態語」の3 つに分類することができます。自 然界の物音を表したものを「擬音語」、動物の鳴き声や人間の声を表したものを「擬声 語」、事物の状態や動作、人間の心理状態を表したものを「擬態語」といいます。その うち、擬音語・擬声語は音声を模写した言葉であるため「擬音オノマトペ」、擬態語は 様態を模写した言葉であるため「擬態オノマトペ」ともよばれます。 また、オノマトペは言語であるということもいえます。なぜなら、オノマトペは言語 によって描写の仕方が異なるからです。その例として、動物の鳴き声が挙げられます。 犬の鳴き声は、日本語では「ワンワン」と表現するのに対して、英語では「bowwow(バ ウワウ)」と表現することからも理解できます。 日本語のオノマトペは約4500~5000 語あるといわれています。ちなみに他言語のオ ノマトペについて、英語は約 3000 語で、最もオノマトペが多いとされる韓国語は約 8000 語あるといわれています。 オノマトペの特徴としては、それを用いることで臨場感にあふれた表現ができ、描写 力が上がるとされています。4
日常生活でどのように使われているか(1)―広告・商品名―
オノマトペについてそれほど詳しく知らない人も、実は日常の生活でたくさんのオノ マトペを目にしています。その典型的な例として、広告や商品名、新聞などの記事の見 出しが挙げられます。 なぜ、広告や商品名、新聞などの記事の見出しではオノマトペがよく用いられるので しょうか? それは、オノマトペのもつ特徴が広告などに用いられる表現と相性が良いからです。 広告などでは、だらだらと長い文章にするよりも、できるだけ短くてキャッチ―な表現 が好まれます。さらに、そのような短い言葉のなかに、具体的な描写力があり、かつイ ンパクトのある表現が求められます。オノマトペは、そういった条件を満たす言葉だと いえます。先述したように、オノマトペは臨場感があることが特徴で、物事を強調し際 立たせることが可能です。この特徴が広告や商品名、記事の見出しにはもってこいの表 現技法になるわけです。 日常生活でどのように使われているか(2)―スポーツ―
もうひとつ、オノマトペを身近に感じられる場面を紹介します。それは、スポーツの 場面です。スポーツや体育の時間に使われるオノマトペのことを「スポーツオノマトペ」 といいます。スポーツオノマトペでは、身体の動かし方を分かりやすく表現でき、指導 者がテクニカルな部分を教えるときに有効だとされています。しかし、スポーツオノマ トペは指導者だけでなく、競技を行う選手にとっても有効な活用法があります。それは、 スポーツでオノマトペを用いることにより、選手自身の身体や運動機能の促進・制御に 働きかける作用があるということです。 卓球の福原愛選手が試合の時に「サー!」と発したり、陸上のハンマー投げで活躍し た室伏広治選手をはじめ、多くの投てき選手が投げる瞬間に叫んだりしていますよね。 一見何の意味もなさそうに思われますが、立派なオノマトペだということがわかります。 学校教育とオノマトペ
さて、私をはじめ、教員を目指す人に考えて欲しいことが、学校教育とオノマトペと の関連についてです。学校現場ではどのようにオノマトペを教え、活用しているのか紹 介します。 1 つ目は、オノマトペについて教える際の授業実践です。それが「オノマトペゲーム」 (出典:藤原隆博、「『オノマトペゲーム』で言葉の感覚を磨こう!」、『授業力&学級経 営力 11 月号』p104~105、明治図書出版)です。このゲームは小学校第 3 学年の国語5 の授業で、オノマトペについて学ぶ際に取り入れた実践として紹介されています。手順 は次の通りです。 ①写真を見て、聞こえてくるオノマトペを想像する。 ②想像したオノマトペをノートに書く。 ③「さんはい!」の合図で書いたオノマトペを読み、ペアと同じなら成功! 2 つ目は、体育の授業でオノマトペを用いた指導を行うことです。先程の「スポーツ オノマトペ」を取り入れたもので、子どもたちに身体の使い方を分かりやすく説明する ものです。例えば、跳び箱の指導では、「サー・タン・パッ・トン」といったオノマトペ を用いて説明することができます。跳び箱を跳ぶまでの助走は素早くスムーズな動きと なるように「サー」、踏み切りは強くタイミングよく蹴ることができるように「タン」、 手をつくときは素早く手を前に伸ばせるように「パッ」、そして着地は安定した上手な 着地となるように「トン」といったものです。跳び箱を跳ぶという一連の動きをオノマ トペを使いながら指導すると、子どもたちもオノマトペを声に出しながら取り組み、自 らの身体の使い方について言葉とともに理解することが可能になると思います。 3 つ目は、生活指導の面です。小学校では学習指導と並んで生活指導にも力を入れな ければいけないと思います。そのなかでも、子どもたちが椅子に座るときの姿勢は正し く指導したいものです。そのときに、「背筋を伸ばして、机と体の間に握りこぶし1 つ 分空けて…」と長々と説明することもできますが、別の方法として、オノマトペを用い て説明することができます。それが、「グー・ペタ・ピン・サッ」というオノマトペで す。これは、机と体の間に握りこぶし(=「グー」)1 個分空け、両足を床に「ペタ」っ とつけ、「ピン」と背筋を伸ばし、話を聞くときや文字を書くときは手を「サッ」と膝 や机に置くことでよい姿勢になるということです。高学年の子どもたちもそうですが、 姿勢指導をきちんと行う低学年の子どもたちにとっては、オノマトペを使うことによっ て、正しい姿勢を身に付けるときにそれぞれのポイントを押さえているので効果的だと 思います。
まとめ
オノマトペは、擬音語・擬声語・擬態語の総称であり、言語の一種として用いられる 言葉です。オノマトペを用いることで、簡潔かつ具体的で、物事の描写力が上がり、イ ンパクトのある表現が可能になります。この特徴を生かして、広告や商品名・新聞など の見出しにオノマトペがよく使われます。また、スポーツの場面でも「スポーツオノマ トペ」として用いられており、その効果は、指導者がテクニカルな部分を教えるときに 有効であるとともに、選手自らがオノマトペを発することにより、選手自身の運動パフ ォーマンスを促進するという効果があります。さらに、学校教育でも学習指導や生活指 導などあらゆる場面でオノマトペを用いた指導ができます。このように、オノマトペは6 私たちの身近なところにたくさん見つけることができます。