第
37
回長崎県糖尿病治療研究会
症例検討会
使用したスライドは近日中に研究会の
HPへ掲載いたします
症例1.
51歳、男性。2型糖尿病、高血圧
主訴:耳鳴り 現病歴:初診時、血圧 188/118mmHgであり本態性高血圧症として、Ca拮 抗薬を開始し耳鳴りは改善し血圧も正常化した。しかし初診時採血で随時血 糖値209mg/dl、HbA1c 7.9%と糖尿病が見つかりメトグルコ500mgを開始。 2年経過し現在、随時血糖値112mg/dl、HbA1c 6.1%と糖代謝は改善して いる。本人も理解力があり食事、運動療法に励み、85.5kgから78.5kgまで 減量に成功している。主治医としては比較的若年で肥満傾向があることより、 SGLT-2阻害薬の併用を考慮している。 現症:身長172.2cm、体重78.5kg( BMI 26.5 kg/m2 )(20歳代100kg) 検査所見:尿蛋白(-)、Hb 15.6g/dl、AST 30IU/l、ALT 28IU/l、γ-GTP9IU/l、TC 174mg/dl、LDL-C 80mg/dl、HDL-C 79mg/dl、TG 75mg/dl、 BUN 15mg/dl、Cr 0.71mg/dl、随時血糖値112mg/dl、HbA1c 6.1%
内服薬:メトグルコ 500mg 2x
【質問】 この症例のSGLT-2阻害薬の処方の適否、また処方するとすればど のSGLT-2阻害薬が良いのかを教えてください。
症例
1のまとめ
51歳、男性
2型糖尿病、高血圧
BMI 26.5と肥満(+)
食事・運動療法で
85.5kg→78.5kgへ減量に成功
メトグルコ
500mg 2xでHbA1c 6.1%
【質問】
SGLT-2阻害薬の処方の適否とSGLT-2阻害薬の
差別化について
SGLT2阻害剤で期待される臨床効果
概念図
Idris, I. et al: Diabetes. Obes. Metab. 11(2), 79-88, 2009
末梢組織への 糖取り込み低下 インスリン抵抗性 末梢組織への 糖取り込み増加 肝糖放出の増加 高血糖 膵インスリン分泌能 の低下 腎尿細管からの グルコース再吸収阻害 尿中グルコース排泄 体重減少 糖毒性の低減 カロリー喪失 空腹時血糖値の低下 耐糖能の改善 HbA1c低下 β細胞機能の 保護? SGLT2 阻害薬 尿路 感染 低血糖 脱水 サルコ ペニア ケトン体 増加
SGLT2阻害薬の適正使用に関する
Recommendation
1.SU 薬等インスリン分泌促進薬やインスリンと併用する場合に は、低血糖に十分留意し用量を減らす。 ・グリメピリド → 2mg/日以下に減らす ・グリベンクラミド→1.25mg/日以下に減らす ・グリクラジド → 40mg/日以下に減らす 2.高齢者への投与は、慎重に適応を考える。 3.脱水防止について患者へ説明。利尿薬との併用は推奨しない。 4.発熱・下痢・嘔吐、食思不振のとき(シックデイ)には休薬する。 5.皮疹・紅斑などが認められた場合には速やかに投与を中止。 6.尿路感染・性器感染については、適宜問診・検査を行って、発 見に努める。 7.原則として、他に2剤程度までの併用が当面推奨される。 (SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会、2014)診療と新薬. 2013; 50: 609. 多尿・頻尿 Mg2+ 電解質への影響 脱水症状 骨代謝への影響 尿路・性器感染症 内臓脂肪 脂肪肝 血糖 (心疾患イベント)? (未知の有害事象)? 低血糖 (主にSU薬、インスリンとの併用) PTH:副甲状腺ホルモン FFA:遊離脂肪酸 P PTH 尿量 尿中Ca2+排泄 尿糖排泄 FFA ケトン体 SGLT2阻害
SGLT2阻害薬投与により懸念される作用
ビグアナイド薬の血糖改善作用
(Goodarzi MO et al. Diabetes Obes Metab 7:654-665, 2005改変)
メトホルミンの効果
好ましい効果 好ましくない効果 血糖コントロール改善 胃腸障害 低血糖をきたしにくい (下痢、腹部不快感、食欲不振) インスリン分泌低下 乳酸アシドーシス 中性脂肪低下 苦味・刺激などの不快感 総コレステロール低下 血清ビタミンB12減少 LDLコレステロール低下 体重減少 PCOSにおける排卵促進(Noto H et al. PLoS One. 2012;7(3):e33411)
メトホルミンによる癌リスク抑制効果
ーメタ解析ー
癌の種類 使用論文数 オッズ比(95%信頼区間) 全癌(癌の発症) 10 0.67 (0.53-0.85) 全癌(癌による死亡) 6 0.66 (0.49-0.88) 大腸癌 6 0.68 (0.53-0.88) 肝臓癌 4 0.20 (0.07-0.59) 肺癌 3 0.67 (0.45-0.99) 前立腺癌 7 0.89 (0.66-1.19) 乳癌 7 0.98 (0.80-1.20) 膵臓癌 6 0.48 (0.20-1.17) 胃癌 3 0.72 (0.26-1.98) 膀胱癌 3 0.94 (0.64-1.38)症例
1の治療薬選択に関わる要素
1. 現在の血糖コントロール状況
2. 年齢
3. 併存疾患
4. 薬物の作用特性と副作用
5. 合併症抑制のエビデンス
6. 長期間使用する場合のメリットとデメリット
症例
2.61歳、男性。2型糖尿病、脂質異常症、高血圧
現病歴:平成2年に糖尿病と診断されしばらく治療していたがその後放置。 平成20年に特定検診で受診した際、口渇あり、HbA1c 10.2%、尿ケトン体 (+)でアマリール 1mg 1x、ベイスン0.9mg 3xを開始し、HbA1cは6.0%ま で改善したが、平成22年3月に8.2%に上昇したためアマリールを3mgまで 増量。しかし、HbA1cは7%後半までしか改善せず平成22年11月にはメトグ ルコを追加したがHbA1cは7.5~8.2%。外来で再三禁酒を指導しているが やめられないでいる。現在、アマリール2mg 2x、メトグルコ 1500mg 3x、オ ングリザ 5mg 1xにてHbA1c 8.6%と血糖コントロール不良であり、体重も5 年間で5kg増加した。 現症:身長 160.8 cm、体重 70.5 kg(BMI 27.3 kg/m2)、糖尿病網膜症(-)検査所見:尿蛋白(-)、AST 28IU/l、ALT 24IU/l、γ-GTP 25IU/l、Cr
0.38mg/dl、eGFR 73.1ml/min/1.73m2、TG 275mg/dl、随時血糖
275mg/dl、HbA1c 8.6%、空腹時CPR 2.5ng/ml、GAD65抗体(-)
【質問】 飲酒と運動不足で治療意欲に欠ける患者ですが、今後の治療方針 について教えてください。
症例
2のまとめ
61歳、男性
2型糖尿病、脂質異常症、高血圧
糖尿病の罹病期間
24年、飲酒(+)
BMI 27.3と肥満(+)
内因性インスリン分泌(+)
アマリール
2mg、メトグルコ 1500mg、オングリザ 5mg
で
HbA1c 8.6%
【質問】
今後の治療はどうしたらよいか
症例
2への対応策
1. 内服コンプライアンスの確認をおこなう(残薬の
チェック)。
2. 減酒、禁酒
3. 食事療法の再指導(食べる順番など)。
4. メトグルコを増量(2250mgまで可能)
5. SGLT2阻害薬の併用
6. 糖尿病教育入院
過度のアルコール摂取者では 乳酸アシドーシスのリスクあり症例
3.53歳、男性。緩徐進行1型糖尿病、高血圧、逆流
性食道炎、脂質異常症
現病歴:23歳頃、健診で高血糖を指摘され近医で境界型と診断されるも放 置。30歳前半に糖尿病が気になり近医を受診し内服薬を処方されたが、飲 酒にて血糖コントロール不良(HbA1c 8~9%)のためこれまで4回の糖尿病 教育入院歴がある。最近はアマリール0.5mg 1x、アクトス 15mgでHbA1c 6%程度であったが、2014年3月を最後にドロップアウト。2014年8月に当院 受診。 現症:身長170.5 cm、体重 86.8kg(BMI 29.9 kg/m2 )、血圧 158/99mmHg検査所見:尿蛋白(-)、AST 51IU/l、ALT 50IU/l、γ-GTP 395IU/l、BUN
10 mg/dl、Cr 0.68mg/dl、TG 423mg/dl、随時血糖値 280 mg/dl、
HbA1c 6.5%、空腹時CPR 3.0ng/ml、尿中CPR 62.3μg/day、GAD65抗
体 8.8U/ml
【質問】 GAD65抗体弱陽性の糖尿病患者です。今後の治療方針について
症例
3のまとめ
53歳、男性
緩徐進行
1型糖尿病、高血圧、逆流性食道炎、
脂質異常症
BMI 29.9と肥満(+)
23歳時に境界型と診断(罹病歴20年)
GAD65抗体 8.8U/mlと弱陽性
食事療法のみで
HbA1c 6.5%
空腹時
CPR 3.0ng/mlと内因性インスリン分泌良好
【質問】
今後の治療はどうしたらよいか
緩徐進行1型糖尿病の診断基準(2012年)
(田中昌一郎ほか.糖尿病 56(8):590~597、2013) 【必須項目】 1. 経過のどこかの時点でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)抗体 もしくは膵島細胞抗体(ICA)が陽性であるa)。 2. 糖尿病の発症(もしくは診断)時,ケトーシスもしくはケトアシ ドーシスはなく,ただちには高血糖是正のためインスリン療法 が必要とならないb)。 判定:上記1、2を満たす場合、「緩徐進行1型糖尿病」と診断する。 a) Insulinoma-associated antigen-2(IA-2)抗体,インスリン自己抗体( IAA)もしくは亜鉛輸送担体8(ZnT8)抗体に関するエビデンスは不十 分であるため現段階では診断基準に含まない。b) ソフトドリンクケトーシス(ケトアシドーシス)で発症した場合はこの限り ではない。
GAD抗体陽性糖尿病患者における
膵
β細胞機能の進行性低下
(Yang L et al. World J Gastroenterol 11:2900-2905, 2005)
2型糖尿病
GAD抗体陽性 糖尿病
GAD抗体陽性糖尿病の膵β細胞機能低下は進
行性に低下し、2型糖尿病よりも早い
P = 0.003 (Log-rank test) 0 20 40 60 80 100 0 2 4 6 8 10 イ ン スリ ン 未治療率 (%) 追跡期間(年) 高GAD65抗体価(≧10U/ml) 低GAD65抗体価(<10U/ml)
高GAD抗体価は、早期インスリン治療開始
の指標になる
(Zhao Y et al. JCEM 99(5):E876-880, 2014)
GAD抗体陽性糖尿病の進行抑制
~DPP-4阻害薬の効果~
GAD抗体陽性糖尿病 30例(罹病期間< 3yr、FCP≧200pM or 2hCP≧400pM)を 1Mのインスリン治療後、Sitagliptin 100mg 追加群、非追加群にランダム化 (NCT01159847)(Johansen OE et al. Diabetes Care 37:e11–e12, 2014) Met内服中のGAD抗体陽性糖尿病 38例 をLinagliptin 5mg追加群、Glimepiride 1-4mg追加群にランダム化 (NCT00622284) ⊿ CP (p mol/ L) n 21 17 14 14 9 9 ベースラインからのFCPの変化
糖尿病を発症したNODマウスへの
DPP-IV阻害薬+PPI投与による寛解誘導
(Suarez-Pinzon WL et al. Diabetologia 52:1680–1682, 2009) Control DPP-4i PPI DPP-4i+PPI