北欧の持ち上げない移動・移乗技術
∼介助者の腰痛予防と利用者の自立支援∼
日時:
平成 28 年 2 月 20 日(土)
一回目(
10:00∼12:30)
二回目(14:00∼16:30)
場所: 千葉県医師会地域医療総合支援センター
主催:
公益社団法人千葉県医師会
(司会進行)地域医療総合支援センター/川西恭子
○ 開会
○ 講義
1 北欧の持ち上げない移動・移乗技術∼介助者の腰痛予防と利用者の自立支援∼
2 日本における腰痛予防対策の現状
移動・移乗技術研究会
代表/中山幸代 先生
(元
田園調布学園大学教授)
○ 実技
1 ベッド上で上方へ移動する
2 ベッド上で側方へ移動する
3 仰臥位から側臥位になる
4 ベッドアップし側臥位(仰臥位)から端座位にする
5 仰臥位から端座位になる
6 褥瘡予防の小枕の移動
7 褥瘡のある人のベッド上での移動方法
8 ベッドから車いすへの移乗
○ まとめ
○ 閉会
講師略歴:移動・移乗技術研究会 代表 中山幸代 先生
看護師として臨床経験
10 年を経て、看護専門学校の教員、介護福祉士養成教育に従事。
2000 年に北欧の持ち上げない移動・移乗技術(ペヤ・ハルヴォール・ルンデシステム)
に出会い、
2 回デンマークで技術研修を受けた後、「移動・移乗技術研究会」を立ち上げ、
研究会代表を務める。その研究と普及を目指して、講師としての活動中。
北欧の持ち上げない移動・ 移乗技術
∼
介助者の腰痛予防と利用者の自立支援∼ 移動・ 移乗技術研究会代表・ 元田園調布学園大学教授 中山幸代 主 催: 千葉県医師会 日 時: 平成28年2月20日( 土) 午前の部 10: 00∼12: 30 午後の部 14: 00∼16: 30Ⅰ 講
義
自己紹介 1. 北欧の持ち上げない移動・ 移乗技術 (30分) ∼介助者の腰痛予防と利用者の自立支援∼ ( パワーポイント 資料参照) ( 1) 研修の目的 ( 2) ルンデの技術の特長 ト ランスファーとリフティ ングの違い 「 利用者と介助者双方に配慮した方法」 を選択すること ( 3) 持ち上げる動作の限界 ( 4) 移動・ 移乗技術がもたらす効果 ①「 移動・ 移乗技術」 は利用者の活動を活性化する ② 介助者の腰部の負担が軽減する ③ 移動・ 移乗技術は、 腰痛等を原因とする長期休職を減少させる ( 5) ルンデの技術の3 つの基本原理 ① 人間の自然な身体の動きを活用する ② 移乗の際に発生する荷重と摩擦の把握とその軽減 ③ ボードの原理 ( 6) 利用者のレベルに応じた介助方法を検討する レベル1 レベル2 レベル3 ( 7) ルンデの技術を生んだ思想 ①利用者の自然な動きを活用し、 介助者の身体への負担を軽減し、 利用者の残存能力を活性化する ②持ち上げ技術のように、 利用者を受身にしない ( 8) 技術にこだわるのではなく 、 問題解決の能力を養うこと ( 9) 技術の普及と定着に向けての課題 2. 日本における腰痛予防対策の現状 ( レジュメ p. 11∼p. 12参照) ( 1) 19年ぶりに改訂された「 職場における腰痛予防対策指針」 のポイント ( 2) 第12次労働災害防止計画( 平成25年度∼29年度) について ∼社会福祉施設などの「 腰痛予防対策」 を重点目標とする∼ ( 3) 移動・ 移乗技術に伴う腰痛発症の危険性 2001年コペンハーゲン労働環境研究所の実証的研究結果に学ぶⅡ 実
技
[実技の項目と時間配分] 1. ベッド上で上方へ移動する ( 1) 自然な動き: 肩歩き 他 ( 2) 滑り布( スライディ ングシート 、 ビニール袋) と滑り止めを使用する 1) 膝が立ち腰が上がる場合 2) 膝が立てられず腰も上げられない場合 30分( デモンスト レーショ ンと実技) 1人介助、 2人介助 2. ベッド上で側方へ移動する ・ 体幹の半分に滑り布とバスタオルを敷き、 枕とバスタオル で手前に引く 。 もしく は、 滑り布を反対側の体幹半分と 枕の下に敷き、 押す。 3. 仰臥位から側臥位になる ( 1) 自然な動き 15 分 ( 2) 滑り布( スライディ ングシート 、 ビニール袋) を用いる方法 ( デモンスト レーショ ン ( 3) 背部から腰に両手を挿入しそのまま上肢を広げて側臥位に と実技) する方法 休憩 10分 4. ベッドをアップし、 側臥位( 仰臥位) から端座位にする ・ ギャッヂベッド使用時の背抜き 5. 仰臥位から端座位 20 分( デモンスト レーショ ンと実技) ・ 介助者がベッドに腰掛けて行う方法 6. 褥瘡予防の小枕の移動 7. 褥瘡のある人のベッド上での移動方法 8. ベッドから車いすへの移乗 ( 1) スライディ ングボードを用いて座ったままの移乗 1) 前介助 2) 横介助 3) 横介助( 前に椅子を置く 方法) 40 分( デモンスト レーショ ンと実技) ( 2) 標準型車いす( 介助者が座ったまま介助する方法) 日本で開発された技術 (3) 車いすに深く 座る方法 Ⅲ まとめ (5分)1 . ベッド上で上方へ移動する
・ 自然な動き 摩擦を少なく して上に上がる 肩歩き: 交互に重心を動かすと動きやすく なる ・ 滑るものと滑り止めを使用する 足の裏に滑り止めを入れ、枕を肩まで差し込み、枕の下に滑るものを敷いて移動する。腰が挙がらな い人は、 臀部の下にも滑るものを敷く 。 (臀部の下のすべり布は、 2枚使用し臀部の両側から挿入する方法もある。 ) 介護者が枕を引いたり、横シーツを用いてベッドの上方から引いたり)、介護を受ける人の膝のあたりを 押すと移動しやすく なる。 ワンポイント ・ 押す方向: 介護者が介護を受ける人の足を押して手伝う場合は、 押す方向が大切。 ・ 押し始めるタイミ ングと速度: 介護を受ける人が動き始めてから。 早過ぎないこと。2 . ベッド上で側方へ移動する
・ 体幹の半分に滑り布とバスタオルを敷き、 枕とバスタオルで手前に引く 。 もしく は、 滑り布を反対 側の体幹半分と枕の下に敷き、 押す。3 . 仰臥位から側臥位になる
・ 自然な動き 滑り止め 滑るもの・ 滑り布を用いる方法 ①膝を立て、 身体を向こう側に向けてもらい、 枕の下と臀部に身体半分程度にビニー ルシート を差し込む。 ②ビニールシート に圧力がかかるように、 利用者にこちら側に向きを変えてもらい ③骨盤と肩を押して、 身体を回転させる。 このとき一度に回転させるのではなく 、 細かく 行う。 → → ( 腰 肩 腰) この方法をとれば、 従来の方法とは異なり、 いったんベッドの反対側に身体を引く 必 要がなく 、 側臥位になってから身体を容易にベッドの中央に位置させることができる。 ・ 背部から腰に両手を挿入しそのまま上肢を広げて側臥位にする方法
4 . ベッドをギャジ゙ アップし、 仰臥位から端座位にする
・ ギャッジアップ座位をとるときは、必ず背抜きをしましょう!! ギャッジアップ時身体のずり落ちと, 臀部 や背部, 胸・ 腹部の圧迫を防ぐことが重要になります。 身 体のずれ落ちを防ぐために,ギャッジアップをするときは,まず足を上げ,次に頭を上げ,これを交互に 繰り返します。座位にした後,背部から臀部のずれを是正し,胸部から腹部への圧迫を取り除く ため,い ったん上半身を起こす、つまり背抜きをすることが重要になります。これを行わないと、どんな感覚にな るかを体験してみましょう。 “ ” 背部に するーと を入れると、圧迫感はどのように変化するでしょうか。これも体験してみましょう。 ・ 端座位になる( 自然な動き) 2つの主要なパターンがある2) 仰臥位から側臥位になり、 下肢をベッドの下に下ろし体幹を起こす。 ・ ベッドをギャッジアップし、 仰臥位から端座位にする 1) 半座位から片端の坐骨結節の座面で回転し、 下肢をベッドの下に下ろす。 この時バ ランスを取るために両足は少し開く 。 2) 仰臥位から側臥位になり、 下肢をベッドの下に下ろし体幹を起こす。
5 . 仰臥位から端座位への介助( 介助者がベッドに腰掛けて行う方法)
①介助者はベッドの足元に腰掛ける ②ビニール袋を利用者の臀部と介助者の膝の上に敷く ③介助者の膝の上に利用者の両下肢を置く ④介助者は利用者の手を親指握りで持つ( 並んで座ったときに、 介助者から遠い位 置になる手を握る。 利用者の反対側の手は介助者の前腕の上に置く ) ⑤1, 2, 3と声をかけ、 利用者の下肢を膝から滑り落とすと同時に、 利用者の上体 を引き起こす ⑥ベッドを少し起こしておく と、より容易に起き上がることができる6 . 褥瘡予防の小枕の移動
( 1) 褥瘡予防の小枕の移動とは ペヤ・ ハルヴァール・ ルンデは、 定期的に最低2時間毎の体位変換を行う以外に、 小枕をマット レスの下に 差し入れることによって、 身体に荷重のかかる場所を移動させて褥瘡を予防することを「 褥瘡予防の小枕の移 動」 と名づけている。 ( 図1参照) 小枕はマット レスの下から挿入し、 身体の6箇所を順次、 移動させる。 訪室した者は、 移動順のルールに従 い必ず次の部位に小枕を移動させる。 図1 小枕の移動 * 素材は滑る素材を使用すると出し入れが容易になり、 鮮やかな色は挿入部位が一目でわかる。 * 100円ショ ップのナップザックの利用が有効 ・ 小枕は時計回りに 移動させる。 ・ 利用者の6つの身 体部分( 右足→右 腰→右肩→左肩→ 左腰→左足) に移動 させる ・ 特別な指示がない 限り、 部屋に入った 誰もが順番に従って 移動させる ・ 誰でもがわかるよう にこの図をベッド柵 に下げておく とよい小枕の挿入図 ( 2) 小枕の移動の実施とその効果 この方法を看護や介護現場で実施したところ、 褥瘡予防や褥瘡の治癒によい結果を得た。 高齢者福祉施設の研修で褥瘡予防の小枕の移動について検討し、 現場で実施したところ、 褥瘡が治癒したと その有効性が報告された。 実施した事例はターミ ナル段階の方で、 数年来仙骨部に褥瘡の発症と治癒を繰り返 していた方だった。通常の2時間ごとの体位変換に加え、小枕を約30分間隔で移動させたところ、利用者は亡 く なられたとき、 褥瘡は治癒し、 皮膚は、 きれいなピンク色だったとのことだった。 利用者の重度化が進み、 褥瘡発生のリスクが高い利用者も増加していることから、 介護・ 介護現場において 「 褥瘡予防の小枕の移動」 を導入する価値は高いと思われる。 ( 3) 「 2時間毎の体位変換をせずに、 小枕の移動さえ行えばよい」 は本当なのか? 最近、移動・ 移乗技術の研修で上記のような質問が寄せられるようになった。 そこで、 改めてルンデ氏の理 論について説明を加えたい。 ① ② ③ ④ 体位変換の目的・ 効果として、 体圧の分散、 内臓機能を正常に保つ、 循環障害を予防する、 沈下性 ⑤ ⑥ 肺炎の予防、 関節の拘縮や変形を予防する、 同一体位による身体的・ 精神的な苦痛を緩和する等があげら れる。 健康な人間は睡眠中、一晩に20∼30回は寝返りを打ち、無意識に体圧を分散させている。このため、ルンデ 氏が指摘するように「 患者が自力で姿勢を変えられなかったり、 神経麻痺のために圧迫を感知しないときは、 職員がこの作業を引き受けなければならない」 ことになる。 最近、一部の論文で「 患者に30分毎の小枕の移動( スモールチェンジ法) を行った結果、開始から 2か月間 褥瘡の発生は見られなかった」 等を根拠に、「( 2 時間毎の体位変換と比較し) スモールチェンジ法で十分な効 果が得られるのであれば、 患者にとっての負担軽減はもとより、 看護者・ 介護者における身体的疲労軽減や、 時間の短縮、 経費削減( 費用対効果) が期待できる」 といった主張が見られる。 しかし、ルンデ氏は小枕の移動を行っても、「 注意!患者も同様に最低2時間に1度寝返りをして、肺の分泌 物を排出しやすく する」 とし、沈下性肺炎予防の重要性を主張している。2014年3月2日に来日したルンデ氏 から、 2時間毎の体位変換を抜きにして小枕の移動を行ってはならないとのコメント があった。 体位変換の目的は、 単に体圧分散や褥瘡予防のみではない。 ルンデ氏が指摘するように、 最低2時間に1度 の体位変換を基本にした上で、「 小枕の移動」 を取り入れる必要性を強調したい。 ( 4) 移動・ 移乗技術研究会編集「 今日から実践! 持ち上げない移動・ 移乗技術 」 の“ ” 一部修正について 移動・ 移乗技術研究会編集「 今日から実践! 持“ ち上げない移動・ 移乗技術 」 の「 小枕の移動」 に関”
する部分は、コラムの取り扱いのため、「 注意!患者も同様に定期的に最低2時間に1度寝返りをして、肺の 分泌物を排泄しやすく する」 という記述を入れていない。 今後、 改定するときには、 必ずこの内容を加筆す ることにしている。 一部修正を加えたい。
7 . 褥瘡のある人のベッド上の移動方法
褥瘡がある利用者をベッド上で体位変換や移動の介助を行う場合には、 摩擦を与えたり引っ張ったりすると 褥瘡の創面が擦れて新生組織がはがれたり、 皮膚を傷つけることになる。 このため、 シーツと利用者の皮膚の 摩擦を可能な限り減少させる必要がある。 <仙骨部に褥瘡がある利用者を、 ベッドの上方に移動させる方法> ( 1) 側臥位で上方に移動させる ・ 利用者を側臥位にする。 ・ 利用者の身体の下にスライディ ングシート を敷き、 その上に横シーツを敷く ・ 介助者は、 横シーツを引いて、 利用者をベッドの上方に移動させる。 ( 2) 仰臥位で上方に移動させる( 利用者の腰が上がる場合) ・ 利用者の枕と肩の下にスライディ ングシート を敷く ・ 両足底の下に滑り止めを敷く ・ 仙骨部の褥瘡部が擦れないように、 介助者の両腕を臀部に差し込む ・ 利用者と協力をしながら、 静かに上方へ移動させる8 . ベッドから車いすへの移乗
・ スライディ ングボードを用いて座ったままの移乗 前介助の方法横介助の方法 ・ 介助者は利用者の横に座り、利用者の反対側の肩や腰に手を回して、 前傾姿勢をとり、 呼吸を合わ せて少しずつ横移動を繰り返しながら移乗する。 ・ 利用者が前傾姿勢をとるのに不安がある場合には、 椅子を前に置き、 それにつかまりながら移動す る。 ・ ベッドから車いすへの移乗 ( 標準型車いすの場合) 介助者は座ったまま、 利用者を介助者の膝の上に乗せ、 横に移乗する方法 ( 日本で生まれたテクニックでスーパート ランスといった表現もある) ① スライディ ングボード( ビニールなどの滑る物) を利用者の臀部の横に置く 。 ② 介助者は、 利用者と並んで座る。 ③ 利用者の大腿を介助者の大腿に乗せる。 ④ 利用者は上体を倒し、 両手を介護者の大腿部に置く 。 ⑤ 介助者は、 片方の腕を利用者の背中に回し、 両手で利用者のベルト を握る。 ⑥ 介助者はスライディ ングボード( ビニールなどの滑る物) の上を滑りながら、 利 用者を車椅子に移乗させる。
* インターネット で「 スーパート ランス」 で検索すると、技術の動画やその方法についての疑問や批判 などもチェックすることができる。 ・ いすからの立ち上がり・ 深く 腰かける 椅子から立ち上がったり、 腰かける時の自然な動きは、 上半身は前傾し、 足は椅子の近く に引き寄せられている。 臀部を持ちあげずに、 椅子に深く すわる時は、 もも 人は臀部と大腿を片側ずつずらしながら移動している( 腿歩き)。
Ⅲ まとめ
持ち上げない移乗・ 移乗技術が現場に広く 普及・ 定着するには、組織内で長期的なプロジェクト を組み、各 職場で絶えず技術の事例検討を行うような取り組みが不可欠となる。 職員一人ひとりの意識変革が求められて いることを理解し、 利用者の自立を促し、 介護職員の腰痛予防を目指した職場ぐるみの取り組みを期待した い。配布資料 ① パワーポイント 資料p. 1∼p. 5 ② セミ ナーレジュメ p.1∼p.12 ③「 職場における腰痛予防対策指針の改訂<介護・ 看護作業による腰痛を予防しましょう>」 厚生労働省・ 都道府県労働局・ 労働基準監督署 ④「 第12次労働災害防止計画の概要」 厚生労働省 参考文献 ① 移動・ 移乗技術研究会編集『 今日から実践! 持ち上げない移動・ 移乗技術』 中央法規 2012 定価1,890 円( 税込) ② ペヤ・ ハルヴォール・ ルンデ著 中山幸代/幅田智也監訳 和子・ マイヤー訳『 移動・ 移乗技術の知識と 技術 援助者の腰痛予防 と患者の活動性の向上を目指して』 中央法規出版、 2005 ③ ペヤ・ ハルヴォール・ ルンデ監修「 看護・ 介護職のための 持“ ち上げない 移動・ 移乗技術」 DVD版、” VHS版、 中央法規出版 2006 ④ 移動・ 移乗技術研究会ホームページ http://www.ijyoken.com/ ⑤ 中山幸代監修『 北欧の持ち上げない!安全・ 快適ト ランスファー』 DVD教材 日総研 2015 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 参考資料 「 職場における腰痛予防対策指針」 の改定について 厚生労働省は、 業務上疾病全体に占める腰痛の割合が 6 割と 高い水準で推移し 、 特に福祉・ 医療等における介護・ 看護作業の場では、 労働災害と し ての腰痛が多発し ていること から、 19 年ぶり に腰痛予防のガイド ラインを見直し 、 2013( 平成 25) 年 6 月に新し い「 職場における腰痛 予防対策指針」 を公表し た。 改訂内容のポイント は次の通り である。 1 . 「 腰痛予防対策指針」 ( 旧指針) では、 介護作業の適用範囲は「 重症心身障害児施設等に おける介護作業」 と さ れていたが、 改定指針では、 介護作業の範囲を「 福祉・ 医療等におけ る介護・ 看護作業」 全般へと 適用が拡大さ れた。 2 . 介護・ 看護作業による腰痛を予防するために、 福祉用具を積極的に使用し ていく こと によ って、 作業姿勢や動作についての見直し を行う べきと し ている。 抱き上げに関し ては、 「 労働者の腰部に著し く 負担が掛かること から、 リ フト などを積極 的に使用し 、 原則と し て人力による抱き上げは行わせないこと 」 と 明記し ている。 3 . 「 福祉用具の使用が困難で人力で抱き上げざるを得ない場合には、 適切な姿勢においてで きう る限り 身長差が少ない 2 人以上にて作業すること 」 と し ている。 また、 各作業においての腰痛発生の「 リ スクアセスメ ント 」 を行い、 予防対策の推進を図る ために「 労働安全衛生マネジメ ント システム」 を導入するよう に求めている。 4 . 重量物の取り 扱い作業について機械を使わず人力によってのみ作業をする場合の重量は、 男性( 満 18 歳以上) は体重のおおむね 40%、 女性( 満 18 歳以上) は、 男性が取り 扱う 重量 の 60%程度と すると し ている。 また、 女性労働基準規則では、 満 18 歳以上の女性で、 断続作業 30kg、 継続作業 20kg 以上 の重量物をと り 扱う こと が禁止さ れている。 この内容は、 旧指針と 同様で変更は加えられ ていない。 5. 「 腰痛予防対策指針」 ( 改訂指針) は健康管理として、 ①健康診断( 医師による腰痛の健康診断を実施 し、その後は6か月以内に1回実施する)、 腰痛予防体操② ( スト レッチを中心とした腰痛予防体操の実施)、
③腰痛による休職者が職場に復帰する際の注意事項( 産業医などの意見を聴き、必要な措置をとる) を定 めている。 *・ 厚生労働省が公表した文献 「 介護業務で働く 人のための腰痛予防のポイント とエクササイズ」( インターネット でダウンロード可能) ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 第12次労働災害防止計画( 平成25年度∼29年度) について ∼社会福祉施設などの「 腰痛予防対策」 を重点目標とする∼ 労働災害は長期的には減少しているが、 第三次産業では増加( 特に社会福祉施設は過去10年で2倍以上) している。このため厚生労働省は、社会福祉施設の腰痛を含む死傷者数を 10%以上減少( 平成29年/平成24 年比) させる重点目標を打ち出した。 対策として次の3つがあげられている。 1. 介護施設、 小売業、 陸上貨物運送事業を重点に腰痛予防教育を強化 2. 介護機器の導入、 腰痛健康診断の普及・ 徹底、 腰痛を起こさない移動・ 移乗介助法の指導などにより腰 痛予防手法を普及 3. 重量物取扱い業務の腰痛予防に資する規制の導入を検討 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 移動・ 移乗技術に伴う腰痛発症の危険性 2001年コペンハーゲンの労働環境研究所は、従来の持ち上げ技術を利用する方法と、近代的な移動・移乗技術( Per Hal vor Lundシステム) を利用する方法を比較した結果、介助者の身体的な負荷に明白な差が出ることを実証的に 証明した。米国労働環境研究所( N10SH) は、腰痛予防のために腰椎の椎間板圧迫力を3400N以下にするように勧め ている。この数値を大きく 越えた作業は、持ち上げ技術の ベッドの端に座っている患者を立ち上がらせる作業時① ( 圧迫力約4100N) と、 患者を車椅子の奥に深く 座らせる時( 圧迫力約4500N) であった。② 患者をベッドの上方に移動させるのは、 持ち上げる動作を伴わないのであまり負担がかからないかと思われ る。 だが、 この経過の圧迫値は3000Nで、 患者を臥位から座位に、 座位から臥位に変換するのと同レベルの圧 迫値であった。患者をベッド上で向きを換える動作の圧迫値はごく 低かった( 約2000N)。調査は、複数の職員 が同じ作業をしても、 負担度に個人差があることを示した。 中山幸代「 移動・移乗技術に伴う腰痛発症の危険性の検証及び変革への課題」『 第一福祉大学紀要3号』 67-79、 2006 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ NHKスペシャル「 腰痛・ 治療革命∼見えてきた痛みのメカニズム∼」
2016.2.20
北欧の持ち上げない移動・移乗技術
研修 参加者アンケート
―介助者の腰痛予防と利用者の自立支援活動性を高め、する― 【1】あなたは、「持ち上げない移動・移乗技術」の研修を受けたり、仕事に活用したりしていますか。 研修を受け、 よく活用している 研修を受け、 時々活用している 研修は受けたが、 あまり活用していない 研修は受けたが、 活用していない 研修を受けたことが なかった 1 2 3 4 5 【2】本日の研修内容は家族介護者への訪問レッスンに有効だと思いますか。 有効だと思う ふつう 無効だと思う 1 2 3 4 5 【3】本日の研修会の内容に対する満足度はいかがですか。 満足 ふつう 不満 1 2 3 4 5 【4】あなたの職種と所属について教えてください。 職種: 1 訪問介護員 2 介護福祉士 3 介護支援専門員 4 その他 所属: 1 訪問介護 2 通所介護 3 特別養護老人ホーム 4その他老人福祉施設 5 グループホーム 6居宅介護支援事業所 7 その他( ) 【5】あなたは、現在(職場で)『移動・移乗(トランスファー)』のために「どのような福祉用具」を使用していますか。 以下の選択肢から使用しているもの、すべてに○を付けてください。 1 ビニール袋 2 スライディングシート 3 スライディングボード 4 紐 5 バスタオル 6 横シーツ 7 標準型車椅子 8 モジュラー型車椅子 9 起立リフト 10 床走行式リフト 11 その他( ) 【6】解決を必要とする「移動・移乗技術」の事例がありましたら、どんな状況場面かも含めてお聞かせく ださい。 【7】今回の研修の感想・学び、講師へのメッセージなど自由にお聞かせください。千葉県医師会地域医療総合支援センター、移動・移乗技術研究会 2016/3/1 北欧の持ち上げない移動・移乗技術~介助者の腰痛予防と利用者の自立支援~ 研修(2016/2/20) 参加者アンケート結果(まとめ) 【1】あなたは、「持ち上げない移動・移乗技術」の研修を受けたり、仕事に活用したりしていますか。(人数) 研修を受け、 よく活用している 研修を受け、 時々活用している 研修は受けたが、 あまり活用していない 研修は受けたが、 活用していない 研修を受けたことがな かった 1 14%(5) 14%(5) 2 11%(4) 3 (0) 4 61%(22) 5 【2】本日の研修内容は家族介護者への訪問レッスンに有効だと思いますか。 有効だと思う ふつう 無効だと思う 1 92%(35) 5%(2) 2 (0) 3 (0) 4 3%(1) 5 【3】本日の研修会の内容に対する満足度はいかがですか。 満足 ふつう 不満 1 84%(32) 11%(4) 2 5%(2) 3 (0) 4 (0) 5 【4】あなたの職種と所属について教えてください。 職種: 1 訪問介護員 (16) 2 介護福祉士 (21) 3 介護支援専門員 (3) 4 その他 (1) 所属: 1 訪問介護 (18) 2 通所介護 (0) 3 特別養護老人ホーム (1) 4その他老人福祉施設 (1) 5 グループホーム (2) 6居宅介護支援事業所 (0) 7 その他 (1) 【5】あなたは、現在(職場で)『移動・移乗(トランスファー)』のために「どのような福祉用具」を使用していますか。 1 ビニール袋 (21) 2 スライディングシート (5) 3 スライディングボード (0) 4 紐 (3) 5 バスタオル (12) 6 横シーツ(3) 7 標準型車椅子 (12) 8 モジュラー型車椅子 (4) 9 起立リフト (1) 10 床走行式リフト (0) 11 その他 (1) 【6】解決を必要とする「移動・移乗技術」の事例がありましたら、どんな状況場面かも含めてお聞かせください。 ・立位不可、腕の力もない、股関節が拘縮ぎみの方がベットから落ちている時の上げ方 ・腰が曲がり膝も伸びない方のトイレ介助、リハビリパンツ、ズボンの上げ下ろし(特に上げ) ・ベッドで上方の移動で腰を痛めた。膝を立てることも腰をあげることもできないためビニールを 参加者は家族介護者への訪問レッスン講師登録者 50名(午前の部24名、午後の部26名) 回答者は38 名、午後の部に土橋副会長の参加があった。 ①「研修を受けたことがなかった」が6 割を占め、「研修を受けてよく活用・時々活用」が 3 割弱であった。 ②研修内容は家族介護者の訪問レッスンに97%強の人が有効だと思うと回答していた。 ③研修の内容に対してほぼ全員が満足と答えていた ④現在(職場で)、移動・移乗で、多くの人がビニール袋やバスタオル、標準型の車いすを使用して いた。スライディングボードは使わず、モジュール型の車いすの利用は少ない傾向がみられた。 ⑤今回の研修に対する肯定的な意見や満足度の高い感想が多かった。こうした技術研修はとても助 かります・仕事に活かせるなどの具体的な学びや楽しさ、講師への感謝を述べていた。一方で時 間が足りない、現場の福祉用具の不足など介護の厳しさ、研修内容が多くて無理がある、もっと 時間を増やしてほしいと要望がみられていた。
【7】今回の研修の感想・学び、講師へのメッセージなど自由にお聞かせください。 ・中山先生の説明は楽しく充実した時間でした。ベッド上から端坐位、車椅子への移乗、ベッド上 でタオルを使用した移動など、どれも実践できそうです。 ・スライディングシートの活用で負担軽減されたら介護者側も楽にできることがわかった。 ・ビニールやバスタオル、紐などを使って介助者の腰の負担を軽くできることを学び大いに役立っ た。体格の大きい方の介護にとても役立つ。100 円の袋のナップザックも良かった。 ・ボードの使用がよく理解できた。・小枕の利用、早速使ってみます。 ・聞いてみるだけでなくて技術研修はとても助かります、本当に良かった。 ・サービス中の利用者にすぐ当てはまることも多い。 ・もう少し時間が欲しかった。 ・内容を多いため、全部を自分のものにするのは無理がある。 ・在宅の場合、ボードやシーツがない、車椅子も肘掛けが上がらないもの、 スペースも充分でない 等、今日の研修のように用具が十分なことがほとんどない。 ・実際に体験することができてこんなにも利用者・介助者相方が楽な方法があるのかと驚きました。 困っている方に伝えたい。今後の仕事に生かしたい。 ・忘れないように日々、今日のテクニックを使用したいが、その利用者がそばにいないのが残念。 ・年1 回以上学びたい講習、目からウロコでとても良かったです。 ・介護は考えて援助方法をスタッフと共有して関わること、1 人 1 人にベストな方法を考え続ける ことが大事と思いました。 今後に向けてまとめ(アンケート結果・相談員の意見等) ①.アンケート結果等から「持ち上げない移動・移乗技術」研修の満足度も高く、身近な物を使 った実技研修は家族介護者への訪問レッスンに有効であることがうかがえた。 ②研修の時間がもう少しほしい、実技内容が多いため全部をするのに無理がある、研修内容がよ いので時間を増やしてほしいなど、2時間半の講義・実技研修の課題がみられた。 ③次年度は研修の趣旨の一つである、なるべく県内の各地域で指導的なキーマンとなる人を対象 に研修を実施し、今後各地域で広げられるような運営をめざす。 ●既に研修参加した人等を対象に関連団体持ち込み企画のフォローアップ研修を共催で行う。 ●次年度の県医師会主催の研修企画として1日研修と2日間研修を実施する。 1日研修では医療介護の在宅や教育現場の指導的な人を対象に研修を実施する。 2日間研修では困難な事例等を持ちより、前日に学んだ基礎理論と技術を活かしてより良い方法 を検討し、事例を各グループで検討(グループワーク・実技)することでテクニックを創造し、その 結果を発表し合い、互いの学びを深める。事例の検討のなかにモデルルームのリフトを使ったり、 トイレでの移乗などの研修もいれていく。