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転移性肝癌に対する抗癌剤併用による局所温熱化学療法

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原 著 〔東女医大誌 第57巻 第11号頁1259∼1269昭和62年11月〕

転移性肝癌に対する抗癌剤併用による局所温熱化学療法

東京女子医科大学 消化器外科学教室(主任 タチ バナ マサ シ

立 花 正 史

羽生富士夫教授) (受付 昭和62年6月11日)

1、ocal Hyperthermochemotherapy Combined with a皿Anticancer

Agent for Metastatic Hepatic Cancer Masashi TACHIBANA

Department of Gastroenterology(Director:Prof. Fujio HANYU)

Tokyo Women’s Medical College

Atotal of 31910cal hyperthermic treatments of the liver were performed by exposure to 13. 56MHz radiofrequency waves in 22 patients with unresectable metastatic hepatic cancer. At the same time, an anticancer agent was administered by intravenous or one−shot intraarterial injection. The cumulative survival rate in the hyperthermochemotherapy group(first group)was colnpared with that in the chemotherapy group(second group)and untreated group(third group)

which were used as controls. Accordingly, it was the highest with statistical signi且cance in the

first group and effectiveness of hyperthermochemotherapy was demonstrated.

When the survival rate was compared for each degree of hepatic metastasis, it was signi五cantly higher in the丘rst group than in the second and third groups in H3 patients. When patients from the hyperthermochemotherapy group were classi丘ed into the intravenous MMC group(Iv group)and one−shot intraarterial MMC group(Ia group), according to the criteria for evaluating the direct effect of chemotherapy for solid cancers of the Ministry of Health and

Welfare, partial response, minρr response, no change and progressive disease were noted in.0,0,

9and 2 patients from the Iv group, respectively(response rate:0%), while these were noted in

5,4,1and l of ll patients from the Ia group(response rate:45%).

Hyperthermochemotherapy elicited only sid¢effects, such as burns and slight to moderate leucocytopenia, thrombocytopenia and hair loss due to anticancer treatment.

緒 言 消化管の癌腫に対する外科的治療は,近年積極 的な:拡大手術がさかんに施行されるようになり, その根治性も次第に向上してきている1)2).しか し,消化管の癌腫が肝転移を有する場合には,原 発巣は切除しえても,肝転移に対する適切な治療 法がなく,特に肝転移の発生率が高い大腸癌にお いては,大きな問題となっている3)4). 現在では切除可能な肝転移癌に対しては,肝切 除が行なわれる趨勢にあるが,切除可能な症例は. 少なく,多くの症例は制癌剤の投与を始めとする 補助的療法に頼らざるを得ない.すなわち,肝動 脈内5),門脈内,.静脈内への制癌剤の投与,肝動脈 塞栓術,肝動脈結紮術6),各種免疫療法などが行な: われ,ある程度の相乗効果を得ているが,いずれ も根治を期待できるような段階には至っていな い.一方,最近切除不能な癌腫に対する温熱療法 が注目を浴びるようにな:ってきた.温熱療法の起 源は古く,1866年Buschは皮膚の肉腫の症例が丹 毒に罹患し高熱を発した結果,その肉腫が治癒し 一1259

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たという報告をしている7).それ以来,悪性腫瘍が 熱に弱いという報告が,Coley8)やWestermark9) によってなされてきたが,その臨床応用は補助療 法に比べ遅れをとってきたといえる.しかし,近 年,再び温熱療法が再認識されるようになり,基 礎的研究の進歩と共に臨床応用が盛んに行なわれ るようになってきた.Parksらは1980年102症例 に対し温熱療法を施行し,その結果,50%の腫瘍 縮小率を示した症例が,全体の30%を占めたこと を報告している.この成績は温熱療法単独のもの ぽかりでなく,化学療法あるいは放射線療法と組 み合わせたものも含まれている. 温熱療法における加温方法としては,全身加温 と局所加温とがある.全身加温は熱気浴,温パラ フィン,表面加温法,体外循環等があるが,Parks らの方法に準じた体外循環装置を用いた血液加温 による全身温熱療法が他に比し優れている.局所 加温は局所血液潅流,局所温水潅流,マイクロ波, 超音波,短波(RF波)などの方法があるが,肝臓 などの深部臓器の腫瘍に対してはRF波がもっと も優れている10). 肝転移癌に対する集学的治療法を考える場合, 従来の抗癌剤の静注あるいは動注単独投与では, ある程度の治療効果しか期待できず,また温熱療 法単独でも抗腫瘍効果に乏しいことが知られてい る.そこで著者は肝臓のみを選択的に加温でぎ, 全身温熱療法のような副作用もなく,簡単な装置 で外来通院で治療できる局所温熱療法に着眼し, それに抗癌剤を併用した.今日まで転移性肝癌に 対する局所温熱療法の治療成績を述べた報告は殆 どなされていない.著者は転移性肝癌22例に対し 11例は静注にて抗癌剤を投与し,11例は動注one shotにて抗癌剤を投与した.一方対照群として大 腸癌の肝転移症例62例を選出し,それを化学療法 単独群36例と無治療群26例とに分け,累積生存率 で温熱化学療法との比較検討を行なう一方,抗癌 剤投与の方法により温熱療法を2つのグループに 分け,第1グループはマイトマイシンC(以下

MMC)を静注した群と,第2グループはMMCを

動注one shotした群とに分け,累積生存率と臨床 効果につき比較検討を行なった. 対象と方法 1.研究対象 対象症例は1984年3月より1986年5月まで東京 女子医大消化器病センターにおいて,抗癌剤併用 による局所温熱療法を施行した転移性肝癌22例で ある(1群).そのうち両懸少数散在症例(以下H2 症例)は13例,両葉多数散在症例(以下H3症例) は9例である. 原発臓器別にみると大腸癌16例,胃癌3例,膵 癌1例,胆嚢癌1例,原発不明1例である. 対照群は1968年10月より1985年12月までに経験 した大腸癌の肝転移症例251例中,H2, H3症例で

MMCを静注あるいは動注で総量201ng以上投与

した化学療法単独群36例(2群)と,化学療法を 全く施行しな:かった無治療群26例(3群)とした. 2群のH、症例は17例,H3症例は19例で,3群の H2症例は7例, H3症例は19例である. 2.研究方法 局所温熱療法は13.56MHzの周波数で作用す るradiofrequency wave Therma Tech 2000

(International Institute for Medical Science社, 米国),あるいはNovatherm(インターノノミ社, 日本)を用いて,肝臓の上下,左右にpaddleを1

対ないし2対おき,約150∼250wのRF波をかけ

た,肝臓内の腫瘍温度はechoガイド下で経皮的

に温度センサーを肝臓内の腫瘍に挿入し,

42∼43℃に加温されることを確認した.なお皮膚 表面温の上昇を防ぐために電極の皮膚接触面には 水道水を流す装置をつけ,表面皮膚温を36℃以下 に保った.これを週1回90分間,外来通院で施行 し,通常10回以上を目的とした.22症例に対し, 最低7回,最高50回,平均で1症例につき19回を 施行した. 抗癌剤併用の方法としては,2グループに分け

た.第1グループは加温時にMMCを6mg点滴静

注するグループで,22例中11例に施行し,MMCの 総量として6∼84mgを投与した(表1).第2グ

ループは加温時にMMCを1mg/kgあるいはア

ドリアマイシン(以下ADM)2mg/kgを腫瘍栄養 血管(固有または左右肝動脈)にone shotにてユ 回投与を行った.この方法を11例に延べ15回施行

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表1 局所温熱化学療法静注群施行例 症 例 原発部位 肝転移 且T.回数1 MMC総量 抗腫瘍効果*2 予 後 1 63歳 ♀ 大 腸 H2 8回 6mg

NC

死亡3ヵ月 2 67歳 ♂ 大 腸 H2 7 24

NC

死亡7ヵ月 3 64歳 ♀ 大 腸 H2 12 48

NC

死亡15ヵ月 4 72歳 ♂ 胃 H3 18 78

NC

死亡6ヵ月 5 52歳 ♂ 大 腸 H2 10 60

NC

死亡7ヵ月 6 53歳 ♂ 大 腸 H2 10 36

NC

死亡9ヵ月 7 44歳 ♀ 大 腸 H3 15 84 PD 死亡5ヵ月 8 54歳 ♂ 膵 臓 H2 10 60 PD 死亡4ヵ月 9 75歳 ♀ 大 腸 H3 20 6

NC

死亡10ヵ月 10 60歳 ♂ 胃 H2 13 6

NC

死亡4ヵ月 11 40歳 ♀ 不 明 H3 22 12

NC

生存6ヵ月 *1H.T,lHyperthermo therapy *2固形がん化学療法直接効果判定基準 CR:Complete response, PR:Partial response, MR:Minor response, NC:No change, PD l Progressive disease 表2 局所温熱化学療法動注群施行例 症例 原発部位 肝転移 H.T.回数 併用抗癌剤 縮小率 抗腫瘍効果 予 後 1 55 ♀ 大 腸 H2 38回 MMC50mg, MMC46mg 57% PR 死亡14ヵ月 2 53 ♂ 大 腸 H3 50 MMC52mg, ADM100mg

NC

死亡14ヵ月 3 79 ♂ 胆のう H2 14

MMC50mg

47

MR

死亡5ヵ月 4 47 ♂ 大 腸 H2 17 ADM120mg 46

MR

死亡7ヵ月 5 58 ♂ 胃 H3 26 MMC52mg, MMC80mg 62 PR 死亡6ヵ月 6 37 ♂ 大 腸 H3 13 MMC72mg, ADM140mg PD 死亡4ヵ月 7 54 ♂ 大 腸 H2 25 MMC60mg 80 PR 死亡8ヵ月 8 50 ♂ 大 腸 H2 29 ADM200mg 31

MR

死亡10ヵ月 9 66 ♀ 大 腸 H3 21 MMC40mg 56 PR 死亡5ヵ月 10 68 ♀ 大 腸 H2 19 MMC44mg 43

MR

生存6ヵ月 11 36 ♀ 大 腸 H3 12 MMC5⑪mg 51 PR 生存3ヵ月 CR:Complete response, PR:Partial response, MR:Minor response, NC:No change,

PD:Progressive disease した(表2).この方法では体内埋め込み式カテー テルを事前に腫瘍栄養血管に挿入しておき,いつ でも抗癌剤を投与可能な状態にセットしておい た11)12).この時大量の抗癌剤使用のための副作用 軽減の意味で,阿岸ら13)の提唱する活性炭血液潅 流を同時に施行し,抗癌剤の除去を可能にした. 3.検索方法 温熱化学療法群22例(1群)と化学療法単独群 36例(2群)と無治療群26例(3群)の3下間の 累積生存率を算出し,Kaplan Meier法により有 意差を検討した.また肝.転移の程度によりH2症 例とH3症例とに分け,各々につき1群2三間,1 群3群間の累積生存率を算出し,Kaplan Meier 法とGeneralized Wilcoxon法で有意差を検討し た, 一方温熱化学療法群では,前述のごとく抗癌剤 の投与方法による2つのグループ,すな:わち,静 注群(Iv群)と動注群(Ia群)に分け,各々につ いて累積生存率,腫瘍縮小率,cartino embryo antigen(以下CEA)の変動を検討した.生存率に ついてはKaplan Meier法にて有意差を検討し, 縮小率効果判定についてはCT scanを用い,温熱 化学療法施行前後における同じ位置のCT scan を比較し,縮小率を算出し,厚生省の固形がん化 学療法直接効果判定基準14)にて両三を比較した. またCEA値については温熱化学療法施行前,施 行中,施行1ヵ月後における値をビーズ法にて測 定し動向をみた. 一126!一

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結 果 1.温熱化学療法群(1群),化学療法単独群(2 群),無治療群(3群),間における比較 1)累積生存率 平均生存期間では1群7.2カ,月,2群6.0ヵ月, 3群3.8ヵ月であり,50%生存期間では各々6.7カ 月,4.6ヵ月,2.6ヵ月.6ヵ月生存率では各々62%, 37%,35%.1年生存率では各々17%,8%,0% であった(表3).1群と2群の生存率をみると, Kaplan Meier法では1群の:方が統計的にも有意 差を認め,危険率は46日までが1%,47日∼92日 0.1%,93日∼138日 5%であった.1群と3群 の生存率をみても1群の方に有意差を認め,危険 率は34日までが5%,35日∼136日 0。1%,137日 ∼170日 5%,273日∼306日目5%であった(図 1).・ すなわち,化学療法単独群よりも温熱化学療法 併用群の方が延命効果が明らかに認められた. 2)肝転移の程度よりみた累積生存率 H2症例でみると,平均生存期間は1群7,4カ日月, 2群7.8ヵ月,3群5.4ヵ月であり,50%生存期間で は各々7.3カ,月,7.1ヵ月,6.7ヵ月.6カ,月生存率 では各々68%,54%,58%.1年生存率では各々 17%,18%,0%であった(表4).すなわち,H, 症例に関しては半年までは各群ともあまり生存率 においては変わらないが,1年たつと治療群と無 治療群の間に明らかな差が出てきた.しかし1群

と2群,1群と3群ともにKaplan Meier法でぱ

有意差を認めなかった(図2). H3症例でみると,平均生存期間は1群6.9ヵ月, 2群4.4ヵ月,3群3.1ヵ月であり,50%生存期間 では各々6.4ヵ月,3.0ヵ月,2.2ヵ月.6ヵ月生存 率では各々53%,21%,27%.1年生存率では各々 18%,0%,0%であった(表5).1群と2群の 生存率をみるとKaplan Meier法では1群の方が 生存率(%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ㌦ 、 翼一 型 !コ 冥残 ヒーu 翼「 一一 翼畳 。1群 ・2群 ・3群 表3 1群,2群,3群における累積生存率 温熱化学療法群 化学療法単独群 無 治 療 群 平均生存期間 7.2ヵ月 6,Gヵ月 3.8ヵ月 50%生存期間 6.7ヵ月 4,6ヵ月 2,6ヵ月 6ヵ月生存率 62% 37% 35% 1年生存率 17% 8% 0% 表4 1群,2群,3群のH2症例における累積生存率 温熱化学療法群 化学療法単独群 無 治 療 群 平均生存期間 7.4ヵ月 7.8ヵ月 5,4ヵ月 50%生存期間 7.3ヵ月 7.1ヵ月 6.7ヵ月 6ヵ月生存率 68% 54% 58% 1年生存率 17% 18% 0% 200 400 600 日 図1 温熱化学療法群(1群),化学療法単独群(2群), 無治療群(3群)における生存曲線 Kaplan Meier法による1群2無間の検定結果 期間(日) 46 1%の危険率で有意 920.1%の危険率で有意 138 5%の危険率で有意 Kaplan Meier法による1群3群問の検定結果 期間(日) 34 136 170 272 306 生存率(%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 5%の危険率で有意 0.1%の危険率で有意 5%の危険率で有意 5%の危険率で有意 。1群 ・2群 ・3群 200 400 600 日 図2 H2症例における1群,2群,3群の生存曲線 1群2群間,1群3群間共に有意差を認めず. 一1262一

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31日∼150日まで0.1%の危険率をもって統計的に も有意差を認めた.!群と3群の生存率をみると, 1群の方に有意差を認め,危険率は34日までが 5%,35日∼136日 0.1%,137日∼170日 5% であった(図3). またGeneralized Wilcoxon検定でも各々1% の危険率で1群の方に有意差を認めた.すなわち, 温熱化学療法群と化学療法単独群を比べた場合, H2症例では生存率にほとんど差がなかったこと に比し,H3症例のように癌腫の総体積が大きいも のに対して温熱化学療法は効果があったことを示 している. 表5 1群,2群,3群のH3症例における累積生存率 温熱化学療法群 化学療法単独群 無 治 療 群 平均生存期間 6.9ヵ月 4.4ヵ月 3.1ヵ月 50%生存期間 6.4ヵ月 3.0ヵ月 2.2ヵ月 6ヵ月生存率 53% 21% 27% 1年生存率 18% 0% 0% 生存率(%) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 2.温熱化学療法群における静注群(Iv)と動注 群(la)との比較 1)累積生存率(表6,図4) 平均生存期間は1v群では7.0ヵ月,1a群では 8.2ヵ月。50%生存期間では各々6.8ヵ月と7.1カ 月,6ヵ月生存率では55%と70%,1年生存率では 11%と23%で動注群の方が良好の成績を得たが, Kaplan Meier法では両群に有意差はなかった. 2)抗腫瘍効果 表6 温熱化学療法Iv群, Ia群における累積生存率 静 注 群 動 注 群 平均生存期間 7.0ヵ月 8,2ヵ月 50%生存期間 6.8ヵ月 7.1ヵ月 6ヵ月生存率 55% 70% 1年生存率 11% 23% 生存率(%) 甑 x x「 「 Xl 艮 隻 。】群 ・2群 ・3群 翼 x『“一「冨 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 ・Iv群 。工a群 100 200 300 400 500 日 図4 温熱化学療法静注群(lv群)動注群(Ia群)の 生存曲線 1v群,1a群に有意差を認めず。 100 200 300 400 日 図3 H、症例における1群,2群,3群の生存曲線 Kaplall Meier法による1群2群間の検定結果 期間(日) 30 150 0.1%の危険率で有意 Kaplan Meier法による1群3群口の検定結果 期間(日) 34 5%の危険率で有意 1360.1%の危険率で有意 170 5%の危険率で有意 Generalized Wilcoxon検定 1群2群間,1群3渓間共に1%の危険率で有意差 を認める. 表7 温熱化学療法静注群でのCEA値の動向 H.T施行前 且T施行中 H.T施行後 1 1.6 36.4 82.1 上昇 2 102.4 144.0 180.8 上昇 3 17.6 76.8 224.0 上昇 4 1.4 1.6 5.8 上昇 5 4.5 32.4 70.4 上昇 6 73.6 11.8 37.8 低下 7 1971.2 3969.0 1904.0 低下 8 284.0 621.6 712.8 上昇 9 108.0 143.0 237,0 311.3 上昇 10 8.4 5.4 19.5 低下 11 288.0 563.2 835.0 上昇 (単位 ng/mD 1263一

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Iv群11例ではCT scan上,腫瘍の縮小を30% 以上認めた症例はなかった.CEA値との関係では

11例中CEA値の低下は3例,上昇8例であった

(表7).右上腹部緊満感,食欲低下,落痛等の自 覚症状の改善は半数以上に認めた. Ia群11例ではCT scan上,腫瘍の縮小を認め たものは9例であり,そのうち5例は縮小率が 51%∼80%で,4例が31%∼47%であった.増大 は1例,不変は1例であった(表2,写真1,2).

CEA値との関係では11例中CEA値低下は8例,

上昇3例であった.CEA値が低下した8例中, CT scan上腫瘍の縮小をみなかった症例は1例だけ であり,7例は腫瘍の縮小を認めた.しかし,CEA 値の下降は一過性であり,CEA値が再上昇する と,それに伴い腫瘍の増大をみた.CEA値が上昇 した3例のうち,2例はCT scan上腫瘍の縮小を みたが,1例は腫瘍の増大をみた(表8).

このようにおおむね腫瘍マーカーとしての

CEA値は, CT scan所見上の腫瘍の増大・縮小と 共に推移し,臨床的によき指標となった15).自覚症 状の改善はほとんどの症例に認められた.胆のう 癌の症例では明らかな麗麗効果があったことから 腫瘍縮小による胆道系の再開通が得られたものと 考えられた. 以上自覚・他覚症状等を総合的に厚生省の固形 がん化学療法直接効果判定基準に照らしあわせて みると,Iv群ではpartial response(PR)0,

minor response(MR)0, no change(NC)9,

progressive disease(PD)2で奏効率0%である のに対し,Ia群ではPR 5, MR 4, NC 1, PD 1で奏効率45%という結果を得た(表9). 副作用としては局所温熱によるものと,制癌剤 写真1 温熱化学療法動注群 症例1 治療前のCT(左)治療後のCT(右) 写真2 温熱化学療法動注群 症例5 治療前のCT(左)治療後のCT(右) 一1264一

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表8 温熱化学療法動注群でのCEA値の動向 且T施行前 H.T施行中 H.T施行後 1 462.5 87.5 97.0 368.0 390.0 低下 2 1276.8 8530 5110 4600 5270 低下 3 3.2 3.9 5.7 上昇 4 42.0 37,0 32.5 42.7 低下 5 45.3 42.8 12.6 8.8 24.5 低下 6 6.3 7,9 302 68.4 上昇 7 29.5 5.3 3.0 7.8 28.5 低下 8 40.6 15.4 72.0 低下 9 96.7 6.3 9.0 4.0 26.2 低下 10 20.0 23.0 32,2 38.2 上昇 11 1129.6 649.6 低下 (単位 ng/ml) 表9 温熱化学療法Iv群, Ia群における固形がん化 学療法直接効果判定基準 CR PR

MR

NC

PD 奏効率 静注群 0 0 0 9i82%) 2i18%) 0%

動注群 0 5i45%) 4i36%) 1i9%) 1i9%) 45%

大量投与によるものとに大別され,前者の場合は

paddleの当たった皮膚面の1度の火傷が2例に

認められた(1例は背部で,1例は右上腹部).い ずれも通常の火傷と違い,まず示指頭大の腫瘤が 生じ,2週間後に皮膚表面がただれてきた.温熱 療法を中断することにより治癒した.また施行後 の軽度の発熱は時々認められた.MMCを点滴静 注した11例では血小板・白血球の減少や,肝機能 障害をみたものは!例もなかった.MMC, ADM を大量に投与した11例,延べ15回では血小板5万 以下の減少をみたもの9回,白血球3,000/mm3以 下の減少をみたもの8回であった.骨髄抑制の発 現は,制癌剤投与後1日目より起こり1∼2週間 で最大に達し,4週間後に正常に戻るものが多 かった.大量動注を繰り返し行なった4例は,白 血球,血小板が正常化したあと施行したが,全例 初回より強度の骨髄抑制反応を生じた.しかし, いずれも重篤な合併症をひき起こす症例はなく, 輸血を必要とする症例もなかった.肝機能障害を 認めたものは2例あったが一過性で臨床的に問題 となる程度ではなかった.また頭髪の脱毛は3例 にみられ,特にADMを投与した症例に著明で,

MMCを投与した9例では1例だけに軽度の脱毛

が起こった. 考 察 肝転移癌は従来適切な治療方法がないことか ら,その予後は全く悲観的であった.しかし,最 近画像診断の発達により,肝転移の診断が容易に なり,それに対する治療法も切除術をはじめとし て,色々と工夫されるようになった16)17).しかし切 除不能なH2, H3症例においては,効果的な治療法 は未だ確立されていない.また,肝転移は予想以 上に高率に見られ,特に大腸癌では顕著で自験例 においても約20%に発生をみている.したがって, これに対する適切な集学的治療の開発が最も望ま しい所である. 近年温熱の抗腫瘍性に関する作用機序や,有効 温度範囲の基礎的解明と,臨床例に対する加温装 置の改良や安全性の確立とあいまって,温熱療法 が癌の治療法として関心をもたれてきた.腫瘍細 胞の温度感受性については,実験的に一般に 41∼43℃以上で抗腫瘍効果が得られるとされてい る.悪性腫瘍に対する温熱療法の効果はSuit18), Connor19), Overgaardら20)が基礎的研究を発表し ている.すなわち温熱により,癌細胞のDNA, RNA,および蛋白合成の阻害や, mitosisの阻害, 嫌気性解糖系の促進による細胞内のPHの低下 とライソゾーム酵素の活性化などが考えられてい る.当然,癌細胞に対する温熱は高い程効果があ るが,正常細胞を致死させず,癌腫のみを選択的 に加温できることが理想といえる.著者は最初 Parksらの方法に準じて,体外循環装置を用いた 血液加温による全身温熱療法を,肝転移症例3例 に延べ7回施行した.全身麻酔下で大腿動静脈に カニュレーションを行ない,動脈より毎分約1,500 ccの血液を脱暮し, heat exchangerにて加温し 静脈に送遷した.温度は直腸温で41.5℃を目的温 とし,この温度を約5時間維持した.これを隔週 に施行し3回を1クールとした.本法にて1例に 約10cmの腫瘍が中心壊死をきたしているのが, CT scanで観察されたが,他覚的に腫瘤の縮小を 認めなかった.臨床的には疹痛や黄疸の軽減をみ 一1265一

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た例もあるが,一方副作用も相当に強く,下肢筋 を中心とした運動麻痺,知覚異常,肺水腫,悪心 口区吐,火傷,全身倦怠感等の多彩な症状の出現を みた.そのため,肝転移症例には不適当と考え, 以後は,局所温熱療法に切りかえた. 局所温熱療法は,肝臓のように単一臓器を選択 的に加温できること,簡単な装置で安全に施行で きること,外来通院でも治療可能なこと,治療時 間が全身温熱療法に比べ短いこと,副作用がほと んどないことなどの利点がある.一方欠点として は複数臓器転移例や播種型転移例に対しては意義 が少ないこと,また腫瘍内温度を上げるために電 圧をかけ過ぎると皮下脂肪の温度もそれに伴い上 昇し,それが原因で火傷を起こすことがあり,肥 満の症例には向かないことなどがある.今回2症 例に火傷を認めたが2例とも女性で,冷却水の循 環不全も考えられるが,皮下脂肪の過度の温度上 昇に原因があったと考えられた. 肝に局所温熱療法を施行した場合,腫瘍組織内 の温度と正常組織内の温度については,Urbach21) は腫瘍血管は正常の血管運動神経の支配をうけな いので,正常組織より腫瘍の方が高温の持続時間 が長いと報告している.Stormら22)の報告では肝 内の腫瘍は周囲肝組織に比し,温度上昇が著明で あり,正常肝内の温度が42℃でも腫瘍内が45℃に 上昇するとされている.その理由は腫瘍組織内の 血液は豊富であるが,流れは悪いので血液により 冷却されることが少ないためであり,よって腫瘍 が大きい程,血流の低下が考えられ,温熱療法ぱ 有効であるとしている. 実際の腫瘍内の温度については,光野ら23)は家 兎において肝臓内の腫瘍温度の測定をしている. それによれぽ正常組織を加温した対照群ではほと んど温度の上昇がみられなかったが,実験群の径 7cmの腫瘍では100w以下の電圧で腫瘍内温度が 45℃に達している. 著者は臨床例においてecho下にて直接肝臓の 腫瘍内に温度センサーを留置し,測定した.その 結果42℃まで腫瘍内温度が上昇することを確認し た.最近では植え込み式のwireless温度計が試作 されているので,近々確実な温度監視下での温熱 療法も可能になるであろう24). 温熱の肝細胞に及ぼす影響は肝のうっ血,実質 細胞からのグリコーゲンの欠位とそれに続く核と 細胞質の膨化である25).これら肝細胞に対する反 応は,肝臓の血管に対する影響の結果として起こ るものか,または肝細胞自体に対する影響かはわ かっていない.しかし臨床的には肝機能および肝 組織の反応は一過性であり,致死細胞反応が起き ないことは推定できる.今回の経験でも全身温熱 療法の場合,GOT, GPTの上昇が全例に認めら れ,値も4001U〃程度となったが,約2週間後には 正常化し,局所温熱療法でぱGOT, GPTの上昇 を2例に認め,値は1001U〃程度で特に問題とは ならなかった. さて温熱療法と抗癌剤との併用については,両 者の相乗的殺細胞効果はすでに実験的に確認され ており26>,現在では弁護の温熱療法では効果が期 待できないことがわかってきた.1960年代に, Woodhal127)やCrileら28)により局所加温と制癌 剤療法あるいは放射線療法との併用が,抗腫瘍効 果をみたという臨床例の報告がなされた.さらに, Overgaard29)ぱin vivoで, ADMと温熱との併用

を行なってその有用性を確認し,その発現機序と して次のように説明している.すなわち固形腫瘍 の中心部は血行が少なくhypoxicであり,また細 胞の増殖は緩慢であるが,このような状態では腫 瘍細胞は温熱に高感受性といわれており30),制癌 剤の到達は少なくても,温熱単独により抗腫瘍効 果がみられるとしている.一方腫瘍辺縁部では oxicであり,細胞増殖も旺盛であり,温熱に感受 性は低いとされているが31),周辺からの血行が多 く,制癌剤による抗腫瘍性は発揮され易い.以上 の2点の相互作用で有効であると述べている.ま た,Suttonら32>はmicrowaveによる加温で,腫瘍 血行の選択的増加による制癌剤の到達性の上昇を 報告しているが,一方Songら33>は加温により正 常組織の血流は増加するが,腫瘍組織の血流は増 加しないとしており,この点に関してぱなお今後 の検討を要すると思われる. 一方併用で注目すべきことは,抗癌剤の種類に より特異性があることで,温熱により効果の増強

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する抗癌剤としては,欧米でぱ実験的にも臨床的 にもADM34)とブレオマイシソ(BLM)35)が知ら れている.本邦では5−Fluorouracil(5Fu)や MMCとの併用の有効性について,平井ら36)の基 礎実験の報告がある.MMCは下山37)によると dose dependentな作用機序を有し,高濃度で作用 させると,腫瘍細胞と短時間の接触で殺細胞効果 があり,動注に適していると述べている,前田ら38) の臨床例24例の報告によると,全身温熱療法+シ スプラチン+5Fuとの組み合わせで9例中4例に

PRが得られ,全身温熱療法+MMC+5Fuでは11

例中3例にPRがみられたとしている.この11例 はいずれも単独化学療法では無効であった症例で あり,制癌剤に抵抗を示した癌腫に対し,同じ薬 剤を温熱と併用することにより感受性が発現され たことを示している.しかし温熱といかなる制癌 剤との組み合わせにも感受性を示さなかった症例 も24例中3例存在したとしている.今回の著者の 経験でも同様の症例があり,温熱と制癌剤の併用 に対する感受性は,ヒトの個々の癌細胞により感 受性が異なることが予想された.よって今後は何 らかの方法でhyperthermochemosensibilityを 知る努力を重ね,慎重に抗癌剤の選択をしていく ことが望まれる. さて,本論文の目的である転移性肝癌に対する 治療法を考えた場合,従来の化学療法では,治療 の限界があると思わざるを得ない.小林ら39)の150 例の集計によれぽ,肝転移癌に対する抗癌剤の全 身投与(経口,経静脈,経肛門)では,その生存 率は50%生存期間3ヵ月,6ヵ月生存率20.5%と 低率であり,腫瘍縮小効果も30%以上の腫瘍の縮 小率は13%にしか認められていな:い.一方動注化 学療法の有効性については多くの報告がなされて いるが40)∼42),生存率でみると50%生存期間6∼12 ヵ月,6ヵ月生存率60%∼80%であり,抗腫瘍効 果では奏効率30%∼50%のものが多く,充分とは 言いがたい. 今回著者は従来の化学療法に温熱療法を併用し た温熱化学療法群(1群)と化学療法単独群(2 群),無治療群(3群)との間で生存率について検

討した結果,1群2群間,1群3群間ともに統計

学的に有意差をもって,1群の方に高率な生存率 を認めた.その中でも特に厚葉多数散在のH3症 例においては,2群,3群に比し,1群の方が有 意差をもって高率な生存率を認めた.すなわち H、,H2症例においては手術で根治せしめること が可能な場合もあるが,手術不能なH3の肝転移 症例に対し決定的な治療法がない現在,抗癌剤併 用による温熱療法で今回明らかな延命効果が認め られたことは意義のあることと思われる. 温熱化学療法の中で静注群(lv群)と動注群(la 群)とを比較した場合,生存率では両群間に有意 差はみられなかった.Ia群の生存率のみをみると 平均生存期間8.2ヵ月,50%生存期間7.1ヵ月,6 ヵ月生存率70%,1年生存率23%であり,これは 三浦ら43>が報告した膵頭部癌の温熱化学療法動注 群の生存率とほぼ同様の結果であった.抗腫瘍効 果ではIa群の方がはるかに腫瘍の縮小を認めた. このことは,大量の抗癌剤を静注することは不可 能であるのに対し,選択的に大量に投与すること のできる動注の方が,抗癌剤の腫瘍内濃度が高く なることは当然であり,抗腫瘍効果も大であった ためと考えられる.今回は阿岸ら13)の開発した活 性炭血液吸着法という方法で大量の抗癌剤投与が 可能になり,重篤な副作用も認めることがなかっ た.抗癌剤の血中からの除去能については一般的 にも認められており44),山懸ら45>の犬を使った実 験も報告されている.制癌剤の骨髄抑制,肝障害, 胃腸障害などの副作用は総接触量により影響され るといわれており46),一度腫瘍組織と接触した制 癌剤をできるだけ早く除去すれぽ,他臓器への影 響を少なくし,副作用も軽減すると考えられる. 以上著者が経験した転移性肝癌に対する抗癌剤 併用による局所温熱療法について述べてきたが, 温熱化学療法動注群に著しい抗腫瘍効果と延命効 果の得られることを知った.今回の奏効率は45% であり,この成績は決して満足すべきものではな いが,対象が末期癌患者であったことを考慮すれ ぽ集学的治療としての意義は大ぎいと考える.最 近では転移性肝癌に対し油性造影剤の動注あるい は高分子制癌剤の静注または動注が有効であると いう報告47)48)も多くあることより,これと温熱と 一1267

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の併用あるいは外国で多く施行され良好な成績を おさめている放射線療法との併用49)50)などによ り,今後さらに有効な集学的治療の開発が行なわ れることを希望したい. 結 語 1.肝転移癌に対する累積生存率による比較で は,温熱化学療法群は化学療法単独群,無治療群 に比し統計学的に有意差をもって延命効果を認め た. 2.肝転移の程度別でみた場合,温熱化学療法の 治療効果は,少数散在性の肝転移症例(H2)より も,多数散在性の肝転移症例(H3)において統計 学的に有意差をもって延命効果を認めた. 3.活性炭血液吸着法を応用した抗癌剤の選択 的大量動注と局所温熱療法との併用にて,PR5, MR4, NC1, PD1,奏効率45%という結果を得, 著明な抗腫瘍効果を認めた. 稿を終えるにあたり,御校閲を賜りました羽生富士 夫教授,および直接御指導を賜りました浜野恭一教授 に深甚なる謝意を捧げます.また本研究にあたり御指 導,御協力を頂いた東京女子医大腎センター阿岸鉄三 教授,消化器病センター大腸研究班の諸兄姉に深く感 謝の意を表します. 文 献 1)浜野恭一,由里樹生,野方 尚ほか:肝転移を伴 う直腸癌の治療.消化器外科 9:207−212,1986 2)西田 修,佐藤直樹,中西昌美ほか:大腸癌肝転 移切除例の検討.日消外会誌 18:961−967,1985 3)山崎 晋,幕内雅敏,長谷川博:転移性肝腫瘍に 対する肝切除の意義と限界.外科治療 52: 241−247, 1985 4)由里樹生,秋本 伸,浜野恭一ほか:転移性肝癌 に対する肝切除術.日臨外医会誌 43:354−356, 1982 5)三浦 健,和田達雄:転移性肝癌の化学療法一と くに肝動脈内注入化学療法について一.癌の臨床 26 :704−710, 1980 6)横山 隆,児玉 節,三好信和:切除不能肝癌(転 移性肝癌を含む)に対する肝血流遮断術の検討. 広島医学 37:1465−1470,1984

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(11)

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参照

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