• 検索結果がありません。

冠状動脈造影所見の経年的変化と臨床像 : 冠状動脈造影再施行例における検討

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "冠状動脈造影所見の経年的変化と臨床像 : 冠状動脈造影再施行例における検討"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

18 原 著 ( 東 女 医 大 誌 第55巻 第3

)

頁 258-271 昭和60年3月

冠状動脈造影所見の経年的変化と臨床像

一冠状動脈造影再施行例における検討-東京女子医科大学 循環器内科学教室(主任・康津弘七郎教授)

高 林 和 佳 子

(受付昭和59年12月19日〉

Comparative Study between Re-evaluated Coronary Arteriographic and Clinical Findings

Wakako TAKABAYASHI

Department of Cardiology, The Heart Institute of ]apan (Director.Prof. Koshichiro HIROSAWA) Tokyo Women's Medical College

To assess the progression of coronary artery disease, 84 patients mean aged 51 years were re -evaluated13-133 months after initial coronary arteriography. The relationship between coronary ar -teriographic and c1inical findings were studied. Among a total of coronary artery branches, obvious progression was frequently seen in the proximal third and the middle portions of the right coronary ar -tery

the proximal to the first septal perforator of the left anterior descending arteηT and the first diagonal branch.

Progression itself occurred less frequently in the portions which were observed to be normal during the first study. Obvious progression was observed in more than 80% of the cases where the aggraviation of the c1inical symptomes occurred during the course of the study. The progression of the coronary ar -teriographic findings was more prominent in the patients with myocardial infarction than in those with angina only. No relationship could be found between the coronary risk factors and the progression of coronary arteriographic findings.

I

t

was thought that the progression of coronary atherosc1erosis was an important factor which prescribes the prognosis of coronary artery disease. Thus, careful observation and routine check up were recommended because not all the cases with progression of coronary arteriographic findings show the aggraviation of c1inical findings. はじめに 対象ならびに方法 結 果 目 次 1.造影所見の変化と観察期間 2. AHA分類によるsegment別にみた有意狭窄 病変数 3. segment別にみた造影所見の変化 4.初回狭窄度と冠状動脈病変の進行 5.症状の変化と冠状動脈病変の進行 6.初回検査時診断と冠状動脈病変の進行 7. 冠危険因子と冠状動脈病変の変化 考察 結語 文 献 はじめに 虚血性心疾患と診断された患者において,冠状 動 脈 病 変 の 進 行 の 有 無 は 今 後 の 治 療 方 針 を 決 定 す る上や,予後の推定に際して,きわめて重要な問 題と思われる.心電図や負荷心電図に加えて,最 近 は4心 臓 核 医 学 検 査 等 の 非 観 血 的 検 査 法 の 進 歩 が

(2)

著しし臨床症状と組み合わせれば冠状動脈病変 の進行の有無をある程度までチェックできるもの と思われる.しかし,現在のところでは進行の有 無を確認するためには冠状動脈造影検査が唯一の 手段であろう.だが我が国においては,冠状動脈 造影検査を施行できる施設は増加しつつあるもの のまだ限られている.従って本法を繰り返して行 なうことにより,冠状動脈病変の進行の有無を確 認できた症例について検討した報告はきわめて少 ない.そこで今回,一年以上の期聞をおいて冠状 動脈造影検査を再施行し得た症例について,病変 の有無を検討するとともに,種々の臨床所見との 対比を行ない,若干の知見を得たので報告する. 対象ならびに方法 東京女子医科大学日本心臓血圧研究所におい て,昭和45年4月より昭和58年3月までの13年間 に,虚血性心疾患もしくはその疑いの診断のもと 19 に冠状動脈造影検査

C

CAG

)

を施行した

2

9

7

6

例の 中から 1年以上の期聞をおいて同検査を再施行 し得た男82例,女2例の計84例を対象として,冠 状動脈病変の経年的変化と臨床像について対比検 討を行なった.年齢は30歳から62歳,平均51歳で, 観察期聞は13カ月から133カ月,平均52.5カ月と なっていた. 初回入院時診断による疾患別の内わけは,狭心 症22例,心筋梗塞62例であった.なお外科的治療 を行なったものは除外した.

CAG

は主にJudkins法, 一部Sones法にて行 な い . 撮 影 装 置 は 日 立 メ デ ペ コ 社 製 な ら び に Siemens社製の高速度35mmシネアンジオ装置 を用いて,秒50コマあるいは60コマにて少なくと も左右あわせて

4

方向以上撮影した.病変の判定 はニトログリセリンO.3mg舌下服用後に行ない. 狭窄度は前後の正常と思われる部分に対する内径 写真1症例lのCAG(左:昭和50年10月 , 右 昭 和54年12月).RCAseg. 1の壁不 整 (図左矢印)は99%狭窄 〔図右矢印〕に進行していた. -259

(3)

昌 一

F

m

b

v

V4

-j

μ

ト Vs Ve

Vl ザ~r­

V2--'

i

k

h

f

v

h

f

h

7

1

1

1

r

Vs

V e ι

図l 症例1の初回心電図(昭和50年10月),前壁中隔 梗塞の所見を示す. 20 I E

-

1

¥

.

__

1

-

.

_

.

.

.

.

.

J

i

.

.

.

A

-

-E

-aVR

r

-

:

-aVL~ーい÷

aVF

斗斗叫ふ

I

E

図2 症例 1の再検時心電図(昭和54年 12月).発作時 のもので, II, III, aVFにSTの低下を認める. り返し出現するようになり,発作時に心電図上図 2に示すように11,III, a VF,に約0.2mVのST低 下が認められた.このため,同年12月にCAGを施 行したところ,写真1右に示すようにRCAseg.1 の病変は99%へと進行していた. 症例

2

左前下行枝病変の進行例 57歳男性,昭和57年2月急性後下壁梗塞にて入 院.発症3週間目のCAGは写真2左に示すよう に, RCAがseg.3で完全に閉塞し, LADはseg.6 に25%の狭窄が認められた.心電図は図3に示す ように, 11, III,

a

VFで異常Q波と冠性T波また V1にR波の増高が認められた.その後無症状で あったが,昭和58年初め頃より労作性狭心症が出 現するようになり,来院の途中で歩行時に強い胸 痛があったため緊急入院となった.入院時の心電 図は図

6

に示すように,前胸部誘導で

T波が二相

性となっていた.同年3月にCAGを施行したと ころ,写真2右に示すようにLADseg.6の病変は 99%へと進行していた. 症例3 左回旋枝と右冠状動脈病変の進行例 58歳男性.昭和52年発症の急性前壁中隔梗塞で の百分率にて表わした.造影が不良などの理由に より,評価不能のものは除外した. 冠 状 動 脈 病 変 の 記 載 はAHA Committee ReporP)に従い,右冠状動脈 CRCA)はsegment (seg.) 1より 4まで,左冠状動脈 (LCA)はseg. 5より15までに分類し,狭窄の程度は25%以下のも の を25%,26-50%を50%,51-75%を75%, 76-90%を90%,91-99%を99%,完全閉塞のも のを100%と,六段階に分類した.以上の造影所見 の変化をAHA分類によるsegment別に検討す るとともに,初回狭窄度,観察期間中の症状の変 化,初回検査時の臨床診断ならびに冠危険因子と 対比検討した. 以下に冠状動脈病変が進行した3例を示す. 症例l 右冠状動脈病変の進行例 60歳男性,昭和50年10月,急性前壁中隔梗塞に て入院.発症4週間目のCAGを写真I左に示す. LADは完全閉塞しているが, RCAはseg.1に壁 不整を認めるのみであった.また,この時の心電 図は図1に示すようにV1叫に異常 Q波と STの 上昇がみられた.その後特に症状なく経過してい たが,昭和54年11月頃より再び労作時に胸痛が繰

(4)

21 U明略奪 警 写真2 症例2のCAGC左 昭 和57年2月,右.昭和58年3月).LADの病変は25% (図左矢印)から99%C図右矢印〉へと進行していた. 心電図は図5に示すようにV,叫に異常Q波と冠 性

T渡が認められた.

CAG

は写真

3

左に示すよ うに

LAD

seg.6に99%の狭窄が認められた.その 後無症状に経過していたが,昭和

5

7

年春頃より, 明け方に喉のつまる感じが出現するようになり, 発作時心電図は図

6

のごとく

I

I

,!II, a

VF

V

5-6で、 著明な

ST

低下がみられた.このため昭和

5

7

7

月に

CAG

を再施行したところ,写真3右に示す ように,

RCA

はseg.1で完全閉塞となり,

LCX

seg.13に90%の狭窄が出現していた. -261 結 果 1.造影所見の変化と観察期間 造影所見の変化とその症例数ならびに観察期間 を表

1

に示す.

AHA

分類上二段階以上の明らか な進行を認めた症例は

4

8

(

5

7

%

)

,一段階の進行

1

5

(

1

8

%

)

,不変が

1

4

(

17%

)

となっており, 改 善 例 に つ い て み る と , 一 段 階 の 改 善 が 6例

(7

%),二段階以上の改善は

1

例 ( 1%)となっ ていた.但し,進行と改善が同一症例にみられた 場合には進行例とした. また各群の観察期間について比較検討してみる

(5)

22 1

_レ」斗ん

1

V

-

+

-

-

-

J

r

E

」一寸戸-m

-

-

y

'

-

v

-

aVR

十 一

r

-

-

-aVL -1,戸〈ー」ー

V

2

J

:

r

叫ん

aVF

十---1一"

._~~吋

r-V

5

J

V6

↓ベー-

;

図3 症例2の初回心電図(昭和57年2月).後下壁梗 塞の所見を示す. I ふ~~ーへcι

V

1

F

E

?で三

L土4千

V

2

F 4

E

へ」二二.-...,¥....:---r一一一一一一ー_1ー ← aVR

"

-

!

i

-

r

V3

aVL.

孟 二 二

-

¥

.

-

.

.

.

aVF

~--::::- 川示云

Vs

平二二

ι

V6

t

~

モ』

図4 症例2の再検時心電図(昭和58年3月).緊急入 院時のもので,前胸部誘導に二相性のT波を認めた が,翌日にはもとにもどっていた. 写真3 症例3の CAG(左:昭和52年12月,右:昭和57年7月).RCAに完全閉塞, LCXは99%狭窄へとそれぞれ進行がみられる.(図中矢印〉

(6)

23

v

t

r

r

V20

V3

ヤ寸三

V4

ギー

l

i

i

j

;

V5~ヒλ~'t.:.:.7

V6

.

-

J

-

L

f

図 6 症例 3の再検時心電図(昭和57年 7日). F, V5_6'VこST低下を認める.

2

.

AHA

分類による

s

e

g

r

n

e

n

t

別にみた有意狭 窄病変数

75%

以上の有意狭窄病変数を,冠状動脈部位別 に初回検査時と再検査時にわけて,比較検討して みたのが図

7

である.有意狭窄病変数は初回,再 検 時 と も に

s

e

g

.

6

に 最 も 多 く ( 初 回 検 査 時4

0

48%

,再検査時4

7

例56%)みられ,約半数が左前 下行枝

(LAD)

近位部に集まっていた.一方,再 検査時の狭窄病変数について検討してみると,

LAD

近位部に加えて

s

e

g

.1

2

1

3

といった

RCA

近位部や左回旋枝

(LCX)にも多くみられるよう

ー.--)~\...--I

l~rv

V1

~.

"

I

ヤ三

1

E

V

2

r

c

E

E

E

aVR

-

v

-

.

.

r

-

-

'

r

-

-aVL

=

t

L

:

:

aVF

?

t

-

-

=

v

「 J

Jf「

f

i

¥

J

3│

V

4

1

附-rv

aVR

-

-

-

y

-

-

=

aVL

J

'

-

-

-

-

.

.

aVF~ィV十J

観察期間〔月〉 67.3:t31.5 年齢と観察期間および病変の進行 齢 50歳未満 表2 V5~し-v---f\へr

V

6

-

-

1

L

-

-

-

l

c

-

~

図 5 症例 3の初回心電図(昭和52年 12月).V,_<が QSで,前壁中隔梗塞の所見を示す. と,二段階以上の進行群が5

7

.

1

2

7

.

8

カ月,一段 階の進行は4

7

.

8:

:

t

2

8

.

7

カ月.不変群5

0

.

1:

:

t

2

3

.

5

カ 月,一段階の改善群31.8

:

:

t

21.5カ月,二段階以上 の改善例は1例のみで6

6

カ月となっていた.二段 階以上の改善がみられた1例を除外すれば,進行 群が改善群に比して長い傾向がみられたが,各群 聞に統計学的有意差はみられなかった. 次に,対象症例を5

0

歳未満の群と

5

0

歳以上の群 にわけ,両群聞における進行例の頻度と観察期間 とを比較検討した.その結果を表 2に示すが,観 察期間は5

0

歳未満の群が6

7

士3

2

カ月,

5

0

歳以上の 群では4

5

2

5

カ月と,

5

0

歳未満の群が有意 (p<

0

.

0

1)に長くなっていた.しかし,進行例の割合 を比較してみると,

5

0

歳未満の群では3

2

例中2

4

(

7

5

%

)

5

0

歳以上の群では5

2

例中4

0

(

7

7

%

)

と 両群聞に差は認められなかった. 45.4:t24.8 50歳以上 造影所見の変化と症例数ならびに観察期間 表l

S

e

g

m

e

n

t

別にみた造影所見の変化 2段階以上の進行 1段階の進行 不 変 1段階の改善 2段階以上の改善 91C9%) 133(14%) 719(73%) 27( 3%) 11(1%) 表3 観察期間 57.l:t27. 8ヵ月 47.8:t28.7ヵ月 50.l:t23.5ヵ月 31.8土21.5ヵ月 66ヵ月 例数 48例 15例j 14例 6例j 1例 2段階以上の進行 1段階の進行 不 変 1段階の改善 2段階以上の改善 263

(7)

24 になっていた. 3. Segment別にみた造影所見の変化 対象症例84例の中から,合計981seg.について造 影所見の変化を検討した.その結果は表3に示す 通りで,二段階以上の進行が91seg.( 9 %),一段 階の進行が133seg.(14%),不変が719seg.(73%), 一段階の改善が27seg.(3%) および二段階以上の

75-90%の狭窄 ~ 99-100%の狭窄 (左:初回,右:2回目) 場 9 n U R d 坤 - m 例 5 2 例 ( (

1

4

唄 雨 ー

11 12 13 14 15 図7 AHA分類によるsegment別 に み た 有 意 狭 窄 病変数.有意狭窄病変は初回,再検査時ともseg.6 に多く,再検査時にはseg.6, 7f.こ加えてseg.1,2や seg. 13にも多くみられるようになっている. 改善がl1seg.(1 %)にみられた. 次に各segment別 に 病 変 の 変 化 を 検 討 し て み た.その結果は図8に示す通りで, seg. 1,2といっ たRCA近位部ならびに6,9などのLAD近位部 や対角枝に二段階以上の明らかな進行が多くみら n= 81 68 62 53 55 100

(

%

)

50

善 行 改 進 の 善 行 の 上 改 進 上 以 の の 以 措 階 変 階 階 段 段 段 段

A w u a a y A U J V E 司 d w n υ E 町 J u n n v E 時 以 内 7 ι 向 調 U 。 ‘ u 自 民 U = l n

%

1 ( 5 6 7 8 9 10 n=80 73 74 53 3 100

(

%

)

50 図8 segment別にみた冠状動脈病変の変化.seg. 1, 2といったRCA中枢側ならびにseg.6, 9などの左 前下行枝近位部や対角枝に二段階以上の進全行が多 く,一段階の進行はseg.3, 12, 15などのRCAの遠 位部や回旋校に多くなっている. -7 進 行 の 進 上 の 以 階 階 段 段

一 一 一

-a 骨 凋 斗 F h J V 0 3 m t E a a a y F 内 u ' t ヲ I n 見 U F n v

一 一

n 25 50 75 90 99 初回狭窄度 図9 初回狭窄度と冠状動脈病変の進行.初回検査時の狭窄度が25%,50%, 75%と いった部位での進行が多く,全く正常と思われる部位で、の進行は少ない.

(8)

1(一)→(+) 増

1

(

+

)

→ 川

10 20 30 11% 25 40例 口 不 変 函 一 段 階 の 進 行 . ニ 段 階 以 上 の 進 行 図10症状の変化と冠状動脈病変の進行.症状増悪群に明らかな進行例が多くみられ る. れ,一段階の進行はこれらの部位に加えてseg.12, 15といったLCXの鈍縁枝や左後下行枝にも多く なっていた. 4.初回狭窄度と冠状動脈病変の進行 次にAHA基準に従って,初回検査時の狭窄度 を完全閉塞を除く六段階にわけ, 981seg.につい て各狭窄度別に病変の進行の頻度を比較したのが 図9である.初回狭窄度が50%の部位で、は45seg. 中21seg.(47%),75%の 部 位 で は29seg.中13seg. (45%)といずれも半数近くに進行がみられてい た.中でも二段階以上の明らかな進行について みると,初回狭窄度が25%の部位では175seg.中32 seg. (18.5%), 50%の 部 位 で は45seg.中7seg. (15.6%)ならびに75%の部位では29seg.中5seg. (17.2%)と初回検査時の狭窄度が25%,50%,75% といった部分に多くみられた.それに対して,初 回検査時に壁のirregularityもなく,全く正常と 思 わ れ る 部 位 で の 進 行 は637seg.中118seg. (18.5%)であり,その中でも二段階以上の明らか な進行は44seg.(6.4%)ときわめて少なくなって L

7こ 5.症状の変化と冠状動脈病変の進行 観察期間中の症状の変化と冠状動脈病変の進行 の関係を図10に示す.経過中まったく狭心症の出 現がなかったものを(一〉→(一),初回検査時よ り狭心症があったが,経過中特に増悪や軽減など の変化がみられなかったものを(+)→(十),経 過中新たに狭心症が出現したものを(一〉→(+), 初回検査時より狭心症があったが,経過中に増悪 したものを(+)→(件〉の

4

群にわけで冠状動 265 脈病変の変化と対比検討してみた.二段階以上の 明らかな進行を示した症例の頻度を比較してみる と,症状不変群のうち(-)→(-)群では22例 中

4

例(18%),また(+)→(+)群では

9

例中 1例(11%)と,きわめて少なかったのに対して, 症状増悪群では(一〉→(+)群が35例 中28例 (80%), (+)→(十十〉群で18例中16例 (89%)と なっており,大部分の症例で冠状動脈病変の明ら かな進行が認められた. 次に一段階の進行例についてみると,症状不変 群のうち〔一〉→(一〉群が22例中10例 (45%) と最も多く, (+)→(+)群では9例中1例(11%) もなっていた.また症状増悪群について検討して みると, (-)→(+)群では35例中4例 (11%) にみられ, (+)→(+十〕群では進行例はすべてが 二段階以上の進行となっており,一段階の進行は l例もみられなかった. 6.初回検査時診断と冠状動脈病変の進行 初回検査時診断別に心筋梗塞群と狭心症群にわ けて症状の変化と冠状動脈病変の進行とを検討し てみたが,その結果を図11に示す.図11上段に示 すように,心筋梗塞群では62例中38例 (61%)に 二段階以上の明らかな進行がみられ, 13例(21%) で一段階の進行と,両者をあわせて51例 (82%) に冠状動脈病変の進行がみられた.一方,狭心症 群では二段階以上の明らかな進行は22例 中11例 (50%), 一 段 階 の 進 行 は2例 (9%)と計13例 (59%)が進行例となっており,心筋梗塞群の方に 病変が進行した症例が多い傾向がみられたが,統 計学的有意差は認められなかった.

(9)

26 100% 心 筋 梗 塞 群 50

狭 心 症 群 50 100% 口 不 変 図一段階の進行 .二段階以上の進行 図11 症状の変化と冠状動脈病変の進行. 初回検査時診断別に 心筋梗塞群に進行例が多い傾向があるが,有意、差は認められていない.但し,症状 不変群についてみると,心筋梗塞群の方に有意に進行例が多くなっている. これをさらに,観察期間中に症状の変わらな かった群と増悪した群にわけて検討してみたが, その結果を図

1

1

下段に示す.症状増悪群について みると,二段階以上の明らかな進行が心筋梗塞群 で

3

9

例中

3

3

(

8

5

%

)

狭d心症群で

1

4

例中

1

1

(

7

9

%

)

にみられ,両群に明らかな進行例が多くなってい た.一方症状不変群についてみると,心筋梗塞群 では

2

3

例中

5

(

2

2

%

)

に明らかな進行がみられ, また一段階の進行も

1

0

(

4

3

%

)

と計

1

5

(

6

5

%

)

に冠状動脈病変の進行がみられたのに対して,狭 心症群では

8

例中わずか

1

(

1

2

.

5

%

)

に一段階 の進行がみられたにすぎず,経過中症状が不変で あったにもかかわらず冠状動脈病変が進行した症 例は,心筋梗塞群の方に有意

(

p

<

0

.

0

5

)

に多く なっていた.

7

.

冠危険因子と冠状動脈病変の変化 冠危険因子と病変の変化との関係を図

1

2

1

3

に 示す.冠危険因子としては高コレステロール血症, 高中性脂肪血症,糖代謝異常,高血圧の既往 1 白

2

0

本以上の喫煙,肥満および家族歴の7項目を とりあげた.最初に各項目につき,冠危険因子の 有無と病変の進行の関係を比較してみたが,その 結果を図

1

2

に示す.糖代謝異常,高血圧,喫煙, 肥満および家族歴を有する群に二段階以上の明ら かな進行がみられた症例が多い傾向はあったもの の,統計学的有意差は認められなかった. 次に各冠危険因子と進行した

s

e

g

r

n

e

n

t

数を対 比してみたが,その結果を図

1

3

に示す.高コレス テロール血症,高中性脂肪血症,糖代謝異常,

2

0

n=20 64 49 34 34 50 行 進 行 の 進 上 の 以 階 階 段 段

n=M 60 M

W

28 ~ 12 72 有 無 喫 煙 (20本以上) 図12冠危険因子と冠状動脈病変の進行.糖代謝異常, 高血圧,喫煙,肥満および家族歴を有する群に二段 階以上の明らかな進行例が多い傾向にあったが,有 意差はみられなかった. 本以上の喫煙,肥満および家族歴をもつものに病 変の進行した

s

e

g

m

e

n

t

が多く,中でも二段階以上 の明らかな進行は,高中性脂肪血症,肥満ならび

(10)

n = 66 915 434 547 330 627 30 (%) 圏 一 段 階 の 進 行 . ニ 段 階 以 上 の 進 行 20 10

有 無 有 無 高コレステロール高中性脂肪 有 無 糖代謝異常 n = 284697 612369 315666 116865 30

(%)1 司 限 羽 際寝 際

a

2

1

l

1

1

1

1

1

1

1

1

v 有 無 有 無 有 無 有 無 高 血 圧 喫 煙 肥 満 家族歴 (20本以上) 図13冠危険因子と segment別 に み た 冠 状 動 脈 病 変 の進行.高コレステローノレ血症,糖代謝異常.20本 以上の喫煙,肥満および家族歴を有するものに進行 したsegmentが多く,中でも二段階以上の進行は高 中性脂肪血症,肥満,家族歴をもつものに多くなっ ているが,有意差はみられていない. に家族歴をもつものに多くなっていたが,いずれ においても統計学的有意差はみられなかった. また.84例の中から一段階の進行例15例を除き, 二段階以上の明らかな進行がみられた48例と,不 変または改善のみられた 21例の 2群にわけて 1 人あたりが有する危険因子数を比較してみた.そ の結果,進行群が2.5/人,不変・改善群が2.3/人 と両群の聞にほとんど差はみられなかった. 考 察 冠状動脈病変の進行を診断するためには症状の 有無にかかわらず,ある一定の期聞をおいて CAG を再施行するのが理想的と思われる.だが実際に はCAG再施行が可能な例はきわめて限られてお り,特に無症状の症例については難しい場合が多 し、 今回の対象症例84例中進行例は63例 (75%) で あり.Bruschkeら2)56.3%,延吉ら 3)57%,Kramer ら4)49%といった報告と比較して高い値を示して いた.この理由として,今回の対象症例の中で経 過中無症状であった症例は22例 (26%) と,全体 267 27 の1/4にすぎなかったことがその一因と考えられ る.この点に関しては延吉ら5)やKramerら叫も無 症状の症例が少ないことが冠状動脈病変の進行例 の比率をさげることになると述べている.しかし Bruschkeら2)は256例の CAG施 行 例 に つ い て 検 討した結果,経過中の症状の変化と病変の進行の 聞には有意な相関はなかったと述べている. これ については欧米の症例には多枝障害が多く,経過 中に死亡する例も少なくないと思われ,進行例が 再施行例から脱落していることが, このような結 果となった理由の

1

っとも考えられる. また経過中無症状にもかかわらず,CAGを施行 した症例数を検討してみると, Bruschkeら2)256 例中8例 3 %,延吉ら叫4例中 15例34%,Kramer ら4)302例 中20例 7 %お よ び 今 回 の 成 績 で は84例 中22例26%と報告によりまちまちであった.従っ て無症状の症例における冠状動脈病変の進行に関 して,正確に把握することはかなり困難と思われ る. 今回の結果から進行群と改善群の観察期間を比 較してみたところ,統計学的有意差はなかったも のの,進行群に長い領向がみられた.観察期間の 延長に伴なう冠状動脈病変の進行は,加齢という 点を考慮すれば当然のことと思われる.こうした 結 果 はBruschkeら2)やKramerら4)の 報 告 に も みられ,彼らによれば,病変の進行と観察期間の 聞 に 有 意 な 相 関 が み ら れ た と し て い る . 特 に B 街ru凶1お脱s詑chkeら と初回狭窄度により規定され,初回検査時50%以 上の狭窄部位に進行が多いと述べている.しカかミし, Sh凶ubら 相関はみられず,初回検査時の狭窄度のみに規定 され, 20%以下および80%以上の狭窄部位に進行 が少ないと述べている.確かに短期間内に急激な 進行を示す症例もみられ剖この原因としては動脈 硬 化 以 外 にatheromaplaqueの ruptureや 血 栓 による閉塞が考えられている仲間.これに関して は, Kramerら11)の報告によると,観察期間中に閉 塞性病変になった部位と非閉塞性病変にとどまる 部位にわけ,後者は時間依存性であるが,前者は 時間と無関係に急激に進行するものであると述べ

(11)

28 ている.一般に加齢に伴って虚血性心疾患は増加 し,擢患冠状動脈病変数も増加するものと考えら れている.従って初回検査時の年齢が若い例ほど 進行した例の頻度が高くなるものと予想し,今回 50歳未満と50歳以上にわけて対比検討してみた が,ほとんど差は認められなかった.この点に関 してはBemisら同の報告をみても, 40歳以下の例 で冠状動脈病変の進行した症例数が多い傾向がみ られていたが,統計学的有意差はなかったと述べ ている.それに対してMarchandiseら14)は軽度 (50%以下〉の冠状動脈病変を有する45歳以下の例 で進行した症例の頻度が高くなっており, 45歳以 下を冠状動脈病変の進行に関するriskfactorの

1

っとして取り上げている.しかし彼らの報告で は45歳以下の症例が48例中16例と数が少ない点に 問題があるよこうにも思われる.またKramer ら4)は50歳未満の154例と50歳以上の148例を対比 したところ, 50歳未満の群に進行した症例が有意 に多かったと述べているが,その理由としては50 歳未満の群の方が観察期間が長くなっているため と考えているようである.しかし今回の結果では, 50歳未満 (32例〉の観察期聞が67

:

t

32カ月, 50歳 以上 (52例〉では45士25カ月と50歳未満の群で有 意

(

p

<

O

.

O

l)に観察期間が長くなっていたにもか かわらず,両群間の進行例の頻度には差が認めら れなかった.従って,更に症例数を重ねてみない と確実なことはいい難いが,若年者に進行例が多 いという諸家の報告が必ずしも観察期間の差によ るものか否かは疑問に思われる. 冠状動脈の各部位における病変の変化を検討す るため, segment別に分類し,対比検討したもの には, Palacら

1

5

L

延吉ら6)およびKramerらll)の 報告がある.これらの中からそれぞれの進行した segment数をみると, Pa叫l配aCら同は219se昭g.中4品8 s 配eg.(α22%)λ, 延 吉 ら K仁r悶ame町rら口11川}川tは主2899s田eg.中5町77s配eg.(也20%)となつ ており,今回の981seg.中224seg.(23%)とほぼ同 様の結果となっていた.また最も進行しやすかっ たsegmentはRCA近位部やLAD近位部で,さ らに対角校や鈍縁枝がそれにつづ、き,この点に関 しても今回の結果と同様の傾向がみられた.この ように,進行しやすい部位がほぼ一定している理 由として,まだ明確な説明はなされていないが, 次のようなことが考えられている.すなわち,血 流が多く,かっ乱流となっている部分に進行が多 いといわれており円冠状動脈近位部で,特に屈曲 した部分や,分枝をだす部分はこのような条件に あてはまるため,病変が進行しやすいのではない かと思われる.さらに最近では動脈硬化促進因子 の1っとして,高LDL血症が注目されており,血 流が多く,乱流をおこしている部位では,内皮細 胞と接触する LDLも多くなると思われる.この ことも病変の進行の一役を担っているかもしれな し、. また延吉ら3)によれば,初回検査時にエノレゴノ ビ ン テ ス ト を 行 な い , 進 行 例 で は24例 中18例 (75%)に陽性所見が得られ,非進行例では19例中 7例 (37%)にすぎなかったことより,冠れん縮 というものが,冠状動脈硬化を促進する因子の

1

っと述べている.確かに冠れん縮を繰り返すこと により,血管内膜の肥厚をきたし,病変の進行と とらえられるかもしれない. しかしエルゴノビン で誘発された冠れん縮が常時おこっているとも限 らず,いわゆる動脈硬化の進行とは結びつかない 面もあるように思われる. 一般に虚血性心疾患の症例の経過観察をしてい く上で,冠状動脈の狭窄性病変がどの程度進行し ていくかということに注意が払われているのが普 通であろう.今回の結果をみても,正常部分に新 たな病変が出現した頻度は18.5%'で,特に二段階 以上の明らかな進行についてみると,6.4%と非常 に少なくなっており,初回狭窄度が25%,50%, 75%といった部位に進行が多くみられていた. CAG再検査にて評価できた種々の報告をみると, 通常まったくの正常部分に新たな病変がおこるこ とは少ないといわれ, Marchandiseら14)と Kim-birisら17)は 0%

Gensiniら18)は 5

%

Kramer らll)は4%にすぎないと述べている.しかし,今回 の結果では18.5%(二段階以上の進行でも6.4%) とこれまでの報告よりやや高率となっていた.こ の点に関しては, Marchandiseら14)Kimbirisら17) Gensiniら18)の報告ではCAG所見が正常であっ

(12)

た虚血性心疾患以外の症例を対象としているため に , 進 行 例 が 少 な か っ た 可 能 性 が あ る . ま た Kramerら11)の報告と比較してみると,今回の症 例は経過中無症状であった例が少なく,こうした ことも正常部分に病変が発生した頻度が高くなっ ていた理由の

1

っとも考えられる.従って,今回 の結果によれば頻度は少ないものの,造影上は まったく正常と思われる部分にも新たな病変が発 生することもあり,特に経過中症状の増悪がみら れた例に関しては,注意深いチェックが必要と思 われる. CAGなどの観血的手段によらず,種々の非観血 的方法により,冠状動脈病変の進行の有無を判断 することは,虚血性心疾患の症例を経過観察して いく上で,きわめて重要なことと思われる.運動 負荷心電図や心臓核医学検査などの非観血的検査 法により,ある程度までは冠状動脈病変の変化を 読みとることが可能であろう.しかし,これらの 検査も自覚症状の変化に基づいて施行されること が多く,経過観察していく上では,やはり症状が 最も重要視されるものと思われる. そこで,観察期間中の症状の変化と冠状動脈病 変の進行の有無を対比検討してみた.症状の増悪 を再検の理由とする症例が

5

3

例(新規狭心症

3

5

例, 狭心症の増悪

1

8

例〉にみられ,この中で

4

8

(

9

1

%

)

が進行例となっており,かつ二段階以上の明らか な進行が

4

4

(

8

3

%

)

を占めていた.従って,経 過観察中に症状の増悪がみられた症例については 禁忌とならない限り,CAGの再検を行った方がよ いと思われる. また,経過中まったく無症状であった

2

2

例につ いて検討してみたところ,

1

0

(

4

5

%

)

が一段階 の進行

4

(

1

8

%

)

が二段階以上の明らかな進 行と一段階の進行が多くなってはいるものの,計

1

4

(

6

3

%

)

に進行がみられた. 観察期間中の症状の変化と冠状動脈病変の進行 の有無について検討した報告は少なく,特に無症 状の症例に関する病変の変化について述べている ものは, Bruschkeら2)の報告にみられるにすぎな いようである.彼らは経過中の症状の変化を無症 状 (8例〉不変 076例〉ならびに増悪 (72例〉の 29 3群にわけて進行の頻度をみたところ,それぞれ

37.5%

54.5%

および

62.5%

と無症状群における 進行例の頻度が少なくはなっていたが,他の群と の聞に統計学的有意差はなかったとしている.故 に,症状の増悪、がみられないからといって冠状動 脈病変の進行がみられないわけではなく,経過中 無症状であっても,CAG検査の適応となる症例が 存在するものと思われる.しかし,無症状群にお ける CAG再検査の適応に関しては,いまだ明確 なものはつかめず,今後の課題とすべき点であろ う. CAGの適応は心筋梗塞や狭心症などの虚血性 心疾患と確定診断の得られた症例に対してや,不 定の胸痛などのため,虚血性心疾患か否かの鑑別 診断として行なわれるのが大部分と思われる.な かでも再検査の対象となるのは,虚血性心疾患と 確定診断の得られた症例がほとんどといってよい であろう.虚血性心疾患のなかでも心筋梗塞と狭 心症とは発症機序が異なり,同時に冠状動脈病変 の進行にも相異があると考えられる.そこで今回 初回検査時診断より心筋梗塞群と狭心症群にわけ て,冠状動脈病変の進行について検討してみた. その結果,心筋梗塞群に病変の進行した症例が多 い傾向がみられ,特に経過中の症状の変化がみら れなかった群に関しては,心筋榎塞群に有意、(p<

0

.

0

5

)

に進行例が多くなっていた.この理由に関 しては明確でなく,他の報告をみてもこの点に関 して述べているものはみあたらない. 心筋梗塞例では,一度発症した後には梗塞後狭 心症もなく, 日常生活においても何ら自覚症状が なく経過している例が多数みられる.だが,こう した症例の中にも非梗塞部を支配する冠状動脈病 変が進行し,突然に致死的再梗塞を発症すること もしばしば経験するところであろう19)20) このた め,心筋梗塞例では経過中の症状とは無関係に注 意深い観察と定期的チェックが必要ではないかと 思われる. いわゆる冠危険因子といわれるものには,今回 ここでとりあけやた高脂血症,糖代謝異常,高血圧, 喫煙,家族歴ならびに肥満に加えて,加齢,性差 (男性),運動不足,性格が挙げられている21) 性差

(13)

-269-30 に関しては女性が84例中2例しか含まれず,対比 検討に値しないと判断し除外した.また運動療法 の有無や性格については一部患者との面接を行な い.その内容について把握しようと努めたが,こ れも症例数が少なく除外した.Nashら制お)は冠状 動脈病変の進行には冠危険因子,特に高脂血症, あるいは高脂血症と他の因子の合併が関与してい るとしている.また Bemisら12)は高脂血症と糖代 謝異常が冠状動脈病変の進行と有意な関係にあっ たとしている.それに対して今回検討した7頃目 のうち,糖代謝異常,高血圧,喫煙,肥満および 家族歴をもっ群に,二段階以上の明らかな進行を 示した症例が多くみられたが統計学的有意差は認 められなかった.また,同一症例において,複数 のsegmentで病変が進行する可能性も考えられ たため,各segment別に冠危険因子の有無と病変 の変化を比較検討してみた.その結果,高血圧を 除く他の

6

つの群で明らかな進行例が多い傾向が みられたものの,統計学的有意差はなかった.ま た1つ 1つの冠危険因子のみならず,し、くつかを 重なりあってもっている症例の方に進行例が多い 可能性があると考え 1人あたりが有する冠危険 因子数と病変の進行の有無について検討してみた が, これに関しても特に差は認められなかった. 従って,冠危険因子と冠状動脈病変の進行との聞 には因果関係はみられず,こうした結果は Mar-chandiseら5)Palacら13)Bruschkeら2)Shubら8)お

よびKramerら6)の 報 告 と 一 致 す る も の で あ っ た.以上より,いわゆる冠危険因子といわれてい るものは,虚血性心疾愚の発症というところでは 関係し,その除去がprimarypreventionとして有 効である可能性は否定できない.しかし,一度虚 血性心疾患として発症した症例に対してのseco・ dary preventionとしての有効性は疑問である. この点に関しては, Bruschkeら2)は

CAG

再検査 までの期聞が短かし、と考えている.確かに今回の 結果をみても,

CAG

再検査までの期聞が平均

4

年 3カ月となっており, これは冠危険因子が狭窄性 病変の形成に関与していくには短かすぎるかもし れない.しかし,観察期間が長く,多くの冠危険 因子をもっ症例でも非進行例が多数あり,必ずし も時間的問題とは限らないようである.この点に 関しては,今後さらに検討を必要とすると思われ る 結 王五 ロロ 1)昭和45年4月より同58年3月までの13年 間 に 1年以上の期間において冠状動脈造影の再検 査を施行し得た84例を対象として,冠状動脈病変 の経年的変化と臨床像について対比検討を行なっ た 2)冠状動脈病変の明らかな進行はseg.1, 2と いった

RCA

近位部やseg.6, 9などの

LAD

近位 部や対角枝に多くみられた. 3)冠状動脈病変の進行は,初回検査時25%以上 の狭窄性病変をもっ部分に多く,壁不整もなく, まったく正常と思われる部分での進行は少なく なっていた 4) 経過中,症状の増悪がみられた例では大部分 で明らかな冠状動脈病変の進行が認められた. 5)狭心症群に比較して,心筋梗塞群では病変が 進行した症例が多く,特に経過中無症状であった にもかかわらず,進行した例が多くなっていた. 6) 冠危険因子と病変の進行との聞には有意な 関係は認められなかった. 本稿を終るにあたり,御懇篤なる御校閲,御指導を 頂きました震津弘七郎教授に深謝申し上げます.また 多大なる御協力を頂きました鈴木紳先生ならびに 教室員の先生方,聖隷浜松病院井上康夫先生,仙台循 環器病センタ一宮沢佑三先生に厚く御礼申し上げま す. 文 献 1)Austen, W.G., et al.: A reporting system on patients evaluated for coronary artery disease. Circulation 51 N ews from the American Heart Association, 5-40. 2)Bruschke, A. V., et al.: The anatomical evolution of coronary arteηdisease demon田 strated by coronary arteriography in 256 nonoperated patients. Circulation 63(3) 527 -536 (1981) 3)Nobuyoshi

M.

et al.: Coronary arterial spasm could be a risk factor of coronary ather -osclerosis? Circulation 66(4) II -247 (1982) 4)Kramer

J.R.

et al.: Progression and re

(14)

-gression of coronary atherosclerosis: Relation to risk factors. A m Heart J 105(1)

134-144 (1983) 5) Nobuyoshi

M.

et aI.: Studies on the pro -gression and regression of coronary artery disease by coronary angiography. Angiology 21(7)807-809 (1981)(In Japanese) 6) N obuyoshi, M., et aI.: Studies on the pro -gression of coronary artery disease by coronar y angiography. Shinzo 12(5) 496-502 (1980) (In Japanese). 7)Shub, C., et al.: The unpredictable progres -sion of symptomatic coronary artery disease. A serial clinical-angiographic analysis. Mayo Clin Proc 56 155-160 (1981) 8) Kimbiris, D., et al.: Rapid progression of coronary stenosis in patients with unstable angina pectoris selected for coronary angio -plasty. Cathet Cardiovasc Diag 10 101-114 (1984)

9) Netter

F.H.: The heart.CIBA

New York (1978) 212-214, (The CIBA collection of medi -cal illustrations 5) 10) Rindolfi, P.L., et al.: The relationship bet ween coronary artery lesions and myocardial infarcts: U1ceration of atherosclerotic plaques precipitating coronary thrombosis. Am Heart J 93(4) 468-486 (1977) 11) Kramer

J.R.

et al.: Segmental analysis of the rate of progression in patients with pro -gressive coronaηT atherosclerosis. Am Heart J 106(6) 1427 -1431 (1983) 12) Chapmann, 1., et al.: Morphogenesis of oc -cluding coronary artery thrombosis. Arch Path 80256-261 (1965) 13) Bemis

C.E.

et al.: Progression of coronary artery disease : A clinical angiographic study Circulation 47 455-464 (1973) 14) Marchandise, B.M.G., et al.: Angiographic -271 31 evaluation of the natural history of normal coronary arteries and mild coronary atheros -clerosis. Am J Cardiol 41 216-220 (1978) 15) Palac

R.T.

et al.: Progression of coronary artery disease in medically and surgically treated patients 5 years after randamization. Circulation 64(SupplII)11 17 -11 21 (1981) 16) Vlodaver

Z.

et al.: Pathology of coronary atherosc1erosis. Prog Cardiovasc Dis 14 256-274 (1971)

17) Kimbiris, D., et al.: Coronary disease pro -gression in patients with and without sa -phenous vein bypass surgery. A m Heart J 102(4)811-818 (1981) 18) Gensini, G.G., et al.: Natural history of cor -onary disease in patients with and without coronary bypass graft surgery. Circulation 49,50(SupplII)II98-II102 (1974) 19) Suzuki, S., et al.: N atural history of 120 patients who had suffered from myocardial infarction and who underwent coronary angio -graphy and left ventriculography. Kokyu to Junkan 32(1)65-70 (1984)(In Japanese),

20) Suz叫d

S.

et al.: Relationship between pro司

gression of coronary atherosclerosis and prognosis. Coronary 1(2) 215-222 (1984)(In Japanese)

21)AHA Committee Report: Risk factors and coronary disease. A statement for physicians. Circulation 62(2) 449A -455A (1980) 22) Nash

D.T.

et al.: Accelerated coronary artery disease arteriographically proved. Anal -ysis of risk factors. NY State J Med 74 947 -950 (1974) 23) Nash, D.T., et al.: The eryscichthon syndrome. Progression of coronary atheroscler -osis and dietary hyperlipidemia. Circulation 56(3) 363-365 (1977)

表 1 (一)→(+) 増 震 1 ( + ) → 川 。 1 0  2 0  3 0  11%  2 5 40例口 不 変函 一 段 階 の 進 行. ニ 段 階 以 上 の 進 行 図 1 0 症状の変化と冠状動脈病変の進行.症状増悪群に明らかな進行例が多くみられ る

参照

関連したドキュメント

 狭心症や心筋梗塞のような虚血性心疾患は、死亡原因の中でも常に上位

入院後経過 ;下肢痛,皮膚の網状皮斑,末梢動 脈触知可能より Bl ue Toe症候群と診断しプロス タグランジン製剤の静脈内投与を開始した.第

虚血性心疾患=冠動脈疾患

Aさん、 45

第4章−25 第3節 心筋梗塞等の心血管疾患 1 現状と課題 1.現状

脳梗塞と心筋梗塞の同時期発症

病変は MDCT で1 2 CAGで拡大または瘤とした13 病変が観察できた. さらに MDCT では CAGで判別

から起始する冠状動脈奇形の走行を解剖学的特徴 を加味して記載することが可能であった,