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帯状疱疹後神経痛50例の臨床的検討

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Academic year: 2021

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72 臨床報告 〔東女医大誌 第64巻 第3号頁254∼257平成6年3月〕

帯状禁野後神経痛50例の臨床的検討

 東京女子医科大学 附属第二病院麻酔科 フルヤ  ユキオ   コバヤシ       タチバナ  チァキ

古谷 幸雄・小林なぎさ・立花 千秋、

サイトゥ  ケイコ  オォェ  ヨゥコ

佐藤 啓子・大江 容子

(受付 平成5年11月9日) The Clinical Sttldy of 50 Cases on Post・herpetic Neuralgia Yukio FURUYA, Nagisa KOBAYASHI, Chiaki TACHIBANA,         Keiko SATOH and Yoko OHE Department of Anesthesiology, Tokyo Women’s Medical College Daini Hospital   We have experienced 50 patients on post−herpetic neuralgia(PHN)in 3 years since Pain Clinic was established in our department. The clinical results were studied as to symptom, innervation, therapeutic method and result, and so on。 Then, nerve block therapy was confirmed to be an effective therapeutic method on PHN.   The relationship between the effect of treatment and the length of period was studied on PHN. The effect of treatment in each nerve block was better, the length of period was shorter. The relationship between the length of period and the final result was studied on PHN。 The final result was better, the length of period was shorter. As for 17 patients, herpetic eruption was rapidly treated, but herpetic pain was not so treated.   In conclusion, nerve block therapy such as stellate ganglion block or epidural block should to be started as soon as possible on PHN.          緒  言  帯状庖疹後神経痛(PHN)はペインクリニック の重要疾患である.当科においては,ペインクリ ニック開設後3年間に50例を経験したので,その 臨床成績について検討を加えた.          対  象  対象症例の内訳は表1に示す.性別は男性17例, 女性33例で女性が多く,年齢は32∼87歳,平均67.4 歳で高齢者が多かった.依頼科別にみると,院内 依頼が39例(78%),院外紹介が11例(22%)であ り,そのうち35例は皮膚科依頼であった.外来入 院別にみると,外来患者が33例(66%),皮膚科入 院患者が17例(34%)であった.主要合併症は全 例中22例(44%)にみられ,高血圧,狭心症,糖 尿病などが多かった.          結  果

 1.PHNの臨床症状

 主訴とした落痛部位からみると,頭部顔面痛11 例,肩部上肢痛6例,胸部腹部痛24例,腰部下肢 痛9例であり,胸部腹部痛がもっとも多かったが, 全身に分布していることが知られた.終痛の左右 部位では,左:右25例ずつ同数にみられた.初診時 の落痛程度については,軽痛2例,強痛25例,激 痛23例であり,多くの患者が著しい落痛を訴えて 来診することが知られた.初診時に聴取した発症 時期については,皮疹が一応改善した後に紹介さ れた患者が多く,1ヵ月以内26例,6ヵ月以内15

例,1年以内3例,1年以上6例であり,半数の

患者は発症後1ヵ月以内に来診することが知られ た. 一254一

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73 表1 当科における帯状庖疹後神経痛の検討    50例(1990∼1992年)の内訳 性別 年齢 依頼科別 外来入院別 主要合併症 男性 17例 女性 33例 32∼87歳 平均 67.4歳 院内依頼  皮膚科  その他 院外紹介 外来患者 入院患者 高血圧 狭心症 糖尿病 脳卒中 その他 39イ列(78%)  35例   4例 11イ列(22%)   33例(66%)   17例(34%) 22イ 唖/50イ列(44%)     5例     4例     5例     2例     6例

 2.PHNの神経領域

 診断された神経支配領域からみると,三叉神経 114列, 頸ネ申経6イ列, 胸ネ申経28イ列, 腰率申経3{列, イ山 骨神経2例であり,三叉神経と胸神経がもっとも 多かったが,全身に分布していることが知られた. 三叉神経ではV、6例,V24例, V31例であり,頸 神経ではC2∼C41例,C5∼C85例,胸神経ではT1 ∼T612例, T7∼T1216例,腰神経ではし1∼L53 例,仙骨神経Sl∼S52例であった.

 3.PHNの治療方法

 治療方法に関しては,各種の神経ブロック法が 併用された.硬膜外ブロック(EDB)が29例(58%) でもっとも多く行われた.そのうち1回注入法が 19例,カテーテルを使用した持続注入法が10例行 われた.次いで星状神経節ブロック(SGB)が14 例(28%)でかなり行われた.そのうちSGB単独 が9例,その他ブロック併用が5例行われた.そ のほか三叉神経ブロックが3例,肋間神経プロッ が4例行われた.治療回数をみると,SGBでは総 回数403回,1例平均28.8回,三叉神経ブロックは 総回数17回,1例平均5.7回,肋間神経ブロックは 総回数22回,1例平均5.5回,またEDBでは総回 数328回,1例平均11.3回であった.

 4。PHNの治療成績

 治療成績に関しては,検討すべき問題が多かっ た.これは評価が難しいが,自覚症状によるほか ない.各回平均の神経ブロックによる治療効果を 著効(4∼5日間有効),有効(2∼3日間有効), 無効(0∼1日間有効)と仮定すると,著効16例, 有効3Q例,無効4例であり,合計46例(92%)の 症例で毎回奏効していることが知られた.神経ブ ロックの治療期間をみると,1ヵ月以内22例,6

ヵ月以内18例,1年以内6例,1年以上4例であ

り,多くの患者が治療を1ヵ月以内に終了するこ とが知られた.神経ブロックの最終成績としては, 全治2例,略治14例,軽快24例,不変10例であり, 治療効果 (各回平均) 無効 (0∼1日) 有効 (2∼3日) 著効 (4∼5日) = ● ’ ii…… 3 ’ ● ’ ● 3  3 ●…●… 3  3 ●     ・ …… 3 葛   0  1  2  3  4  5  6    工2月∼       治療期闇 図1 PHNの治療効果と治療期間(50例) 最終成績  不変 軽性 飾臼 全治 i… ● ’ :

:iii

 =  ・ ●     ●     ●     ●

… i3

●     ● ●     ● …● 3 … ● 一255   0  1  2  3  4  5  6    12月∼       治療期間 図2 PHNの治療期間と最終成績(50例)

(3)

74 合計40例(80%)の症例で概ね満足すべき成績を 得ていることが確認された.

 PHNの治療効果と治療期間の関係を図1に示

す.全般的に各平均の治療効果が良好なほど治療 期間が短く,大部分の症例は3カ,月以内に改善さ れたが,6ヵ月以上を要した症例も10例に認めら れた.またPHNの治療期間と最終成績の関係を 図2に示す.全般的に最終成績が良好なほど治療 期間が短く,大部分の症例は3ヵ月以内に改善さ れたが,3ヵ月以内に治療を中止した症例も10例 に認められた.  5.帯状疸疹の入院患者  皮膚科から依頼された入院患者17例の内訳は表 2に示す.臨床症状および神経支配領域は全身に 分布していることが知られた.発症時期は平均6.7 日前であり,始めの入院期間は平均12.5日,その 後の通院期間は平均8.5週であった.入院期間中 は,薬物療法としてビダラビンあるいはアシクロ ビルが持続投与され,皮疹はかなり早急に改善し 表2 帯状庖疹の入院患者(17例) 臨床症状 神経領域 発症時期 入院期間 通院期間 薬物療法 顔面言 上肢痛 胸部痛 腹部痛 下肢痛 三叉神経(V1,2β) 頸神経(C2∼8) 胸神経(TH2) 腰神経(L、一,) 仙骨神経(S、一5)   平均6.7日前   平均12.5日   平均8.5週 目ダラビン アシクロビル 神経ブロック療法 治療成績 4例 2例 7例 2例 2例 4例 2例 8例 1例 2例 9例 8例 星状神経節ブロック  7例 硬膜外ブロック    10例 全治 難治 軽快 不変 1例 6例 7例 3例 たが,しかし癖痛はそれほど軽減しないため,麻 酔科に依頼されたわけである.神経ブロック療法

としては,SGBを連日施行した7例とEDBを持

続注入で施行した10例に分けられた.最終の治療 成績では,全治1例,略治6例,軽快7例,不変 3例であり,合計14例(82%)に改善が認められ た.          考  察  帯状痕疹後神経痛(PHN)はペインクリニック で扱う重要疾患の一つである.その頻度は報告者 によりさまざまであるが,著者ら1)は当科におけ

るペインクリニックで,PHNがもっとも多く

30%を占めることを報告した.そこで今回は,そ の50例の臨床成績について検討を加えた.  帯状庖疹(HZ)は,水痘・帯状直心ウイルス (VZV)の初感染である水痘に感染した後,ウイル スが神経節に潜伏し,老齢化などによる免疫能の 低下が原因で,そのウイルスが再活性化した場合 に,発症する疾患である.HZは,その神経領域に 一致して,皮疹および心痛を伴うことが特徴であ る.またPHNは, HZの発症後から持続する頑固 な神経痛をいう.しかし,PHNの定義には多くの 議論がみられる.例えば若杉2)は,皮・乱発生後1カ 月までを帯状一二痛,1∼6ヵ月を帯状二心眼痛,

6ヵ月後からをPHNとすることを提唱してい

る.一般的には,皮疹治癒後に痛みが残った場 合3),あるいは発症1ヵ月以降も痛みが続く場 合4),PHNとする定義が多いようである.その意 味では,著者らの症例の半数は帯状庖疹と呼ぶべ きであろう.

 HZおよびPHNは,高齢者に多いことがよく

知られており,同時に合併症を伴う患者が多いと

いわれる.HZからPHNに移行する症例の頻度

は,報告者により異なり,103)∼504)%とさまざま である.著者らの成績では,平均年齢が67.4歳で あり,重要な合併症が44%にみられ,また厳密な 定義によるPHNが18%に認められた.しかし,免 疫能の低下に重大な関係があると考えられる症例 は,ほとんどみられなかった5>.

 HZおよびPHNの臨床症状は,かなり特徴的

な相異を示す.HZは急性症状で,神経領域に一致 一256一

(4)

75 して皮疹を発生し,知覚過敏と局所癒痛を伴うが, 神経破壊は考えられない.それに対して,PHNは 慢性症状で,皮疹は消槌しているが,神経領域に 一致して知覚低下と神経痛を伴い,神経破壊が考 えられる.したがって,PHNの頑固な癖痛は求心 路遮断痛(deafferentation pain)と考えられてい る6).Tasker7)たよれぽ,求心路遮断痛の原因とな る基礎疾患のうち,PHNは11%を占めるという.  発症部位である神経支配領域は,多数の神経節 がある胸髄に多いのは当然であり,個々の神経節 としては三叉神経のとくに第1枝に多いといわれ ている3).著者らの症例でも同じ傾向がみられた. また,発症部位が両側性あるいは多発性にみられ る場合は,極めて少ないといわれる.

 HZおよびPHNの治療方法に関しては,各種

の神経ブロック法が現在の主流である.Colding8) は,始めてHZに対する交感神経ブロックの治療

効果を検討し,HZ発症2週以内に交感神経ブ

ロックを開始した対象の85%に鎮;痛効果が現れた ことから,交感神経ブロックは早期から実施され れば効果的であることを臨床的に推論した.例え ば檀4)は,HZおよびPHNの1,000例について神

経ブロック法の成績を検討し,SGBやEDBによ

る神経ブロック治療後の残心度10%以内の症例 は,発症2週以内では96.7%,3ヵ月以内では 73.1%,3ヵ月以上では23.0%であったと報告し ている.多くの報告を見ても,早期神経ブロック 療法がよりよい効果をあげているように思われ る.しかし,発症年齢が高く初診時皮膚知覚異常 が認められれぽ,治療期間が著しく遷延するとい う報告9)も見られる.著者らの成績では,PHNの 治療効果と治療期間,治療期間と最終成績の間に, それぞれ明確な関連が認められた.

 急性期のHZ患者は一般に皮膚科に入院する

場合が多い.最近はVZVに対する抗ウイルス薬 が繁用され,皮疹はかなり早急に改善するように なった3).しかし落痛はそれほど軽減しないため, 麻酔科依頼となる場合が多い.神経ブロック法と しては,三叉神経痛に対しSGB,脊髄神経痛に対 しEDB,その他の方法が併用される.SGBは連日 施行できるが,EDBは持続注入が有利である.連 続的硬膜外ブロックは携帯用持続注入器(ニプ ロ・シュアフユーザー,バクスター・インフユー ザー)に局所麻酔薬を充填して用いる10).著者ら は,0.25%ブビバカイン50ml/5日間を用い,良好 な成績を得ている.          結  論  当科においてペインクリニック開設3年間に経 験したPHN 50例の臨床成績について検討を加 え,神経ブロック療法は有効な治療法であること が確認された.          文  献  1)古谷幸雄,小林なぎさ,立花千秋ほか:ペインク    リニック163例の臨床的検討.東女医大誌   64(1) :86−89, 1994  2)若杉文吉:帯状庖疹後神経痛の定義について.ペ   インクリニック 11:125,1990  3)新村真人:帯状癒疹.「水病・帯状萢疹」(高橋理   明,新村真人編)pp27−36,メジカルトリビューン,   東京(1987)  4)檀健次郎:帯状庖疹の痛みの治療.臨床麻酔   13:1317−1325, 1989  5)蓮見謙司,宮崎東洋:偶発症を有した急性帯状雲   疹の予後.ペインクリニック 6:163−167,1985  6)横田敏勝:臨床医のための痛みのメカニズム.   pp136−146,南江堂,東京(1990)  7)Tasker RR: Deafferentation.動Textbook of   Pain(Wall PD, Melzack R eds), pp119−132,   Churchill−Livingstone, Edinburgh(1984)  8)Colding A:The effect of regional sympa・   thetic blocks in the treatment of Herpes Zoster.   Acta Anaesth Scand 13:133−142,1969  9)塩谷正弘:帯状庖疹痛の予測因子.麻酔 36:   771−777, 1987  10)真鍋治彦,檀健次郎:連続的硬膜外ブロックによ   る急性帯状抱疹痛の治療.ペインクリニック   13:789−794, 1992 一257一

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