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免疫抑制薬剤の使用法 ―腎移植免疫抑制療法における TDM―

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Academic year: 2021

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はじめに

治療薬物濃度モニタリング( : )は 薬物の標的臓器内濃度の代用として血中 濃度を測定し その結果に基づき投与量を決定することにより 有効な治療効果と副作用の回避を目的としてい る。 の成立必要条件には ) 体内濃度の個体間差が大きい ) 血中濃度と臨床効果に関連性がある ) 治療血中濃度域が狭い ) 薬理効果の有効な手段がない などがあげられる。 臓器移植領域においても免疫抑制剤の は ここ 年の間に著しい変貌を示した。 年代のプレドニ ゾロン( )とアザチオプリン( )を主体とした臓器移植免疫抑制療法においては は必要とされなかっ た。しかし 年代の初頭に出現した現在の臓器移植成績の向上の先駆けとなったシクロスポリン( )の導 入とともに 免疫抑制剤の が始まった。その後も のマイクロエマルジョン製剤( - ) タクロリ ムス( ) そしてミコフェノール酸モフェチル( )などの新たな免疫抑制剤の出現は 作用機序の異なる 薬剤の組み合わせによる免疫学的相乗効果や副作用の軽減を目的とした多剤併用療法を可能とし さらに の重要性が増してきた。 特に や などのカルシニュリン阻害剤( )は その狭い治療濃度域と個体間のみならず 個体内で の生物学的利用能( )の大きなバラツキから いわゆる投与量決定困難薬剤( - )と して の必要性が提唱されている。経口投与後の の変動は 肝臓のみならず腸管上皮にも存 在する アイソザイム系( )の迅速な代謝によるものである。それらを基質とする薬 物間での薬物相互作用が多く認められている。さらに 消化管粘膜に存在する 糖蛋白は 薬物を管腔側に排 出し 薬物の吸収を制御し に関与している。また 従来は などの代謝拮抗剤は を必要 としないとされてきたが 近年新たに出現した代謝拮抗剤 特に においては 個体間の の 変動が大きいことや併用薬剤である との薬剤相互作用が報告されており の必要性が提唱されている。 本稿では 代表的な免疫抑制剤として から と の を紹介し そして代謝拮抗剤からは の についての新しい知見を紹介する。

シクロスポリン(

)

免疫抑制剤の は のトラフ値( )をパラメータとして始まった。しかし と薬剤の 曝露量を意 味する ( 曲線下面積: )との相関性が乏しく 結果としての は 曝露あ 説 腎移植シリーズ

免疫抑制薬剤の 用法

―腎移植免疫抑制療法における

名古屋第二赤十字病院腎臓病 合医療センター外科

打 田 和 治

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るいは臨床効果に対する良い指標ではなかった。経口吸収の不安定な従来の 製剤(サンディミュン )を改良 し マイクロエマルジョン化した 製剤(ネオーラル )が開発された。ネオーラル の出現により 体内の薬 物動態は安定化し その結果として個体内 個体間変動の少ない が得られるようになった。 このより安定化した の体内動態を背景に より信頼性の高い薬物動態パラメータを求めて検討が行われ た。その結果 濃度の個体内および個体間変動は内服後 ∼ 時間目が大きく また その時期の血中濃度 が臨床効果とより相関があること また の 細胞カルシニュリン阻害作用は内服後の ∼ 時間の 血中濃度によく相関すること などにより 内服後 ∼ 時間の十 な 濃度が臨床的に最も重要であること が示された。 は 曝露量を正確に捉え パラメータとしてゴールド・スタンダードではある が 時間に及ぶ 採血時間 ∼ 回の採血数とコストなどを 慮に入れると実際的ではない。そのため 内服後 時間までの曝 露量を示す (薬剤投与間隔内で変動が最も大きいため)が第 のパラメータとして提唱された 。しか し 回の採血回数も多いと 採血サンプル数を ∼ 回に減らした簡易 も紹介されたが その採血 の煩雑さと費用の面から 世界的には広く利用されていない 。 さらに より簡 さを求めいわゆる モニタリング( )といわれる内服後 時間目だけの単回の 濃度採 血による第 のモニタリングが提唱された 。 は と比べ とかなり有意な相関があり ひいて は とも良い相関が認められた。しかし は血中濃度が最も変化する時間帯のポイントであり 内服 後 時間の採血を厳密に行う必要がある。採血時間のわずかな時間のずれが大きな濃度変化の違いを生ずる恐れ があり 患者とともに採血スタッフの管理指導が重要となる。また 一般的には の は の ∼ 後であるが 内服後 ∼ 時間にずれ込む症例を少なからず経験する。このため 常に モニタリングの解釈 には注意を払うべきである。 臨床上判断に悩む症例(異常な低 値が得られた場合など)の場合 の測定は補助パラメータとして 有益である。特に 吸収遅 ( 曝露は正常であるが が遅い)と 吸収不良( 低曝露)の鑑別に 有効である。 吸収遅 の場合 モニタリングに忠実に従うと計算上 投与量は過剰傾向となる。欧米と 異なり 施設当たりの症例数の少ないわが国においては モニタリングよりきめ細かく しかし通常 回の サンプル数を ∼ 回に減らした簡易 モニタリングが多く行われている。 血中濃度採血時間だけではなく 移植後時期に合わせた目標血中濃度の見直しも目下検討されている。 ( - )と称する企業指導の多施設間 前向き研 究が行われている。目標 濃度を移植早期は高くし その後濃度を漸次減少する設定である(∼術後 カ月; ∼ / ∼術後 カ月; ∼ / ∼術後 カ月; ∼ / ∼術後 カ月; ∼ / と ∼ / の 群 ∼術 後 カ 月; ∼ / と ∼ / の 群)。中間報告によれば 例の腎移植後 カ月の腎生検で確認された急性拒絶反応は ( 例の即時腎 機能発現例中 例の遷 腎機能発現例中 )であった。術後 カ目の 投与量は 群( ± / )に対して 群( ± / )と 群の投与量が多かったにもかかわらず 血圧 腎機能 高脂血症 などの有害事象は に少なかったと報告している 。

タクロリムス(

)

と の構造は非常に異なるが 作用機序はよく似ている。細胞内の と結合しカルシニュリン活 性を阻害する。しかし の免疫抑制能は の ∼ 倍あり 治療濃度での の 全血濃度は の

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全血濃度の 倍に相当する。 は と同様に は不良 かつ個体内・個体間変動も大 そし て 治療濃度域も狭いが 管理は比較的容易であるとされている。しかし これは先に導入された の の経験によることが大であるかもしれない。 モニタリングが 曝露( )の指標として通常のモニタリングのパラメータとして十 なのか あ るいは免疫能と副作用の指標となりうるかについてはいまだ議論が多い。また と同様に時期の異なる採血 ポイント( ∼ )あるいは による との良好な相関関係を認めた報告もある 。 米国多施設 腎移植グループによる多施設非盲検試験では 初回腎移植 例に対し 全血 濃度 を 群に け検討した(低; ∼ / 中; ∼ / 高; ∼ / )。急性拒絶反応と有害事象の 発現頻度は 低・中・高濃度群において それぞれ ( = )と ( = )で あり 低濃度群で急性拒絶反応の発現率は高いものの統計的に有意差はなかったが 有害事象は が高いほど 有意に高率に発現した。また ロジスティック回帰 析により拒絶反応出現 日以内の最小 値と有害事象発 現 日以内の最高 値を解析し 目標 値は ∼ / の範囲において 急性拒絶反応を的確に抑え か つ有害事象を最少にできるとした 。また / 研究や各国の 移植施設の調査から 腎移植後の目標 値を移植後 カ月以内の早期は ∼ / 維持期は ∼ / とするように推奨している 。 における と との相関は より良好であるが においても と同様に をモニタリングすることにより さらに的確な を得る試みもある。

ミコフェノール酸モフェチル(

)

初期の 常人や維持期での腎移植患者の検討結果から得られた個体内および個体間変動が少ない( ; と )との情報に基づいて 現在 ほとんどの施設では固定用量の投与レジメを採用している。しかし 現在 推奨されている 投与法である固定用量の /日の妥当性は の つの代表的な多施設臨床試験にお いても証明されていない 。すなわち /日投与群は /日投与群に比べ急性拒絶反応の発現率および程度 は低かったが 忍容性の点で劣っていた。個々の症例に応じた適切な投与量のレジメを確立することにより治療 成績が向上する可能性はあると えられる。 現在までの代表的な腎移植における の研究報告を列挙する。 ら は 例の腎移植患者( 併用 )の術後第 週の ポイント (ミコ フェノール酸) (術後 ∼ 日 法)と術後 カ月以内の急性拒絶反応と副作用をレトログレイドに評 価した。 は 急性拒絶反応陽性群の ± μ ・ / に対して急性拒絶反応陰性群は ± μ ・ / と有意差が認められた( = )。 が μ ・ / 以上の 例中 例( )に急性拒絶反 応がなく 残りの 例の μ ・ / 未満の患者の急性拒絶反応の頻度は であった。一方 例の胃腸障 害例の は ± μ ・ / であり 実発現例の ± μ ・ / と比べ有意に低かった( = )。 ら は 例の腎移植患者( 併用 )の トラフ値(術後 カ月以内に 平 ± 回測定/患者 法)と術後 カ月以内の急性拒絶反応( 例; ) 感染症の発現をレトログ レイドに評価した。急性拒絶反応陽性群の トラフ値は ± μ / であり 急性拒絶反応陰性群の ± μ / に比べ有意に低かった( < )。一方 目標トラフ値が設定されている トラフ値には両 群の有意差はなかった。 トラフ値と感染症とには有意な関連は認められていない。著者らは 急性拒絶反 応の予防として トラフ値の治療域 ∼ μ / を推奨している。

(4)

ら は 多施設無作為二重盲検血漿濃度コントロールを 例の腎移植患者に行い 急性拒絶反 応予防のための 経口投与の忍容性および有効性を検討した。 目標値を および μ ・ / の 群に設定し 術後 カ月に 回の体内動態測定を行った。生検確認急性拒絶反応の発現率は の低・中・高値群のそれぞれ および であり 有害事象による治験離脱率はそれぞれ同様に および であった。 およびトラフ値は生検確認急性拒絶反応と有意な相関を示し 一方 投与量は有害事象の発現率と有意な相関を示したと報告している。 ら は 投与の 例の腎移植患者を 術後 年において を /日に変 し その後 カ月毎に を /日 /日に減量するプロスペクティブ試験を行った。 トラフ値は それぞれ平 μ / ( ∼ ) 平 μ / ( ∼ ) そして平 μ / ( ∼ )と有意に減 少した。急性拒絶反応は /日までの減量は発現しなかったが /日の減量後 例に出現した。し かし 急性拒絶反応例の トラフ値は平 μ / ( ∼ )に対し 急性拒絶反応未発現例は平 μ / ( ∼ )であり有意差はなかった( = )。 ら は 小児腎移植において と トラフ値がともに急性拒絶反応の予防に関係して いたが のほうが勝っていたと報告している。また > ・ / そしてトラフ値> / であれば 急性拒絶反応はそれぞれ から から に減少した。また のトラフ値は と相関が不良であった(= )が 簡易 は と満足できる相関を示し 臨床応用の良い指標であると 推論している。 ら は 腎移植患者 例の 回の トラフ値において 投与量 トラフ値と有害事象 をレトロスペクティブに検討している。 投与量は トラフ値あるいは臨床所見に従い および /日に減量されている(治療域設定は不明)。有害事象は 例に出現した( 感染; 肺炎; 尿路 感染; および帯状疱疹・感染性血腫・膵炎・白血球減少;各 )。有害事象発現群と実発現群の トラフ値 は ± μ / 対 ± μ / と有意差はあったが( < ) 投与量には有意差はなかった( ± /日 対 ± /日 > )。 ら は 例の腎移植患者[ ( ) および /日併用療法] の術後 カ月間の有害事象と 濃度の関係を報告している。 例に 回の有害事象が発生した(白血球減 少; 血; 下痢; 食道炎; 血小板減少; )。平 は 有害事象群が ± μ ・ / に対して非発現群 ± μ ・ / ( = )と有意差があったが トラフ値には有意差はなく( 対 μ / ) 内服後 濃度( )は有意に高値であった( 対 μ / )。 これらの臨床試験の成績からみて 急性拒絶反応のリスク評価には が有益であるが トラフ 値と の相関は不良であることが一般に認められるようになった。しかし ( 時間=投与間)測定と してすべての血液サンプルを採取することは日常臨床の場においては不可能であり ∼ ポイントのサンプル から を推測する簡易法が最近推奨されている(例; ( ) )。 一方 濃度と有害事象における臨床的な有益性については議論が多い。 ら の報告では 胃腸障 害例の は 未発現群と比べ有意に低いとしている。これは 吸収が不良であるほど( ト ラフ値が低い) 未吸収の が局所の胃腸障害を惹起することが えられる。 ら のような二重 盲検試験において(治療濃度に従い投与量を決定) 有害事象と 投与量がより有意差をもって相関してい る理由かもしれない。しかし ら の異なる報告も興味深い。いまだ有害事象を起こさない許容(閾値) 投与量 あるいはトラフ値についての十 な解明がされておらず この領域での なる研究が待たれる。 と他の免疫抑制剤( )との薬剤相互作用が報告されている。 併用時の は 併用時

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と比べ高値を示すこと あるいは 投与中止後に 濃度が上昇することが報告されている。その機序と して は肝から胆汁への の排出阻害を起こすが は阻害せず 結果として → の腸肝 循環により 濃度が再上昇するためと えられる。また は -グルクロノシルトランスフェラーゼ ( )を阻害し 濃度の上昇を起こすことも えられている 。

まとめ

われわれは すでに免疫抑制剤 の有益性と必要性を豊富な の経験を通して実感している。また 新 しい免疫抑制剤の においても 現在推奨されている固定用量と 濃度に基づく投与量との国際間の多 施設前向き比較研究が進行中である。個々の免疫能に応じたテーラーメイドの免疫抑制療法を目指すには 従来 の個々の薬剤ごとの ではなく 他剤との併用を念頭に置いた統合 の確立が必須となるであろう。 文 献 ( ) ; ( ): -( ) ; ( ): -: ( ) ; ( ): -( ) ; ( ): -: ( ) ( ) ; ( ): -( ) ; ( ): -( ) ; ( ): -: ( ) ; ( ): -: ( ) ; ( ): -( ) ; ( ): -( ) ; ( ): -( ) - ( ) ; ( ): -( ) ( ) ; ( ): -: - -( ) ; ( ): -- : ( ) ; ( ):

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