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博士(法学)畢 英達 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(法学)畢   英達 学位論文題名

「共謀共同正犯」に関する試論

一 日 中 両 国 の 共 犯 理 論 に 即 し て 一

学位論文内容の要旨

  本 諭文 は、 その 序で 論述 し たよ うに 、日 本に おいて 今日までなお議論の帰趨が見えない「

共謀 共同 正犯 」の 意味 での 「 共謀 者」 を、 如何 に処罰 すべきかという問題にっいて、日中両 国の 共犯 理論 に即 して 、そ の 解決 のた めの 新し い糸口 を得ることを目的としたものである。

本稿は四っの章から構成されており、その 要旨は次の通りである。

  第 一章 では 、日 本に おけ る 「共 謀共 同正 犯」 をめぐ る理論を考察する。まず、判例におけ る「 共謀 共同 正犯 論」 に関 し てで ある 。こ こで は、「 共謀共同正犯」を認めるための多様な 判例 の根 拠、 判例 自体 が自 ら 何度 も共 謀の 概念 を改め たこと、今まで判例が認めてきた「共 謀共 同正 犯」 の種 類と いう 三 点を 、明 らか にし た。そ して、これらすべての根拠に疑問が生 じる こと から 、そ れら の根 拠 のい ずれ によ って も「共 謀共同正犯」を認めることは困難であ ると 論じ てい る。 次に 、学 説 によ る「 共謀 共同 正犯」 の論争にっいてである。ここでは、主 にこ れま での 肯定 説の 理由 づ けが いず れも 、前 述の判 例によって認められてきた「共謀共同 正犯 」の 根拠 と変 わら ない こ とを 究明 する と同 時に、 先に指摘した判例の各根拠に対する疑 問は 、そ の根 拠に 対応 する 肯 定説 にも 妥当 する と指摘 している。最後に、立法案における「

ゴ|ミ諜共同正犯」の規定とその批判につ いての概観を行った。ここでは、改正刑法準伽草案・

改止Jfロ法草案の中に設けられた|,共謀 共同正犯」に関する規定によっても、判例による「共 謀ゴlミ同iE犯 」にI瑚する論争は終息しえ なかったどころか、かえってそれが一屈活発となった 経緯 を指 摘し たう えで 、草 案 での 「共 謀共 同正 犯」の 規定に対する学説による批判は、様々 の税 点か ら行 われ たと はい え 、し かし いず れに しても 、この規定の不当さを肯定しようとす る点においては、まったく同じであるとい うことを明らかにした。以上のような考察の結果、

本章 の最 後で は、 この 問題 を 解決 する ため 、比 較法的 見地からその解決の道を探る必要があ ると主張している。

  第 二章 では 、中 国の 共同 犯 罪理 論に よっ て、 日本に おける「共謀共同正犯」という現象に つい ての 分析 を試 みた 。ま ず 、中 国刑 事法 制に おける 共同犯罪規定の沿革を概観した。ここ では 、中 国古 代法 から 現行 刑 法典 誕生 まで の刑 事法に おける共同犯罪の規定にっいての考察 を通 じて 、中 国で は「 共謀 共 同正 犯」 の意 味で の共謀 者を処罰する明確な規定が既にr秦律j 以来 存し たこ と、 日本 にお け る「 共謀 共同 正犯 諭」は 中国古代封建刑法に影響されたこと等 を明 らか にし た。 次に 、中 国 現行 刑法 にお ける 共同犯 罪の規定を巡る理諭を考察した。ここ では 、中 国の 刑法 に規 定さ れ てい る「 共同 犯罪 の定義 」.「主犯およびその処罰原則」.「

従犯およびその処罰原則」.「脅従犯およ びその処罰原則」.「教唆犯およびその処罰原則」

に関する学説上の理論・論争を考究したう えで、それらの現行規定が日本の共犯規定と異なっ てい る点 を指 摘し た。 最後 に 、以 上の 中国 にお ける共 同犯罪の現行規定に基づく理論によれ ば、 「共 謀共 同正 犯」 の意 味 での 共謀 者は 、如 何に処 罰されるべきなのかを考察した。ここ では 、中 国の 共同 犯罪 理論 に よっ て、 前章 で指 摘した 七種類の「共謀共同正犯」それぞれに っい て分 析し たう えで 、日 本 の「 共謀 共同 正犯 」的意 味での共謀者を、如何に処罰すべきか に関 する 現在 の中 国に おけ る 理論 が、 日本 の「 共謀共 同正犯論」の否定説と差異があるとい

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うこと、および七っの点で判例の「共謀共同正犯論」とその肯定説とが異なっているという こととを指摘している。以上の分析を通じて、本章の最後では、以下のように諭じている。

中国での共謀共働現象を巡る理論は、「共謀共同正犯」の議論に当たって、一つの理論とし て加えることができるが、しかし中国の理論を合めて日本の「共謀共同正犯諭」及びその賛 否両説は、それぞれその正当化の理由があるのであろうか。

  かようにして第三章では、専ら「共謀共同正犯諭」とその肯定説を批判的に検討する。こ こでは、「共謀共同正犯諭」とその肯定説の成否の鍵が、共謀にかかる犯罪の実行行為に出 なかった者と他の実行行為に出た者との間においては、共同正犯の成立要件を満たしたかど うかという点にあると指摘したうえで、次のように日本における共同正犯の成立要件に関す る理論を踏まえながら、自説を展開して「共謀共同正犯諭」とその肯定説が成立しえない所 以を、明らかにしようとするものである。まず、日本における共同正犯の成立要件に関する 理論の諸相についての概観である。ここでは、日本の学説および判例における共同正犯の成 立要件に関する理論が、未だに議論の帰趨を展望できない状況にあると指摘したうえで、そ の根本的原因が、共犯の本質とは何かという問閣に深く関わっていると分析している。次に、

共犯の本質に関して自説を展開した。ここでは、共犯の本質は数人がーっの犯罪を行うとこ ろにあると確認しっつ、共犯という現象はあくまで単独犯と異なる特殊な犯罪形態なので、

共同正犯は共犯であるかぎり、その成立には共同実行の故意と共同実行の行為とが必要であ ると主張している。最後に、共同正犯の成立要件に関する私見を述べる。ここでは、日中両 国の刑法理論における故意・実行行為の概念に関する研究の現状を踏まえながら、共同実行 の故意と共同実行の行為の概念・特徴・種類などを明らかにしたうえで、次のような結諭を 導いている。即ち、判例が「共謀共同正犯」として認めてきたすべての場合が、共同正犯と しての客観的成立要件を満たさないことはもちろん、主観的成立要件をも満たすとは言い切 れないので、「共謀共同正犯論」とその肯定説は断じて否定されなければならないのである。

  第四章では、日本のf共謀共同正犯」の否定説および中国の共同犯罪理論を踏まえたうえ で、第一章で抽山した七種類の「共謀共同正犯」の類型に即しっつ、如何に処罰すべきかを 展望する。まず、組織・画策・指揮の役割のうち、いずれかの役割を果たした場合にっいて は、主犯として正犯より重く処罰すべきであると主張している。次いで、見張り・幇助的行 為をした場合に関しては、従犯として処罰すべきであると諭じたうえで、「片面的従犯」を 否定すべきであると同時に、中国刑法で規定される「共同犯罪において副次的な役割を果た した者」、っまり「副次的な実行犯」を従犯という枠から排除すべきであると分析している。

第三に、犯罪現場に赴き犯行を目撃した場合および共謀に参加したに留まる場合にっいてで あるが、前者は、主犯として正犯より重く処罰すべき場合もあるし、正犯として処罰すべき 場合もあるし、更に従犯として処罰すべき場合もあるのに対して、後者は、予備犯として処 罰すべき場合もあるし、従犯として処罰すべき場合もあると諭じている。第四に、「順次共 謀」.「暗黙の共謀」の場合に関してであるが、場合によって、前者は主犯あるいは教唆犯 または従犯もしくは予備犯として処罰すべきであるのに対して、後者は、従犯として処罰す べ き も の も あ る し 、 不 処 罰 と す べ き も の も あ る と 結 諭 づ け て い る 。

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学 位 論 文 審 査 の 要旨 主査   教授   能勢弘之

副査   教授   白取祐司 副査   助教授   今井猛嘉

副査   教授   小暮得雄(千葉大学)

学 位 論 文 題 名

「 共謀 共同 正 犯」に関する試論

― 日 中 両 国 の 共 犯 理 論 に 即 し て ―

   犯 罪 論 体 系 の 試 金 石 と 呼 ば れ る ほ ど 難 解 な 共 犯 論 の 分 野 に あ っ て 、 い わ ゆ る 共 謀 共 同 正 犯 の 問 題 は と り わ け 学 説 の 関 心 が 高 く 、 賛 否 両 論 が 錯 綜 し て い る 。 数 人 の 共 謀 に も と づ い て 犯 罪 が 行 わ れ た と き 、 直 接 実 行 に 加 わ ら ナ よ か っ た 共 謀 者 に つ い て も 、 な お 共 同 正 犯 と し て 処 断 で き る か ? 大 審 院 以 来 、 わ が 国 の 判 例 は 一 貫 し て こ れ を 肯 定 し 、 学 説 は 激 し く 対 立 し て き た 。 か よ う な 問 題 状 況 の も と で 、 本 論 文 は 、 副 題 が 示 す よ う に 、 日 中 両 国 の 共 犯 理 論 な い し 共 犯 規 定 に 即 し て 、 共 謀 共 同 正 犯 の 問 題 を あ ら た め て 省 察 し 、 そ の 知 見 に も と づ き 、 共 謀 者 処 罰 の 法 理 に 新 た な 展 望 を 拓 こ う と す る も の で あ る 。

  序 説 に っ づ く 第 一 章 「 『 共 謀 共 同 正 犯 』 を 巡 る 理 論 の 考 察 」 に お い て 、 著 者 は 、 ま ず 、 大 審 院 以 降 蓄 積 さ れ て き た 膨 大 ナ ょ 判 例 事 寨 を 綿 密 に 検 討 、 判 例 が 共 謀 共 同 正 犯 を 認 め る 根 拠 お よ び 共 謀 の 意 義 を 追 求 す る 一 方 、 事 案 の 克 明 な 分 析 を 通 し て 、 そ こ に7っ の 類 型 を 抽 出 し た 。 ま た 、 い わ る る 共 同 意 思 主 体 説 や 間 接 正 犯 類 似 説 、 行 為 支 配 説 等 を 巡 る 学 説 の 論 争 状 況 、 改 正 刑 法 草 案 に い た る 立 法 化 の 動 向 に っ い て も 、 詳 細 に 検 討 さ れ る 。 っ い で 第 二 章 「 中 国 共 同 犯 罪 理 論 に よ る 『 共 謀 共 同 正 犯 』 の 分 析 」 で は 、 中 国 古 代 か ら 現 代 に い た る 共 同 犯 罪 規 定 の 沿 革 を 辿 っ た 後 、 主 犯 の 処 罰 規 定 を 含 む 中 国 現 行 刑 法 で の 共 犯 理 論 が 詳 述 さ れ 、 さ ら に 一 歩 を 進 め て わ が 国 の 判 例 か ら 抽 出 さ れ た 類 型 的 事 案 に 対 す る 処 断 が 試 み ら れ る 。 い わ ぱ 共 謀 共 同 正 犯 の 諸 類 型 に 即 し た 中 国 流 の 対 応 を 解 明 し た も の で 、 本 論 文 の 白 眉 と い え よ う 。   っ づ く 第 三 章 は 、 「 『 共 謀 共 同 正 犯 論 』 と そ の 肯 定 説 の 批 判 的 検 討 」 に 充 て ら れ る 。     ―45ー

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著者は、共犯の本質に照らし、共同正犯の成立には 共同実行の故意 および 共同 実行の行為 が必要である、という前提に立って、批判的検討を試み、帰するところ 共 謀共同 正犯 の 共同正犯性を否認するのである。こうして、第四章「結び―

『共謀共同正犯』の処罰――」では、前記の諸類型に応じて、共謀者処罰の在り方が 論じられることにナょる。即ち、それが、@組織・画策・指揮の役割のうち何れかの役 割を果たした者は、主犯として正犯より重く処罰すべきであり、@見張り・幇助的行 為を行った者は、従犯として処罰すべきであり、◎犯罪現場に赴き犯行を目撃した者 は、主犯として正犯より重く処罰すべき場合もあるし、正犯として処罰すべき場合も あるし、更に従犯として処罰すべき場合もあり、@共謀に参加したに留まる者は、予 備犯として処罰すべき場合もあるし、従犯として処罰すべき場合もあり、◎「順次共 謀」の者は、場合によって主犯あるいは教唆犯または従犯もしくは予備犯として処罰 すべきであり、◎「暗黙の共謀」の者は、従犯として処罰すべき場合もあるし、不処 罰とすべき場合もある、と言うものである。

   共謀による共同正犯の正否に関しては、すでに多くの論策が著されているとはいえ、

学説・判例による肯定説の理由づけが、刑法第60 条の文理的障碍を克服し得ていナょ い現状において、それはなお今日的問題性を失っていない。本論文は、実務上の要請 に対し一定の理解を示しナょがらも、解釈論としては、明確に批判的姿勢を貫いた。そ の間、本論文が、(1 )優に干件をこえる共謀共同正犯判例の精査・分析を通して、共 謀共同正犯の呼称で一括される諸事例を類型別に整理したこと、(2 )秦律をはじめ、

中国封建刑法以来の沿革のなかに、共謀者処罰の系譜があることを検証し、それがわ が国判例理論に影響を与えた可能性を示唆したこと、(3 )日中両国の現行共犯規定お よび共犯理論を入念に対照しながら、共謀共働現象にかかわる対応の異同を鮮明にし たこと、は共謀共同正犯の問題領域に新たな知見を加えたもので、高い評価に値する であろう。

   たとえぱ学説の批判的検討に奥行きがとばしい、というたぐいの不満は残るものの、

全体として日中両国の共犯論を架橋する貴重な労作といってよい。とりわけ、元来、

共犯の関与形式と役割の軽重との間には乖離があるにも拘わらず、必要的共犯の例を 除いて、関与形式がせまく限定され、そこに役割の軽重を反映させることが難しい、

わが共犯規定の硬直を明快に指摘した点は卓見というべく、裨益するところが大きい と思われる。

   慎重な審査の結果、審査委員の全員一致を以て、博士く法掌め学位を受けるにふさわ しい業績と判断した。

     ―46 ー

参照

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