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ラット膵島

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Academic year: 2021

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博 士 ( 獣 医 学 ) 吉 橋 一 隆

学 位 論 文 題 名

ラット膵島 B 細胞の細胞内Ca2+ 濃度調節機構における     Na+/Ca2+ 交 換 輸 送 体 の 役 割 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

  本 研 究 で は 、 ラ ッ ト 膵 島B細 胞 に お い て 、Na+/Ca2+交 換 輸 送 体 が 静 止 時 の[Ca2+]i 調 節 に 関 与 し て い る か ど う か 、 お よ びNa+/C a2+交 換 輸 送 体 のreverse modeを 介 す る Ca2+流 入 が ぷ ど う 糖 に よ っ て 引 き 起 こ さ れ る[Ca2+]j上 昇 に 関 与 し て い る か ど う か を 検 討 す る 目 的 で 、1) 静 止時 の附a+ ]。 低下 によ る[Ca2+li変動 に対 する 各種 阻 害薬 の効 果 、2) 膵 島B細 胞 が 活 性 化 さ れ た 条 件 下 で 引 き 起 こ さ れ た[Ca2+]i変 動 に 対 す るKB‑

R7943の 効 果 を 観 察 す る こ と に よ り 、Na+/C a2+交 換 輸 送 体 の [C a2+li調 節 機 構へ の寄 与 を検 討し た。

  [Na+] 。を 低下 させ ると[Ca2+]i上昇が引き起こされ、[Na゛]。低下の程度に依存して

[Ca2+]i上 昇 の 最 大 値 は 大 き く な っ た 。 ま た 、Ca2+。 を 除 去 す る と 、Na+o除 去 に よ る [Ca2+]i上 昇 は 抑 制 さ れ た 。 加 え て 、Ca2+流 入 を 抑 制 す るNi2+存 在 下 で 、Na+o除 去 に よ る [Ca2+]i上 昇 はNi2+濃 度 依 存 性 に 抑 制 さ れ た 。 し か し 、 電 位 依 存 性L型Ca2+

チ ャ ネ ル の 阻 害 薬 で あ る ニ フ ウ ジ ピ ン 、 あ る い は 受 容 体 介 在 性Ca2+チ ャ ネ ル を も 阻 害 す るSK&F96365存 在 下 で 、Na+o除 去 に よ る[Ca2+]i上 昇 は 影 響 さ れ な か っ た 。 Na+, K+‑ATPaseの 特 異 的 な 阻 害 薬 で あ る ウ ア バ イ ン 存 在 下 で は 、Na+o除 去 に よ る [Ca2+]i上 昇 の 振 幅 は 、 コ ン ト ロ ー ル の[Ca2+li上 昇 の 振 幅 と 比 べ て 有 意 に 増 強 さ れ た 。

  Na+/Ca2+交 換 輸 送 体 の 役 割 を 定 量 的 に 解 析 す る た め に 、Ca2+( △ いCa2+)お よ び Na+ (AliNa+)の 電 気 化 学 的 勾 配 を 算 出 し た と こ ろ 、 そ れ ぞ れ39.1お よ び12.8kj/mol と な っ た 。 ま た 、 [Na十 ]oとCa2+流 入 の 正 味 の 駆 動 力 ( △ いCa2+→3AUNa+)と の 問 に は 負の奩線関係が 、興なる叫a゛]。でね‖定 した[Ca2+]iの最大値とそれ ぞれの附a+]。で 計 算 し た Aい Ca2+― 3AyNa+と の 間 に は 正 の 直 線 関 係 が 認 め ら れ た 。   高 濃 度 ぶ ど う 糖 に よ る2相 性 の [Ca2+li上 昇 反 応 の 第2相 目 でNa+oを 除 去 す る と 、 3 mMぷ ど う 糖 存 在 下 で の 反 応 と は 異 な り 、 一 過 性 に [Ca2+ljが 減 少 し た 後 、 通 常 の 持 続 的 な レ ベ ル ま で 回 復 し た 。 高 濃 度 ぶ ど う 糖 存 在 下 で のNa+o除 去 時 の[Ca2+li変 動 の 最 大 値 は 、3 mMぶ ど う 糖 存 在 下 で の 最 大 値 よ り も 有 意 に 小 さ か っ た 。

(2)

  Na+/C a2+交換輸送 体活性に 対する膜 電位の効果 を検討するために、100 mM K+およ び3 mMぷ ど う 糖 を 含 む 溶 液 で 引 き 起 こ さ れ る 脱 分 極 条 件 下 で 、Na+o除 去 によ る

[Ca2+]i変動を 調ぺた。 高濃度K+条 件下でのNa+o除 去による[Ca2+]i上昇の振 幅は、

通 常 濃 度K+条 件 下 で のNa+o除 去 に よ る[Ca2+]i上昇 の 振幅 よ り も有 意 に小 さ か っ た。しか し、高濃 度K+のみに よる持続的 な[Ca2+]i上昇は ニフウジ ビンによ って阻害 されない ことから 、この条 件下ではNa+/Ca2+交換輸送体が[C a2+]j上昇に関与してい る可能性 があり、 これによ り振幅に差 が生じる ものと思われる。したがって、高濃度 K+条 件 下で のNa+o除去 に よ る[Ca2+]i上 昇 に おけ るNa+/Ca2+交換輸 送体のreverse modeの寄 与 を、 高 濃 度K+単 独に よ る[Ca2+li上 昇 とNa+o除 去によ る[Ca2+]i上昇 両 者の 成 分 を合 わ せて 観 察 する ために、Na+o除去前にCa2+oを取り除 いて[Ca2+li変動 を記 録 し た。Na+o除 去溶 液 にCa2+oを再 導 入 する と 、通 常 濃度K+条 件下で観 察され たような [C a2+]i上昇反 応が引き 起こされた 。Na+o除去時の[Ca2+]jの最大値および Na+o除 去 に よ る[Ca2+]i上 昇 の 振 幅 は [K十 ] 。 が 上 昇 す る と 有 意 に 増加 し た 。   Na+o除去によ る[Ca2+]i上昇に 対するNa+/C a2+交 換輸送体の寄与の膜電位依存性を 評価する ために、Na+/Ca2+交換輸送 体のreverse modeの阻害 薬であるKB−R7943存在 下で 実 験 を行 っ た。 高 濃 度K+条件下で、Na+。除去後 のC a2+o再導入 による[Ca2+li 上 昇 はKB−R7943に よ っ て 抑 制 さ れ た 。KB―R7943非 存 在 下 で のNa+o除 去に よ る [Ca2+]i上昇量(△[Ca2゛]i)は、高濃度K゛溶液で有意に増大した。一方、KB―R7943存 在下でのA[Ca2+]iは、[K十]oを増加させても有意な変化は認められなかった。前者から 後者を差し引いて得られた正味のA[Ca2+liは、[K十]。が上昇すると有意に増大した。

  KB‑R7943存 在 下で 、 ぷ どう 糖 濃度 を 増 加さ せ るとKB‑R7943非 存 在下 の 際と 同 様 の[Ca2+Ji変 動が 引 き 起こ さ れたが 、1相目より 後のA[Ca2+]iがKB‑R7943非 存在下に おけるA[Ca2+]iに比べて有意に減少した。

  以上の結果、ラット膵島では、[Na十]o低下によって引き起こされる[Ca2+]i上昇は Na+/C a2+交換輸送 体を介す るCa2+流入に よるもので ある。Na+/Ca2+交 換輸送体 は静 止 時 の[Ca2+]1維 持 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て いる 。 また 、Na+/Ca2+交換 輸 送 体の reverse modeの活性は 脱分極時に増強される。Na+/C a2+交換輸送体を介するCa2+流入 はおそら くぷどう 糖によっ て引き起こ される[Ca2+]i変 動に部分 的に関与 している と 結論付けられる。

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

葉 原 芳 昭 中 里 幸 和 斉 藤 昌 之 石 川    透

学 位 論 文 題 名

ラ ッ ト 膵 島 B 細胞 の細 胞 内 Ca2+ 濃度 調節 機構 にお ける     Na+/Ca2+ 交 換 輸 送 体 の 役 割 に 関 す る 研 究

  電 解 質 輸 送 担 体の ひ と つで あ るNa+/Ca2+交 換輸 送 体 は、 細 胞 内外 のNa4‑濃 度 勾配 と 電 気 的勾 配 を 駆 動カ と し て、Na+とCa2+を お 互い に 逆 方向 に 輸 送 する イ オ ンキ ャ リア ーであり 、 forward modeとreverse modeに よ っ て 細 胞 内 のCa2+濃 度 調 節 を 行 っ て いる 。 こ の交 換 輸 送 体 の 膵 島B細 胞 に お け る 役 割 を 明 ら か に す る た め に 、 細 胞 生 理 学 的 研 究 を 行 っ た 。 細 胞 内 のCa2+濃 度 変 化 を 経 時 的 に モ ニ タ ー し な が ら 細 胞 外 の イ オ ン 組 成 を 人 工 的に 変 化 さ せ 、 ま た 各 種 の 阻 害 薬 、 特 にKB ‑R7943と ぃ う 新た に 開 発さ れ た 特異 性 の 高いNa+/Ca2+交 換 輸 送 体 阻 害 薬 を 用 い て 検 討 を 行 っ た 。 得 ら れ た 知 見 は 以 下 に 要 約 さ れ る 。   1) 遊 離 ラ ッ ト 膵 島 細 胞 標 本 を 用 い 、 灌 流 液 のNa+濃 度 を 低 下 さ せ る と 、 細胞 内 のCa2+

濃 度 の 上 昇 が 認 め ら れ た 。 こ の 上 昇 は 、 細 胞 外Ca2+の 除 去 あ る い はNi2+添加 で 消 失 また は 低 下 し た が 、L型 カ ル シ ウ ム チ ャ ネ 少 阻 害 薬 のニ フ ェ ジピ ン と 受容 体 介 在性 カ ´ レシ ウ ム チ ャ ネ ル 阻 害 薬 のSK&F96365は 無 効 で あ っ た 。 ウ ワ バ イ ン を 添 加 し て 細胞 内Na+濃 度 を 上 げ 、reverse modeの 駆 動 カ を 増 加 さ せ る と、 細 胞 外Na+濃度 低 下 によ る 細 胞 内Ca2+濃 度 上 昇 が 促 進 さ れ た 。さ ら に 、KB・R7943は細 胞 外Na+濃 度低 下 に よっ て 惹 起さ れ るCa2+濃 度 上 昇 を 抑 制 し た 。 以 上 の 結 果 は 、 膵 島B細 胞 にNa+/Ca2+交 換 輸 送 体 が 存 在 し て い る こ と を示 唆 す る もの で あ る。

  2) 細 胞 外Na+濃 度 の 低 下 とCa2+濃 度 上 昇 の 定 量 関 係 に つ い て 解 析 を 行っ た と こ ろ、 非 分 泌 時 ( 非 刺 激 時 ) に お け るCa2+の 流 れ が も っ ぱ ら こ の 輸 送 体 を 介 し て 行 わ れて い る と すれ ば 、 そ のstoichiometryは3Na+:lCa2+ であ る と 結論 さ れ た。

  3) ぷ ど う 糖 刺 激 時 に 認 め ら れ る 細 胞 内Ca2+濃 度 の 二 相 性 変 動 の う ち 、KB・R7943は 一 相 目 に た い し て は 無 効 で あ っ た が 、 二 相 目 のCa2+濃 度 上 昇 を 有 意 に 抑 制 し た 。こ の 結 果 は 、 二 相 目 の 細 胞 内Ca2+濃 度 変 動 の メ カ ニ ズ ム に 、Na+/Ca2+交 換 輸 送 体 が 一 部 関与 し て いる こ と を 示唆 す る 。

  4)Na+パa2+交 換 輸 送 体 のreverse modeの 活 性 あ る い は 数 が 、 細 胞 膜 電 位 変 化 に 影 響 さ れ 、 脱 分 極 時 、 す な わ ち ぷ ど う 糖 刺 激 時 に 亢 進 あ る い は 増 加 す る こ と が示 唆 さ れた 。

(4)

   以上の知見から:膵島B 細胞の細胞内Ca2+ 濃度制御機構にNa+/Ca2+ 交換輸送体が寄与

していると結論した。これらの成果は、膵島B 細胞の細胞内イオン濃度制御機構にたい

して新たな視点を提供するものである。よって、審査員一同は、吉橋一隆氏が博士(獣

医学)の学位を受ける資格が十分あると認めた。

参照

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