博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 杉 井 武
学 位 論 文 題 名
クリーンガソリン合成のための金属 一固体酸二元機能触媒の設計
学位論文内容の要旨
近 年 , ガソ リ ン 自 動車 の 普 及 によ り 環 境 問題 が 深 刻 化し て い る.オ クタン 価向上剤 とし て ガソ リ ン 中 に添 加 さ れ てい る 芳 香 族は 発 ガ ン 性で 物 質 で ある た め, その除 去が必要 であ る . そ こ で, ク ル ー ン且 つ 高 オ クタ ン 価 な 非芳 香 族 ガ ソリ ン 基 材とし てジメ チルペ ンタン 類 が注 目 さ れ てい る . ジ メチ ル ベ ン タン 類 の オ クタ ン 価 は 芳香 族に 匹敵する .本研 究の目 的は ,ジメ チルベ ンタン類 の高収 率合成 を実現 する金 属一固 体酸二 元機能 触媒の設計である,
ジ メチルベ ンタン 類の合 成ルー トには ,(l)n−ヘ プタン 骨格異 性化反 応,(2)メ チルシク口ヘ キサン 異性化 ・開環 反応が ある. いずれも 金属一 固体酸 二元機 能触媒 が必要 である.
n‐ヘプタン骨格異性化では,白金担持ヘテロポ1」酸系触媒(Cs2.5H0.5PW12040(Cs2.5(PW)), Cs2.5H1.5SiW12040(Cs2.5(SiW)),Rb2,1H0.9PW12040(Rb2.1))と白金担持固体酸触媒(S042―/2r02 W03/2r02)を用 いた.こ れら触 媒の中 で,Pt‑W03/2r02およびPt‑(ニs2.5(SiW)が,こ れまで に 報 告 され て い るPd‑H4SiW1204〆Si02やPリHBに 匹 敵 す る高 い 異 性 化選 択 率を 示すこ とを見
出 した . ま た ,固 体 酸 性 質を 評 価 す る新 規 な べ ンゾ ニ ト リ ル昇 温 脱離 法を開 発し,こ れを 用 い て固 体 酸 性 質と 選 択 性 の関 係 を 系 統的 に 調 べ た. 異 性 化選択 率が高か ったPt−W03/2r 02お よ びPt‑(ニs2.5(SiW)の 担 体で は , 強 い酸 性点 に由来す る700Kの 脱離ピ ークが 小さいこ
と が 確 認さ れ た .Pd‑H4SiW12040/Si02では ,H4SiW12040の担 持量が 低いほど 高い異 性化選 択 率 を 示 し ,700Kの 脱離 ピ ー ク も小 さ い こ とが 確 認 さ れた . こ れ らの こ と か ら, 触 媒 表 面 の酸 強 度 の 抑制 が ,n− ヘ プタ ン 骨 格 異性 化 選択率 の向上 に効果 的であ ること が明ら かに
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なっ た,
一段法メチルシク口ヘキサン異性化・開環反応に有効な金属一固体酸二元機能触媒を検討 した結果,IrH弔が高活性・高選択的にジメチルペンタン類を最大収率18%で合成するこ とが出来た,触媒の反応特性は,Irと担体の組合わせによって3っに分類することができ,
環異性化には固体酸が,水素開環には金属状態のIrが作用していることが明らかになった.
また,環異性化反応には平衡が存在し,その平衡値が45%であることがわかった.
Irm小上でのメチルシク口ヘキサン異性化開環反応の生成物組成を追跡した結果,先ず,
固体酸上でシクロベンタン類(ジメチルシクロペンタン類とエチルシクロベンタン)へと異 性化した後,Irサイト上で開環してメチルヘキサン類,ジメチルベンタン類が二次生成物
として逐次的に生成することが明らかとなった.クラッキング生成物は,メチルヘキサン 類,ジメチルベンタン類から生成すると推定できる.Irm弔で2−メチルヘキサンおよび2,4−
ジメチルベンタンの反応特性を追跡した結果,2,4‐ジメチルベンタンでは,クラッキング はほとんど進行しなかった.一方,2―メチルヘキサンではクラッキングが容易に進行した,
この際,C3とISO‑くニ4の割合が少なかったことからクラッキングは,Ir上での水素化分解に よって進行すると結論した.また,ジメチルベンタン類は,メチルヘキサンの骨格異性化 でも生成すると推定できる.5員環であるメチルシクロペンタン開環反応とメチルヘキサ
ン骨格異性化反応の速度を比較したところ,開環反応の速度が圧倒的に速かった,このこ とから,ジメチルベンタン類は,シクロベンタン類の開環によってのみ生成することを明 らかにした.Irはメチル基非置換のC‑(ニ結合を優先的に切断することから,ジメチルペ ンタン類はジメチルシクロペンタン類の開環によって生成することが分かった.このこと から5員環の開環がジメチルペンタン類の収率向上に大きく寄与することを明らかにした,
この知見を基に,収率向上の方策として,(1)環異性化能が高い触媒と開環能が高い触媒 を物理混合した触媒,(2)環異性化(1段目)と水素化開環(2段目)を別々の触媒で行なう二段 法プロセスを検討した.
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Pt―H4SiWl204〆Si02とIr/A1203を物理混合した触媒では,Ir/A1203の混合量の増加に伴い,
ジメ チル ペ ンタ ン類 の収 率 も向 上し たが ,大 き な収 率向 上は 認め ら れな かっ た(最大収率 20'70). k/Al203よ って メチ ルシ ク ロヘキサンが直接開環してメ チルヘキサンが生成したか ,
ある いはk/Al203の劣 化が 激 しい ため に収 率が 向 上し なか った も のと 考え られ る.
二 段法 プ ロセ スで は,1段 目に はPt/H‑[3が ,2段目 に はIr/Al203が 最適 で ある こと を見出 し た . こ れ ら の 触 媒 によ る 二段 法プ 口セ スに お いて 反応 条件 を 最適 化し たと ころ ジ メチ ル ベ ン タ ン 類 を30%収 率 で 合 成 す るこ と が出 来た .ま た,2段 目を 環 異性 化能 も有 するIr/H弔 と し た と こ ろ , ジメ チル ペン タン 類 を32%収 率で 合 成す るこ とが 出来 た .こ の値 は, ジメ チ ル ペ ン タ ン 類 の 平 衡 組 成 の77%に 相 当 し , 本 プロ セス が有 効 であ るこ とを 実 証で きた , 以 上 , 本 研 究 で 得 ら れ た 知見 は,C7アル カン 変換 反 応に よる クリ ーン ガ ソリ ン合 成の 実 現 に大きく貢献するもので ある.
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学位論文審査の要旨 主査 教授 奥原 敏夫 副査 教授 中村 博 副査 教授 坂入 信夫 副査 准教授 神谷裕一
学 位 論 文 題 名
クリーンガソリン合成のための金属 一固体酸二元機能触媒の設計
ガ ソ リ ン 自 動 車 の 保 有 台 数 の 増 加 や 大 型化 によ って ガ ソリ ン消 費量 が増 加 して いる . こ れ に よ る 環 境 問 題 が 深 刻 化 し て い る . オ クタ ン価 を向 上 させ るた めに ガソ リ ンに は芳 香 族 化 合 物 が 添 加 さ れ て い る が , 芳 香 族 フ リ ーな クリ ーン ガ ソリ ンの 使用 が望 ま しい .ジ メ チ ル ベ ン タ ン 類 は 芳 香 族 に 匹 敵 す る 高 い オ クタ ン価 を有 し てお り, クリ ーン ガ ソリ ン基 材 とし て注 目 され てい る. 本 博士 論文 は, ジメ チ ルベ ンタ ン類 の高 収 率合 成を 実現 する金属ー 固体酸二元機能触媒 およびその反応システムに関 する研究である.
メ チ ル シ ク ロ ヘ キ サ ン 異 性 化 ・ 開 環 反 応を ,一 段法 と 二段 法の ニつ のシ ス テム で検 討 した .一 段 法で は,Ir/H‑{3が高 活性 ・ 高選 択率 を示 し ,ジ メチ ルベ ンタ ン 類を 最大収率18%
で 生 成 す る こ と を 見 出 し た . こ の 二 元 機 能 触媒 にお いて , 環異 性化 は固 体酸 上 で, 水素 化 開 環 はIr上 で 進 行し てい るこ と を明 らか にし た.Ir/H‑{3上 での メチ ルシ ク口 ヘ キサ ン異 性 化・ 開環 反 応の 接触 時間 依 存性 から ,メ チル シ クロ ヘキ サン がシ ク ロベ ンタ ン類 (ジメチル シク ロベ ン タン 類と エチ ル シク ロベ ンタ ン) へ と異 性化 し, それ に 続く 開環 によ ルジメチル ベ ン タ ン 類 が 逐 次 的 に 生 成 す る こ と が 明 ら かと なっ た. メ チル シク ロペ ンタ ン 開環 反応 と メ チ ル ヘ キ サ ン 骨 格 異 性 化 の 反 応 速 度 の 比 較か ら, メチ ル シク ロベ ンタ ン開 環 反応 の速 度 が 圧 倒 的 に 速 く , メ チ ル ヘ キ サ ン ン 類 の 骨 格異 性化 によ る ジメ チル ベン タン 類 生成 の寄 与 は ほ と ん ど な い . ま た ,Irは メ チ ル 基 非 置 換 のC‑C結 合 を 優 先 的 に 切断 する こ とか ら, エ チ ル シ ク ロ ベ ン タ ン の 生 成 を 抑 制 す る こ と が, ジメ チル ベ ンタ ン類 収率 向上 の 指針 とな る ことを示した,
こ れ ら の 知 見を 基に ,更 な る収 率向 上の 方策 と して ,(1)環 異性 化能 が高 い 触媒 と開 環 能が高い触媒を物理混合した触媒(一段法の改良),(2)環異性化(1段目)と水素化開環(2段目)
を別々の触媒で行な う二段法プロセスの実証試験 に取り組んだ.
メチ ル シク ロヘ キサ ン 環異 性化 反応 に対 し て,Pt‑H4SiW12040/Si02が低 転化 率領域での
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エチルシクロベンタン選択率が低いことが分かった.また,担持Ir触媒の中でIr/Al203が最 も高い開環活性を示すことが分かった.両者を物理混合した触媒による一段法は,Ir/H‑pよ りも高 収率でジメチルペンタン類を生成することが期待できる.実際,物理混合触媒は,
k/H弔による一段法よりもジメチルベンタン類収率が向上したがく20%),大幅な向上には至 らなかった.
続 いて,二段法プ口セスを検討した.一段目には異性化のみを進行させるPt/H‑[3を,
二段目にはIr/Al203を用しゝ反応条件を最適化した結果,ジメチルベンタン類を最大収率30%
で合成 することが出来た,また,2段目を環異性化能も有するIr/H弔としたところ,ジメチ ルペン タン類を32%収率で合成する ことが出来た.この値は,ジメチルベンタン類の平衡 組成の74%に相当し,本二段法プロ セスがメチルシクロヘキサン異性化・開環反応による ジメチルベンタン類合成に有効であることが実証された.
以 上のように申請者は、C7アルカン変換反応によるクリーンガソリン合成プロセスの 構築に 不可欠な金属一固体酸二元機能触媒の研究を行い、金属一固体酸二元機能触媒の触 媒機能 の解明、およびそれらを最大限に発揮させる二段法プロセスの構築とその実証を行 った。 審査員一同は、これらの成果を高く評価するとともに、研究者として誠実かつ熱心 であり 、大学院博士課程における研鑽や修得単位などもあわせ、申請者が博士(地球環境 科学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。
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