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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 環 境 科 学 ) 伊 佐 田 智 規

     学位論文題名

PHOTOSYNTHETIC FEATURES AND PRIMARY PRODUCTIVITY OF PHYTOPLANKTON IN THE     NORTHWESTERN SUBARCTIC PACIFIC

   (西部北太平洋亜寒帯域における植物プランクトン群集の光合成特性と      基礎生産カに関する研究)

学位論文内容の要旨

  海 洋 植物 プラ ンク トン の基 礎生 産力 (光合成)は、海洋生態系 における物質循環の出発点で あり 、 基礎 生産 カの 大小 はす べて の生 物生産を左右する。そのた め、海洋における植物プラン クト ン の生 理生 態お よび 基礎 生産 カの 時空間変動を理解すること は、人間活動による大気中へ の二 酸 化炭 素放 出に よる 地球 温暖 化を 含めた炭素循環変動、およ びそれに伴う食物連鎖を通じ た水 産 資源 の研 究に とっ ても 大変 重要 である。現在、海洋の基礎 生産カを時空間的に見積もる ため に 、衛 星観 測と 基礎 生産 力推 定生 物光学モデルとを組み合わ せた研究が盛んに行われてい る。 多 くの モデ ルの 中で も、 現在 、BehmfeldandF狐 こow必(1997) が開 発し たVGPM(Vemcむ yGeneIIa地edProdumonMo(lel) カ 濃も 良く 用い られ てい る。 しか しながら、全球もしくは海 盆スケールの基礎生産カを推定 する際にはこのモデルは良しゝ推定をみせるが、局所的な海域な ど水 塊 スケ ール にお ける 基礎 生産 カの 推定には適さない事が指摘 されている(Seigel甜d,200 1;C卿pbeu甜缸,2002)。その 場合、その海域での植物プランクトンの光合成一一:光曲線など の光 合 成生 理パ ラメ ータ を的 確に 把握 したローカルアルゴリズム の構築が必要不可欠である。

  本 研 究調 査海 域で ある 西部 北太 平洋 亜寒帯域の、特に親潮域は 、毎年春に大規模な植物プラ ンクトンブルームが発生するQくaS茄田ロt,1.997;1998)。この植物プランクトンプルームによ っ て 海 洋 表 面 の 二 酸 化 炭 素 分圧pC02) を下 げる 効果 が世 界の 海の 中で 最も 高い 海域 の1つ で ある こ とが 知ら れて いる (TakabaShidd,2002) 。そ のた め、 この 海域における植物プランク トン 群 集の 基礎 生産 カの 変動 は、 全球 の炭素循環変動にも大きな 寄与を果たしていると考えら れる。しかしながら、上記の主 要因が植物プランクトン群集の高しゝ光合成活性によるものだと 言わ れ てい るが 、親 潮域 およ び黒 潮親 潮移行域における植物プラ ンクトンの光合成→ヒ曲線な ど光合成生理に関する知見は非 常に乏しい(I血甜a´.,2004)。特に基礎生産カを含め、日周 変 化 や 季 節 変 化 お よ び 春 季 ブ ル ー 期 の 発 生 か ら 終 焉 ま での 変 化に 関す る知 見は 全く ない 。   そ こ で本 研究では、2005年3月からーケ月おきに9月まで(航海1)、また、2007年4月から6月

(航 海2) にか けて、西部北太平洋亜寒帯域の親潮域および黒潮親 潮移行域において、植物プラ

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ンク ト ン 群集 の 光 合成 特 性およ び基礎 生産カの 日周変 化や季節 変化およ び親潮 域春季ブ ルーム 期の変動につしゝて調査した。

  航海1の結果か ら、植 物プラン クトン 群集組成 、光合 成生理パ ラメータ および 基礎生産 カに明 瞭な 季 節 変化 お よ び海 域 での差 が観測 された。 親潮域 春季ブル ーム期で は、大 型の珪藻 類が優 占し、他 の季節ま たは黒 潮親潮移 行域と 比べて高 いク口 口フィル ロ濃度および基礎生産カが観測 され た 。 本研 究 で は、 植 物プラ ンクト ンが吸収 した光 をどれだ け炭素固 定に利 用してい るかの 指標 ( 光 利用 効 率 )と な る パラ メ ー 夕、 光 合 成の 最 大量 子収率ゆ 。max,molCmol pohotns‑1) の季節変 動に着目 した。 環境状況 が良好 な天然植 物プラ ンクトン 群集では、Qc maxは0.06ー0.08 molCmol photons‑1程度になる事が知られてしゝる(Babin etロZ. .1996)。(l)c maxは、親潮域の5 月(春季 ブルーム 期)お よび9月では0.070 molCmol p110torぶ1と 黒潮親潮 移行域と 比べて も高 い値が得 られた。 また、 疑似現場 法にて 測定した 基礎生 産カと¢c―と の間に 有意な相 関が見 ら れた 事 か ら、 親 潮 域の 植 物プラ ンクト ン群集の 高い光 利用効率 が高い基 礎生産 カを支え ている 事が初め て明らか となっ た。また 、光合 成一光曲 線に基 づく基礎 生産力推定生物光学モうつレに よっ て 見 積っ た 基 礎生 産 カ とVGPMに よ っ て見 積 も っ た基 礎 生 産カ を 比 較し た とこ ろ、黒 潮親 潮移 行 域 では 良 く 一致 し たが、 親潮域 の特に春 季ブル ーム期は 全く一致 しなか った。親 潮域で は蛾111ヨなど光 合成生 理が基礎 生産カ の変動に寄与するため、親潮域でも光合成生理バラメータ に基づい た基礎生 産カを 推定する □ーカ ルアルゴ リズム の構築が 必要であることが示唆された。

  航海2にて親潮 域春季 プルーム 期を集 中的に観 測した 。表層の ク口口フ ィルロ 濃度は0137ー17 mgnr3で 変 動 し 、 ク 口 口 フ ィ ル ロ 濃 度 が1nlgnf3を 超え る 観 測点 で は 、 体長 が10um以 上の マ イク □ サ イズ の 植 物プ ラ ン クト ン が 優先 し て いた 。 表 層 にお け る 基礎 生 産 力幟 )およ び有光 層 ま で を 深 度 積 算 し た 基 礎 生 産 力 泌 )P) は 、そ 捫 ぞ わ34―602111gCnr3dl、543―3,231m gCm12び で 変 動し た 。 航海1の 研究 結 果 で明 ら か に なっ た よ うに 、 衛 星リ モ ー トセン シング か ら親 潮 域 春季 ブ ル ーム 期 の基礎 生産カ を時空間 的に見 積もるた めには、 口ーカ ルアルゴ リズム の構 築 が 必要 で あ る事 が わ かっ た 。 その た め 、既 存 の 基 礎生 産 力 推定 生 物 光学 モデル (Vくm M) を 元 に、 そ の モデ ル の 改良 を 行 った 。 本 研究 で は 、有光層 までを深 度積算 した基礎 生産力 衄えP) とVGPMに よ っ て見 積 も られ た 基 礎生 産 カ の 間には 有意な関 係は見 られなか った。 しか しながら 、このモ デルの 中で7次の水 温の関数 で表現さ れてし ゝる光合成活性パラメー夕(ず0pt

(nlgCmgCuロ .lHl) ) を 、現 場 で 測定 し た 基礎 生 産 カか ら 見 積も り ( 加sぬP叫 )、 そ の 実 測値 をVGPMに 組み 込 ん だと こ ろ 、有 光 層 まで を 深 度 積算した 基礎生産 力価)P)と の問に 有意 な直 線 関 係が 得 ら れた 。 これら の結果 から、VPGMの 光合成 活性を表 すFも)tが推定誤 差の主 要 因で あ っ たこ と 、 また 本 研 究か ら 得 られ た 加 轟眦Bcpを 衛星リモ ートセ ンシング から正確 に見 積も る こ とが で き れば 親 潮域春 季ブル ーム期に おける 基礎生産 カをより 正確に 見積もら れる事 が示唆さ れた。次 に加ぷ 洫ず印tを衛 星リモー トセンシ ングか ら見積も る方法 を試みた 。2007年 親潮域春 季プルー ム期に おいて観 測した 、加Jぬp叩tお よびク口 口フィル ロ濃度 で規格化 した植 物プ ラ ン クト ン の 比吸 光 係 数Q゛phm) の 関係 を 調 査 した 結 果 、両 者 の 間に 有 意な 関係が 見ら れ た 。 ま た さ ら に 、 表 層 の 基 礎 生 産 力 呱 ) と 植 物 プ ラ ン ク ト ン の 吸 光 係 数( 触m) との 間 にも ま た 、有 意 な 関係 が 見られ た。こ の結果か ら、植 物ブラン クトンの 吸収係 数が基礎 生産カ を推 定 す る際 の 、 強カ な 予測因 子とな りうる事 が示唆 された。 現在、衛 星リモ ートセン シング

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か ら 植物 プラ ンク トン の吸 光係 数を 見積 もる 事が 可能 にな ってきているため(GarberandSeige l,1997;M証torerle甜ロ正,2002;Carder甜口′.,1999;I賦甜ロ正,2002;keandCarder 2004)、

衛 星 リモ ート セン シン グか ら植 物プランクトンの吸光係数を 見積もり、本研究の関係式を用い る 事によって親潮域春季フリレーム期における基礎生産カ が比較的簡単に見積もられる事が本研 究によって初めて明らかとなった。

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学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

准 教 授  鈴 教 授   乗 教 授   吉 教 授   齊

木光次 木新一郎 川久幸

藤誠一(大学院水産科学研究院)

     学 位 論 文 題 名

PHOTOSYNTHETIC FEATURES AND PRIMARY PRODUCTIVITY OF PHYTOPLANKTON IN THE     NORTHWESTERN SUBARCTIC PACIFIC

(西 部 北 太平 洋 亜 寒帯 域 にお け る 植物 プ ラン ク トン群集 の光合成 特性と     基礎 生 産 カに 関 する 研 究 )

  海洋において,植物プランクトンは,主要な基礎生産者であり,海水中の二酸化炭素お よび光を利用して光合成を行うことにより,有機物を生産する。この有機物は生食食物連 鎖や微生物食物網の過程で消費,分解されるが,その一部は海洋の中深層へ輸送され,長 期間,炭素が貯蔵される。この海洋生物による炭素貯蔵機構は生物ポンプとよばれ,その 効率は植物プランクトンによる光合成(基礎生産)特性によって大きく支配される。申請 者が研究対象とした西部北太平洋亜寒帯域は,世界有数の漁場であるとともに,生物によ る表面海水中の二酸化炭素分圧を下げる効果が世界の海の中で最も高い海域の1つであり,

また生物ポンプの効率が非常に高しゝことで知られている。この高い生物生産および二酸化 炭素吸収カの基盤は,植物プランクトンによる基礎生産(光合成)であることから,同海 域における植物プランクトンの生態生理および基礎生産カの時空間変化を理解することは,

今後の地球温暖化に伴う炭素循環過程や水産資源の変化を評価および予測する上で極めて 重要である。しかしながら,西部北太平洋亜寒帯域における植物プランクトンの光合成生 理および基礎生産カに関する知見は,申請者が本研究を開始するまで著しく乏しいもので あった。

  このため,申請者は先ず(独)水産総合研究センターの北海道区水産研究所および東北 区水産研究所が定期的に実施している北海道・東北沖の定線観測(AIIine)航海に2005年 3月,5月 ,7月およ び9月に参加した。その結果,植物プランクトン群集組成,光合成生 理バラヌーターおよび基礎生産カに関して明瞭な季節変化と海域における違いがあること が明らかとなった。例えば,5月の春季親潮珪藻ブルーム期では,大型の珪藻類が優占し,

他の季節あるいは黒潮親潮移行域と比ベ,高いク口口フィルn濃度および基礎生産カが観 察された。また,植物プランクトン群集の光合成の炭素固定における最大量子収率は,親

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潮 域 の5月 お よ び9月 で 著 し く 高 い 値 が 得 ら れ , こ れ と基 礎生 産カ との 間に 有意 な 相関 が 得 られ たこ とか ら, 親潮 域の 植物 プラ ンク トン 群集 の高 い 光利 用効 率が 高い 基礎 生産 を支 え てい るこ とが 本研 究に より 初め て明 らか とな った 。さ ら に, 光合 成― 光曲 線に 基づ く基 礎 生産 力推 定生 物光 学モ デル (光 合成 利用 放射 モデ ル) に よっ て見 積も った 基礎 生産 カと 全 球の 基礎 生産 カを 衛星 リモ ート セン シン グに より 推定 す る際 に現 在最 も良 く利 用さ れて い る 鉛 直 規 格 化 生 産 モ デ ル(VGPM)を 用 い て 得 ら れ た 値 を 比 較 し た 結 果 , 黒 潮 親 潮 移 行 域 にお いて ,両 者は 良い 一致 を示 した が, 親潮 域の 春季 ブ ルー ム期 では 相関 が非 常に 低か っ た。 この 結果 から ,親 潮域 にお ける 光合 成生 理バ ラヌ ー ター に基 づく ロー カル アル ゴリ ズムの作成が必要であることが示唆された。

  春季 親潮 ケイ 藻ブ ルー ム期 にお ける 植物 プラ ンク トン 群 集の 光合 成生 理特 性の 把握 ,お よ び 基 礎 生 産 力 推 定 の た めの 口ー カル アル ゴリ ズム を 構築 する ため ,申 請者 は2007年4月 に国際プ口ジェクトOECOS  (Oceanic Eco‑(如amicsC()m.p面son血mesl】bar師cPac伍c)の一環と し て実 施さ れた (独 )海 洋研 究開 発機 構白 鳳丸KH07‐1次 研究航海,5月および6月に(独)

水 産総 合研 究セ ンタ ー・ 東北 区水 産研究所のBLOSSOM(B100n血gPlmd:0nSuCoesSionsnldy血 meの 洲0M面neEcosys知1) プ 口 ジ ェ ク ト に 関 連 し た 若 鷹 丸 航 海WKD705お よ びWK0706 航 海に 参加 し, 集中 海洋 観測 を行 うこ とに 成功 した 。観 測 期間 中, 表層 では 珪藻 類が 優占 し ,高 い基 礎生 産カ が観 察さ れた 。また,基礎生産カを支配してしゝたと 考えられる因子を 評 価 し た 結 果 ,4月 の 表 層 にお ける 基礎 生産 カと ク口 口フ ィル ロ濃 度と の間 に有 意 な相 関 が 確認 され ,そ の基 礎生 産カ は主 に植 物プ ラン クト ン現 存 量に 依存 して いた こと が判 明し た 。 一 方 ,5月 お よ び6月 の 表 層 に お け る 基 礎 生 産 カ は, 植物 プラ ンク トン 現存 量 だけ で な く, 光合 成ー う七 曲線 から 得ら れる植物プランクトンの最大光合成速度 にも依存していた こ とが ,重 回帰 分析 によ り明 らか とな った 。ま た, 衛星 リ モー トセ ンシ ング から 春季 親潮 珪 藻ブ ルー ム期 にお ける 基礎 生産 カをv(珊 岨か ら推 定し た場合,水柱で の最適光合成速度 が 最も 影響 カの 大き い因 子で ある こと を発 見し た。 さら に ,水 柱で の最 適光 合成 速度 を衛 星 リモ ート セン シン グか ら見 積も るこ とを 検討 した 際, 水 柱で の最 適光 合成 速度 はク 口口 フ ィル ロ濃 度で 規格 化し た植 物プ ラン クト ンの 比吸 光係 数 との 間に 有意 な関 係が ある こと を 見い だし た。 最近 ,衛 星リ モー トセ ンシ ング から ク口 口 フィ ルロ 濃度 で規 格化 した 植物 プ ラン クト ンの 比吸 光係 数を 見積 もる こと が可 能に なっ て いる こと から ,そ れと 本研 究で 得 られ た関 係式 を用 いる こと によ り, 春季 親潮 域の 基礎 生 産カ が比 較的 容易 に見 積も るこ とが出来ることがわかった。

  上 記 の 科 学 的 発 見 に よ り, 申請 者は ,北 太平 洋海 洋 科学 機構 (PICES:N舳Pac伍cMadne Sdenceの踟血面on)の2008年度年会でBioC0n珊i仕eeBestPresぬt面onAvぬm(口頭発表の部)

お よ び 平 成 21年 度 岩 手 県 三 陸 海 域 研 究 論 文 募 集 で 岩 手 県 知 事 賞 を 受 賞 し た 。   審査 員一 同は ,こ れら の成 果を 高く 評価 し, また 研究 者 とし て誠 実か つ熱 心で あり ,大 学 院博 士課 程に おけ る研 鑽や 修得 単位 など もあ わせ ,申 請 者が 博士 (環 境科 学) の学 位を 受けるのに十分な資格を有するものと判定した。

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