博 士 ( 農 学 ) 金 甫 眠
学 位 論 文 題 名
Analysis of induction mechanism for the necrosis on Arabidopsis thaliana by TZ ¢ 〆 笂ゆ 7nosazc vz,rz/ts infection
(カブモザイクウイルスに感染したアラビドプシスにおける えそ病徴誘導機構の解析)
学位論文内容の要旨
Turnip mosaic virus (TuMV
)はポ ティウ イルスの 一種で、そのゲノムは全長9380bp 程度の一 本鎖 の 十鎖
RNAから なる。 植物への 感染は アプラ ムシに よって 非永続 的に行 われ、 宿主範囲 は 双子葉植 物の43 科、318 種 に及ぷ 。世界 の野菜生 産にお いては
Cucumber mosaic vircts (CMV) についで
2番目に 被害が 多く、 特にカ プ、ハ クサイ 、ダイコンなどのアブラナ科野菜において大 きな被害 をもた らして いる。
TuMVの防除 はもっ ぱら媒 介昆虫 である アブラ ムシの防除に頼らざ るを得な いが、 完全な アブラ ムシの防除は難しく、またこのウイルスに対して十分な抵抗性の遺 伝資源が 見出さ れてい ない植 物も多 いため 、TuMV に対 して有 効な防 除方法 がないのが現状であ る。
TuMVに 感 染 した 植 物 は 様々 な 病徴を 示すが、 典型的 な病徴 として 葉に濃 淡模様 を生じ る
¨モザイク¨や葉に壊死を生じる¨えそ¨などがある。これらの病徴により収量や品質に大きな影響 が現れる が、え そはモ ザイク に比べて外観品質を著しく損ね、また致死性を示すこともあるため その被害 はモザ イクよ り大き い。このため、ウイルス感染後の病徴をコン卜ロールすることがで きれ ば
TuMVに よ る被 害 軽 減 に役 立 っが、 これまで えそ病 微が発 現する 仕組み はよく 理解さ れ ていなか った。 本研究 は、え そ病徴が発現する仕組みの解明及びえそを誘導する植物側の因子の 単離を目的に行われた。
本研究では、植物材料としてアブラナ科のモデル植物であるArabidopsis thaliana (Arabidopsis ) を 用 いた が 、
Arabidopsisで は
TuMVのダ イコン 系統(TuRl ) に感染 すると モザイ クを示 す生態 型とえそ(葉脈に沿ったすじえそ)を示す生態型に分かれる。えそを示すLandsberg erecta (Ler) とモザイクを示すColumbia (Col ―0 )との間で交雑実験を行うと、えそが優性で単因子分離を示し 明 ら かに 植物 側にも えそを 誘導す る因子 があるこ とがわ かる。 また、
TuRlに感染 したLer でウ イルスはえそを起こした組織に局在しており、あたかも過敏感反応(hypersensitive reaction (HR) ) のよ うな様 相を呈 してい る。本 研究で は、これ まで病 徴とし て捉え られて きたえそがHR と類似 し た 反応 で は な いか と 考 え 、い く っかの 点から えそとHR の特徴 を比較し た。HR の誘導に は活 性酸素種(reactive oxygen species (ROS ))がセカンドメッセンジャーとして関与していることが 知 ら れて いる ため、 まずえ そを生 じてい る部位に おいて もROS が 生じてい るかど うか調 べた。
その 結果、
ROSのーつ である
H。0 っの 発生部 位が、 細胞死を起こしている部位やウイルスが局在 して いる部 位と一 致する ことが 明らか となった 。また 、HR に伴 う防御 反応の うち感染特異的夕 ンパク質(pathogenesis ―related (PR) protein) の発現あるいはそれらの発現を誘導するシグナル物 質の蓄積といった現象もえその発現とともに観察された。すなわち、salicylic acid (SA) やethylene の 顕 著な 蓄積 や発生 及びこ れら植 物ホル モンによ って誘 導され るPRI ,PR3 ,PR5 とい ったPR 遺
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伝 子の 活 性化 が認 めら れた 。 さらに、HRは光条件 によってその発現が影響を受 けるが、えそに おいて も植物を弱光下に置くことに よりその発現が抑制され病 徴が黄化へと変化した。このよう に 、え そ は致 死的 な病 徴で あ るにもかかわらず、 組織レベルで見た場合にはHRとよく似た防御 反 応が 誘 導さ れて いる こと が 示された。一方、HRと異なる点も明らかとなった 。それは細胞死 の 誘導 シ グナ ルと して えそ で はSAが関 与し てい る 点で ある 。病 原 菌に 対す るHRにおいて細胞 死 の誘 導 にSAは関 与し てい な いと 考え られ てい る が、 えそ ではSAが誘 導シ グナ ルとして必要 で あっ た 。こ のた め、 えそ はHR様の細胞死と考え られるものの、細胞死誘導の 経路においては HRと異 なると考えられた。
上 述の えそ の 誘導 には 植物側の因子が関与 しておりこの遺伝子はTu NIとして報告されている。
ま た、 このTu NI遺 伝 子のfine mappingの 結果、Tu NIの座乗領域には8個の遺伝子の存在が予測 さ れて いる 。 本研 究で は、このTu NI遺伝 子の単離を目的にさらに候補 遺伝子の絞り込みを行っ た 。ま ず、 こ れら の配 列が 転 写さ れて いる かど う か半 定量PCRで確 認し たところ、発現が確認 されたのは、8個の予測遺伝子のうちearly−response to dehydration (ERD) protein―like geneと3個 のresistance (R)‑like genesであった。ERD−like geneについては、AcIDs tagging systemにより作成 さ れ たLer由 来の 突然 変 異体 を用 いてTuMVの 接種 試験 を行 っ たと ころ 、Lerと 同様 なえ そ が発 現された 。すなわち、ERD−Jike geneはTu NIでないことが示さ れた。一方、3個のR―like genes について は互いに配列の相同性が高 く複数のR―like genesがえ そ誘導に協調的に働いている可能 性も考え られたため、本実験ではこ れら3個の遺伝子に対して同 時にpost transcriptional gene silencing (PTGS)を誘導し病徴に変 化が生じるかどうかを調ぺた。PTGSを誘導する方法としては、
CMV2−Alペクターを利用したvirus induced gene silencing (VIGS)及びinverted repeat (IR)を導入し てPTGSを 誘 導す る方 法を 用い た 。CMV−based VIGSで は3個のR−like genes聞 で 相同 な199bp の 配列 をべ ク ター に組 み込み、このコンス トラクトをLerに前接種した 。この前接種によルイン サ ート と相 同 な配 列を もっ たsiRNAが検 出 され たこ とか ら 、R‑like genesのPTGSが誘導されて い る と判 断 し、 さら にTuMVのTuRl系 統を 接種 した 。 その 結果 、茎 頂 部に おい て生 じる え そが 顕著に抑 制されたことから3個のR−like genesのいずれかがTu NIであることが強く示唆された。
IR導 入 に よ るPTGS誘 導 実 験 では 、3個のR―like genes間 で 相同 な471bpの1RをpjM007ベ クタ ーを用い て作成し、それをパイナリ ーベクターpBI121に組換えた後、Col−0個体にまず導入した。
そ の後Lerと交 雑を 行 い、Tu NI遺 伝子 とIRをも つ個体を選抜して以後 の解析に用いた。これら の 個体 では 、IR作 成に 使用 し た配 列と 相同 な配 列 をも つsiRNAが検 出さ れたことから、やはり Rーlike genesのPTGSが誘導されていると 判断された。その上で、TuRlを接種するとえそ病微の 発 現は 顕著 に 抑え られ 、か つPR1の 発現 も 大き く低下していた。以上 の結果から、3個のR‑like genesのいずれかがTuNIであることが明らかとなった。
本研 究で は 、Tu MVに 感 染し たArabidopsisに おい て生じ るえそが、Rgeneを介して誘 導され るHR、 すな わ ち病 原菌 に対 する 抵抗性反応と本質的に大きな 違いはないことを明らかに した。
こ うし た知 見 は、 作物 生産 にお いてTuMV感染による病徴の制 御を考える上で役立つとと もに、
他 の ウ イ ル ス 病 に お け る 病 徴 発 現 の 理 解 に も 大 き く 貢 献 す る こ と が 期 待 さ れ る 。
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学位論 文審査の要旨 主査
副査 副査
教授 教授 助教
増 田 税 上 田 一 郎 犬 飼 剛
学位論文題名
Analysis of induction mechanism for the necrosis on Arabidopsis thaliaTza by Turn ゆ7nosaz.c vr.7'7/ts infection
(カブモザイクウイルスに感染したアラビドプシスにおける えそ病徴誘導機構の解析)
本 研 究 |i圏 表24、jl田 支 献61を 台 み 、3幸も ` らで る偽 ぺ ージ102の 英支 鑰 文て ある 。 他1´ 、参 考論 文 3編 が 添 え ら れ て ` ` る 。
カ ブ モ ザ イ ク ウ イ ル ス (TuMV)I´ ` 上 る え そ モ ザ イ ケ 病 は ア プ うナ 科野 暮 にお ける 重 要病 害の ー って あ るも {、 て のウ イル ス |= 対す る 有効り防 除方法|ユ|1とんどな`、 。TuMV l=底肇する どえそやモザイヶ ど`、った 異ゼる病徽も 塊 れるも{、葉幕額や 根莱額ては特|´ `えそを生じた鳩 合I´`外観品質の低下が著L .J .。 従っ て 、ウ イル ス に底 肇し て もえ その 発 生を 抑制 て きれ ぼそ れrミ け 被害 |i軽 減さ れ るど :ぎ えられ る も{ 、て れ 主て えそ を 生じ る機 構 につ `` て はょ く理 解 され てい ャ も` った 。 本研 究は 、 アプ うナ 科のモ デ ル 植 物 ア う ビ ド プ シ ス を 材 料 どL、i) TuMV感 肇 | = 上 っ て 生 じ る え そ は 過 敏 意 釦 胞 死(HR)と 岡 椿 ゼ反応てあ るてどを|恩らも`にすろu)宿主側I´`存在するえそ鋳導遺伝手Tu N の構造を|恩らも`|くするてと に 上 っ てTuMV感 桀 | く 上 る え そ の 鐇 導 機 構 | :関 する 埋 解を ほめ る てと を目 的 |く 行っ ァ くも のて あ る。
底 桀LたTuMVlユ 錐 管 束 を 週 っ て 全 身I: 移 行L、 葉 の 錐 管 束 岡 辺 組 織 て え そ を 起 て す 。 本 研 究て | ユ、
ま ず ウイ ルスIiえそ を起 とLた 組 織上 り外 | ´` はほ ど んど 拡も { らず 、も ` つそ の組 織て プログうム釦胞死 のr導 シ グ ナ ル て あ る 活 性 醸 素 も { 発 生 し て ` 、 る て ど を 示Lた 。 圭 た 、 植 物 ホ ル モ レ て あ ろ サリ チ ル酸 の 蓄 積 や エ 手 レ レ の 放 出 及 び て れ ら の 物 質 に 上 っ て 発 現N<誇 導 さ れ ろ 陏 御 関 連 遺 伝 手 のmRNAレ ベ ル も 顕 著1く 増 ナ 、 し て ` ` る てど 争 示Lた 。さ らI= 、て れ らの 反応 は 遮え 条件 下 て抑 制さ れ 、え その 発 生も 弱 主 る こ ど を 示Lた 。 え そ て 観 寮 さ れ た て れ ら の 特 徴 は 抵 抗 性 反 応 時I´ ` 見 ら れ るHRと 同 じ てあ り 、て の て と も ` ら え そ |iHRど 罔 椿 乍 プ ロ グ う ム 釦 胞 死 の ー っ て あ る と 結 諭Lた 。 一 方 、 サ ル チ ル 酸の 合 成餓 あ る ぃ は エ 手 レ レ に 対 す る 底 女 性 が 低 下Lた 変 然 袞 異 体 を 岡 い て 交 雑 実 験 を 行 う て ど | く 上 り 、 え そ に −974―
お ける釦胞死の詩導| :もサルチル酸及 びェチレレが関与 しているてどを,目 らも`|´、Lた。えそ|ユての赱 に お``てHRど異乍っ ており、とれ|ユ 植物ど病原体どの 相互作f8 &゛`上り鋳導される釦胞死1´、お`ヽマ初め て 見出された知見てあ る。
TuMV惑 肇| =上 る えそ の‑18rはTuNI| : よっ て制 御 され てお り 、て の遺 伝 手も {マ ヮ ピレ グさ れ マ` 、る 領 域r肉1=8個 の 予 測 遺 伝 手 が 存 在 す る 。 牛 定 量PCR|´ `よ っ て8梱 のう ち4個 の遺 伝 手が 発現 し て` `る てとを確認L、その 中のERD‑like gene|´`つ いて1ユ竇 然袞異体を田`` た解析も`らTu NIてはり`ゝてどを示 Lアく 。 残り3個の 遺伝 手 |ユ `、 ず れも 抵抗 性 遺極 手(Rgene)産 物| 〓存在す るnucleotide binding site及び leucine rich repeat構違をもった遺伝 手T、重 複|=よって生じたものてある。てれらのR―like gene|´、つ`ヽ てfユ 、 | ユ じ めI:3遺 伝 手 間 て保 存さ れ て` 、ろ 配 列を 彼っ て ウイ ルス ベ クタ ー及 び ター ゲヮ ト 遺伝 手配 列 のinverted repeat構 造導 入I= よ るRNA silencingの鋳導を行``、3遺伝手 の発現を同時|´` 抑翻Lた 。そ の 上 てTuMVの 接 種 試 験 を 行 ` 、 、3遺 伝 手 の 発 現 抑 翻 | ´ ` よ り え そ の 抑 制 や 防 御 関 連 遺 伝 手 のmRNAレ ベ ル の 低 下が 起き て `` るて と を示Lた。 とれ ら の結 果も ` ら、Tu NIは3個 のR‑like geneの いず れ も` てあ るとどを一 週らも`1´`Lた 。
収 上の 館果 上 り、TuMV威 肇| =上 る えそ |i植 物側 | :存 在す ろR―hkegene|´、上って鋳 導されるてど 及び そ の詩 導シ グ ナル は活 性 醸毒 及び サ リチ ル酸 、 エチ レレ を 命し て下 流 |´ `伝 わ りHR様の 釦 胞死 をぅ|
き起 こ すヒ ともI´` 防 御開 速遺 伝 手の 発塊 を 鋳導 して ` 、る てど が 示さ れた 。 本研究は、えそ も{軍ゼる麦 動 的 り 罹 病 性 反 応 て は り く むLろ 抵 抗 性 と 岡 椿 ゼ 病 原 体 に 対 す る 能動 的 ゼ反 応て あ るて どを | ゑら も` に Lた も の て あ り 、 て れ ら の 成 果 | ユ ウ イ ル ス 感染 |´ ` よる 病倣 鋳 導機 構を 埋 解L、 さら に病 徽 の制 御方 法 を 考 え る 上 て 重 要 ゼ 知 兄 を 与 え る も の て あ る。 上 って 、審 査 員一 同|i、金 甫 民氏 が博 一 士I( 農辱 )の 常 伍を 女 ける のに 十 分ゼ 資格 を 有す るど 認 めた 。
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