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学 位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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     博 士( 生 命 科学 )    日 高和 宏 学 位 論 文 題 名

IVIonocarboxylate transporter9(h/ICT9) の機能角牟析および      組 織 発 現 分 布 に 基 づ < 生 理 的 意 義 に 関 す る 研 究

学 位論文内容の要旨

  SLCス ー パ ー フ ァ ミ リ ー の1っ で あ るMonocarboxylate transporter (MCT)フ ァ ミ リ ー は 、 内 因 的 ・ 外 因 的 な カ ル ボ ン 酸 型 化 合 物 の 細 胞 膜 輸 送 に 関 与 す る ト ラ ン ス ポ ー タ ー で あ る 。14 種 の ア イ ソ フ オ ー ム の う ち 、 こ れ ま で にMCTl‑4、6、8、10に 関 す る 輸 送 基 質 や 機 能 が 報 告 さ れ て お り 、H゛ 共 輸 送 型 のMCTl‑4の 基 質 と し て 乳 酸 等 の 短 鎖 脂 肪 酸 、 促 進 拡 散 型 の MCT8‑10の 基 質 と し て 甲 状 腺 ホ ル モ ン な ど の 生 体 の 恒 常 性 維 持 に 不 可 欠 な 生 体 内 物 質 が 報 告 さ れ て い る 。 さ ら に 、 促 進 拡 散 型 のMCT6の 基 質 と し て 医 薬 品 化 合 物 で あ る ブ メ タ ニ ド が 報 告 さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 そ の 他 の ア イ ソ フ オ ー ム に 関 す る 機 能 解 析 の 報 告 は な ぃ 。 ま た 、 ニ コ チ ン 酸 等 の カ ル ボ ン 酸 型 化 合 物 の 輸 送 は 、MCTフ ァ ミ リ ー に よ る 輸 送 が 示 唆 さ れ て い る も の の 、 そ の ア イ ソ フ オ ー ム の 特 定 に 至 っ て い な ぃ 。 さ ら に 、 腫 瘍 細 胞 に お い て そ の 発 現 が 増 加 す るMCTア イ ソ フ オ ー ム も 存 在 し 、 病 態 進 行 期 に お け るMCTの 発 現 変 動 は 、 疾 患 マ ー カ ー や 新 薬 開 発 の 標 的 と な る 可 能 性 が 考 え ら れ る 。 し た が っ て 、 機 能 未 知 のMCT ア イ ソ フ オ ー ム の 輸 送 基 質 、 さ ら に 組 織 発 現 分 布 や そ の 生 理 的 意 義 を 明 ら か に す る こ と は 、 将 来 的 な 新 薬 開 発 や 個 別 化 医 療 の 基 盤 形 成 に お い て 非 常 に 重 要 で あ る 。 そ こ で 本 研 究 で は 、 未 だ 機 能 解 析 が 行 わ れ て い な ぃMCT9に 着 目 し 、 組 織 発 現 分 布 とMCT9発 現 系 に よ る 輸 送 基 質 の 探 索 な ら び に 機 能 解 析 を 行 い 、 病 態 モ デ ル ラ ッ ト を 用 い て 組 織 発 現 分 布 に 基 づ くMCT9 の 生 理 的 意 義 を 解 析 し た 。

1) MCT9の 組 織 発 現 分 布 と 機 能 解 析

  始 め に 、 ヒ ト お よ び ラ ッ ト に お け る 組 織 発 現 分 布 を タ ン パ ク 質 とmRNA発 現 レ ベ ル に つ い て 検 討 し た 。 そ の 結 果 、MCT9は ヒ 卜 お よ び ラ ッ ト に お い て 共 に 組 織 ユ ビ キ タ ス に 発 現 し 、 特 に 脾 臓 、 腎 臓 、 精 巣 、 卵 巣 、 肝 臓 に 高 発 現 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。 し か し な が ら 、 ヒ ト お よ び ラ ッ ト に お い て 、 タ ン パ ク 質 とmRNAの 発 現 分 布 に 相 関 は 認 め ら れ な か っ た 。   続 い て 、MCT9安 定 発 現 細 胞 を 作 製 し 、MCTフ ァ ミ リ ー に 輸 送 さ れ る 化 合 物 や 比 較 的 嵩 高 い カ ル ボ ン 酸 型 化 合 物 を 基 質 候 補 化 合 物 と し て 輸 送 基 質 の 探 索 を 行 っ た 。 そ の 結 果 、 葉 酸 が 良 好 な 基 質 で あ る こ と が 明 ら か と な っ た た め 、MCT9を 介 し た 葉 酸 の 輸 送 特 性 を 詳 細 に 解 析 し た 。MCT9を 介 し た 葉 酸 の 輸 送 は 中 性 条 件 下 に お い て 高 値 を 示 し 、 そ の 輸 送 特 性 は 、 MCT6、8、10と 同 様 に 促 進 拡 散 型 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。 ま た 、MCT9の 輸 送 特 性 が 、 他 の 葉 酸 ト ラ ン ス ポ ー タ ー(FRa、PCFT、RFC)の 輸 送 特 性 と 異 な る こ と か ら 、MCT9が 新 規 葉 酸 ト ラ ン ス ポ ー タ ー で あ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 次 に 、 各 種 化 合 物 を 用 い て 葉 酸 取 り 込 み に 対 す る 阻 害 効 果 を 検 討 し た と こ ろ 、MCT9は 葉 酸 構 造 類 似 体 を 強 く 認 識 し 、 特 に プ テ ロ イ ン 酸 の 構 造 に 対 す る 親 和 性 が 高 い こ と が 明 ら か と な っ た 。 一 方 、 葉 酸 が 主 要 な 役 割 を 担 っ て い る ホ モ シ ス テ イ ン 代 謝 に 関 わ る ピ リ ド キ シ ン(VB6)や シ ア ノ コ バ ラ ミ ン(VB12)、 セ リ ン や シ ス テ イ ン 、 さ ら に 環 状 ア ミ ノ 酸 で あ る ヒ ス チ ジ ン や プ ロ リ ン に よ り 、VMの 葉 酸 取 り 込 み が 比 較 的 強 く 阻 害 さ れ る こ と が 明 ら か と な っ た 。 し た が っ て 、 生 体 に お い て 高 濃 度 に 存 在 す る こ れ ら 化 合 物 に よ り 、MCT9の 輸 送 機 能 が 影 響 さ れ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。   さ ら に 、MCT9が 比 較 的 多 く 発 現 し て い る 腎 臓 に 着 目 し 、HK‑2細 胞 とMCT9 siRNAを 用 い

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て、MCT9 の機能解析を検討した。その結果、尿細管膜上皮細胞においてMCT9 は20‑30 %の 葉 酸の取り 込みに 寄与して おり、 MCT9 を介した 見かけのb 値は82.8 nM と算出され、FRa (Km ニl‑IO nM) に次ぐ親和性を有することが明らかとなった。また、MCT9 を介した葉酸輸送 の方向性は、再吸収方向の輸送に対応する頂側膜(apicaD 側から側底膜くbasolateraD 側の 方向が優位であり、MCT9 の頂側膜 (apicaD 側の局在と対応する結果となった。したがって、

MCT9 は 腎 臓 に お い て 葉 酸 の 再 吸 収 に 関 与 し て い る こ と が 明 ら か と な っ た 。 2 )病態時における葉酸トランスポーターの生理的意義

   組織発現分布や機能解析の結果から推測された組織発現分布に基づくMCT9 の生理的意 義をさらに明らかにするために、病態モデルを用いた加vivo 系による検討を試みた。そし て、MCT9 が比較的多く発現し、葉酸の再吸収に寄与することや、葉酸がホモシステイン 代謝に関与していることから葉酸トランスポーターの生理的意義が大きいと考えられる腎 臓に着目した。さらに、葉酸トランスポーターの発現変動や機能変化が生じることが予想 された 腎疾患 として、 近年、広 範囲の腎疾患の総称として CKD が注目を集めていること から、 CKD 進行下における解析に汎用性が高いと考えられる0..75 %adenine 誘発CKD モデ ルラットを用いた。そして、CKD の進行に伴う各臨床検査値の変化と葉酸トランスポータ ーの発現変動について解析した。

  CKD 患者において、血中葉酸量の減少と血中ホモシステイン量の増加といった負の相関 が報告されていることから、本モデルにおける血中葉酸量と血中ホモシステイン量の関係 を検討した。その結果、本モデルにおいて血中ホモシステイン量と総尿中葉酸量は変動し なかった。一方、血中葉酸量は adenine 摂食期間に依らず、6 割程度減少することが明らか となった。そこで、本モデルによる腎臓、肝臓、小腸各組織における各葉酸トランスポー ターの発現変動を検討したところ、腎臓においてMct9 とFra の発現レベルは共に減少し、

Pcfi の発現はmRNA レベルにおいて増加した一方、タンパク質レベルでは変動しなかった。

またRfc の発 現は、mRNA レ ベルにおいて減少した一方、タンパク質レベルで増加した。

一方、 肝臓に おいて、 Fra の発 現はmRNA レベルにおいて増加した一方、タンパク質レベ ルでは減少した。また Pcft の発現は、mRNA レベルにおいて減少した一方、タンパク質レ ベ ル で 増 加 し た 。 さ ら に 、 小 腸 に お い て 、 Fra の 発 現 は 増 加 し た 。    このように腎障害による腎臓における葉酸トランスポーターの顕著な発現減少に伴い血 中葉酸量は減少したことが示唆された。また、この血中葉酸量の減少、さらに組織内葉酸 濃度を正常に戻す方向に対応して各組織葉酸トランスポーターが発現変動して機能してい ることが考えられる。さらに、本モデルによる臨床検査値と各組織における葉酸トランス ポーターの発現変動の関係により、 CKD 進行早期から血中葉酸量の減少が認められたこと から、腎障害のさらなる悪化やその予防を兼ねた葉酸の早期摂取の必要性が示唆された。

   以上 、本研究 により 得られた 知見がMCT ファミリーのさらなる機能解析やCKD 治療の さら なる一助 になるこ とを期 待する。

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(3)

学位 論文審査の要旨 主 査    教 授    井 関    健 副 査    教 授    菅 原    満 副査    准教 授    山口浩明 副査    准教 授    武隈    洋

学 位 論 文 題 名

IVIonocarboxylate transporter9(IVICT9) の機能角翠析および      組 織 発 現 分 布 に 基 づ く 生 理 的 意 義 に 関 す る 研 究

   ヒ 卜 全 ゲ ノ ム の 解 読 に よ ル ト ラ ン ス ポ ー タ ー の 遺 伝 子 は 約 400 種 類 存 在 す る こ と が 確 認 さ れて い る が 、 機 能 が 未 知 で あ り か つ 生 理 的 意 義が 明ら かと され て い な い ト ラ ン スポ ー タ ー が 数 多 く 存 在 し て い る 。 卜 ラ ン ス ポー ター の機 能変 動 や 発 現 変 動 は 、薬 物 動 態 へ の 関 与 だ け で な く 、 新 薬 開 発 等 の標 的と して も注 目 を 集 め て い る 。 MCT フ ァ ミ リ ー は 、 14 種 の ア イ ソ フ オ ー ム が 同 定 さ れ て お り 、 MCTl‑4 、 6 、 8 、 10 に 関 す る 機 能 解 析 が 既 に 報 告 さ れ て い る が 、 そ の 他 の ア イ ソ フ オ ー ム に関 す る 報 告 は ほ と ん ど な い 。

   本 論 文 は 、 他 の MCT ア イ ソ フ ォ ー ム と の 相 同 性 が 25 % 程 度 と 低 く 、 未 だ 機 能 解 析 が 進 ん で い な い MCT9 ( エ 9L C16A め に 着 目 し 、 そ の 機 能 や 組 織 発 現 分 布 を わ vitro お よ び わ ガ vo 実 験 系 を 用 い て 検 討 す る こ と で 、 組 織 発 現 分 布 に 基 づ く MCT9 の 生 理 的 意 義 を 見 出 し 、 将 来 的 な 新 薬 開 発 な ら び に 個 別 化 し た 薬 物 療 法 の 基 盤 形 成 に 向 け た 有 益 な 知 見 を 得 る こ と を 目 的 と し た も の で あ る 。    第 1 章 で は 、 MCT9 発 現 系 を 用 い て そ の 機 能 解 析 を 行 い 、 MCT9 が 葉 酸 を 良 好 な 基 質 と す る こと を 見 い だ し 、 そ の 輸 送 特 性 に 於 い て 他 の 葉酸 トラ ンス ポー タ ー と は 異 な る 新規 な 葉 酸 ト ラ ン ス ポ ー 夕 一 で あ る こ と を 明 らか にし てい る。

ま た 、 ヒ ト 正 常 腎 由 来 HK‑2 細 胞 を 用 い た 検 討 か ら 、 MCT9 が 頂 側 膜 側 に 局 在 し て 発 現 し て い るこ と を 明 ら か に し 、 こ の こ と よ り 本 ト ラ ン スポ ータ ーは 葉酸 の 再 吸 収 に 関 与 して い る こ と を 考 察 し て い る 。

   第 2 章 で は 、 0.75 % adenine 誘 発 CKD モ デ ル ラ ッ ト を 用 い て 葉 酸 の 体 内 動 態 と 各 組 織 に お ける 葉 酸 ト ラ ン ス ポ ー タ ー の 発 現 変 動 に つ い て解 析し てい る。

そ の 結 果 、 CKD モ デ ル ラ ッ ト に 於 い て は 血 中 お よ び 尿 中 の 葉 酸 濃 度 は 低 下 し た こ と 、 お よ び モ デ ル ラ ッ ト 腎 臓 の MCT9 発 現 量 が 減 少 し て い た こ と か ら 、 MCT9 は 葉 酸 の 尿 細 管 再 吸 収 に 関 与 す る こ と を わ VI VO で 明 ら か に し て い る 。 こ れ ら の 結 果 は 第 1 章 で 明 ら か に し た MCT9 の 細 胞 膜 局 在 性 と も よ く 合 致 す る 結 果 で あ る 。 以 上 の 知 見 は 、 MCT9 の 機 能 や 組 織 発 現 分 布 、 さ ら に CKD 病 態 時 に お け る 葉 酸ト ラ ン ス ポ ー タ ー の 生 理 的 意 義 を 検 討 し た 初の 知見 であ り、

MCT フ ァ ミ リ ー の さ ら な る 機 能 解 析 や CKD 治 療 の 一 助 と し て 有 用 な 情 報 と な り 得 る 。

   よっ て著 者は ,北 海道 大学 博士( 生命 科学 )の 学位 を授 与さ れる 資格 ある も(

と 認 め る 。

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図2に実験装置の概略を,表1に主な実験条件を示す.実