博 士 ( 工 学 ) 村 田 年 昭
学 位 論 文 題 名
誘導電動機のぺクトル制御と効率最適化 速度制御系構成に関する研究
学位論文内容の要旨
誘 導電 動 機 の べ クト ル 制 御 は ,可 変 速ACドラ イ ブ シ ス テム の 中 心的 技術と して, 産業 界の あ ら ゆ る分 野 に 応 用 され つっあ る。従 来,ベ クト ル制御 は,1次回 転磁界 と2次回転 磁界と が過 渡状 態に おいて も同期 してい るとの 仮定 のもと に理論 が展開 され ており ,2次鎖交 磁束座 標系で 得ら れる べクト ル関係 をいか に実現 する かにポ イント がおか れて いた。 ベクトル制御に関する多 く の 研 究, 開 発 は ,PWMイ ン バ ータ な ど の 電 流制御 形電力 変換器 の開 発と, ベクト ル演算 器な どの 制御 回路の 設計, 開発に 集中し てお り,過 渡現象 などの 理論 的な検 討はほとんど行われてい な い 。1次 回 転 磁 界 と2次回 転磁界 とが 過渡状 態にお いても 同期し てい るとの 保証は なく, ベク トル 制御 の過渡 現象の 把握の 欠如, 検討 の必要 性が指 摘され てい た。
本 論文は 誘導電 動機の 瞬時 値制御 の基礎 となる 状態方 程式 を求め ,制御工学の観点からベクト ル制 御理 論を構 築し, 制御理 論を応 用し たべク トル制 御系, 効率 最適化 速度制御系構成を構成を 検討 した もので ある。
本 論 文 は 全 体 で 7章 で 構 成 さ れ て お り , 以 下 に 各 章 の 概 略 を 述 べ る 。 第1章は 本論 文の研 究の背 景と問 題点 を述ベ ,本論 文の主 題であ るぺ クトル 制御と 効率最 適化 制御 に関 する理 論の概 略と特 徴を明 らか にして いる。
第2章でfま ,本論 文の 基本式 である 同期角 速度 で回転 する座 標軸の 電圧方程式,鎖交磁束式,
ト ル ク 式 を 求 め る の に 必 要 な ぺ ク ト ル の 概 念 , 座 標 変 換 理 論 を 述 べ た 。 同 期角 速 度 で 回 転す る座 標軸の 諸量 は周波 数成分 を含ま ず直流 分の ように 取り扱 うこと がで き, この 座標軸 の状態 方程式 が誘導 電動 機の過 渡現象 を記述 する 数学モ デルであることを指摘し てい る。
第3章 で は ,2次 鎖 交 磁束と トル クtま1次 電流制 御と なるこ とに着 目して ,電 流制御 に対応 し た 状 態 方程 式 を 導 出 して い る 。 誘 導 電動 機 は3入 力3出 力3次系 の 制 御 対 象 であ る こ と が 明ら
か にされ ,本論 文の主 題のー つで あるべ クトル 制御理 論が 確立さ れる。 次に, 電流制御入カの状 態 方 程式 を基 に2次 鎖交 磁束座 標系で 得られ る良好 な制 御特性 を定常 ,過渡 状態 ともに いかに 実 現 す るか を考 え,現 代制御 理論の 立場か らべ クトル 制御理 論を展 開す る。ベ クトル 制御は ,2次 電 流に対 抗して 流れる トルク 成分 電流と これと 直交す る磁 束成分 電流を 独立に 制御することであ る 。 この ため ,同期 角速度 で回転 する座 標軸 を定常 ,過渡 状態に かか わらず ,常に2次 鎖交磁 束 軸 に 一致 させ る制御 を行え ば,1次電 流のト ルク成 分電 流と磁 束成分 電流を 独立 に制御 できる こ と を明ら かにし ている 。ベク トル 制御系 と速度 制御系 を同 時に構 成する 有効な 手法として,多入 力 多出力 系の最 適レギ ュレー 夕理 論によ る制御 系構成 法を 提案し ,本論 文で提 案するべクトル制 御 法の有 用性を 等価直 流モデ ルを 用いてシミュレーションを行い,目標値変動,パラメ一夕変動,
外 乱変動 に対し て良好 な特性 が得 られる ことを 示した 。
第4章 で は , ベ クト ル 制 御 誘導電 動機の 損失と 効率 にっい ての関 係を明 確にし ,2次鎖交 磁束 を 可変す る効率 最適化 の手法 を示 した。 誘導電 動機に おい ては, 制御入 カで制 御可能な損失は銅 損 と鉄損 である 。そこ で,同 期速 度で回 転する 座標軸 の定 常状態 の等価 回路よ り損失を評価し,
制 御 可能 な損 失を1次電 流の有 効成分 である トルク 成分 電流と 磁束成 分電流 とで 表し, ベクト ル 制 御誘導 電動機 の効率 最適化 の条 件を導 出した 。本論 文の 効率最 適化制 御は, 制御可能な損失を 最 小 と す る1次 電 流 の トル ク 成分 電流と2次 鎖交磁 束成分 電流の 電流比 から ,電流 誤差を 定義す る ことに より, これを 零と制 御す ること により 実現さ れる 。最大 効率運 転は磁 束を制御すること に な り高 速応 答は期 待され ないと されて きた が,2次回 転磁界 の角速 度を制 御す ること により , 鎖 交磁束 一定制 御のべ クトル 制御 と同程 度の高 速応答 が得 られる ことを シミュ レーションによっ て 確 認し てい る。効 率最適 化速度 制御系 構成 は本論 文の主 題のー っで あり, 第4章の内 容がそ れ に 当てら れてい る。
第5章 で は , ベ クト ル 制 御 の 最大 の 問 題 点 で ある2次鎖交 磁束の 推定に っいて 考察 を行い ,1 次 鎖 交磁 束シ ミュレ ー夕, 双線形 磁東オ ブザ ―バに よる2次鎖 交磁束 の推定 法を 検討す る。従 来 の 静止座 標軸の 状態方 程式に 基づ いた磁 束演算 におい て, 電流モ デルで は,推 定値への収束速度 は2次 回路 の 時 定 数 に 限定 さ れ, 高速推 定が不 可能で あり, また 推定値 は2次抵抗 変動の 影響が 大 きいこ とが指 摘され ていた 。電 圧モデ ルから の演算 では ,推定 値と真 値との 誤差が零に収束し な いなど の問題 点があ った。 本章 では, 同期角 速度で 回転 する座 標軸の 状態方 程式を基に,回転 磁 界に蓄 えられ るエネ ルギー の無 効分か ら鎖交 磁束を 推定 する磁 束シミ ュレ一 夕にっいて考察を 行 ってい る。同 期角速 度で回 転す る座標 系を採 用すれ ば, 電流モ デル, 電圧モ デルの両者とも推 定 誤差が 零に収 束する 磁束シ ミュ レータ が構成 できる こと を示す 。
磁束 シミュ レ一夕 の推定 誤差 の収束 度は,1次 側,あ るいは2次 側回路 の時定数で定まるので,
2次 鎖交磁 束を高 速推 定する 有効な 方法と して ,同期 角速度 で回転 する座 標系 の状態 方程式 に基 づいて 双線 形オブ ザーバ を構成 し, これを べクト ル制御 系に応 用し て,良好な制御特性が得られ ること をシ ミュレ ーショ ンによ って 検証し た。
第6章 で は ,ベ ク トル 制御に 代わ る制御 として 注目さ れて いる1次鎖 交磁束 制御の 基本理 論を 検討し てい る。1次鎖 交磁束 制御は 電圧制 御に ナょることから,電圧制御入カの状態方程式より,
1次鎖 交 磁 束 制 御に お ける1次電 流の磁 束成分 電流 とこれ と直交 するト ルク成 分電 流の非 干渉化 の物理 的意 味を明 確にし た。最 適レ ギュレ 一夕理 論を応 用した1次 鎖交磁 束制 御法と べクト ル制 御 法の 比 較 , 検 討を 行 い ,1次鎖 交 磁 束 制 御法は1次 電圧回 路が非 干渉 化され ,2次抵抗 変動な どのパ ラメ 一夕変 動が生 じても 発生 トルク に影響 しない 制御系 構成 が可能であることを指摘し,
1次 鎖交磁 束制御 の有 用性を シミュ レーシ ョン により 検証し た。さ らに, 誘導 電動機 の損失 を一 般 化し ,1次 鎖 交磁 束 制御に よる効 率最 適化手 法を明 らかに してい る。1次鎖 交磁 束一定 制御と 1次鎖 交 磁 束 可 変に よ る効率 最適化 速度 制御系 のシミ ュレー ション 結果 より,1次 鎖交磁 束制御 による 効率 最適化 制御法 の有用 性を 示した 。
第7章は 本論文 の結諭 として 本論文 の成 果をま とめる ととも に, 今後の 研究課 題にっ いて述 べ ている 。
学位論文審査の要旨 主 査 教 授 土 谷 武 士 副 査 教 授 深 井 一 郎 副査 教授 長谷川 淳 副 査 教 授 島 公 脩
本 論文は ,誘 導電動 機の瞬 時値制 御法と して ,近年 注目さ れてい るべクトル制御系と効率最適 化 制御系 構成を 目的と して おり,誘導電動機の瞬時値制御の基礎とナょる状態方程式を明らかにし て ,制御 工学の 観点か らべ クトル 制御理 論を構 築し ,制御 理論を 応用したべクトル制御系,効率 最 適化速 度制御 系を達 成し ている 。本論 文で提 案さ れてい る効率 最適化制御法は,一次電流のト ル ク成分 電流と2次 鎖交磁 束の比 を最 適に制 御する ことに より ,従来 の効率 最適化 制御法 に比較
して, 過渡状 態で はべク トル制 御系の 制御 性能を 損なう ことな く,定 常状 態では最大効率が得ら れる制 御系構 成が 可能で あるこ とを明 らか にして いる。
本 論 文 は 全 体 で 7章 で 構 成 さ れ て お り , 以 下 に 各 章 の 概 略 を 述 べ る 。 第1章は 本論文 の研究 の背 景と問 題点を 述べ, 本論 文の主 題であ るべク トル制 御と 効率最 適化 制御に 関する 理論 の概略 と特徴 を明ら かに してい る。
第2章で は,本 論文の 基本 式であ る同期 角速度 で回 転する 座標軸 の電圧 方程式 ,鎖 交磁束 式,
トルク 式を求 める のに必 要なべ クトル の概 念,座 標変換 理論を 述べて いる 。同期角速度で回転す る座標 軸の諸 量は ,周波 数成分 を含ま ず直 流分の ように 取り扱 うこと がで き,この座標軸の状態 方 程 式 が 誘 導 電 動 機 の 過 渡 現 象 を 記 述 す る 数 学 モ デ ル で あ る こ と を 指 摘 し て い る 。 第3章 で は, 誘 導 電 動 機は3入 力3出力3次 系 の 制御 対 象 で あ るこ と が明 らかに され, 本論 文 の主題 のーっ であ るベク トル制 御理論 が確 立され る。
電流 制御入 カの状 態方程 式を基 に,現代制御理論の立場からべクトル制御理論を展開している。
ペクト ル制御 系と 速度制 御系を 同時に 構成 する有 効な手 法とし て,多 入力 多出力系の最適レギュ レー夕 理論に よる 制御系 構成法 を提案 し, 本論文 で提案 するべ クトル 制御 法の有用性を等価直流 機モデ ルを用 いて シミュ レーシ ョンを 行い ,目標 値変動 ,パラ メー夕 変動 ,外乱変動に対して良 好な特 性が得 られ ること を示し ている 。
第4章 で は, ベ ク ト ル制 御誘導 電動 機の損 失と効 率にっ いて の関係 を明確 にし,2次 鎖交磁 束 を可変 する効 率最 適化の 手法を 示した 。最 大効率 運転は 磁束を 制御す るこ とになり,高速応答は 期待 されな いとさ れて きたが ,2次回転 磁界の 角速度 を制御 する ことに より, 鎖交磁 束一 定制御 のべク トル制 御と 同程度 の高速 応答が 得ら れるこ とをシ ミュレ ーショ ンに よって確認している。
効率最 適化速 度制 御系構 成は本 論文の 主題 のーっ であり,第4章の内容がそれに当てられている。
第5章 で は, ベ ク ト ル 制御 の 最 大 の 問 題点 で ある2次鎖 交磁 束の推 定にっ いて考 察を行 い,1 次鎖 交磁束 シミュ レー 夕,双 線形磁 束オブ ザーバ によ る2次 鎖交 磁束の 推定法 を検討 して いる。
本章で は,同 期角 速度で 回転す る座標 系を 採用す れば, 電流モ デル, 電圧 モデルの両者とも推定 誤差が 零に収 束す る磁束 シミュ レータ が構 成でき ること を示し ている 。磁 束シミュレ一夕の推定 誤 差の 収 束 度 は ,1次 側 ,ある いtま2次側回 路の時 定数で 定ま るので ,2次鎖交 磁束を 高速推 定 する有 効な方 法と して, 双線形 オブザ ーバ を構成 し,こ れをベ クトル 制御 系に応用して,良好な 制御特 性が得 られ ること をシミ ュレー ショ ンによ って検 証して いる。
第6章 で は, ベ ク ト ル制 御に代 わる 制御と して注 目され てい る1次 鎖交 磁束制 御の基 本理論 を 検討 してい る。最 適レ ギュレ 一夕理 論を応 用した1次 鎖交磁 束制 御法と べクト ル制御 法の 比較,
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検 討を 行い ,1次 鎖交 磁束制 御法は ,1次電圧 回路が 非干渉 化さ れ,2次抵 抗変動 などの パラメ ー 夕 変動 が生 じても 発生ト ルクに 影響し ない 制御系 構成が 可能で ある ことを 指摘し ,1次鎖交 磁束 制 御の有 用性を シミュ レー ション により 検証し てい る。さ らに, 誘導電 動機の損失を一般化し,
1次 鎖 交 磁束 制 御 に よ る効 率 最 適 化 手法 を 明 ら かに してい る。1次鎖 交磁束 一定制 御と1次鎖 交 磁 束可 変に よる効 率最適 化速度 制御系 のシ ミュレ ーショ ン結果 より ,1次 鎖交 磁束制 御によ る効 率 最適化 制御法 の有用 性を 示して いる。
第7章は本 論文 の結論 として 本論文 の成 果をま とめる ととも に,今 後の 研究課 題にっ いて述 べ て いる。
以 上 ,本 論 文 は 誘 導電 動 機 が3入力‑3出 カ の制 御対象 であ ること を明ら かにし ,速度 制御 , ベ クトル 制御, 効率最 適化 制御を 同時に 実現す る制 御系構 成法を 可能に した点で,その工学的意 義 は大き く,今 後の制 御理 論を応 用した産業用ドライブシステムの発展に貢献すること大である。
よ ヮ て 著 者 は , 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。