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修士論文 木暮usb

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TUMSAT-OACIS Repository - Tokyo University of Marine Science and Technology (東京海洋大学)

ハバノリの抗炎症作用

著者

木暮 暁子

学位授与機関

東京海洋大学

学位授与年度

2010

URL

http://id.nii.ac.jp/1342/00000941/

(2)

修士学位論文

ハバノリの抗炎症作用

平成 22 年度

(2011 年 3 月)

東京海洋大学大学院

海洋科学技術研究科

食機能保全科学専攻

木暮 暁子

(3)

目次

目次

目次

目次

第1章

序章

1-1.疾患と炎症の関わり ... 1 1-2.炎症の概要 ... 3 1-3.炎症性メディエーター... 4 1-4.抗炎症薬... 6 1-5.ヘルスフードの有用性... 8 1-6.本研究の目的 ... 9

第2章

カラゲニン浮腫モデルマウスにおけるハバノリ抽出物の効果

2-1.はじめに...10 2-2.実験方法...10 2-3.結果と考察 ...13

第3章

ハバノリ抽出物のカラゲニン浮腫抑制作用メカニズムの解明

3-1.はじめに...16 3-2.実験方法...18 3-3.結果と考察 ...23

第4章

ハバノリ抽出物の有効成分の分離と精製

4-1.はじめに...30 4-2.方法 ...30 4-3.結果と考察 ...32

第5章

総括

... 45

参考文献

... 47

謝辞

... 53

(4)

第1章 序章

1‐1.疾患と炎症の関わり

現在社会では不規則な食生活や過度なストレスなどにより、中高年を中心として生活習 慣病の患者が増加している。生活習慣病とは平成8 年 12 月に厚生労働省が導入した新しい 疾病の概念であり、この疾病により日本人の3 分の 2 近くが亡くなっている1-2)。生活習慣 病として主なものには肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧などがあり、がん、脳卒中、肝臓 病、骨粗しょう症なども含まれる。特に、肥満、高脂血症、糖尿病、高血圧症の4つの症 状は自覚症状が出にくいため症状が悪化するまで放置されることが多く、動脈硬化症や心 疾患、脳卒中などの致死性の高い病気の原因にもなる3-6)。生活習慣病を予防するためには、 適度な運動やストレス発散、バランスのとれた食事をするなど健康管理に気をつけなくて はならない。しかし、現代のわが国ではこのような管理に努めることが困難であり、生活 習慣病を予防しにくいと考えられる。 また、これらの生活習慣病において原因や病態の基盤として重要とされるものの一つに 慢性炎症がある。例えば肥満においては、内臓脂肪が蓄積し、脂肪細胞が肥大するとマク ロファージなどの免疫細胞が活性化して慢性的な炎症が起きることが知られている 7-9)。そ してこの炎症により、例えばインスリンの作用が低下することがマウス実験で示されてお り、このインスリンの低下はさらに動脈硬化や糖尿病などを引き起こす 10-12)。生活習慣病 の他にも、炎症性疾患と呼ばれる炎症を主な原因とした疾患が数多く存在し、代表的なも のには自己免疫性疾患である関節リウマチやアレルギー性疾患であるアトピー性皮膚炎な どが挙げられる。このような疾患と炎症反応の関係を表 1 に示した。このように、ほとん どの生活習慣病は何らかの炎症反応が関与していることが明らかであり、炎症反応を防ぐ ことは生活習慣病などの各種疾患の予防・改善に有効だと考えられる。このような背景か ら本論文においては炎症反応に着目して研究を行った。

(5)

1.各種疾患と炎症反応の関係

肥満:

内臓脂肪の蓄積による脂肪細胞の肥大に伴い、マクロファージやリンパ球など の免疫系細胞が浸潤してくる。それによって炎症性サイトカインが多量に産生され、脂 肪細胞の機能障害が生じ、インスリン抵抗性や動脈硬化など様々な症状を引き起こす。 肥満により他の疾病を併発しないためにも、炎症反応を抑制することは重要である 11-14)

糖尿病:

日本では糖尿病全体の9 割を占めるのが、食事や運動などの生活習慣が関係 しているといわれている2型糖尿病である。2型糖尿病は肥満の人に多く、その原因は 肥満による脂肪細胞の肥大に伴い、マクロファージからの炎症性サイトカインが多量に 放出されインスリン抵抗性を発症するためといわれている。インスリン抵抗性になるこ とを防ぐためにも慢性炎症状態を避けることは重要である11,15-16)

アテローム性動脈硬化症:

脂質異常症や糖尿病、高血圧、喫煙などの危険因子によ り生じると考えられ、最終的には動脈の血流が遮断されて、酸素や栄養が重要組織に到 達できなくなる結果、脳梗塞や心筋梗塞などの原因となる。アテローム性動脈硬化症の 発症過程は、まず何らかの原因で血管内壁が傷つくとその隙間から血管内膜の下にコレ ステロールが入り込む。そして、そのコレステロールが白血球の一種であるマクロファ ージに捕食されると、その死骸が溜まりアテローム状となる。活性化されたマクロファ ージからは多量のサイトカインが産生されるため、動脈硬化症は血管の慢性炎症といわ れている。このようなことから、炎症を抑制することは動脈硬化症の予防・改善に有効 だと考えられる11-16,17,18)

ガン:

遺伝因子変異による病気であり、慢性炎症状態など細胞への刺激が引き金とな ることが多い。また、炎症とは関係していない、あるいは直接的に関係していないガン であっても、進行するにつれて炎症環境を作り出すことが知られている。これは、ガン 細胞が成長しさらに多くの栄養を必要とするため IL-1β などの炎症性サイトカインや その他の物質を産生し、血管新生を起こすことに起因する。これらの物質は同時に白血 球の遊走や接着などによって炎症反応を促進させるため、炎症を抑制することはガンの 予防や進行を防ぐことにつながるといえる19-20)

関節リウマチ:

自己免疫性疾患の一つで、自己の免疫が主に手足の関節を侵し、これ により関節炎を引き起こす。関節炎が進行すると、関節にある滑膜細胞の増殖、軟骨の 破壊と骨にはびらんが生じる。最終的には関節自体が破壊され、骨と骨が直接接した強 直という状態になる。関節リウマチは自己免疫疾患であるため関節以外にも全身で炎症 が起こっており、炎症を抑制することが症状の緩和、疾患の改善につながる21)

(6)

1‐2.炎症の概要

炎症とは何らかの有害な刺激によって生体が傷害を受けたときに起こる生体防御反応で ある。細胞が傷害を受けると、生体は原因や壊死した細胞を除去しようと一連の反応を開 始する。そして原因が除去され、細胞増殖により組織が修復されると炎症反応は終了する 21-23)。炎症の原因としては物理的刺激(機械的外傷、熱、放射線、光線、異物など)や、化 学的原因(強酸、強アルカリなど)や、病原微生物、寄生虫の感染、自己抗体などの免疫 抗体が挙げられる。炎症時には炎症の5徴候と呼ばれる症状がみられる。5徴候とは血管 拡張による「発赤」「熱感」、血管透過性亢進による「腫脹」、発痛物質による「疼痛」、肉 芽形成などによる「機能障害」の5つである21,23) また炎症にはⅠ期からⅢ期まであり、Ⅰ期では刺激を受けることによりまずその付近の 血管が一時的に収縮する。その後血管が拡張し血管透過性が亢進し、直後には血液の液体 成分が血管外に滲出し腫脹となる。Ⅱ期では白血球が血管内皮に接着し血管外へと滲出す る(遊走)。Ⅲ期では損傷した部位は肉芽の形成や血管の新生により組織が回復する。しか し原因物質が除かれず炎症が続くと慢性炎症へと発展する21,24,26)。

(7)

1‐3.炎症性メディエーター

炎症は損傷された組織、および炎症部位に浸潤した白血球や肥満細胞、マクロファージ などから放出される生理活性物質である炎症性メディエーターにより引き起こされる。炎 症性メディエーターには様々な作用があるが、主なものをグループにまとめて以下にあげ る。

1)発痛物質

発痛物質痛にはブラジキニン、セロトニン、ヒスタミンなどが含まれる。このうちブラ ジキニンは組織損傷時に血漿から遊離しプロスタノイドであるプロスタグランジン(PG) の生成を促進させる。このPG の作用により炎症が引き起こされ、同時にブラジキニン自身 も知覚神経を興奮させ痛みを発生させる。 さらに、セロトニンとヒスタミンには炎症時に生じる血管透過性の亢進、白血球遊走能 の亢進という二大現象を引き起こす。また、セロトニンはブラジキニンの作用を増強し痛 みを発生させるが中枢におけるモルヒネの鎮痛作用では、セロトニンの放出を促進して鎮 痛作用を示す。一方、ヒスタミンは侵害刺激により肥満細胞から放出され、痛みを生じる 21-23)

2)プロスタノイド

プロスタノイドは細胞外からの刺激に応じてアラキドン酸を基質にして酵素により産生 される生理活性物質である。プロスタノイドは通常は体内に蓄積しておらず、ほぼ全身の 臓器や細胞で必要に応じて合成、放出され局所で様々な作用を発揮する。 プロスタノイドのうち炎症に関与する主なものはPG とロイコトリエン(LT)であり、PG はホスホリパーゼ A2(PLA2)によりリン脂質からアラキドン酸が遊離し、これにシクロ オキシゲナーゼ(COX)が作用すると生成される。また PLA2の代わりにリポキシゲナー ゼが作用するとLT が生成される22,25)。この中でもPGE2は炎症時の疼痛や腫脹に深く関わ

(8)

3)サイトカイン

サイトカインとは細胞から分泌されるタンパク質のことで、特定の細胞に情報伝達する ものをいう。多くの種類が存在するが、炎症に関与するものを特に炎症性サイトカインと いう30,31)。炎症性サイトカインには腫瘍壊死因子(TNF-α)、インターロイキン(IL)-1β、 IL-6、IL-8、インターフェロン(IFN)などがあり、TNF-α は、好中球や血管内皮細胞を 活性化し活性化好中球の血管内皮細胞への粘着を促進させ、活性酸素などによる血管内皮 細胞傷害を引き起こす。また、IL-1β、IL-6、IL-8 などの IL はリンパ球自身が産生し、リ ンパ球に働きかける液性因子である 26-28)。さらに、IFN は動物体内で病原体や腫瘍細胞な どの異物の侵入に反応して細胞が分泌するタンパク質であり、抗ウイルスおよび抗腫瘍作 用を示す24)。 これらのサイトカインは相互に作用し合い、生産量を調節したり作用を増強したりして おり、炎症を抑制する作用のあるIL-4、IL-10、IL-11、IL-13 などの抗炎症性サイトカイン とバランスを保つことで生体機能を調節している29)

4)フリーラジカル

通常、分子・原子種の外殻軌道上には対になる 2 つの電子が存在するが、フリーラジカ ルではこのうち 1 つの電子が欠落していて対になる電子を求めて他の物質と反応しやすい 状態にあり、これが生体に対する攻撃やストレスの形で現れる。 生体内における代表的なフリーラジカルは、一酸化窒素(NO)や活性酸素などである。 NO は生体内の合成酵素である一酸化窒素合成酵素(NOS)によって生合成される。NOS には細胞内に一定に存在する内皮型の eNOS と炎症やストレスによって誘導される誘導型 の iNOS がある。炎症時には iNOS が多量に発現し、過度な NO を産生することで細胞に 障害を与える40)。

(9)

1‐4.抗炎症薬

現在、炎症性疾患の治療には多くの場合に抗炎症薬が用いられているが、抗炎症薬の長 期使用における副作用については問題が多々存在する21,23) 。抗炎症薬にはステロイド性抗 炎症薬(SAIDs)と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)があり、SAIDs はリポコルチン の産生を促進することにより PLA2の酵素活性を抑制し、アラキドン酸の遊離を阻害する。 その結果、PG や LT の産生を抑制し抗炎症作用を示すが、同時に PGE2の胃粘膜保護作用 や生体に必要な免疫反応を抑制してしまうことから胃障害や感染症の副作用がみられる。 また、SAIDs は副腎皮質ホルモンの生合成に影響を及ぼすので、多量投与することにより 副腎皮質からホルモンが分泌されなくなり副腎皮質機能の低下を引き起こす22,23) また、NSAIDs は SAIDs に比べ作用は弱いが重篤な副作用がないことを特徴とし、アラ キドン酸カスケードにおいてCOX を阻害することで PG の産生を抑制し抗炎症作用を示す (図 1)。それによって、PG の生理作用も阻害してしまうので、胃障害や気管支喘息、腎 障害などの副作用がみられる22,23) このように抗炎症薬の使用においては副作用が避けられず、安心して摂取できる抗炎症 作用を有する食品の研究・開発は重要であるといえる。

(10)

1.アラキドン酸カスケードと抗炎症薬の作用機序

cPLA

2

:サイクリックホスホリパーゼ

A

2

COX:シクロオキシゲナーゼ

LT:ロイコトリエン,PGH

2

:プロスタグランジン

H

2

PGI

2

:プロスタグランジン

I

2

PGE

2

:プロスタグランジン

E

2

TXA

2

:トロンボキサン

A

2

NSAIDs:非ステロイド性抗炎症薬

SAIDs:ステロイド性抗炎症薬

細胞膜リン脂質

細胞膜リン脂質

SAIDs

NSAIDs

遊離 代謝 代謝

(11)

1‐5.ヘルスフードの有用性

現代社会では不規則な生活習慣、加齢、感染症、ストレス、疾病などにより天寿を全う する前に生活習慣病にかかったり死亡時期が早まったりする。これらの避けられない要因 を受け入れつつ生きていくためには、6大栄養素では補えない部分をヘルスフードで補う ことで、充実した食生活を送ることにより、病気を予防する「予防医学」という考えが重 要となってくる32)。 ここでヘルスフードとは食品の3次機能である生理作用を調節する機能に注目し、生活 習慣病を始めとする各種疾患のリスク軽減に役立つよう工夫された食品のことを指し、有 効性、安全性、作用メカニズムが科学的に証明されていることが必須条件である。 炎症性疾患には様々な物質が複雑に絡み合っており、年齢・性別・合併症などにより個 人差も大きい。したがって今ある食品だけでは補いきれないと考えられ、今後さらに抗炎 症作用を有する有効性、安全性、作用メカニズムが科学的に証明されているヘルスフード の探索が必要となってくる。

(12)

1‐6.本研究の目的

現在、炎症を原因とする疾患はアレルギー性疾患や自己免疫疾患など数多く存在してい る。また、これらの治療には医薬品を用いるのが一般的だが、前述したように代表的なス テロイド性抗炎症薬にも非ステロイド性抗炎症薬にも副作用を伴うものが多いため安全に 使用できるとは限らない。そこで日常において誰でも安心・安全に長期間摂取することが でき、炎症性疾患の予防と改善に効果のあるヘルスフードが必要であると考えられる。 本研究では、カラゲニン浮腫マウスを使用し抗炎症作用を有する新規の食品素材のスク リーニングを行い、約 150 種類のサンプルの中から褐藻類カヤモノリ科の食用海藻である ハバノリ(Petalonia binghamiae)に抗炎症作用を発見したことから、ハバノリの抗炎症 作用の作用機序の解明、関与成分の同定を行うことを目的とした。

(13)

第2章 カラゲニン浮腫モデルマウスにおけるハバノリ抽出物の効果

2‐1.はじめに

ハバノリとは褐藻類カヤモノリ科の海藻であり、日本全域の外洋に面した潮間帯にみら れる。また、地域によっては雑煮や酢のものとして食用に供されている38, 39)。現在までに、 ハバノリにはラット好塩基球性白血病細胞 RBL-2H3 およびマウス好酸球における脱顆粒 抑制作用や、ストレプトゾトシン誘導糖尿病モデルマウスにおける病態改善作用などが報 告されている41-43)。しかし、浮腫抑制作用を指標とした抗炎症作用に関する報告はない。 本実験では、カラゲニン浮腫モデルマウスにおけるスクリーニングによってハバノリに 抗炎症作用を見出した。本章ではハバノリ抽出物がカラゲニン誘発性浮腫に及ぼす影響に ついて述べる。

2‐2.実験方法

1)ハバノリの抽出

ハバノリは三重県の海洋深層水で培養したものを尾鷲物産株式会社の方に提供していた だいた。抽出には生の藻体を用い、水切りをした後に5 倍量(v/w)の MeOH または蒸留水で 抽出した。MeOH の場合は常温で3∼5日浸し抽出を行い、蒸留水の場合は 100℃で 1 時 間の熱水抽出を行った。抽出液をろ過、減圧乾固し、得られた抽出物をそれぞれハバノリ MeOH 抽出物と熱水抽出物として実験に用いた。

2)実験動物、飼育、管理

実験動物としてddY マウス、雄性、9 週齢(日本 SLC)を用いた。マウスは飼育室で温度(25 0.5℃)、湿度(60 3%)、明暗サイクル 12 時間の環境下で飼育した。また、水と餌(MR ス

(14)

3)カラゲニン浮腫モデルマウスの作成

浮腫形成及び測定はWinter らの方法に基づいて行った37)。すなわち、マウスの左後ろ肢 足蹠の厚さと容積を測定し(0 時間目)、左後ろ肢足蹠皮下へ生理食塩水で溶解した 1%カラ ゲニンを50 µl 注射投与した。注射後、各時間において左後ろ肢の厚さと容積を測定した(図 2)。

4)ハバノリ抽出物の投与

カラゲニン投与の1時間前にマウスに蒸留水または5% DMSO 溶液で溶解したサンプル を1,000 mg/kg、2,000 mg/kg の投与量となるように経口投与した。Control には同量の蒸 留水または5% DMSO 溶液を経口投与した。 図2.カラゲニン浮腫モデルマウス実験のタイムスケジュール

00

-1

測定

測定

4

測定

4

測定

測定

6

測定

6

測定

測定

測定・・・足蹠容積、厚さの測定

2

測定

2

測定

測定

1

測定

1

測定

測定

5

測定

5

測定

測定

h

(15)

5)浮腫の容積と厚さの測定方法

カラゲニン投与後、各時間において足蹠の容積と厚さを測定した。なお、各時間におけ る測定値から0 時間目における測定値を引いたものを増加量とした。 容積の測定法:① サンプルチューブに水を満たした。② 2/3 程シリンジで吸い上げた。 ③ マウスの左後ろ肢を印のところまでサンプルチューブに入れた。④ 印のところまでサ ンプルチューブにシリンジで吸い上げた水を入れた。⑤ シリンジに残った水をマウスの肢 の容積とし数値を記録した(図3A)。 厚さの測定方法:マウスの足を固定しノギスを用いて足蹠の厚さを測定した(図3B)。 (A) (B) 図3.容積(A)と厚さ(B)の測定の様子

6)実験値の統計処理

各値は平均値 標準誤差で表した。有意差検定はStudent の t-検定で評価し、p 値が 0.05 未満であるとき、有意差があると評価した。

(16)

2‐3.結果と考察

ハバノリMeOH 抽出物投与群では 1,000 mg/kg においては有意な変化がみられなかった が、2,000 mg/kg において厚さ増加量では 1 時間目、2 時間、4 時間目で有意に浮腫を抑制 した。Control 群の増加率を 100%とすると、厚さ増加量においては 1 時間目では 27%、2 時間目では30%、4 時間目では 14%抑制した。また、容積増加量においては 1 時間目では 43%、2 時間目では 33%、4 時間目では 23%抑制した(図 4)。さらに、ハバノリ熱水抽出 物2,000 mg/kg では 2 時間、4 時間目のどちらにおいても有意な変化はみられなかった(図 5)。以上のことから活性成分を効率よく抽出するには MeOH 抽出が有効であることが示唆 された。 カラゲニンなどの刺激による炎症初期には、肥満細胞から放出されたヒスタミンやセロ トニンが細動脈拡張や血管透過性亢進を起こす。しかし、すぐにブラジキニンが中心とな り細動脈拡張や血管透過性亢進はさらに強まり、痛みや発赤、腫脹などの徴候が現れる。 また、ブラジキニンはPLA2を活性化させアラキドン酸からPGE2の合成を促進させる作用 や、炎症時にはiNOS を誘導し多量の NO を産生させる作用がある。PGE2やNO にはブラ ジキニン同様、血管拡張作用や血管透過性亢進作用があるので、浮腫の形成に深く関わる 物質である。また、刺激によってマクロファージから産生されるTNF-α や IL-1β などの炎 症性サイトカインもNO や PGE2の産生を介して浮腫形成に関与する物質である。よって、 カラゲニン浮腫モデルマウスを用いた実験系のメカニズムにおいては、PGE2、NO、TNF-α、 IL-1β などの炎症性メディエーターの抑制作用の関与が重要であることが示唆できる。 これらのことからハバノリ抽出物がカラゲニン浮腫を抑制したメカニズムとして、PGE2、 NO、TNF-α、IL-1β などの炎症性メディエーターの抑制によるものだということが考えら れるが、詳細なメカニズムを解明するためには、上記の各種メディエーターを測定する必 要がある。

(17)

図 4.カラゲニン浮腫モデルマウスにおけるハバノリMeOH 抽出物の抗浮腫作用に及ぼす 影響

Each value represents mean S.E. (n=6), *: p<0.05 vs Control. ◇ Control 5% DMSO 溶液 □ ハバノリ MeOH 抽出物 1,000 mg/kg △ ハバノリ MeOH 抽出物 2,000 mg/kg

0

1

2

0

1

2

3

4

5

6

時間 (h)

厚さ

増加量 

(m

m

)

0

0.05

0.1

0.15

0

1

2

3

4

5

6

時間 (h)

容積増加量 

(m

l)

*

*

*

(18)

図5.カラゲニン浮腫モデルマウスにおけるハバノリ熱水抽出物の抗浮腫作用に及ぼす影響 Each value represents mean S.E. (n=6)

◇ Control 蒸留水 □ ハバノリ熱水抽出物 2,000 mg/kg

0

1

2

0

1

2

3

4

時間 (h)

厚さ

増加量 

(m

m

)

0

0.05

0.1

0.15

0

1

2

3

4

時間 (h)

容積増加量 

(m

l)

(19)

第3章 ハバノリ抽出物のカラゲニン浮腫抑制作用メカニズムの解明

3‐1.はじめに

第2 章でin vivo においてハバノリ MeOH 抽出物に抗炎症作用がみられたため、本章で はカラゲニン浮腫形成に深く関与するNO や PGE2、TNF-α に着目し、これらの産生抑制試 験を行うことで細胞レベルのメカニズム解明を行った。 炎症時にはマクロファージから種々のサイトカインが産生され、炎症反応が進む。その 中でも炎症反応が起こってからしばらくして放出されるブラジキニンを中心とした炎症反 応は痛みや浮腫、発赤や発熱を引き起こす。この時に NO、PGE2、TNF-α もマクロファー ジなどの炎症性細胞から多量に放出され炎症反応を促進させる。また、NO 合成酵素である iNOS の遺伝子をノックアウトしたマウスを用いた実験では、カラゲニンによる炎症の抵抗 性が示されており、iNOS が発現することはこれらの病態の原因であることが明らかとなっ ている40) 本実験では、炎症性メディエーターの産生誘導因子としてグラム陰性菌の外膜構成成分 で あ る リ ポ 多 糖 (LPS)を用いた。LPS はマウス由来マクロファージ様細胞である RAW264.7 細胞の LPS 受容体に結合すると、様々な経路を経て I kappa B キナーゼ α(IκKα) およびIκKβ が活性化され、NF-κB に結合していた IκB がリン酸化される。リン酸化され た IκB は NF-κB から離れ分解されるため、NF-κB は活性化し核内へ移行する。こうして 核内に移行したNF-κB は iNOS、COX-2、TNF-α などをコードする遺伝子の発現が促進さ れることにより、NO、PGE2、 TNF-α などが産生する(図 6)。このようなメカニズムにお いて、LPS 刺激を行った RAW264.7 細胞の培養上清を用いて NO、PGE2、TNF-α などのサ イトカインを測定することで、ハバノリ抽出物が炎症反応においてどの経路を抑制してい るかを解明するために実験を行った。

(20)

IκB

P50 p65

p

p

分解

核内

核内移行 DNA結合 リン酸化

IκB

P50 p65 P50 p65

NF-κB

iNOS

COX-2

TNF-α

NO

PGE

2

転写誘導 アラキドン酸 L-アルギニン 図6.マクロファージにおけるLPS刺激による炎症性メディエーター産生経路 LPS:リポ多糖, IκB:I kappa B,NF-κB:核内因子 κB , NO:一酸化窒素

iNOS:誘導型 NO 合成酵素,PGE2:プロスタグランジンE2,TNF-α:腫瘍壊死因子 α

(21)

3‐2.実験方法

1)試薬

◎H3PO4(Wako) ◎Sulfanilamide(Wako) ◎N-naphthylethylenediamine・2HCl(Wako) ◎NaNO2(Wako) ◎MTT 試薬(SIGMA) ◎HPTLC(メルク)

◎DMSO (dimethyl sulfoxide) (Wako) ◎LPS (lipopolysaccharide)(SANTA CRUZ) ◎0.25% Trypsin-EDTA(GIBCO) ◎DMEM 培地(Wako)

2)細胞培養

RAW264.7 細胞(マウス由来マクロファージ様細胞)をカルシウムとマグネシウムを含 まないリン酸緩衝液(PBS(-), pH 7.0)で洗浄後、0.25% Trypsin-EDTA を用いて細胞を剥 がし15,000 rpm で 2 分間遠心分離を行った。遠沈後、10% Fetal bovine serum (FBS)、

L-Glutamine、phenol red を含む DMEM 培地で細胞濃度を 1 106 cells/ml となるように

調製し、96 well plate に 100 µl 播種した。播種した細胞は 5% CO2、37℃の環境下におい

(22)

3)

MTT 試験

ハバノリ MeOH 抽出物と共に 24 時間インキュベートした細胞の培養上清を除去し、5 mg/ml の MTT 試薬を 1 µl 加え 15 分間インキュベートした。インキュベート後、上清を除 去し100 µl の DMSO を加え 550 nm にて吸光度を測定することで細胞生存率を算出した。

4)一酸化窒素(

NO)産生抑制試験

RAW264.7 細胞を 96well plate にて 24 時間培養後、ハバノリ MeOH 抽出物と LPS を 50 µl ずつ添加し、さらに 24 時間培養した。ハバノリ MeOH 抽出物は MeOH で 20 mg/ml に調製し、さらにDMEM 培地で 50 倍に希釈し、終濃度 100 µg/ml として実験に用いた。 また、LPS は蒸留水で 1.2 mg/ml に調製後、DMEM 培地で 500 倍に希釈し、600 ng/ml として実験に用いた。24 時間培養後、別の 96 well plate に培養上清を 100 µl 回収し、Griess 試薬(1% sulfanilamide / 0.1% N-naphthylethylenediamine・2HCl in 2.5% H3PO4, =1/1 (v/v))を 100 µl 加えて 550 nm の吸光度を測定することにより上清中の NO2を測定した。

5)腫瘍壊死因子(

TNF‐α)産生抑制試験

NO 産生抑制試験と同様の方法で培養上清を得た後、レビス TNF-α マウス(シバヤギ) を用いるELISA によって上清中の TNF-α 濃度の測定を行った。

6)プロスタグランジン

E

2

PGE

2

)産生抑制試験

NO 産生抑制試験と同様の方法で培養上清を得た後、DetectX Prostaglandin E2

Chemiluminescent Immunoassay kit(ARBOR ASSAYS)を用いる ELISA によって上清 中のPGE2濃度の測定を行った。

(23)

7)炎症性遺伝子発現抑制試験

7‐1)

Total RNA の抽出

細胞をPBS(-)で 2 回洗浄し、RNeasy mini kit(QIAGEN)を用いて RNA 抽出を行い、Total RNA 抽出液とした。

7‐2)

RT-PCR

以下の試薬を加えて、よく混合し、PreMIX を作った。Total RNA 抽出液は 40 倍希釈し て、吸光度計でRNA 濃度を測定し、Total RNA の濃度が 250 µg/ml となるように RNase Free dH2O で調製した。Total RNA(2 µ)と PreMIX (8 µl)を加え、l ずつ加え、サーマルサ

イクラー(バイオ・ラッドラボラトリーズ)にセットした。30°C で 10 分間、42°C で 30 分間、 95℃で 5 分間反応させ cDNA を合成した。反応後の PCR 産物に 80 µl の RNase Free dH2O

を加えたものを後の RT-PCR テンプレートとして用いた。cDNA は反応まで-20°C で保管 した。

10×RT Buffer 1 µl

RNase Free dH2O 2.75 µl

5 mM MgCl

2

2 µl

2.5 µM Ramdom 9 mers

0.5µl

10 mM dNTP mix

1 µl

Rnase Inhibitor 0.25 µl

0.25 U/µl AMV Reverse Transcriptase 0.5 µl

Total

8 µl/tube

cDNA(2 µl)と以下の試薬を混合した PCR premix(28 µl)を加え、サーマルサイクラーを 用いて95°C で 5 分間、95°C で 30 秒間、55°C で 30 秒間、72°C で 30 秒間を 30 サイク

(24)

dH

2

O

19.9 µl

10×Buffer (+Mg) for rTAQ

3 µl

2mM dNTPs

3 µl

10 µM primer(sense)

1.0 µl

10 µM primer(anti sense)

1.0 µl

5 U/µl rTaq DNA Polymerase

0.1 µl

Total 28 µl/tube

表2.

RT-PCR プライマー

遺伝子

Forward primer (5’→3’) Reverse primer (5’→3’)

GAPDH TGCATCCTGCACCACCAACTG GGTGGCAGTGATGGCATGGAC iNOS AGCCCAACAATACAAATGACCCT TTCCTGTTGTTTCTATTTCCTT

COX-2

CAGCAAATCCTTGCTGTTCC TGGGCAAAGAATGCAAACATC

TNF-α

TCTTCTCAAAATTCGAGTGACAAG GAGAACCTGGGAGTAGACAAGGT

* GAPDH のプライマーは XL001473623 の mRNA 配列を用いて Primar-BLAST でプラ イマーを作成した46)。iNOS、COX-2、TNF-α のプライマーは文献を参照した47-49)。 PCR 産物はアガロースゲル電気泳動によって確認した。100 ml の(トリス酢酸緩衝液) TAE に 1 g のアガロース S を加えて、電子レンジで溶解させた。エチジウムブロマイドを 1 µl 加えて、よく攪拌させて、ゲル板に流し込んだ。PCR 産物 5 µl と 6×loading dye 1 µl をよく混合し、その混合物をMupid-exu(ADVANCE)にセットしたゲル板のウェルにア プライした。100V で 10 分間、電気泳動し、UV 254 nm 下でバンドを可視化した。

(25)

8)実験値の統計処理

各値は平均値 標準誤差で表した。有意差検定はStudent の t-検定で評価し、p 値が 0.05 未満であるとき、有意差があると評価した。

(26)

3‐3.結果と考察

MTT 試験の結果、ハバノリ MeOH 抽出物添加群は Control 群と比較して 6.25∼200 µg/ml の範囲において有意な細胞生存率の低下はみられなかった(図 7)。このことから、ハ バノリMeOH 抽出物には 6.25∼200 µg/ml の範囲において細胞毒性作用はないと考えられ る。 NO 産生抑制試験の結果、ハバノリ MeOH 抽出物添加群は Control 群と比較して 6.25∼ 200 µg/ml において濃度依存的に有意な NO 産生抑制作用がみられた。その抑制率は 6.25 µg/ml では 14%、12.5 µg/ml では 33%、25 µg/ml では 38%、50 µg/ml では 43%、100 µg/ml では57%、200 µg/ml では 68%であった(図 8)。また、TNF-α 産生抑制試験の結果、ハ バノリMeOH 抽出物添加群は Control 群と比較して 25∼100 µg/ml で濃度依存的に有意に TNF-α 産生抑制作用を示した。その抑制率は 25 µg/ml では 58%、50 µg/ml では 60%、100 µg/ml では 64%であった(図9)。さらに、PGE2産生抑制試験の結果、ハバノリMeOH 抽 出物添加群はControl 群と比較して 50、100 µg/ml で濃度依存的に有意に PGE2産生抑制 作用を示した。その抑制率は50 µg/ml では 20%、100 µg/ml では 74%であった(図 10)。 本章のはじめで述べたように、炎症時にはLPS などの刺激によってマクロファージなど の白血球においてNF-κB の核内移行を通じて iNOS、COX-2、TNF-α などをコードする遺 伝子の発現が促進する。この遺伝子発現の促進により、NO、PGE2、TNF-α などの様々な 炎症性サイトカインが産生される。第 1 章で述べた通り、NO や PGE2には血管拡張作用 や血管透過性亢進作用があるので、カラゲニンなどにより惹起された浮腫の形成に深く関 わる物質である。また、刺激によってマクロファージから産生される TNF-α や IL-1 など の炎症性サイトカインも NO や PGE2の産生を介して浮腫形成に関与する物質である。本 研究では、ハバノリ抽出物のメカニズムを解明する際に細胞試験によるNO、PGE2および

TNF-α 産生抑制作用を指標とした。in vivo で用いたカラゲニン、in vitro で用いた LPS な どの刺激物は炎症性刺激として iNOS を発現することにより大量の NO を合成し、組織を

(27)

傷害するなどして炎症反応を引き起こす。よって本実験で用いたハバノリの NO 産生抑制 作用は iNOS の誘導抑制による作用である可能性が示唆される。また、ハバノリ抽出物は PGE2、TNF-α の産生も抑制していたことから、iNOS の発現だけではなく COX-2、TNF-α

の遺伝子発現を抑制することでPGE2、TNF-α の産生を抑制することが示唆された(図 11)。 さらに、iNOS、COX-2、TNF-α をコードする遺伝子発現はどれも NF-κB の活性化およ び核内移行によるものであるため、炎症反応の上流であるNF-κB の活性化や核内移行を抑 制することで炎症性遺伝子発現を抑制している可能性も示唆された。現在NF-κB の活性化 阻害作用が知られているものには藍藻類のイシクラゲ脂質抽出物や大豆由来のソイサポニ ン、ウコン由来のクルクミンなどが報告されている41-43)。これらの成分はIκB のリン酸化 を阻害することでNF-κB の活性化や核内以降を阻害していることがわかっている。このこ とから今後さらに、ハバノリ抽出物のNF-κB の活性化や核内移行に及ぼす影響や IκB のリ ン酸化、さらに上流であるLPS の受容体阻害活性に及ぼす影響などを調べることで、メカ ニズムの詳細な解明を行うことが必要であると考えられる。

(28)

0 100 LPS(-) 0 6.25 12.5 25 50 100 200 % o f C o nt ro l LPS(+) + サンプル(µg/ml) 図7.RAW264.7 細胞におけるハバノリ MeOH 抽出物の細胞生存率への影響 Values are expressed as means S.E. (n=4)

(29)

0

100

0

0

6.25

12.5

25

50

100

200

%

o

f

C

o

nt

ro

l

***

***

LPS(+) + サンプル(µg/ml)

*

***

***

***

***

LPS(-)

図8.RAW264.7 細胞におけるハバノリ MeOH 抽出物の NO 産生への影響 Values are expressed as means S.E. (n=4), ***:p<0.005 vs Control.

(30)

0 100 LPS(-) 0 25 50 100 % o f C o nt ro l LPS(+) + サンプル(µg/ml) *** *** *** *** 図9. RAW264.7 細胞におけるハバノリ MeOH 抽出物の TNF-α 産生への影響

(31)

0

100

0

0

25

50

100

%

o

f

C

o

nt

ro

l

LPS(+) + サンプル(µg/ml)

*** *** ***

LPS(-)

図10. RAW264.7 細胞におけるハバノリ MeOH 抽出物の PGE2産生への影響

(32)

GAPDH

iNOS

LPS

Sample 0 0 25 50 100

COX-2

TNF-α

(33)

第4章 ハバノリ抽出物の有効成分の分離と精製

4‐1.はじめに

2章及び3章より、ハバノリMeOH 抽出物はin vivo においてカラゲニン浮腫を抑制し、 in vitro において NO、PGE2、TNF-α の産生及び iNOS、COX-2、TNF-α の遺伝子発現を

抑制することで炎症反応を抑制していることが示唆された。そこで、この抗炎症作用を示 す成分を以下に示す手順により分画し、有効成分の特定を試みた。

4‐2.方法

1)二液分配法

分液ろうとを用いて、等量の極性が異なる二種類の溶媒にサンプルを溶かし、十分に振 とうした後に放置し、上層と下層をそれぞれ回収した。同じ操作を三回繰り返した。回収 した溶液をエバポレーターにて減圧乾固し、秤量した。各層の一部分を取り分けてカラゲ ニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫作用またはRAW264.7 細胞における NO 産生抑制作 用を確認し、活性成分が含まれると考えられるフラクションを次の分画に用いた。判定が 困難な部分は試験を繰り返した。

(34)

2)順相及び逆相クロマトグラフィー

各画分はガラスカラムクロマトグラフィーにより精製した。順相系担体としてSilica gel (Silica gel 60, 0.063 - 0.200 mm, ナカライテスク)または逆相系担体として ODS gel (Cosmosil 75C18-OPN, メルク)を用いた。各画分の成分は TLC により確認した。用いた TLC プレートと検出法は方法(5)に示した。溶媒名と溶媒比は v/v で示した。画分には重量と粗 抽出物100%としたときの収率を示した。

3)カラゲニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫作用を指標とした活性成分の

精製

第2章方法(3)∼(5)と同様の方法で実験、データ処理及び統計処理を行い活性成分の精 製を行った。

4)

RAW264.7 細胞における NO 産生抑制作用を指標とした活性成分の精製

第3章方法(1)∼(4)と同様の方法で実験、データ処理及び統計処理を行い、活性成分の 精製を行った。

5)薄層クロマトグラフィー(

TLC)

TLC プレートは silica gel 60 または silica gel 60 RP-18 WF254s(メルク)を用いた。展開

条件は実験ごとに示した。有機物の呈色試薬として硫酸試薬(3%酢酸銅(Ⅱ)-8%リン酸-2% 硫酸溶液)を、アミノ基の呈色試薬としてニンヒドリンスプレー(Wako)を、ステロール 骨格の呈色試薬として塩化鉄試薬(0.5%塩化鉄(Ⅲ)-5%氷酢酸-5%硫酸溶液)を用いた。

(35)

4‐3.結果と考察

1)カラゲニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫作用を指標とした活性成分の

精製

ハバノリMeOH 抽出物 3.97 g を各 1 l の蒸留水と EtOAc(酢酸エチル)で二液分配し、 Water①画分として 3.56 g (89.7%)、EtOAc 画分として 0.36 g(9.1%)を得た(図 12)。カ ラゲニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫試験の結果、Water①画分において 2 時間、4 時 間目でより有意な抗浮腫作用がみられた。Control 群の増加率を 100%とすると、厚さ増加 量においては2 時間目で 60%、4 時間目で 33%抑制した。また、容積増加量においては 2 時間目で65%、4 時間目で 49%抑制した(図 13)。このことから Water①画分に活性成分 があると判断した。さらに、活性成分があると判断したWater①画分 3.37 g を各 1 l の蒸 留水とBuOH(ブタノール)で二液分配し、Water②画分として 2.09 g (55.6%)、BuOH 画 分として0.997 g (26.6%)を得た(図 12)。Water②画分と BuOH 画分についてカラゲニン 浮腫モデルマウスにおける抗浮腫試験を用いて作用を比較したところ、BuOH 画分に厚さ 2 時間目で有意な抗浮腫作用がみられた。Control 群の増加率を 100%とすると、厚さ増加量 においては2 時間目で 22%有意に抑制した(図 14)。このことから活性成分は BuOH 画分 にあると判断した。しかし、サンプルの量が少なくなってしまったことから、以降の分画 をRAW264.7 細胞における NO 産生抑制作用を指標として行うこととした。

2)

RAW264.7 細胞における NO 産生抑制作用を指標とした活性成分の精製

上記カラゲニン浮腫モデルマウスで評価したものと同じWater②画分と BuOH 画分につ いてRAW264.7 細胞における NO 産生抑制試験に供した結果、BuOH 画分に 6.25∼100 µg/ml の範囲で濃度依存的に有意に NO 産生抑制作用がみられた。Control の値を 100%と すると6.25 µg/ml では 12%、12.5 µg/ml では 22%、25.0 µg/ml では 32%、50 µg/ml では

(36)

わせて活性成分はBuOH 画分にあると判断した。さらに、BuOH 画分 888.3 mg を各 1 l の40% MeOH と CHCl3で二液分配し、40% MeOH 画分として 148.3 mg (4.9%)、CHCl3 画分として740.0 mg (23.8%)を得た(図 12)。40% MeOH 画分と CHCl3画分の作用を比 較したところ、CHCl3画分において50∼100 µg/ml で NO 産生抑制作用がみられた。50 µg/ml では 19%、100 µg/ml では 30%の NO 産生抑制作用がみられた(図 16)。この結果か ら、活性成分はCHCl3画分にあると判断した。

次に、CHCl3画分700.2 mg を 2 ml の 80% MeOH に溶解し、ODS gel (50 g, 300 30

mm)を用いて 80% MeOH (250 ml), 100% MeOH (200 ml) 2, EtOAc (800 ml)の順番に 溶媒を流し、それぞれ流した溶媒からB1 画分(184.1 mg, 6.3%)、B2 画分(240.9 mg, 8.2%)、 B3 画分(197.5 mg, 6.7%)、B4 画分(77.7 mg, 2.7%)の 4 つのフラクションを得た(図 17)。 B1∼B4 画分の作用を比較したところ、B2 と B3 において 100 µg/ml で有意に NO 産生抑 制作用がみられた。Control 群の抑制率を 100%とするとそれぞれ 25%、12%の抑制率であ った(図 18)。したがって、活性成分は B2 と B3 にあると判断した。まず B2 画分の精製を 試みたが分離が困難であったため、B3 についてクロマトグラフィーによる精製を進めた。 B3 画分 195.6 mg を 2 ml の CHCl3に溶解し、Silica gel カラム(30 g)を用いて 100% CHCl3(300 ml), CHCl3:MeOH=8:2 (660 ml), CHCl3:MeOH=4:6 (300 ml), CHCl3: MeOH=2:8 (90 ml), MeOH (240 ml)の順番に溶媒を流し、B3-1 画分(14.1 mg, 0.36%)、 B3-2 画分(46.5 mg, 1.2 %)、B3-3 画分(45.7 mg, 1.17%)、B3-4 画分(17.2 mg, 0.4%)、B3-5 画分(3.5 mg, 0.87%)、B3-6 画分(18.9 mg, 0.48%)、B3-7 画分(12.2 mg, 0.31%)、B3-8 画分 (13.4 mg, 0.34%)、B3-9 画分(20.9 mg, 0.54%)、B3-10 画分(69.3 mg, 1.78%)の 10 個のフラ クションを得た(図17)。これら B3-1∼B3-10 画分の作用を比較したところ、B3-2 の活性 はControl 群の抑制率を 100%とすると、50 µg/ml では 37%、100 µg/ml では 49%の抑制 率だった。また、B3-7∼B3-10 においても 50,100 µg/ml の濃度で NO 産生抑制作用がみ られた(図19)。これらの結果から、B3-2 に最も強い活性成分があると判断した。B3-2 画

(37)

分34.8 mg を 1 ml の MeOH:Water=8:1 の溶液に溶解し、ODS gel (30 g, 300 30 mm) を用いてMeOH:Water=8:1 (900 ml), 100% MeOH(300 ml)の順番に溶媒を流し、B3-2-1 画分(11.0 mg, 0.38%)、B3-2-2 画分(2.6 mg, 0.09%)、B3-2-3 画分(21.2 mg, 0.73%)の 3 つ のフラクションを得た(図17)。 得られたB3-2-1∼B3-2-3 画分において作用を比較したところ、B3-2-1 の 50∼100 µg/ml の濃度においてNO 産生抑制作用がみられた。50 µg/ml では 18%、100 µg/ml では 31%の 抑制率であった(図20)。この結果から、活性成分は B3-2-1 にあると判断した。したがっ て、ハバノリ抽出物の活性成分の一つは、水溶性成分であることが示唆された。このフラ クションを TLC に供したところ、2 つのスポットが確認された(図 21)。また、これらの 成分はニンヒドリンで陰性であったことからアミノ基を持たないことが示唆された。また、 塩化鉄試薬で陽性であったことから、ステロール骨格を持つことが示唆された。ステロー ルとはステロイドの A 環の 3 位にヒドロキシル基を持つ誘導体である。海藻に含まれる主 なステロールにはフコステロールなどが知られており、ハバノリにもフコステロールが含 まれていることが推定される。また、フコステロールの生理活性については抗糖尿病作用 や抗酸化作用が報告されているが、抗炎症作用についての報告はない44, 45)。今後さらに、 ハバノリの活性成分の精製を行いスペクトル分析などで構造決定をすることで活性成分の 同定を行うことが必要であると考えられる。

(38)

活性成分

【収率】

Water/EtOAc=1/1

MeOH抽出物100%】 Water②55.6%】

Water/BuOH=1/1

EtOAc9.1%】 Water①89.7%】 CHCl323.8%】 40%MeOH4.9%】

40%MeOH/CHCl

3

=1/1

BuOH26.6%】 図12.カラゲニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫作用を指標としたハバノリ MeOH 抽出 物の分画スキーム ハバノリMeOH 抽出物を 100%とした各分画物の収率を【 】内に示した。活性がみられ た画分を黄色で示した。

(39)

図13.カラゲニン浮腫モデルマウスにおけるハバノリ分画物(Water①画分、EtOAc 画分) の抗浮腫作用に及ぼす影響

Values are expressed as means S.E. (n=6), ***:p<0.005 vs Control.

◇ Control 5% DMSO 溶液 □ Water① 画分 2,000 mg/kg △ EtOAc 画分 2,000 mg/kg

0

0.05

0.1

0.15

0

2

4

時間 (h)

容積増加量 

(m

l)

***

***

0

1

2

0

2

4

時間 (h)

厚さ

増加量 

(m

m

)

***

***

(40)

図14.カラゲニン浮腫モデルマウスにおけるハバノリ分画物(Water②画分、BuOH 画分) の抗浮腫作用に及ぼす影響

Values are expressed as means S.E. (n=6), *:p<0.05 vs Control.

◇ Control 5% DMSO 溶液 □ Water② 画分 2,000 mg/kg △ BuOH 画分 2,000 mg/kg

0

1

2

0

1

2

3

4

5

時間 (h)

厚さ

増加量 

(m

m

)

*

0

0.05

0.1

0.15

0

1

2

3

4

5

時間 (h)

容積増加量 

(m

l)

(41)

0 100 0 0 6.25 12.5 25 50 100 6.25 12.5 25 50 100 % o f C o nt ro l Water②画分 *** *** BuOH画分 *** *** *** *** LPS(+) + サンプル(µg/ml) 図15.RAW264.7 細胞におけるハバノリ Water①分画物(Water②画分、BuOH 画分)の NO 産生抑制作用

(42)

0 100 LPS (-) Control 12.5 25 50 100 12.5 25 50 100 % o f C o nt ro l *** LPS(+) + サンプル(µg/ml) *** *** 40%MeOH画分 CHCl3画分

図16.RAW264.7 細胞におけるハバノリ BuOH 分画物(40% MeOH 画分、CHCl3画分)

のNO 産生抑制作用に及ぼす影響

(43)

B2

8.2%】

ODS gel

[80%MeOH 2.5 vol.→ 100%MeOH 4 vol.→ EtOAc]

B42.7%】 B16.3%】 Silica gel [100%CHCl3,5 vol.、CHCl3:MeOH=8:2,11 vol.、CHCl3:MeOH =4:6,5 vol.、CHCl3:MeOH=2:8,1.5 vol.、MeOH,4 vol. ]

ODS gel [MeOH:Water=8:1,10 vol.、MeOH,4vol. ] B3-2-30.73%】 B3-2-10.38%】 B3-2-20.09%】 B3-60.48%】 B3-70.31%】 B3-80.34%】0.54%】B3-9 B3-101.78%】 B3-40.4%】 B3-50.87%】 B3-31.17%】 B3-10.36%】 B3-21.20%】 B36.7%】

活性成分

【収率】

CHCl323.8%】 図17. RAW264.7 細胞における NO 産生抑制試験を指標としたハバノリ MeOH 抽出物の 分画スキーム ハバノリMeOH 抽出物を 100%とした各分画物の収率を【 】内に示した。活性がみられ た画分を黄色で示した。

(44)

0 100 L P S ( -) Control 25 50 100 25 50 100 25 50 100 25 50 100 % o f C o nt ro l B1 B2 *** * B3 *** *** *** LPS(+) + サンプル(µg/ml) B4 図18.RAW264.7 細胞におけるハバノリ CHCl3分画物(B1∼B4 画分)の NO 産生抑制作 用に及ぼす影響

(45)

図19.RAW264.7 細胞におけるハバノリ B3 画分(B3-1∼B3-10 画分)の NO 産生抑制作 用に及ぼす影響

Values are expressed as means S.E.(n=4) *:p<0.05, ***:p<0.005 vs Control. 0 100 LPS (-) Cont. -1 -2 -3 -4 -5 -6 -7 -8 -9 -10 % o f C o nt ro l 50 µg/ml 100 µg/ml *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** *** * B3

(46)

0 100 L P S ( -) 0 25 50 100 25 50 100 25 50 100 % o f C o nt ro l B3-2-1 *** *** * B3-2-3 B3-2-2 LPS(+ ) + サンプル( µ g/ m l) 図20.ハバノリ B3-2 分画物(B3-2-1∼B3-2-3 画分)の NO 産生抑制試験

(47)

B3-2-1

図21.B3-2-1 の薄層クロマトグラフィー

展開溶媒:100% MeOH、呈色試薬:3%酢酸銅-8%リン酸-2%硫酸溶液 HPTLC プレート(silica gel 60 RP-18 WF254s、メルク)使用

(48)

第5章 総括

本研究では、スクリーニングによって作用が確認されたハバノリ抽出物によるマウスカ ラゲニン浮腫抑制作用の確認を行い、作用メカニズムの解明としてNO、TNF-α、PGE2産 生抑制作用への影響を検討した。また、その活性成分についても検討を加えた。 1.カラゲニン浮腫モデルマウスにおけるハバノリ抽出物の作用(in vivo) カラゲニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫試験では、ハバノリMeOH 抽出物投与群に おいて1,000 mg/kg では有意な変化がみられなかったが、2,000 mg/kg において 2 時間、4 時間目に有意に浮腫を抑制する作用がみられた。また、ハバノリ熱水抽出物 2,000 mg/kg では有意な変化はみられなかった。 2.ハバノリ抽出物のカラゲニン浮腫抑制作用メカニズムの解明(in vitro) MTT 試験の結果、ハバノリ MeOH 抽出物添加群は 6.25∼200 µg/ml の範囲において細 胞生存率の低下はみられなかった。また、RAW264.7 細胞における LPS 刺激による NO、 TNF-α、PGE2産生抑制試験の結果、ハバノリMeOH 抽出物添加群は Control 群と比較し

てNO では 6.25∼200 µg/ml において濃度依存的に有意な NO 産生抑制作用がみられた。 TNF-α では 25∼100 µg/ml の範囲において濃度依存的に有意に TNF-α 産生抑制作用を示 した。PGE2では50、100 µg/ml において濃度依存的に有意に PGE2産生抑制作用を示した。 さらに、炎症性遺伝子発現抑制試験では、ハバノリ抽出物にiNOS、COX-2、TNF-α をコ ードする遺伝子発現を抑制する作用がみられた。 3.

ハバノリ抽出物の有効成分の分離と精製

ハバノリ抽出物のNO 産生抑制作用を有する活性成分は、水溶性の物質であり、アミノ

(49)

以上の結果より、ハバノリ抽出物はNO 産生および TNF-α 産生を抑制することでカラゲ ニン浮腫モデルマウスにおいて抗炎症作用を示すことが示唆された。これらの作用により カラゲニン浮腫のみならずその他の炎症に対する抑制作用も期待できる可能性を持ってい ると考えられる。用途としては、抗炎症剤としての医薬品開発や、機能性食品の成分とし ての利用などが考えられ、それら分野での社会貢献が期待できる。実際の応用に向けては 今後さらに、ハバノリ抽出物のNF-κB の活性化や核内移行への影響を調べ、詳しいメカニ ズムの解明を行うことが必要である。また、関与成分の単離・同定を行うため、さらに活 性フラクションの精製を行い、スペクトル分析により構造決定を行うことが必要である。

(50)

参考文献

(1) Minamino T, Role of cellular senescence in lifestyle-related disease. Circ J. 2010. 74: 2527-2533.

(2) 厚労働省ホームページ:生活習慣病予防特集

(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu/index.html)

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謝辞

本研究を取りまとめるにあたり、研究の端緒を賜り終始御懇篤なる指導と御校閲頂き ましたヘルスフード科学(中島董一郎記念)寄附講座の矢澤一良特任教授、ならびに小山 智之特任准教授に謹んで深謝申し上げます。 ヘルスフード科学(中島董一郎記念)寄附講座運営に当たり多大なるご支援とご協力 頂きました株式会社中島董商店及びキユーピー株式会社に謹んで深謝申し上げます。 本論文をまとめるにあたり、暖かいご激励と懇切なるご審査をいただきました食品保 全機能学講座の嶋倉邦嘉助教に謹んで深謝申し上げます。 貴重なサンプルをご提供していただいた尾鷲物産株式会社の高芝芳裕氏に厚く御礼 を申し上げます。 本研究を行うにあたり、多大なるご配慮を頂きました三沢宏博士、今村茂行博士、中 村健一郎氏、大井康之博士、湘南予防医科学研究所の三瓶英子氏、鹿野紗知子氏に厚く 御礼を申し上げます。 論文作成中および研究遂行中、数々のご協力を頂いたヘルスフード科学講座の皆さん に厚く御礼申し上げます。 最後に日々の生活を支えてくださいました両親、友人に深く感謝致します。

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鈴木 則宏 慶應義塾大学医学部内科(神経) 教授 祖父江 元 名古屋大学大学院神経内科学 教授 高橋 良輔 京都大学大学院臨床神経学 教授 辻 省次 東京大学大学院神経内科学

清水 悦郎 国立大学法人東京海洋大学 学術研究院海洋電子機械工学部門 教授 鶴指 眞志 長崎県立大学 地域創造学部実践経済学科 講師 クロサカタツヤ 株式会社企 代表取締役.

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