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ハバノリ抽出物の有効成分の分離と精製

ドキュメント内 修士論文 木暮usb (ページ 33-48)

4‐1.はじめに

2章及び3章より、ハバノリMeOH抽出物はin vivoにおいてカラゲニン浮腫を抑制し、

in vitroにおいてNO、PGE2、TNF-αの産生及びiNOS、COX-2、TNF-αの遺伝子発現を 抑制することで炎症反応を抑制していることが示唆された。そこで、この抗炎症作用を示 す成分を以下に示す手順により分画し、有効成分の特定を試みた。

4‐2.方法 1)二液分配法

分液ろうとを用いて、等量の極性が異なる二種類の溶媒にサンプルを溶かし、十分に振 とうした後に放置し、上層と下層をそれぞれ回収した。同じ操作を三回繰り返した。回収 した溶液をエバポレーターにて減圧乾固し、秤量した。各層の一部分を取り分けてカラゲ ニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫作用またはRAW264.7細胞におけるNO産生抑制作 用を確認し、活性成分が含まれると考えられるフラクションを次の分画に用いた。判定が 困難な部分は試験を繰り返した。

2)順相及び逆相クロマトグラフィー

各画分はガラスカラムクロマトグラフィーにより精製した。順相系担体としてSilica gel (Silica gel 60, 0.063 - 0.200 mm, ナカライテスク)または逆相系担体としてODS gel (Cosmosil 75C18-OPN, メルク)を用いた。各画分の成分はTLCにより確認した。用いたTLC プレートと検出法は方法(5)に示した。溶媒名と溶媒比はv/vで示した。画分には重量と粗 抽出物100%としたときの収率を示した。

3)カラゲニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫作用を指標とした活性成分の 精製

第2章方法(3)〜(5)と同様の方法で実験、データ処理及び統計処理を行い活性成分の精 製を行った。

4) RAW264.7 細胞における NO 産生抑制作用を指標とした活性成分の精製

第3章方法(1)〜(4)と同様の方法で実験、データ処理及び統計処理を行い、活性成分の 精製を行った。

5)薄層クロマトグラフィー( TLC )

TLCプレートはsilica gel 60またはsilica gel 60 RP-18 WF254s(メルク)を用いた。展開

条件は実験ごとに示した。有機物の呈色試薬として硫酸試薬(3%酢酸銅(Ⅱ)-8%リン酸-2%

硫酸溶液)を、アミノ基の呈色試薬としてニンヒドリンスプレー(Wako)を、ステロール 骨格の呈色試薬として塩化鉄試薬(0.5%塩化鉄(Ⅲ)-5%氷酢酸-5%硫酸溶液)を用いた。

4‐3.結果と考察

1)カラゲニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫作用を指標とした活性成分の 精製

ハバノリMeOH抽出物3.97 gを各1 lの蒸留水とEtOAc(酢酸エチル)で二液分配し、

Water①画分として3.56 g (89.7%)、EtOAc画分として0.36 g(9.1%)を得た(図12)。カ ラゲニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫試験の結果、Water①画分において2時間、4時 間目でより有意な抗浮腫作用がみられた。Control群の増加率を100%とすると、厚さ増加 量においては2時間目で60%、4時間目で33%抑制した。また、容積増加量においては2 時間目で65%、4時間目で49%抑制した(図13)。このことからWater①画分に活性成分 があると判断した。さらに、活性成分があると判断したWater①画分3.37 gを各1 lの蒸 留水とBuOH(ブタノール)で二液分配し、Water②画分として2.09 g (55.6%)、BuOH画 分として0.997 g (26.6%)を得た(図12)。Water②画分とBuOH画分についてカラゲニン 浮腫モデルマウスにおける抗浮腫試験を用いて作用を比較したところ、BuOH画分に厚さ2 時間目で有意な抗浮腫作用がみられた。Control群の増加率を100%とすると、厚さ増加量 においては2時間目で22%有意に抑制した(図14)。このことから活性成分はBuOH画分 にあると判断した。しかし、サンプルの量が少なくなってしまったことから、以降の分画

をRAW264.7細胞におけるNO産生抑制作用を指標として行うこととした。

2) RAW264.7 細胞における NO 産生抑制作用を指標とした活性成分の精製

上記カラゲニン浮腫モデルマウスで評価したものと同じWater②画分とBuOH画分につ いてRAW264.7細胞におけるNO産生抑制試験に供した結果、BuOH画分に6.25〜100 µg/mlの範囲で濃度依存的に有意にNO産生抑制作用がみられた。Controlの値を100%と すると6.25 µg/mlでは12%、12.5 µg/mlでは22%、25.0 µg/mlでは32%、50 µg/mlでは

わせて活性成分はBuOH画分にあると判断した。さらに、BuOH画分888.3 mgを各1 l の40% MeOHとCHCl3で二液分配し、40% MeOH画分として148.3 mg (4.9%)、CHCl3

画分として740.0 mg (23.8%)を得た(図12)。40% MeOH画分とCHCl3画分の作用を比 較したところ、CHCl3画分において50〜100 µg/mlでNO産生抑制作用がみられた。50 µg/mlでは19%、100 µg/mlでは30%のNO産生抑制作用がみられた(図16)。この結果か ら、活性成分はCHCl3画分にあると判断した。

次に、CHCl3画分700.2 mgを2 mlの80% MeOHに溶解し、ODS gel (50 g, 300 30 mm)を用いて80% MeOH (250 ml), 100% MeOH (200 ml) 2, EtOAc (800 ml)の順番に 溶媒を流し、それぞれ流した溶媒からB1画分(184.1 mg, 6.3%)、B2画分(240.9 mg, 8.2%)、 B3画分(197.5 mg, 6.7%)、B4画分(77.7 mg, 2.7%)の4つのフラクションを得た(図17)。

B1〜B4画分の作用を比較したところ、B2とB3において100 µg/mlで有意にNO産生抑 制作用がみられた。Control群の抑制率を100%とするとそれぞれ25%、12%の抑制率であ った(図18)。したがって、活性成分はB2とB3にあると判断した。まずB2画分の精製を 試みたが分離が困難であったため、B3についてクロマトグラフィーによる精製を進めた。

B3画分195.6 mgを2 mlのCHCl3溶解し、Silica gelカラム(30 g)を用いて100%

CHCl3(300 ml), CHCl3:MeOH=8:2 (660 ml), CHCl3:MeOH=4:6 (300 ml), CHCl3: MeOH=2:8 (90 ml), MeOH (240 ml)の順番に溶媒を流し、B3-1画分(14.1 mg, 0.36%)、 B3-2画分(46.5 mg, 1.2 %)、B3-3画分(45.7 mg, 1.17%)、B3-4画分(17.2 mg, 0.4%)、B3-5 画分(3.5 mg, 0.87%)、B3-6画分(18.9 mg, 0.48%)、B3-7画分(12.2 mg, 0.31%)、B3-8画分 (13.4 mg, 0.34%)、B3-9画分(20.9 mg, 0.54%)、B3-10画分(69.3 mg, 1.78%)の10個のフラ クションを得た(図17)。これらB3-1〜B3-10画分の作用を比較したところ、B3-2の活性 はControl群の抑制率を100%とすると、50 µg/mlでは37%、100 µg/mlでは49%の抑制 率だった。また、B3-7〜B3-10においても50,100 µg/mlの濃度でNO産生抑制作用がみ られた(図19)。これらの結果から、B3-2に最も強い活性成分があると判断した。B3-2画

分34.8 mgを1 mlのMeOH:Water=8:1の溶液に溶解し、ODS gel (30 g, 300 30 mm) を用いてMeOH:Water=8:1 (900 ml), 100% MeOH(300 ml)の順番に溶媒を流し、B3-2-1 画分(11.0 mg, 0.38%)、B3-2-2画分(2.6 mg, 0.09%)、B3-2-3画分(21.2 mg, 0.73%)の3つ のフラクションを得た(図17)。

得られたB3-2-1〜B3-2-3画分において作用を比較したところ、B3-2-1の50〜100 µg/ml の濃度においてNO産生抑制作用がみられた。50 µg/mlでは18%、100 µg/mlでは31%の 抑制率であった(図20)。この結果から、活性成分はB3-2-1にあると判断した。したがっ て、ハバノリ抽出物の活性成分の一つは、水溶性成分であることが示唆された。このフラ クションを TLC に供したところ、2つのスポットが確認された(図 21)。また、これらの 成分はニンヒドリンで陰性であったことからアミノ基を持たないことが示唆された。また、

塩化鉄試薬で陽性であったことから、ステロール骨格を持つことが示唆された。ステロー ルとはステロイドの A環の3位にヒドロキシル基を持つ誘導体である。海藻に含まれる主 なステロールにはフコステロールなどが知られており、ハバノリにもフコステロールが含 まれていることが推定される。また、フコステロールの生理活性については抗糖尿病作用 や抗酸化作用が報告されているが、抗炎症作用についての報告はない44, 45)。今後さらに、

ハバノリの活性成分の精製を行いスペクトル分析などで構造決定をすることで活性成分の 同定を行うことが必要であると考えられる。

活性成分

Water/EtOAc=1/1

【収率】

MeOH抽出物

【100%】

Water②

【55.6%】

Water/BuOH=1/1

EtOAc

【9.1%】

Water①

【89.7%】

CHCl3

【23.8%】

40%MeOH

【4.9%】

40%MeOH/CHCl3=1/1 BuOH

【26.6%】

図12.カラゲニン浮腫モデルマウスにおける抗浮腫作用を指標としたハバノリMeOH抽出 物の分画スキーム

ハバノリMeOH抽出物を100%とした各分画物の収率を【 】内に示した。活性がみられ た画分を黄色で示した。

図13.カラゲニン浮腫モデルマウスにおけるハバノリ分画物(Water①画分、EtOAc画分)

の抗浮腫作用に及ぼす影響

Values are expressed as means S.E. (n=6), ***:p<0.005 vs Control.

◇  Control  5% DMSO 溶液    □  Water①  画分  2,000 mg/kg    △  EtOAc  画分  2,000 mg/kg 

0 0.05 0.1 0.15

0 2 4

時間 (h)

容積増加量  (m l)

***

***

0 1 2

0 2 4

時間 (h)

厚さ 増加量  (m m )

***

***

図14.カラゲニン浮腫モデルマウスにおけるハバノリ分画物(Water②画分、BuOH画分)

の抗浮腫作用に及ぼす影響

Values are expressed as means S.E. (n=6), *:p<0.05 vs Control.

◇  Control  5% DMSO 溶液    □  Water②  画分  2,000 mg/kg    △  BuOH  画分  2,000 mg/kg

0 1 2

0 1 2 3 4 5

時間 (h)

厚さ 増加量  (m m )

* 0

0.05 0.1 0.15

0 1 2 3 4 5

時間 (h)

容積増加量  (m l)

0 100

0 0 6.25 12.5 25 50 100 6.25 12.5 25 50 100

% of Control

Water②画分

***

***

BuOH画分

***

***

*** ***

LPS(+) + サンプル(µg/ml)

図15.RAW264.7細胞におけるハバノリWater①分画物(Water②画分、BuOH画分)の NO産生抑制作用

Values are expressed as means S.E.(n=4) ***:p<0.005 vs Control.

0 100

LPS (-)

Control 12.5 25 50 100 12.5 25 50 100

% of Control

***

LPS(+) + サンプル(µg/ml)

***

***

40%MeOH画分 CHCl3画分

図16.RAW264.7細胞におけるハバノリBuOH分画物(40% MeOH画分、CHCl3画分)

のNO産生抑制作用に及ぼす影響

Values are expressed as means S.E.(n=4) ***:p<0.005 vs Control.

B2

【8.2%】

ODS gel

[80%MeOH 2.5 vol.→ 100%MeOH 4 vol.→ EtOAc]

B4

【2.7%】

B1

【6.3%】

Silica gel

[100%CHCl3,5 vol.、CHCl3:MeOH=8:2,11 vol.、CHCl3:MeOH

=4:6,5 vol.、CHCl3:MeOH=2:8,1.5 vol.、MeOH,4 vol. ]

ODS gel

[MeOH:Water=8:1,10 vol.、MeOH,4vol. ]

B3-2-3

【0.73%】

B3-2-1

【0.38%】

B3-2-2

【0.09%】

B3-6

0.48%

B3-7

0.31% B3-8

【0.34%】 B3-9

【0.54%】

B3-10

【1.78%】

B3-4

0.4%

B3-5

0.87% B3-3

1.17% B3-1

0.36%

B3-2

1.20%

B3

【6.7%】

活性成分

【収率】

CHCl3

23.8%

図17. RAW264.7細胞におけるNO産生抑制試験を指標としたハバノリMeOH抽出物の 分画スキーム

ハバノリMeOH抽出物を100%とした各分画物の収率を【 】内に示した。活性がみられ た画分を黄色で示した。

0 100

L P S ( -)

Control 25 50 100 25 50 100 25 50 100 25 50 100

oControl

B1 B2

***

*

B3

*** *** ***

LPS(+) + サンプル(µg/ml)

B4

図18.RAW264.7細胞におけるハバノリCHCl3分画物(B1〜B4画分)のNO産生抑制作 用に及ぼす影響

Values are expressed as means S.E.(n=4) *:p<0.05, ***:p<0.005 vs Control.

図19.RAW264.7細胞におけるハバノリB3画分(B3-1〜B3-10画分)のNO産生抑制作 用に及ぼす影響

Values are expressed as means S.E.(n=4) *:p<0.05, ***:p<0.005 vs Control.

0 100

LPS (-)

Cont. -1 -2 -3 -4 -5 -6 -7 -8 -9 -10

% of Control

50 µg/ml 100 µg/ml

*** ***

***

***

***

****** ***

***

***

***

***

*** ******

***

*

B3

0 100

L P S ( -)

0 25 50 100 25 50 100 25 50 100

oControl

B3-2-1

***

***

*

B3-2-3 B3-2-2

LPS(+ ) +  サンプル( µ g/ m l)

図20.ハバノリB3-2分画物(B3-2-1〜B3-2-3画分)のNO産生抑制試験

Values are expressed as means S.E.(n=4) *:p<0.05, ***:p<0.005 vs Control.

B3-2-1

図21.B3-2-1の薄層クロマトグラフィー

展開溶媒:100% MeOH、呈色試薬:3%酢酸銅-8%リン酸-2%硫酸溶液 HPTLCプレート(silica gel 60 RP-18 WF254s、メルク)使用

ドキュメント内 修士論文 木暮usb (ページ 33-48)

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