駒澤大學佛敎學部硏究紀要第七十五號 平成二十九年三月 一六一
はじめに
慶 安 五 年 （ 一 六 五 二 ）、 「 永 平 道 元 禅 師 四 百 回 忌 」 の 厳 修 を 担 っ た 永 平 寺 二 十 七 世 高 国 英 峻 は 、 関 東 に お け る 公 案 参 究 の 体 系 を 経 て 獲 得 し た 各 派 の 本 参 や 切 紙 等 を 、 永 平 寺 室 内 に 積 極 的 に 導 入 し た 。 万 治 三 年 （ 一 六 六 〇 ） 八 月 、 永 平 寺 二 十 七 世 高 国 英 峻 は 、 現 住 同 寺 二 十 九 世 鉄 心 御 州 へ 「 拈 華 微 笑 秘 訣 」 を 伝 受 し て い る 。 既 に 退 院 し て い た 高 国 英 峻 か ら 鉄 心 御 州 に 伝 附 さ れ た 一 連 の 本 参 ・ 切 紙 史 料 の 一 つ で あ り 、 題 注 に 「 伝 授 古 則 な り 」 と あ る よ う に 本 参 史 料 と 言 え る 。 し か し な が ら 、 所 謂 参 話 関 係 切 紙 と し て 位 置 付 け る こ と も 可 能 で あ る 。 事 実 、 巻 子 の 上 書 き に 「 切 紙 の 内 に 之 れ 有 り と 雖 も 、 重 ね て 残 り 置 く 」 と あ り 、 既 に 切 紙 と し て あ る も の を 再 度 書 写 し て 後 代 に 伝 え よ う と し て い る 。 更 に そ の 識 語 に 以 下 の よ う に 記 し て い る 。 ○ 是 く の 如 く 、 精 霊 も 、 此 の 旨 を 以 て 号 す る か 。 当 山 伝 授 の 古 則 な り 。 蜜 な る 故 に 覆 蔵 せ ず 、 覆 蔵 せ ざ る 故 に 蜜 な る 者 か 。 後 来 の 為 に 之 れ を 記 取 し 畢 ん ぬ 。 秘 す べ し 秘 す べ し 。 当 山 伝 法 二 十 六 世 勅 万 照 高 国 禅 師 英 峻 叟 （ 花 押 ） 当 山 現 住 御 州 和 尚 に 伝 附 す る な り 。 高 国 作 成 の 永 平 寺 所 蔵 ﹃ 切 紙 目 録 ﹄ に は 、「 （ 112） 一 、 拈 花 微 笑 之 図 ﹇ 七 通 ﹈」 と あ り 、 別 本 の 永 平 寺 所 蔵 ﹃ 切 紙 目 録 ﹄江戸時代初頭における永平寺の動向について（中）
―永平寺二十九世鉄心御州を中心に―
飯
塚
大
展
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一六二 に も 「（ 125） 拈 華 微 笑 之 図 参 話 共 ニ 」 と あ る 。 ま た 、 本 史 料 は 面 山 瑞 方 著 ﹃ 洞 上 室 内 断 紙 揀 非 私 記 ﹄「 永 平 寺 室 中 断 紙 目 録 並 引 」 に お い て 「（ 46） 拈 華 微 笑 訣 參 ︿ 他 家 訓 訣 邪 解 カ ナ 抄 ナ り ﹀」 と 指 摘 す る 切 紙 に 相 当 す る も の と 推 定 す る 。 高 国 は 、 関 東 に お け る 参 学 を 通 し て 、 応 仁 ・ 文 明 の 乱 以 降 、 林 下 道 元 派 下 に お い て 盛 ん に 抄 出 さ れ た 本 参 や 切 紙 を 体 系 化 し 、 位 置 づ け る か と い う 課 題 に 直 面 し て い た と 思 わ れ る 。 高 国 英 峻 書 写 「 永 平 嫡 嗣 伝 授 之 儀 式 」 に つ い て 言 え ば 、 三 物 （ 嗣 書 ・ 血 脈 ・ 大 事 ） 伝 授 の 根 拠 は し ば し ば そ の 関 連 切 紙 に 依 拠 し て お り 、 先 行 の 切 紙 を 前 提 と し て 成 立 し て い る こ と か ら も わ か る 。 本 史 料 に お い て も 師 資 の 問 答 に よ る 問 題 の 提 起 と 見 解 の 呈 示 が な さ れ て お り 、 内 容 理 解 に は し ば し ば 切 紙 が 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。 高 国 は 、 住 持 に と っ て 重 要 不 可 欠 な 「 伝 授 古 則 」 と し て 本 史 料 を 権 威 化 し 、 嗣 法 の 支 証 と し て の 価 値 を 付 与 し よ う と し た も の と 推 察 す る 。 高 国 は 切 紙 ・ 本 参 の 相 伝 を 以 て 伝 法 の 正 当 性 を 保 証 す る 相 続 様 式 を 確 立 し よ う と し て い た も の と 思 わ れ 、「 拈 華 微 笑 秘 訣 」 も 永 平 寺 に お け る 新 た な 教 学 体 系 の 一 端 を 担 う も の で あ っ た 。
鉄心御州の教学的背景
永 平 寺 所 蔵 ﹃ 永 平 総 目 録 御 州 本 参 ）1 （ ﹄（﹃ 伝 三 清 規 ﹄） を 素 材 と し て 、 永 平 寺 二 十 九 世 鉄 心 御 州 の 教 学 的 背 景 に つ い て 考 察 し た い 。 万 治 三 年 （ 一 六 六 〇 ） 八 月 以 降 、 永 平 寺 二 十 九 世 鉄 心 御 州 は 、 永 平 寺 維 摩 室 中 に お い て 「 永 平 総 目 録 御 州 本 参 」 書 写 し て い る 。 本 史 料 は 、﹃ 吉 祥 山 永 平 禅 寺 総 目 録 ﹄（ 禅 籍 篇 第 二 巻 № 28、 文 書 篇 第 一 巻 № 108所 収 。 以 下 ﹃ 永 平 総 目 録 ﹄） に 基 づ く 「 三 位 透 」 の 本 参 で あ る 。﹃ 永 平 総 目 録 ）2 （ ﹄ は 永 平 寺 十 九 世 祚 玖 （ 球 ） が 慶 長 十 一 年 （ 一 六 〇 六 ） に 祚 天 （ 後 の 永 平 寺 二 三 世 ） へ と 伝 授 し 、 そ れ を 更 に 祚 天 の 法 を 嗣 い だ 鎮 徳 寺 三 世 雪 庵 宝 積 が 元 和 九 年 （ 一 六 二 三 ） に 転 写 し た も の が 、 本 史 料 で あ る こ と が わ か る 。 そ の 内 容 は 、「 吉 祥 山 永 平 禅 寺 総 目 録 、 透 の 参 に 引 き 合 わ せ て 、 段 々 に 話 頭 を 分 か ち て 、 三 段 共 に 一 々 に 之 れ を 記 し 、 之 れ を 置 く 事 」 と あ る よ う に 、 三 段 の 透 り の 参 （ 三 位 之 参 ） と し て 構 成 さ れ た 公 案 目 録 で あ る 。 永 平 寺 三 十 四 世 馥 州 高 郁 （ 大 仙 国 光 禅 師 、 元 禄 元 年 ︿ 一 六 八 八 ﹀ 示 寂 ） が 、 貞 享 五 年 一 〇 月 永 平 寺 退 院 に 際 し て 記 録 し た 「 伝 授 室 中 之 物 」（ ﹃ 永 平 寺 史 料 全 書 ﹄ 禅 籍 編 第 三 巻 № 14） に よ れ ば 、 永 平 寺 室 中 に お い て 伝 授 相 伝 さ れ 、 室 中 の 参 禅 箱 に 収 蔵 さ れ た 本 参 ・ 切 紙 類 が 列 挙 さ れ て い る 。 そ の 中 に は 三 位 の 本 参 の 書 名 が 多 く 見 ら れ る 。 私 見 に よ れ ば 、 相 伝江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一六三 の 系 譜 は 明 ら か で は な い が 、 既 に 御 州 書 写 以 前 に 本 史 料 の 原 本 が 成 立 し 、 永 平 寺 に 所 蔵 さ れ て い た 可 能 性 が あ る 。 永 平 寺 所 蔵 ﹃ 仏 家 之 大 事 ﹄（ ﹃ 永 平 寺 史 料 全 書 ﹄ 禅 籍 編 第 二 巻 № 44） に よ れ ば 、 従 開 山 大 禅 仏 二 代 参 問 了 、 二 代 示 義 介 、 義 演 、 寂 円 、 当 山 代 々 住 持 計 可 相 伝 者 也 。 当 山 伝 法 二 十 八 世 勅 特 賜 大 覚 仏 海 禅 師 鉄 心 御 州 筆 。 と あ り 、 御 州 は 、 こ の 本 参 を 道 元 、 懐 弉 、 義 介 、 義 演 、 寂 円 以 降 、 そ の 派 下 に 相 伝 さ れ て き た も の と 位 置 づ け て い る 。 永 平 寺 二 十 八 世 高 国 英 峻 は 、﹃ 天 童 如 浄 和 尚 智 識 験 弁 点 験 大 明 目 ﹄（ ﹃ 永 平 寺 史 料 全 書 ﹄ 禅 籍 編 第 一 巻 № 63） に お い て 、 切 紙 ・ 本 参 の 相 伝 を 以 て 伝 法 の 正 当 性 を 保 証 す る 、 相 続 様 式 の 確 立 を 企 図 し て い る が 、 こ の 高 国 の 姿 勢 は 御 州 に お い て も 継 承 さ れ て い る と 言 え よ う 。 高 国 、 鉄 心 、 智 堂 が 主 唱 し た 切 紙 ・ 本 参 史 料 を 嗣 法 伝 法 の 中 心 に 置 く 考 え 方 は 、 十 七 世 紀 に お け る 林 下 曹 洞 宗 僧 侶 に 共 通 す る も の で は な か っ た か と 推 察 す る 。 一 例 を 挙 げ れ ば 、 叡 山 文 庫 ﹃ 宗 門 密 参 ﹄（ 真 如 蔵 ・ 百 五 十 四 惟 ） は 、 越 前 国 （ 福 井 県 ） 宅 良 慈 眼 寺 開 山 天 真 自 性 を 派 祖 と す る 、 天 真 派 四 派 の 希 明 派 下 に お い て 参 得 さ れ て き た 「 曹 洞 宗 ノ （ 三 位 ノ ） 秘 参 」 で あ る 。 寛 永 十 年 （ 一 六 三 三 ） 秋 に 不 染 道 人 が 誌 し た 識 語 に は 、 （上 略 ） 野 僧 隠 遯 ノ 砌 リ 、 山 門 三 院 執 行 探 題 大 僧 正 天 海 大 和 尚 位 、 依 テ 二御 望 一、 不 レ顧 二法 罰 一、 書 シ テ 奉 レ寄 二附 シ 東 照 宮 大 権 現 ノ 宝 蔵 ニ 一者 也 。 私 云 、 タ ト イ 顕 密 禅 ト 云 テ 、 禪 ヲ 用 ル 済 家 ノ 禪 ハ 一 機 禪 、 一 句 ノ 宗 風 ナ リ 。 故 ヘ ニ 五 十 二 位 ノ 科 段 階 級 ニ 逢 コ ト ナ シ 。 曹 洞 ノ 修 行 ハ 、 階 級 ヲ 立 ル ニ 仍 テ 、 顕 宗 ニ 用 ル コ ト 實 正 ナ リ 。 殊 永 平 開 山 ハ 、 天 台 ノ 教 家 ヲ 極 メ ナ ガ ラ 、 曹 洞 ノ 密 意 ヲ 弘 ヒ ロ メ 玉 ウ ナ リ 。 至 レ今 永 平 十 二 時 ノ 勤 行 ハ 、 顕 宗 ノ 古 法 ヲ 不 ス レ捨 テ 、 顕 ヲ 知 ラ ザ ル 曹 洞 ハ 、 永 平 派 下 ニ ア ラ ズ 、 亦 曹 洞 ヲ 不 ヌ レ知 ラ 顕 ハ 、 天 台 ノ 末 裔 ニ ア ラ ズ 。 顕 密 禪 一 致 ノ 根 本 ヲ 極 メ バ 、 自 立 他 破 ノ 見 解 ヲ ヤ メ テ 、 本 源 ヲ 尋 タ ツ ヌ ベ シ 。 何 レ モ 佛 心 宗 ノ 極 位 ハ 不 二 ナ リ 。 殊 更 ラ 永 平 ハ 、 祖 教 不 二 ト 建 立 シ 玉 ウ ゾ 。 下 聞 ヲ 耻 ハ ヂ ス 、 学 道 ヲ ス ベ キ 人 ハ 、 名 利 ヲ 捨 テ ヽ 学 ス ベ シ 。 名 利 ハ 全 ク 冥 土 ノ タ ヨ リ ニ ア ラ ズ 、 現 在 ノ 果 報 ナ リ 。 捨 身 修 行 ハ 、 後 生 善 処 ノ 種 子 ナ リ 。 怒 ユ メ 〳 〵 名 利 ヲ ス テ ベ シ 。 名 利 ニ ハ 、 鉄 棒 ヲ 招 ク ゾ 。 無 用 ノ 一 筆 ナ レ ト モ 、 法 ヲ 惜 ニ 仍 テ 誌 之 者 也 。 寛 永 十 癸 酉 秋 初 吉 日 勅 不 染 道 人 謹 誌 。 寛 永 十 八 辛 巳 八 月 吉 日 豪 清 書 之 。 （ 43ｵ ～ ｳ ）
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一六四 と あ る 。 こ れ に 依 れ ば 、 不 染 道 人 （ 未 詳 ） が 既 に 隠 遁 し て い た 折 り 、 天 海 僧 正 か ら 懇 望 が あ っ て 、 法 罰 を も 顧 み ず 、 法 蔵 （ 天 海 蔵 ） に 寄 附 し た も の で あ る こ と が わ か る 。 又 、 上 記 の 文 に お い て 興 味 深 い の は 、 臨 済 宗 と 対 比 し て の 曹 洞 宗 の 位 置 づ け で あ り 、 天 台 宗 （ 顕 宗 ） と の 対 比 に お け る 曹 洞 宗 及 び 道 元 の 位 置 づ け で あ る 。 臨 済 宗 の 宗 風 は 「 一 機 禅 、 一 句 ノ 宗 風 」 で あ り 、「 五 十 二 位 ノ 科 段 階 級 」（ 修 行 の 階 梯 ） を 持 た な い か ら 、 真 の 「 顕 密 禅 」 と は 言 え な い 。 そ れ に 対 し て 曹 洞 宗 の 修 行 は 、「 階 級 ヲ 立 ル 」 こ と か ら 顕 宗 の 立 場 に あ る と す る 。 更 に 曹 洞 宗 は 「 顕 密 」 一 致 の 宗 風 で あ る と し て 、 永 平 寺 開 山 道 元 は 「 天 台 ノ 教 家 ヲ 極 メ ナ ガ ラ 、 曹 洞 ノ 密 意 ヲ 弘 」 め た の で あ り 、 そ の 立 場 は 「 祖 教 不 二 」 に あ る と す る 。 徳 川 家 康 ・ 秀 忠 ・ 家 光 の 三 人 の 将 軍 に つ か え 幕 府 の 宗 教 行 政 の 中 心 人 物 の ひ と り で あ っ た 天 海 に 対 し て 、 曹 洞 宗 と 天 台 宗 の 親 和 性 、 曹 洞 禅 の 、 臨 済 禅 に 対 す る 優 位 性 を 主 張 し て い る が 、 そ の 根 據 の 一 つ は 「 三 位 」 の 本 参 に よ る 修 行 階 梯 で あ っ た 。 十 八 世 紀 に 入 る と 、 曹 洞 宗 そ れ 自 体 に 対 す る 認 識 に 変 化 が 見 ら れ る 。 所 謂 「 宗 統 復 古 」 へ の 傾 斜 が そ れ で あ る 。﹃ 永 平 総 目 録 御 州 本 参 ﹄（ 以 下 ﹃ 御 州 本 参 ﹄） 表 紙 見 返 し の 円 月 の 識 語 に 此 の 吉 祥 山 永 平 禅 寺 話 頭 と 題 す る カ ナ 仮 字 の 書 一 冊 は 、 中 古 此 の 山 に 住 す る 代 語 僧 の 述 作 す る 所 に し て 、 固 よ り 承 陽 ・ 二 代 ・ 三 代 等 の 時 よ り 、 之 れ を 伝 え 来 っ て 有 る 底 に は 非 ざ る な り 。 読 む 者 、 宜 し く 其 の 時 を 考 え て 、 以 っ て 其 の 人 を 知 っ て 用 否 す べ し 。 延 享 二 乙 丑 （ 一 七 四 五 ） 孟 夏 、 住 山 円 月 、 之 れ を 誌 す 。 と あ る 。 こ れ に 拠 れ ば 、 円 月 は 本 書 を 中 古 永 平 寺 住 山 の 代 語 僧 に よ る 著 述 （ 偽 作 ） と し て 批 判 し て い る 。 円 月 は 、 永 平 寺 三 十 世 智 堂 光 紹 書 写 ﹃ 参 禅 切 紙 後 巻 ﹄ に も や は り 識 語 （ 延 享 二 年 ） を 誌 し て い る 。 円 月 は 、 所 載 の 百 九 十 六 件 の 切 紙 が 、 総 て 代 語 僧 の 臆 説 で あ る と し て 、 同 様 の 批 判 を 加 え て い る 。 こ れ は 、 面 山 瑞 方 ﹃ 洞 上 室 内 断 紙 揀 非 私 記 ﹄ や 永 平 寺 四 十 世 承 天 則 地 「 旧 本 除 却 弁 」 に 見 ら れ る 切 紙 相 伝 の 批 判 、 代 語 僧 批 判 の 論 調 と 軌 を 一 に す る も の で あ る 。 承 天 は 、 高 国 英 峻 や 智 堂 光 紹 の よ う に 名 指 し で 批 判 は し て い な い が 、 御 州 も ま た 非 難 の 対 象 で あ っ た と 思 わ れ る 。 関 東 の 教 学 （ 切 紙 ・ 本 参 を 中 心 と す る 体 系 ） を 永 平 寺 に 積 極 的 に り 入 れ 、 位 置 付 け た 高 国 以 降 の 宗 風 は 、 十 八 世 紀 前 半 に な る と 厳 し い 批 判 に 曝 さ れ る 事 に な っ た 。 ﹃ 御 州 本 参 ﹄ の 構 成 は 、 三 位 （ 自 己 ・ 智 不 到 ・ 那 時 ） の 体 系 に も と づ い て 公 案 を 配 当 し 、 体 系 化 し て お り 、 そ の 透 参
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一六五 の 項 目 は 、（ 一 ） 自 己 大 入 頭 、 三 十 五 則 、（ 二 ） 自 己 転 処 透 、 六 則 、（ 三 ） 自 己 本 分 之 透 、 五 則 、（ 四 ） 自 己 目 前 一 致 透 、 八 則 、（ 五 ） 智 不 到 透 、 十 八 則 、（ 六 ） 一 句 之 智 不 到 透 、 七 則 、（ 七 ） 智 不 到 異 弁 眼 、 五 則 、（ 八 ） 智 不 到 転 処 透 、 七 則 、 （ 九 ） 智 不 到 不 転 透 、 九 則 、（ 一 〇 ） 偏 正 一 致 之 透 、 六 則 で あ る 。 こ れ ら は 「 三 位 透 参 」 で あ る が 、 実 際 に は 自 己 と 智 不 到 相 当 の 本 参 で あ り 、 那 時 の 部 分 を 欠 い て い る 。 本 史 料 と は 一 致 し な い 部 分 も あ る が 、 前 述 の よ う に 、﹃ 永 平 寺 総 目 録 ﹄ （﹃ 永 平 寺 史 料 全 書 ﹄ 禅 籍 編 第 二 巻 № 28、 文 書 編 № 108） の 「 三 位 透 」 公 案 目 録 に 依 拠 し て い る と 言 え る 。 慶 長 十 一 年 （ 一 六 〇 六 ） 八 月 二 十 三 日 永 平 寺 十 九 世 祚 玖 （ 祚 球 と も 。 一 五 三 一 ～ 一 六 一 〇 ） が 書 写 し 、 同 二 十 二 世 祚 天 （ ～ 一 六 三 一 ） へ と 伝 附 し て い る こ と を 勘 案 す れ ば 、 江 戸 時 代 初 期 に 永 平 寺 室 中 に お い て 「 三 位 透 」 本 参 が 成 立 し て い た 可 能 性 が あ る 。 内 容 に つ い て も 、 祚 玖 書 写 「 本 参 十 則 」「 秘 参 十 六 則 」 と の 関 連 性 を 指 摘 し 得 る （ 禅 籍 篇 第 二 巻 № 31「 対 照 表 」 参 照 ）。 ち な み に 、 本 史 料 各 公 案 の 典 拠 に つ い て は 、﹃ 永 平 寺 総 目 録 ﹄（ 禅 籍 篇 第 二 巻 ） の 解 説 に 付 さ れ た 対 照 表 を 参 照 し て い た だ き た い 。 鉄 心 の 教 学 は 、 泰 叟 派 下 龍 穏 寺 系 統 に 属 す る の で は な い か と 推 定 す る 。 栃 木 県 栃 木 市 金 剛 寺 蔵 ﹃ 泰 叟 派 秘 参 ﹄ 奥 書 に 「 龍 穏 二 十 二 世 ／ 鉄 心 州 叟 （ 花 押 ） ／ 天 達 首 座 」 と あ り 、 龍 穏 寺 二 十 二 世 鉄 心 御 州 か ら 金 剛 寺 三 世 天 達 へ と 伝 授 さ れ た こ と を 示 す も の で あ る 。 鉄 心 御 州 相 伝 の 本 参 に つ い て は 、﹃ 泰 叟 派 秘 参 ﹄ が 参 考 に な り 、 正 龍 寺 所 蔵 切 紙 史 料 を 併 せ て 参 看 す べ き と 思 わ れ る 。 ま た 、 香 林 寺 蔵 「 本 参 」 に は 、「 総 寧 高 国 英 俊 直 伝 也 ／ 祖 曇 九 拜 」 と 、 高 国 よ り 伝 授 さ れ た こ と を 記 す も の が あ り 、 長 年 寺 所 蔵 ﹃ 一 州 派 秘 参 ﹄ に は 、 智 堂 光 紹 が 弟 子 へ と 伝 授 し た こ と が 記 さ れ て い る 。 関 東 に 展 開 し た 了 庵 派 下 の 教 学 が 永 平 寺 に お い て も 実 践 さ れ た も の と 思 わ れ る 。 各 則 の 記 述 の 形 式 は 、 一 、 三 位 透 の 項 目 、 二 、 配 当 さ れ る 話 頭 （ 公 案 ） の 次 第 を 示 す 番 号 及 び 名 前 、 三 、 本 文 の 順 で な さ れ る 。 本 文 は 、 勘 弁 の 記 述 が 中 心 で あ り 、、 師 の 拶 語 （ 問 い か け ）、 弟 子 の 代 語 （ 代 句 ）、 「 心 ハ ︙ ︙ 」 以 下 に 示 さ れ る 内 容 の 解 釈 （ 敷 衍 ） が あ り 、「 私 云 ︙ ︙ 」 と し て 筆 者 の 私 見 が 提 示 さ れ る こ と が あ る 。 「 三 位 透 」 の 本 参 の 体 系 に お い て は 、 自 己 入 頭 の 入 派 、 即 ち 三 位 の 一 で あ る 「 自 己 の 首 か し ら こ そ く 古 則 」 が 重 要 な 意 味 を 持 つ 。 「 自 己 大 入 頭 」 の 古 則 目 録 に 付 せ ら れ た 一 文 が 参 考 に な る 。 自 己 入 頭 の 入 い り 派 は 、 其 の 数 多 し 。 然 り と 雖 も 当 山 に お い て は 、 祖 師 禅 の 入 派 、 大 入 頭 は 、 竹 篦 背 触 な り 。 其 の 趣 き は 、 投 子 青 禅 師 、 浮 山 遠 禅 師 の 会 下 に お い て 、 竹 篦 背 触 に 投 機 し て 、 洞 上 ・ 済 下 一 句 に 透 脱 し て 、 其 れ よ り 以 こ の か た 来 、
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一六六 洞 上 に 済 下 の 大 事 の 話 頭 を 取 扱 う こ と 多 し 。 入 頭 は 、 或 い は 死 活 当 頭 の 入 派 、 或 い は 大 死 底 の 入 派 、 或 い は 転 凡 入 聖 の 入 派 、 或 い は 万 機 休 罷 の 入 派 、 或 い は 心 身 脱 落 の 入 派 、 何 れ も 自 己 の 入 派 也 、 能 く 〳 〵 訛 を 見 別 く べ き も の な り 。 （ 1ｳ ） 永 平 寺 に お い て は 、「 竹 箆 背 触 」 の 話 が そ の 首 古 則 に 該 当 す る 。 他 派 に お い て は 、 そ れ ぞ れ に 異 な る 。 爰 デ 、 自 己 ノ 三 底 ト 云 テ 、 拈 底 、 奪 底 、 折 合 底 ヲ 問 ス ル 也 、 是 ヲ 、 入 処 ノ 三 休 ト モ 云 也 、 参 禅 異 本 ニ 在 之 、 透 ノ 参 ノ 時 、 自 レ是 、 自 己 之 転 処 ヱ 行 ク 也 、 参 禅 別 紙 ニ 在 之 、 爰 デ 、 竹 篦 背 触 ヲ 、 首 ラ 古 則 ト シ テ 、 三 十 五 則 ノ 話 頭 ヲ 問 ス ル 也 、 （ 2ｳ ～ 3ｵ ） 本 史 料 に お い て 、 他 の 三 位 関 連 本 参 で あ る 「 参 禅 異 本 」 や 「 参 禅 別 紙 」 が 参 照 さ れ て い る こ と が 分 か る 。 同 様 の 指 摘 は 外 に も 見 え 、「 碧 岩 ノ 参 」（ 27ｵ ）、 「 五 葉 集 」（ 48ｳ ） 等 の 本 参 と の 連 関 を 知 る こ と が 出 来 る 。 ま た 、 先 師 の 投 機 （ 悟 り の 機 縁 ） に 関 す る 垂 示 や 雑 談 が 引 用 さ れ て い る 。 爰 ニ 垂 示 有 リ 、 先 師 有 時 門 前 ナ ド ヱ 、 遊 山 ニ 出 デ ナ サ レ タ 時 分 、 折 節 秋 ノ 比 、 農 夫 ガ 田 ノ 稲 ナ ド ヲ 、 何 ニ 心 モ 無 ク 、 サ ラ リ 〳 〵 ト カ ツ テ 居 タ ガ 、 雷 電 ノ 、 シ タ ヽ カ ニ 、 ハ ツ チ ト ナ ル 声 ヲ 聞 テ 、 不 覚 鎌 子 ヲ ス テ ヽ 、 ア ツ ト 云 テ 、 ア ゼ ヱ カ ケ 上 ツ タ ゾ 、 処 ヲ 見 テ 、 当 則 ニ 投 機 ナ サ レ タ ゾ 、 ほ か に も 、 例 え ば 最 乗 寺 に 関 す る 垂 示 （ 32ｵ ） な ど も 見 ら れ る 。 ま た 、 句 の 心 得 （ 着 語 の 解 釈 ） に 和 歌 が 引 用 さ れ る 例 と し て は 、 以 下 の 事 例 が あ る 。 師 云 、 三 界 無 法 ヲ 、 代 、 仏 祖 截 断 、 常 磨 吹 毛 剣 、 心 ハ 、 三 界 無 法 ト 見 タ 時 キ 、 諸 法 ヲ 立 セ ヌ ゾ 、 時 キ ガ 、 仏 祖 截 断 ダ 、 此 ノ 時 キ 、 尽 天 尽 地 、 吹 毛 ノ 剣 デ サ ゝ ヱ タ 、 此 ノ 句 ノ 心 得 ニ 、 歌 ヲ 引 テ 云 、 雲 ハ 皆 ナ 払 イ ハ テ タ ル 秋 キ 風 ニ 松 ニ 残 シ テ 月 ヲ 見 カ ナ 、 （ 18ｵ ～ ｳ ） 引 用 の 和 歌 は 、﹃ 新 古 今 和 歌 集 ﹄ 巻 四 「 秋 歌 上 」 に 、「 五 十 首 歌 奉 り し 時 」、 藤 原 良 経 の 歌 と し て 見 え る 。 本 参 に お い て 、 和 歌 が 「 着 語 ・ 代 語 」 と し て 、 或 い は 「 心 得 」 と し て 引 用 さ れ る 傾 向 は 、 無 極 派 ・ 一 州 派 の 本 参 に お い て 確 認 で き る 。 林 下 に お け る 公 案 理 解 は 、 日 本 語 （ 口 語 体 ） の 文 脈 で 行 わ れ た の で あ り 、 そ れ は 同 時 に 禅 の 日 本 文 化 に 対 す る 影 響 力 を よ り 強 い も の へ と 進 化 さ せ た と 言 え る 。
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一六七 本 参 の 成 立 時 期 は 明 確 化 で き な い が 、 林 下 曹 洞 宗 に お い て 早 い 時 期 に 成 立 し た も の の 多 く は 、 本 史 料 の よ う に 大 部 の も の で は な く 、 内 容 も 簡 略 で あ っ た と 思 わ れ る 。 私 見 に よ れ ば 、 江 戸 時 代 前 期 に お い て は 、 本 参 は 師 資 問 答 の 記 録 、 入 室 参 禅 の た め の 手 控 え と い う 段 階 を 経 て 、 林 下 曹 洞 宗 各 派 に お け る 本 参 の 集 積 と 、 そ れ ら の 体 系 化 へ と 進 ん だ 。 そ の 結 果 、 嗣 法 証 明 と し て の 意 味 が 強 調 さ れ る 一 方 で 、 師 資 間 に お け る 秘 密 伝 授 の 意 識 は 希 薄 化 し て い っ た も の と 思 わ れ る 。 各 派 の 本 参 解 釈 を 習 得 す る こ と が 、 大 き な 意 味 を 持 つ よ う に な っ て い っ た 。 換 言 す れ ば 、 各 派 毎 の 独 自 性 の 標 榜 は 、 他 派 と の 比 較 検 討 に よ り 鮮 明 に な っ て い っ た も の と 言 え る が 、 や が て 、 そ の 多 様 な 解 釈 が そ れ 自 体 と し て 意 味 を 持 ち 始 め る よ う に な っ た と 思 わ れ る 。 叡 山 文 庫 所 蔵 ﹃ 禅 林 鈔 ﹄ は 、 三 十 七 則 か ら 構 成 さ れ る 本 参 で あ り 、 月 江 正 文 派 下 の 諸 派 所 伝 の 参 話 を 所 載 す る 。 今 、 参 話 の 系 統 を 示 す 記 事 を 公 案 毎 に 列 挙 す れ ば 以 下 の と お り で あ る 。 （ 1） 三 頓 棒 月 江 正 文 和 尚 ノ 御 扱 也 。 此 ノ 十 則 ノ 公 案 以 来 肉 身 ノ 間 、 如 レ此 付 与 也 。 （ 2） 透 網 金 鱗 双 林 寺 一 州 サ マ ノ 御 扱 也 。 付 与 栄 中 大 事 雲 州 。 （ 3） 龍 潭 紙 燭 吹 滅 月 江 和 尚 示 云 、 吹 滅 下 大 悟 ノ 処 ヲ ︙ ︙ （ 中 略 ） ︙ ︙ 是 ハ 。 龍 穩 寺 月 江 正 文 大 和 尚 サ マ ノ 御 扱 也 。 心 中 ノ 御 真 実 ノ 旨 ヲ 感 シ 候 間 、 修 行 ノ 透 不 レ 殘 如 レ 此 付 与 了 。 他 見 有 間 敷 キ 者 也 。 本 参 ト 是 ヲ 云 也 。 雲 州 、 付 与 宋 中 大 事 也 。 （ 4） 徳 山 未 跨 棒 龍 穩 寺 室 中 ノ 秘 訣 也 。 月 江 共 ニ 極 也 。 （ 5） 世 尊 拈 花 ナ シ 。 （ 6） 香 嚴 樹 上 杲 コ 大 タ イ 寺 開 山 圭 庵 和 尚 ハ 、 當 則 ヲ 竺 山 和 尚 ノ 御 下 タ テ ア ツ カ ツ テ コ サ ア ル ガ 、 ︙ ︙ （ 下 略 ）
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一六八 （ 7） 黄 檗 噇 酒 糟 漢 雲 州 、 ヨ ツ 、 栄 中 、 ヨ ツ ト 云 物 ワ ︙ ︙ （ 中 略 ） ︙ ︙ 是 者 、 龍 穩 寺 代 々 室 中 ノ 参 話 也 。 （ 8） 犀 牛 扇 子 先 ヅ 龍 穩 寺 三 代 目 ノ 太 叟 サ マ ワ 、 馬 ヨ リ ホ カ ト 落 ル サ カ イ ニ 、 此 ノ 千 子 ヲ 帰 シ 玉 フ 也 。 六 代 目 ノ 喜 州 サ マ ワ 、 雪 陰 ニ テ 雨 ノ フ ル ト キ 、 フ ミ ハ ヅ シ テ 、 ホ カ ト コ ロ ン タ 処 テ 、 即 チ 叶 イ 玉 テ 、 ア シ タ ヲ フ ツ サ ケ ナ カ ラ 、 方 丈 ヱ ツ 々 ト 入 テ 挙 シ 玉 フ 也 。 杲 太 寺 ニ テ 無 学 ヘ 坐 禅 ヲ シ テ コ サ ア ル 時 分 ニ 、 明 星 ノ ツ ル ツ ル ト 出 ル ヲ ミ テ 、 火 ガ 々 々 ト 叫 ン デ ゴ サ ア ル 。 是 ヲ 最 初 大 錯 ノ 眼 コ ト 云 也 。 火 ヲ 星 ト 見 、 石 シ ヲ 虎 ト 見 、 花 ヲ 雪 ト ミ ル 境 イ ト 云 ワ 、 眼 ノ ク ル リ ト マ ワ ル サ カ イ ノ コ ト 也 。 此 ノ 只 チ 、 人 我 ノ 扇 子 ワ 破 レ タ ゾ 。 白 堂 サ マ ハ 、 鹿 倉 テ 、 此 ノ 挙 シ 派 ニ ツ マ ワ ツ テ 、 ア ル ト キ 、 亂 統 ノ 掃 地 ヲ ナ サ ル 々 時 分 ニ 、 木 ヨ リ 大 ヘ ビ 、 ア タ マ ヘ 落 チ カ 々 ル 処 テ 、 ア ツ ト 叫 ン テ 、 叶 イ 玉 フ 也 。 皆 ナ コ レ 最 初 ノ 悟 リ ハ 、 如 レ此 ノ タ ゾ 。 ︙ ︙（ 中 略 ）︙ ︙ 爰 ノ 挙 シ 派 ヲ 、 越 ヲ 生 ゴ セ ノ 三 代 目 太 叟 サ マ ハ 、 略 セ 、 ホ レ 入 道 メ 、 ト コ シ 玉 フ 。 亦 一 州 サ マ ワ 、 イ ヤ 々 々 、 其 ノ 時 キ 、 フ ム ツ フ シ テ ク 令 ス 物 ヲ 、 ト 挙 シ 玉 フ 。 花 叟 和 尚 サ マ ワ 、 マ タ イ キ ボ イ 上 ア カ ツ タ タ ヨ 、 ト 挙 シ 玉 フ 。 是 レ イ ツ レ モ 、 最 初 達 処 ノ 回 ラ ヌ 足 土 ガ 出 テ タ ゾ 。 無 学 サ マ ノ 御 下 タ テ 、 盛 庵 サ マ ノ 法 門 将 來 レ 皈 シ 来 レ ト 云 言 下 テ 、︙ ︙ （ 中 略 ） ︙ ︙ 是 者 、 花 叟 サ マ ヨ リ 以 コ ノ カ タ 来 ノ 御 喝 也 。 杲 太 寺 無 学 和 尚 サ マ ノ 御 扱 ニ テ 、 ︙ ︙ （ 下 略 ） （ 9） 鈯 斧 子 雲 州 ガ 心 法 モ 別 ニ ワ ナ イ ゾ 。 月 江 和 尚 示 二 シ テ 泰 叟 ニ 一云 、 諸 聖 ヲ 不 レ慕 、 己 霊 不 レ重 キ ヲ 。 ︙ ︙ （ 中 略 ） ︙ ︙ 龍 穩 寺 サ マ 代 々 ノ 参 話 也 。 （ 10） 無 寒 暑 月 江 和 尚 上 洛 ア ル 時 キ 、 美 ミ ノ 々 ク ニ 野 國 ノ 関 ニ 御 滞 タ イ リ ウ 留 ア ツ タ 。 ︙ ︙ 是 ワ 、 快 庵 派 無 学 和 尚 サ マ 御 扱 也 。 （ 11） 趙 州 四 門 ナ シ 。 （ 12） 曹 洞 五 位 之 御 大 事 （ 洞 山 喫 菓 子 話 ） 亦 快 庵 和 尚 、 培 芝 和 尚 ニ 伝 法 □ 御 申 在 テ 、 ︙ ︙ 今 秀 関 ニ 至 マ テ キ モ ニ 名 シ テ 居 タ 。 ︙ ︙ （ 中 略 ） ︙ ︙ 快 庵 派
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一六九 大 中 寺 ニ ハ 、 天 嶺 和 尚 ヨ リ 御 行 □ □ 時 モ 、 當 寺 ノ 焼 香 ス ヘ キ 者 ナ ラ ハ 、 可 レ行 也 。 ︙ ︙ （ 中 略 ） ︙ ︙ ハ ヤ ク 行 テ 開 山 ヲ 拝 見 シ マ セ ト テ 、 天 嶺 和 尚 ヨ リ 白 庵 ヘ 直 参 也 。 （ 13） 進 前 焼 香 、 退 后 問 訊 是 ハ 、 快 庵 サ マ ノ 秘 参 也 。 （ 14） 百 丈 野 狐 宅 良 ノ 禅 龍 ハ 、 足 毛 ノ 馬 ニ 駕 ツ タ カ 、 ︙ ︙ 越 翁 和 尚 ハ 、 當 則 ヲ ア ツ ケ テ 、 ︙ ︙ （ 中 略 ） ︙ ︙ 鳳 山 サ マ ノ 高 声 ニ 堕 ト 挙 サ セ テ コ サ ア ル ナ リ 。 （ 15） 六 祖 風 幡 桂 庵 ノ 在 時 、 百 姓 ハ 日 々 ニ 用 テ 不 ト レ知 参 ヨ 、 御 出 シ 在 ツ タ レ ハ 、 祖 兼 ケ ン ノ 著 語 ニ 、 擔 折 知 二柴 ノ 重 一 キ ヲ 、 ト ヲ セ ラ レ タ ゾ 。︙ ︙ 天 嶺 ナ ド ノ 代 モ 、 仁 者 心 動 ト 云 ワ レ テ 、 ヒ ツ ク ト 身 ヲ 退 引 イ タ 。︙ ︙ 関 字 當 的 、 白 圭 無 レ瑕 ト 云 モ 、 一 ツ テ 候 ゾ 。 ホ ト ニ 、 ト リ 合 セ テ 走 ゾ 。 是 ハ 、 培 芝 和 尚 ノ 、 泰 叟 ノ 御 會 下 テ 、 無 レ端 端 的 シ テ 、 袈 裟 ヲ カ マ ノ 火 ニ ク ベ テ 、 請 暇 在 ツ タ ト 云 イ 走 ゾ 。 （ 16） 雲 門 関 ナ シ 。 （ 17） 魯 祖 面 壁 野 僧 ガ 代 モ 、 此 筋 目 ヨ リ 見 合 タ ゾ 。 是 ヲ 柏 堂 様 ヨ リ 申 ウ ケ 候 ト 被 仰 也 。 代 々 室 中 ノ 密 参 也 。 空 刧 ノ 誰 ソ ト 扣 キ 申 ス ゾ 。 乾 華 ノ 被 仰 タ ゾ 。 大 事 也 。 文 雪 様 ヨ リ 流 傳 也 。 （ 18） 宗 門 五 門 ノ 沙 汰 無 シ 。 （ 19） 宗 門 三 鏡 誵 訛 此 ノ 三 鏡 ハ 、 峨 山 ノ 秘 参 也 。 （ 20） 衣 ノ 参 ナ シ 。
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一七〇 （ 21） 一 本 刃 微 笑 和 尚 云 、 一 本 刃 ヲ 。 代 、 只 坐 ス 。 ︙ ︙ 刹 云 、 類 則 ヲ 。 ︙ ︙ 一 州 派 ノ 本 参 也 。 大 事 也 。 汰 州 和 尚 ノ 御 秘 参 也 。 ︙ ︙ 文 刹 和 尚 ヨ リ 流 傳 也 。 （ 22） 宝 鏡 三 昧 無 シ 。 （ 23） 石 霜 七 去 快 庵 派 盛 庵 和 尚 ノ 御 扱 也 。 （ 24） 遲 疑 ノ 眼 培 芝 和 尚 云 、 了 々 道 智 ト 云 句 テ ミ セ テ コ サ ア ル 。 ︙ ︙ 無 覚 和 尚 、 柏 堂 和 尚 直 示 直 参 也 。 （ 25） 庭 前 栢 樹 子 是 ハ 、 快 庵 派 本 参 也 。 無 学 ヨ リ 乾 国 和 尚 ヘ 、 亦 存 策 和 尚 ヨ リ □ 子 流 傳 也 。 （ 26） 曹 洞 宗 三 位 注 却 故 ニ 正 悦 和 尚 ノ 云 、 水 中 ノ 塩 ヱ ン 味 色 裡 ノ 膠 カ ウ 青 ト 云 モ 、 是 此 ノ 明 珠 水 中 テ ワ 、 塩 味 ト ナ リ 、 色 裡 テ ワ 膠 青 ト 也 。︙ ︙ 正 悦 和 尚 ノ 代 云 、 白 雲 深 処 ニ 金 龍 躍 。 （ 27） 楊 岐 栗 棘 蓬 茂 庵 派 ノ 大 事 也 。 ︙ ︙ 當 則 ハ 、 目 録 ガ 干 要 也 、 即 庵 派 ノ 大 事 也 。 （ 28） 趙 州 無 峨 山 和 尚 云 、 万 里 一 條 ノ 関 、 ト ナ サ レ タ ソ 。 ︙ ︙ 泰 叟 派 ノ 上 参 也 。 秀 関 和 尚 ニ 傳 授 ス ル 也 。 他 ニ 無 之 。 同 無 ニ 類 則 ヲ 引 分 テ 云 、 先 此 ノ 話 頭 ヲ ハ 、 泰 叟 派 テ 、 四 本 柱 ト 云 テ 、 大 事 ノ サ タ 也 。 （ 29） 青 原 拂 子 竪 起 海 庵 和 尚 、 向 レ汝 ニ 道 、 不 レ辞 已 后 有 テ 二人 承 當 一 ル コ ト 、 ヲ セ ラ レ タ キ ヲ 。 （ 30） 達 磨 直 指 人 身 （ 心 カ ） 模 庵 派 ノ 大 事 也 。 大 渕 叟 ノ 御 扱 也 。
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一七一 （ 31） 同 達 磨 直 指 ー ー 花 叟 派 ノ 大 事 也 。 （ 32） 南 岳 思 公 傳 語 天 嶺 、 思 公 傳 談 ノ 本 則 ニ 出 シ テ 、 代 ニ 関 ト 被 成 一 タ モ 向 也 。 乾 国 和 尚 ノ 参 ノ 時 モ 、 破 地 獄 ノ 偈 ニ 、 関 ト 被 成 タ ゾ 。 ︙ ︙ 模 庵 派 ノ 引 導 古 則 テ 候 。 （ 33） 南 泉 茅 鎌 子 乾 國 和 尚 直 参 也 。 （ 34） 武 帝 達 磨 白 庵 和 尚 云 、。 真 俗 不 二 ノ 処 ヲ 。 ︙ ︙ （ 35） 洞 山 宝 鏡 三 昧 快 庵 派 本 参 ノ 筋 目 也 。 （ 36） 念 誦 註 ナ シ 。 （ 37） 念 誦 参 密 山 派 ノ 参 也 。 龍 穏 寺 月 江 正 文 派 下 の 公 案 体 系 を 中 心 と し て 、 各 派 の 公 案 解 釈 が 集 積 さ れ て い る こ と が 確 認 で き る 。 群 馬 県 渋 川 市 雙 林 寺 所 蔵 ﹃ 一 州 派 大 筋 目 一 透 之 参 ﹄（ 仮 称 ） 所 収 「 透 句 之 参 」 の 末 尾 に は 「 當 門 戸 一 州 和 尚 之 秘 参 也 。 龍 天 守 護 之 処 敬 白 」 と あ り 、「 一 州 和 尚 之 秘 参 」 と し て 位 置 づ け ら れ て い る 。 そ の 「 宗 門 之 夜 参 出 檨 作 法 」 の 冒 頭 に は 、 宗 門 之 夜 参 出 檨 作 法 〽 此 書 従 道 元 老 師 以 來 嫡 々 相 承 秘 付 元 和 尚 於 天 童 山 傳 者 也 。 取 紛 無 極 一 派 有 子 細 。 此 法 以 之 為 曹 洞 種 草 、」 不 有 其 人 、 不 可 僧 傳 。 以 上 出 句 之 檨 子 百 二 十 透 相 承 者 也 。 類 則 不 知 」 数 量 、 大 都 無 極 一 派 之 法 孫 者 、 出 句 之 参 得 、 可 為 肝 要 者 也 。 話 頭 」 了 畢 之 後 、 此 秘 法 可 参 承 㕝 歟 。 可 秘 々 々。 無 極 月 江 在 判 。」 と あ り 、 百 二 十 透 に 及 ぶ 夜 参 出 句 は 無 極 派 に お い て は 肝 要 の 参 得 と し て 、 話 頭 了 畢 の 後 に 受 け る べ き 秘 参 で あ る と す
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一七二 る 。 「 夜 参 之 透 」 の 項 目 が 以 下 の 様 に 見 え る 。 ○ 山 形 類 出 筋 目 ○ 花 草 木 類 出 筋 目 檨 子 ○ 鉄 銀 金 之 透 ○ 法 眼 道 底 一 透 出 ス 用 ○ 南 泉 之 家 之 一 透 之 分 ○ 玄 沙 之 家 ノ 一 透 之 分 ○ 雲 門 宗 一 透 之 分 全 体 が 截 然 と 分 類 さ れ て い る わ け で は な い が 、 他 の 雙 林 寺 所 蔵 「 夜 参 」 史 料 と 共 通 し 、「 ○ 関 本 退 院 而 於 補 陀 寺 出 給 秘 法 」、 「 真 如 寺 密 山 一 派 以 上 十 五 」 等 の 記 述 も あ り 、 一 州 派 及 び 月 江 派 下 の 夜 参 の 実 態 を 知 る 事 が で き る 。 事 実 、「 宗 門 之 夜 参 出 檨 作 法 」 の 末 尾 に は 、 以 下 の よ う に 見 え る 。 月 江 和 尚 六 人 之 法 子 、 的 傳 之 夜 参 法 檨 。 △ 𣳾 叟 和 尚 三 透 。 △ 花 叟 和 尚 三 透 。 △ 一 州 和 尚 三 透 。 △ 梁 翁 和 尚 四 透 。 △ 日 岑 和 尚 五 透 。 △ 密 山 和 尚 七 透 。 月 江 正 文 派 下 の 六 人 の 法 嗣 に 「 夜 参 之 法 様 」 は 的 伝 さ れ た 。 泰 叟 妙 康 は 「 夜 参 三 透 」 を 相 伝 し 、 以 下 、 華 叟 正 萼 、 一 州 正 伊 も 「 三 透 」、 梁 翁 正 軒 が 「 四 透 」、 日 岑 正 益 が 「 五 透 」、 密 山 正 厳 が 「 七 透 」 を 相 伝 し た と す る 。 月 江 正 文 派 下 の 四 派 に つ い て み れ ば 、 泰 叟 派 は 武 州 越 生 龍 穏 寺 を 中 心 に 、 花 叟 派 は 美 濃 龍 泰 寺 を 中 心 に 、 密 山 派 は 上 総 眞 如 寺 を 中 心 に 展 開 し て い っ た 。
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一七三 長 野 県 長 野 市 七 二 会 大 安 寺 蔵 ﹃ 本 来 面 目 ﹄ に お い て も 同 様 の 傾 向 を 確 認 出 来 る 。 ○ 全 迦 和 尚 云 、 一 、 自 己 目 前 一 致 デ ハ 、 首 句 ガ 、 張 公 李 公 ト 、 人 ノ 体 ナ ラ バ 、 兼 對 デ ハ 、 臣 ハ 君 ヲ 兼 、 君 ワ 臣 ヲ 兼 子 、 ○ 双 對 デ ハ 、 君 臣 合 道 ト 出 ス 可 キ 也 。 二 、 首 句 ガ 、 懐 州 牛 益 州 馬 ト 異 類 ナ ラ バ 、 ○ 偏 正 兼 對 デ ハ 、 黒 狗 爛 銀 蹄 、 白 象 崑 崙 騎 。 双 對 デ ハ 、 狸 奴 白 牯 ト 出 ス ベ キ 。 三 、 首 句 ガ 寒 山 拾 得 ナ ラ バ 、 偏 正 兼 對 デ ハ 、 文 殊 ・ 普 賢 、 双 對 デ ハ 、 唯 仏 与 仏 ト 出 ス 可 キ 。 畢 竟 山 ワ 山 ニ 對 シ 、 水 ワ 水 ニ 對 シ 、 人 ワ 人 、 異 類 ワ 異 類 、 佛 ハ 仏 ニ ツ イ シ 、 最 初 ト モ ニ 如 レ 此 對 セ デ ハ 、 家 風 細 密 ノ 宗 旨 デ ハ ア ル マ ジ キ 也 。 夜 参 ヲ 行 ウ ニ ハ 、 録 ヲ ツ ヾ ケ タ 者 也 。 亦 其 外 何 ニ ヲ ツ ヽ ケ タ 者 ト 尋 ヌ 可 シ 。 傳 衣 ガ 無 ク テ ハ 、 御 影 ヲ 掛 ケ テ 、 大 衆 ガ 依 テ 祝 ス ル ト 云 事 ヲ バ 、 知 ル マ イ ゾ 。 ○ 無 極 派 デ ハ 、 ツ ン 出 シ テ 案 山 点 頭 ト 行 ウ 也 。 捴 ジ テ 露 シ テ 秘 ス ル 也 。 ○ 大 綱 派 ・ 五 峯 派 デ ハ 、 安 山 点 頭 ヲ 蔵 シ テ 秘 ス ル 也 。 ○ 大 綱 デ ハ 、 万 機 休 ー ー 携 。 ○ 亦 換 骨 脱 体 シ テ 、 心 身 脱 落 ト 出 ス 也 。 在 レ ド モ 、 心 ロ ハ 一 ツ 也 。 亦 安 山 点 頭 ト 一 ツ 也 。 ○ 無 極 派 デ ハ 、 自 己 ノ 点 処 、 智 不 到 ノ 轉 処 ト 出 ス 也 。 総 シ テ 、 安 山 点 頭 、 万 機 休 ー ー 携 イ 、 心 身 脱 落 換 骨 ー ー 是 ラ ワ 、 一 ツ 句 中 ニ 三 位 ヲ 呈 イ ス ル ナ リ 。 取 句 ニ ワ 、 師 家 ガ ド コ ナ リ ト モ 、 一 処 ニ 合 テ 取 ル 也 。 ○ 安 山 点 頭 、 安 ワ 、 始 之 自 己 也 。 頭 ワ 、 点 処 也 。 取 句 ニ ワ 、 東 山 水 上 行 。 亦 、 須 弥 跳 ヲ ド ツ テ 入 二藕 絲 ニ 一。 糸 ワ 、 ハ ス イ ト ノ コ ト 也 。 亦 、 須 弥 岌 崿 ト シ テ 舞 二三 臺 ヲ 一。 岋 ハ 、 フ ミ ヱ タ 也 。 此 ノ 如 ク ノ 句 法 ヲ 取 ル ベ シ 。 ○ 白 雲 功 尽 青 山 秀 ヅ 。 白 ワ 、 中 事 也 。 功 ハ 、 点 処 也 。 取 句 、 白 雲 断 処 家 山 妙 也 。 白 雲 ハ 、 智 不 到 ノ 点 処 也 。 又 、 曉 天 雲 尽 暮 山 秀 ヅ 。 ○ 拶 二倒 シ テ 孤 峰 不 白 處 ヲ 一。 拶 、 初 之 那 時 也 。 孤 ワ 、 那 時 点 処 也 。 取 句 ニ ワ 、 孤 峯 頂 上 留 ト モ 不 レ 住 ラ 。 又 、 孤 峰 頂 上 ニ 有 リ 二出 身 路 チ 一。 如 レ是 三 透 ト モ ニ 、 山 形 ノ 句 法 ヲ 取 ル 可 シ 。 亦 、 瑠 璃 殿 上 ニ 撲 倒 粉 碎 ス 、 ト 云 句 ノ 心 ロ ワ 、 一 ツ ナ レ ド モ 、 山 形 ニ 在 ラ ヌ ホ ト ニ 、 悪 キ 也 。 三 ツ ト モ ニ 、 点 処 〳 〵 ト 出 ス 也 。 如 レ是 前 ヲ 出 ス 也 。 如 レ是 前 ヲ 出 ス 時 キ ワ 、 法 眼 宗 ノ 自 己 ワ 。 ○ 百 姓 日 々 ニ 用 名 ヲ 不 レ 知 。 百 性 ワ 、 中 之 自 己 也 。 不 レ知 ト ハ 、 点 処 也 。 取 句 、 百 性 日 々 ノ 事 ヲ 不 レ知 。 又 、 百 性 其 ノ 徳 ヲ 不 レ知 。 又 、 吾 ガ 胸 中 美 玉 有 レ ル コ ト ヲ 不 レ知 。 如 レ是 意 ノ 句 ヲ 取 ル 可 シ 。 用 不 レ知 ト 云 ワ 、 月 明 ー ー ト 云 句 法 也 。 ○ 月 不 レ知 二明 月 秋 ヲ 一。 中 ノ 知 不 到 也 。 秋 ワ 、 点 処 也 。 取 句 、 當 頭 半 夜 月 、 東 西 無 シ 二分 処 一。 又 、 團 々 タ ル 秋 光 不 レ知 レ圓 マ ト カ ナ ル コ ト ヲ 。 如 レ是 句 法 、 ヨ キ 也 。 同 ジ コ ト ナ レ ド モ 、 一 辺 ノ 氷 輪 上 下 圓 、 十 分 ニ ワ ア ラ ズ 。 不 レ知 ト 云 ヨ リ 、 不 レ存 ト 出 ス 也 。
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一七四 ○ 王 不 レ 存 二 王 位 一。 王 ワ 、 中 ノ 那 時 也 。 存 ワ 、 点 処 也 。 取 句 、 君 王 有 レ位 ニ 忘 二其 位 ニ 一。 又 、 天 然 ノ 帝 位 ニ 不 レ存 レ貴 キ ヲ 。 又 、 妙 体 堂 々 ト シ テ 不 レ知 二其 ノ 位 ヲ 一。 三 ツ ト モ ニ 、 天 然 ノ 自 己 、 天 然 ノ 知 不 到 、 天 然 ノ 那 時 也 。 三 ツ 共 ニ 不 尽 也 。 ○ 懐 州 牛 喫 レ稻 、 益 ー ー 脹 。 懐 ワ 、 終 之 自 己 對 々 也 。 河 南 犬 ホ ユ レ バ 𠯈 河 北 ニ 驢 鳴 ス 。 又 、 栖 州 ノ 馬 喫 レ稻 、 福 州 牛 腸 飽 ル 。 如 レ是 句 法 ヲ 取 ル 可 シ 。 三 ツ ト モ ニ 異 類 ノ 句 法 ヲ 出 ス 也 。 ○ 黒 狗 爛 銀 蹄 、 白 象 驢 （ 騎 ヵ ） 崑 崙 一。 終 ノ 中 、 黒 白 兼 對 也 。 取 句 、 黒 狗 与 ト 白 象 一、 相 逢 テ 語 ル 二悉 シ ツ 達 タ ツ ヲ 一。 又 、 黒 狗 𨂻 レ ン デ 雪 走 リ 、 白 象 夜 半 ニ 移 ス レ歩 ヲ 。 又 、 黒 狗 迷 イ 二明 月 ニ 一、 白 日 ツ 行 ク 二崑 崙 ヲ 。 如 レ是 句 取 ル 可 シ 。 ○ 三 世 ノ 諸 佛 不 レ知 レ有 ヲ 、 狸 奴 白 牯 却 テ 知 ル レ有 。 三 世 ワ 、 終 之 那 時 也 。 諸 仏 ワ 、 尽 也 。 狸 ワ 、 不 尽 也 。 白 牯 ト ワ 、 尽 不 尽 、 始 本 不 二 双 對 也 。 取 句 、 七 佛 如 来 ノ 不 及 ノ 処 ロ 、 狸 奴 白 牯 正 ニ 合 頭 。 又 、 不 レ知 レ有 コ ト ヲ 却 テ 成 リ レ知 レ有 コ ト ヲ 、 始 信 南 泉 喚 作 ス レ牛 ト 。 亦 云 、 自 己 對 々 デ 、 人 ノ ア ル 句 ヲ 出 セ バ 、 知 不 到 、 兼 對 デ ハ 、 文 殊 ・ 普 賢 ヲ 出 ス 也 。 那 時 デ ハ 、 迦 葉 ヲ 出 ス 也 。 ○ 薪 尽 火 滅 。 薪 ワ 、 初 ノ 自 己 点 処 也 。 取 句 、 燒 火 如 杖 々 。 又 、 無 用 處 。 又 、 紅 炉 大 ニ 尽 テ 薪 ギ ハ 不 レ添 。 又 、 木 中 如 レ生 ル レ火 ヲ 、 々 出 テ 木 尽 テ 炭 知 烟 リ 滅 ス 。 如 レ是 メ 經 文 ヲ 出 セ バ 、 九 ノ 透 リ ト モ ニ 出 ス 也 。 取 句 ニ ワ 、 經 文 バ カ リ ナ キ ホ ト ニ 、 意 句 相 應 ノ 句 ヲ 取 ル 可 シ 。 是 レ ワ 、 句 法 別 ナ レ ド モ 、 心 ロ ハ 一 ツ 也 。 自 己 ノ 点 処 也 。 点 ズ レ バ 、 知 不 到 也 。 ○ 唯 独 自 ジ 明 了 、 餘 所 不 見 。 唯 ワ 、 中 事 也 。 取 句 、 有 ル 時 キ 独 二 座 ス 孤 峰 頂 ニ 一。 又 、 突 兀 嵯 峨 万 仞 横 、 四 邊 無 シ レ路 チ 不 レ通 レ行 。 ○ 従 冥 入 於 冥 。 是 ワ 、 那 時 也 。 取 、 夜 半 子 混 ル 時 キ 。 又 、 三 更 初 夜 月 明 ノ 前 キ 。 如 レ是 出 ス 時 キ 、 法 眼 宗 ノ 自 己 デ ワ 。 ○ 如 稲 麻 竹 葦 、 充 ジ ュ ウ 満 マ ン 十 方 刹 。 如 稲 ワ 、 中 ノ 自 己 也 。 取 句 、 有 情 非 情 同 寺 成 道 、 ハ 、 亦 知 不 到 デ ワ 。 ○ 如 二 浄 瑠 璃 中 、 内 現 真 金 ノ 像 。 如 浄 ハ 、 中 ノ コ ト 也 。 取 句 、 宝 天 雲 漢 ン 銀 河 冷 也 。 又 、 雲 ワ 有 二青 天 ニ 一水 ハ 在 リ レ瓶 ニ 。 瑠 璃 ト 云 ヨ リ 、 銀 河 、 瓶 ト 云 句 ヲ ト ル 、 不 点 也 。 河 ト 云 イ 水 ト 云 ワ 、 高 也 。 瑠 璃 中 デ 、 金 像 、 高 處 ヲ 見 ル ナ リ 。 法 眼 宗 ノ 智 不 到 ナ ホ ト ニ 、 ミ ガ ヽ ヌ 也 。 ○ 安 穏 法 樂 タ ノ シ ミ 、 天 人 熾 盛 。 安 穏 ワ 、 中 ノ 那 時 也 。 取 句 、 獄 鷟 定 テ 出 二舟 山 血 ヲ 一。 一 カ ツ 搕 在 レ手 。 ○ 心 佛 及 衆 生 、 是 三 無 差 別 。 終 ノ 自 己 ノ 對 々 也 。 心 佛 ワ 自 己 、 衆 生 ワ 目 前 也 、 無 差 別 一 致 也 。 サ テ コ ソ 、 自 己 ノ 對 々 也 。 達 磨 是 観 音 、 誌 公 是 観 音 。 又 、 全 心 即 佛 他 、 全 仏 即 人 、 々 佛 即 人 、 々 佛 異 始 得 道 。 二 位 ガ 、 一 位 ニ ナ ル 句
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一七五 ワ 、 ヨ キ 也 。 一 位 ガ 二 位 ノ 句 、 悪 キ 也 。 仏 体 ノ 句 法 ナ ホ ト ニ 、 如 レ是 ヨ キ 也 。 亦 タ 、 中 ノ 黒 白 兼 對 デ ワ 。 ○ 父 少 而 子 老 。 終 之 中 之 コ ト 也 。 取 句 、 父 攘 バ レ 羊 ヲ 子 以 蔵 レ之 。 父 ワ 、 黒 頭 也 。 子 ヲ 白 頭 ニ 取 也 。 チ ヽ 少 ト 見 レ バ 、 黒 ク ニ 白 頭 ノ 資 ス ガ タ ア リ 。 亦 、 子 ヲ 老 ト 見 レ バ 、 白 頭 ニ 黒 頭 ノ ス ガ タ 在 リ 。 時 、 黒 白 ク 兼 對 也 。 如 レ是 句 法 ヲ 取 ル 可 シ 。 ○ 唯 佛 与 仏 、 乃 能 及 尽 。 終 之 那 時 ナ リ 。 取 句 、 日 面 仏 月 面 仏 。 三 世 諸 佛 ー ー 狸 奴 ー ー レ有 コ ト ヲ 。 如 レ是 句 法 ヲ 取 ル 可 シ 。 初 メ ヲ 如 レ是 、 薪 尽 火 滅 ト 出 シ タ ニ 依 テ 、 九 ツ ト モ ニ 經 文 ナ リ 。 竜 州 和 尚 如 レ是 扱 イ 在 也 。 ○ 樹 倒 藤 枯 笑 呵 々 。 樹 倒 ワ 、 自 己 也 。 一 州 ノ 透 リ 共 、 点 処 、 ド ツ チ ヱ モ 。 取 句 、 風 定 花 猶 落 。 又 、 罷 休 得 ル 曽 罷 ハ 休 。 又 、 万 機 罷 レ休 、 千 聖 不 携 イ 。 又 、 休 去 歇 去 。 樹 倒 ル ヽ ト ワ 、 自 己 當 頭 也 。 藤 枯 ト ワ 、 自 己 ヲ モ 放 下 也 。 ホ ト ニ 、 是 ヲ 自 己 ノ 二 皮 カ ワ ヤ ブ リ 、 ト 云 也 。 取 句 モ 、 如 レ是 取 ル 可 シ 。 ○ 深 固 幽 遠 、 無 人 能 到 。 又 、 曹 溪 古 路 無 別 人 。 又 、 茅 屋 路 遠 行 者 稀 也 。 如 レ是 法 ヲ 取 ル 可 シ 。 知 不 到 デ ワ 、 樹 倒 ル ト 云 ヨ リ シ テ 、 深 ー ー 遠 シ 、 ト 云 句 法 ア リ 。 深 ー ー 遠 ナ ホ ト ニ 、 無 人 能 也 。 ○ 紫 羅 帳 合 、 四 臣 不 通 。 深 固 幽 遠 ト 云 ヨ リ 、 紫 羅 帳 ト 云 句 法 也 。 無 人 能 到 ル ト ヨ リ 、 信 不 通 ト 云 句 法 ヲ 出 ス 也 。 取 句 、 室 密 不 通 風 。 又 、 星 前 人 千 聖 ノ 不 レ有 レ室 。 又 、 深 々 密 々 不 レ 通 レ風 。 又 、 黄 コ ウ 閣 簾 垂 テ 全 体 未 レ顕 。 如 是 句 ヲ 取 ル 可 シ 。 ○ 百 性 日 用 不 レ知 レ名 。 百 性 ワ 、 法 眼 ノ 自 己 也 。 用 ワ 、 信 不 レ通 ト 云 ヨ リ 、 名 ヲ 不 レ知 、 尽 ク サ ヌ 自 己 也 。 百 性 ノ 胸 中 ニ 玉 ヲ イ ダ イ テ 、 シ ラ ヌ ゾ 。 時 キ 、 玉 ニ キ ズ 無 シ 。 知 ル ガ キ ズ 也 。 取 句 、 老 蚌 懐 中 珠 有 不 レ知 。 又 、 埜 花 香 滿 路 、 幽 鳥 春 不 レ知 。 又 、 東 方 説 法 東 方 如 、 泥 裡 老 蚌 含 ム 二明 珠 ヲ 一。 如 レ是 句 法 ヲ 取 可 シ 。 ○ 清 波 不 レ犯 意 自 異 ナ リ 。 中 之 コ ト 也 。 取 句 、 月 船 不 レ犯 東 西 岸 。 又 、 明 月 團 々 夜 正 ニ 半 ナ カ バ 也 。 又 、 古 渡 風 清 月 正 半 ナ リ 。 用 テ 不 レ知 ト 云 ヨ リ 、 不 レ犯 ト 云 句 法 也 。 ハ コ バ ヌ 不 到 也 、 不 点 也 。 如 レ是 句 ヲ 取 ベ シ 。 天 上 天 下 ー ー 尊 ト 云 句 モ 、 同 ジ コ ト ナ レ ド モ 、 句 法 ヲ 取 ル 可 シ 。 ○ 王 道 太 平 無 忌 諱 、 縦 横 何 処 。 中 ノ 那 時 也 。 取 句 、 懐 合 乾 坤 育 勢 隆 。 又 、 妙 体 雖 モ 二金 裡 ニ 坐 ス 一、 其 ノ 懐 随 フ 二万 化 端 ニ 一。 又 、 太 平 ノ 一 曲 ク 尽 ク 通 二四 海 ニ 一。 又 、 八 方 有 道 君 ー ー 四 ー ー 喝 。 不 犯 ト 云 ヨ リ 、 王 道 太 平 ト 云 句 ヲ 出 ス 也 。 是 レ ワ 、 三 位 ニ 卒 度 モ ア ラ タ メ ヌ 也 。 不 尽 ノ 自 己 、 不 尽 ノ 知 不 到 ノ 那 時 也 。 ○ 看 二 自 己 ヲ 一如 冤 家 ノ 一。 三 ツ 目 ノ 自 己 也 。 取 句 、 當 頭 觸 着 弥 天 罪 。 又 、 機 不 レ 離 位 、 毒 海 堕 在 。 又 、 一 句 合 頭 語 、 万
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一七六 劫 ノ 繋 驢 橛 。 如 レ此 ノ 透 リ ノ 意 ノ 句 ヲ 取 ル 可 シ 。 是 ヲ 、 点 処 ノ 自 己 也 。 ○ 鶴 出 銀 篭 冲 霄 漢 。 鶴 ワ 、 三 ツ 目 ノ 中 ノ コ ト 也 。 篭 ワ 、 点 処 也 。 取 句 、 老 鶴 ー ー 空 。 又 、 退 歩 承 當 独 地 新 。 又 、 琉 璃 殿 上 撲 倒 粉 砕 。 又 、 金 竜 不 レ守 二寒 潭 ヲ 一。 ○ 那 辺 退 得 這 裡 行 李 。 那 辺 ワ 、 那 時 ノ 点 処 也 。 取 句 、 拶 倒 空 王 殿 、 却 リ 来 テ 弄 二風 光 ヲ 一。 如 レ 是 ノ 意 句 相 應 ヲ 取 ル 可 シ 。 鉄 ○ 鉄 樹 放 開 花 。 初 メ ノ 自 己 也 。 鉄 銀 金 ノ 透 リ 、 点 処 之 自 己 也 。 自 己 ニ 死 在 イ セ ヌ 也 。 取 句 、 鉄 船 浮 二水 上 ヲ 一。 亦 タ 、 倒 ニ 騎 二鉄 一馬 蹈 二虚 空 ヲ 一。 又 、 鉄 團 ン 走 テ 東 海 ヲ 過 ク 。 如 是 句 ヲ 取 ル 可 シ 。 銀 ○ 鶴 出 テ 二銀 篭 ヲ 一冲 ル 霄 漢 。 鶴 ル ワ 、 知 不 到 也 。 点 処 之 不 到 、 知 不 到 ニ 死 在 セ ヌ 也 。 取 句 、 玉 開 氣 寒 シ テ 、 鶴 出 二銀 篭 ヲ 一。 又 、 密 ニ 移 二 シ テ 一 歩 ヲ 一、 鶴 出 ヅ 二銀 篭 ヲ 一。 如 レ是 意 句 相 應 ヲ 取 ル 可 シ 。 金 ○ 金 殿 堂 々 ト シ テ 深 幾 重 ル 。 金 ワ 、 那 時 也 。 殿 ワ 、 那 時 ニ モ 死 在 イ セ ヌ 㕝 也 。 取 句 、 金 鎖 重 々 ト シ テ 推 セ ト モ 不 開 。 又 、 金 殿 堂 々 ト シ テ 珠 簾 深 シ 。 如 レ是 意 句 相 ヲ ウ ヲ 取 ル ベ シ 。 三 ツ ト モ ニ 、 点 処 々 々 ト 心 得 ベ シ 。 如 レ是 ノ 時 キ 、 法 眼 宗 ノ 自 己 ワ 、 鉄 銀 金 、 尽 十 方 一 顆 明 珠 。 尽 ワ 、 中 ノ 之 初 ノ 自 己 也 。 取 句 、 野 菊 含 レ金 ー ー 口 漱 グ 。 又 、 玉 本 ト 無 瑕 ー ー 徳 。 又 、 不 レ知 泥 裡 ノ 蚌 、 満 腹 是 明 珠 ナ ル コ ト ヲ 。 又 、 心 外 無 法 、 満 目 青 山 。 又 、 我 有 一 言 ー ー 山 。 金 ヲ 含 ム ト 云 ヨ リ 、 明 珠 ノ 句 法 ヲ 出 ス 也 。 心 外 ト ワ 、 是 レ ワ 、 二 ツ ワ 同 ジ 透 リ ナ レ ド モ 、 句 法 悪 キ ホ ト ニ 、 取 ル 可 カ ラ ズ 。 ○ 銀 河 清 無 ク レ波 、 半 夜 ノ 月 キ 横 ウ レ秋 ニ 。 銀 ワ 、 中 ノ 知 不 到 也 ト 云 ヨ リ 、 銀 河 ヲ 出 ス 也 。 取 句 ニ ワ 、 横 テ 二河 漢 ニ 一白 霜 洗 テ 二斗 牛 ヲ 一寒 シ 。 又 、 釣 絲 午 夜 休 二拈 弄 一、 ー ー 水 月 秋 キ 。 又 、 只 有 テ 二照 壁 月 一、 更 ニ ー ー 有 。 又 、 夜 静 水 寒 魚 不 レ食 、 滿 ー ー 皈 ル 。 只 有 ー ー ワ 、 同 ジ 透 リ ナ レ ド モ 、 句 法 悪 キ 間 ダ 、 取 ル ベ カ ラ ズ 也 。 又 、 金 輪 リ ン ノ 天 子 、 自 ヲ 有 二徳 高 一 コ ト 。 金 也 。 金 輪 天 子 不 レ覚 帝 徳 ク 。 金 輪 ワ 、 中 ノ 那 時 也 。 天 然 ノ 位 イ 也 。 自 己 ヲ モ 天 然 ン 、 不 ル レ尽 自 己 也 。 不 レ尽 不 到 也 。 法 眼 ノ 三 位 ノ 心 也 。 取 句 モ 、 金 輪 雖 モ レ在 二其 位 ニ 一肯 レ知 二其 威 一 ア ル コ ト ヲ 。 前 ノ 金 リ ン コ ヽ 也 。 ○ 雪 月 芦 花 同 秋 空 。 雪 月 、 終 ノ 自 己 也 。 取 句 、 花 簇 ゾ ク 々 錦 簇 ゾ ク 々 。 簇 ワ 、 ム ラ ガ ル ト ヨ ム 也 。 錦 上 ニ 鋪 レ 花 。 雪 月 芦 花 ワ 、 尽 也 、 目 前 也 。 秋 空 ワ 、 不 尽 也 、 自 己 也 。 内 イ ニ ト ワ 、 目 前 一 致 也 、 自 己 對 々 也 。 取 句 ハ 、 花 ノ 類 ヲ 取 ル ベ シ 。 亦 、 爰 ヲ 前 ヱ ヨ リ 鉄 ノ 句 法 ヲ 出 ス ベ キ ニ ワ 、 竜 泉 刀 斧 本 是 同 鉄 。 竜 ワ 、 鉄 ナ リ 。 同 鉄 ト 出 ス 也 。 鉄 ワ 、 自 己 對 々 也 。 此 ノ 時 キ ワ 、 九 ノ 透 リ 共 ニ 、 鉄 銀 金 ト 出 ス 也 。 是 ワ 、 鉄 也 。
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一七七 ○ 一 色 盤 平 ヲ 有 リ 二異 玄 ン 一。 一 色 キ ワ 、 終 ノ 中 ノ コ ト 也 。 取 句 、 水 帯 テ 二蔭 花 ヲ 一青 。 是 ハ 、 智 不 到 ノ 對 々 也 。 是 ワ 、 白 ニ 有 レ黒 、 々 ニ 有 リ レ白 ク 、 陰 ニ 有 レ陽 、 々 ニ 有 レ陰 、 黒 白 ク 兼 帯 也 。 亦 前 ヱ ヲ 、 竜 泉 刀 ー ー 鉄 ト 出 セ バ 、 爰 ヲ モ 黒 銀 也 。 又 、 黒 狗 爛 銀 蹄 、 白 象 ー ー 騎 ト ワ 、 銀 ト 云 ヨ リ 出 ス 、 對 々 也 。 ○ 始 覚 本 覚 去 休 々 。 始 ワ 、 終 ノ 那 時 也 、 双 對 也 。 始 本 不 二 也 。 取 句 モ 、 花 ノ 類 イ デ 、 師 本 ノ 聞 ユ ル 羊 ナ ヲ 取 ル ベ シ 。 取 句 、 蔡 花 向 月 ー ー 風 。 臥 輪 ワ 尽 ン 、 惠 能 ワ 、 不 尽 也 。 始 本 一 盤 也 。 爰 ヲ モ 、 竜 泉 刀 ー ー 同 鉄 ト 、 前 ヱ デ 出 ダ セ バ 、 蔡 花 ワ 、 類 イ ワ 、 柳 ギ 暗 ウ シ テ 花 ナ 明 ナ リ 。 十 方 戸 ー ー ト 云 句 モ ヨ シ 。 金 針 双 ソ ウ 鎖 帯 ト 出 ス 也 。 金 ワ 、 金 也 。 ○ 宏 智 和 尚 像 自 讃 云 、 吾 此 宗 旨 鉄 銀 金 。 又 、 雪 月 芦 花 同 シ 二秋 空 ニ 一、 一 色 盤 平 ニ シ テ 有 二異 玄 ン 一。 又 、 始 覚 本 覚 去 テ 木 （ 休 ） 々 。 夜 参 ワ 、 初 メ 三 ツ ノ 意 句 法 ヲ 以 テ 出 ス 者 ナ ホ ト ニ 、 如 レ此 出 ス 也 。 亦 タ 知 色 キ ニ 依 テ 、 初 メ 三 ツ ノ 中 ニ 三 ツ ヲ 鉄 銀 金 ト 出 セ バ 、 三 ツ 目 ヲ モ 鉄 ノ 句 法 ヲ 出 ス 也 。 其 ノ ト キ ワ 、 竜 泉 刀 斧 本 ト 是 同 鉄 デ 。 又 、 黒 狗 爛 ー ー 白 ー ー 崙 ニ 一。 又 、 金 針 双 鎖 帯 。 文 彩 縦 横 ウ 。 ○ 鉄 樹 放 二開 ク 花 一。︿ 二 皮 ノ 自 己 也 。﹀ 代 、 師 ノ ヒ タ イ ニ 我 ガ ヒ タ イ ヲ 打 合 セ テ 、 ア ツ ト 云 テ 倒 ル ヽ 也 。 師 云 、 何 ン タ ル 時 節 タ ゾ 。 代 、 眼 目 ノ ク ル リ ト 回 ワ ル サ カ イ 、 心 花 發 明 デ 走 。 師 云 、 句 ヲ 。 代 、 風 花 定 猶 落 ツ 。 師 云 、 風 ノ 定 メ 羊 、 花 ノ 落 チ 羊 ヲ 。 代 、 師 ノ ノ ド ヲ 実 ト シ ム ル 也 。 師 云 、 何 ン ト テ 。 代 云 、 把 二 断 シ テ 要 津 ヲ 一、 不 レ通 二凡 聖 ヲ 一。 師 云 、 花 鳥 ノ 的 句 ヲ 。 代 云 、 氷 寒 千 丈 急 チ 生 レ連 。 ○ 竹 寺 閑 過 春 ル ー ー 深 、 落 ー ー 色 ヲ 。 代 、 花 ヲ サ ヽ グ ル 者 モ 無 ク 、 問 イ 来 ル 人 モ 走 ヌ 。 師 云 、 夫 レ ワ 何 ン タ ル 一 処 タ ゾ 。 代 、 無 人 能 到 デ 走 。 師 云 、 句 ヲ 。 代 、 深 固 幽 遠 、 無 人 能 到 。 師 云 、 花 鳥 ノ 的 句 ヲ 。 代 、 閑 庭 ー ー 無 拂 、 黄 花 報 ス 二幽 居 ヲ 一。 ○ 宝 殿 不 レ見 レ人 、 百 鳥 含 レ シ テ 花 ヲ 不 ズ レ献 ト 云 ヲ 。 代 、 曾 テ 尊 貴 ノ サ タ モ 無 ク ン バ 、 ヘ ル 臣 下 モ 走 ヌ 。 師 云 、 何 ン タ ル 一 処 タ ゾ 。 代 、 尊 貴 不 施 設 、 誰 人 得 姓 名 。 師 云 、 其 ノ 句 ヲ 説 破 セ ヨ 。 代 、 尊 貴 ノ 在 リ 、 姓 名 ノ ア ル ハ 、 位 イ 定 ツ タ 主 コ ソ 。 師 云 、 的 句 ヲ 。 代 、 古 堂 寂 寞 バ ク ト シ テ 無 人 伴 、 含 レ花 白 鳥 遠 ル 二簾 前 ヲ 一。 ○ 中 ノ 自 己 。 江 國 ノ 春 風 吹 不 レ起 、 鷓 鴣 鳴 在 リ 二 深 花 裡 ニ 一。 師 云 、 春 風 ヲ 。 代 、 祖 風 デ 走 。 師 云 、 吹 不 レ起 ヲ 。 代 云 、 野 老 太 良 デ 走 。 師 云 、 啼 キ 羊 ヲ 。 代 、 句 ヲ 。 滿 観 カ ン 仏 性 瀧 洞 真 女 （ 如 ） 。 又 、 無 明 仏 性 即 仏 性 。 此 ノ 句 モ ヨ シ 。 師 云 、 花 鳥 ノ 端 的 ヲ 。 代 、 爲 リ レ短 不 レ續 為 リ レ長 不 レ 截 、 柳 体 ノ 嬾 鴬 不 レ知 レ春 。 類 則 ヲ 引 テ 云 、 一 粒 在 二荒 田 ニ 一、 不 レ ル ニ 耕 サ 苗 自 ヲ 秀 。 師
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一七八 云 、 一 粒 之 端 的 ヲ 。 代 、 你 カ レ 太 郎 ガ 境 界 デ 走 。 秀 デ 羊 ヲ 。 代 、 二 郎 ヨ ツ 太 郎 ヨ ツ 。 ○ 中 ノ 知 不 到 。 當 処 便 是 鳳 凰 城 。 代 、 大 口 忘 然 シ テ 坐 ス ル 也 。 兩 手 展 開 シ テ モ 坐 ス 也 。 二 タ 羊 ニ テ 在 リ 。 師 云 、 鳳 凰 城 ワ 、 何 ン ト 聞 ヱ タ ゾ 。 指 ヲ 以 テ 吾 ヲ 指 シ テ 云 ク 、 是 這 个 。 師 云 、 句 ヲ 。 代 、 清 波 ー ー 異 也 。 師 云 、 花 鳥 ノ 端 的 ヲ 。 代 、 湛 然 ト シ テ 坐 、 這 裡 鳳 凰 城 。 同 、 當 処 ー ー 城 ヲ 。 代 、 兩 手 ヲ ー ー シ テ 坐 ス 。 師 云 、 夫 レ ワ 、 ナ ン ト テ 。 代 、 清 波 ー ー レ犯 、 処 ガ 、 黒 ク デ 走 。 師 云 、 花 鳥 ノ 的 句 ヲ 。 代 、 唯 然 ト シ テ 坐 、 便 チ 是 鳳 凰 。 ○ 不 レ種 二梧 桐 ヲ 一免 マ ヌ 二 カ ル 鳳 来 宿 ヲ 一。 代 、 手 ニ 坐 具 デ モ 、 珠 数 デ モ ア レ 拈 ジ テ 坐 。 師 云 、 其 心 ヲ 。 代 、 主 ノ サ タ ノ ナ イ 主 デ 走 。 師 云 、 句 ヲ 。 金 殿 臥 二清 風 一。 師 云 、 花 鳥 ノ 端 的 ヲ 。 代 云 、 月 鎖 二蒼 桐 ニ 一鳳 不 レ栖 。 同 、 不 種 ー ー ヲ 。 主 ニ 主 相 無 時 キ 、 終 イ ニ 出 デ 走 ヌ 。 師 云 、 證 拠 ヲ 。 金 殿 ー ー 臥 。 師 云 、 花 鳥 ノ 的 句 ヲ 。 代 云 、 吾 ガ 園 ソ ノ ニ 無 二梧 桐 一、 爭 イ ー カ 無 二鳳 凰 宿 一 セ ン 。 ○ 花 簇 々 錦 簇 々 ヲ 。 代 、 花 ニ モ ム ラ ガ リ 、 錦 ニ モ ム ラ ガ ツ テ 走 。 師 云 、 是 什 麼 物 ゾ 。 代 、 我 旨 ヲ 指 シ テ 、 此 ノ 一 心 ン デ 走 。 又 云 、 此 一 心 ガ 像 ト 体 ヲ 帯 テ 走 ト モ 。 師 云 、 兼 帯 シ 羊 ヲ 。 代 云 、 自 己 ハ 目 前 ヲ 兼 、 目 前 ハ 自 己 ヲ 兼 デ 走 。 師 云 、 句 ヲ 。 代 、 三 界 唯 一 心 デ 。 師 云 、 花 鳥 ノ 端 的 ヲ 。 代 、 春 自 ヲ ー ー 雖 レ分 二南 枝 ニ 一、 畢 竟 枝 梢 ソ ウ 共 ニ 一 根 。 類 則 ヲ 引 云 、 野 狐 ノ 本 形 ヲ 。 代 、 此 心 デ 走 。 師 云 、 堕 シ 羊 ヲ 。 代 、 花 ニ モ ム ラ ガ リ 、 錦 ニ モ ム ラ ガ ツ テ 走 。 師 云 、 句 ヲ 。 代 、 有 テ 二一 老 人 一変 シ テ 作 ス 二万 物 ヲ 一。 ○ 水 帯 二蔭 花 一香 ク 、 烟 リ 和 二楊 柳 ニ 一青 シ 。 代 、 正 ワ 偏 ニ 對 シ 、 偏 ワ 正 ニ 對 シ テ 走 。 師 云 、 其 レ ワ 何 ン ト テ 。 代 、 水 ガ 帯 ビ 二蔭 花 ヲ 一、 烟 ガ 楊 柳 ニ 和 シ テ 走 。 師 云 、 徹 処 ヲ 。 代 、 偏 正 兼 帶 イ ト 云 ガ 、 曹 洞 ノ 兩 手 兩 脚 デ 走 。 私 云 、 花 鳥 ノ 端 的 ヲ 。 代 、 柳 ギ 暗 花 明 リ 十 万 戸 、 敲 門 処 々 有 レ人 譍 。 師 云 、 偏 正 兼 對 イ ヲ 含 マ セ ヨ 。 師 云 、 正 ヨ リ 偏 ヲ 敲 ケ バ 、 偏 、 譍 偏 デ 、 正 ヲ 敲 バ 、 譍 ヱ テ 走 。 同 ク 、 水 滞 ー ー ヲ 。 代 、 偏 ワ 正 ヲ 兼 子 、 正 ワ 偏 ヲ 兼 テ 走 。 師 云 、 柳 暗 ー ー 。 師 云 、 其 レ ナ ン ト テ 。 水 帯 二陰 花 ヲ 一、 正 中 偏 、 烟 和 二 シ テ 楊 柳 ニ 一青 シ 、 偏 中 正 デ 走 。 師 云 、 句 ヲ 。 柳 ー ー 。 師 云 、 其 ノ 句 ノ 證 拠 ヲ 説 破 セ ヨ 。 代 云 、 正 ワ 偏 ニ コ タ ヱ 、 偏 ワ 正 ニ 答 ヱ テ 走 。 ○ 世 尊 拈 花 、 迦 葉 微 笑 ヲ 。 代 、 師 ノ 膝 ノ 上 ニ 足 ヲ ア ゲ テ 、 ビ 毛 ヲ 取 リ 結 ン デ 、 師 ノ 口 チ ニ 我 ガ 舌 ヲ 入 レ テ 坐 ス 。 師 云 、 代 句 ヲ 。 云 、 上 ミ 和 ヤ ー ー ギ 下 モ 睦 ム ツ マ シ ウ シ テ 、 陰 陽 相 イ 随 ウ 。 師 云 、 花 鳥 ノ 端 的 ヲ 。 代 、 鷲 不 萌 枝 、 微 笑 ノ 開 花 盛 ナ リ 。 類 則 ヲ 。 世 尊 陞 座 、 文 殊 白 槌 シ タ 幾 ヲ 。 師 ノ 口 ニ 吾 ガ 舌 ヲ 入 レ テ 坐 ス 也 。 師 云 、 其 レ ワ ナ ン ト テ 。 代 、 過 去 久 遠 憶 刧 ヨ リ 約 ダ ク デ 走 。 師 云 、 諦 観 法 王 、 々 々 如 是 ト 云 機 ヲ 。 代 、 無 為 ヲ 為 ナ シ レ事 コ ト 、 無 事 ヲ 事 シ ワ ザ ト 為 ナ ス 也 。 亦 タ 師 云 、 聖 諦 第 一 儀 ヲ 。
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一七九 代 、 妙 ハ 一 漚 ヲウ ノ 有 リ レ先 キ ニ 、 豈 ヤ ニ 二 先 聖 ノ 入 一レ眼 ヲ 。 師 云 、 廓 然 無 聖 ヲ 。 代 、 曾 不 レ知 。 師 云 、 恁 麼 時 如 何 。 代 、 抽 ア ツ 身 。 師 云 、 至 道 無 難 ヲ 。 代 、 揀 擇 無 レ バ 、 只 ダ 張 ノ 李 四 、 狸 奴 白 牯 マ デ ヽ 走 。 師 云 、 老 僧 不 レ在 二明 白 裡 ニ 一ト 云 ヲ 。 代 、 照 尽 体 イ 無 位 、 通 身 大 道 。 師 云 、 同 ジ ク 示 衆 シ 羊 ヲ 。 代 、 ナ ン デ モ ヲ ツ ト ツ テ 、 サ シ ア グ ル 也 。 師 云 、 其 レ ワ ナ ン ト テ 。 代 テ 、 無 吼 ノ 鉄 鎚 デ 走 。 永 昌 寺 花 叟 派 ノ 大 事 。 亦 タ 云 、 真 如 寺 全 金 和 尚 ノ 夜 参 モ 又 タ 如 此 也 。 ○ 安 山 点 頭 ヲ 。 代 、 師 ノ 前 ヱ ニ 、 眼 ・ 耳 ・ 口 ヲ 、 ア ツ カ ト 開 イ テ 坐 ス 。 心 得 ハ 、 自 己 當 頭 デ 、 直 ニ 点 ジ 羊 也 。 師 云 、 句 ヲ 。 代 、 頑 ク ハ ン 石 点 頭 。 心 ハ 、 末 當 々 ワ 、 頑 石 也 。 点 頭 、 自 己 ヲ 点 ジ タ 也 。 師 云 、 透 リ ノ 句 ヲ 。 代 、 大 花 山 ニ 立 テ 希 有 ト 叫 ブ 。 又 タ 、 東 山 水 上 行 。 此 透 リ ノ 山 形 ノ 句 法 ヲ 取 ル ベ シ 。 ○ 白 雲 功 尽 青 山 秀 ヅ 。 代 、 師 ノ 前 テ 、 ト ツ ク ト 坐 シ テ 、 卒 度 眼 コ ヲ 開 イ テ 、 背 ロ ヘ 子 ノ ビ ノ 如 ク ニ ス ル 也 。 師 云 、 句 ヲ 。 代 、 澤 功 尽 テ 暮 山 秀 ヅ 。 心 ハ 、 自 己 當 頭 デ 、 意 識 々 上 ノ 出 デ ヌ ガ 、 安 山 也 。 ソ コ ヲ 肝 要 ト モ タ ヌ 境 界 ガ 、 自 己 真 正 渕 源 也 。 ソ コ ガ 、 便 チ 智 不 到 也 。 白 雲 ノ 功 ワ 、 智 不 到 也 。 ト ツ ク ト 坐 シ タ 処 也 。 ソ コ ヲ モ 楽 マ ヌ ガ 、 功 尽 キ タ コ ト 也 。 カ シ コ ヱ 秀 タ 也 。 句 モ 、 自 己 デ 風 波 ガ ク ツ ト 収 ツ タ 境 界 ガ 、 渕 源 澄 澤 也 。 ソ コ ヲ モ 楽 マ ヌ 時 、 暮 山 秀 ヅ 。 カ シ コ ガ 本 位 ニ 点 ジ タ 也 。 透 リ ノ 句 ヲ 。 白 雲 断 処 ロ 家 山 妙 也 。 尽 シ テ 点 処 那 時 也 。 ○ 了 々 透 二過 深 山 外 ニ 一ヲ 。︿ 尽 シ テ 点 処 那 時 也 。﹀ 代 、 師 ノ 前 ニ 、 坐 具 ヲ 持 シ テ 、 卒 度 眼 ヲ 開 イ テ 、 背 ロ ヱ ソ ル 。 心 ハ 、 始 メ ノ 了 ワ 、 直 ニ 安 山 ニ ナ ツ タ ト キ 、 自 己 ヲ 明 了 也 。 点 頭 自 己 透 過 也 。 処 ガ 、 知 不 到 也 。 功 尽 知 不 到 ノ 了 ジ 用 也 。 処 ロ ガ 、 青 山 秀 ヅ 、 那 時 也 、 深 山 也 。 ソ コ ヲ モ 楽 ヌ ト キ 、 外 カ ヱ 点 ジ タ 也 。 師 、 句 ヲ 。 代 、 誰 カ 知 雲 外 千 峯 上 。 心 ハ 、 誰 レ ガ 知 ー ー 峯 ハ 、 一 ツ 也 。 外 イ ト 云 イ 、 上 リ ト 云 ワ 、 青 山 本 位 也 。 透 リ ノ 句 ヲ 、 代 、 正 ニ 坐 シ テ 正 ト 不 レ楽 、 王 々 位 ヲ 不 レ存 。 ○ 尽 十 方 一 顆 ノ 明 珠 ヲ 。 代 、 師 ノ 前 デ 、 眼 ヲ ア ツ カ ト 開 イ テ 坐 ス 。 師 云 、 恁 麼 ノ 時 キ 如 何 。 代 、 無 吼 ノ 鉄 鎚 當 面 ニ 抛 ツ 。 師 云 、 句 ヲ 。 代 、 野 ー ー 王 。 心 ハ 、 柳 ニ モ ミ ド リ ト 不 レ 知 、 花 ニ モ 紅 イ ト 不 レ知 、 ト キ 一 顆 也 。 知 レ バ 、 キ ズ 也 。 挙 派 ガ 、 産 サ ン 出 ノ 侭 デ 、 事 ノ 出 ヌ 肌 ヱ 也 。 無 吼 ノ 透 リ ノ 句 、 百 姓 日 々 ニ 用 テ 不 レ知 レ名 。 ○ 銀 河 清 シ テ 無 レ浪 、 半 夜 月 横 ウ レ秋 。 代 、 波 浪 中 ノ 妙 デ 走 。 師 云 、 恁 麼 ノ 時 如 何 。 代 、 咄 坐 ス 。 心 得 ハ 、 銀 河 ー ー 無 イ
江戸時代初頭における永平寺の動向について（中） （飯塚） 一八〇 処 ガ 、 一 色 知 不 到 也 。 爰 デ ノ 月 ハ ス ラ ズ 、 初 生 ノ 月 デ 高 イ ゾ 。 半 夜 ノ 月 タ ゾ 。 ド ツ チ ヱ モ 傾 カ ヌ 也 。 師 云 、 句 ヲ 。 三 千 刹 界 一 成 レ秋 、 明 月 ー ー 照 ス 。 ○ 金 殿 堂 々 重 幃 深 シ ヲ 。 代 、 咄 坐 ス 。 心 得 ハ 、 是 ワ 、 内 紹 、 不 出 也 。 天 然 ノ 位 ニ ソ ナ ワ ツ タ ゾ 。 王 ノ 堂 々 ト シ テ 金 殿 ニ ゴ ー ー ル ニ 、 傾 ク 方 タ ガ 乱 ゲ キ ス ル ゾ 。 咄 坐 ノ ト キ 、 冠 リ ワ 傾 カ ヌ 也 。 此 ノ 時 キ 、 東 夷 ・ 西 域 ・ 南 バ ン ー ー ー 、 マ デ 収 タ ゾ 。 宗 旨 デ ワ 、 悟 リ ガ 乱 ゲ キ 也 。 事 ノ 出 デ ヌ 肌 ヱ ガ 、 本 有 太 平 也 。 是 レ ガ 、 六 祖 ナ ド ノ 御 修 行 ト 一 ツ タ ゾ 。 神 秀 ワ 、 収 メ テ ゴ ー ー ル 也 。 師 、 句 ヲ 。 玉 簾 深 垂 、 全 体 未 レ露 。 重 イ 深 イ ト 云 ヨ リ 、 長 年 不 出 戸 ト 云 也 。 ○ 芦 花 ー ー 空 ニ 一。 代 、 尽 ニ 在 ル 不 尽 デ 走 。 師 云 、 不 尽 ノ 境 界 ヲ 。 代 、 突 兀 ト シ テ 坐 ス 。 心 ハ 、 芦 花 ・ 霜 月 ワ 、 目 前 也 。 自 己 目 前 一 致 也 。 秋 空 ワ 、 空 劫 已 前 ノ 自 己 也 。 芦 ー ー 同 ケ レ バ 、 自 己 目 前 一 致 也 。 芦 ー ー 月 ワ 、 尽 ノ 功 也 。 秋 空 ワ 、 不 尽 也 。 空 劫 ヨ リ 芦 花 ・ 霜 月 ト モ 出 テ タ ト 見 レ バ 、 尽 ガ 不 尽 也 。 目 前 ニ ア ル 自 己 也 。 咄 坐 ワ 、 本 分 ノ 境 界 也 。 師 云 、 句 ヲ 。 花 簇 々 錦 簇 々 。 心 ハ 、 根 本 ヨ リ 花 ワ 花 、 錦 ニ ワ 錦 、 々 簇 々 也 。 向 ウ 千 変 ベ ン 万 代 シ タ ガ 、 本 位 ヨ リ ト ミ レ バ 、 目 前 ニ 在 ル 自 己 タ ゾ 。 ○ 一 色 盤 中 ニ シ テ 有 リ 二異 玄 一。 代 、 黒 ニ 在 ル 白 ク 、 白 ニ 在 ル 黒 、 陰 ニ ア ル ー ー ン デ 走 。 心 ハ 、 黒 白 兼 對 也 。 知 不 到 也 。 爰 ヲ 、 將 軍 家 ト 王 道 ト 云 也 。 將 軍 ワ 、 禁 中 ヲ モ 東 マ ヲ モ 欠 カ ズ 収 ル 也 。 師 云 、 境 界 ヲ 。 代 、 突 坐 ス 。 心 ハ 、 坐 タ 人 相 ワ 、 偏 。 在 レ ド モ 、 卒 度 モ 事 ノ 出 デ ヌ ト キ 、 根 本 ノ 正 位 デ 居 タ ゾ 。 ト キ コ ソ 、 偏 正 兼 對 ダ 。 師 云 、 句 ヲ 。 云 、 水 滞 二 陰 花 一香 シ 。 心 ハ 、 水 ワ 陰 也 。 花 ワ 陽 也 。 帯 レ バ 、 陰 ニ ア ル 陽 也 。 時 キ 、 兼 對 也 。 ○ 始 覚 本 覚 去 休 々 。 代 、 至 学 ニ 在 ル 本 学 、 々 々 ニ 在 ル 至 学 デ 走 。 師 云 、 句 ヲ 。 代 、 葵 花 向 イ レ日 ー ー 風 ニ 一。 心 得 ハ 、 去 休 々 、 一 盤 双 對 イ 也 。 六 祖 ト 神 秀 ノ 至 到 ノ 折 角 ヲ 以 テ ミ ベ シ 。 快 庵 派 夜 参 。 大 事 々 々 、 秘 密 々 々 。 △ 夜 参 。 鉄 銀 金 。 師 乞 テ 云 、 鉄 ヲ 。 代 、 突 兀 ト シ テ 坐 シ テ 、 手 ヲ 拍 シ テ 、 ア ツ ト 云 テ 、 ノ ツ ケ ニ 倒 ル 也 ︿ 点 処 也 ﹀。 師 拶 云 、 句 ヲ 。 代 、 鉄 樹 放 二開 ス 花 。 師 云 、 畢 竟 ヲ 九 拜 。 ○ 師 乞 、 銀 ヲ 。 代 、 突 ツ ク ト 坐 シ テ 、 地 ヲ 丁 度 打 テ 、 仰 面 ス ル 也 ︿ 点 処 ﹀。 師 、 句 ヲ 。 代 、 鶴 出 テ 二銀 篭 一冲 ル 二霄 漢 ニ 一、 銀 篭 飛 出 ス 老 鶴 児 。 心 ハ 、 知 不 到 ニ 滞 在 ス ル ナ 。 又 、 玉 馬 飲 ー ー 地 。 此 ノ 句 モ 同 ジ 事 ナ レ ド モ 、 主 ガ 二 ツ 在 ル ホ ト
