• 検索結果がありません。

「都道府県が維持管理する道路の品質に関する要因分析」

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "「都道府県が維持管理する道路の品質に関する要因分析」"

Copied!
21
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

都道府県が維持管理する道路の品質に関する要因分析

― 要 旨 ― 現在、47都道府県は、国内の道路延長約120万キロのうち都道府県道約13万キロに約3万キロの指 定区間外の一般国道(以下、「国道」という。)延長を合わせた、約 16 万キロの道路を維持管理してい る。 道路管理者には最小限の費用で高い成果を挙げることが求められるが、実際は、舗装、線形、広さ等 で走りにくいと感じる道路が散見される。 本論文では、こうした道路維持管理の状況が国土交通省道路局(2006)『道路の走りやすさマップ』 における走りやすさの評価に反映されると仮定し、その評価を「道路の品質」と読み替え、道路の品質 に影響を与えそうな、道路施設、土木担当行政職員(以下、「職員」という)、予算、都市化・自然条件、 建設業、政治的条件 等をコントロールした上で実証分析を行った。 その結果、都道府県が維持管理する道路の品質は、国道の延長が増えると低下する傾向が観察され、 また職員を追加しても道路の品質は向上しない傾向も観察された。これを受けて、新しい道路維持管理 のあり方について政策提言を行った。 Key words : 道路の走りやすさマップ、道路の品質、国道、都道府県道、担当延長 2013 年(平成 25 年)2 月 政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU12619 疋田心平

(2)

目次

1.はじめに ... 3 2.道路維持管理の現状 ... 5 2-1 先行研究 ... 5 2-2 道路の種類及び管理延長 ... 5 2-3 道路の走りやすさマップ ... 6 2-4 走りやすさ指標 ... 7 2-5 橋梁延長及びトンネル延長 ... 8 2-6 改良率 ... 8 2-7 都道府県の職員 ... 9 2-8 都道府県の道路維持管理予算 ... 10 3.本研究の目的および仮説の設定 ... 12 3-1 本研究の目的 ... 12 3-2 仮説の設定 ... 12 3-3 仮説の説明 ... 12 3-4 本研究における生産関数の注意点 ... 13 4.実証分析の内容 ... 15 4-1 分析の方法 ... 15 4-2 使用するデータ ... 15 4-3 実証モデル ... 15 4-4 説明変数の説明 ... 18 4-5 実証分析の結果 ... 19 4-6 実証分析結果に対する考察 ... 19 5.おわりに ... 21 参考文献 ... 21

(3)

1.はじめに

2006 年現在、我が国では高速自動車国道、指定区間の一般国道、指定区間外の一般国道(以下、「国 道」という。)、都道府県道(主要地方道および一般都道府県道の計)、市町村道合わせて約 120 万 km 1 の道路が維持管理されている。 このうち、47 都道府県は、都道府県道約13 万km に加え、国道約3 万km を合わせた約16 万kmを維 持管理しており、その業務に、約 3 万人の土木担当行政職員(以下、「職員」という。) 2 が関わってい る。国道の維持管理は、道路法第 13 条によるが、国道の維持管理が加わることにより、管理延長は全 国で約 13 万 km から約 16 万 km に 20%増加し、職員 1 人あたりの担当延長に着目すると、全国平均で約 4km/人から約 5km/人に 25%増加している。 道路は、旧道路法においては国の施設とされた。しかし、1952 年に制定された現行の道路法において、 国は国土形成に集中するため全ての一級国道(1,2 桁国道)のみを維持管理することとなり、全ての二 級国道(3 桁国道)は都道府県が維持管理をすることとなった経緯がある。 また道路管理者は、図 1-1 のように、多様な業務を担当する。例えば、道路利用者および沿道住民 のニーズを把握する一方、関係者の権利調整を行いながら、道路の多様な役割と機能に十分配慮し、単 純に数値のみを追うことなく、道路構造に求められる思想を正確に把握し、地域の状況を適切に考慮し、 基準を弾力的に運用し 3 、投資コストと実現可能な道路の性能を考慮し、最小限の費用でニーズを形に することが求められる。そして、そうした業務の積み重ねが、私たちが毎日利用する道路の現状である。 本稿は、こうした道路維持管理の現状について、①国道を維持管理することにより、都道府県が本来 維持管理すべき都道府県道への品質の影響はないか ②必要に応じて維持管理のあり方の見直しはない か という問題意識を踏まえ、国土交通省道路局が 2006 年に発行した「道路の走りやすさマップ」 4 に おける道路の走りやすさの評価を道路の品質とし、その品質に影響を与えそうな、道路施設、職員、予 算、地域条件、建設業、政治的条件をコントロールした上で実証分析を行い、その因果関係を明らかに するまでの過程を述べたものである。 実証分析の結果、①都道府県道の品質は、一般国道(指定区間外)の延長が増えると低下する傾向が 観察され ②土木職員を追加しても道路の品質は向上しない傾向も観察された。 実証分析にあたっては、問題意識に対する解決策を探るべく、2 つの先行研究を調査した。大谷(2009) は、予算・人員・技術面で不足が生じる小規模自治体の橋梁維持補修業務に着目し、予算・人員・技術 を追加できない中、当該自治体のみで対応する場合と他自治体と連携する場合を比較し、連携すること の有意性を指摘。新しい橋梁の維持管理のあり方を示唆している。 また、長山・片山(2001)は、道路投資に影響を与えそうな要素との因果関係に焦点を当て、道路投 資の予算配分や政策決定のプロセスを解明した。道路投資に有意に影響を与える要素(説明変数)を指 摘している。前者は、新しい組織のあり方を示唆したもので、政策提言の参考とした。後者は、道路投 資に有意な影響を与える要素を示したもので、実証分析に使用した関数および説明変数の設定に活用し た。 本稿の構成は次のとおりとする。 第 2 章においては日本の道路維持管理の現状および「道路の走りやすさマップ」調査結果について、 統計データを示しながら概要を説明する。第 3 章では、問題意識及び論点をもとに設定した仮説や研究 目的、研究の実施方針を示す。第 4 章では、実証分析の内容および結果を示す。第 5 章では政策提言を 示す。

(4)

†本稿は、道路維持管理のあり方に関わる個人的な見解を示したものであり、筆者の所属機関の見解を 示したものではありません。本稿にある誤りは全て筆者の責任です。 1 国土交通省道路局『道路統計年報 2008』より引用。 2 総務省統計局『平成 18 年地方公共団体定員管理関係(都道府県、指定都市、市区町村データ)第 2 表 部門別職員数』における土木一般として計上された人数を引用。この人数は、土木職員のうち、 用地買収、港湾空港海岸、建築、都市計画一般、都市公園、ダム、下水担当職員を除く。 3 社団法人日本道路協会(2004)『道路構造令の解説と運用』より引用。 4 本研究では、国土交通省道路局が 2006 年 9 月に作成した『道路の走りやすさマップ』のデータの提供 を受けて作製・市販された、武揚堂制作部編(2008)『スーイスイ走りやすさマップ全国版』武揚堂 を使用した。 <図 1-1 現場で求められる道路維持管理の基本スタンス> 情報 収集 •道路利用者および沿道住民のニーズを把握 •関係者の権利調整 的確な 判断 •コストと実現可能な道路の性能を比較 •職員・組織が連携し皆で意思判断 投資 •最小限の費用で、ニーズを的確に形にする

(5)

2.道路維持管理の現状

本章では、まず、本研究の参考にした先行研究を説明し、道路管理の現状及び「道路の走りやすさマ ップ」調査結果について、統計データを示しながら概要を説明する。 2-1 先行研究 (1)大谷江二(2009)「小規模自治体における橋梁アセットマネジメントの実施に関する研究」『平成 20 年度 開発政策プログラム政策課題研究論文概要集』9-14 本研究では、予算・人員・技術面で不足が生じる小規模自治体の橋梁維持補修業務に着目し、予算・ 人員・技術を追加できない中、当該自治体のみで対応する場合と他自治体と連携する場合を比較し、連 携することの有意性を指摘。新しい橋梁の維持管理のあり方を示唆している。 (2)長峯純一・片山泰輔(2001)『公共投資と道路政策』勁草書房 本文献では、道路投資に影響を与えそうな要素との因果関係に焦点を当て、道路投資の予算配分や政 策決定のプロセスを解明したもの。道路投資に有意に影響を与える要素を指摘している。 (3)本研究との違い 本研究の特徴は、①全国一律の基準で道路の品質を評価した走りやすさ指標を作成 ②その指標を道 路の品質とし、その品質に影響を与えそうな要素(道路施設、職員、予算 等)との因果関係を分析 し た点が特徴である。 2-2 道路の種類及び管理延長 全国の都道府県道及び国道の維持管理の現状を整理する。 表 2-1 に日本の道路の現状を示す。管理主体別に道路延長を見てみると、その割合は市町村道およ び都道府県道が全体の約 95%を占め、国内の道路の大部分を地方自治体の維持管理に依存している状況 が示され、地方自治体の役割は大変重要なものであると考えられる。 <表 2-1 日本の道路延長および管理割合 5 > <図 2-1 日本の道路割合> そこで、本論文では、国内道路延長のうち、都道府県が本来維持管理を行う都道府県道 約 13 万 km に国道 約 3 万 km の維持管理が加わることで、都道府県道の維持管理にどのような影響が出るのかにつ いて実証分析を行う。実証分析の内容については、「4.実証分析の内容」の頁で述べる。 5 国土交通省道路局『道路統計年報 2008』より引用し筆者が作成。 種類 約万km 約% 高速道路 1 0.6 国道(指定区域 :直轄管理) 2 1.9 国道(指定区域外:都道府県管理) 3 2.7 都道府県道 13 10.8 市町村道 101 84.0 計 120 100

(6)

2-3 道路の走りやすさマップ (1)概要 道路の走りやすさマップとは、国土交通省が、2006年に全ての国道(指定区間、指定区間外)および 都道府県道を自動車で走行し、走りやすさの高い順にABCD の4 段階で評価し、地図化したものである。 評価は、国道、主要地方道、一般都道府県道など、広域的に利用されている道路を対象に実施してお り、自動車走行による調査から得られた毎秒のデータから走行速度および横方向加速度を計測し、500m 区間ごとの設計速度の割合に応じて、その道路構造とともに評価を行っている。 なお、本研究の実証分析にあたっては、国土交通省道路局『平成 17 年道路交通センサス』の混雑度 を説明変数の 1 つに設定し、回帰分析したところ、他の変数の符号や有意性に影響がなかったことから、 道路の走りやすさマップは渋滞の影響をコントロールできているものと考えている。なお、本研究の実 証分析では47 都道府県を対象としており、サンプル数が少ないことから、混雑度は変数から除去した。 (2)採用理由および長所・短所 道路の走りやすさマップの特徴は、道路維持管理状況を表す同じ品質を達成するための価格の統一的 な指標ではないが、唯一、道路の「走りやすさ」を全国統一の規準で評価している点である。これは、 本研究のデータとして採用した理由でもある。 また短所は、同じ投入予算に対する、品質の高低が不明な点で、長所は、全ての国道および都道府県 道の走りやすさを統一の規準で評価した点である。 道路の走りやすさマップの一例を図2-2 6 に、走りやすさのイメージを表2-2 6 に示す。 また、国土交通省道路局のホームページに、全国の道路の走りやすさマップの電子データ 6 が掲載さ れている。 <表2-2 走りやすさのイメージ> <図2-2 道路の走りやすさマップのイメージ> 6 この写真及び地図は、国土交通省ホームページ『道路の走りやすさマップ』より引用し、筆者が加工 したものである。 http://www.qsr.mlit.go.jp/kyukan/map05/

(7)

2-4 走りやすさ指標 (1)走りやすさ指標とは 道路の走りやすさ指標:Yiとは下記の(式-1)で表され、ある都道府県iにおける道路維持管理の 品質の高さを表す。別な表現をすると、都道府県が維持管理する道路延長のうち、走りやすい道路延長 の割合を示す。 走りやすさ指標 : Yi = ランク ランク + ランク + ランク (式-1) 式の構造を説明する。式の分子には、道路の走りやすさマップにおいてA 及びB ランクの評価を受け た道路延長の計を代入し、分母には都道府県が維持管理する道路の全延長が代入される。 (2)道路の走りやすさマップの計測 実証分析にあたり、47 都道府県分の走りやすさ指標を求める必要があるため、道路の走りやすさマッ プをキルビメーター(図 2-3 を参照)にて計測した。 (式-1)におけるABランクとは、道路の走りやすさマップにおいてAおよびB ランクの評価を受け た道路延長の計である。 計測にあたっては、国土交通省の調査データの提供を受けて武揚堂が作成した『スーイスイ走りやす さマップ全国版』 3 (図2-4を参照)を使用した。この書籍は、国土交通省に『道路の走りやすさマッ』 の在庫を尋ねた際、絶版であることが分かったため、代用のものとして紹介を受け購入したものである。 なお、この書籍は、国土交通省道路局が2006 年9 月に発行した『道路の走りやすさマップ』のデー タ提供を受け、武揚堂が作製し、市販したものである。 <図2-3 キルビメーターによる計測状況> <図 2-4 道路の品質評価に使用した文献>

(8)

(3)都道府県別走りやすさ指標 都道府県別に走りやすさ指標の値を図2-5 に示す。図の横軸は47 都道府県を、縦軸に走りやすさ指 標の高さを示す。なお、47都道府県の平均値は、約0.64である。沖縄が0.97と最も高く、和歌山県が 0.38 と最も低い値となった。 なお、走りやすさ指標は、(式-1)のとおり、47都道府県における地形・自然条件・住民の需要・政 治的な影響など、道路の品質に影響を与えそうな諸条件を加味しない値である。 <図2-5 47 都道府県の走りやすさ指標> 2-5 橋梁延長及びトンネル延長 5 トンネルおよび橋梁は、道路維持管理において他の道路施設と比較すると、特殊な技術が必要とされ るとともに、単位延長あたりの維持管理費が高額となる道路施設である。 道路統計年報によると、橋梁延長全体に占める国道に架設された橋梁延長割合は約30%を占め、トン ネルにおいては同様の割合が約60%であることが明らかとなった。 先行研究においては、橋梁のアセットマネジメントについて、技術職員が不在の市町村など小規模自 治体においては他自治体との連携によりその技術力等の不足を補うことの有意性が指摘されている。 そこで、本研究においては、国土交通省道路局が作成した道路統計年報から、47都道府県が維持管理 する都道府県道に設置された橋梁及びトンネルの延長のデータを収集し、国道を維持管理することに付 随するトンネル及び橋梁の維持管理への負荷についても着目し、実証分析することとした。 <表 2-3 47 都道府県が維持管理する橋梁延長> <表 2-4 47 都道府県が維持管理するトンネル延長> 2-6 改良率 5 都道府県が維持管理する道路への投資需要の指標として、道路の品質との因果関係を調べるため説明 変数として設定した。平均値は約65%、最低値は高知県の約37%、最高値は、北海道の約 92%である。 5 国土交通省道路局『道路統計年報2008』より引用したもの。 道 路 種 別 延 長 [ km ] 割 合 [ % ] 国 道 9 7 7 . 4 2 7 都 道 府 県 道 2 5 9 6 . 9 7 3 3 5 7 4 . 3 1 0 0 道 路 種 別 延 長 [k m ] 割 合[ % ] 国 道 9 2 2 . 0 5 7 都 道 府 県 道 7 0 8 . 4 4 3 1 6 3 0 . 4 10 0

(9)

2-7 都道府県の職員 2 47都道府県における職員は、約3万人 2 である。また、職員数の推移を2006年から2011年までの5 年間で観察すると、47 都道府県の平均で 15%程度減少している。都道府県により減少の度合いは異な るが、実際の現場では、道路の利用状況に応じて走りやすさが維持されるような職員の配置が求められ ているのではないだろうか。 道路維持管理の現場においては、一般的に職員の人数が不足していると言われるが、職員の人数が多 いほど道路が走りやすいというデータや、道路の品質が高いというデータ現存していないため、47 都道 府県における職員1 人あたり担当延長に注目し、実証分析を行うこととした。 まず、職員 1人あたり担当延長の長さが道路維持管理の品質に影響すると考え、その傾向を把握する ための表2-5 を作成した。表の左側の数値は、走りやすさ指標が高い沖縄県を1とする、順位を示す。 <表2-5 都道府県別職員1人あたり担当延長及び走りやすさ指標> ここで示した職員 1 人あたり担当延長とは、47 都道府県道の延長を各自治体職員数で除した値である。 職 員 1 人 あ た り 担 当 延 長 [ k m / 人 ] 走 り や す さ 指 標 職 員 1 人 あ た り 担 当 延 長 [ k m / 人 ] 走 り や す さ 指 標 1沖 縄 県 4 . 4 0 0 . 9 7 2 5愛 媛 県 4 . 6 2 0 . 6 3 2東 京 都 1 . 1 8 0 . 8 9 2 6富 山 県 4 . 0 8 0 . 6 3 3北 海 道 5 . 8 4 0 . 8 5 2 7埼 玉 県 3 . 0 1 0 . 6 2 4鹿 児 島 県 4 . 1 9 0 . 8 2 2 8福 島 県 5 . 1 7 0 . 6 1 5愛 知 県 4 . 2 8 0 . 7 9 2 9熊 本 県 4 . 8 7 0 . 6 1 6茨 城 県 6 . 1 8 0 . 7 7 3 0千 葉 県 3 . 0 6 0 . 6 0 7青 森 県 5 . 2 7 0 . 7 6 3 1山 梨 県 4 . 1 5 0 . 5 9 8鳥 取 県 4 . 2 5 0 . 7 5 3 2栃 木 県 3 . 7 1 0 . 5 9 9長 崎 県 3 . 0 7 0 . 7 4 3 3佐 賀 県 3 . 6 2 0 . 5 8 1 0福 井 県 3 . 5 1 0 . 7 2 3 4宮 城 県 4 . 6 3 0 . 5 8 1 1滋 賀 県 3 . 9 8 0 . 7 1 3 5岐 阜 県 4 . 9 8 0 . 5 8 1 2山 口 県 4 . 7 7 0 . 7 1 3 6大 分 県 3 . 8 5 0 . 5 7 1 3岡 山 県 5 . 8 4 0 . 7 1 3 7石 川 県 3 . 7 6 0 . 5 6 1 4香 川 県 3 . 8 2 0 . 7 0 3 8三 重 県 4 . 1 4 0 . 5 5 1 5大 阪 府 1 . 0 2 0 . 6 9 3 9岩 手 県 5 . 5 1 0 . 5 4 1 6広 島 県 4 . 3 6 0 . 6 9 4 0新 潟 県 3 . 9 0 0 . 5 3 1 7神 奈 川 県 1 . 6 7 0 . 6 9 4 1徳 島 県 3 . 4 7 0 . 5 2 1 8群 馬 県 5 . 6 8 0 . 6 7 4 2高 知 県 3 . 9 1 0 . 5 1 1 9京 都 府 2 . 9 9 0 . 6 7 4 3長 野 県 5 . 2 4 0 . 4 8 2 0宮 崎 県 4 . 1 6 0 . 6 7 4 4奈 良 県 2 . 2 1 0 . 4 8 2 1山 形 県 4 . 8 1 0 . 6 6 4 5静 岡 県 3 . 2 2 0 . 4 3 2 2兵 庫 県 3 . 6 3 0 . 6 5 4 6福 岡 県 2 . 8 6 0 . 3 9 2 3秋 田 県 5 . 2 6 0 . 6 5 4 7和 歌 山 県 3 . 9 3 0 . 3 8 2 4島 根 県 4 . 7 5 0 . 6 3

(10)

次に、表 2-5 の関係を図2-6に示した。この結果、地形や自然条件等を無視すれば、都道府県別職 員1人あたり担当延長が長くとも、走りやすさ指標の値が高いとは言えない傾向が観察された。 例えば、大阪府と茨城県は同程度の走りやすさ指標であるが、職員1 人あたり担当延長は6倍程度の 差がある。福岡県と長崎県を比較すると、職員1 人あたり担当延長は同程度であるが、走りやすさ指標 は2倍程の差があることが明らかとなった。 これを受けて、前述のとおり予算の制約や、地域的特徴、都市や自然条件、建設業や政治的な影響な ど様々な条件があるとはいえ、47 都道府県別に差異があることが観察されたため、実証分析において、 職員1 人あたり担当延長を説明変数に設定し、走りやすさ指標との因果関係を考察することとした。 <図2-6 職員1 人あたり担当延長及び走りやすさ指標の関係> 2-8 都道府県の道路維持管理予算 本研究においては、道路事業に係る予算のうち新設事業を含まない、道路維持管理に要する予算を単 費 7 および補助費 8 別に集計し実証分析に使用した。 また、道路維持管理予算についても、職員1 人あたり担当延長と走りやすさ指標との関係を示した図 2-6 と同様の傾向が見られるのではないかと考え、都道府県道1㎞あたりの予算を算出し、走りやすさ 指標との関係を確認した。 その結果、地域的特徴、都市や自然条件、建設業や政治的な影響など様々な条件等を無視すれば、道 路単位延長あたり維持管理予算が高くとも、走りやすさ指標の値が高いとは言えない傾向が観察された。 例えば、走りやすさ指標が最も低い和歌山県と同程度の維持管理予算を執行する鹿児島県とでは、走 りやすさ指標に2.5 倍程度の差が見られた。 これを受けて、前述したような、地形や自然条件等を無視すれば、様々な条件があるとは言え、都道 府県別に差異があることが観察されたため、実証分析において補助額および単費を説明変数として設定 し、道路の品質との因果関係を考察することとした。 また、地方財政統計年報に示された道路維持管理予算である道路橋りょう費の推移について 2006 年 から2011 年までについて観察すると、47都道府県の平均で15%程度減少していることも把握された。 7 総務省統計局『地方財政統計年報2006』の道路橋りょう費から単費のデータを作成。 8 国土交通省道路局『道路統計年報2008』の補助事業費より引用。

(11)

<図2-7 職員1 人あたり担当延長及び走りやすさ指標の関係> 最後に、表2-5に示した47 都道府県の走りやすさ指標を図2-10に示す。なお、本図における着色 は、走りやすさ指標の平均値 0.64 との差から分類したものである。着色の分類方法は、図中の凡例を 参照されたい。 <凡例> □:平均値との差が、-10%以下 ■:平均値との差が、0~-9.9% ■:平均値との差が、+10~0% ■:平均値との差が、+10%以上 <図2-8 47 都道府県の走りやすさ指標> <凡例> □:平均値との差が、-10%以下 ■:平均値との差が、0~-9.9% ■:平均値との差が、+10~0% ■:平均値との差が、+10%以上

(12)

3.本研究の目的および仮説の設定

3-1 本研究の目的 本研究では、国道の維持管理による47 都道府県道の品質の変化に着目し、次の2 点を目的とする。 (1)目的 1 本論文では、こうした道路維持管理の状況を国土交通省道路局(2006)『道路の走りやすさマップ』 から求めた走りやすさ指標を道路の品質と読み替え、47都道府県が国道を維持管理した際に生じる道路 の品質の変化と、その品質に影響を与えそうな要素との因果関係に注目し、経済学的な分析を行うこと。 (2)目的 2 分析の結果を踏まえた道路維持管理サービス提供のあり方について示唆を行うこと。 3-2 仮説の設定 本研究においては、都道府県が国道の維持管理を義務付けされていることによる、都道府県道の品質 への影響を検証するため、下記のような仮説を設定する。 (1)仮説 1 都道府県が維持管理する道路の品質は、国道の維持管理義務の発生により、低下するのではないか。 (2)仮説 2 都道府県が維持管理する道路の品質は、職員を追加しても向上しないのではないか。 3-3 仮説の説明 (1)仮説 1の説明 都道府県は、本来維持管理すべき都道府県道に加え、国道の維持管理をしなければならない。また、 国道の役割とは、都道府県の枠を越え広域的に移動する道路利用者の移動を支えることである。そこで、 本論文では、都道府県は地域的に利用すされる都道府県道の維持管理ノウハウには長けるが、広域的に 利用される国道の維持管理ノウハウは不得手であると仮定する。このため、都道府県は、維持管理する 国道の延長が増加すると、都道府県道の品質が低下する。また、国道の維持補修費の国庫補助率は 1/2 であるため、都道府県にとっては、本来投資すべき都道府県道ではなく国道の維持管理にもその予算を 投入しなければならない負担が生じることとなる。そこで、都道府県が維持管理する道路の品質は、国 道の維持管理義務の発生により低下するのではないかと考えたものである。 (2)仮説 2の説明 限界生産物逓減の理論 9 によると、図3-1に示されるように、道路の品質を維持するための予算を増 加するにつれ、限界生産物は減少し、生産関数の傾きは緩やかになると考える。 具体的には、また、予算が一定ならば、職員を増やしても効果はなく、職員数が一定ならば、予算を 増やしても道路の品質は向上しないと考えるものである。 先行研究 10 においても、たとえ職員が少なくとも、職員や組織が連携し、皆で意思判断すれば道路の 維持管理を行うことが可能だということが示されているため、最小限の費用で高い成果を挙げることが 9 N・グレゴリー・マンキュー『マンキュー経済学Ⅰミクロ編(第2 版)』東洋経済新報社 10 大谷江二(2009)「小規模自治体における橋梁アセットマネジメントの実施に関する研究」『平成20 年度開発政策プログラム政策課題研究論文概要集』9-14

(13)

求められる、実際の現場へ適用できる理論であるといえるのではないか。 <図3-1 限界生産物逓減> 3-4 本研究における生産関数の注意点 本研究の生産関数は、図 3-2 に示すような関係図で説明される。 被説明変数である道路の走りやすさという、道路の品質と、6 つの属性を持つ、道路施設、職員、予 算、地域条件、建設業、政治的条件という説明変数である要素が正負どちらに有意かということを明ら かにするものであり、短絡的に走りやすい道路の延長を増やすことを目標とするものではない。 具体的には、仮説 1で述べたとおり一定の走りやすさを担保するためには、維持管理する国道延長の 割合が少ない方が良いということを表しているのみに留まり、本研究の結果、図 1-1 に示したような 情報収集や的確な判断を行うものではなく、都道府県が維持管理する道路の品質を保つためにはどのよ うな組織のあり方が望ましいのか、という極めて事務的な実証分析のみを実施している点に注意したい。 <図3-2 本研究における生産関数のイメージ> 道路の品質 10 8 5 1 2 道路維持予算 傾きは 緩やかに 道路の品質 道路施設(管理状況) 土木職員(組織規模) 単費・補助予算(投資需要) 地域(都市化、自然条件) 建設業(発注効率) 政治(議会、雇用状況)

(14)

3-5 自治体の道路投資政策決定モデルについて 本研究の実証分析にあたっては、図3-2 で示した 6つの属性を持つ説明変数を設定した。このうち、 政治的な影響の要素設定にあたっては、先行研究 11 を参考とした。 先行研究においては、下図 3-3 のような道路投資に影響を与える相関図が示されており、この中に おける②政治的影響力関数を特に参考とした。 <図3-3 自治体の道路投資政策決定モデルの関係図> ②政治的影響力関数は、先行研究によると政治的影響力を被説明変数とし、説明変数に自民党得票率、 自民党議員過去当選回数、自民党議員過去大臣経験回数、衆議院議員定数の一票の重み、建設業事業者 の全事業者に占める比率、建設業従業者数の人口に占める割合を設定している。この関数は、地元産業 に占めるプレゼンスが高いほど、それを背景とした政治的影響力によって、道路事業が多くなることを 示すとのことである。 この他、本研究における説明変数の設定に当たっては、図中③及び④の関数を参考にした。 ③補助金配分関数では、県の道路投資に対する国からの財源補助額を被説明変数とし、説明変数に県 民の所得水準、道路譲与税、道路舗装率、県民1 人あたり自動車保有台数、森林面積比率、有効求人倍 率等を設定している。この関数における有効求人倍率は、景気対策や雇用対策としての道路補助金の効 果を評価するため考慮しており、有効求人倍率が低い地域に重点的に財源が配分されることを示す。 この他、④県の道路需要関数においては、県民1 人あたりの道路投資額を被説明変数とし、説明変数 に道路単位延長あたりの投資額、県民1 人あたりの所得水準、舗装率等を設定している。 なお、図 3-3 における⑤は、自治体の道路投資政策決定モデルにおいて反映されていないが、実際 の現場においては、住民の需要を把握するために必要な要素である。この部分について経済学的に実証 できた文献を検索したがみつけることはできなかった。本研究においては、国土交通省所管の道の相談 室に寄せられるデータを活用することで⑤のデータ収集を試みたが、情報提供の方法に秘匿性が高く、 また内生性の課題もあると判断されたため、実証分析は行わなかった。 11 長峯純一、片山泰輔(2001)『公共投資と道路政策』勁草書房より筆者が作成したもの。 ②政治的影響力 都道府県道路担当者 国土交通省 ②政治的影響力 道路資本 地方議員 国会議員  ⑤要望   ①供給 ②利用 ④要望 住民 ④要望 ①単位あたり費用関数 ②政治的影響力関数 ③補助金配分関数 ④県の道路需要関数 ⑤住民からの要望 ③補助金

(15)

4.実証分析の内容

4-1 分析の方法 実証分析では、「道路の走りやすさマップ」から算出した走りやすさ指標(=道路の品質)を被説明 変数に設定し、これに影響を与えそうな6つの属性を持つ説明変数との因果関係を調べるため、2006年 時点のクロスセクションデータを作成し、OLS(最小二乗法)を用いた回帰分析を行った。 解析にあたっては、STATA ver.12.1 12 を解析ソフトとして使用した。 4-2 使用するデータ 実証分析に使用するデータは、「道路の走りやすさマップ」が2006 年に作成されたことを受け、説明 変数のデータをすべて2006年のデータとするクロスセクションデータとした。 4-3 実証モデル 本実証分析に使用した被説明変数は、道路の品質(単位:なし)とする。説明変数は、道路施設の規 模や種類が道路の品質に影響を及ぼす要因、職員 1 人あたり担当延長が道路の品質に影響を及ぼす要因、 予算が道路の品質に影響を及ぼす要因、地域的特性が道路の品質に影響を及ぼす要因、建設業の動向が 道路の品質に影響を及ぼす要因、政治的動向が道路の品質に影響を及ぼす要因の6つに分類することが できる。以下、それぞれの説明変数が要因について説明を行う。 (1)道路施設の規模や種類が道路の品質に影響を及ぼす要因について 国道延長および都道府県道管理割合は、都道府県が維持管理する国道の道路延長及び都道府県道の管 理延長割合を意味し、国道を管理することによる負荷を説明するものである。国道の延長が増えるほど、 道路の品質は下がると予想される。なお、管理割合は、(7)にて述べる。 また、橋梁延長及びトンネル延長は、単位延長あたりの維持管理コストが、通常の道路より多く必要 であるため、延長が増加するほど道路の品質は下がることが予想される。改良率は、道路投資に対する 需要を示すため、率が上がるほど道路の品質が上がると予想される。 (2)職員 1人あたり担当道路延長が道路の品質に影響を及ぼす要因について 職員1 人あたり担当延長は、各都道府県の作業効率に影響をあたえる重要な要素である。前述したと おり、47都道府県職員数が2006年から 2011年までに平均で約15%程度減少している。各都道府県の 人口の多少や地形、自然条件、道路施設の種類によりその差異はあるだろうが、担当延長が長くとも道 路の品質は低下しないと予想される。 (3)予算が道路の品質に影響を及ぼす要因について 道路橋りょう費は、都道府県の単費である。道路橋りょう費は、本来維持管理を行う都道府県道の維 持管理に充当できるため、増加すると道路の品質は上がると予想される。 また、補助額は、国道の維持管理に必要な予算であり、その補助率は1/2 であるため、残りは都道府 県単費から充当しなくてはならない。このため、補助額が増えると、単費の支出が伴うため、道路の品 質は下がると予想される。 12 STATAは株式会社ライトストーンが開発した解析ソフトである。

(16)

(4)地域的特性が道路の品質に影響を及ぼす要因について 人口密度(可住地面積あたり) 13 、事故件数(道路1㎞あたり) 13 、山地割合 13 ついては、地域的な特 徴を表す変数として実証分析に用いた。降雨量ダミー 13 ついては、最多降雨量を記録する高知県と最少 降 雨量 を記 録す る山 梨県と で 2000mm 程 度の 差があ った こと から 、年 間降雨 量の 47 都道 府県 平均値 1778[㎜/年]より雨量が多い都道府県を1 とするダミー変数とした。 豪雪地帯ダミー 14 ついては、国土交通省が豪雪地帯対策特別措置法に基づき指定した地域を含む 24 道府県を1 とするダミー変数とした。 道路の品質に影響を与える変数のうち、増えると道路の品質が上がるのは、人口密度(可住地面積あ たり)のみと予想される。なぜならば、都市の集積が進むため、道路投資を行う場所が縮小されると考 えられるためである。 (5)建設業の動向が道路の品質に影響を及ぼす要因について 建設業の統計については、建設業許可業者数都道府県別(大臣・知事計) 15 及び目的別公共機関から の受注工事請負契約額 16 を説明変数として設定し、単位延長あたりの許可業者数を確認することとした。 なお、道路の品質は、建設業許可業者数が増えると、分割発注が生じ、低下すると予想される。また、 受注工事請負契約額が増えると、業者の能力を超えた工事受注額が増加することにより、道路の品質が 低下すると予想される。 (6)政治的動向が道路の品質に影響を及ぼす要因 17 について 政治に関するデータとしては、有効求人倍率がより低い地域に道路投資が多くなされていないか、ま た、建設工事が単なる雇用確保のための公共事業が発注されている傾向がないか確認するため、有効求 人倍率 13 を設定した。 さらに、公共事業の拡大から利益を受けると予想される建設業からの影響を考慮するため、建設従業 者比率を変数に設定 15 した。地元産業に占める建設業のプレゼンスが高いほど、それを背景とした政治 的影響力によって、道路事業が多くなる傾向がないか確認するため、建設従業者比率 15 を設定した。 この他、自民党議員による道路事業への影響を確認するため、地方自民党議員比率 18 国会自民党議員 比率 19 を設定し、また、新潟県中越地方には田中角栄内閣の時代に整備された国道300~400 番台の路 線があることから、都道府県別の歴代首相人数 20 も確認することとした。ここで設定する全ての変数は 増加すると、道路の品質が低下すると予想される。 13 総務省統計局『統計でみる市区町村のすがた2009』より引用。 14 国土交通省ホームページ「豪雪地帯対策特別措置法の適用地域指定状況」より引用 http://www.mlit.go.jp/crd/chisei/hokkaido.html 15 建設調査統計研究会『建設統計要覧2006』より引用。 16 総務省統計局『第五十五回 日本統計年鑑 平成 18 年』より引用。道路工事(共同溝工事を含む) の契約額を示す。 17 長峯純一・片山泰輔(2001)『公共投資と道路政策』勁草書房より引用。 18 総務省統計局『日本統計年鑑2006』より引用。 19 総務省自治行政局選挙部管理課『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調』・『参議院 議員通常選挙結果調』より引用。 20 ホームページ「図録 歴代首相の出身県」http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5237.html より引用。

(17)

(7)管理割合について 管理割合とは、各都道府県が維持管理する国道延長と都道府県道延長に占める都道府県道延長の割合 であり、次の(式-2)で表される。 管理割合 =

県道

県道

+国道

(式-2) <図4-1 管理割合の状況図> <図4-2 管理割合と品質の関係> 式-2 において、管理割合が上がるとは、国道延長を固定すると仮定した際に、図4-1 における状況 1が状況2に変化することを指す。この時、職員数が一定とすると、国道の維持補修予算が増えても、 職員は対応できないと考える。職員 1人あたり担当延長は、ある程度増える分には道路の質の向上に寄 与する傾向が実証分析の結果、観察されたが、一定水準を超えると、維持管理はできなくなると考える。 また、本実証分析に用いた基本統計量を表4-1 に示す。 <表4-1 基本統計量> 品質 管理割合 都 道 府 県 道 都 道 府 県 道 国 道 国 道 状 況 1 状 況 2 属性 平均値 標準偏差 最小 最大 被説明変数 道路の品質 0.6409 0.1213 0.3800 0.9700 道路 国道 道路延長 [km] 6.4322 1.1221 0 7.4824 施設 都道府県道 管理延長割合 0.7743 0.0744 0.6400 1 橋梁延長[km] 3.8725 0.4961 3.0136 5.3263 トンネル延長[km] 2.4712 0.7386 0.9439 3.8461 改良率[%] 64.9953 12.5077 37.0300 91.8500 土木職員 職員あたり道路延長[km/人] 4.0598 1.1379 1.0200 6.1800 予算 道路橋りょう費[円] 24.7093 0.3847 24.0490 26.0018 補助事業費[円] 15.5645 0.7486 12.4370 17.2594 地域 人口密度(可住地1㎞2あたり) 6.8382 0.6592 5.5440 8.8082 事故件数(1kmあたり) 0.7040 0.5490 0.1600 3.3500 山地割合 0.6164 0.1487 0.3050 0.8330 豪雪地帯ダミー 0.5106 0.5053 0 1 降雨量ダミー 0.5532 0.5025 0 1 建設業 建設業許可業者数[社] 9.0350 0.6541 7.8827 10.6001 受注工事請負契約額[円] 24.7268 0.5484 23.6136 26.5812 政治 有効求人倍率 0.4681 0.5044 0 1 建設従業者比率 0.0937 0.0118 0.0678 0.1141 地方自民党議員比率[%] 0.5091 0.1444 0.1300 0.7600 国会自民党議員比率[%] 0.4006 0.0581 0.2400 0.5000 歴代首相人数[人] 1.3191 1.6433 0 0.8000 変数

(18)

4-4 説明変数の説明 本実証分析で用いた変数設定のねらい及び予想される符号、引用した参考文献を表4-2に示す。 <表4-2 説明変数の概要> 指 標 の 属 性 予 想 さ れ る 符 号 出 典 変数のねらい 道 路 施 設 国 道 ( 指 定 外 ) 道 路 延 長   [ k m ] - B 国道の維持管理延長を表す。 国道の管理状 況を説明するもの。 管 理 延 長 割 合 + B 維持管理延長に占める国道延長の割合を表 す。 国道の管理割合( 負荷) を説明するもの。 橋 梁 延 長 [ k m ] - B 維持管理延長のうち橋梁延長を表す。 維持管 理体制に対する負荷を説明するもの。 ト ン ネ ル 延 長 [ k m ] - B 維持管理延長のうちトンネ ル延長を表す。 維持 管理体制に対する負荷を説明するもの。 改 良 率 + B 狭小部延長に占める改良済み延長の割合を 表す。道路工事の需要を説明するもの。 行 政 職 員 + B , D 職員1 人あたりが維持管理する道路延長を表 す。 職員の労働環境を説明するもの。 予 算 道 路 橋 り ょ う 費 [ 円 ] - H 単費の規模を表す。道路工事の需要を説明す るもの。 補 助 事 業 費 [ 円 ] - B 補助額の規模を表す雇用対策を大義名分とす る公共事業の有無を説明するもの。 地 域 人 口 密 度 ( 可 住 地 1 ㎞ 2 あ た り ) + A 都市化の程度を表す。コンパ クトシティ化を説 明するもの。 事 故 件 数 ( 1 k m あ た り ) - A 道路の質を表す。道路の改良箇所の多さ( = 道路事業の需要) を説明するもの。 山 地 割 合 - A 総面積に占める山地の割合を表す。道路の整 備箇所を説明するもの。 豪 雪 地 帯 ダ ミ ー - A 豪雪地帯指定状況を表す。道路の整備箇所を 説明するもの。 降 雨 量 ダ ミ ー - A 降雨量を表す。道路の整備箇所を説明するも の。 - F 建設業者数を表す。 工事の分割発注の有無を 説明するもの。 - G 単費・ 補助を含む金額を表す。 道路工事の需 要を説明するもの。 政 治 有 効 求 人 倍 率 - A 雇用状況を表す。雇用対策を大義名分とする 公共事業の有無を説明するもの。 建 設 従 業 者 比 率 - F 労働者に占める建設従業者の割合を表す。政 治力と公共事業の関係を説明するもの。 地 方 議 員 自 民 党 議 員 比 率 - E 占める自民党議員比率を表す。 地 方 議 員 自 民 党 議 員 比 率 - E 自民党選出議員の割合を表す。 歴 代 首 相 人 数 [ 人 ] - I 出身首相人数を表す。 【 出 典 】 A 統 計 で み る 都 道 府 県 の す が た F 建設統計要覧 B 道 路 統 計 年 報 G 日本統計年鑑 C ス ~ イ ス イ 走 り や す さ マ ッ プ 全 国 版 H 地方財政統計年報 D 地 方 公 共 団 体 定 員 管 理 調 査 結 果 I 図説 歴代首相の出身県 E 衆 議 院 議 員 総 選 挙 ・ 最 高 裁 判 所 裁 判 官 国 民 審 査 結 果 調 、 参 議 院 議 員 通 常 選 挙 結 果 調 建 設 業 界 変 数 建 設 業 許 可 業 者 数 都 道 府 県 別 ( 大 臣 ・ 知 事 計 ) [ 社 ] 目 的 別 公 共 機 関 か ら の 受 注 工 事 請 負 契 約 額 [ 円 ] 職 員 1 人 当 た り 担 当 延 長 [ k m / 人 ] 県 道 ( 主 要 地 方 道 及 び 一 般 都 道 府 県 道 )

(19)

4-5 実証分析の結果 本実証分析の結果を表4-3に示す。 <表4-3 実証分析結果> 前述のとおり、本実証分析は、被説明変数である道路の品質と、表4-3に示した6つの属性を持つ、 道路施設、職員、予算、地域条件、建設業、政治的条件という説明変数である要素が正負どちらに有意 かということを明らかにするものである。 仮説1、2 に対する特徴的な点について述べる。 仮説1 については、本実証分析の結果、道路の品質は国道延長、都道府県道管理延長割合、補助事業 費にマイナスで有意であることが明らかとなった。 次に仮説2 については、本実証分析の結果、道路の品質は職員1 人あたり担当延長にプラスで有意で あることが明らかとなった。以下、実証分析に対する考察を行う。 4-6 実証分析結果に対する考察 (1)仮説 1についての考察 仮説1 は、都道府県が維持管理する道路の品質は、国道の維持管理義務発生により、低下するのでは ないか、であった。実証分析の結果、道路の品質は、国道管理延長、管理割合、補助事業費にマイナス で有意であることが示された。 この仮説に対する実証分析結果が意味するところは次のように解釈されると考える。都道府県は、本 来維持管理すべき都道府県道に加え、国道の維持管理をしなければならない。また、国道の役割とは、 都道府県境を越え広域的に移動する道路利用者の移動を支えることである。そこで、本論文では、都道 属性 係数 標準誤差 t値 有意水準 道路 国道 道路延長 [km] -0.075283 0.023755 -3.17 *** 施設 都道府県道 管理延長割合 -1.290349 0.416258 -3.10 *** 橋梁延長[km] 0.092515 0.066645 1.39 トンネル延長[km] -0.014463 0.036755 -0.39 改良率[%] 0.004273 0.002044 2.09 ** 土木職員 職員あたり道路延長[km/人] 0.048867 0.022935 2.13 ** 予算 道路橋りょう費[円] 0.353370 0.112173 3.15 *** 補助事業費[円] -0.070191 0.035197 -1.99 * 地域 人口密度(可住地1㎞2あたり) 0.131034 0.070666 1.85 * 事故件数(1kmあたり) -0.006141 0.060476 -0.10 山地割合 -0.460420 0.250065 -1.84 * 豪雪地帯ダミー -0.029202 0.047458 -0.62 降雨量ダミー -0.036632 0.046357 -0.79 建設業 建設業許可業者数[社] -0.161910 0.078419 -2.06 ** 受注工事請負契約額[円] -0.142155 0.058559 -2.43 ** 政治 有効求人倍率 -0.053006 0.037717 -1.41 建設従業者比率 1.649615 1.940658 0.85 地方自民党議員比率[%] 0.081257 0.128387 0.63 国会自民党議員比率[%] 0.250016 0.320206 0.78 歴代首相人数[人] 0.012385 0.010305 1.20 決定係数 0.696200 自由調整済み決定係数 0.462600 サンプル数 47 ***、**、* はそれぞれ、1%、5%、10%で有意であることを示す。 変数

(20)

府県は地域的に利用すされる県道の維持管理ノウハウには長けるが、広域的に利用される国道の維持管 理ノウハウを不得手であると仮定する。このため、都道府県にとっては、維持管理する国道の延長が増 加すると、県道の品質が低下する。また、国道の維持補修費の国庫補助率は1/2 であるため、都道府県 にとっては、本来投資すべき都道府県道ではなく国道の維持管理にもその予算を投入しなければならな い負担が生じることとなる。そこで、都道府県が維持管理する道路の品質は、国道の維持管理義務の発 生により低下するのではないかと考えたものである。 (2)仮説 2についての考察 仮説2 は、都道府県が維持管理する道路の 品質は、職員を追加しても向上しないのでは ないか、とした。 実 証 分 析 の 結 果 、 道 路 の 品 質 は 、 職 員 1 人あたり担当延長にプラスで有意であった。 これについては、次の 2通りの解釈ができ ると考えられる。 ひとつは、同じ道路延長に対して職員を増 やした場合に、かえって生産性の低下がみら れる場合である。これは、限界生産物逓減 の理論 9 を適用しており、道路の品質を維持 <図4-3 生産性の低下が見られる状況> するための予算を増加するにつれ、限界生産 物は減少し、生産関数の傾きは緩やかになることを示す。具体的には、また、予算が一定ならば、職員 を増やしても効果はなく、職員数が一定ならば、予算を増やしても道路の品質は上がらないと考えるも のである。 もう一つは、職員1 人あたりの規模の効率が働いている場合、である。 (3)仮説は立てていないが、実証分析より示唆されたこと 実証分析の結果、道路の品質は、建設許可業者数にマイナスで有意であることも示された。 受注工事請負契約額については、次の2 通りの解釈ができると考えられる。 ひとつは、建設業許可業者数が増えると道路の品質が低下する理由は、分割発注によるものと推察さ れる場合である。 もうひとつは、受注工事請負契約額が増えると道路の品質が低下する理由は、請負業者のノウハウや 能力を超える工事を受注してしまったことにより、品質の高い道路工事が施行できなくなる場合と解釈 される。この時、受注工事請負契約額の規模の不経済が生じていると考えられる。 (4)政治的な影響に係る変数について 政治的な影響に係る変数として、有効求人倍率、建設従業者比率、47都道府県における自民党地方議 員比率、47 都道府県における自民党国会議員比率、47 都道府県別の歴代首相人数を設定したが、有意 な結果は得られなかった。 9 N・グレゴリー・マンキュー『マンキュー経済学Ⅰミクロ編(第2 版)』東洋経済新報社 道路の品質 投入する職員数 生産性 の低下

(21)

5.おわりに

本研究では、都道府県が国道の維持管理を行うことにより、本来維持管理すべき都道府県道の品質に 与える影響について実証分析を行った。その結果、国道の延長が長いほど道路の品質が低下することや、 職員数は、限界生産物逓減や規模の経済の理論で説明される傾向が観察された。 このことから道路管理者がとるべき具体的対策としては、国道の管理延長・管理区分の見直し、組織 の適切な規模の検討であろう。 まず、国道の管理延長・管理区分の見直しについては、都道府県が維持管理する国道のうち、本来の 趣旨に近い広域的な移動に利用される道路の維持管理は国が実施し、より生活道路として利用されてい る道路の維持管理は、都道府県が実施する管理区分とする検討や、道路の利用実態を考慮しつつ、品質 を向上させる箇所を選択し、維持補修を行う等の検討みが求められる。 次に、組織の適切な規模の検討については、予算と人件費の増加は、道路の質の向上に結びつく可能 性があるが、職員数を増やしても道路の質の向上に結び付かない傾向が観察された。このため、自治体 によっては組織の規模が臨界点を迎えている可能性があるので、組織の適切な規模を検討すべきである。

謝辞

本論文の執筆にあたり、中川雅之客員教授、まちづくりプログラム ディレクター福井秀夫教授、西 脇雅人助教授、加藤一誠客員教授、安藤至大客員准教授をはじめ、まちづくりプログラム並びに知財プ ロ グラムの 関係教 員の皆様 、学生生 活にお いて苦楽 を共にし た国内 外の同級 生の皆様 から多 大なご指 導・ご支援をいただきましたことに感謝の意を申し上げます。また、昨年度、東日本大震災復興支援等 で職員が不足する中、本学で一年間もの長期間にわたり勉学をする大変貴重な機会を与えていただきま し た派遣元 北九州 市建築都 市局の林 田康孝 局長をは じめとす る上司 の皆様と 同僚の皆 様に感 謝の意を 申し上げます。最後に、妻をはじめとする家族に感謝の意を申し上げます。ありがとうございました。

参考文献

・総務省統計局『統計でみる市区町村のすがた』各年版 ・総務省統計局『日本統計年鑑』各年版 ・総務省統計局『地方公共団体定員管理関係(都道府県、指定都市、市区町村データ)』各年版 ・総務省自治行政局『衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調』各年版 ・総務省自治行政局『参議院議員通常選挙結果調』各年版 ・国土交通省道路局『道路統計年報』各年版 ・国土交通省道路局(2006)『道路の走りやすさマップ』 ・国土交通省道路局『道路交通センサス』各年版 ・社団法人日本道路協会(2004)『道路構造令の解説と運用』 ・武揚堂制作部編(2008)『スーイスイ走りやすさマップ全国版』武揚堂 ・建設調査統計研究会『建設統計要覧』各年版 ・長峯純一、片山泰輔(2001)『公共投資と道路政策』勁草書房 ・大谷江二(2009)「小規模自治体における橋梁アセットマネジメントの実施に関する研究」『平成 20 年度開発政策プログラム政策課題研究論文概要集』9-14 ・N・グレゴリー・マンキュー著 足立英之ほか訳(2005)『マンキュー経済学Ⅰミクロ編(第 2 版)』 東洋経済新報社

参照

関連したドキュメント

2 つ目の研究目的は、 SGRB の残光のスペクトル解析によってガス – ダスト比を調査し、 LGRB や典型 的な環境との比較検証を行うことで、

東京都は他の道府県とは値が離れているように見える。相関係数はこう

本文書の目的は、 Allbirds の製品におけるカーボンフットプリントの計算方法、前提条件、デー タソース、および今後の改善点の概要を提供し、より詳細な情報を共有することです。

・石川DMAT及び県内の医 療救護班の出動要請 ・国及び他の都道府県へのD MAT及び医療救護班の派 遣要請

 県民のリサイクルに対する意識の高揚や活動の定着化を図ることを目的に、「環境を守り、資源を

本研究の目的は,外部から供給されるNaCIがアルカリシリカ反応によるモルタルの

日本の生活習慣・伝統文化に触れ,日本語の理解を深める

 介護問題研究は、介護者の負担軽減を目的とし、負担 に影響する要因やストレスを追究するが、普遍的結論を