Dental Medicine Research 33(3):271 278, 2013 276
1.はじめに
お口の病気の代表的なものとして,むし歯や歯周病が あげられる.むし歯や歯周病は風邪などと違い,一度か かると薬を飲んだり,治療を行っても元の状態に戻すこ とは難しいのが現状である.しかし,むし歯や歯周病が あっても,きちんと治療を行い,常にお口の環境を良い 状態にすることで,お口の健康を保つことができる.そ のためには,自分で行うお口の清掃と清掃の習慣化が大 切である.
また,むし歯や歯周病以外にも,何らかの病気や加齢 などが原因でお口の機能が低下することがある.お口の 機能が低下すると唾液が出にくくなる,食べにくくなる,
話しにくくなるなどの症状として表れることがある.こ れらの症状を軽減し,または予防するには,お口の筋力 アップや機能を低下させないための運動を行うことが,
お口の健康を保つうえで効果的である.
2.代表的なお口の病気(むし歯,歯周病)について 代表的なお口の病気として,むし歯と歯周病があげら れる.むし歯や歯周病を早期に発見するためには,病気 について知ることとお口の中を観察し,日頃から自分の お口の中に興味を持つことが重要になる.むし歯や歯周 病が疑われる症状を以下に示す.
1)お口の病気の代表的な症状 (1)むし歯が疑われる症状 ・歯の痛み
・冷たいものがしみる ・歯の咬む面が黒い
・デンタルフロスを使用した時に糸が切れる など (2)歯周病が疑われる症状
・歯肉が赤く腫れる ・歯肉から出血する
・歯がグラグラ揺れる ・お口が臭う など
近年,全身疾患と歯周病との関係が注目されている.
糖尿病や心筋梗塞,誤嚥性肺炎などの全身疾患はお口の 中の細菌や歯周病が関係していると言われている.むし 歯や歯周病のみならず,全身疾患の予防のためにも,お 口の中を清潔に保つことが重要になる.
3.お口の健康を保つためのセルフケアについて お口の健康を保つための具体的方法を説明する.
1)お口の中を清潔にする(清掃の習慣化)
むし歯や歯周病などの原因のひとつとして,歯垢(プ ラーク)がある.この歯垢を毎日のブラッシングで確実 に除去することがお口の健康を保つために重要なことに なる.
(1)使いやすい清掃用具を選択する
清掃用具は自分の口の状態にあわせ,使いやすいも のを選択する.清掃用具は消耗品なので,頻回に交換 することで効果が保てる.目安としては,1〜2か月 で交換するとよい.
①歯ブラシ
自分の歯や口にあった大きさで,毛の硬さは軟らか めから普通で使いやすいものがよい.柄の太さも様々 あるが,持ちやすいものを選択する.また,歯ブラシ の細菌の増殖を防ぐには乾燥させることが必要であ る.ナイロンなどの水切りしやすいものがよい.
②補助用具
歯間ブラシ,デンタルフロス,タフトブラシなど様々 な種類のものがある.これらは補助的な用具なので歯 ブラシとあわせて必要なものを使用するとよい.
③義歯用ブラシ
義歯を傷つけず効率的に磨くために義歯専用の義歯 Dental Medicine Research 33(3):271 278, 2013
公開講座
お口の健康のためのセルフケア
柴 田 由 美
要旨:お口の健康とはむし歯や歯周病などの病気がない状態またはきちんと治療を行い,お口の環境が 良い状態のことをいう.むし歯や歯周病をはじめとする歯科疾患を予防するには自分で行う毎日のお口の 清掃と清掃の継続・習慣化が重要である.今回,むし歯や歯周病の症状を紹介するとともに,お口の健康 を保つための具体的方法を紹介する.
昭和大学歯科病院歯科衛生室 (2013年9月11日受理)
Jaw Pain and Trismus are Lifestyle-related Diseases !? 277 Dental Med Res. 33 Self-care for Oral Health
用ブラシを使用するとよい.
(2)清掃方法
お口の中の状態や環境によって,磨き方は異なる.汚 れが残りやすい場所を図1に示す.
①歯ブラシの使い方(図2〜5)
歯と歯肉の境目や歯と歯の間には汚れがたまりやす く,磨きにくいので歯ブラシの当て方を工夫して磨く.
②補助用具の使い方
主な補助用具(デンタルフロス,歯間ブラシ,タフ トブラシ)の使い方を図6に示す.
③義歯の清掃方法
義歯の汚れが残りやすい場所を図7に示す.義歯を 磨く時は必ずお口の中からはずして磨く.歯磨き粉は 研磨剤が入っているので,使用すると義歯に傷がつく ことがある.水または義歯専用の歯磨き粉を使って清 掃する.
清掃方法は個々のお口の中の状態により違うため,歯 科医師や歯科衛生士に確認するとよい.
2)お口の機能を保つ
お口は「呼吸をする」「食べる・飲み込む」「話す」「表 情をつくる」など,日常生活に必要な働きをしている.
何らかの病気や加齢などによりお口の機能が低下する
と,唾液が出にくくなるなどの様々な症状が表れること がある.これらの症状を軽減,または予防するには,日 常からお口の中に刺激を与えたり,動かしたりすること が大切である.
(1)お口の清掃による効果
お口に刺激を与える方法の一つとして歯ブラシなど による清掃がある.その効果は,唾液が出やすくなり お口の乾燥を軽減したり,お口の機能の向上に繋がる.
(2)お口を動かすことによる効果
お口を動かしやすくするための体操(健口体操など)
を継続して行うことも大切である.健口体操は食べる 前に準備体操として行うとよい.食べる前に行うこと で,お口の動きをよくする,唾液が出やすくなる,な どの効果がある.健口体操の具体的な方法を図8に示 す.
4.まとめ
毎日のセルフケアによるお口の清掃を継続,習慣化 し,効果的に磨くことでお口の中を清潔に保つことがで きる.その他に,お口の機能を保つために健口体操など を無理のない範囲で取り入れ,規則正しい食生活を心が けることもお口の健康に繋がる.自分で上手にできな い,磨きにくいなどは,歯科医院に受診して専門家(歯 科医師,歯科衛生士)によるクリーニングを受けること
図1 汚れが残りやすい場所
図2 歯ブラシの当て方
図7 義歯の汚れが残りやすい場所
図6 補助用具の使い方
図3 歯ブラシの当て方
図4 歯ブラシの当て方 図5 歯ブラシの当て方
M. Funato
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で,セルフケアだけでは足りないところを補うことがで きる.その場合にも,定期的に受診することで,むし歯 や歯周病などの早期発見や治療に繋がる.
参考:図はお口の健康のための情報提供用媒体として 歯科衛生室で作成したものである.
Y. Shibata
図8 健口体操