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お口の健康のためのブラッシングポイント

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Academic year: 2021

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M. Ozeki

234 Dental Med Res. 32

 お口の健康は全身の健康につながると言われている.

 日本歯科医師会が提唱し,厚生労働大臣の許可を得て 設立された,財団法人8020推進財団は,国民の積極的 な健康づくりに寄与することを目的に『8020運動』を 掲げている.『8020運動』では健康で長生きするために,

80歳で20 本以上の歯を維持する事を目標としている.

20 本以上の歯があれば,ほとんどの食べ物を噛みくだ くことができる.しっかり噛むことで,唾液の分泌も促 され,食べ物の消化・吸収もよくなり,からだの健康を 保つことができる.

 歯は食べ物をおいしく食べるには欠くことのできない ものである.

 1.歯を失う原因

 歯を失う主な原因として歯周病やう蝕があげられる.

 歯周病とは,歯周組織におけるさまざまな病態の総称 である.歯周病をおこす主な原因は,歯と歯肉の間にた まったプラークであり,このプラークの中にいる歯周病 菌が,歯肉にダメージを与え,歯を支える歯周組織を少 しずつ破壊していく.初期は腫れや痛みなどの自覚症状 がほとんどないため,気づかないうちにひどくなるケー スが多い.

 特に成人では歯周病の発症と進行が,さまざまな全身 疾患に関連していることがわかってきた.疾病の代表的 なものとして,糖尿病,心臓血管系疾患,誤嚥性肺炎,

早期低体重児出産,骨粗鬆症,自己免疫疾患(アレルギー・ リウマチ),白血病などがあげられる.

 また,う蝕とは細菌が糖を利用して酸を作り,その酸 によって歯が溶かされる細菌感染症である.初期う蝕の 段階では表面のエナメル質が脱灰された状態で症状はな い.象牙質までう蝕が進行すると痛みが出てくる.さら に進行し,う蝕が歯髄まで達すると,歯髄の炎症により 激しい痛みが発現する.神経が壊死すると,痛みは一時 的に治まる.しかし,放置すると根尖病巣ができ,感染

が拡大し,痛みがでたり,歯槽骨に悪影響を与え,抜歯 の可能性も出てくる.

 お口の健康を保つためには,歯周病やう蝕等の歯科疾 患を予防することが必要であり,そのためには,口腔内 の細菌数のコントロールが重要となる.

 2.お口の健康を保つには

 口腔内を清潔に保ち,日常生活における個々の口腔衛 生の努力,プラークのコントロールが重要となる.

 1)日常のブラッシング

 口腔内を清潔に保つ方法として,ブラッシングがある.

 誤ったブラッシングをしている場合やうがいをするだ けでは,歯に付着したプラークを除去することはできな い.正しいブラッシングを身につけ,時間をかけて磨く ことが大切である.

 2)ブラッシング回数

 食後にブラッシングを行うことの目的は,酸性に傾い た口腔内の環境を中性の状態に戻すためである.口腔内 で酸性の状態が続くと,歯の表面のエナメル質部分のカ ルシウムやリンが溶け始める“脱灰”という状態になる.

口腔内のpHが臨界pH 5.5以下になると “脱灰” がはじ まる.飲食回数が増えると酸性に傾く回数も増え,“脱灰”

が続き,う蝕(むし歯)に罹りやすくなる(図1).

 う蝕を予防するには,食後すぐにブラッシングをする ことが大切である.食後すぐにブラッシングができない 場合は,うがいをすることで酸性に傾いた口腔内環境を 中和できるため,脱灰を予防することができる.ただし,

うがいではプラークの除去はできない.そのため,正し いブラッシングをし,プラークを除去することが大切で ある.

 3.磨き残しの多い場所

 磨く際に歯ブラシを当てることが困難な部位がある.

 1)叢生部(歯と歯の重なっている所)

 歯並びが悪い叢生部は下顎前歯に多く,歯ブラシだけ

公開講座

お口の健康のためのブラッシングポイント

佐 藤 祥 子

 要旨:お口の健康を保つためには毎日のブラッシングが大切であることは知られている.口腔内には磨 きにくい場所や磨き残してしまう場所がある.歯周病やう蝕などの歯科疾患を予防し,お口の健康を保つ ための,ブラッシングポイントと使用する補助用具等を紹介し,自分でできる予防法についてお伝えする.

 昭和大学歯科病院歯科衛生士室 (2012921日受理)

Dental Medicine Research 32(3):227 236, 2012

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235 Safe and Reliable Implant Treatment in Dentistry

Dental Med Res. 32

では磨くことが困難な場合が多い(図2).

 2)歯間(歯と歯の間)

 歯間部へは,歯ブラシの毛先が届かないため,補助用 具の歯間ブラシやデンタルフロスを使用しなければ,磨 けない場所になる.

 3)犬歯と臼歯

 犬歯は他の歯より長いため,歯頸部を磨き残す傾向が ある.意識して歯ブラシの毛先を当てることが大切な部 位である.臼歯裏側は毛先の当て方が難しいため,ブラッ シングが困難な部位になる.

 特に,利き腕側は磨き残す傾向が強く注意が必要であ る.

 4.歯ブラシの当て方

 ブラッシングを行う際は,力の入れ方に注意が必要で ある.適切なブラッシング力は200〜300 g程度である.

歯ブラシの毛先が広がっている場合は力が入りすぎてい る可能性があり,歯ブラシの効果が発揮できずプラーク の除去効率が半減してしまうため,注意が必要である.

 歯ブラシの当て方は,毛先を歯頸部に当てるようにし,

1本の歯に対して10〜20回歯ブラシを小刻みに動かす ことでプラークを取り除くことができる.

 1)歯が重なっている部位(叢生部)

 歯ブラシが当てにくく磨き残しが多い部分である.歯 ブラシを縦にし,先端部分を使い磨く.歯ブラシの毛先 を当てることが困難な場合は,タフトブラシ,デンタル フロス(補助用具)を併用する(図2).

 2)歯が外側に出ている部位

 歯ブラシを縦にし,歯の側面に毛先が当たるように磨

く(図3).

 3)歯が内側に入っている部位

 横に動かすだけでは届かない部分である.歯ブラシの 先端部分を挿入し磨く.この際も歯ブラシの毛先が届か ない場合はタフトブラシを使用する(図4).

 5.補助用具について

 歯間等,歯ブラシの届かない部分へは補助用具といわ れるタフトブラシ・デンタルフロス・歯間ブラシを使用 する必要がある(図5).

 1)タフトブラシ

 歯ブラシの毛先が届かない叢生部分や,最後臼歯の遠 心部,小窩裂溝などに使用する.

 2)デンタルフロス(糸ようじ)

 歯ブラシの届かない歯間部のプラークを除去するため に使用する.歯間部に食べ物が挟まったときなどにも使 用する.

 3)歯間ブラシ

 歯間部の歯肉が下がった所に使用する.歯間ブラシに はサイズがあり,無理な挿入や,中心部の金属で傷つけ ないように注意が必要である.自分に合ったサイズを選 択することが重要である.歯間部の歯肉は弱く,腫れや すいため,補助用具を使うことは歯ブラシと同じぐらい 重要になる.

 以上のことから,ブラッシングを効果的に行うために Proper Methods Brushing

図 1

図 2

図 4 図 3

(3)

M. Ozeki

236 Dental Med Res. 32

は,個々の口腔内に合わせた磨き方や補助用具の選択が 必要となる.

 6.入れ歯の取り扱いについて 

 入れ歯も歯と同様毎日使うため,汚れがたまる.細菌 等の繁殖にもつながるため,毎日のお手入れが大切であ る.

 1)入れ歯に汚れが残りやすい部分

 人工歯の歯と歯の間,頬側,舌側,裏側,クラスプ部 に汚れが残りやすい.また,入れ歯を支えている歯(ク ラスプをかける歯)にも汚れが残りやすいため,磨き忘 れがないように注意が必要である(図6).

 2)入れ歯の清掃用具と方法  ①義歯ブラシ(入れ歯専用ブラシ)

 入れ歯には専用の義歯ブラシを使用し,汚れを落す(図7).

 ②義歯用歯磨剤(義歯専用歯磨き粉)

 義歯は傷つきやすく,一度傷がつくと傷がついた部分 に細菌が入り込み,細菌の繁殖や口臭の原因になる.義 歯専用の歯磨剤は傷が付かず,細菌の繁殖を防ぎ,効率

良く汚れを除去することができる.

 *歯を磨くための歯磨き粉には,研磨剤が含まれてお り,入れ歯を傷つけるため,使用しない.

 ③義歯洗浄剤(入れ歯洗浄剤)

 義歯洗浄剤は使用する前に,あらかじめ義歯の汚れを 落としておくことで効果を発揮するため,義歯を磨いた 後に使用することが望ましい.

 入れ歯の材質により洗浄剤が違うので材質に合わせて 選択する.

 使用回数等は,取り扱い説明書を確認し,不明な点は 歯科医師や歯科衛生士に聞くことが望ましい(図7).

 7.お口の健康づくり

 健康づくりには適度な運動が必要である.

 お口の健康を保つ体操として『健口体操』がある.首 や肩を動かす簡単なストレッチから始め,頬を膨らませ たり,「イー・ウー」と唇を横,縦に動かす運動や,舌 を伸ばす運動を行うことで,口唇や舌,頬の筋力の低下 を防止し,唾液の分泌を促進する.

 おわりに

 健康で長生きするために80歳で20本以上の歯を維持 することを目的としている『8020運動』を達成するには,

毎日の口腔ケアが重要なポイントとなる.お口の健康を 維持することが,全身の健康の維持に繋がるのである.

そのためには毎日のブラッシングに加え,健口体操やス トレッチなどでお口の機能低下を予防し,食べ物をおい しく食べられる状態にしておくことが重要である.

*図は歯科衛生室で患者教育のために作成したものであ る.

1

図 7 図 5

図 6

S. Sato

参照

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