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普及型口腔ケアプログラムの開発および在宅療養における口腔ケア自己管理行動の定着を促進する研究

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(1)公益財団法人在宅医療助成 勇美記念財団 2014 年度後期 報告書. 研究テーマ 普及型口腔ケアプログラムの開発および在宅療養に おける口腔ケア自己管理行動の定着を促進する研究. 研究代表者. 板倉朋世. 所属・職名:獨協医科大学. 看護学部. 准教授. 栃木県下都賀郡壬生町大字北小林 880 共同研究者:森川純子(獨協医科大学病院看護部・ 獨協医科大学大学院看護学研究科) 2016 年 3 月 31 日提出.

(2) 目次 1.はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1-1.研究背景・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1-2.研究の意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1-3.研究目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 1-4.研究枠組み・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 1-5.用語の定義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3 2.研究方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2-1.普及型口腔ケアプログラムの開発と周術期患者への適用による口腔内評価・・4 1)調査対象・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 2)対象患者の選定方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4 3)研究期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 4)介入内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 5)調査方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5 6)分析方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 2-2.在宅療養における口腔ケア自己管理行動の実態と定着性に関する調査・・・・7 1)調査対象者と介入方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 2)調査期間・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7 3.倫理的配慮・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 4.結果および考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 4-1.普及型口腔ケアプログラムの開発と周術期患者への適用による口腔内評価・・8 1)対象者の選定と調整・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8 2)介入の実際・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9 3)対象者の介入時の属性および退院時の属性・・・・・・・・・・・・・・・14 4)客観的評価指標の比較・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20 4-2.在宅療養における口腔ケア自己管理行動の実態と定着性に関する調査・・・23 1)調査対象者の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・23 2)交流会の実施内容・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24 3)交流会参加者の口腔内評価と受講に対する反応・・・・・・・・・・・・・24 4)口腔乾燥の自覚症状および口腔ケア自己管理行動の実態・・・・・・・・・25 5.まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・27 6.感想・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28 引用文献・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29 資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30.

(3) 1. はじめに 1-1.研究背景 近年、歯周病と全身疾患との関連性が報告されるようになり、免疫力が低下する前から の適切な歯周病ケアの必要性が示されている。日本人成人の 8 割が歯周病に罹患している が、歯間ブラシの使用や歯垢除去を意図したブラッシングが十分ではないという報告があ る(藤井,2013)。また、日本人の死因第 4 位である肺炎の 92%は高齢者であり、中でも、誤 嚥性肺炎の割合が高い。口腔内には多数の細菌が常在し、誤嚥性肺炎の起炎菌となってお り、口腔内の保清対策として口腔ケアが広く認知されるようになってきた。さらに、死因 第1位の悪性新生物に対して行われる手術や放射線療法、化学療法などに際しても、口腔 内の保清が予後や合併症発生に影響を与えると報告されており、国を挙げての幅広い取組 みが行われている。その一つとして平成 24 年度診療報酬改定では、術後の誤嚥性肺炎等の 合併症等の軽減を目的として、歯科医師による周術期口腔機能管理料が算定できるように なった。しかしながら、全国の病院の中で歯科を標榜しているのは約 15%に留まり、入院 患者の多くは院内での専門的な歯科治療や口腔管理(以後、専門的口腔ケア)を受けられ ないのが現状である(角,2013) 。そこで私たち看護職が実施する口腔ケアでも、専門的口腔 ケアと同等の効果が得られるケアが提供できるような普及型口腔ケアプログラムを実践し、 それを実証するのが喫緊の課題と考える。 口腔ケアの重要性を認識しながらも看護ケアとしての優先度が低いという報告があるよ うに(横塚,2012)、現在、看護師らが実施している口腔ケアは、重症患者や日常生活援助が 必要な患者に対しての援助に集中する傾向となっている。そのため、ADL が自立した患者 では、ケアの実際を患者に任せてしまう状況であり、適切な口腔内評価や指導が行われて いないのが実状である。その結果、絶飲食期間中の患者の口腔内を観察すると顕著な乾燥 が認められ、口腔内細菌が増殖しやすい環境を呈しているのが散見される。舌のリラクゼ ーションでは全身的なリラックスができ、唾液分泌が増加し抗酸化力が増加する。また、 口周囲のリラクゼーションでは免疫活性が賦活化される可能性も示唆されている(松 本,2012) 。さらに、唾液腺マッサージは唾液分泌を促進し、口腔乾燥の軽減、自浄作用を保 つ効果があるので、口腔リラクゼーションと唾液腺マッサージを取入れた口腔ケアや、短 時間で歯垢の除去ができる方法として効果が認められている電動歯ブラシを用いた 5 分間 口腔ケア方法(角,2012)に、歯間ブラシを用いたブラッシングを加えると専門的口腔ケア と同等の効果が得られるのではないかと仮定した。これらの方法は、入院期間中は看護師 により実践が可能であるが、退院後も病状の悪化や合併症の発生を防ぎ、QOL の維持・向 上を目指した在宅療養が継続できるような行動変容に繋げる必要がある。そこで、実際の 手技の習得とその必要性や継続の重要性についての指導を含めたプログラムを、普及型口 腔ケアプログラムと定義し本研究に取り組む。. 1.

(4) 1-2.研究の意義 歯周病は狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などの発症に関与すると報告されている。 現在、日本人成人の約 8 割が歯周病に罹患していると言われており、日常生活の中でも適 切な口腔ケアが必要とされている。免疫力が低下した入院中の患者や、手術や化学療法等 を予定している患者においては、口腔ケアの重要性はさらに高まる。しかしながら、口腔 ケア=歯磨きは、健康人なら誰しもが自分自身で管理・実施してきた行為であるために、 入院中であっても ADL が自立している患者では、出来ているのが当然と考えられがちであ る。そのため、一旦、治療に関連した安静が解除されると、そのケアは患者自身の管理下 におかれ、看護師による観察の目から切り離されたものとなってしまう傾向にある。本来 ならば、手術や化学療法などのストレスに晒されて免疫力の落ちているときにこそ、適切 な口腔ケアの提供が担保されるべきである。 平成 24 年度診療報酬改定で算定可能となった歯科医師による周術期口腔機能管理料は、 これらの管理を必要とされている患者のうちの極僅かな者しか提供が受けられない。そこ で、口腔リラクゼーションと唾液腺マッサージ、短時間で歯垢除去ができる電動歯ブラシ と歯間ブラシを用いたブラッシング方法を統合して実践する普及型口腔ケアプログラムの 実践により、専門的口腔ケアと同等の効果が得られるものと考える。他の医療施設におい て本プログラムが導入できれば、歯科医師による専門的口腔ケアを受けられない多くの患 者も、必要とされる口腔ケアが受けられ、入院中の合併症の予防が一段と効果的になると 確信する。さらに、患者自身が退院後も、これらのケアを継続して実践していけるように 行動変容を促すことで、在宅療養における QOL の維持・向上に寄与できる。また、地域で 生活する高齢者に対しても、健康教室等を通じて、口腔ケア自己管理行動がとれるように していけば、健康の維持・増進への寄与も可能となり、ひいては、医療費の抑制に貢献で きるものと考える。 1-3.研究目的 本研究の目的は以下の 2 点である。 1) 周術期患者の入院から退院までの期間に本プログラムを実践し、普及型口腔ケアが 専門的口腔ケアと同等の効果が得られることを明らかにする。 2) また、本プログラムの実践過程の中で行われる患者指導により、患者自らが口腔内 の管理に関心を持ち、退院後も継続していけるような行動変容に繋がることを明ら かにする。. 2.

(5) 1-4.研究枠組み 普及型口腔ケアの指導と実施. 本研究の枠組み. 効果的な歯垢除去方法の習得 音波ブラシを用いたブラッシング 歯間ブラシの使用 効果的なうがい方法. <仮説> 普及型口腔ケアが専門型口腔ケアと同等の効果が得られる。. 口腔乾燥を防ぐための唾液の分泌を促すケアの習得. 普及型口腔ケア群. 口腔リラクセーションと唾液腺マッサージ 口腔保健行動に対する行動変容. 看護師が行う口腔ケア 普及型口腔ケアとは、唾液分泌を促す マッサージや嚥下運動、電動歯ブラシと歯間ブラシ によるブラッシング、洗浄効果を高める含漱法を統合した口腔 ケア方法 研究者が普及型口腔ケアプログラムの指導を行い、病棟看護 師が実践状況の確認を行う。. 口腔内の評価を患者自身ができる 口腔ケアの重要性が理解でき継続ができる. <評価> 歯科が評価する口腔環境の差 客観的評価指標のアセスメントの点数 口腔乾燥、口臭の数値の差 患者の口腔保健行動に対する 自己効力感の尺度による確認 <分析方法> 普及群・専門群の2群間の比較. 専門型口腔ケア群 歯科医師・歯科衛生士が行う口腔ケア(治療が必要な場合は 行う) 術前に外科医から依頼のあった患者をプロフェッショナルケ アとしてプラークフリーの状態にする方法。 術後のケアは標 準的な歯磨き、保湿を行うように患者に説明があり、病棟看 護師が実施状況の確認を行う。. 口腔内細菌叢による術後感染症などの合併症予防 患者の不快症状を緩和しQOLを向上させることが 期待できる. 図1.本研究の枠組み 1-5.用語の定義 口腔ケアとは:口腔の疾病予防、健康保持・増進、リハビリテーションにより QOL の向上 をめざした科学であり技術である。具体的には、検診、口腔清掃、義歯の着脱と手入れ、 咀嚼・摂食・嚥下のリハビリ、歯肉・頬部のマッサージ、食事の介護、口臭の除去、口腔 乾燥予防などがある (日本口腔ケア学会,2008)。 普及型口腔ケア:唾液分泌を促すマッサージと嚥下運動、口腔リラクセーション、電動歯 ブラシと歯間ブラシによるブラッシング、舌ケア、洗浄効果を高める含漱法、口腔内の保 湿方法を統合した口腔ケア方法の指導を行う。指導後、病棟看護師による指導の継続、評 価のもと患者自身が継続して実施する。 専門型口腔ケア:主科の医師が全身状態、歯周病やう歯の程度をみてケアが必要と判断し た場合に依頼する。口腔内の歯垢除去(スケーリング)が主であるが、歯科治療を施す場合も ある。口腔ケア外来受診後は、病棟看護師による指導、評価のもと患者自身が維持ケアを行う。 客観的評価:細菌レベル、口腔水分量、口臭を測定するための器具を用いて評価する。 口腔内の評価には Eilers 口腔アセスメント指標を用いた評価を専門群では、歯科医師、歯科衛 生士および病棟看護師が、普及群では、研究者および病棟看護師が行う。質問紙での回答は、 口腔乾燥自覚症状の問診表、口腔保健行動尺度の質問紙を用いて評価する。 3.

(6) 2.研究方法 2-1.普及型口腔ケアプログラムの開発と周術期患者への適用による口腔内評価 1)調査対象 調査対象者は、周術期消化器外科の患者で、胃がん・大腸がんの手術を受ける患者とす る。 2)対象患者の選定方法 (1) 対象者の選択基準 専門型口腔ケアは、主科の医師が患者の全身状態および歯周病やう歯の程度を観察し、 歯科受診が必要と判断した場合に歯科に依頼している。本研究では、それらの患者のうち、 胃がん、大腸がんの患者で研究協力の同意が得られた患者を対象とする。本来、専門型口 腔ケアである周術期口腔ケアは、手術の約 2 週間前からの受診が望ましいとされているが、 現実的には術前 1~2 日前に受診することが多い。本研究の対象者も術前 1~2 日に受診し ている患者が対象となる。 普及型口腔ケアの対象は、専門型口腔ケアの依頼がなかった患者のうち、胃がん、大腸 がんの患者で研究協力の同意が得られた患者を対象とする。 適応基準を以下のように設定した。 ①年齢 40~80 歳の者 ②性別は男性、女性とする ③胃がん、大腸がんで手術を受ける者とし、術式は、開腹術、腹腔鏡下術どちらも含む ④意識レベルは清明で、自力で口腔ケアができる者 ⑤術後 2~3 日目で歩行が可能となる者、または、座位で口腔ケアができる者 また、除外基準を以下のように設定した。 ①総義歯で自分の歯がない者 ②自分で口腔ケアができない者 ③嚥下障害のある者 ④術後、病状の変化により医師の許可が得られない者 (2)研究協力依頼の手順 本研究の協力依頼は以下の手順でおこなう。 対象病院の施設長に研究協力を依頼し、同意を得た後に、看護部長、対象者の診療科の 科長、関連病棟・外来の看護師長および看護師に研究協力を依頼する。 胃がん、大腸がん患者で手術適応者が発生した場合に、外来看護師または、対象患者の 入院先の病棟看護師から研究者に連絡をしてもらうようにする。連絡を受けた研究者は、 対象者のもとに出向き、文書と口頭で研究協力についての説明を行い、同意が得られた場 合は同意書への署名を得る。. 4.

(7) 3) 研究期間 介入期間は平成 27 年 6 月~10 月とする。 4)介入内容 (1)普及型口腔ケアプログラムを受ける群(普及群)では、手術決定後から口腔ケア方 法のパンフレットを用いて研究者が指導を行う。正しい口腔ケアの手技を習得してもら い、その後は、対象者自身が継続して普及型口腔ケアプログラムを実践する。介入前の 術前、介入後の術後 2~3 日目、退院前に次項に示す客観的評価を行うが、日々の口腔内 アセスメントは対象者の入院している病棟看護師が実施し、結果をアセスメントシート へ記録する。 (2)専門型口腔ケアを受ける群(専門群)は、手術前に歯科医師の診察と処置および歯 科衛生士によるケアを受ける。処置の内容は対象者の口腔内の状態に応じて、歯科医師 が判断する。その後は、対象者自身に標準的に行われている歯磨きとスポンジブラシに よるケアおよび、口腔保湿の口腔ケアを実践してもらう。評価の時期と評価内容は普及 群と同様である。 5)調査方法 (1)質問紙による調査 ① 口腔保健行動に対する自己効力感測定尺度(Self-efficacy scale for oral health behavior SEOH) SEOH は、う歯・歯周病予防などの口腔保健行動に関する患者の心理・行動を評価す るために、予め歯科臨床において着目すべき自己効力感を測定できる尺度である(五 月女,2009)。ブラッシング行動に対する自己効力感・生活習慣に対する自己効力感・ 心理的統制に対する自己効力感・健診行動に対する自己効力感の 4 因子からなり下 位項目 25 項目から構成されている。 評価指標は 5.そう思う~1.そう思わない の 5 件法が用いられており、得点の高い 人ほど口腔保健活動について自己効力感が高いと評価される。 本アンケートは、手術が決定し研究協力が得られた直後に実施する。 ② 口腔乾燥の自覚症状に対する問診表 長寿科学総合研究事業が行った「高齢者の口腔乾燥症と唾液物性に関する研究」で 用いられた問診表で 12 項目からなる。評価指標は 0.なし、1.少しある、2.ある の 3 件法が用いられている。本アンケートも①と同様に、手術が決定し研究協力が得ら れた直後に実施する。 回収方法は、①②ともに調査票に記入後、封筒に入れ封をした状態にして、病棟看 護師に手渡しで提出してもらう。その後、研究者が病棟ラウンドをした時に受け取 る。 5.

(8) (2)歯科医師・歯科衛生士による口腔環境調査(う歯、歯周病ポケットなど) 専門群、普及群の両群に対して術前に Grade1~5 段階で評価する。 Grade1 は事前の歯科受診により問題がない状態であり、Grade2~4 はう歯、根尖性歯周 炎、抜歯適応歯があり、歯周ポケットが 3mm 以上の状態である。Grade5 は無顎歯の状 態を示す。 (3)術前、術後、退院前に行う客観的評価と Eilers 口腔アセスメント 客観的評価では、資料 1-3 に示す、細菌レベル、口腔水分量、口臭の測定を行う。普 及群の評価は研究者が介入時に行い、専門群の評価は、対象者が歯科受診した時に、 歯科医師または歯科衛生士が行う。術後と退院前の評価時間は、歯科外来受診の時間 に合わせて 14 時前後に行うこととする。 Eilers 口腔アセスメントは、病棟看護師が日々の口腔ケア実施後に評価し記録する。 ① 口腔内の細菌数測定 細菌カウンタ(パナソニックヘルスケア DU-AA01NP-H)を使用して細菌数のレベを 測定する。測定部位は歯頸部・舌・舌下の 3 部位とする。 細菌カウンタは口腔内から採取した唾液に含まれる細菌数を測定するものである。 誘電泳動インピーダンス計測により電気力で液体の細菌をトラップして、センサー チップの電気量の変化から液体中の細菌総数を定量検出できるようになっている。 一般的な細菌検出技術である培養法による測定結果と高い相関が認められている。 細菌数はレベルで表示され、レベル 1 は細菌数が 10 万個未満、レベル 2 は 10 万個 ~100 万個、レベル 3 は 100 万個~316 万個、レベル 4 は 316 万個~1000 万個、レベ ル 5 は 1000 万個~3160 万個、レベル 6 は 3160 万個~1 億個、レベル 7 は 1 億個以 上として示す。 ② 口腔水分量 口腔乾燥の評価のために口腔水分量を口腔水分計(ムーカス®専用センサー)を使用 して測定する。測定部位は舌背中央部とする。 口腔内の決められた部分を 3 回測定し平均値を測定値とする。 測定時の圧力に左右されやすいので 200g の適切な圧で測定する。 水分量は、30 以上が正常範囲であり乾燥なしと評価する。29~30 は境界値、27~29 は軽度乾燥、25~27 は中程度乾燥、25 以下は重度乾燥と評価する。 ③ 口臭測定 口臭測定器(タニタブレスチェッカー)を使用する。 息を吹きかけて使用する簡易な測定器である。内臓された半導体ガスセンサーが口 臭の原因となっている揮発性硫化物(VSC)である硫化水素やメチルメルカプタンな どの濃度を検出し、口臭レベルを 6 段階に評価する。0 は口臭なし、から 6 までの段 階で強度を示す。 ④ J.Eilres 口腔内アセスメント票(口腔内全体の評価) 6.

(9) 声・嚥下・口唇・舌・唾液・粘膜・歯周・歯と義歯の 8 項目からなるスコア票を使 用して、口腔内全体の評価を行う。 各項目は、スコア 1 は正常、スコア 2 は部分的に問題あり、スコア 3 は問題ありの 3 段階で評価する。両群とも、Eilres 口腔内アセスメントは、病棟看護師の協力を得て 毎日行い Eilres 口腔内アセスメント評価票に記載してもらう。 6)分析方法 普及群、専門群の 2 群の基本統計量を求める。介入時の対象者の属性および退院時の属 性に対しては、年齢、在院日数、歯磨きの回数について t 検定を行う。また、性別、疾患、 術式、口腔環境調査、義歯の有無、ケアに使用する物品については、χ2検定を行う。口腔 保健行動に対する自己効力感測定尺度に対しては、ブラッシング行動、生活習慣、心理統 制、健診行動の 4 因子ごとに合計点を求め t 検定を行う。 客観的評価の細菌レベル、口腔内水分量、口臭については術前、術後、退院前の 3 時期 に測定したデータを 2 群間で t 検定を行う。また、各群の 3 時期を術後 VS 術前、退院前 VS 術前で比較し、対応のある t 検定を行う。 さらに、細菌数レベルの歯頸部、舌、舌下、口腔水分量、口臭については、交絡因子の 影響を確認するため、属性の性別、年齢、病名、術式、在院日数および術前の測定結果を 調整した共分散分析を行い、術後と退院前の 2 群の比較を行う。 Eilres 口腔アセスメント評価は、術前、術後、退院前の 3 時期に評価した結果を 2 群間で 2. χ 検定を行い、各群の 3 時期を術後 VS 術前、退院前 VS 術前で比較し、対応のある比率の 差 McNemar 検定を行う。 分析には統計ソフト IBM SPSS Statistics Version 23 for Windows を用い、すべての分析で有 意確率を 5%とする。. 2-2.在宅療養における口腔ケア自己管理行動の実態と定着性に関する調査 1)調査対象者と介入方法 (1)研究内容2-1の対象者のうち在宅療養を継続している者を対象に、退院後 6 か月 を目安に、調査票を郵送し回答してもらう。 (2)自宅で生活する 65 歳以上の高齢者で自分自身の歯が残っている者を対象に、研究者 らが主催する「健康づくり活動交流会-口腔ケア」講座を受講してもらい、口腔ケア自 己管理行動に関する評価を行う。講座受講 1 カ月後に、調査票を郵送し再評価する。 評価は、口腔保健行動に対する自己効力感測定尺度(SEOH)と口腔乾燥の自覚症状に 対する問診表を用いて行う。 2)調査期間:2016 年 2 月~3 月とする。 7.

(10) 3.倫理的配慮 本研究のうち 2-1 に関しては、獨協医科大学看護研究倫理審査委員会(受付番号:看護 26018)の承認を得て実施した。 普及型口腔ケアプログラムの実施に際しては、医師の許可を得て、誤嚥のないことを確 認して安全に実施する。毎日行うケアや定期的に介入する評価時は、対象者が訪室による 負担を感じないよう、休息したいときには時間をずらして介入するように配慮する。また、 体調の変化や研究参加に対する意欲がなくなり中止することがあっても、不利益を被るこ とがないことを説明する。 口腔内の観察を行う場合には、口腔ケアと合併症について十分な説明を行い、実施時は、 患者の羞恥心に配慮し、周囲に他者がいないことを確認し、カーテンなどで周囲から見え ない環境で行う。また、口臭測定を行う時は、測定値が高くなったとしても、さまざまな 要因で起きていることを説明し気にし過ぎないよう説明する。普及型口腔ケアを継続して いくことで軽減することも説明し、患者の尊厳を損なわないようにする。 本研究で使用する物品(音波歯ブラシ、歯間ブラシ、スポンジブラシ、口腔化粧品など) の安全性については、現在、病院内で使用されているものであるとともに、日常的に使用 されているもので身体に危険のないことを説明する。質問紙への回答は 5 分程度の時間を 要することを説明する。 研究 2‐2 に関しては、「健康づくり活動交流会-口腔ケア」講座受講者に対して、個人 情報の保護、研究協力は自由意思に基づくものであり、いつでも辞退可能であることを説 明し、同意を得てから実施した。. 4.結果および考察 4-1.普及型口腔ケアプログラムの開発と周術期患者への適用による口腔内評価 1)対象者の選定と調整 研究対象者選定のための調整を図った研究の流れを図 2 に示した。研究期間内の胃がん 手術患者、大腸がん手術患者は 120 名であった。本研究の除外基準とした総義歯で自分の 歯がない。自分で口腔ケアができない、嚥下ができない、術後病状の変化により医師の許 可が得られない患者を除外し、同意が得られたのは普及群 14 名、専門群 26 名であった。 歯科医師による口腔内のアセスメントにより、普及群の除外対象者は、Grade5 である総義 歯にあたる総インプラントの者 1 名、術前の口腔内アセスメント評価が未実施の者 1 名の 計 2 名を除外した。専門群では、Grade4 であるう歯、根尖性歯周炎、歯周病が重度などで 歯科処置を要する者 3 名を除外した。また介入後に、専門群で、術後 2 回の口腔ケア外来 受診が出来ず、口腔の客観的評価を 3 回できなかった者 11 名を除外した。 その結果、各群ともに、口腔内評価 Grade2~3 である 1~2 本のう歯または根尖病巣を認 めるが炎症を起こしていない、中程度歯周病 P1~2 程度、補綴の清掃性がやや不良レベルの 8.

(11) 者を対象普及群 12 名、専門群 12 名として調整を行った。. 平成27年6月-10月 消化器外科胃がん大腸がん手術を予定する入院患者 (N120) 除外 認知症、自分で口腔ケアがで きない、嚥下ができない、同 意が得られない. 対象入院患者(n=40). 普及型口腔ケア群(n=14). 専門型口腔ケア群(n=26名). 術前評価 ①歯科医師口腔内アセスメント(Grade1~5)の評価 ②客観的口腔内評価 (細菌数レベル、口腔水分量、口臭) ③口腔乾燥の自覚症状、口腔保健行動の自己効力感 ④Eilers口腔アセスメント評価と指導. 術 前. 除外(N=2) Grade5 総インプラン ト1名、術前アセスメ ント未実施1名. 除外(N=14) Grade4 3名、 客観的評価2回未 満 11名. 普及型口腔ケア群(n=12) 看護師が行う口腔ケア ①ブラッシング (音波歯、歯間、舌ブラシ) ②含漱法(30秒間含嗽) ③口腔リラクセーション ④唾液線マッサージ ⑤嚥下運動 ⑤Eilers口腔アセスメント 評価と指導. 専門型口腔ケア群(n=12名). 歯科医師・歯科衛生士が行 う口腔ケア プロフェッショナルケアと してプラークフリーの状態 にする方法 病棟でのケアは標準的な歯 磨き、保湿を行うように看 護師が説明する。. 術 後. 術後評価 ②客観的口腔内評価 (細菌数レベル、口腔水分量、口臭) ④Eilers口腔アセスメント評価と指導. 退 院 前. 退院前評価 ②客観的口腔内評価 (細菌数レベル、口腔水分量、口臭) ④Eilers口腔アセスメント評価と指導. 図1 研究の流れ. 図2研究対象者の調整. 9.

(12) 2)介入の実際 図 3 に示した研究行程に基づき、普及型口腔ケアプログラムとして、鏡を用いた口腔内 の観察方法、音波歯ブラシの使用方法、歯の磨き方、舌ケアを行う方法、スポンジブラシ の使い方、含嗽剤やリキッドタイプの保湿剤で湿らせて使用するケア方法、口腔内の汚染 物を十分に取り除くためのうがい方法、さらに、唾液腺マッサージと口腔リラクセーショ ン方法の指導を行った。特に舌ケアについては、日常的に行われていないケアであるため、 舌苔のケアで最もしてはいけないことは過度に行うこと、舌後方部へのケアは嘔吐反射や 嚥下反射を誘発し、誤嚥事故や不快症状を引き起こすことになるので注意が必要であるこ と、表面を軽く擦り、回数は 30 回以内とするなどの注意事項を説明に加えた。指導用リー フレットはその一部を抜粋し巻末に記した。 質問紙の回答依頼は、口腔乾燥度の自覚症状(図 4) 、口腔保健行動における自己効力感 (図 5)を使用した。評価方法は、客観的評価指標として、細菌レベル、口腔水分量、口臭 の測定は介入時と術後 2~3 日および退院時に研究者が行った。Eilers 口腔アセスメント(図 6)については病棟看護師に依頼して毎日評価を行なった。8 項目の評価に加えて表 1 に示 したアセスメント記載欄に観察後のアセスメントを記入してもらった。. 消化器外科周術期患者への普及型口腔ケアの研究行程 普及型口腔ケアプログラムの説明と同意は外来・入院の対象者に実施する 評価日 介入時期. 術前時. 介入:プログラムの実施. 退院前日の最終確認. 口腔ケアの重要性・効果的な方法・口腔内評価の説明 嚥下の確認・口腔リラクセーション・唾液腺マッサージ うがい(30秒)の方法 歯磨き(音波歯ブラシ)・歯間ブラシを用いた方法 舌ケアの方法・口腔乾燥に対するケア方法. 普及型口腔ケア. 評価方法. 退院時. 術後2~3日. 実施状況の確認・修正. 1)質問紙による調査 ①口腔保健行動に対する自己効力感測定 尺度(SEOH) ②口腔乾燥自覚評価法 2)歯科医師・歯科衛生士による口腔環境調 査(う歯、義歯、歯周病ポケットなど) 3)客観的評価指標 ①口腔細菌数:細菌カウンター ②口腔乾燥:口腔水分計ムーカス(R) 専用センサーで3回測定 平均値を測定値 ③口臭測定:口臭測定器を使用 (フレッシュキッス) 口臭レベルを4段階評価 ④口腔内の評価:Eilres.J口腔内アセスメント 8項目3段階評価. 3)客観的評価指標 ①口腔細菌数:細菌カウンター ②口腔乾燥:口腔水分計ムーカス(R) 専用センサーで3回測定 平均値を測定値 ③口臭測定:口臭測定器を使用 (フレッシュキッス) 口臭レベルを4段階評価 ④口腔内の評価:Eilres.J口腔内アセスメント 8項目3段階評価. 3)客観的評価指標 ①口腔細菌数:細菌カウンター ②口腔乾燥:口腔水分計ムーカス(R) 専用センサーで3回測定 平均値を測定値 ③口臭測定:口臭測定器を使用 (フレッシュキッス) 口臭レベルを4段階評価 ④口腔内の評価:Eilres.J口腔内アセスメント 8項目3段階評価. 術後感染兆候の有無. 専門的口腔ケア. (プロフェッショナルケアを術前に行うことで、歯垢が落としやすくなるため、その後は標準的な口腔ケアを 続けて維持ケアを行う) 歯ブラシによるブラッシング・マウスウォッシュを使用しスポンジを用いた口腔内の保湿ケア. 図3.普及型口腔ケアの研究行程. 10. 毎日確認チェック して頂く項目.

(13) 口腔保健行動に関するアンケート ID. 5段階の評価からお選びください。 (1.そう思う 2. まあまあそう思う 3. どちらともいえない 4.あまりそう思わない 5.そう思わない). 1 歯と歯ぐきの境目に毛先を当てていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 2 指導された方法で歯を磨いていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 3 工夫しながら歯を磨いていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 4 細かく歯ブラシを動かしていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 5 むし歯予防に必要なアドバイスは聞き入れて行いますか. 1. 2. 3. 4. 5. 6 歯周病予防に必要なアドバイスは聞き入れて行いますか. 1. 2. 3. 4. 5. 7 すみずみまできれいに磨いていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 8 鏡を見ながら歯を磨いていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 9 朝食は毎日欠かさないようにしていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 10 どんなに忙しくても歯を磨いていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 11 決まった時間に食事するようにしていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 12 眠たくても歯を磨いていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 13 毎食後歯を磨いていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 14 野菜を毎日食べていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 15 学校や職場でも歯を磨きますか. 1. 2. 3. 4. 5. 16 就寝直前の飲食を控えるようにしていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 17 口や歯のことでいやな気持ちになってもすぐ立ち直れますか. 1. 2. 3. 4. 5. 18 口や歯の問題があっても前向きに生活していくことができますか. 1. 2. 3. 4. 5. 19 口や歯の問題についてくよくよしないでいることができますか. 1. 2. 3. 4. 5. 20 自分を客観的に見つめることができますか. 1. 2. 3. 4. 5. 21 自分の感情のコントロールができますか. 1. 2. 3. 4. 5. 22 仕事や家事などで忙しくても定期健診を受けていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 23 むし歯予防のために定期的に通院していますか. 1. 2. 3. 4. 5. 24 心に余裕のない時でも定期健診を受けていますか. 1. 2. 3. 4. 5. 25 歯周病予防のために定期的に通院していますか. 1. 2. 3. 4. 5. 図4.口腔保健行動に関するアンケート 11.

(14) 口腔乾燥の自覚症状に対する問診表 以下の質問を読み、あてはまる回答番号に○を付けてください。. 1 口の中が乾く、カラカラする. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 2 水をよく飲む、いつも持参している. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 3 夜間に起きて水を飲む. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 4 クラッカーなど乾いた食品が噛みにくい. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 5 食物が飲み込みにくい. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 6 口の中がネバネバする、話しにくい. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 7 味がおかしい. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 8 口で息をする(寝るときも含む). 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 9 口臭が気になるといわれる. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 10 目が乾きやすい. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 11 汗をかきやすい. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. 12 義歯で傷つきやすい. 0. ない. 1 時々・ 少し. 2. ある. お口のケアに関しての質問 1 歯磨きの回数 1回(朝 昼 夜) . 2回 (朝と昼 朝と夜 昼と夜) . 3回(朝と昼と夜). 3回以上. 2 お口のケアに使用するもの(複数回答が可能です) 歯ブラシ その他( . デンタルフロス ). 歯間ブラシ . 舌ブラシ. 3 お口の渇きに対して何か対応していることはありますか? 1.口腔保湿剤の使用 2. お茶などによるうがい 3.ジェル様の保湿剤の使用 4.お口の体操. 図5.口腔乾燥に対する自覚症状問診表 12.

(15) 図6.Eilers 口腔アセスメント. Elier.Jの口腔アセスメント指標 項目. 声. 嚥下. 口唇. 舌. 唾液. 粘膜. 歯周. 歯と 義歯. アセスメント方法. スコア. /. 状 態. 聴く. 1. 普通. 患者と会話し、耳を傾ける. 2. 低い、または、しわがれ声。. 3. 会話が困難、または痛みを伴う。. 観察. 1. 正常な嚥下。. 患者に飲み込むようにお願いする。. 2. 嚥下時に、わずかな痛みを伴う。. 咽頭反射テストのため、舌の奥の方に優 しく舌圧子を押し当てる. 3. 嚥下ができない。. 視診 / 触診. 1. 滑らか、ピンク色で潤いがある。. 組織の観察. 2. 乾燥、またはヒビ割れがある。. 3. 潰瘍がある。または、出血している。. 視診. 1. ピンク色で潤いがあり、乳頭がある。. 組織の状態を観察. 2. 舌苔があり、乳頭が失われておりテカリがある 状態。同時に赤みを帯びている。. 3. 水疱、またはヒビ割れがある。. 1. 水溶性. 2. 粘液性. 3. 唾液がない。. 視診. 1. ピンク色で潤いある。. 組織の状態を観察. 2. 潰瘍はなく、赤みがある。または舌苔がある。 (白みがかかっている). 3. 潰瘍。同時に出血を伴うことがある。. 視診と舌圧子. 1. ピンク色でしっかりしている. 舌圧子の先で優しく組織を押す. 2. 浮腫がある。赤みを伴うことがある。. 3. 自然出血。または、押さえると出血する。. 視診. 1. 清潔で残渣が見られない。. 歯と義歯の接触部分の状態を観察する. 2. 部分的に歯垢や残渣が見られる。 (歯と歯の間). 3. 歯肉線や義歯に触れる部分、全体的に歯垢や残 渣が見られる。. 舌圧子を使用して、舌の中心部分と口腔 に触れる. (義歯との接触部分). /. /. 合計. 毎日、日勤帯にて評価. アセスメント内容・指導内容. 実施者印. 表1.Eilers.J の口腔アセスメント指標. 13. /. /.

(16) 3)対象者の介入時の属性および退院時の属性 (1)性別、年齢、年代、病名、術式、感染徴候、在院日数の比較 対象者の属性を表 2 に示す。 普及群は男性 8 名(66.7%) 、女性 4 名(33.3%)、平均年齢 64.3(SD9.8)歳、年代は 65 歳未満 6 名(50%) 、65 歳以上 6 名(50%)であった。専門群は性別、男性 8 名(66.7%) 、 女性 4 名(33.3%)、平均年齢 67.0(SD11.3)歳、年代は 65 歳未満 5 名(41.7%)、65 歳以上 7 名(58.3%)であり、t検定の結果、有意差はなかった。 疾患は、普及群では胃がん 4 名(33.3%) 、大腸がん 8 名(66.6%)であった。専門群では 胃がん 5 名(41.6%) 、大腸がん 7 名(58.3%)であり、大腸がん患者が半数以上であった。 性別、年齢、年代、疾患に有意差はなく両群ともに同等の条件の対象者であった。属性 の特徴として、男性が多く、年代は、40 歳~80 歳代と幅広く、65 歳以下と 65 歳以上の割 合は、専門群に 65 歳以上の高齢者が多い傾向である。疾患では、大腸がん患者が半数以上 の割合を示しているが、厚生労働省(2011)が発表した、がんに関する統計では、胃がん、大 腸がんのがん罹患率は、男女とも 50 歳代頃から増加し、60 歳代以降は男性が女性より顕著 に高いとあり、本対象も同様であった。 退院時の属性として、術式は、普及群では、開腹術 9 名(75.0%) 、腹腔鏡下術 3 名(25.0%) であった。専門群では、開腹術 4 名(33.3%)、腹腔鏡下術 8 名(66.6%)であり、普及群の 開腹術の割合が高かったが、χ2 検定の結果、有意差はなかった。感染徴候では、肺炎等の合 併症は両群とも認められず、発熱、WBC、CRP ともに、t 検定の結果、有意差はなかった。 在院日数は、普及群では、23.6(SD20.9)日、専門群では、20.6(SD9.0)日であった。t 検 定の結果、有意差はなかった。普及群で、SD20.9 を示したのは、退院の時期にイレウスを 発症した対象者がおり、退院が延びたためであった。 これらの結果から、普及型プログラムを実施した場合には、専門型口腔ケアと同等の成 果が得られることが示された。普及型プログラムを用い、口腔内の観察結果から、予測さ れることに対応したケアや指導を毎日継続したことで、口腔内の環境を良い状態に維持す ることにつながったものと推測できる。 (2)口腔内の評価の比較 術前に歯科医による、専門的な口腔内アセスメントとして、う歯、根尖性歯周炎、歯周 病などの評価を図 7~8 に示した Grade 5 段階で行った。口腔内評価 Grade 2~3 と評価され た者は、 1~2 本のう歯、根尖病巣を認めるが炎症を起こしていない、中程度歯周病 P1~2 程度、補綴の清掃性がやや不良などの状態を示している対象者である。普及群では、Grade2 が 7 名(58.3%) 、Grade3 が 5 名(41.7%) 、専門群では、Grade2 が 4 名(33.3%)、Grade3 が 8 名(66.6%)であり、χ2 検定の結果、有意差はなかった。しかし、専門群では Grade3 が 8 名(66.6%)と多い傾向にあった。その背景には専門型を術前に依頼する主治医の判断基準は 口腔内の問題が、周術期の術後経過に何らかの影響を及ぼすのではないかと予測して依頼 14.

(17) する場合が多いことにあると考えられる。そのため、炎症や歯周ポケットが深く動揺歯も 認められる grade3 の対象者が多くなったものと推測される。普及型で Grade3 と評価された 対象者においても、観察時には口腔内の変化に注意し、何らかの問題がある場合には、歯 科の専門ケアを依頼する判断が必要である。 義歯の有無は、義歯ありが、普及群では 4 名(33.3%)、専門群では 1 名(8.3%)であり、 普及群に義歯の使用者が多かった。χ2 検定の結果、有意差はなかった。 (3)口腔ケア方法の比較 歯磨きの回数については、2 回が、普及群では 8 名(72.7%)、専門群では 9 名(75.0%) と最も多かった。χ2 検定の結果、有意差はなかった。ケアに使用する物品は、歯ブラシの使 用が、普及群では、11 名(100%) 、専門群では 11 名(91.7%)であった。また、電動歯ブ ラシや、音波歯ブラシを使用している患者は、全対象者中 2 名のみだった。歯間ブラシの 使用は、普及群 5 名(45.5%) 、専門群 3 名(25.0%)と使用しているのは半数以下であった。 デンタルフロスの使用では、専門群で1名(8.3%)、舌ブラシの使用も、専門群で 1 名(8.3%) のみであった。口腔乾燥の対応では、お茶などによるうがいを行っているのが、普及群で は 9 名(81.8%)、専門群では 3 名(25.0%)であり、p=0.012 と有意差を認めた。口腔保湿 剤の使用、ジェルの使用や、口腔体操を実施しているに対しての回答はなかった。 (4)口腔乾燥の自覚症状の比較 口腔乾燥の自覚症状の評価は、0.なしを自覚症状がないとしてスコアを 0 とした。また、 1.少しあると 2.あるを自覚症状があるとしてスコアを 1 とした。 自覚症状があると回答したのは、普及群では 7(SD2.8)、専門群では 7(SD3.5)であり、 t検定の結果、有意差はなかった。また、図 9 に示したように、項目ごとに自覚症状があ ると回答した結果をみると、 「水をよく飲む,いつも持参している」 「夜間に起きて水を飲む」 と回答したのが専門群に多く、 「食物が飲み込みにくい」 「口息が気になるといわれている」 の回答したのが普及群に多かった。普及群では義歯の使用者が多いこと、経口摂取してい ない患者などでは、口腔機能が低下しやすく、唾液分泌量の低下が生じやすくなる。さら に、義歯患者では、義歯咬合の安定や調整だけで唾液分泌が促され、乾燥感が軽快する場 合もあるため、義歯の状態を確認することも必要である。 また、χ2 検定の結果、普及群では「お茶などによるうがい」の回答が多く、有意差を示し たことからも、唾液分泌を促す介入が重要となってくる。また、高齢者の服用する薬剤の うち 7 割程度は口渇を生じると言われていることからも口腔乾燥をきたしやすい薬剤の影 響や、対象者の義歯と粘膜に対するケアの方法の確認をすることも重要であり、自覚症状 の問診と並行した対処方法の検討が必要である。. 15.

(18) (5)口腔保健行動の比較 五月女らは、口腔保健行動に対する自己効力感測定尺度(SEOH)は、う歯・歯周病予防 などの口腔保健行動に関する患者の心理・行動を評価するために予防歯科臨床において着 目すべき自己効力感を測定できる尺度であると報告している。この尺度は、ブラッシング 行動に対する自己効力感、生活習慣に対する自己効力感、心理的統制に対する自己効力感、 健診行動に対する自己効力感の 4 因子で構成されており、下位項目 25 項目からなる。 口腔保健行動の自己効力感では、得点が高いほうが自己効力感が高いと言われており、 各項目の最高得点が 5 点である。項目の合計点数は、ブラッシングに対する自己効力感は 8 項目で 40 点、生活習慣に対する自己効力感は 8 項目で 40 点、心理統制に対する自己効力 感は 5 項目で 25 点、健診行動に対する自己効力感は 4 項目で 20 点である。口腔保健行動 の 4 因子ごとに、点数を合計し、各因子別にt検定を行った。 ブラッシングに対する自己効力感は、普及群では 28(SD7.0)、専門群では 28(SD5.9) であった。生活習慣に対する自己効力感は、普及群では 32(6.9)、専門群では 31(SD6.5) であった。心理統制に対する自己効力感は、普及群では 17(SD2.4) 、専門群では 17(SD2.8) であった。健診行動対する自己効力感は、普及群では 13(SD4.7)、専門群では 12(SD5.2) であった。すべての項目を合計した各因子においてt検定の結果、有意差はなかった。 各因子の合計点で、高得点を示していたのは、ブラッシングに対する自己効力感であり、 次に、生活習慣に関する自己効力感であった。低得点を示していたのは、心理統制に対す る自己効力感と、健診行動に対する自己効力感であった。 図 10 各項目の平均点を示した。3.どちらともいえないより低い得点の項目を矢印で示し た。ブラッシング(B)に対する自己効力感では「B8.鏡を見ながら歯を磨く」、生活習慣(L) に対する自己効力感では「L7.学校や職場でも歯を磨く」 、心理統制(M)に対する自己効力 感では「M5.自分の感情のコントロールができる」が 3 より低い得点であった。また、健診 行動(H)に対する自己効力感では全項目が 3 前後と低めの値であるが、その中でも「H.1 仕事や家事などで忙しくても定期健診を受ける」が最も低く両群ともに低かった。 口腔保健行動の健診行動の自己効力感が低い要因として次の点が考えられる。歯槽膿漏 を予防する歯磨き剤などの情報が、テレビなどで紹介され始めたのは、1960 年代に入って からである。1978~1980 年頃から、口腔保健に関する研究発表がみられており、学校教育 の中に取り入れられてきたのもこの頃である。近年では、2000 年ごろから肺炎を予防する ための口腔ケアが注目され始め、財団法人 8020 推進財団が設立され、口腔と全身との関係 に関する啓発事業が開始された経緯があるが、本研究の対象者の若年時には、口腔保健的 な健診行動に関する情報が不足しており、口腔保健行動の獲得が不十分であったのではな いかと推測する。そこで、定期的な健診行動が取れるようになるためには、歯垢や舌苔の ような口腔のバイオフィルムや歯周病が、誤嚥性肺炎、感染性心内膜炎、動脈硬化、糖尿 病、関節リウマチなどの全身疾患の原因となる (岸本,2014)という情報や、日本人の 80%は 歯周病に罹患している(平成 23 年厚生労働省歯科疾患実態調査)という情報を提供して、健 16.

(19) 診行動の重要性について指導を推進していくことが今後の課題といえる。 表2.ベースライン時の対象者の属性および退院時の属性 表1.ベースライン時の対象者の属性および退院時の属性 普及群 n=12. 専門群 n=12. a. p値. 介入時の属性 性別, n, % 男性 女性. 8 4. 66.7 33.3. 8 4. 66.7 33.3. 1.000. 年齢, m, SD. 64.3. 9.8. 67.0. 11.3. 0.531. 年代, n, % 65歳未満 65歳以上. 6 6. 50 50. 5 7. 41.7 58.3. 0.682. 疾患, n, % 胃がん 大腸がん. 4 8. 33.3 66.6. 5 7. 41.6 58.3. 0.680. Grade 2 Grade 3. 7 5. 58.3 41.7. 4 8. 33.3 66.6. 0.219. 義歯あり、n, %. 4 2.1. 33.3 0.54. 1 2. 8.3 0.74. 1 8 2 0. 9.1 72.7 18.2 0.0. 2 9 0 1. 16.7 75.0 0.0 8.3. 0.340. 11. 100.0. 0. 0.0. 5 0 9 7. 45.5 0.0 81.8 2.8. 11 1 3 1 3 7. 91.7 8.3 25.0 8.3 25.0 3.5. 1.000 1.000 0.400 1.000 0.012 0.949. 28. 7.0. 28. 5.9. 0.975b. 32. 6.9. 31. 6.5. 0.928b. 17. 2.4. 17. 2.8. 0.939b. 13. 4.7. 12. 5.2. 0.685b. 9 3. 75 25. 4 8. 33.3 66.6. 0.106. 発熱 術後. 37.3. 0.5. 37.6. 0.5. 0.128b. 術後1週間. 36.7. 0.6. 36.7. 0.6. 0.895b. WBC 術後. 17.8. 24.1. 10.6. 1.2. 0.308b. 術後1週間. 6.7. 2.1. 8.9. 4.2. 0.128b. CRP 術後. 9.8. 6.3. 7.6. 3.9. 0.326b. 術後1週間. 4.8. 3.3. 4.6. 4.1. 0.894b. 在院日数, m, SD. 23.6. 20.9. 20.6. 9.0. 0.652b. b. 口腔アセスメント, n, %. 歯磨きの回数a , m, SD 歯磨きの回数a , n, % 1回 2回 3回 4回 ケアに使用する物品(複数回答), n, % 歯ブラシ デンタルフロス 歯間ブラシ 舌ブラシ お茶などのうがいあり, n, % 口腔乾燥の自覚症状得点, m, SD 口腔保健行動尺度, m, SD ブラッシング 生活習慣 心理統制 健診行動 退院時の属性 術式, n, % 開腹術 腹腔鏡下術. 0.132 0.741b. b. 感染徴候,m,SD. 2. a.カテゴリー変数はχ 検定 b.t検定. 17.

(20) 図7.歯科医による口腔内アセスメント. 18.

(21) C, P, Per, 補綴物 にて評価 C : むし歯 (カリエス Caries) C0 ~C4 進行すると P : 歯周病 (Periodontel Diseases) Per : 根尖性歯周炎、歯根膜炎. Pul 歯髄炎を起こす. C : 0 カリエスフリー 1 1,2 本の未処置カリエスあり 2 3 本以上の未処置カリエスあり P : 0 ポケットが全顎的に 3mm 以内 1 中等度詩集病 P1~2 程度 2 重症歯周病 P3 Per : 0 清掃性がいい補綴物あるいは補綴物なし 1 1/3 顎の清掃性の悪い補綴物あり 2 2/3 以上顎の清掃性の悪い補綴物あり 以上のスコアの合計点数にて Grade 分類を行う Grade 1 : 0 Grade 2 : 1, 2 Grade 3 : 3, 4, 5 Grade 4 : 6, 7, 8 Grade 5 : 無顎歯. 図8.専門的口腔内アセスメントによる Grade 分類. 12.義歯で傷つきやすい 11.汗をかきやすい 10.目が乾きやすい 9.口臭が気になるといわれる 8.口で息をする(寝ているときも含む) 7.味がおかしい 6.口の中がネバネバする、話にくい 5.食物が飲み込みにくい 4.クラッカーなど乾いた食品が噛みにくい 3.夜間に起きて水を飲む 2.水をよく飲む、いつも持参している 1.口の中が乾く、カラカラする 0. 0.5. 1. 1.5. 2. 平均値. 図2.口腔乾燥の自覚症状に関する2群間の比較 評価尺度 0 なし 1 少しある 2 ある の回答を合計し各群のn=12で平均値を算出した. ケアの種類 専門型. 図9.口腔乾燥の自覚症状に関する比較 19. ケアの種類 普及型.

(22) 健 診 行 動. 3.08. H4.歯周病予防のために定期的に通院する. 3.17. H3.心に余裕のない時でも定期健診を受ける. 3.33. H2.むし歯予防のために定期的に通院する. 2.50. H1.仕事や家事で忙しくても定期健診を受ける. 心 理 的 統 制. 2.25. M5.自分の感情のコントロールができる. 3.75. M4.自分を客観的に見つめることができる. 3.58. M3.口や歯の問題でくよくよしないでいられる. 3.92. M2.口や歯の問題でも前向きに生活できる. 3.58. M1.口や歯の嫌な気持ちでもすぐ立ち直れる. 4.17. L8.就寝前の飲食を控える. 2.92. L7.学校や職場でも歯を磨く. 生 活 習 慣. 4.17. L6.野菜を毎日食べる. 3.33. L5.毎食後歯を磨く. 4.25. L4.眠たくても歯を磨く. 4.08. L3.決まった時間に食事をする. 4.42. L2.どんなに忙しくても歯を磨く. 4.08. L1.朝食は毎日欠かさない. ブ ラ ッ シ ン グ 行 動. 3.08. B8.鏡を見ながら歯を磨く. 3.58. B7.すみずみまできれいに磨く. 3.75. B6.歯周病予防のアドバイスを聞き入れる. 3.75. B5.むし歯予防のアドバイスを聞き入れる. 3.25. B4.細かくハブラシを動かす. 3.50. B3.工夫しながら歯を磨く. 3.33. B2.指導された方法で歯を磨く. 3.42. B1.歯と歯ぐきの境目に毛先を当てる. 0. 1. 2. 3. 4. 5. 図3.口腔保健行動の自己効力感尺度の平均値に関する2群間の比較 5件法を用いた得点の比較 中央値3を基準値として評価した 高得点は自己効力感が高く、低得点は自己効力感が低い. 専門型 平均値. 普及型 平均値. 図 10.口腔保健行動の自己効力感尺度の平均値に関する比較 4)客観的評価指標の比較(表 3) (1)口腔細菌レベルの比較 術前・術後・退院前の 3 時期に、細菌カウンタを用いて、歯頸部、舌、舌下の細菌数レ ベル測定を行った。各レベルの細菌数はレベル 1 が 10 万個未満レベル 2 が 10 万個~100 万 個、レベル 3 が 100 万個~316 万個、レベル 4 が 316 万個~1000 万個、レベル 5 が 1000 万 個~3160 万個、レベル 6 が 3160 万個~1 億個、レベル 7 が 1 億個以上を表している。 t 検定の結果、歯頸部の術後 p=0.002、舌下の術後で p=0.002 と有意差を認めた。 歯頸部の術後は、普及群では 1.6(SD0.8)、専門群では 3.3(SD1.6)と普及群の細菌数レ ベルが低い値を示していた。舌下の術後は、普及群 1.8(SD1.2)、専門群 3.0(SD1.5)と普 及群の細菌数レベルが低い値を示していた。これらの要因は、音波歯ブラシを用いて歯垢 除去を行ったこと、歯間ブラシを使用したことが関連していると推測する。上田らによる と音波歯ブラシは手歯ブラシと比較して歯垢除去効果が高く、舌苔の付着が減少したと報 告(上田,2009)がある。指導の時には、ブラッシングのパンフレットを用いて、歯の磨き方と 音波歯ブラシの使用方法について、できるだけ歯と歯肉の境目の歯頸部の汚れを落とすよ 20.

(23) うに説明した。その後、2 回目の訪問時には、歯のツルツル感を尋ねて使用感や口腔内の状 態を確認し、できるだけ歯垢除去ができるように関わったことも細菌数レベルの低下に寄 与したと考える。また、歯垢を除去した後の口腔内の洗浄や清拭でのケアについては、口 腔内の細菌数を減らすためには重要であり(岸本,2014)、口腔内の汚れをできるだけ停滞させ ない方法として、30 秒間のうがい方法についての説明を加えた(村松,2012)ことも重要であ った。 普及群の舌で、術後 VS 術前、退院時 VS 術前で有意差を認めたが、舌ブラシの使用は 24 名に 1 名のみであった。東京都看護協会主催の看護フェスタで行った歯口清掃習慣に関す るアンケートでは、フロス、歯間ブラシの使用は 3 割程度、口の観察習慣は 3 割、舌みが きをしないは 4 割(藤山,2013)と報告されており、一般的にも舌ケアの習慣は少ないことが明 らかにされている。普及群の介入時でも、舌のケアを日常で行う習慣がある対象者はなく、 同様の傾向を示していた。舌ケアは、寝たきりになって看護師や介護士にしてもらうもの という意識が強くあるようであった。通常の日常生活の中でも舌ケアを行うことで、全身 疾患の予防に繋がり、免疫力が低下した時にも合併症を防ぐために重要であるという情報 の提供や、具体的な舌ケアの方法についての説明が必要であることが示唆された。 さらに、各群の術後 VS 術前、退院前 VS 術前で行った対応のある t 検定では、普及群の 歯頸部の退院前 VS 術前で p=0.043、舌の術後 VS 術前で p=0.002、舌の退院前 VS 術前で p=0.015 有意差を認めた。専門群では、舌下の術後 VS 術前で p=0.02 有意差を認めた。また、 術後、退院前の細菌数レベルに対する交絡因子の影響を確認するため共分散分析を行った。 術前の細菌数レベル、介入時の性別、年齢、病名、退院時の術式、在院日数で調整し、2 群 で比較した。その結果、推定歯頸部細菌レベルの術後では、普及群 1.6、専門群 3.3 で p=0.004 であった。推定舌細菌レベルの術後では、普及群 3.5、専門群 5.0 で p=0.013 であった。推 定舌下細菌レベルの術後では、普及群 1.7、専門群 3.0 で p=0.027 といずれも有意差を認め た。 推定歯頸部細菌レベルの術後と推定舌下細菌レベルの術後では、単変量分析と同様の変 数で有意差が確認でき、交絡因子の影響はないものと考える。推定舌細菌レベルの術後と 推定口臭レベルの術後で、有意差を認めたが、普及群では、専門群に比べ在院日数が長く なっており、また、術式でも開腹術が多いことから、両群が同等の条件であれば、単変量 分析でも有意差を認めていたと考えられる。 (2)口腔内水分量および口臭の比較 口腔内水分量を口腔内水分量測定計ムーカス、口臭をブレスチェッカーを用いて測定し た。t 検定の結果では、有意差はなかった。また、対応のある t 検定の結果では、専門群の 口臭の退院前 VS 術前で p=0.043 の有意差を認めた。 口腔乾燥を示す口腔内水分量は、両群間に有意差はなかったが、普及群では、退院前に 乾燥度の値が若干低下した。普及群では義歯の使用者が多く、開腹術も多いため、経口摂 21.

(24) 取していない患者では、口腔機能が低下しやすく、唾液分泌量の低下が生じやすくなる。 口腔乾燥を予防するためには、唾液分泌を促すリハビリテーションや口腔機能訓練が効果 的(菊谷,2013)であるといわれており、唾液腺マッサージや口腔リラクテーションの継続を強 化した指導を行ったことで効果がみられたと考える。また、介入期間は、6 月から 10 月と 湿度が高めの時期であったため、冬季においても同様の結果が得られるかを確認するため には、年間を通しての調査が必要である。 また、術後、退院前の口腔内水分量、口臭に対する交絡因子の影響を確認するため、共 分散分析を行った。術前の細菌数レベル、介入時の性別、年齢、病名、退院時の術式、在 院日数で調整し、2 群で比較した。その結果、推定口腔水分量レベルでは、有意差はなかっ た。推定口臭レベルでは、普及群 0.7、専門群 1.1 で p=0.044 と有意差を認めた。口腔アセ スメント評価 Grade2~3 の胃がん、大腸がん患者を対象者とした場合には、消化器外科周術 期普及型口腔ケアプログラムの継続したケアの効果が認められ、有用性が示された。 表2.2群間3時点における細菌レベル、口腔内水分量、口臭レベルの比較 表3.2群間3時点における細菌レベル、口腔内水分量、口臭レベルの比較 術前 N. m ± SD. 術後 p値a. N. m ± SD. 12 12. 1.6 ± 0.8 3.3 ± 1.6. p値a N. 退院前 m ± SD. p値a. 差. 術後 vs 術前 p値b. 退院前 vs 術前 差 p値b. 0.002. 12 12. 1.7 ± 0.8 2.3 ± 1.6. 0.282. -0.8 0.5. 0.085 0.389. -0.7 -0.5. 0.043 0.191. 細菌数レベル 歯頸部. 普及型 専門型. 12 12. 2.4 ± 1.2 2.8 ± 1.5. 0.547. 舌. 普及型 専門型. 12 12. 4.9 ± 0.8 4.7 ± 1.8. 0.660. 12 12. 3.7 ± 1.1 4.8 ± 1.5. 0.078. 12 12. 3.9 ± 1.2 4.3 ± 1.5. 0.557. -1.2 0.1. 0.002 0.901. -1.0 -0.4. 0.015 0.470. 舌下. 普及型 専門型. 12 12. 2.3 ± 1.4 1.8 ± 0.8. 0.292. 12 12. 1.8 ± 1.2 3.0 ± 1.5. 0.045. 12 12. 2.3 ± 1.3 2.1 ± 1.5. 0.668. -0.5 1.2. 0.053 0.023. 0.0 0.3. 1.000 0.555. 口腔内水分量. 普及型 専門型. 12 12. 29.5 ± 2.4 32.2 ± 7.0. 0.244. 12 12. 30.7 ± 6.1 29.8 ± 2.6. 0.646. 12 12. 29.1 ± 1.4 30.3 ± 1.9. 0.085. 1.2 -2.4. 0.477 0.260. -0.4 -1.9. 0.690 0.414. 口臭. 普及型 専門型. 12 12. 1.3 ± 1.2 2.0 ± 1.3. 0.219. 12 12. 0.8 ± 0.2 1.1 ± 1.1. 0.291. 12 12. 1 ± 1.1 1.3 ± 1.0. 0.566. -0.5 -0.9. 0.087 0.102. -0.3 -0.7. 0.266 0.043. . a.対応のないt検定 b.対応のあるt検定. (3)Eilers 口腔内アセスメント評価の比較(表 4) Eilres 口腔アセスメント評価の、データをスコア 1.は正常であるため、問題なしとした。 スコア 2.3.を問題ありとし、問題のある対象者の人数を示した。評価は術前、術後、退院前 の 3 時期に行った。χ2検定を行い、声、嚥下、口唇、舌、唾液、歯肉、歯と義歯では有意 差はなかった。しかし、粘膜の術前では、p=0.014 と有意差を認めた。 また、各群の術後 VS 術前、退院前 VS 術前で、対応のある比率の差 McNemar 検定を行 った。その結果、 普及群の舌の術前 VS 退院前で p=0.031、歯と義歯の術前 VS 術後で p=0.016、 歯と義歯の術前 VS 退院時で p=0.008 の有意差を認めた。 特に数値の変化を示していたのは、普及群の舌で、術前 12 名(100%)から退院前 6 名 (50.00%)へ減少した。また、 普及群の歯と義歯で、 術前 9 名 (75.00%)、 から術後 2 名 (16.70%)、 22.

(25) 術前 9 名(75.00%)から退院前 1 名(8.30%)へ減少した。 毎日評価を行った病棟看護師による Eilers 口腔アセスメントのスコア評価記載欄には、普 及群、専門群ともに、口腔乾燥の程度や歯と義歯に関する具体的なケア方法について、ま た、舌に関する評価とケア方法が記載されていた。また、離床状況に合わせた口腔ケアの 実施状況、などが記載されていた。舌ケアの方法についてのアドバイスが記されており、 継続した働きかけが有効であったと考える。さらに普及群では、鏡を見てブラッシングし ている様子や口内炎を認めた対象者の記録に、粘膜や歯周の変化についての記載がされて おり、新規に導入した用具の使用に対しては、病棟看護師も興味を示し、熱心に患者指導 を行っていた。このような働きかけも有効であったと考える。粘膜に関する記載は、この 1 件のみであった。粘膜については、口内炎ができたときに確認はしているが専門家への相 談はしていなかった。三上ら(三上、2013)が、口腔内アセスメント評価については、予防と しての口腔ケアの認識不足が口腔ケアの差の要因であると述べているように、予防のため の Eilers アセスメントを用いた評価については、他職種連携を図り、専門家と共働してアセ スメントを行い、適切なケアを提供していくことが重要である。 表4.2 群間絵時点における口腔内アセスメントの比較 表3.2群間3時点における口腔内アセスメントの比較 術前 n. 術後 %. 退院前. p値a. n. %. -. 0 1. 0.00 8.30. p値a. 術後 vs 術前. n. %. 0 0. p値b. 退院前 vs 術前. 差. p値b. p値a. 差. 0.00 0.00. -. ‐ 8.3. 1.000. ‐. -. ‐ ‐25. 0.250. ‐ ‐25. ‐8.3. 1.000 ‐16.6 0.375 ‐50. 0.625 0.070. 1.000 ‐50 1.000 ‐33.3. 0.031 0.289. ‐8.3. 0.375 ‐16.7 1.000 ‐41.6. 0.625 0.125. ‐8.3. 1.000. Eilers口腔アセスメント 声. 普及型 専門型. 0 0. 0.00 0.00. 嚥下. 普及型 専門型. 0 3. 0.00 25.00. 0.217. 0 0. 0.00 0.00. -. 0 0. 0.00 0.00. 口唇. 普及型 専門型. 4 7. 33.30 58.30. 0.414. 3 4. 25.00 33.30. 1.000. 2 1. 16.70 8.30. 1.000. 普及型 専門型. 12 9. 100.00 75.00. 0.217. 11 8. 91.70 66.70. 0.317. 6 5. 50.00 41.70. 1.000. 普及型 専門型. 5 10. 41.70 83.30. 0.089. 8 9. 66.70 75.00. 1.000. 3 5. 25.00 41.70. 0.667. 普及型 専門型. 0 6. 0.00 50.00. 0.014. 1 6. 8.300 50.00. 0.069. 0 4. 0.00 33.30. 0.930. 普及型 専門型. 3 7. 25.00 58.30. 0.214. 2 7. 16.70 58.30. 0.089. 1 2. 8.30 16.70. 1.000. 普及型 専門型. 9 2. 75.00 16.70. 0.004. 2 3. 16.70 25.00. 1.000. 1 2. 8.30 8.30. 1.000. 舌. 唾液. 粘膜. 歯肉. 歯と義歯. 1.000. ‐25 ‐8.3 ‐8.3 25. ‐. 8.3. 0.250. -. 0. 1.000 ‐16.7. 0.500. ‐8.3. 1.000 ‐16.7 1.000 ‐41.6. 0.500 0.063. 0.016 ‐66.7 1.000 ‐11.4. 0.008 1.000. 0 ‐58.3 8.3. 2. a.χ 検定 b.McNemar検定. 4-2.在宅療養における口腔ケア自己管理行動の実態と定着性に関する調査 1)調査対象者の概要 (1)研究内容2-1の対象者のうち在宅療養を継続している者を対象とした調査は、手 23.

(26) 術後の化学療法等により再入院している対象者が多く、実施できなかった。 (2)自宅で生活する 65 歳以上の高齢者で自分自身の歯が残っている者を対象とした「健 康づくり活動交流会-口腔ケア」講座を平成 28 年 2 月 2 日に開催し、80 歳以上の高齢 者 28 名が受講した。男性 5 名、女性 23 名であった。口腔ケア自己管理行動に関する調 査および音波歯ブラシを用いた口腔ケア方法の実践に関する指導を行った。義歯の対象 者も多く、義歯の手入れについての指導も行った。この研修会終了後に受講者から「も っと若いときに聞きたかった」 「あと 10 年早く知っていれば良かった」という意見が聞 かれたため、40 代を対象とした講習会を追加開催した。 平成 28 年 3 月 24 日に 30~40 代の主婦層を中心としたグループを対象に「口腔ケア 交流会」を開催したところ 16 名が受講した。小学生、未就学児を持つ主婦が対象となっ たが、自分自身の口腔衛生に加えて、子どもに対する口腔衛生に興味を示す集団であっ た。 2)交流会の実施内容 交流会の実施風景を図 11 に示した。高齢者を対象とした交流会では、歯周病が要因とな る全身疾患について、口腔内の清潔と誤嚥性肺炎の関連についてなどを中心に講義した。 その後、うがいの方法、歯間ブラシの使い方、音波歯ブラシの使い方のデモンストレーシ ョンを行い、その後、受講者による実践をした。 40 代主婦を中心とした交流会では、歯周病と全身疾患の関連に加えてアンチエイジング に関する内容を講義した。その後、うがい方法、歯間ブラシの使い方、音波歯ブラシの使 い方を実践した。希望者には、歯ブラシ後に染色を実施し、磨き残しをチェックして正し い磨き方が出来ているか確認した。. 図11.交流会の様子(左:高齢者グループ・右:40 代主婦グループ) 3)交流会参加者の口腔内評価と受講に対する反応 実施している口腔ケアの内容と口腔乾燥対策を表 5 に示した。 24.

(27) 40 代主婦においては、歯磨き回数は 2 回が 11 名と最も多かった。そのほとんどが朝と 夜に実施しており、昼食後の歯磨きは行われていなかった。利用している口腔ケア用品 は歯ブラシが 12 名と最も多く、デンタルフロス、歯間ブラシの使用は 6 名であった。細 部に亘る口腔ケアの実践者は少なく、この年代においては、まだ、口腔保健行動に対す る意識は低いものと考えられた。口腔乾燥に対しては、お茶などによるうがいが 4 名と お口の体操が 2 名であった。 この年代では、現在、口腔内のトラブルを感じている方はなく、口腔ケアに対する意 識は低かった。特に、歯磨きは朝と夜の 2 回と回答した者が多く、子育てや家事で忙し く昼食を短時間で済ませている様子が伺われ、改めて歯磨きをするという時間の確保が 困難と思われた。交流会で歯周病と全身疾患の関連を学び、口腔ケアに対する認識を新 たにしていたが、今後、正しい口腔ケアを継続していけるかどうかは時期を置いて調査 していく予定である。 一方、80 代高齢者グループでは、歯磨き回数 2 回が多いのは同じだが、3 回以上行っ ているものも 40%程度あった。歯間ブラシの使用も交流会受講後には 88%まで増えてお り、口腔ケアの重要性が認識できたのではないかと推察できる。口腔乾燥への対応も若 干ではあるが、保湿剤の使用やお口の体操が増えており、交流会での学びが継続できて いた。高齢者グループは義歯を装着している方や一部義歯の方も参加しており、自身の 経験から口腔ケアの重要性を自覚している年代であった。既に義歯になってしまってい ても、うがいや保湿、唾液分泌を促すリラクテーションにより誤嚥性肺炎の予防につな がることを知り、積極的に学習に臨んでいた。1 ヵ月後の調査ではあったが、口腔保健行 動が維持できており、交流会での学びの成果であったと考える。 4)口腔乾燥の自覚症状および口腔ケア自己管理行動の実態 高齢者グループでは、口腔乾燥の自覚症状調査は受講者全員が回答した。結果を表 6 に示す。研究方法2-1で示した周手術期患者に比べて、平均値が 1 を超える項目はな かった。前者のグループでは「2 水をよく飲む、いつも持参している」「3 夜間に起きて 水を飲む」 「11 汗をかきやすい」の項目の平均値が高かったが、高齢者グループでは乾燥 を感じている者が少なかった。自宅で生活している高齢者は、好きなときに自由に水や お茶を飲むことができ、乾燥を感じる割合が少なかったものと考えられる。また、総義 歯の者は 28 名中 5 名(17.8%)と少ないことも口腔乾燥の自覚が少ないことにつながっ ていたものと考えられる。口腔内を湿潤環境に保つことで口腔内の細菌数を減らすこと ができることからも、乾燥が強くなる要因である義歯への移行を防ぐケアが重要である と言える。 交流会 1 ヵ月後も自覚症状に関して有意差を示す項目はなく、継続して口腔ケアが行 われていることが推察できた。本調査では 1 ヵ月後の行動変容までしか確認できなかっ たが、さらに調査期間を延長し、行動変容につながっていることを明らかにする必要が 25.

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