バス IC データ及びプローブデータを用いたバス走行改善の検討支援
国 土 交 通 省 国 土 技 術 政 策 総 合 研 究 所 高 度 情 報 化 研 究 セ ン タ ー ○ 井 星 雄 貴 同 今 井 龍 一 同 濱 田 俊 一
1 . は じ め に
バ ス は 、私 た ち の 生 活 を 支 え る 重 要 な 交 通 手 段 で あ り 、こ れ ま で 事 業 関 係 者 に よ っ て 安 全 で 快 適 な 移 動 や 環 境 負 荷 軽 減 な ど の た め に 様 々 な バ ス 走 行 改 善 が 図 ら れ て い る 。そ の 一 例 を 挙 げ る と 、各 バ ス 停 留 所 を 現 地 踏 査 で 確 認 し 、サ ー ビ ス レ ベ ル や 周 辺 施 設 を 踏 ま え た 上 で 改 善 す べ き 箇 所 を 選 定 し て い る 。し か し 、地 域 に よ っ て は 多 数 の バ ス 停 留 所 が あ る た め 、現 地 の 詳 細 な 実 態 を 網 羅 的 に 調 査 す る の が 難 し い 場 合 が あ る 。
一 方 、 バ ス 事 業 者 や 鉄 道 事 業 者 で 導 入 さ れ て い る 交 通 系 IC カ ー ド は 、 乗 客 の 乗 降 履 歴 を 取 得 し て い る 。 こ う し た 人 の 移 動 履 歴 ( 以 下 、「 動 線 デ ー タ 」 と い う 。) の 取 得 ・ 活 用 技 術 は 、 交 通 系 IC カ ー ド 以 外 に も プ ロ ー ブ カ ー や 携 帯 電 話 な ど が 広 く 普 及 し て い る 。こ の 状 況 を 踏 ま え る と 、交 通 系 ICカ ー ド の 動 線 デ ー タ の み な ら ず 、複 数 の 動 線 デ ー タ を 用 い て バ ス 走 行 改 善 を 検 討 し た 方 が 効 率 よ く 有 効 性 の 高 い 成 果 が 得 ら れ る こ と が 期 待 で き る 。
本 稿 は 、 バ ス IC カ ー ド デ ー タ 及 び 民 間 プ ロ ー ブ デ ー タ の 2 種 類 の 動 線 デ ー タ を 用 い た バ ス 停 留 所 周 辺 の 走 行 改 善 の 検 討 支 援 策 を 実 際 の 事 例 に 適 用 し た 結 果 と と も に 報 告 す る 。
2 . バ ス 走 行 改 善 の 検 討 支 援
分 析 対 象 エ リ ア は 、さ い た ま 市 内 の 全 1,116停 留 所( 図-1)、分 析 に 用 い る 動 線 デ ー タ は 2010年 6 月(1ヶ 月 )と し た 。バ ス 走 行 改 善 の 検 討 支 援 は 5つ の Stepで 構 成 し 、最 終 的 に Step.5で 図-2に 示 す よ う な 停 留 所 別 の カ ル テ を 作 成 す る 。Step.4ま で の 手 順 及 び 検 討 結 果 を 以 下 に 示 す 。
Step.1 バ ス 停 留 所 別 利 用 者 数 の 整 理
バ ス IC カ ー ド デ ー タ を 用 い て 各 停 留 所 別 利 用 者 数 を 整 理 し 、 乗 車 人 員 の 多 い バ ス 停 留 所 を 抽 出 し た 。1,116停 留 所 か ら 鉄 道 駅 を 除 く 802 停 留 所 の 乗 車 人 員 を 集 計 し た 結 果 、上 位 30停 留 所 合 計 で 全 乗 車 人 員 の 約 27% を 占 め て い た 。 施 設 別 で は 、 大 学 、 高 校 、 病 院 、 集 合 住 宅 や 区 役 所 な ど が 上 位 を 占 め て い た 。
Step.2 バ ス 停 留 所 の 動 的 な 状 況 整 理
2種 類 の 動 線 デ ー タ を 用 い て 、バ ス 停 留 所 別 平 休 別 の 利 用 者 数 や バ ス 停 留 所 別 時 間 帯 別 旅 行 速 度 な ど の 動 的 な 状 況 を 整 理 し た 。結 果 例 は 図-2右 側 に 示 し て お り 、太 田 窪 停 留 所 の 場 合 、平 日 1 日 あ た り 約 640人 の バ ス 利 用 者 が 存 在 し て い た 一 方 で 、休 日 で は 約 300人 と 平 日 の 5割 程 度 利 用 者 数 が 把 握 で き た 。ま た 、平 日 朝 夕 ピ ー ク 時 の 旅 行 速 度 が 低 い こ と 、平 日 夕 ピ ー ク 時 の 一 般 車 は バ ス の 旅 行 速 度 と 同 程 度 で あ る こ と も 把 握 で き た 。
Step.3 バ ス 停 留 所 の 静 的 な 状 況 整 理
バ ス 停 留 所 別 の 運 行 本 数 や 運 行 系 統 数 な ど の バ ス サ ー ビ ス レ ベ ル の 把 握 や 、停 留 所 の 位 置 す る 道 路 の 車 線 数 や バ ス ベ イ の 整 備 状 況 な ど の 静 的 な 状 況 を 整 理 し た 。結 果 例 は 図-2左 側 に 示 し て お り 、 運 行 実 態 は バ ス IC カ ー ド デ ー タ か ら 整 理 し た 。 走 行 実 態 は 、 現 地 踏 査 す る 必 要 が あ る が 、 Step.1に て 乗 車 人 員 の 多 い バ ス 停 留 所 を 先 に 抽 出 し て い る こ と か ら 、乗 車 人 員 の 多 い 停 留 所 を 対 象 に 計 画 的 に 現 地 踏 査 す る こ と が で き る 。
Step.4 走 行 阻 害 箇 所 の 抽 出 ( 図-3)
走 行 阻 害 箇 所 と は 、バ ス 停 留 所 で の バ ス の 停 車 に 伴 っ て 後 続 車 両 が 追 い 越 し で き ず 、渋 滞 が 発 生 す る 箇 所 を 指 し て い る 。 抽 出 に は 、 バ ス 停 留 所 の あ る DRM( デ ジ タ ル 道 路 地 図 ) の リ ン ク の 旅 行 速 度 と 、停 留 所 前 の DRMリ ン ク の 旅 行 速 度 と を 用 い る 。具 体 的 に は 、停 留 所 リ ン ク に お け
1014 第29回日本道路会議
る バ ス の 旅 行 速 度 よ り も 一 般 車 の 旅 行 速 度 の 方 が 小 さ く 、か つ 一 般 車 の 旅 行 速 度 が 停 留 所 の 直 前 リ ン ク よ り も 停 留 所 リ ン ク の 方 が 小 さ い 箇 所 を 指 す ( 図-3グ ラ フ の 左 下 の エ リ ア )。
3 . お わ り に
本 稿 は 、2 種 類 の 動 線 デ ー タ を 用 い た バ ス 走 行 改 善 の 検 討 支 援 策 の 有 効 性 を 報 告 し た 。 こ の 支 援 策 は 汎 用 性 が 高 く 、昨 今 は 分 析 で 利 用 す る2種 類 の 動 線 デ ー タ も 全 国 各 地 で 収 集 で き る 環 境 が 整 い は じ め て い る 。今 後 、全 国 各 地 で 同 様 の 手 順 や 方 法 に 基 づ き 、動 線 デ ー タ を 用 い た バ ス 走 行 改 善 の 検 討 支 援 の 展 開 が 期 待 さ れ る 。
ICカードデータで 定義されたさいたま市の停留所 道路
鉄道 さいたま市
0 5km 10km
0 5km 10km
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
-40 -30 -20 -10 0 1 0 20 30 40
バスと一般車の旅行速度差 バスと一般車の旅行速度差
一般車の停留所直前 での旅行速度差
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40
一般車の停留所直前 での旅行速度差
【走行阻害が発生している停留所】 【走行阻害が発生していない停留所】
一般車が 追い越しができない
バスベイが整備してあり、
追い越しが可能 走行阻害発生
32% 走行阻害発生
4%
図-1 分 析 対 象 エ リ ア ( さ い た ま 市 ) と バ ス 停 留 所 図-3 走 行 阻 害 箇 所 の 抽 出 例
静的な状況
0 20 40 60 80 100 120 140
6時台 7時台 8時台 9時台 10時台 11時台 12時台 13時台 14時台 15時台 16時台 17時台 18時台 19時台 20時台 21時台 22時台
ICカード利用による利用者数
動的な状況
( 利 用 者
)
動的な状況(走行状況)
評 価
z 停留所は片側1車線の道路に位置しており,一般車がバスを追い抜くことができず,バスの停車 により走行阻害が発生しており,交差点付近の停留所位置変更等が考えられる
z 歩道の狭い箇所に停留所が位置していることもあり,バス待ちの際に自転車、自動車との接触の 危険あり,バス待ちスペースの確保が望まれる
※ここに記載の評価内容は、関係者間で合意形成を得たものではないことに留意されたい。
基礎情報
停留所名 太田窪
住所 埼玉県さいたま市南区 緯度 35.86377194 経度 139.6708247 停留所ID 791108686
太田窪(さいたま市南区)
Rank 2
利用客が多く,バスの停車による走行阻害が夕方に多く発生!
出典:バスICデータ
平均旅行速度 月別利用者数
東浦和駅方面 浦和駅方面
バス
の運
行
実態
事業者 国際興業株式会社 系統数 9系統 運行 系統数
バス
の走
行環
境
車線数 片側1車線 PTPS対象 ○
バスベイ整備 × 優先(専用)レーン ×
上屋の整備 × 公共交通幹線軸 ×
椅子の整備 ×
系統 起点・終点
運行本数(2010年10月時点)
平日 土曜 休日 浦50 浦和駅東口~南浦和駅西口 65 52 47 浦50-2 浦和駅東口~二十三夜坂下 4 3 2 浦51 浦和駅東口~北浦和駅東口 28 25 24 浦51-2 浦和駅東口~北浦和駅東口 6 6 6 浦51-3 浦和駅東口~北浦和駅ターミナル 12 12 12 浦04 浦和駅西口~北浦和駅 58 32 32 浦04-2 浦和駅西口~馬場折返場 58 50 56 浦04-3 浦和駅西口~さいたま東営業所 20 15 15
浦05 浦和駅西口~明花 9 3 2
日別利用者数
時間帯別利用者数(日平均) 雨天利用率(平日)
0 0.5 1 1.5 2
晴天時平均 雨天時平均
雨天時 1.36倍
13 14.4 13 14.3 13.9 14.7
20 18.1
12.2 21.9
18.8 17.3
0 10 20 30
朝ピーク 日中 夕ピーク 平日平均 土曜平均 日祝平均
バス 一般車
バスによる一般車の 走行阻害発生割合 停留所にバスが遅れてくる割合
・ICカードによる乗客数が,さいたま市の停留所で第2位の15.300人/月(年平均)
・平日の利用者は平均640人/日と多く、休日は平日の0.75倍の利用
・平日朝夕ピーク時間帯の利用客が特に多く,通勤でのバス利用が想定
・雨天時には,晴天時に対して,約1.36倍の利用者が増加
平日朝夕ピーク時 の利用が顕著
(注)時間帯別の利用 者増加を晴天時「1」と して比較 0
5,000 10,000 15,000 20,000
2009年10月 2009年11月 2009年12月 2010年1月 2010年2月 2010年3月 2010年4月 2010年5月 2010年6月 2010年7月 2010年8月 2010年9月
月別ICカード延べ乗車人員(人/月)
約1.5倍
(2009年9月比)
・バスの平均旅行速度は日中と比較して,朝・夕ピーク時には約1.5km/h低い
・停留所へのバスの到着遅れは朝ピーク時で27%,夕ピーク時で41%の割合で発生
・夕ピークでは,停留所へのバスの停車により,一般車の走行阻害が発生している可能性あり
平日朝夕ピーク時 の旅行速度が低い
平日夕ピーク時の 一般車はバスの旅 行速度と同程度
※停留所の位置するDRM リンク(バス,一般車)の 旅行時間の平均値 平均旅行速度(km/h)
※収集されたデータのうち,当該停留所にて2分以上遅れが生じている割合 27%
19%
41%
29%
8% 11%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
朝ピーク 日中 夕ピーク 平日平均 土曜平均 日祝平均
停留所にバスが遅れてくる割合 平日夕ピーク時は 4割が遅れて到着
0 200 400 600 800 1000
6月1日6月2日6月3日6月4日6月5日6月6日6月7日6月8日6月9日6月10日6月11日6月12日6月13日6月14日6月15日6月16日6月17日6月18日6月19日6月20日6月21日6月22日6月23日6月24日6月25日6月26日6月27日6月28日6月29日6月30日
ICカード利用による利用者数
平日平均
休日平均
平日 土曜 日祝
状況 走行阻害 発生率 全日 0.32 平日朝ピーク 0.25 平日夕ピーク 0.62 雨天時 0.30
図-2 バ ス 停 留 所 別 の カ ル テ 例 第29回日本道路会議