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第1章 序 論

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第1章 序 論

1.1 本研究の経緯

ロボット用アクチュエータは,従来,まず産業用ロボットに適応するため,その大き なニーズである,高精度,高速,高出力を目指して発展してきた.この必要性は現在も 重要であり研究開発は継続している.しかしながら近年,ロボットの適応範囲の拡大に 伴い,新たなニーズが起こってきている.すなわち,たとえば,人間と共存を目指すヒ ューマノイドロボットに代表されるパートナーロボットの登場がある.このパートナー ロボットの場合,そのアクチュエータに必要とされるのは,高精度,高速というより,

共存する人間に危害を与えない安全なアクチュエータであることが望まれる.すなわち,

外部から力が加えられた場合に柔らかく反応する必要がある.また,転倒することも考 えられるので,その際にも衝撃を柔らかく吸収し自分自身の本体を守るアクチュエータ であることが望まれる.また,一方,近年の産業用ロボットの分野においても単に高速,

高精度の追求だけでなく,部品の位置決めを正確にしておかなくてもそのハンドリング や組み立てを実行することができる機能のニーズが高まっており,そのための方法とし て力センサなどを利用したコンプライアンス制御の必要性が急速に拡大している.この ときに望まれるアクチュエータも外部から力が加えられた際に柔軟に反応する性能を持 つアクチュエータである.

このような背景から,これからのロボット用アクチュエータとしては,高精度,高速,

高出力のみならず,外部からの力に柔らかく反応するアクチュエータが望まれるように なってきている.この実現のために制御的な方法,機構的な方法など様々なアプローチ が考えられ,研究がなされてきている.本研究では、そのなかで機構的な解決策として アクチュエータに高いバックドライバビリティを持たせ,基本的にハードウェアとして 柔らかさを持たせる設計手法について研究し,提案していくことを主題とする.ハード ウェアとして柔らかさを持つことができれば,制御的なコンプライアンスコントロール なども大変効果的に実現できるようになる.

さて,本研究はロボット用アクチュエータに関する研究であるので,まずアクチュエ ータの歴史について振り返ってみる.ロボットの構成要素には様々なものがあるが,ロ

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ボットとは基本的に多軸アクチュエータシステムであるため,アクチュエータの性能が そのロボットの性能を支配するといってよく,大変重要な基本要素である.ロボット用 アクチュエータの要素技術は,大きくみると,駆動用サーボモータと減速機の進歩であ ったと言える.イギリスの物理学者マイケル・ファラデー(Michael Faraday)は1831 年に電磁誘導現象を発見し,電動機(誘導電動機),発電機など多くの電気機器の動作 原理のもとを築いた.1) その後,同じくイギリスの物理学者ジョン・アンブローズ・フレ ミング(John Ambrose Fleming)がこの電磁誘導をわかりやすく表現するため人間の手 であらわしたフレミングの法則を考案し1880年代に発表した.その後,電磁モータは大 きな発展を遂げていった.

動力を発生するだけでなく位置や速度を制御する機能を含む,いわゆるサーボモータ の研究は,1950年代後半あたりから始まったとされる.2) DCサーボモータの初めての商 品化は1958年頃であった.その後,産業用ロボットが1970年代後半から出始め,1980年 の産業用ロボット元年を契機にDCサーボモータは進歩を早め,様々な形式のものが開 発されていった.そして,メンテナンスフリーの要求が高まってきたため,1970年代に はかなり確立されていたACサーボモータの技術が製品へ応用され始めた.ロボット用 ACサーボモータは,1987年頃に製品化された.DCサーボモータからACサーボモー タに変わることにより,モータからブラシがなくなったことは,ロボットの信頼性向上 およびメンテナンス性の向上に大きく貢献した.また,位置検出器として用いられてき たインクリメンタル方式パルスエンコーダが,アブソリュート方式エンコーダに置き換 わってきたのもほぼ同時期であり,これにより原点復帰作業が不要になったことでロボ ットの信頼感は高まった.モータの小型化,高トルク化も並行して進歩し,電気式ロボ ットが誕生した頃のDCサーボモータと現在のACサーボモータを同一容量で比較する と,質量比で約1/6以下,体積比で1/5以下となっており,大きく進化してきたと 言える.この小型化,高トルク化の進歩は,主としてマグネット特性の進歩と絶縁技術 の進歩に依存してきたと言われるが,さらに革新的な高密度巻線技術の開発も大きく貢 献している.ロボット用モータの用途別仕様比較を,Fig.1.1 に示す.

もうひとつの要素技術である減速機であるが,当初の産業用ロボットでは,ボールス クリューが多く使用されていた.これは当時の歯車型減速機やモータを関節軸芯に直接 配置すると大きく重いため使用に耐えられなかったためであった.その後,減速機に対 してもロボット用として小型,高剛性のニーズは高くなり,高剛性ハーモニック形減速 機,RV減速機,サイクロ減速機などが次々と製品化されてきた.また,コンポーネン

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ト構成からモータへ内蔵された減速機の構成も現れ,小型化に貢献している.

モータや減速機は100年以上という長い歴史から,電子技術のめざましい発展に隠 れて,機械技術の成長が飽和しているかのような印象があるが,決してそうではなく,

まだまだ改良と革新の余地がある重要な領域である.

Area used by humanoid robot

Area used by industrial robot

Area used by continuous rotation 0

2000 4000 6000 8000 10000

0 100 200 300 400 500

Rated torque ratio %

Rotational speed rpm

Area used by humanoid robot

Area used by industrial robot

Area used by continuous rotation

Area used by humanoid robot

Area used by industrial robot

Area used by continuous rotation 0

2000 4000 6000 8000 10000

0 100 200 300 400 500

Rated torque ratio %

Rotational speed rpm

Area used by humanoid robot

Area used by industrial robot

Area used by continuous rotation 0

2000 4000 6000 8000 10000

0 100 200 300 400 500

Rated torque ratio %

Rotational speed rpm

Area used by humanoid robot

Area used by industrial robot

Area used by continuous rotation

Area used by humanoid robot

Area used by industrial robot

Area used by continuous rotation

Fig.1.1 Motor specification required for the use of various robot

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1.2 従来の研究

ロボット用アクチュエータとして現在,広く使用されているDCサーボモータ,AC サーボモータ,DDモータ,および数種の減速機について開発の経緯,研究に関して概 観する.

1.2.1 DCサーボモータ

電磁モータは100年以上の歴史を持ち,小型高出力,軽薄短小,省エネルギーとい うように,時代背景を反映する要求に応えるべく研究・開発が行われてきた.3)4)5)6) 近年 のモータの性能向上は,永久磁石の進歩に負うところが大きく,希土類磁石の実用化・特 性改善とともに飛躍的に性能が向上した.すなわち,アルニコ磁石を利用したハイブリッ ド型ステッピングモータ, 次に,フェライト磁石を応用したブラシレスDCモータ,さら に,希土類永久磁石を応用したACサーボモータが開発されてきた.

DCサーボモータの研究は,1950年代後半に始まり,当初の機器の構成としては,高 抵抗カゴ形誘導電動機を磁気増幅器で自動制御する方式であった.その後,油圧あるい は空気圧のアクチュエータの欠点を克服するために,トルク/慣性モーメントの比率が 特別に大きいモータの構成を追及した結果,1958年に平滑電機子形サーボモータが開発 された.この平滑電機子形モータは「導体をじかにモータの回転子の上に置く」という 革新的な発想から生まれた非常にユニークな構造を持ったDCサーボモータであり,そ れ以来,DCサーボモータの草分け的存在として,その優れたサーボ性能,高信頼性に より,高精度,高加減速頻度が要求される各種用途に広く採用された.

その後,1961年にフランスのセア社にてモータの配線をプリント基板上に腐食を用い て一挙に仕上げるという着想で扁平形コアレスモータが発明されたが,実際の産業用に 提供するには耐久性の点で問題があった.しかし,エッチングに代わるノッチングによ るロータ製造法の開発により,量産性,耐久性が飛躍的に向上した.このノッチング製 造方法は,同じセア社のライセンスで扁平形コアレスモータを製作する各国のメーカー が採用し,ロボット用DCサーボモータとして世界中で広く採用された.

次に,内磁円筒形コアレスモータが,扁平形コアレスモータの出力範囲を拡大するた め,扁平形コアレスモータの技術と平滑電機子形モータの技術とのコンビネーションに よって,1966年に開発された.当時,各産業の高度化・自動化が進むにつれ,電動機の

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速度制御に対する要求が高まり,誘導電動機での定速運転またはギアの切り替えなどを 行っていた分野にも直流電動機が進出してきたが,これらの用途は始動・停止・逆転が 頻繁に行われるため,一般直流機では信頼性の問題があった.この内磁円筒形コアレス モータは,上記の用途を対象にして開発され,これらの用途に最も適した特性で中程度 の応答性を持つサーボモータおよび一般可変速用の直流機として使用された.

これらのスロットレス形DCサーボモータは,巻線が空隙部内に配置されているため にリアクタンス電圧が小さく整流が良いという特徴があるが,反面,永久磁石の使用量 が多くモータ外形が大きくなるという課題があった.1970年代後半,特にロボット用と して小型で高出力を目指したロボット用DCサーボモータ(Fig.1.2)が開発された.こ れは、これらの問題点を解決したスロット付形モータで,優れた性能密度特性によりロ ボット用として広く使用されるようになった.ロボット用DCサーボモータは,希土類 系永久磁石の採用により磁気装荷を高め,さらに整流設計の工夫により、スロットレス 形と同等のモータ寿命を得ている.

Bracket

Commutator Armature Output axis Frame Bracket

Commutator Armature Output axis Frame

Fig.1.2 DC Servo motor for the use of robot developed around 1975

1.2.2 ACサーボモータ

永久磁石のエネルギー積の向上とともにモータはその能力を有効に使えるように改 良されてきたが,特に顕著な改善が行われたものがACサーボモータである.7)8)9)10)

ACサーボモータはメンテナンスフリーを特徴とするため,機器のなかに埋め込まれ て使用されることが多い.機械全体の小型化のために,モータの小型化が重要であった.

モータの性能改善の経緯を Table.1.1 に示す.3)

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開発当初は,交流モータの延長で設計されており,ステータは全節巻線が施され,極数 も4極が大半であった.永久磁石も希土類磁石を使用しても160kJ/m3程度のエネルギ ー積であったが,従来のDCサーボモータと比較して定格回転速度が3000rpmと高速 化されたことで,当時としては非常な高性能化が実現された.

高性能化の第1ステップは80年代後半であった.ステータ構造をブラシレスDCモ ータで行われていた非重ね集中巻で銅損減少の性能改善が行われた.第2ステップは9 0年代に入った頃,ネオジウム磁石が実用となり,エネルギー積が400 kJ/m3以上と従来 とは比較にならない展開が起こった.高エネルギー積を有効に使うためには,従来の4 極構造では磁気回路が不適切であったため,多極構造が採用されるようになり,6極,

8極構造が主流となった.同時にステータ製造技術にも革新が起こった.従来はモータ のスロットに巻線するためには内側から巻かなくてはならず,巻線の密度を上げて巻く ことができなかった.ソレノイドコイルのようにボビンに巻線をする場合には整列巻線 が可能である.これに着目して,ボビンコイルでステータを構成する構造の開発が行わ れた.ステータをヨークとティースに分割しティースにボビンを挿入した後にヨークと 結合する方法や,ステータティースをひとつづつ分割し,それぞれに巻線を施した後に ステータとする方法,すなわち分割巻線という革新が起こった.これにより,従来の巻 線密度が50%程度しか取れなかったのに対し,80%以上の高密度巻線が可能となり 飛躍的な銅損の低減が実現された.これらの技術進歩により,この15年でモータの小 型・軽量化が進み,容積で約1/3~1/4,質量で1/2~1/3のモータが製品化されるようにな った.

Table.1.1 Improvement of technology for AC servo motor

1980 ~ 1985 1985 ~ 1990 1990 ~ 1995

Weight of motor (750W) (kg) 8 6 3

Weight of motor (300W) (kg) 3.5 2.5 1.5

Weight of motor (100W) (kg)2 0.5

Magnet material Ferrite Samarium

-cobalt Neodium Wire winding method pile winding

non-pile and concentrated

winding

divided core winding

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1.2.3 DDモータ

ダイレクト・ドライブの歴史そのものは古く,特に軽負荷の小型トルクモータ,ある いはフォースモータは,各種の精密機器にはやくから応用されていた.一方,より大き な負荷をダイレクト・ドライブ方式で駆動するべく,大トルク低速回転のモータが登場 したのは,1950年代で,レーダーやアンテナの方向制御のために用いられた.これは,

大口径・薄型のDCトルクモータで,大口径のステータに多数の永久磁石をはめ込み,

多極構造としたものであった.また,トルクの変動を低く抑えるため,ロータには多数 のスロットを設け,コイルを多数に分割している.レーダーやアンテナの制御では,高 い位置精度が必要とされるだけでなく,極低速回転時の速度むらにも厳しい条件が課せ られた.ダイレクト・ドライブモータはこのような特殊仕様の精密機械において,その 技術が磨かれてきた.その後,計算機の周辺機器やオーディオ機器などで必要とされ急 速に広まっていった.11)12)

ロボットにダイレクト・ドライブモータを採用して本格的な研究が進んだのは,1980

~1981年にかけて米国カーネギーメロン大学(CMU)で開発された6自由度回転関節 形ロボットとされる.13) この時期は,DCサーボモータとハーモニックドライブ減速機 によるアクチュエータが,ロボットの駆動装置の主流を占めていたが,減速機でのコン プライアンスと,摩擦による伝達トルクの脈動により,著しい振動が生じることが問題 となっていた.また,バックラッシやロストモーションによる精度の低減なども問題で あった.さらに,ロボットの力制御や動的制御の研究が進みつつあったが,力やトルク を制御するには,減速機や伝達系の摩擦が大きな障害となっていた.このような問題を 解決するべく提案されたのが,ダイレクト・ドライブモータの使用であった.初期には,

CMUでは,DCトルクモータを用いていたが,出力トルクの点で問題があった.1982 年,MITで,コバルト磁石を有する高トルクDCブラシレスモータをモータメーカー とともに開発し,DDロボットを開発した.

ダイレクト・ドライブモータを使用したロボットの商品化1号機となったのは,1984 年に発表された,米国 Adept Technology 社の Adept One ロボットであった.このロボ ットに使用されたDDモータは,Motornetics社のバリアブルリラクタンス形モータが使 用され,ロボットとしては,サイクルタイム1秒以下の高速性,±25μmの高精度位置決 めを達成した.バリアブルリラクタンス形モータは,磁石のないステッピングモータと 原理的に同じであるが,ステータを二重構造にして,エアーギャップの面積を倍増し,

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さらに,ロータの歯数を増やし,高トルクが得られるよう工夫している.また,ステー タ内部に独特の磁路を形成して発熱量を大幅に抑えている.このバリアブルリラクタン ス形のダイレクト・ドライブモータは広くロボットメーカーに応用されていった.この バリアブルリラクタンス形モータに永久磁石をはさみ込み,モータ効率を向上させたハ イブリッド形モータも開発され,広く使用されている.14)15) バリアブルリラクタンス形

(VR形)とハイブリッド形(HB形)のダイレクトモータの例を次に示す.

Outer rotor

Stator core

Excitation coil

Permanent magnet Outer rotor

Stator core

Excitation coil

Permanent magnet Stator

Stator Rotor

Stator

Stator Rotor

Fig.1.3 VR type DD motor Fig.1.4 HB type DD motor

1.2.4 小型波動歯車装置

波動歯車装置は一般にハーモニックドライブ減速機として知られているが,この装置 は1955年アメリカの W.C.Musser 氏により発明され,“Strain Wave Gearing” の名称で 発表された.17)18)19) 日本では1964年,(株)長谷川歯車がアメリカから技術導入し国内 生産が開始された.その後,しばらく確固とした応用が見つからないでいたが,1978年 スウェーデンのアセア社が産業用ロボットの電動化のための減速機として使用を始め,

これを契機にロボット用を中心として広く使用されるようになった.20)21)

この波動歯車装置は Fig.1.5 に示すが3つの部品からなっており,原理についてはよ く知られているので割愛するが,基本的な特徴について述べる.最大の特徴は,

1)歯車のかみあいに,バックラッシを全く必要としないことである.

これは歯車のかみあいが転がりではなく,くさびのように入り込む独特な

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かみあいによるものであるためである.

次に,

2)たわみやすい歯車をもつため同時かみあい歯数が極端に多い.

開発当初はかみあい歯数は総歯数の約10%ほどであったが,1989年の頃の 歯形の改良により,約30%に向上している.

同時かみあい歯数が多いことから,歯車誤差が平均化され角度伝達精度が高く また,伝達トルク容量も大きい.

があげられる.

技術向上の変遷であるが,やはり疲労強度が問題であったフレックススプラインの応 力緩和形状の工夫による強度向上が何度か行われてきたことが大きい.また,歯形の改 良も1980年代後半に行われた.これは,従来は圧力角30度で低歯のインボリュート歯形 であったが,歯底曲げ応力集中が大きいこと,同時かみあい歯数が総歯数の 10% 程度 にとどまっていたため, Fig.1.6 に示すような IH歯形と呼ばれるフレックススプラ インの歯溝歯厚比を大きくし,またフレックススプラインの楕円変形による歯の移動軌 跡を解析し,同時かみあい歯数を 総歯数の30% と大幅に増やす歯形とし,ねじり剛性 も約2倍に改良された.その後,中空構造のタイプや高精度化のためのユニット構造の タイプなどより性能を引き出すための工夫がされた製品が開発された.

しかしながら,ハーモニックドライブ減速機は,小型高精度を中心に追求してきてい るため,出力軸側から回転させられる場合のバックドライバビリティへの考慮はあまり なされてこなかったと考える.

Conventional cog shape ( ~ 1988)

I H type

cog shape ( 1989 ~ ) Conventional

cog shape ( ~ 1988)

I H type

cog shape ( 1989 ~ ) Circular spline

Flex spline Wave generator

Circular spline Flex spline

Wave generator

Fig.1.5 Harmonic drive gear Fig.1.6 Cog shape

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1.2.5 ロボット用精密RV減速機

産業用ロボットにハーモニックドライブ減速機とともに広く使用されているRV減速 機について述べる.22) 23)

RV減速機の原点は建設機械であるパワーショベルの走行モータにさかのぼるといわ れる.この走行モータの減速部をベースにしてロボット用精密減速機として1986年 に開発された.この減速機は,高信頼性,低振動,低バックラッシ,低イナーシャなど の特徴により,多くの産業用ロボットに採用され,累計生産台数は120万台を越えた とされる.

RVはロータ・ベクタの意味で,ベクトル(力)が回転(ロータ)する,というとこ ろから付けられた.RV減速機の構造を Fig.1.7, Fig.1.8 に示す.

RV減速機の構造は,

1)第1減速部と第2減速部からなる2段減速機構であること.

2)第2減速部はトロコイド歯形とピン歯車を用いているピン歯車機構であること.

3)RVギアの自転を取り出すクランク軸の両端を回転支持しているのは両持ち 支持機構であること.

の3つが基本的な特徴となっている.

減速比は,1/40~1/300ほどまで,第1減速部の減速比を変えることに広範囲 にできる.クランク軸が両持ち機構であることから,ねじり剛性が大きく,定格トルク の500%の過負荷に耐えられることができる.また,ピン歯車機構により,同時かみ あい歯数が多いため,この点でも過負荷に強い.かみあいは1枚差であり,大減速が可 能である.ピンとトロコイド歯車間のバックラッシをピンの大きさを選択することによ り,ほぼゼロにすることが可能である.

この減速機は,高負荷の動作を高精度に行う場合には適しているが,構造がかなり複 雑であることから小型化,軽量化にはかなり困難が伴う.また,剛性が高く,外部から の衝撃に対して強くできている構造であるため,バックドライバビリティに関する考慮 はほとんどなされていない.転がり摩擦の部分が多いが,基本的に部品点数が多いため,

クーロン摩擦抵抗,粘性抵抗は多くなっていると考える.

(11)

Pin RV gear Crank shaft

Input gear Hold flange

Spur gear Shaft

Case

X Pin

RV gear Crank shaft

Input gear Hold flange

Spur gear Shaft

Case

X

Fig.1.7 Configuration of RV reduction gear

Case Pin

RVgear

Input gear

Spur gear

Output

Crank shaft

Shaft First

reduction gears Second

reduction gears

Z

Y

X Case

Pin RVgear

Input gear

Spur gear

Output

Crank shaft

Shaft First

reduction gears Second

reduction gears

Case Pin

RVgear

Input gear

Spur gear

Output

Crank shaft

Shaft First

reduction gears Second

reduction gears

Z

Y

X

Fig.1.8 Detailed configuration of RV reduction gear

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小型波動歯車装置 精密RV減速機 遊

形状(大きさ)小型(Φ20mmレベル)~中型中型~大型 重量軽量(100gレベル)~中量中量(数100gレベル)~重量軽量 部品点数基本3点 (ただし,ウェーブジェネレータは ベアリング含む複合部品)

ピン,ベアリング,シャフトなど 点数はかなり多い 減速比1/30~1/3201/40~1/300 許容負荷(耐久性)

 フレックススプラインが繰り返し  変形を受けるため疲労強度の  課題があるが改良されつつ  ある.

 ピン機構により同時かみあい率 が  高いため,許容負荷高い.

 同時に3枚の歯  いるた

星歯車減速機

小型(Φ10mmレベル)~中型 (50gレベル)~中量 基本6点(一段) 1/2~1/10レベル (一段の場合) 車とかみあって め通常の平歯車より高い. 精度(バックラッシ) 構造的にバックラッシはゼロ.  ただし,ヒステリシス有り.ピン機構により出力軸で1分以下 通常3度レベル,  精密級で1度レベル バックドライバビリティ 考慮があまりなされていない. 考慮があまりなされていない. 平歯車の組み合わせのため  基本的には良い.

Table.1.2 Co m par is on of re duction gear s

(13)

1.2.6 柔軟性を有するアクチュエータの研究

前節まで,ロボット用アクチュエータとして広く使用されてきたDC,AC,DDモ ータ,および2種の減速機について開発,研究の流れを述べてきた.

次に,本研究はロボット用アクチュエータに高いバックドライバビリティを与えよう とする研究,すなわち,柔らかさを与えて,人間に対して安全性を確保したり,コンプ ライアンス制御を容易にしたりすることを目指したものである.この分野の研究は従来,

力センサを用いて制御面で能動的にコンプライアンス制御を行うという方法での研究は 多くなされてきた.24)-29) しかし,本研究の目指す機構面から本質的に柔らかさを目指す 研究はあまり多くなされては来なかった.しかしながら制御的ではあるが,関連ある研 究として,力センサを用いずにコンプライアンス制御を行おうとする試みは少なくはあ るが行われてきた.すなわち,通常はコンプライアンス制御はアクティブ制御として力 センサを使用するが,それを用いず,アクチュエータ側に柔らかさを持たせて実現しよ うとする研究である.その例として,舘らは,ダイレクト・ドライブモータを用いたロ ボットの正確なモデルをもとに,内界センサから推定した角速度・角加速度を用いて,

望みの手先インピーダンスを実現する方法を提案している.30) また,村上らは,モータ のモデルと外乱オブザーバを併用することで反作用トルクを推定し,手先コンプライア ンスを実現する方法を提案している.31) 次に,大石らは,H制御の混合感度問題に基づ いて構成された加速度コントローラによる力制御系に,トルクオブザーバによる反力推 定機構を用いるセンサレス力制御系の設計法を提案している.32)33)

センサレス力制御の研究では,摩擦やバックラッシのないダイレクト・ドライブモー タを使用したものを対象としている場合が上記のように多いが,減速機付のモータを対 象とした研究は従来十分に行われてこなかった.これは,減速機を有するモータでその モデルに摩擦やバックラッシに起因する非線形特性を含む場合には,エンコーダ等の内 界センサから推定するモータのトルクが正確な値となりにくいことが一要因である.し かし,産業界では,ロボットアームの関節部をコンパクトに構成できるなどの理由によ り,高減速なハーモニックドライブ減速機が用いられることが多い.このような減速機 が用いられる場合でも適用できるセンサレス力制御の研究は数少ないが,永井らの研究

がある.34)35)

この研究は,Fig.1.9 に示すように,ハーモニックドライブ減速機の大きな静止摩擦 力の低減を目的としてディザを利用した制御方法である.効果的に静止摩擦の影響を低

(14)

減するためには,効果的なディザの波形を決定する必要がある.この研究では,正弦波 が利用されたが,静止摩擦低減の効果がある一方ロボット手先部の振動も発生し,この 低減のための調整が図られた.この結果としての効果は,静止摩擦が約半分に低減され た,との報告がなされている.ハーモニックドライブ減速機の摩擦抵抗は大きいので,

半分では十分とは言えないが,制御的にある程度低減が可能であることを示したことは 意義があるといえる.

Fig.1.9 Block diagram of dither control to a robot actuator

(15)

1.3 本研究の目的

本研究は,「外部から力を加えられた場合にできるだけ柔らかく反応する高いバック ドライバビリティを有し,かつ必要な高精度,高出力を具備するロボット用アクチュエー タに関わる設計手法を構築するとともに,実際に本機能を有するアクチュエータを実現 し,今後のロボット機構設計の向上に寄与すること」を目的とする.

この目的を達成するために,具体的には, 次の提案や評価を行うこととする.

1) 高バックドライバビリティの概念と定義の提案

2) 高バックドライバビリティを実現するための高出力モータの 設計法の提案

3) 高バックドライバビリティを有する減速機の設計法の提案 4) 高バックドライバビリティを有するアクチュエータ(モータ

および減速機)を製作し,定量的に評価

5) さらにロボットシステムとして統合し,システム全体としての 性能の評価

高バックドライバビリティを有するロボットアクチュエータの実現には,高出力モー タと高バックドライバビリティを有する減速機の双方が必要であると考えるがその背景 を説明する.

基本的に,高バックドライバビリティの実現には減速機の検討が重要であるが,バッ クドライバビリティは減速比ができるだけ低いほうが高いことがわかっているため低減 速比を目指すことになる.必要な高出力を実現するためには, 減速機の減速比を低くし た分だけモータそのものの出力をサイズを維持したまま向上させる必要が生じる.した がって,高バックドライバビリティを持つロボットアクチュエータの実現には,高出力 モータとバックドライバビリティの高い減速機の双方の実現が不可欠となる.これより,

具体的なテーマとしては, 高出力軽量モータの実現,高バックドライバビリティを有す る高精度減速機に必要な要素の解析,必要仕様に基づく高精度減速機の実現、モータと減 速機を組み合わせたアクチュエータとしての必要仕様の実現などをあげ,それぞれの設 計手法について提案,実験,評価を行う.

(16)

1.4 本論文の構成

本論文の第2章以降の内容は以下の通りである.

第2章では,本研究の目的である高バックドライバビリティを有するロボット用アク チュエータを実現するにあたり,まず,バックドライバビリティとは何かという概念の 検討を行う.バックドライバビリティという概念については従来より定性的な説明は存 在していたが,本研究のようにバックドライバビリティの向上を目指す場合には,定量 的な定義が必要となる.したがって本章では,まず,バックドライバビリティの概念の解 析を行う.すなわち,モータと減速機を含めた機構系のモデルについて検討し,従来,定 性的な概念しかなかった「バックドライバビリティ」という概念の定量的定義について 新たに提案する.そして,この定義に基づいて,高バックドライバビリティの実現の指針 を示す.その中で,静的バックドライバビリティおよび動的バックドライバビリティの 概念についても新たに提案を行う.

第3章では,高バックドライバビリティを有するアクチュエータとして不可欠なロボ ット用高出力モータの機構設計について述べる.このモータの特徴は,従来の同サイズの ものに比べて出力重量比で約2~3倍を実現し高出力であること, 従来外置きであった 制御装置を小型回路化によりモータ内部に内蔵させることを実現したこと,などがある.

本章では,特に, 高出力化に対して工夫したいくつかの方式についての設計手法,特に, 従来モータ設計にはあまり使用されてこなかったが,計算時間,精度の点で大変効果的 な3次元電磁場解析シミュレーションによる設計手法の提案を行い,コア形状やロータ のスキュー角度などの最適化設計を新たに試みた結果について述べる.

第4章では,高いバックドライバビリティを有するロボット用高精度減速機の構造設 計手法について述べる.まず,高精度を確保するためのバックラッシの低減について述べ る.次に,第2章で述べた「バックドライバビリティ」の定量的な定義に基づき,具体 的な向上設計手法である,慣性抵抗の低減,粘性抵抗の低減,クーロン摩擦抵抗の低減, について述べる.次に,これらの設計手法に基づき試作を行った減速機,およびいくつ かの同レベルの仕様を持つ減速機に対して,従来には定量的に計測されたことのなかっ た実際のバックドライバビリティ値,本章では静的なバックドライバビリティ値の計測 実験を行い,評価,考察を行う.対象は,試作した2種の減速機,ロボットの減速機として 広く利用されているハーモニックドライブ減速機2種,および,試作ロボットなどに利用 されることの多いマクソンモータ社の遊星歯車型減速機1種について行う.そして,これ

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らの実験データに関して比較評価を加える.

第5章では,さらにこの検討を進め,減速機を外部からある回転数で回転させている 場合の抵抗,すなわち,動的な状態でのバックドライバビリティ値について計測し評価 検討を進めていくことを行う.その計測と検討の必要性は,ロボットの関節が転倒など により衝撃力を受ける場合,その衝撃力を緩和するためには減速機が外力により急速に 回転数を上げていく必要があり,その動的な状態を知ることが大変重要となるためであ る.すなわち,外部から回転力を受ける場合にできるだけ抵抗が少ないことが重要で,

これにより減速機や関節機構の破壊を軽減することにつながることになる.減速機が外 力トルクにより出来るだけ少ない力で回転を始めることも重要であるが,その後も出来 るだけ少ない力で回転数が急速に上昇していくことも大変重要である.特に腕部の関節 は転倒衝撃を受ける役割を持つことが多いが,衝撃力により回転数が急速に上昇する性 能を持つ必要性が高い.この理解のため,前章と同じく各種減速機に対して,外部から の回転トルクとその時に生じる回転数を計測し,比較検討と考察を行う.

第6章では,前章まで検証してきた高バックドライバビリティを有するロボット用ア クチュエータを実際のロボットシステムに適用することを試みる.適用するロボットシ ステムとしては,小型のヒューマノイドロボットを取り上げる.まず,適用するロボッ トのサイズ,重量などの仕様について検討し,その仕様から導かれるアクチュエータの 仕様について検討する.次に,ロボットシステムのアクチュエータとして望まれる具体 的な性能について述べる.

第7章では,第6章で取り上げた小型のヒューマノイドロボットシステムにおいて,

本研究におけるロボット用アクチュエータが,目標とした仕様を満足させているか総合 動作実験し評価を行う.第3章より,高出力アクチュエータ,特に高出力小型モータ部 の実現,次に,小型高精度減速機の工夫,特にバックドライバビリティの向上を目指し,

それぞれの設計手法について述べてきている.ここでは,これらの実現がロボットシス テムとしての性能を満足させているかどうか,また高バックドライバビリティの性能を 発揮しているかどうかを各種の総合動作実験を行い,その評価を通して確認することを 主題とする.具体的な各種動作として,負荷の高い動作として広角度の旋回動作の評価 を行う.次に,転倒動作として前方転倒動作および後方転倒動作の実験評価を行う.特 に,アクチュエータ及び減速機の効果について確認し評価を行う.

第8章では,本論文の結論を述べる.

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