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第一章 序論

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Academic year: 2022

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(1)第一章 1.1 1.1.1. 序論. 研究背景 ZnO の研究史. 微結晶、粉末状の ZnO はこれまでバリスタや蛍光体材料として各種電子機器に広く 用いられてきた。また ZnO は製膜化が容易であり、かつ圧電性を持つことから表面弾 性波デバイスへの応用研究が古くから行われてきた 1)。 近年は、紫外光領域に吸収端を持ち、バンドギャップが 3.4 eV と GaN とほぼ同じこ とから、ウルツサイト構造をもつ、ワイドギャップⅡ-Ⅵ族半導体の一つとして注目が 集まっており、短波長用光デバイスへ向けた研究が盛んに行われている。 最近では、透明薄膜トランジスタの材料であるアモルファスシリコンよりも、ZnO の特性が良いことが分かってきており、透明薄膜トランジスタへの応用に向けた研究が 始まっている 2-5)。一方、透明導電膜材料としては、現在、インジウム・スズ酸化物 (ITO) が主体であるが、Pb はんだの使用が制限される中でその代替材料として In が使用され、 その結果、In の供給が逼迫し始めている。導電性 ZnO 薄膜はその豊富な資源量と安全 性の観点から ITO の代替材料として脚光を浴びている 6-11)。. 1.1.2. 短波長光源材料としての ZnO12-14). 短波長光源には、 ・ 空間的分解能が高いことから DVD などの記憶デバイスや顕微鏡・露光機などの光 学機器 ・ 蛍光体による波長変換に適用すると、変換効率が高く種々の発光スペクトルを得る ことが可能であることから優れた色彩能力をもつ照明やディスプレイ ・ 化学合成・医療・有害物処理などに用いる化学的励起光源. 1.

(2) ・ 環境モニターや DNA チップなどの医療検査に用いるコンパクトな分光的励起光源 等広範な応用分野が存在する。 この中でも近年のマルチメディア時代の到来により、DVD などの高密度光記憶用の 光源として重要な役割を担っている。このため短波長用のレーザーが世界中で研究され ており、赤碕・中村らが開発した InGaN を活性層とした青色 LED やレーザーダイオ ードは産業上大きなインパクトを与えたことは良く知られている 15,16)。このような短波 長光デバイスの研究・開発の流れの中で、紫外線レーザーの新しい材料として ZnO に 注目が集まっている。 光記録密度の向上を目指した青色・紫外領域の化合物半導体レーザーの材料として研 究されているⅢ族窒化物およびⅡ族セレナイド・サルファナイドと比較した物性パラメ ータを表 1-1 に示す。励起子とは結晶中に励起される素励起単位であり、一対の電子と ホールから形成されており、水素原子と同様に静電引力で安定化している。ZnO では 励起子束縛エネルギーが 60 meV と大きく、そのため、室温、高密度状態でも励起子が 安定に存在できるという特徴がある。そのため現在実用化されている半導体レーザーは、 例えば GaAs/AlGaAs 系半導体レーザーなどのように電子・正孔系の再結合遷移を用い ているのに対して、ZnO は励起子の消滅にともなう発光を用いることができる。今、 半導体内に励起子が生成されたとすると励起子間の平均距離が十分大きいときは、励起 子の再結合による発光が主要な過程となる。励起子の密度が増加すると、まず励起子間 の相互作用が無視できなくなる。そして水素原子二つが共有結合により水素分子をつく るように励起子分子が生成したり、励起子間、励起子分子間の非弾性衝突が生じたりす るようになる。さらに励起子密度を高くしていくと、電子−正孔間のクーロン力が遮蔽 されてしまい、励起子はもはや安定に存在できなくなる。高密度励起子ガス状態から電 子−正孔プラズマ状態の遷移をモット遷移という。この高密度励起された励起子が解離 してしまうモット遷移密度は、電子・正孔系に反転分布が生じるに必要なキャリア密度. 2.

(3) より 1〜2 桁以上低くなる。よって励起子を利用するレーザーなら 2 桁以上低閾値で、 量子効率の良いレーザー発振が達成できると考えられている。また、多体効果を考慮し たモデルも示唆されている。励起子は、電子と正孔の 2 つのフェルミ粒子からなる複合 粒子であり、近似的にボ−ズ粒子であるとみなすことができる。もし、この仮定が正し ければ、光子と励起子ボーズ統計性から励起子の直接再結合によるレーザー発振は有り 得ない。よって、レーザー発振に励起子が関与するとすると、励起子−縦光学フォノン 散乱過程、励起子分子発光、励起子−励起子間の非弾性散乱過程、励起子−電子 (正孔) 散乱過程などの多体効果を考慮する必要があり、そのようなモデルが幾つか提唱されて いる 17,18)。 室温での光励起による励起子レーザー発振は、すでに観察されている 19,20)。室温で の光励起による ZnO の励起子によるレーザー発振の様子を図 1-1 に示す。図は Nd : YAG1/3 波長レーザー (355 nm、15 psec) による光励起・発光スペクトルである。発 光スペクトルは、励起パワーの増大とともに、自由励起子発光 (Eex)、ついで励起子・ 励起子 (P2) 自然発光を示し、その後に、しきい強度 (Ith)、24 kW/cm2 からポンピン グ強度の 8 乗で強度が増大する強い発光 (P)、そして Ith= 55 kW/cm2 から 5 乗で強度 が増大する発光 (N) によるスペクトルの飽和を示している。P2 および P 発光は、励 起子と励起子の衝突・散乱過程を伴う励起子の再結合による発光により説明できる。n = 1 の状態にある二つの励起子が衝突し、一つの励起子が n = 2 (P2 発光) もしくは、n = ∞ (P 発光) の状態にたたき上げられ、残ったもう一つの励起子が再結合して発光 する。N 発光は、励起強度の増大とともにレッドシフトとブロードニングを示すこと により、前述のエレクトロン-ホール・プラズマ発光であると考えられる。図 1-2 に示 すように、青色 GaN レーザーに比べたレーザー発振のしきい値が非常に小さく、励起 子を用いた高効率青・紫外レーザーの実現が期待できる。. 3.

(4) 表 1-1. Ⅲ族ナイトライドおよびⅡ族セレナイド・サルファナイドと比較した. 物性パラメータ 12). 図 1-1. 光励起強度を変化させたときの ZnO ナノ結晶の室温発光スペクトル 12). Eex : 自由励起子発光、N : エレクトロン-ホール・プラズマ発光、P, P2 : n = 1 の状態に ある二つの励起子が衝突し、一つの励起子が n = 2 (P2 発光) もしくは、n = ∞ (P 発光) の状態にたたき上げられ、残ったもう一つの励起子が再結合して発光する。. 4.

(5) 図 1-2. レーザー発振のしきい値の推移 (GaN v.s. ZnO) 12) 1〜5 の各点は GaN について報告された値. 5.

(6) 1.1.3. ZnO の問題点. 短波長光源を含む光デバイスへの応用を進めるには、電気的、光学的に高度に制御さ れた品質の高い結晶が必要であるが、ZnO の作製技術は未だに黎明期にあり、解決す べき多くの問題がある。そのうち最も大きなものは、ZnO の p 型化である。Ⅱ-Ⅵ族化 合物半導体は、一般に、p、n どちらか一方の結晶は得やすいが、その反対側の極性を もつ結晶を得るのは困難である。この現象は、キャリア補償効果として知られている 21)。 ZnO も、Ⅱ-Ⅵ族化合物半導体の一つであり、n 型は得やすいが、p 型を得るのは非常 に困難であることが知られている。これまで、多くの p 型 ZnO を得ようとする試みが 行われ、p 型 ZnO が得られたという報告はいくつかあったものの、再現性に問題があ り pn 接合が得られたという報告は皆無といってよかった 22-31)。しかしながら、最近、 Tuskazaki らが ZnO との格子不整合の小さな ScAlMgO4 基板を用いて窒素ドーピング とアニールを交互に繰り返しながら ZnO の成長を行うことにより p 型 ZnO 結晶を作製 することに成功した 32)。彼らは、pn 接合も作製し、pn 特性が確認されていることから、 信頼性の高い結果であると考えられる。この結果は p 型 ZnO の実現が可能であること を証明したという点で意義深いが、p 型キャリア濃度はまだ低く、実用的なレベルには 達していない。また量産化に向かない方法でもあるため、今後も高キャリア濃度 p 型 ZnO 結晶の実現を目指して努力が払われる必要がある。 ZnMgO は ZnO よりもバンドギャップが大きく、ZnO のバンドギャップエンジニア リング材料として期待されている。例えば超格子構造を発光デバイスへ応用すれば、 励起子の存在確率が増し、発光に寄与する励起子密度が大きくなるために、励起子が 関与した発光効率の上昇が期待される。しかし、ZnO はウルツサイト構造 (六方晶)、 MgO は岩塩構造 (立方晶) と結晶系が異なっているために、ZnMgO 中の Mg の量が 大きくなると、ウルツサイト構造と岩塩構造に相分離が起こってしまうという問題が ある。そのため、ウルツサイト構造を保ったまま結晶中に含まれる Mg の割合を増や. 6.

(7) す努力が行われている 33-45)。. 1.2. 研究の目的. さまざまな種類の光デバイスを作製するには p、 n 型両方の結晶が必要不可欠である。 しかしながら、ZnO は p 型化が非常に困難である。もともと補償効果により p 型が得 られにくい面があるが、それに加えて結晶成長技術の不完全さからアンドープ結晶にお ける残留キャリア濃度が高く、そのような結晶にドーピングを行っていることが p 型化 を困難にしている大きな要因であると考えられている。それゆえ、p 型化実現のために は、はじめに結晶性が良く残留キャリア濃度の十分に低減したアンドープ結晶を得るこ とが必要であると考えられる。そのような観点から ZnO 結晶成長を考えると、基板結 晶としてホモエピタキシーが可能な ZnO 基板を使用するのが最もよい。しかし、ZnO 基板はまだ高価で、安定な供給体制ができているとは言えない。そこで、本研究ではま ず ZnO 結晶成長において最も一般的に使われているサファイア基板を使用した。サフ ァイア基板は GaN 結晶成長の基板として盛んに使われ、今日の GaN の発展に大きく 貢献してきた基板である。しかし、サファイア基板は、ZnO の結晶成長の基板として はまだ十分に成功しているとは言えない。残留キャリア濃度の低いアンドープ結晶は得 られておらず、依然として発展段階にあると言える。そこで、本研究ではサファイア基 板上で ZnO の残留キャリア濃度を下げる試みを行った。本研究ではサファイア以外に Si 基板も研究の対象とした。Si 基板は、サファイア基板に比べて電気伝導性があり、 安価かつ結晶品質が高く、加工がしやすいという特徴がある。LED や半導体レーザー など、注入型デバイスへの応用を考えたときに有利である。しかし、Si 基板上に ZnO を結晶成長する場合、基板表面の酸化の問題が報告されており 46,47)、これまで成長の報 告例は少ない。本研究では、将来の短波長デバイス応用を見据え、Si 基板上での ZnO の結晶成長を行った。また、合わせて ZnO のバンドギャップ変調材料として有力であ. 7.

(8) る MgO との混晶の結晶成長も行い、ZnMgO/ZnO/ZnMgO 単一量子井戸構造の試作を 行った。 さらに、ガラス基板上にも ZnO 結晶成長も試みた。ガラス基板は安価であり、太陽 電池やフォトディテクター、透明トランジスタ等のデバイスを作製すること、またそれ を大面積化するのに有効であると考えられる。このような観点により、ガラス基板上に も ZnO 結晶成長を試みた。. 1.3. 分子線エピタキシャル成長法 (Molecular Beam Epitaxy : MBE) 48-50). 本研究では、結晶成長の方法として分子線エピタキシャル成長法 (Molecular Beam Epitaxy : MBE) 法を用いた。 応用が期待されている ZnO 素子に対する結晶成長技術を図 1-3 に概観する。 透明導電膜や、薄膜トランジスタ等の作製には安価で大面積に成長できるスパッタリ ング法が用いられることが多い。しかしながら、スパッタリング法では結晶品質に限界 があり、紫外線レーザーを含む短波長光デバイスへの応用を目指す上ではふさわしくな い。 本研究で用いた MBE 法とは、超高真空中に基板を置き、これに対向して設置したる つぼ内に、成長させようとする結晶の原材料を入れて加熱し、蒸発昇華により気相とし て基板上に結晶成長を行う技術である。MBE 法を用いて成長した ZnO は、図に示す通 り、光デバイスや Si との集積デバイス、センサなどの応用分野が期待されている。そ れゆえに、本研究においては、MBE 法を用いた。 以下に MBE 法の利点を列挙しておく。 ・ 通常の真空蒸着法とは異なり、MBE では 10-10〜10-11 Torr 程度の超高真空を用いて いるため、基板表面への残留不純物の取り込みが少なく、高純度のエピタキシャル. 8.

(9) 結晶が得られる。 ・ 成長速度を極めて遅くすることができ (0.1〜数μm/hr)、かつ多くの半導体材料の 場合で成長モードが二次元的であるため、原子レベルの膜厚制御が可能であり、急 峻なヘテロ界面を作製することができる。 ・ 各蒸着源セルにあるメカニカルなシャッタや各セルの温度を制御することによって、 成長方向の混晶の組成分布、不純物ドーピングの分布を任意に高精度で制御するこ とができる。 ・ 結晶成長中に反射高エネルギー電子線回折 ( Reflection High Energy Electron Diffraction : RHEED) 等の方法を用いて、成長表面をその場観察することができ、 それにより成長機構に関する様々な情報が得られ、成長の制御にフィードバックす ることができる。. 図 1-3 応用が期待されている ZnO 素子に対する結晶成長技術 52). 9.

(10) 1.4. 本論文の構成. 本研究では、サファイア、Si およびガラスなどの各種の基板上に MBE 法により結晶 性の良い ZnO および ZnMgO 結晶を成長させる技術を確立し、最終的にこれらの結晶 を組み合わせることにより ZnO・ZnMgO の量子井戸の作製を行った。本論文は、九章 よりなり、以下に各章の概略を述べる。章の構成を以下のようにした理由を先に述べて おく。MBE 法における ZnO 薄膜作製用の酸化源としてはオゾンと酸素プラズマを用い た。オゾンを用いた成長では、Si 基板上では良質な結晶が得られたが、酸化物基板で はエピタキシャル結晶は得られなかった。また、バッファ層として初期 Zn 層、MgO バッファ層を用いた。初期 Zn 層は、Si 基板上でのみ有効であった。MgO バッファ層 は Si およびガラス基板と ZnO との熱膨張係数差に起因して ZnO 上に発生するクラッ クを除去するために用いた。 第一章「序論」では、ワイドギャップ半導体材料としての ZnO の特徴を述べ、本博 士論文での研究の目的を明確にする。 第二章「サファイア基板上の ZnO 結晶成長」では、最も一般的に使用されているサ ファイア基板を用い、Zn 源として加熱された金属内からの Zn 蒸気、酸素源として高 周波出力 (RF) によって励起された酸素プラズマからの活性酸素を用いている。サフ ァイア基板結晶についてはいくつかの結晶面に対し成長を試みたが、六回対称性を有す る c 面上の結晶成長では良質の結晶が得られなかった。そこで、非対称面である a 面を 基板として用いて成長を行ったところ再現性のよい結晶成長が実現した。さらに、低温 ZnO バッファ層の成長後、高温で ZnO を結晶成長することにより結晶性を大幅に改善 することに成功した。 第三章「サファイア基板上に成長した ZnO 結晶の電気的・光学的特性」では、第二 章で成長した ZnO 結晶のフォトルミネッセンス (PL) による評価について述べる。成 長した ZnO 結晶をさまざまな温度および雰囲気でアニールし、その PL スペクトルを. 10.

(11) 測定することにより、測定に現れるピークの起源のいくつかを明らかにした。 第四章「Si 基板上の ZnO 結晶成長」では、二種類の酸化源を用いてエピタキシャル 成長を試みた。一つはオゾン、もう一つは RF プラズマである。はじめに、オゾンを用 いて行った Si 基板上の ZnO 結晶成長について述べる。本実験においては 3%のオゾン を含む酸素ガスを用いた。このようなオゾン含有量の小さい原料ガスを用いることによ り ZnO の成長速度を遅くし、高品質の ZnO 結晶の実現をねらった。しかし、Si(111) 基板上に直接 ZnO の成長を行ったところ、ZnO の成長は観察されなかった。この原因 は、Si 基板表面が ZnO 成長前に酸素ガスによって酸化され、Si 表面を不活性化したた めであることが明らかになった。この問題を解決するため、酸素ガスを成長室内に導入 する前に Si 基板表面を Zn 薄膜で被い、Si 基板表面が酸素ガスに接触しない工夫を行 った。この Zn 層を酸化することによって、ZnO を形成し、これをテンプレートとして ZnO の成長を行った。こうして成長した ZnO 薄膜は、基板に対して垂直に ZnO[0001] 軸と ZnO[ 10 1 1 ]軸が混在して成長しており、得られる PL 強度も弱いものであった。 この原因として、酸素ガス中のオゾン量が少ないため、成長室中に十分な酸素原子を供 給することができず高密度の欠陥を生じたと考えられる。上述の ZnO[ 10 1 1 ]軸は成長 後のアニールによって消滅し、PL 強度にも著しい増加が見られた。したがって酸素原 子の供給量を増加させることができれば結晶性は改善するものと考えられた。 続いて、酸素源として RF プラズマセルによって励起された酸素プラズマを用いて行 った Si 基板上での ZnO 結晶成長について述べる。酸素プラズマは、前章で用いたオゾ ンを含んだ酸素ガスに比べ反応に寄与する酸素原子の供給量は格段に高いと考えられ、 結晶性の改善、および成長速度の増加が見込まれた。オゾンを用いる場合と異なり、Zn 層によって Si 基板表面を保護しなくても ZnO の成長は可能であった。しかしその場合 顕著な配向性は見られなかった。そこで、前章と同様、酸素ガスを成長室内に導入する 前に、Si 基板表面に Zn 膜を形成し、Si 基板表面を酸素ガスに触れないようにした後、. 11.

(12) これを酸化して ZnO を形成した。この ZnO 層をテンプレートとして ZnO の成長を行 ったところ、基板面に垂直に[0001]軸配向した単結晶の ZnO が得られ、PL 測定の結果 も良好であった。またプラズマを用いた成長では、オゾンを用いた場合に比べて成長可 能な基板温度がきわめて広いことを見出した。この特徴を利用して成長速度を上昇させ たところ、結晶性、PL 特性がともに向上することが確認された。ところが、ZnO 結晶 表面を光学顕微鏡によって観察したところ、Si 基板の{ 1 1 0 }方向に沿った規則正しい直 線状のクラックが発生していることが観察された。クラック自体の方向は決まっており、 クラックによって囲まれている部分の結晶性は非常に良いが、このようなクラックはデ バイスへの応用上大きな問題となる。 第五章「RF-MBE 法による MgO バッファ層を用いた Si 基板上の ZnO 結晶成長」で は、MgO バッファ層を用いて Si 基板上に行った ZnO 結晶成長について述べる。第四 章で述べたように、Si 基板上に初期 Zn 層を用いて ZnO を結晶成長するとクラックが 発生してしまう。このクラックは Si 基板と ZnO の熱膨張係数の差に起因して発生する と考えられる。つまり、ZnO の熱膨張係数が Si 基板のそれよりも大きいために、成長 後の基板温度降温過程において ZnO は Si 基板から引っ張り応力を受け、そのためにク ラックが発生すると考えられる。この熱膨張係数差を緩和するためにバッファ層の導入 を検討し、本論文においてはバッファ層材料として MgO を用いた。MgO は、ZnO や Si に比べて熱膨張係数が大きいため、薄い MgO バッファ層を Si と ZnO の間に挿入す ると、ZnO は MgO から圧縮応力を受け、これが Si 基板からの引っ張り応力と相殺し あってクラックの発生が除去されると考えられる。ところが、MgO は ZnO と同様酸化 物であるので、Si 基板に MgO を結晶成長しようとすると、ZnO の場合と同様に Si 基 板表面の酸化の問題が発生する。そこで、Si 基板の酸化を防ぐ目的で MgO を結晶成長 する前に Mg を基板表面に照射して、その後 MgO を成長した。このプロセスを用いて Si 基板上に良好な MgO 結晶を得ることに成功し、この MgO バッファ層を用いて ZnO. 12.

(13) の結晶成長を行った。このようにして成長した ZnO は、表面全体に渡ってクラックが 見られず、その特性も良好であった。 第六章「RF-MBE 法による Si 基板上の ZnMgO 結晶成長」では、MgO バッファ層 を利用して、Si 基板上に作製した Zn1-xMgxO 結晶成長について述べる。Zn1-xMgxO は、 ZnO と MgO との混晶で、ZnO よりバンドギャップが大きく ZnO のバンドギャップエ ンジニアリング用材料として期待されている。MgO バッファ層上に直接 ZnMgO を結 晶成長すると立方晶の ZnMgO が成長してしまうため、本論文では MgO バッファ層の 上にさらに ZnO バッファ層を成長させることにより六方晶表面を出現させ、その上に ZnMgO を結晶成長した。その結果、結晶性の良い六方晶 Zn1-xMgxO を得ることに成功 した。均一な六方晶 Zn1-xMgxO は、混晶領域 0≦x≦0.4 の範囲で得られ、x>0.4 では 相分離現象が観察された。 第七章「RF-MBE 法による Si 基板上の ZnMgO/ZnO/ZnMgO 単一量子井戸構造の作 製」では第六章までの方法を用いて Si 基板上に成長した ZnMgO/ZnO/ZnMgO 単一量 子井戸構造について述べる。ZnMgO/ZnO/ZnMgO 単一量子井戸構造の Si 基板上での 成長は我々の知る限り世界初の成長であり、量子井戸の成長を示す顕著な PL 発光が観 察された。 第八章「RF-MBE 法によるガラス基板上の ZnO 結晶成長」では、基板として結晶で はなくガラス材料を用いる場合の ZnO 結晶成長について述べる。酸素源としては同様 に RF プラズマを用い、さらに MgO バッファ層を用いて成長した。ガラス基板上に直 接 ZnO を結晶成長すると、ZnO にはクラックが発生してしまう。これは、Si 基板上と 同じ現象と考えられ、その原因は熱膨張係数差に関係していると考えられた。この熱膨 張係数差を緩和し、クラックのない ZnO 結晶を作製するため、Si 基板の場合と同様 MgO バッファ層を導入した。これによってクラックのない ZnO 結晶が得られ、PL 特 性の大幅な向上が見られた。また、MgO バッファ膜厚によって成長メカニズムが異な. 13.

(14) ることが示唆された。 第九章「結論」では、第一章〜第九章までの内容をまとめ、本研究によって達成され たことを明らかにし、今後の展望を明確にする。. 14.

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