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2021年 3月修了

早稲田大学大学院商学研究科

修 士 論 文

題 目

ボードジェンダーダイバーシティが 企業パフォーマンスに与える影響

研究指導 財務会計

指導教員 八重倉 孝 教授

学籍番号 35191044-1

氏 名 陳 夢吟

(2)

概要書

総務省統計局によると、2019年12月1日(確定値)の総人口は1億2614万4千人で,

前年同月に比べ減少は0.23%(29万1千人)であり、2019年現在の高齢者人口割合は 28.5%、まさに少子高齢化と労働力不足が厳しい現状である。企業にとって多様人材の活 用が急務となっている中、大量の女性がいまだに労働市場に参入していない。労働市場に おける女性の活躍は一般社員にとどまらず、管理層でも女性の活躍が期待または推進され ている。2015年6月1日に、株式会社東京証券取引所から公表された「コーポレートガバ ナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値に向上のために~」の要請か ら見ると、現在の日本では、企業における取締役の多様性、特にボードジェンダーダイバ ーシティに関しての関心が高まっている。しかし日本における上場企業の女性役員登用は 諸外国の女性役員割合と比較して低い水準にとどまっている。さらに、ボードジェンダー ダイバーシティと企業パフォーマンスに関する数多くの研究にもかかわらず(Dobbin&

Jung 2011など)、女性取締役がコーポレートガバナンスに及ぼす実際の影響はまだ日本で

は明確にされていない。よって、本研究はボードジェンダーダイバーシティが企業にどの ような影響を与えるかを財務の視点から分析した。

ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスの関係について、海外諸国の研 究における結果は、正の関係、負の関係と無関係がそれぞれあり、一致した結果が得され ていない。日本の研究における結果は、ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォー マンスの間で基本的に正の関係が見られる。先行研究では、一致しない結果が存在するに もかかわらず、さらにOLSによる内生性の問題も解決されていない。この考えに基づき、

本研究では先行研究で取締役会の実効性に影響できる重要な要因を調べ、取締役会のモニ タリング機能を特定した。また、内生性の問題を解決するために、SEMを分析手法として 研究を行った。本研究では、2016年〜2019年における東証一部の上場企業を研究対象と して、取締役会のモニタリング機能を加え、ジェンダーダイバーシティと企業パフォーマ ンスの関係について実証研究を行う。それぞれの仮説は以下の通りである。

仮説1

HA: ボードジェンダーダイバーシティとボードモニタリングには関係がある。

HA0: ボードジェンダーダイバーシティとボードモニタリングには関係がない。

仮説2

HB:ボードモニタリングと企業パフォーマンスには関係がある。

HB0:ボードモニタリングと企業パフォーマンスには関係がない。

(3)

仮説3

HC:ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスには関係がある。

HC0:ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスには関係がない。

研究結果としては、① ボードジェンダーダイバーシティとボードモニタリングの間に は有意の正の関係がある、② ボードモニタリングと企業パフォーマンスの間には有意な 関係がない、③ ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスの間には有意の 正の関係がある。よって、仮説1と仮説3が支持され、仮説2が支持されなかった。

本研究の貢献としては、会計またはコーポレート・ガバナンス分野でまだ広く使われて いない研究手法SEMを使い、ジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスの間に媒 介変数であるボードモニタリングを加えて、より複雑かつ妥当性がある分析を行ったこと である。

本研究のインプリケーションは、第一に、投資家は投資を判断する時、非財務的情報も 重視するべきである。第二に、管理層におけるより良い人材を確保または活用するため に、日本企業は自発的に女性役員を雇用するべきである。第三に、ポリシーメーカーはジ ェンダーダイバーシティを促進する制度を作る同時に、女性が働きやすい制度を作るべき である。

本研究の限界と今後の課題は、第一に、本研究は経済的視点から出発し、ジェンダーダ イバーシティの効果を検証したが、将来の研究においては、財務的効果だけではなく、社 会的効果も考慮するべきである。第二に、ボードモニタリング以外には、ボードジェンダ ーダイバーシティがどのような企業行動の変化を通して企業パフォーマンスを影響するか は将来の研究するべき課題である。

(4)

目次

1.

はじめに

... 1

1.1. 研究背景 ... 1

1.1.1.問題意識 ... 1

1.1.2.日本及び海外の現状 ... 3

1.2. 研究目的 ... 5

1.3. 研究意義 ... 5

1.4. 本論文で明らかになったこと ... 6

1.5. 本論文の構成 ... 7

2.

先行研究

... 8

2.1 ボードダイバーシティに関する先行研究 ... 8

2.1.1 ダイバーシティの概念 ... 8

2.1.2 各国の現状 ... 9

2.2 世界におけるボードジェンダーダイバーシティの先行研究 ... 12

2.2.1 ボードジェンダーダイバーシティが企業活動にもたらす影響 ... 17

2.2.2 ボードジェンダーダイバーシティと財務的評価の関係 ... 19

2.3 日本におけるボードジェンダーダイバーシティの先行研究 ... 21

3.

研究仮説・リサーチデザイン

... 24

3.1 仮説の構築 ... 24

3.2 モデルの構築 ... 25

3.3 メソドロジー ... 27

3.4 データ及び変数の説明 ... 28

3.4.1 データ ... 28

3.4.2 変数の説明 ... 29

3.5 記述統計 ... 33

.

分析結果

... 38

4.1 分析結果 ... 38

4.2 モデルフィットネス ... 40

5.

頑健性テストと追加分析

... 41

5.1 頑健性テスト ... 41

5.2 追加分析 ... 42

6.

まとめ

... 45

6.1 結論とインプリケーション ... 45

6.2 本研究の限界 ... 46

(5)

参考文献

... 48

(6)

1. はじめに

1.1. 研究背景

1.1.1. 問題意識

現在の日本では、取締役の多様性は企業のコーポレートガバナンスの中でとりわけ 重視されている項目である。2015年6月1日に、株式会社東京証券取引所から公表さ れた「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値 に向上のために~」(以下CGコード)の「原則4-11.取締役会・監査役会の実効性確 報のための前提条件」及びその補充原則を見ると、日本では取締役会の多様性に関し ての関心が高まっていることがわかる。

原則4-11の内容は以下である。「取締役会は、その役割・責務を実効的に果たすた めの知識・経験・能力を全体としてバランス良く備え、ジェンダーや国際性の面を含 む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。また、監査役には、適 切な経験・能力及び必要な財務・会計に関する知識を有するものが一名以上選任され るべきである。取締役会は、取締役会全体としての実効性に関する分析・評価を行う ことなどにより、その機能の向上を図るべきである。」

日本における取締役の多様性が重視される1つの理由として、少子高齢化が考えら れる。「平成4年度国民生活白書」では、「出生率の低下やそれに伴う家庭や社会に おける子供数の低下傾向」を「少子化」、「子供や若者が少ない社会」を「少子社 会」と表現している。

総務省統計局によると、令和元年12月1日(確定値)の総人口は1億2614万4千 人で,前年同月に比べ減少は0.23%(29万1千人)である。総人口の中、15歳未満人 口(1517万4千人)の前年同月に比べ減少は一番激しい1.38% ( 21万3千人)一方、

65歳以上人口(3592万4千人)は前年同月に比べで0.88%(31万3千人)を増加し た。高齢化率が7%を超えると「高齢化社会」、14%以上を「高齢社会」と、21%を 超えると「超高齢社会」と定義されている。

実際には、少子高齢化は決して新しい話題ではなく、すでに問題が現れている(図 1)。日本の場合は、高齢者人口及び割合は数十年間で右肩上がりしており、1970年

(7)

における高齢者人口割合はすでに7%を超え、高齢化社会に踏み込んだ。また2019年 現在の高齢者人口割合は28.5%であり、超高齢社会の21%を遥かに超え、まさに少子 高齢化が厳しい現状である。さらに、図1から見ると、日本社会の高齢化はまだまだ 加速する可能性が大きいのである。

図1 高齢者人口及び割合の推移

(出所:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者」図1)

少子高齢化の急速な進展により、労働力の不足が大きいな社会問題となっており、

企業にとって多様な人材の活用も急務となっている。特に日本の場合は、職場の環境 や育児責任などが原因で、大量の女性がいまだに労働市場に踏み込んでいないことが 明らかになっている。

男女共同参画白書平成29年版が提供した図(図2)から見ると、最近30年間の15

〜64歳の人口就業率の推移がわかる。女性活躍の推進による女性の就業率は右肩上が りであるが、全体的に低いことがわかる。一方、男性の就業率が80%付近で推移し、

男女就業率の差が明らかである。

(8)

図2 就業率の推移(出所:平成29年版男女共同参画白書)

1.1.2. 日本及び海外の現状

労働市場における女性の活躍は一般社員にとどまらず、管理層でも女性の活躍が期 待され、推進されている。取締役会の重要性については、会社の成功と長期存続は、

取締役会の決定に左右されることで明らかである(Mishra et al.2013)。もし全員の考 え方が同じであれば、取締役会の必要はなくなる(Argüden 2010)といった指摘がなされ ている。本論文では、ダイバーシティがある取締役会はより良い意思決定と人材活用 ができ、企業のパフォーマンスを改善することを予想している。

取締役の多様性は、性別の多様性、年齢の多様性、技能の多様性などに分かれてい るが、日本の固有文化や企業慣行などの故、数多くの多様性の中、ジェンダーダイバ ーシティは弱い分野の一つである。世界保健機関(WHO)によると、ジェンダーと は、社会的に構築された女性、男性、少女、少年の特徴を指す1。現時点で、女性役員 が極めて少ない日本において、取締役会における女性の参加数はボードジェンダーダ イバーシティを評価する指標と考えられる。

具体的には、男女共通参画局によると、2012年から2019年の7年間で、上場企業 の女性役員数2は約3.4倍に増え、着実に成果が上がってはいるものの、その割合は、

1 https://www.who.int/health-topics/gender#tab=tab_1(20201220日)

2 役員は取締役だけではなく、執行役員も含めている、以下本論文でも女性取締役と執行役員を合わせて 女性役員と呼ぶ。

(9)

依然として5.2%(2019年)と低く、諸外国の女性役員割合と比較しても低い水準にと どまっている。

さらに、令和元年版男女共同参画白書では、平成30年、日本における女性管理的職 業従事者の割合は女性就業者の割合と比べてギャップが大きく、諸外国と比べて低い 水準であることが明らかになっている(図3)。

図3 就業者及び管理的職業従事者に占める女性の割合 (出所:令和元年版男女共同 参画白書)

また、CGコードの「原則 2-4.女性の活躍促進を含む社内の多様性の確保」では、

ジェンダーダ イバーシティが重視されている。その内容は以下となる。「上場会社 は、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な視点や価値観が存在すること は、会社における女性の活躍促進を含む多様性の確保を推進するべきである。」

一方、男女共同参画局の女性役員情報サイト3によると、日本政府の行動として、平 成25年4月に、安倍総理は経済界に対して「女性役員最低一人の登用」を要請した。

企業内容の開示に関する内閣府令の改定と女性活躍推進法の完全実施等、日本企業に おけるボードジェンダーダイバーシティの改善に対して政府も取り組んでいる。

(10)

海外に着目すると、ジェンダーダイバーシティの既存研究が数多く存在するが、研 究結果に関してはまだ一致した結論が得られていない。例をあげると、デンマーク企 業を研究対象として、Smith et al(2006)は女性役員を活用できる企業環境が整っては じめて、女性役員比率の向上が企業のパフォーマンス向上に寄与するという結論が出 した。Østergaarda et al(2011)も同じくデンマーク企業を研究対象として、ジェンダ ーダイバーシティが企業のイノベーションに正の影響を与えることを示唆している。

また、Adams & Ferreira(2009)は、アメリカ企業を研究対象として、女性役員と企業 のパフォーマンスには逆の因果性が存在することが示されている 。

ジェンダーダイバーシティと企業業績に関する数多くの研究にもかかわらず

(Dobbin&Jung 2011)、女性取締役がコーポレートガバナンスに及ぼす実際の影響は まだ明確になっていない。これを明確にするために、取締役会の実効性に影響する重 要な要因を調査することは不可欠である。

その中では、取締役会のモニタリング機能が一つの要因として研究されている。

Adam & Ferreira(2009)によると、ジェンダーダイバーシティは取締役会のモニタリ ング機能を向上させるが、企業パフォーマンスに対して、ジェンダーダイバーシティ は平均的に負の影響を与える。その原因は、ジェンダーダイバーシティは企業の買収 防衛力を低下させると主張している。また、Sana(2018) はフランシスの上場企業を 研究対象として、ジェンダーダイバーシティはモニタリング機能に有効であり、女性 取締役の存在は利益操作に負の影響を与えることを示した。従って、本論文も取締役 会のモニタリング機能を媒介として、企業パフォーマンスに対してジェンダーダイバ ーシティが与える影響を明らかにする。

1.2. 研究目的

本研究の目的は、日本におけるジェンダーダイバーシティの既存文献に新しいデー タと研究手法を援用し、新たな貢献をすることである。具体的には、取締役会のモニ タリング機能を中心として、最新データとより妥当な研究方法(構造方程式モデリン グ、Structural Equation Modeling、以下SEM)を使い、日本におけるジェンダーダイバ ーシティと企業パフォーマンスの関係を明らかにすることである。

1.3. 研究意義

上述のように、ジェンダーダイバーシティにおける海外の先行研究が沢山存在して いるが、日本の先行研究は、古いデータを使用しており、また極めて少ない状況であ

(11)

る。例を挙げると、山本(2014)は、上場企業約1000社の2003年と2005〜2011年の パネルデータを使い、上場企業における女性活用状況と企業業績との関係を検証して いる。海外の研究によると、女性の取締役(役員)は企業の業績と関わる可能性が大 きいと指摘されているが、その因果関係はまだはっきりしていない。さらに、既存研 究では、主に最小二乗法(OLS)を使って研究したので、内生性の問題が存在してい る。内生性の問題を克服するために、本研究は説明変数間の相関関係を許容する共分 散構造分析(SEM)を使って、より妥当な研究を行う。

1.4. 本論文で明らかになったこと

そこで、本研究では、日本における企業を研究対象として、取締役会のモニタリン グ機能を加え、ジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスの関係について実証 研究を行う。本研究は、ジェンダーダイバーシティと取締役のモニタリング機能の 間、取締役会のモニタリング機能と企業パフォーマンスの間、ジェンダーダイバーシ ティと企業パフォーマンスの間に有意な関係があると予想するので、3つの仮説を設 立する。

仮説1

HA: ボードジェンダーダイバーシティとボードモニタリングには関係がある。

HA0: ボードジェンダーダイバーシティとボードモニタリングには関係がない。

仮説2

HB:ボードモニタリングと企業パフォーマンスには関係がある。

HB0:ボードモニタリングと企業パフォーマンスには関係がない。

仮説3

HC:ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスには関係がある。

HC0:ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスには関係がない。

検証結果としては、① ボードジェンダーダイバーシティとボードモニタリングの間 には有意の正の関係がある、② ボードモニタリングと企業パフォーマンスの間には有 意な関係がない、③ ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスの間には 有意の正の関係があるということが分かった。よって、仮説1と仮説3が検証せれ、

仮説2が支持されなかった。

(12)

本論文はあくまでジェンダーダイバーシティにおける経済的効果・影響をメインに 検証する研究である。本論文の限界としては、ジェンダーダイバーシティの社会的効 果・影響は考え含めていない点である。

1.5. 本論文の構成

本論文の構成は以下の通りである。

第1章では、主に問題意識や諸国における現状などの研究背景、及び研究目的と研 究意義を述べている。第2章では、日本と海外諸国における先行研究をレビューし、

先行研究における研究結果を述べる。第3章では、リサーチデザインにおける仮説と モデルの構築、サンプルの抽出と変数の説明を述べている。第4章では分析結果と追 加分析を述べる。第5章では、分析の結果に基づいて、頑健性テストを構築し、その 分析結果を述べる。第6章では、本論文の結論、インプリケーションと限界を述べて いる。

(13)

2. 先行研究

2.1 ボードダイバーシティに関する先行研究

この節では、ダイバーシティの概念と各国の現状について述べる。

2.1.1ダイバーシティの概念

コーポレートガバナンスは1970年代末から80年代初頭のアメリカで生まれた概念 で、最初は世界的な影響が皆無であり、日本がコーポレートガバナンスを注目するの は1990年代であった(江頭 2008)。東京証券取引所「上場会社コーポレート・ガバ ナンス原則」(2004)はコーポレートガバナンスを以下のように定義している。

「コーポレート・ガバナンス」とは、会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社 会等の立場を踏まえた上で、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組 みを意味する。

日本はコーポレートガバナンスへの注意が喚起されたきっかけは、バブル時期後、

日本企業の不祥事が次々に発覚し、経営者と所有者間のエージェンシー問題が明らか になったことである。コーポレートガバナンスはエージェンシー問題を解決する手段 の一つである。この研究は、コーポレートガバナンスの質に関わるボードダイバーシ ティ、特にジェンダーダイバーシティに注目する。

谷口(2005)は、ダイバーシティ・マネジメントの視点から「ダイバーシティと は、個人の持つあらゆる属性の次元である」と示している。そのダイバーシティ属性 は、性別、年齢、人種、民族などの表層的な次元と一目で識別できない習慣、興味、

職歴、考え方などの深層的な次元に分けている。本論文はこの定義にしたがってダイ バーシティを検討する。しかし、中村(2007)は、組織に対して、このようなダイバ ーシティはあくまでも多様性な人材を採用することを意味し、人材の活用までは至っ ていない「箱の中のダイバーシティの状態」(diversity in a box)であることを指摘してい る。本論文ではダイバーシティと企業パフォーマンスの関係を分析することで、人材 の活用度合いを検証する。

(14)

2.1.2各国の現状

組織における人材の多様性は普通社員だけではなく、組織の意思決定に関わる取締 役の多様性も考えるべきものである。取締役会は幅広い知識、専門性、スキル、視点 を持っていなければならない。このような「完全性」は、取締役の教育、経験、国籍 等の異なる背景から得られる可能性がある。取締役会のパフォーマンスに影響を与え る重要な要素は、取締役会を構成する取締役の多様性である。効果的な取締役会のパ フォーマンスを達成するため、取締役会構成の多様性が必要であるという共通認識が ますます高まっている(Mishra et al.2013)。以下、日本と海外諸国の例を挙げながら説 明する。

2009年12月16日、アメリカ証券取引委員会は規制(Interpretations)を提出し、企 業が取締役候補者を考える時、上場企業が取締役候補者を評価する時には候補者の多 様性に関しての考えを開示することを要求した。

実際、アメリカや日本だけではなく、取締役会の多様性は世界中の国で重視されて いる。例えばイギリスのコーポレートガバナンス・コードの第 B 章:取締役会の有効 性では「取締役会とその下にある委員会は、スキル、経験、会社からの独立性、会社 についての知識に関して適正なバランスを有し、その義務と責務を効果的に果たせる ようになっているべきである。」と指摘している。

Mishra et al.(2013)によれば、各国は取締役に対して財務知識を求めていることが わかる。

① ヨーロッパでは、監査委員会のうちの72%で、少なくとも1名の会計専門 家(CFO または公認会計士)を有している。

② カナダでは、ほぼ全ての監査委員会に財務専門家がいる。

③ 2006 年には、米国の新任独立役員のうち 24%が財務的背景を持っている

が、2011年に18%に減少した。これは、現在の取締役会に十分な財務知識

を持つメンバーがいることを示している。

④ インドでは、取締役の16%がファイナンスまたはアカウンティングの学位 を有し、19%は投資、銀行業務または金融サービスの経験を有している。

⑤ シンガポールでは 13%が会計学教育を受けており、37%が財務セクターで の経験を持っている。

海外企業の取締役会は財務知識を重視しているが、日本では取締役会の多様性に対 しての研究はまだ少ない。しかし、CG コードの原則4-11で財務的背景を持つ取締役

(15)

の選任を要求されたこともあり、日本の取締役会も財務的な知識を持つ人物を任命す るケースが多い。

表層的な次元である独立性、国籍、性別について2018 Japan Spencer Stuart Board

Indexのデータから図4示している。独立取締役の割合について、TOPIX100(34.5%)

と日経225(31.1%)は、一番高いフランス企業(85%)の半分以下に位置している。同

様に、外国人取締役の割合について、フランス企業(42.5%)はTOPIX100(7.6%)と

日経225(6.5%)の6倍である。女性取締役の割合の場合、フランス企業(35%)は

TOPIX100(5%)と日経225(3.3%)の7倍以上の女性取締役を選任しいる。図4を見る

と、フランス、英国、ドイツ、米国と比べて、日本における取締役の多様性が不足し ていることがわかる。

図4 2018年諸国における取締役の多様性比較

(出所:2019 Japan Spencer Stuart Board Index)

各国における取締役会の多様性とその効果はすでに多くの先行研究で議論されてい るが、研究方法や研究視点などの違いで、結果は一致していない。

Harjoto et al.(2018)、Jeanelle et al.(2016)と乾他(2014)は最小二乗法(OLS)を 使い、投資・イノベーションの視点からボードダイバーシティと企業活動の関係を研 究した。Harjoto et al.(2018)は企業パフォーマンスを分析対象としているが、Jeanelle et al.(2016)と乾他(2014)は企業活動のみを分析対象としていた。

85%

61.30%

60% 58%

34.50%

31.10%

35% 33.50%

25.30%

8.20%

5% 3.30%

42.50%

32% 27.50%

24%

7.60%

6.50%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

フランス 英国 ドイツ 米国 日本(TOPIX100) 日本(日経225)

2018年諸国における取締役の多様性比較

取締役における独立社外取締役の割合 取締役会における外国人取締役の割合 取締役会における女性取締役の割合

(16)

Harjoto et al.(2018)は、ダイバーシティを一つの属性に限らず、表層次元である人 種、性別、年齢と深層次元である任期と専門知識などを含めて研究を行っている。結 果として、深層次元(任期と専門知識など)の属性と不適切な投資額との間には負の 関係がある。しかし、この研究は表層次元の属性とボードパフォーマンスである投資 活動の間には有意な関係がないと指摘している。この結果は、ボードメンバーの経験 と専門的知識などの多様性を有する取締役会は、同質の取締役会よりも企業の投資活 動の監視に効果的であることを示唆している。

Jeanelle et al.(2016)の研究によると、任期の多様性はR&Dへの投資には負の効果

があり、教育多様性と性別多様性を有する取締役はよりR&Dに投資する傾向がある ことを示している。

一方、乾他(2014)は役員四季報と日経 NEEDS 企業財務データから、有価証券報 告書を提出する一般事業会社のデータを使い、役員の性別、年齢、職務経験、教育経 験をダイバーシティの代理変数として、企業のイノベーション活動に与える影響を検 証した。しかし、企業固有の効果をコントロールすると、ダイバーシティの影響は全 て有意ではないことを示した。

Shehata et al.(2017)は、2005年から2013年の英国の中小企業を対象として、ボー ドダイバーシティであるジェンダーと年齢のダイバーシティが企業パフォーマンスに もたらす影響を研究した。その結果、ジェンダーと年齢のダイバーシティは両方とも ROAに負の関係があることを示した。

宮島他(2006)は取締役会を監査役設置会社、執行役員制採用企業と委員会等設置 会社の三つの特性にわけて、企業パフォーマンスとの関係を研究した。委員会等設置 会社が ROA などの資本効率が有意に高い一方、株式市場評価指標に対して有意な結 果は得ていない。また、ROA、ROE、トービンのqや PBRなどの指標から見ると、

伝統的監査役設置会社と比べて、制度改革実施企業の総合評価は有意に高いことを示 唆している。

上述の通り、ボードダイバーシティに関する既存研究は、対象国、評価指標、研究 手法などの違いがあるため、ボードダイバーシティと企業パフォーマンスの関係はい まだに明らかになっていない。

(17)

数多くのダイバーシティの属性の中で、ジェンダーダイバーシティは日本で極めて 重視するべき問題であると、第一章で述べた。それ故、この研究はジェンダーダイバ ーシティに注目して研究を行う。

2.2 世界におけるボードジェンダーダイバーシティの先行研究

この項では、日本以外のジェンダーダイバーシティについての研究をレビューす る。

ILO(International Labour Organization)が作成の図表(図5)によると、アフリカ以 外の、アメリカ、ヨーロッパ、中央アジア、アジア太平洋とアラブ地域の女性管理職 はいずれも増加の傾向がある。

図5各地域における女性管理職の比率、1991–2018(出所:ILO2019)

OECD(経済協力開発機構)は2010年から2019年までの女性取締役の割合を記

録しており、開示したデータ(表1)から、女性管理職の増加と同様に、各国におけ る女性取締役の割合も増える傾向が判明した。

国際的に、女性管理職と女性取締役は全体的に増加の傾向が見られるが、国ごと の習慣差別などのゆえ、ジェンダーダイバーシティの推進力には差がついている。例 えば、表1からわかるように、2019年に、女性取締役の割合が一番高いアイスランド

(45.9%)と一番低い韓国(3.3%)は約14倍の差がついている。アイスランドだけで はなく、フランスやフィンランド、英国、米国、カナダなどの欧米諸国における女性 取締役の割合も高い水準を維持している。

(18)

表1 各国における上場している大企業の女性取締役割合 (出所:OECD Female share of seats on boards of the largest publicly listed companies5

その理由として、法律や制度も文化と同様に、女性の活躍を左右するものと考えら れる。物江(2016)は、各国の「女性の活躍」に関する開示状況とその理由を述べて いる。2008年の金融危機以降、欧米諸国は上場企業に対して、ボードダイバーシティ に関する情報開示を求め始めている。物江(2016)より、性別平等に向かう社会政策

5 https://stats.oecd.org/index.aspx?queryid=54753 (20201222日)

(19)

の進展と企業経営者や機関投資家がダイバーシティ経営への高い関心度がボードダイ バーシティに関する開示の制度化の二つの要因である。表2は物江(2016)に示され た、大和総研が整理した日本と欧州諸国の情報開示制度化の例である。表1と表2か らも明らかなように、以前から女性情報を含むボードダイバーシティ情報の開示また は説明の義務をつけている国では、女性取締役の割合が高い。

(20)
(21)

表2 女性登用に関する開示の制度化の例 (出所:物江 (2016)図表1)

一方、女性取締役割合が高い国の中で、クオータ制を導入する国(フランス、ドイ ツなど)も少なくない。表3は欧州におけるクオータ制の導入例を示している。

表3 欧州におけるクオータ制の導入例(出所:物江 (2016)図表2)

日本は2013年から欧米と同じくダイバーシティの開示と説明を要求しているが、女 性取締役比率が依然として低い。日本は長年にわたる男尊女卑の社会文化の影響のも とで、女性の活躍は依然として厳しい状態を続けている。その理由の一つとしては歴 史的な背景がある。Yang & Tang(2011)は以下のように説明している。

かつて、古代日本における女性地位は高かった。しかし、平安時代(794年~1192 年)後期、特に鎌倉時代(1185年〜1333年)から、女性は社会における主導的地位か

(22)

いる。一つは、鎌倉時期における政治・権力の変化のもとで、日本社会は武士を中心 に政治を行なっていた。男性は政治、経済の中で主導的地位を占める一方、女性の社 会地位は従来よりずっと落ちていた。もう一つの理由は、中国の「儒家思想」が鎌倉 時期の日本に広がって、男尊女卑の女性観念も日本社会に大きいな影響を与えた

(Yang & Tang 2011)。

世界中でジェンダーダイバーシティの実務推進を重視していると同時に、学術上で も話題性の高いテーマとして議論されている。

2.2.1ボードジェンダーダイバーシティが企業活動にもたらす影響

Gul et al.(2011)は、女性取締役の参加は以下二つの傾向から明らかのように、社会的 な関心事となっていると指摘している。一つ目は、アメリカでは女性取締役が増加し ていること、二つ目は、既にいくつかの国が女性取締役人数の最低限を法律で定めて いることである。以下ではジェンダーダイバーシティと企業活動の関連についての先 行文献をレビューする。

Al-Shaera & Zaman(2016)は、2012年における英国上場企業FTSE 350の中の、デ ーター取得可能な333社を研究対象として、ボードジェンダーダイバーシティと企業 サステナビリティ報告の質の関係を研究した。回帰分析の結果としては、ボードジェ ンダーダイバーシティと企業サステナビリティ報告の質の間には有意の正の関係があ った。さらに、Al- Shaera & Zaman(2016)は一般の女性取締役より、独立女性取締役 の方が結果の有意性が高いことを指摘した。また、同じくボードジェンダーダイバー シティと企業サステナビリティの間の関係を研究するのはNadeem et al.(2017)であ る。彼らはオーストラリアにおける2010年から2014年まで上場の企業データーを使 い、ボードジェンダーダイバーシティと企業のサステナビリティ実践活動(corporate sustainability practices)の間には有意の正の関係を発見した。

ボードジェンダーダイバーシティと企業における環境政策の間の関係もいくつかの 既存研究がある。Liu(2018)はアメリカS&P1500を研究対象として、2000年から 2015年のデータを取得し、研究を行った。この研究は、ボードジェンダーダイバーシ ティまたは女性CEOが、企業の環境法違反の頻度を低下させことができると指摘し た。回帰分析の結果から見ると、ボードジェンダーダイバーシティが高い企業が環境 侵害で起訴されることが少ないことがわかる。一方、女性CEOはボードジェンダーダ イバーシティが低い企業のみ、研究の結果が有意になる。Li et al.(2016)も、アメリ

(23)

カ企業のデータを使い、ボードジェンダーダイバーシティは企業により良い環境政策 を導くという結論に至った。

Kakabadse et al. (2015)は「取締役会の多様性には、ステークホルダーへの重要な

情報発信 (important signaling to stakeholders) 、企業評価の向上、ロールモデリング

(role modeling) 、取締役会の意思決定方法の変更、そして何よりも人材の活用などの

非財務的なメリットがある。」と主張している。

Damak (2018)はボードジェンダーダイバーシティと利益操作の関係をフランスの上 場企業を使って検証した。彼は見積もられた裁量的会計発生高を利益操作戦略

(earning management strategy)の代理変数として、実際の裁量的会計発生高を利益操 作レベル(earning management level)の代理変数として研究を行った。その結果とし て、取締役会における女性の存在と利益操作レベルの間には負の関係が示された。取 締役会における女性の存在と利益操作戦略の間には有意な関係が見つかってはいない が、モニタリング機能を発揮していることが検証された。

Gul et al.(2011)の研究は、2001年〜2007年の米国企業を調べ、女性取締役の参加

は,取締役会のモニタリング機能を向上させることで利益の質を向上させることを明 らかにした。投資家が取締役会のモニタリング機能の向上の望み、より良い利益の質 を求めている状況では、女性取締役の参加は、取締役会がこれらの目的を達成するた めのもっとも合理的な方法であることを示唆している。同時に、Gul et al.(2011)は 研究結果に対してこう説明した。「しかし、他の期間や、米国と異なる法律、規制、

文化を持つ他の国では、この研究結果を一般化することができない可能性がある。ま た、我々は多くの取締役会ガバナンスの要因をコントロールしているが、取締役会ガ バナンスの内生性により、因果関係の方向性については示唆できない。」本論文では 内生性の問題を踏まえて、日本企業における女性取締役の参加は企業のモニタリング 機能を向上させるかどうか、かつ、この企業活動の変化が財務的影響がをもたらすか どうかを改めて検証する。

上述のように、ジェンダーダイバーシティが企業活動に様々な影響を与えることを 既存研究が明らかにしている。

(24)

2.2.2 ボードジェンダーダイバーシティと財務的評価の関係

ボードジェンダーダイバーシティが企業活動に影響を与えることを踏まえて、次 に、ボードジェンダーダイバーシティと財務的評価の関係を研究した既存文献をレビ ューする。

Adam & Ferreira(2009)はアメリカ企業におけるボードジェンダーダイバーシティ と企業活動の影響から、企業パフォーマンスまでの関係を回帰分析で研究した。研究 結果によると、女性取締役は男性取締役より良い出席記録が残っており、女性取締役 が多い場合は、男性取締役の出席問題が少なくなることがわかる。また、女性取締役 はより監視委員会に参加する傾向がある。一方、Adam & Ferreira (2009)が示唆した ように、ボードジェンダーダイバーシティは企業パフォーマンスに対しての平均影響 が負になる。しかしガバナンスが弱い企業においては、ジェンダーダイバーシティが プラスの効果がある。さらに、この研究はボードジェンダーダイバーシティにクオー タ制を義務付けることがガバナンスレベルの高い企業にとって企業価値を低下させる 可能性があることを示唆している(Adam & Ferreira 2009)。

アメリカ以外の国でも、それぞれボードジェンダーダイバーシティと企業パフォー マンスの関係を研究している。

歴史上、スペインでの女性労働参加率が非常に低かったが、今は機会平等を目的と して、既に関連法律を導入している(Campbell & Vera 2007)。Campbell & Vera

(2007)は、1995年から2000までのスペイン企業68社計408サンプルでのボードジ ェンダーダイバーシティと企業財務パフォーマンスとの間の関係を調べた。この研究 はパネルデータ分析を用いて調査したところ、ジェンダーダイバーシティ(取締役に 占める女性の割合やBlau とShannon指数で測定される)は企業価値に正の効果があ り、逆の因果関係は有意ではないと主張した。Campbell & Vera(2007)は、スペイン の投資家が女性取締役を増やす企業にペナルティを課すことはなく、ジェンダーダイ バーシティの拡大が経済的利益を生む可能性があることを示唆している。

スペインと同じく、イタリアも伝統的に女性労働参加率が非常に低い国である

(Gordini & Rancati 2016)。Gordini & Rancati(2016)は2011年にクオータ制を採用し たイタリアにおいて、企業におけるボードジェンダーダイバーシティと企業財務パフ ォーマンス間の関係を検証した。この研究は2011から2014までの上場企業918社に ついて調査を行った。その結果、ボードジェンダーダイバーシティも企業の財務パフ ォーマンスに正の有意な影響を与えることが示された。Gordini & Rancati(2016)はイ タリアの上場企業にとって最も重要なことは、ボードには単に女性取締役の存在が必

(25)

要なだけではなく、男性と女性の適切なバランスを持つべきであることを示唆してい る。

Rose(2007)は1998年から2001年までにおけるデンマークの上場企業を研究し、

回帰分析を行ったが、女性取締役と企業パフォーマンス(Tobin Q)の間には有意な関 係を見出してはいない。

Liu et al.(2014)は1999年から2011年までの中国の上場企業における企業パフォー

マンスに対するボードジェンダーダイバーシティの効果を検証した。その結果、ボー ドジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスとの間に有意な正の関係があるこ とを明らかにした。女性執行取締役は、女性独立取締役よりも会社のパフォーマンス に強い正の効果があり、執行効果が監視効果を上回っていることを示している。さら に、3名以上の女性取締役がいる取締役会は、2名以下の女性取締役がいる取締役会よ りも企業パフォーマンスに強い影響を与えており、臨界質量理論(critical mass

theory)の主張と一致している。

同じく臨界質量理論を主張するのはJoecks et al.(2013)である。Joecks et al.

(2013)は2000年から2005年のドイツにおける上場企業151社を対象として研究を 行った。彼らはジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスの間にはUカーブの 関係があることを検証した。臨界質量理論に基づいて、この研究は女性役員を0、20%

以下、20%~40%と40%以上の四つのグループに分けて研究した。結果により、女性役 員がない企業の平均ROEは9.6%であるが、女性役員が20%以下の企業の平均ROEが

7.7%に下がっている。しかし、女性役員が20%~40%の場合は、ROEが12.3%に上昇し

た。特に女性役員が40%以上に場合は、ROEが12.4%に上昇したことを示している。

Joecks et al.(2013)はこの研究を通して、臨界質量理論が支持されていることを主張 している。

Shehata et al.(2017)は上場企業ではなく、英国における大量の中小企業(34,789 社)のみを対象としてボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスの関係 を研究した。上述の研究結果と違い、ボードジェンダーダイバーシティが企業パフォ ーマンスに有意な負の関係を持っていることが示した。この研究は、取締役会におけ る女性の参加は慎重に実施されるべきであることを示唆している。

上述の文献により、各国の研究結果は正の関係、負の関係と無関係がそれぞれあ り、一致した結果が得ていない。

(26)

2.3 日本におけるボードジェンダーダイバーシティの先行研究

この節は、日本におけるボードジェンダーダイバーシティの研究状況を紹介する。

図6は、男女共同参画白書が示した2006年から2017年における上場企業の役員に 占める女性の割合の推移を示している。図7は、伊藤(2018)に示された、大和総研 が整理したアジア太平洋諸国と欧州諸国の上場企業における2013年から2017年まで の女性取締役比率の推移を示している。

図6 上場企業の役員に占める女性の割合の推移(出所:男女共同参画白書 平成30年 版)

図7 諸国の上場企業における女性取締役比率の推移 (出所:伊藤 (2018)図表1)

前述のように、日本の女性取締役は他国と比べて極めて少ないことを図7で明らか にした。図7の左部分を見れば、日本の女性取締役比率はアジア太平洋諸国の中でほ ぼ最下位に位置している(最下位は韓国)。さらに、図7の右部分を見ると、欧米諸 国と比べて、アジア太平洋諸国における女性取締役比率の水準は全体的に低いことが

(27)

わかる。しかし、図6は、安倍総理が経済界に対して「女性役員最低一人の登用」を 要請した平成25年からは、日本における女性役員の登用の推進は加速したことを明ら かにしている。男女共同参画局によれば、日本の上場企業における女性役員数は2015 年の1142人から2019年の2124人に増加し、4年間で約1000人の女性役員を増やし た。他国と比べては些細な変化かもしれないが、日本企業は確かに動き始めて、女性 活躍を推進する大きな一歩と考える。

ボードジェンダーダイバーシティの実務推進の遅れに伴い、学術上からの注目も他 国と比べて低い。以下は日本におけるボードジェンダーダイバーシティと企業活動の 関連についての先行文献をレビューする。

児玉・小滝・高橋(2005)は女性雇用と企業業績の間に有意な関係が見つけていな いが、Siegel & 児玉(2011)は日本の労働市場における男女格差と企業業績の関係を 研究し、回帰分析で、一部有意な関係が見られた。児玉(2011)によれば、製造業の 中、高い女性役員比率と利益率の増加に相関していることを示している。

新倉と瀬古(2017)は、日本企業を対象に、取締役会における女性役員と企業パフ ォーマンスの関係を調べた。彼らは、「CSR企業総覧」と「NEEDS-Cges」を用い て、2011年から2014年のパネルデータを使い、回帰分析を行った。その結果、女性 役員が1人以上の企業の業績が比較的優れていることが示された。

大野(2020)によれば、女性役員が3人以上の場合、株価や企業業績に変化が現れ るとする臨界質量理論が既に多くの先行研究で検証された。彼はこの結論を踏まえ て、女性役員と企業業績(ROE)・株価の関係を研究した。大野(2020)は2014年か ら2018年における東京一部上場企業のうち、従業員が1000人以上かつ女性役員比率

が30%以上の企業である、わずか6社を抽出し、研究対象としていた。結果から見る

と、女性役員30%以上の企業の株価とROEは日経平均や東証一部大型株を大きく上回 ったことを示唆している。

松本(2019)は、「日本企業の取締役会における女性取締役の登用は本当に企業パ フォーマンスを引き上げるのか?」という問題意識から出発し、女性取締役と企業パ フォーマンスの間の関係を研究した。松本(2019)は2007から2013年までを分析対 象期間として、TOPIX500の企業のうち、「CSR企業総覧」から入手できる236社を 研究対象としている。この研究は女性取締役比率と社外女性取締役比率を取締役のダ イバーシティの代理変数として、ROAとTobin’s qを企業パフォーマンスの代理変数

(28)

性取締役両方とも企業パフォーマンスの間には有意の正の関係が見られる。この研究 は女性取締役の登用と企業パフォーマンスの間には正の関係がある可能性が高いと示 している。(松本 2019)。

上述の文献はボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスの間で基本的 に正の関係が見られる。しかし、大野(2020)以外の研究は、主に2015年以前のデー タを使って研究したものである。日本のコーポレートガバナンスコードは、2015年か ら導入し、女性役員の登用に従わない場合は理由の開示を要請し始めた。そのため、

2015年以前における女性役員の登用は主に企業の自発的な行為であり、女性役員が活 用され、企業パフォーマンスに正の影響をもたらすと想定している。コーポレートガ バナンスコードが実施されてからの女性役員の登用は、形式的導入の可能性があり、

ジェンダーダイバーシティが実際に活用されているかどうかはまだ明らかにされてい ない。なお、本研究はコーポレートガバナンスコードが実施されてからの2016~2019 年の新しいデータを使い、企業パフォーマンスに対してジェンダーダイバーシティの 真の効果を明らかにしたい。

(29)

3. 研究仮説・リサーチデザイン

3.1 仮説の構築

第二章における先行文献をまとめると、ボードジェンダーダイバーシティと財務的 パフォーマンス間にはコンフリクトの関係が存在し、研究結果が一致していない。し かし、ボードジェンダーダイバーシティが企業行動に積極的な影響を与えることは既 に多くの文献で検証された。これらの研究結果により、企業パフォーマンス変化の原 因は、ボードジェンダーダイバーシティの影響を受け、変化したある企業行動が原因 となる可能性がある。さらに、異なる企業行動がもたらす影響はそれぞれ異なるた め、正の関係、負の関係または無関係の企業行動が同時に存在し、お互いの効果が相 殺しあうことによって、一致した結果が得られないこれが原因である可能性がある。

既存文献の中で、数多くの文献はボードジェンダーダイバーシティとボードモニタ リングの間に正の関係が見られることを示唆している。例えば、Adam & Ferreira

(2009)はジェンダーダイバーシティがあるボードがより良いモニタリング活動を実 施し、経営者と株主の利益を一致されることにより、企業パフォーマンスを改善する ことを主張している。Benkraiem et al.(2017)は取締役会における女性取締役の任命は ボードのモニタリング機能を改善することができると示唆した。

また、ボードモニタリング機能と企業パフォーマンスの間にも有意な関係が見られ ることを多くの文献が検証した。例えば、Li(2020)により、ボードモニタリングの 強化は、コーポレートガバナンスを向上させるだけでなく、企業の競争力を高め、業 績を向上させる重要な役割を果たしている。

本論文は、上述の先行文献に基づいて、ボードジェンダーダイバーシティと取締役 のモニタリング機能の関係、取締役会のモニタリング機能と企業パフォーマンスの関 係、ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスの関係にそれぞれ有意な 関係があると予測し、3つの仮説を構築する。前で述べたように、先行文献では一致 した結果を得られていないので、ここでは結果の方向性(ポジティブまたはネガテイ ブ)を予測しない。

(30)

HA0: ボードジェンダーダイバーシティとボードモニタリングには関係がない。

仮説2

HB:ボードモニタリングと企業パフォーマンスには関係がある。

HB0:ボードモニタリングと企業パフォーマンスには関係がない。

仮説3

HC:ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスには関係がある。

HC0:ボードジェンダーダイバーシティと企業パフォーマンスには関係がない。

3.2 モデルの構築

図8は本研究で使用するモデルである。

図8 本研究で使用するモデル

(31)

変数説明

コード 変数

ROA Return on Assets、総資産利益率

ROE Return on Equity、自己資本利益率

Tobin’s q Tobin’s q

WOMRTO 女性役員割合

BLAU BLAU指数

SHANNON SHANNON指数

INDRTO 社外取締役比率

KENNIN 取締役と執行役員の兼任比率

ATTAVG 社外取締役出席率

FLAG コーポレートガバナンス形式(指名委員会等設置会社と監査等委

員会設置会社は1、それ以外は0)

表6 変数の説明

Diversityからmonitoringへの矢印は仮説1、ジェンダーダイバーシティとボードモ

ニタリング機能間の関係を分析し、ジェンダーダイバーシティがボードモニタリング に影響が与えるかどうか、またはどのような影響を与えるかを検証する。

仮説1

HA: ボードジェンダーダイバーシティとボードモニタリングには関係がある。

HA0: ボードジェンダーダイバーシティとボードモニタリングには関係がない。

Monitoringからperformanceへの矢印はボードモニタリングと企業パフォーマンス間

の関係を分析し、ボードモニタリングが企業パフォーマンスに影響が与えるかどう か、またはどのような影響を与えるかを検証する。

仮説2

HB:ボードモニタリングと企業パフォーマンスには関係がある。

HB0:ボードモニタリングと企業パフォーマンスには関係がない。

Diversityからperformanceへの矢印はジェンダーダイバーシティと企業パフォーマン

ス間の関係を分析し、ジェンダーダイバーシティが企業パフォーマンスに影響が与え るか、またはどの影響を与えるかを説明する。

仮説3

(32)

3.3 メソドロジー

本研究の研究手法は既存文献が常用した最小二乗法(Ordinary Least Squares、以下

OLS)ではなく、SEMを使い、研究を行う。SEMは二十世紀初頭に生まれ、1916年

でSewall Wrightが発展させたモデルである(Bollen 1990)。Azim(2012)により、

SEMは心理学、教育学、社会科学、生物学、経済学、薬品、マーケティング、人口学 と遺伝学などの研究領域で活用されている。コポーレートガバナンスと会計学におけ るSEMの研究はDaily et al.(1999);Zhang(2010);Hinson & Utke(2016);

Hamptom(2015)などがあるが、少ないことも事実である。会計学が常用していた OLSと違い、SEMは観察できない潜在変数も取り扱い可能となっている。豊田

(2003)は以下のようにSEMを説明している。

SEMは潜在変数のパス解析と呼ばれることもあるように、構成概念を1つの潜在変 数として表現し、そこから複数の観測変数へパスが引かれるモデルが一般的に多く採 用されている。

さらに、OLSの研究では内生性の問題を完全に避けることができないのが一般的で ある。しかし、SEMの枠組みならば、強い相関関係の背後に共通因子を考え、解決す ることが可能である(豊田 2003)。

豊田(2003)により、SEMを使うメリットは以下三つが挙げられる。1つ目は、適 合度の評価が可能。2つ目は、モデルの改善が容易である。3つ目は、推定値の標準 誤差を評価できることである。Azim & Taylor(2009)により、SEMの良いところは、

同時に複数の関係を処理し、統計の効率性を改善するところと、探索的因子分析から 確認的因子分析へ移行することもできる。さらに、SEMは多重共線性を処理すること ができる(Azim 2012)。

以上の理由により、本研究の研究手法は先行文献でよく使われたOLSではなく、

SEMを選択した。本研究におけるSEMの活用は4つのメリットがある。① OLSで問 題になりやすい内生性を回避すること、② 潜在変数と観測変数を使い、観測できない 変数をより明確に説明すること、③複数の従属変数の間の関係を同時に測定するこ と、④観測変数それぞれのエラーの発生を許すことである。

(33)

3.4 データ及び変数の説明

3.4.1 データ

3つの仮説を検証するために、潜在変数であるジェンダーダイバーシティ、ボード モニタリングと企業パフォーマンスの測定変数データがそれぞれ必要となる。本論文 では、「NEEDS-Cges コーポレート・ガバナンス評価システム」(以下Cges)データ ベースを使い、データを収集した。調査の科学性を確保するため、以下の条件により サンプルを絞った。

⑴ 東証一部の上場企業であること。

⑵ 数値が欠落している企業を除く。

本研究の調査期間は2016年から2019年の各年度を対象としている。その理由は二 つある。一つは、日本における既存研究は相対的に古い文献が多いので、ここではな るべくフレッシュなデータを使うことを意識している。もう一つは、日本のコーポレ ートガバナンスコードは、2015年から導入され、女性役員の登用を行わない場合は理 由の開示を要請し始めたので、2015年以前の女性役員の登用は企業自発的な行為と筆 者は想定している。よって、本研究は2016年からのデータを使い、政府要請の元で、

日本企業における女性役員の登用は本当に企業パフォーマンスに役を立っているかど うかを検証する。

表4はサンプル数を記載する。

サンプル数

年 東証一部上場企業数 欠落値6 サンプル数

2016 1988 62 1926

2017 2036 130 1906

2018 2116 511 1605

2019 2156 441 1715

表4 サンプル数

(34)

3.4.2 変数の説明

SEMはOLSと違い、代理変数の代わりに、潜在変数という概念がある。「SEMは 潜在変数のパス解析と呼ばれることもあるように、構成概念を一つの潜在変数として 表現し、そこから複数の観測変数へパスが引かれるモデルが一般的に多く採用されて いる」と豊田(2003)が述べている。本研究の仮説を検証するために、筆者は3つの 潜在変数と、10個の観測変数を設置した。

潜在変数の説明

本研究の仮説で使用した変数、ボードジェンダーダイバーシティ、ボードモニタリ ングと企業パフォーマンスは全部直接観測できない変数として取り扱い、3つの潜在 変数を設定した。先行研究では基本的にOLSを使い、それぞれ代理変数を設定してい る。例えば、女性の役員・取締役の人数や割合、または関連指数がジェンダーダイバ ーシティの代理変数として使われているが、これらの代理変数はただ代理されたもの の一部を説明しているだけであり、一定の誤差が存在すると考えられ。ジェンダーダ イバーシティと企業パフォーマンスの関係を研究する場合、OLSの基本公式! = # +

%&!+ 'である。仮にyをROA、xを女性役員の割合と設定する。この場合、ROAが 企業パフォーマンスを完全に代表できないため、エラーが生じる。しかし、女性役員 の割合は本当にジェンダーダイバーシティを完全に代表できるかどうかを考えてはい ない。SEMで分析する場合は、従属変数だけではなく、全ての観測変数におけるエラ ーの発生が許される(図8を参照する)。

本研究は、ボードジェンダーダイバーシティ、ボードモニタリングと企業パフォー マンス3つの観測変数と女性役員割合、BLAU指数、SHANNON指数、社外取締役比 率、取締役と執行役員の兼任比率、社外取締役の出席率、コーポレートガバナンス形 式、ROA、ROEとTobin’s qの十個の観測変数を設置した。この場合は、女性役員割 合、BLAU指数とSHANNON指数は必ずイコールボードジェンダーダイバーシティで はなく、筆者はこの3つの観測変数がともに説明している何かをボードジェンダーダ イバーシティと想定している。他の観測変数も同様の考え方で設置している。

(35)

変数名

潜在変数 観測変数

ボードジェンダーダイバーシティ

女性役員割合

BLAU指数

SHANNON指数

ボードモニタリング

社外取締役比率 社外取締役の出席率 取締役と執行役員の兼任比率 コーポレートガバナンス形式 企業パフォーマンス

ROA ROE Tobin’s q 表5

観測変数の説明:ボードジェンダーダイバーシティ

女性役員の割合、BLAU指数、SHANNON指数は多くの先行研究(Campbell & Vera 2007; 新倉、瀬古 2017; Midavaine et al. 2015; Harjoto et al. 2018)の中で使われた、ジェ ンダーダイバーシティを表現する変数である。

女性役員の割合は、Cgesにより、有価証券報告書に記載される女性役員の比率を使 用した変数である。女性割合が50%に近いほどジェンダーダイバーシティが高い。

BLAU指数は以下の計算より筆者が算出する。

BLAU=1 − Σ"#!$ /"%

Campbell & Vera(2007)により、ジェンダーダイバーシティにおけるBLAU指数 は、男性人数イコール女性人数の時に最大値の0.5になる。つまりBLAU指数が0.5 に近いほどジェンダーダイバーシティが高い。/"はボードメンバーが各カテゴリにお けるパーセンテージであり、nはボードメンバーの総人数である(Campbell & Vera 2007)。

(36)

SHANNON = −Σ"#!$ /"456%/"7

PiとnはBLAU指数と同様である。SHANNON指数の最小値は0、最大値は1にな っている。Baumgärtner(2006)は、SHANNONはBLAU指数と似ているが、多様性の 尺度を対数化したため、取締役会の性別構成の小さな差異により敏感な指数であると 主張している。

観測変数の説明:ボードモニタリング

ボードモニタリングは社外取締役比率、社外取締役の出席率、取締役と執行役員の 兼任比率とコーポレートガバナンス形式の4つの観測変数で説明されている。

日本企業の不祥事が多発した1980年代後半から、企業の取締役会を中心とする経営 システムの効率性やモニタリングの実効性に疑問が持たれるようになった(青木

2003)。1990年代後半から、日本企業におけるトップ・マネジメントの改革が始ま

り、社外取締役制度と役員制度が導入され始めた(青木 2003)。

社外取締役を導入することにより、社外者によって業務執行の監督機能を実効性の あるものとし、不正な行為が行われることがないようにすることができる(金田 2014)。金田の主張に基づいて、本研究は社外取締役の割合をボードモニタリングの 観測変数に設置した。さらに、社外取締役の有効性を確保するために、社外取締役の 出席率も観測変数に入れた。社外取締役の割合と出席率が高いほど、ボードモニタリ ングが強いと想定している。また、金田は各会社における社外取締役についてこう述 べている。

会社法上、社外取締役の設置が強制されたのは、委員会設置会社であり、改 正会社法のもとにおいて、指名委員会等設置会社と監査等委員会設置会社で ある。わが国の上場会社の大部分は、監査役設置会社であるから、社外取締 役の設置義務がない。

指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社と監査役設置会社は法律などの規制 の違いにより、監督効果も異なると考えられる。よって、本研究はコーポレートガバ ナンス形式をダミー変数の形でボードモニタリングの観測変数に入れた。また、日本 企業における指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社の数が少ないため、合わ

7 SHANNON = −Σ!"#$ )!*+)!を使う場合もあるが、本研究では*,-%を使用する。

(37)

せて1を表示し、監査役設置会社は0を表示した。1の場合はボードモニタリングが 強いと想定している。

青木(2003)は執行役員の導入について、以下のように議論している。

従来型の取締役会構造では、戦略的意思決定機能、監督機能、執行機能の全 てを事実上単一の組織体が担当してきたために問題が発生したとの問題意識 から、経営と執行の分離の必要性が認識されるようになった。執行役員制度 は、戦略的意思決定・監督機能を取締役に集中させ、日常的な業務執行の権 限と責任を執行役員に与えることによって、双方の機能強化を狙ったもので ある。

よって、取締役と執行役員の兼任は執行役員の監督機能を相殺すると筆者は想定し た。取締役と執行役員の兼任比率はボードモニタリングの観測変数として入れ、兼任 比率が高いほどボードモニタリングが低いと予測した。

以上4つの観測変数は全部Cgesより入手したデータである。以下はCgesからの各 変数に対しての説明である。

① 取締役と執行役員の兼任比率:執行役員を兼任する取締役人数/取締役人数×100

※監査等委員会(取締役)は除く

② 社外取締役比率:取締役のうち独立役員の比率(コーポレートガバナンス報告書 記載ベース)

③ 社外取締役出席率:社外取締役のうち取締役会出席率の平均値

④ コーポレートガバナンス形式:監査等委員会設置フラグ、指名員会等設置フラグ 観測変数の説明:企業パフォーマンス

ROA、ROE、Tobin’s qは先行研究(Joecks et al. 2013;松本 2019;大野2020;

Harjoto 2018; )で使われ、企業パフォーマンスを説明するメインな変数であるため、

本研究は企業パフォーマンスの観測変数として設置した。

① Cgesにより、各パフォーマンス変数は以下のように計算していた。

② ROA:経常利益/総資産・前期×100;連結優先

③ ROE:最終損益/自己資本・前期×100;連結優先

図 2  就業率の推移(出所:平成 29 年版男女共同参画白書)  1.1.2.  日本及び海外の現状 労働市場における女性の活躍は一般社員にとどまらず、管理層でも女性の活躍が期 待され、推進されている。取締役会の重要性については、会社の成功と長期存続は、 取締役会の決定に左右されることで明らかである(Mishra et al.2013)。もし全員の考 え方が同じであれば、取締役会の必要はなくなる(Argüden 2010)といった指摘がなされ ている。本論文では、ダイバーシティがある取締役会はより良い意思
表 2  女性登用に関する開示の制度化の例  (出所:物江  (2016)図表1)  一方、女性取締役割合が高い国の中で、クオータ制を導入する国(フランス、ドイ ツなど)も少なくない。表3は欧州におけるクオータ制の導入例を示している。  表 3  欧州におけるクオータ制の導入例(出所:物江  (2016)図表2)  日本は 2013 年から欧米と同じくダイバーシティの開示と説明を要求しているが、女 性取締役比率が依然として低い。日本は長年にわたる男尊女卑の社会文化の影響のも とで、女性の活躍は依然として厳し
表 8-A 2017 年における連続変数の記述統計  変数  サンプル数  最小値  最大値  平均値  標準偏差  WOMRTO  1906  0.000  0.600  0.039  0.059  BLAU  1906  0.000  0.480  0.068  0.097  SHANNON  1906  0.000  0.971  0.174  0.237  INDRTO  1906  0.000  0.857  0.263  0.110  KENNIN  1906  0.000  1.000  0.
表 9-B 2018 年におけるダミー変数の記述統計  変数  サンプル数  値  頻度  割合 (%)  FLAG  1605  1  408.000  0.254  0  1197.000  0.746  表 9-B  2018 年におけるダミー変数の記述統計  表 10-A 2019 年における連続変数の記述統計  変数  サンプル数  最小値  最大値  平均値  標準偏差  WOMRTO  1715  0.000  0.500  0.058  0.066  BLAU  1715  0.000  0
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