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事後強盗罪の本質

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事後強盗罪の本質

著者 十河 太朗

雑誌名 同志社法學

巻 62

号 6

ページ 2093‑2113

発行年 2011‑03‑31

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013570

(2)

事後強盗罪の本質 四五五同志社法学 六二巻六号

事後強盗罪の本質

十 河 太 朗

 ︵二〇九三︶ 一 問題の所在

二 暴行・脅迫を財産侵害行為とする見解の検討

三 事後強盗罪の意義と具体的帰結

四 事後強盗罪と強盗罪の関係

五 結 語

一  問題の所在

  ⑴ 刑法二三八条は︑窃盗が財物取還阻止等の目的で他人に暴行・脅迫を加えた場合を事後強盗罪とし︑強盗罪と同

じく取り扱うこととしている︒

(3)

事後強盗罪の本質 四五六同志社法学 六二巻六号

  事後強盗罪の意義については︑﹁窃盗犯人が犯行を終了し︑あるいは窃盗の意思を放棄して現場を離れる際に︑暴行・

脅迫を加えることが多いという犯罪学上の実態に着目し︑人身の安全の保護の観点から暴行・脅迫の加重類型を設け︑

強盗罪に準ずる犯罪としたもの

﹂であると説明されることもある︒これは︑事後強盗罪を人身犯罪と理解するものとい 1

える︒  確かに︑窃盗犯人が窃盗の機会に他人に暴行・脅迫を加える事例が実際上多く︑これを防ぐことを目的として置かれ

たのが︑刑法二三八条であり︑その意味では︑事後強盗罪が身体の安全および意思の自由ないし私生活の平穏を保護法

益としていることは否定できない︒しかし︑刑法二三八条は︑事後強盗に対して単に重い法定刑を規定するのではなく︑

事後強盗を﹁強盗として論じる﹂こととし︑財産罪の一つである強盗罪と同様の扱いをすると規定していることからす

ると︑事後強盗罪の第一次的な保護法益は財産であるというのが自然な解釈であろう︒判例および通説において︑事後

強盗罪の既遂・未遂は窃盗の既遂・未遂によって決まると解されている

が︑その基礎には︑事後強盗罪は財産犯である 2︶

とする理解があるといってよい︒

  ⑵ それでは︑事後強盗罪の財産犯としての実質はどのように基礎づけられるのであろうか︒換言すれば︑事後強盗

罪の構成要件的行為である窃取と暴行・脅迫のうち︑第一次的な保護法益である財産はいずれの行為によって侵害され

ると解すべきなのであろうか︒この点をどのように理解するかは︑①窃盗未遂の犯人が窃盗の機会に暴行・脅迫を行っ

たときにも事後強盗罪が成立しうるか︑②窃盗既遂犯人が暴行・脅迫後に財物を取り返された場合に事後強盗罪の既遂

を認めてよいか︑③事後強盗罪の実行の着手時期をどの時点に求めるか︑④事後強盗罪は身分犯か結合犯か︑⑤窃盗犯

人でない者が事後強盗に関与した場合にどのような罪が成立するかなど︑解釈論上の様々な問題と理論的な関連を有し

ている︒  ︵二〇九四︶

(4)

事後強盗罪の本質 四五七同志社法学 六二巻六号   この点︑従来の通説は︑事後強盗罪の財産犯としての実質を窃取による財物の取得の点に求めてきたといってよい︒ 通説が事後強盗罪の既遂・未遂を窃盗の既遂・未遂によって決することとしているのは︑そのような理解の表れである

3

このような立場を前提として︑通説は︑窃盗が未遂の場合は事後強盗も未遂になるから︑窃盗未遂犯人も事後強盗罪の

主体に含まれる

とし︑また︑窃盗既遂犯人が暴行・脅迫後に財物を取り返されても窃盗が既遂に至っている以上は事後 4

強盗罪も既遂である

と解してきた︒ 5︶

  しかし︑このような通説に対しては︑暴行・脅迫を用いない単なる窃取によって財物を取得する事後強盗罪と︑暴行・

脅迫によって財物を取得する通常の強盗罪とが同じ程度の違法性を有するとはいいがたいのではないかとの疑問が投げ

かけられている︒そこで︑事後強盗罪における暴行・脅迫を財産侵害行為と捉え︑窃取はその前提条件にすぎないとす

る見解が︑近時︑有力に主張されている︒事後強盗罪が強盗罪として扱われる以上︑単なる窃取による財物の取得では

なく︑暴行・脅迫による財産侵害の点に事後強盗罪の財産犯としての実質を見出す必要があるというのである︒このよ

うな立場からは︑窃盗既遂犯人が暴行・脅迫後に財物を取り返された場合を事後強盗罪の未遂としたり︑窃盗未遂犯人

は事後強盗罪の主体から除かれ︑窃盗が未遂の場合は事後強盗罪の未遂すら成立しないとしたりするなど︑従来の通説

と異なる帰結が導き出されている︒こうした見解は︑事後強盗罪が強盗罪として扱われる根拠を合理的に説明すること

により事後強盗罪の意義を明らかにしようとするものとして注目に値する︒

  それでは︑事後強盗罪の財産犯的性格を暴行・脅迫の点に求める近時の有力説は︑果たして妥当なのであろうか︒本

稿は︑この点に検討を加えることにより︑事後強盗罪の本質の解明を試みるものである︒

 ︵二〇九五︶

(5)

事後強盗罪の本質 四五八同志社法学 六二巻六号

二  暴行・脅迫を財産侵害行為とする見解の検討

  事後強盗罪における暴行・脅迫を財産侵害行為と見る近時の有力説の内部においても︑種々の見解が主張されている

ので︑それらの見解の主張内容とその問題点を順次検討することにしたい︒

㈠ 暴行・脅迫を財物確保行為と捉える見解

  ⑴ 最初に取り上げるのは︑事後強盗罪における暴行・脅迫を︑窃盗により得た財物の確保のための行為と位置づけ︑

その点に事後強盗罪の財産犯的性格を見出す見解である︒

  この見解は︑事後強盗罪が強盗として扱われるのは︑窃盗により得た財物を確保する手段として暴行・脅迫を用いる

ことが︑通常の強盗罪において財物を得るために暴行・脅迫を用いることと規範的に同じと考えられるからであるとす

︒このような立場から︑たとえば︑窃盗が既遂に至った後に財物取還を防ぐために暴行・脅迫を加えたが︑結局︑財 6︶

物を確保できなかった場合は︑窃盗は既遂であっても︑暴行・脅迫による財物確保に成功しなかった以上︑事後強盗罪

としては未遂にすぎないとされる

︒ただし︑窃盗未遂犯人が逮捕免脱目的や罪責隠滅目的で暴行・脅迫を加える事態は 7︶

十分にありうるとして︑窃盗未遂犯人も事後強盗罪の行為主体に含まれるとしている

8︶

  ⑵ しかし︑このような見解には疑問がある︒第一は︑事後強盗罪における暴行・脅迫が常に財物の確保に向けられ

た行為であるとは限らないという点である︒刑法二三八条所定の目的のうち︑財物返還阻止目的の場合には︑暴行・脅

迫を︑財物の確保のために行われる行為として財産侵害行為と評価しうるかもしれないが︑逮捕免脱目的や罪跡隠滅目

的の場合︑暴行・脅迫は必ずしも財物の確保に向けられた行為とはいえないであろう

︒また︑この見解は︑窃盗未遂犯 9︶  ︵二〇九六︶

(6)

事後強盗罪の本質 四五九同志社法学 六二巻六号 人も事後強盗罪の主体となりうることを認めているが︑窃盗が未遂の場合には︑暴行・脅迫は財物の確保に向けられた行為ではない

10

  第二は︑単なる財物の確保と︑暴行・脅迫による財物の奪取とが同じ程度の違法性を有するといえるのかという点で

ある︒通常の強盗罪は︑暴行・脅迫を手段として他人の財物を奪取するものであり︑財物の占有の移転を内容とするの

に対し︑事後強盗罪において︑財物の確保のために暴行・脅迫が用いられる場合は︑単に財物の占有状態を暴行・脅迫

によって維持するにすぎない︒そうだとすると︑仮に事後強盗罪における暴行・脅迫を財物の確保に向けられた行為と

捉えたとしても︑それが通常の強盗罪における実行行為と同等の違法性を有しているといえるかは疑問である︒

  第三に︑刑法二三八条は︑﹁窃盗が⁝⁝暴行又は脅迫をしたときは﹂と規定しており︑この文言からすると︑窃盗犯

人による暴行・脅迫が行われれば︑それだけで事後強盗罪は完成し︑最終的に財物を取得したかどうかは問わないと解

するのが自然である

︒したがって︑暴行・脅迫を財物確保のための行為と捉えることには無理があるように思われる︒ 11

㈡ 目的の内容により区別する見解

  ⑴ 前述したように︑逮捕免脱・罪跡隠滅目的の場合︑暴行・脅迫は財産侵害行為とはいいがたい︒そこで︑事後強

盗罪を︑財物取還防止目的の場合と︑逮捕免脱・罪跡隠滅目的の場合とに分け︑前者の場合についてのみ暴行・脅迫行

為を財産侵害行為と捉える見解も主張されている︒

  一般に︑窃盗により取得した財物の返還を免れるために暴行・脅迫を用いる行為は二項強盗に当たるとされている

12

これを前提として︑論者は︑事後強盗罪においても︑財物取還防止目的によって暴行・脅迫を行った場合は︑財物に対

する返還請求権という財産上の利益を侵害することになり︑二項強盗と共通の性格を有すると説く︒特に︑財物の取返

 ︵二〇九七︶

(7)

事後強盗罪の本質 四六〇同志社法学 六二巻六号

し防止に成功したかどうかによって事後強盗罪の既遂・未遂を決する見解からは︑そのような行為は二項強盗そのもの

であるし︑通説のように︑窃盗の既遂・未遂を事後強盗罪の既遂・未遂の区別基準とする立場においても︑二項強盗の

既遂時期を拡張した犯罪類型ということになる︒このように︑財物取還防止目的の場合は︑暴行・脅迫を財産侵害行為

と見ることが可能であると主張するのである

13

  これに対し︑逮捕免脱もしくは罪跡隠滅目的の場合は︑単に主体が窃盗犯人であるというだけにすぎず︑暴行・脅迫

は何ら財産犯的性格を有するわけではないとされる︒窃盗犯人が逃亡する際に暴行・脅迫を用いることが多いという実

態に着目して︑逮捕免脱・罪跡隠滅の目的で暴行・脅迫を行う場合については人身保護の観点から責任を加重すべきで

あると立法者が判断したのであり︑暴行・脅迫罪の加重類型として位置づけられるというのである

14

  ⑵ この見解は︑財物取還防止目的の場合と逮捕免脱目的・罪跡隠滅目的の場合とを区別して論ずるとともに︑前者

の場合における暴行・脅迫を財物返還阻止という財産上の利益の取得として二項強盗と捉えることにより︑上述した見

解の問題点を回避している︒しかし︑この見解にも疑問がある︒

  第一に︑財物取還防止目的による暴行・脅迫が常に二項強盗としての性質を有するとはいいがたい︒確かに︑窃盗犯

人が財物の取返しを防ぐために被害者に対して行う暴行・脅迫が実質的に二項強盗に当たる行為であることは否定でき

ない︒本来︑財物の所有者に対して暴行・脅迫を行うことにより財物の返還を免れる行為は︑暴行・脅迫を手段として

財物返還阻止という財産上の利益を取得するものであり︑二項強盗罪に該当するからである

︒しかし︑財物取還防止目 15

的による暴行・脅迫には︑窃盗の被害者以外の者に対して暴行・脅迫が行われる場合も含まれ︑この場合︑暴行・脅迫

の被害者は財物に対する返還請求権を有していないから︑二項強盗には当たらないであろう

16

  第二に︑財物取還目的による暴行・脅迫を二項強盗とする理解は︑窃盗の機会の継続性が事後強盗罪の成立要件とさ  ︵二〇九八︶

(8)

事後強盗罪の本質 四六一同志社法学 六二巻六号 れていることと相容れない︒一般に︑事後強盗罪における暴行・脅迫は窃盗の機会の継続中になされる必要があると解されている

が︑財物返還阻止行為を行うことは窃盗の機会以外でも可能である︒したがって︑仮に財物取還目的による 17

暴行・脅迫を二項強盗と捉えるとすると︑窃盗の機会の継続性の要件は不要となるはずであろう︒

  第三に︑この見解は︑逮捕免脱目的・罪跡隠滅目的によって暴行・脅迫が行われる場合を人身犯罪とするが︑すでに

述べたように︑刑法二三八条が事後強盗を﹁強盗として論ずる﹂としているところからすると︑逮捕免脱目的・罪跡隠

滅目的の場合も含め︑およそ事後強盗罪は財産犯であると理解すべきであろう︒実際︑学説も︑そのような理解に立っ

ていると思われる︒一般に︑財物取還目的であるか逮捕免脱・罪跡隠滅目的であるかを問わず︑事後強盗罪が成立する

ときには窃盗︵未遂︶罪は別罪として成立しないと解されており

︑これは︑窃盗の点が事後強盗罪の中で評価されてい 18

ることを意味しているからである

︒したがって︑事後強盗罪を単に暴行・脅迫罪の加重類型と解することはできないよ 19

うに思われる

20

  この点︑論者は︑事後強盗罪が窃盗犯人の行う犯罪類型であることから強盗罪の法定刑を借用したものであるとする

21

しかし︑なぜ強盗罪の法定刑を借用したのかという根拠は明確でない︒さらに︑刑法二三八条が﹁強盗として論ずる﹂

としているのは︑単に強盗罪と同じ法定刑で処罰するというだけでなく︑刑法二四〇条など他の罰条の適用に関しても

強盗罪と同様に扱うという趣旨であるから︑刑法は︑およそ事後強盗罪を財産犯と見ているというべきであろう︒した

がって︑逮捕免脱・罪跡隠滅目的の場合についても︑後強盗罪を暴行・脅迫罪の加重類型と捉えることには無理がある

ように思われる︒

 ︵二〇九九︶

(9)

事後強盗罪の本質 四六二同志社法学 六二巻六号

㈢ 窃盗の既遂・未遂により区別する見解

  ⑴ これに対し︑暴行・脅迫の目的如何で区別するのではなく︑窃盗が既遂か未遂かで分け︑窃盗の既遂の場合を二

項犯罪︑窃盗が未遂の場合を一項犯罪とする見解も存在する︒

  この見解によれば︑まず︑財物取返防止目的による暴行・脅迫の類型は︑窃盗が既遂の場合に限られるから︑その暴

行・脅迫は︑財物返還請求権という財産上の利益の取得を内容とする二項犯罪である︒一方︑逮捕免脱・罪跡隠滅目的

による暴行・脅迫の類型には︑窃盗が既遂の場合と︑未遂の場合とがありうる︒このうち︑窃盗が既遂の場合は︑その

暴行・脅迫は︑財物返還請求権を侵害する二項犯罪であると評価しうる︒しかし︑窃盗が未遂の場合は︑未だ財物を取

得していないから︑財物返還請求権を侵害する二項犯罪には当たらず︑ただ︑暴行・脅迫による占有の危殆化を観念し

うるから︑財物を客体とする一項犯罪の未遂と捉えられる

22

  このように︑窃盗が既遂の場合は︑財物返還請求権という財産上の利益を客体とする二項犯罪であるのに対し︑窃盗

が未遂の場合は︑財物を客体とする一項犯罪である︒そして︑前者の場合は︑事後的な暴行・脅迫によって占有という

法益が危殆化されるため︑窃取と暴行・脅迫の両者が実行行為となる︒これに対し︑後者の場合は︑返還請求権が保護

法益である以上︑その侵害に向けられた行為である暴行・脅迫のみが実行行為となる︒この場合︑窃取は︑返還請求権

の根拠としての法益設定行為にすぎず︑法益侵害に向けられた行為ではないから︑実行行為には当たらない

23

  ⑵ しかし︑この見解も支持することはできない︒第一の理由は︑窃盗既遂犯人が行う暴行・脅迫を常に二項犯罪と

評価できるわけではないという点である︒窃盗が既遂であっても︑前述したように︑暴行・脅迫の相手方が窃盗の被害

者以外の者である場合や︑暴行・脅迫が逮捕免脱・罪跡隠滅目的でなされた場合︑そのような暴行・脅迫は︑直接に返

還請求権を侵害するものとはいいがたいであろう︒  ︵二一〇〇︶

(10)

事後強盗罪の本質 四六三同志社法学 六二巻六号   第二に︑この見解が︑窃盗未遂の場合には後発的な暴行・脅迫による占有の危殆化を観念しうるとしている点にも疑問がある︒窃盗未遂の場合︑暴行・脅迫は︑財物取還防止目的ではなく︑逮捕免脱または罪跡隠滅目的で行われるであろうから︑そのような暴行・脅迫は︑財物の奪取に向けられたものではなく︑したがって︑暴行・脅迫によって占有が危殆化するとはいえないはずである︒また︑窃取の後に行われた暴行・脅迫が︑遡って窃取による占有の危殆化を増加させるということもありえない︒もちろん︑窃盗が未遂に終わった後に犯人が財物を奪取するために暴行・脅迫を行ったのであれば︑その暴行・脅迫は占有を危殆化するものといえるが︑それは︑もはや事後強盗罪ではなく︑通常の強盗罪の問題である︒  この見解は︑窃盗が未遂の場合︑暴行・脅迫とともに窃盗も事後強盗罪の実行行為であるとしているところからすると︑窃取行為によっても占有が危殆化されると解しているのかもしれない︒確かに︑窃取行為は︑財物の占有を侵害する危険性を有する行為にほかならない︒しかし︑ここで問題としているのは︑通常の強盗罪と同様の類型的違法性を有する占有の侵害といえるかどうかのはずであり︑単なる窃取行為だけではそのような性質の占有の侵害とはいえない︒

㈣ 財物取還防止目的を不可欠とする見解

  ⑴ これまで検討してきた諸説は︑逮捕免脱・罪跡隠滅目的の場合には暴行・脅迫を財産侵害行為と捉えることがで

きないという問題点を抱えていた︒そこで︑財物取還防止目的による暴行・脅迫が行われた場合にのみ事後強盗罪の成

立を認める見解も唱えられている︒その主張の内容は︑次のようなものである︒

  事後強盗罪は︑強盗罪として扱われる以上︑強盗罪と実質的な同質性を有するものでなければならない︒この点︑財

物の取還を防ぐ目的の暴行・脅迫は︑通常の強盗罪のような財物奪取目的の行為ではないものの︑それに準じる財物保

 ︵二一〇一︶

(11)

事後強盗罪の本質 四六四同志社法学 六二巻六号

持目的の暴行・脅迫であり︑通常の強盗罪に近い実質を有するといえる︒しかし︑逮捕免脱・罪跡隠滅目的の暴行・脅

迫は︑財産犯的性質を有しておらず︑財物取還防止目的の暴行・脅迫と同程度の違法性を有するか︑さらには強盗罪に

準じて処罰する実質があるといえるのかは疑問である︒なぜならば︑他の財産犯が発覚し︑逮捕を免れたり罪責を隠滅

したりするために暴行・脅迫を加えた場合に事後強盗罪のような規定が存在しないことを十分に説明できないし︑また︑

逮捕免脱・罪跡隠滅目的の暴行・脅迫は自己庇護的行為としての側面も有しているからである︒

  そこで︑財物取還を防ぐ目的での暴行・脅迫こそを事後強盗罪の行為とすべきである︒すなわち︑事後強盗罪とは︑

窃盗およびそれに引き続いて財物を確保するために行われる暴行・脅迫であり︑事後強盗罪は︑相手の抵抗を排除して

財物の占有を確保しようとする点︑および︑犯行を抑圧する程度の暴行・脅迫を要する点において強盗罪との同質性・

類似性が見出されるのである︒そして︑財物の占有を取得した者が暴行・脅迫を加えるときは︑財物取還を防ぐ目的の

みならず︑しばしば逮捕免脱もしくは罪跡隠滅の目的も伴うことが考えられることから︑逮捕免脱・罪跡隠滅目的につ

いては財物取還防止目的と同時に存在する限りで事後強盗罪の成立が認められるにすぎない

24

  このように︑財物の確保を目的とした暴行・脅迫が事後強盗罪の必須の要件であるとすると︑事後強盗罪が成立する

ためには窃盗既遂後に暴行・脅迫が加えられることが必要となり︑その結果︑事後強盗罪の主体は窃盗既遂犯人に限ら

れ︑窃盗未遂犯人は含まれないこととなる

︒また︑窃盗既遂犯人が暴行・脅迫後に財物を取り戻されたときは︑通常の 25

強盗既遂罪と実質的同等性を有しているとはいえず︑事後強盗罪の未遂にとどまる

26

  ⑵ この見解は︑窃盗既遂犯人が財物確保のために暴行・脅迫を行う場合に限って事後強盗罪の成立を認めるという

点において︑上述した諸説の主張を徹底した見解であるといえる︒

  しかし︑第一に︑そのような解釈は︑刑法二三八条の文言に反するといわざるをえない︒刑法二三八条は︑目的につ  ︵二一〇二︶

(12)

事後強盗罪の本質 四六五同志社法学 六二巻六号 いて︑﹁財物を得てこれを取り返されることを防ぎ︑逮捕を免れ︑又は罪責を隠滅するために﹂と規定しており︑財物

取還目的︑逮捕免脱目的︑罪責隠滅目的のいずれかがあれば足りると解するべきであろう︒逮捕免脱・罪跡隠滅目的は

財物取還目的と同時に存在しなければならないと解することには無理があるように思われる︒

  第二に︑すでに述べたとおり︑刑法二三八条の文言上︑窃盗犯人による暴行・脅迫が行われれば︑それだけで事後強

盗罪は完成し︑最終的に財物を取得したかどうかは問わないと解される︒したがって︑窃盗が既遂であっても︑その後

に財物を取り返されたときには︑事後強盗罪の未遂にすぎないという解釈には無理があるように思われる︒

三  事後強盗罪の意義と具体的帰結

㈠ 事後強盗罪の意義

  ⑴ このように見てくると︑事後強盗罪の財産犯的性格を暴行・脅迫の点に求める見解は︑いずれも成功していない

といわざるをえない︒その問題点は︑事後強盗罪における暴行・脅迫が︑常に財産侵害行為としての性質を有している

とはいえないという点にある︒財産侵害行為としての暴行・脅迫の性質については︑これを︑窃取により得た財物を確

保するための行為と捉える見解や︑返還請求権を妨害する行為と理解する見解が主張されているが︑いずれにしても︑

事後強盗罪のうち︑逮捕免脱・罪跡隠滅目的での暴行・脅迫や︑窃盗未遂犯人による暴行・脅迫は︑財産侵害行為とは

いいがたい︒そこで︑学説の中には︑逮捕免脱・罪跡隠滅目的で暴行・脅迫がなされる事後強盗を人身犯罪と解したり︑

窃盗が未遂の場合を事後強盗罪から除外したりすることによって︑財物取還防止目的で暴行・脅迫が行われた場合のみ

を財産犯としての事後強盗罪と捉える見解が主張されているが︑これらの見解は︑刑法二三八条の文言に合致しないの

 ︵二一〇三︶

(13)

事後強盗罪の本質 四六六同志社法学 六二巻六号

である︒  やはり事後強盗罪の財産犯的性格を基礎づけているのは︑もっぱら窃取であると解すべきであろう

︒確かに︑窃盗既 27

遂犯人が財物確保や財物返還防止のために暴行・脅迫を行う場合のように︑事後強盗罪における暴行・脅迫が財産の侵

害に向けられた行為であるといえる場合もありうる︒しかし︑詐欺罪︑恐喝罪︑強盗罪など︑窃盗罪以外の奪取罪にお

いても︑財物の奪取後に財物確保や財物返還防止のために暴行・脅迫が行われれば︑それは財産侵害行為であるといえ

る︒それにもかかわらず︑刑法は︑窃盗罪についてのみ︑事後的に暴行・脅迫が行われた場合を重く処罰することとし

ているのであるから︑事後強盗罪の財産犯としての性格は窃盗の点にこそあると考えるべきであろう︒つまり︑事後強

盗罪の客体は︑返還請求権等の財産上の利益ではなく︑窃盗の対象である財物である

28

  ⑵ 実際︑二項強盗罪と事後強盗罪とは構造が異なるものとして一般に理解されている

︒たとえば︑他人から財物を 29

詐取した後︑被害者から財物の返還を要求されたため︑暴行・脅迫を用いて返還を免れた場合には︑二項強盗罪の成立

が認められているが︑この場合︑二項強盗罪とともに一項詐欺罪も成立するとされているのであって︑両者は︑併合罪

か︑もしくは︑せいぜい包括一罪とされるにすぎない︒つまり︑詐取行為による法益侵害の点は︑二項強盗罪において

評価されているわけではないのである︒

  これに対し︑窃盗犯人が財物取還防止の目的で暴行・脅迫を用いた場合︑事後強盗罪が成立するが︑窃盗罪と事後強

盗罪は法条競合の関係にあり︑事後強盗罪と別に窃盗罪が成立するわけではない︒窃取による法益侵害の点は︑事後強

盗罪において評価されているのである︒そうだとすれば︑現行刑法は︑事後強盗罪の財産犯的性格を窃取行為に見出し

ていると解するほかないように思われる︒

  ⑶ それでは︑暴行・脅迫を用いない窃取による財物奪取の点に事後強盗罪の財産犯的性格が存するにすぎないにも  ︵二一〇四︶

(14)

事後強盗罪の本質 四六七同志社法学 六二巻六号 かかわらず︑事後強盗罪が︑暴行・脅迫を手段として財物を奪取する強盗罪と同様に扱われるのはなぜなのであろうか︒

  第一に︑事後強盗行為の防止の必要性が挙げられる︒奪取罪のうち︑被害者の意思に基づく交付行為を通じて財物を

奪取する詐欺罪や恐喝罪の場合には︑犯行後︑被害者等に対して暴行・脅迫を行うという事態はあまり考えられない︒

また︑強盗罪は︑もともと財物奪取の手段として暴行・脅迫が用いられる犯罪であり︑暴行・脅迫の点は刑法二三六条

の法定刑において考慮されているばかりでなく︑強盗の機会に暴行が行われた場合には刑法二四〇条の適用も可能であ

る︒  これに対し︑窃盗は︑被害者の意思に反して財物を奪取するものであり︑その犯行が発覚したときには︑財物を取り

返されるのを防ぐなどの目的で暴行・脅迫が行われることが多く︑これにより被害者等の身体の安全や意思の自由が重

大な危険に晒されるおそれがある︒そこで︑財産の保護とともに人身の安全の保護という観点から︑重い刑を科するこ

とによってそのような事態を防止するために置かれたのが︑刑法二三八条であると考えられるのである

30

  第二は︑事後強盗罪の類型的違法性である︒すでに述べたように︑事後強盗罪は︑財産のみならず身体の安全や意思 の自由をも侵害するという点において︑通常の強盗罪と共通している

︒そして︑窃盗そのものは暴行・脅迫を手段とし 31

た財物奪取ではないものの︑事後強盗罪においては暴行・脅迫が窃盗の機会の継続中になされることが要求されており︑

そのように窃盗と機会を同じくして暴行・脅迫が行われた場合︑社会的実態としては窃盗と暴行・脅迫を一体の行為と

評価することが可能となろう︒このように︑事後強盗罪において窃取と暴行・脅迫が一体として行われるという実態に

着目すると︑事後強盗罪は︑暴行・脅迫を手段として財物を奪取する通常の強盗罪に近い類型的違法性を備えていると

いえるのである

32

 ︵二一〇五︶

(15)

事後強盗罪の本質 四六八同志社法学 六二巻六号

㈡ 具体的帰結

  ⑴ こうした理解を前提とすると︑事後強盗罪に関する通説の帰結を基本的に支持することとなる︒

  事後強盗罪の財産犯的性格を基礎づけているのが窃取であるとすると︑事後強盗罪の既遂・未遂は︑窃盗の既遂・未

遂によって決まることになる︒したがって︑窃盗が既遂に至った後に財物を取り返されても︑事後強盗罪の既遂を認め

てよい︒  事後強盗罪の既遂・未遂が窃盗の既遂・未遂によって決まるとすると︑窃盗の着手後︑既遂に至る前に︑逮捕免脱・

罪跡隠滅目的で暴行・脅迫を加えた場合にも︑事後強盗罪の未遂が成立する︒その意味で︑窃盗未遂犯人も︑事後強盗

罪の主体に含まれる︒

  また︑事後強盗罪は︑窃盗罪と暴行・脅迫罪との結合犯である︒事後強盗罪の第一次的な保護法益である財産を侵害

するのが窃取行為であるとすると︑暴行・脅迫とともに窃盗も事後強盗罪の実行行為であるということになるからであ

33

  ⑵ もっとも︑このように窃取を事後強盗罪の実行行為の一部であると解したとしても︑事後強盗罪の実行の着手時

期は︑窃取の開始時ではなく︑暴行・脅迫の開始時に求められる︒確かに︑強盗罪のように︑結合犯においては︑原則

として実行行為の一部が開始された時点で直ちに結合犯全体の実行の着手があったといえる︒しかし︑同じく結合犯と

される強盗殺人罪や強盗強姦罪の実行の着手時期は︑強取行為の開始時ではなく︑殺人行為や強姦行為の開始時に求め

られている

34

  そもそも実行の着手とは︑構成要件実現の現実的危険を含む行為の開始をいう

が︑強盗罪の場合には︑強取の意思で 35

暴行・脅迫が開始すればその時点で財物奪取の現実的危険が認められるのに対し︑強盗殺人罪や強盗強姦罪の場合には︑  ︵二一〇六︶

(16)

事後強盗罪の本質 四六九同志社法学 六二巻六号 強取行為だけでは致死や強姦の点についての現実的危険は認められず︑そうした危険は︑殺人行為や強姦行為が開始されて初めて生ずるのである︒事後強盗罪についても︑強盗殺人罪や強盗強姦罪と同じことがいえる︒たとえ事後強盗の意思を持って窃取行為を開始したとしても︑その時点では事後強盗罪の構成要件が実現される現実的危険は発生していないため︑暴行・脅迫の開始を待って実行の着手が認められるのである

36

四  事後強盗罪と強盗罪の関係

  最後に︑以上の考察結果を踏まえて︑事後強盗罪と通常の強盗罪との関係に触れておきたい︒

㈠ 事後強盗罪と二項強盗罪との関係

  ⑴ 前述したように︑窃盗により得た財物の取返しを防ぐために暴行・脅迫を加えた場合には︑暴行・脅迫により返

還請求権の防止という財産上の利益を取得したといえ︑事後強盗罪と同時に二項強盗罪の構成要件にも該当していると

いえよう︒この場合︑事後強盗罪の客体は財物であるのに対し︑二項強盗罪の客体は返還請求権という財産上の利益で

あり︑両者の客体は異なっているが︑実質的に見れば︑同一の被害者の同一の財産に対する侵害行為といえるから︑包

括一罪とすべきであろう︒そして︑事後強盗罪は︑窃盗後に暴行・脅迫が行われた場合の特別規定であるといえるから︑

二項強盗罪は事後強盗罪に吸収されると解される

37

  特に︑窃盗が既遂に至った後︑窃盗の被害者から財物を取り返されそうになり︑暴行・脅迫を加えたが︑結局︑財物

を取り返された場合には︑実益がある︒この場合︑窃盗が既遂である以上︑事後強盗罪は既遂となるのに対し︑返還請

 ︵二一〇七︶

(17)

事後強盗罪の本質 四七〇同志社法学 六二巻六号

求権の侵害には至っていないため二項強盗罪としては未遂であり

︑軽い二項強盗未遂罪は重い事後強盗既遂罪に吸収さ 38

れることになろう︒

  ⑵ もっとも︑事後強盗罪と二項強盗罪の成立範囲は︑完全に一致するわけではない

39

  事後強盗罪は︑窃盗犯人に限られるから︑詐欺や恐喝により得た財物の取返しを防ぐために暴行・脅迫を加えた場合

には︑事後強盗罪が成立する余地はなく︑二項強盗罪が問題となるにすぎない︒また︑事後強盗罪が成立するためには

暴行・脅迫が窃盗の機会の継続中になされる必要があるから︑窃盗の機会の継続中とはいえない場合には︑事後強盗罪

の成立は否定されるが︑二項強盗罪の成立する可能性はある︒

  逆に︑窃盗未遂犯人が逮捕免脱・罪跡隠滅の目的で暴行・脅迫を加えた場合には︑事後強盗︵未遂︶罪は成立するが︑

財産上の利益の取得に向けられた行為ではないから︑二項強盗罪には当たらない︒また︑窃盗犯人が財物の所有者以外

の者に暴行・脅迫を加える場合︑暴行・脅迫の相手方が返還請求権を有していない以上︑二項強盗罪の成立は否定され

るが︑事後強盗罪は︑窃盗の被害者以外の者に対する暴行・脅迫を含むとされているから︑事後強盗罪の成立は認めら

れよう︒

㈡ 事後強盗罪と一項強盗罪との関係

  ⑴ 窃盗の実行の着手後︑犯行が発覚し︑被害者に暴行・脅迫を加え︑財物を奪取した場合は︑窃盗は未遂に終わっ

ているから︑事後強盗罪としては未遂であるが︑暴行・脅迫を手段として財物を奪取しているから︑一項強盗既遂罪の

成立が認められる

︒いわゆる居直り強盗である︒ 40

  ⑵ それでは︑窃盗が既遂に至った場合には︑一項強盗罪の成立することはありえないのであろうか︒この点につい  ︵二一〇八︶

(18)

事後強盗罪の本質 四七一同志社法学 六二巻六号 ては︑一項強盗罪の成立する余地を認める見解が有力である︒  この見解は︑﹁犯罪の既遂﹂と﹁犯罪の終了・完成﹂との区別に着目し︑たとえば︑スーパーマーケットで商品をポ

ケットに入れた場合︑財物の占有は移転し︑窃盗罪は﹁既遂﹂に達したかもしれないが︑被害者の占有を完全に排除し

たわけではないので︑窃盗罪は﹁終了・完成﹂したとはいいがたく︑この場合に︑警備員等に暴行・脅迫を加えて商品

を完全に確保すれば︑一項強盗罪の成立を認めてよいと説く

41

  確かに︑財物奪取の後に暴行・脅迫が行われた場合でも︑一項強盗罪の成立を認める余地はある︒たとえば︑ひった

くりの事例のように︑最初から強盗の意思で財物を奪取して︑その直後に暴行・脅迫を行い︑これにより財物を確保し

た場合には︑実質的には暴行・脅迫を手段として財物を奪取したと見てよいであろう︒この場合には︑一項強盗罪の成

立を認めてもよいと思われる

42

  しかし︑当初は窃盗の意思で財物の占有を取得した後に暴行・脅迫がなされた場合には︑たとえその暴行・脅迫によ

り財物の占有がより強固なものになったとしても︑暴行・脅迫を手段として財物を奪取したとはいえないから︑原則と

して一項強盗罪の成立は否定すべきであり︑事後強盗罪が問題となるにすぎないと思われる

︒そうでなければ︑同じ奪 43

取罪の中でも︑窃盗罪における占有と︑強盗罪における占有とが異なる意味を持つことになり︑占有の概念が不明確な

ものとなってしまうであろう

44

  犯罪の既遂と犯罪の終了・完成を区別する見解は︑現在の通説・判例において窃盗罪の既遂が比較的早い時点で認め られているという点を根拠の一つとしている

︒しかし︑もしそれにより不都合が生じているというのであれば︑むしろ 45

窃盗罪の既遂時期について再検討するのが︑筋であろう︒

 ︵二一〇九︶

(19)

事後強盗罪の本質 四七二同志社法学 六二巻六号

五  結  語

  本稿は︑事後強盗罪の財産犯的性格を基礎づけるのは窃盗か暴行・脅迫かという点に関する学説の対立に着目するこ

とにより︑事後強盗罪の本質を明らかにしようとしたものである︒

  事後強盗罪は︑通常の強盗罪と異なり︑財物奪取行為の後に暴行・脅迫が行われ︑暴行・脅迫が必ずしも財産の侵害

の手段としては行われないにもかかわらず︑﹁強盗罪として論じる﹂とされているのであるから︑その法的性格が不明

確であることは否めない︒そのため︑暴行・脅迫を財産侵害行為と捉えることによって︑可能な限り通常の強盗罪と共

通の性質を事後強盗罪に見出そうとする近時の有力説は︑一定の説得力を有する︒しかし︑そのような見解は︑刑法二

三八条の解釈としては無理があるといわざるをえない︒刑法二三八条の文言を前提とする限り︑事後強盗罪の財産犯的

性格は︑窃盗の点に求めるほかないと考えられるのである︒

1︶ 大谷實﹃刑法講義各論﹄︵成文堂︑新版第三版︑二〇〇九年︶二三二

二三三頁︒佐久間修﹁強盗罪における財産犯と人身犯の交錯︵一︶﹂−

警察学論集五七巻二号︵二〇〇四年︶一九七

− 一九八頁も︑事後強盗罪の人身犯としての側面を重視する︒

2︶ 大判明治四二年一〇月一五日刑録一五輯一三八〇頁︑最判昭和二四年七月九日刑集三巻八号一一八八頁︒大谷・前掲注︵

1︶二三五頁︑山

中敬一﹃刑法各論﹄︵成文堂︑第二版︑二〇〇九年︶二九四

− 二九五頁︒これに対して︑

内田文昭﹃刑法各論﹄︵青林書院︑第三版︑一九九六年︶

二八四頁は︑暴行・脅迫により身体・自由が侵害されなかった場合をも事後強盗罪の未遂とする︒また︑西村克彦﹃強盗罪考述﹄︵一粒社︑一

九八三年︶一一八頁以下は︑窃盗が未遂の場合は刑法二三八条適用の前提を欠くし︑窃盗犯人による暴行・脅迫に未遂はないから︑結局︑事

後強盗罪に未遂犯の成立する余地はないとし︑窃盗未遂犯人が暴行・脅迫を行った場合は窃盗未遂罪と暴行・脅迫罪が成立すると説く︒

3︶ 山口厚﹃刑法各論﹄︵有斐閣︑第二版︑二〇一〇年︶二二九頁︒

4︶ 川端博﹃刑法各論講義﹄︵成文堂︑第二版︑二〇一〇年︶三三六頁︑前田雅英﹃刑法各論講義﹄︵東京大学出版会︑第四版︑二〇〇七年︶二  ︵二一一〇︶

(20)

事後強盗罪の本質 四七三同志社法学 六二巻六号 四二頁︑大谷・前掲注︵

1︶二三三頁︑山口・前掲注︵

3︶二三〇頁︒

5︶ 山口・前掲注︵

  3︶二三〇頁︑岡野光雄﹁事後強盗罪﹂阿部純二ほか編﹃刑法基本講座第五巻財産犯論﹄︵法学書院︑一九九三年︶一

一七頁︑植田重正﹁事後強盗罪の問題点﹂関西大学法学論集二六巻一号︵一九七六年︶九頁︑吉田敏雄﹁事後強盗罪をめぐる諸問題﹂現代

刑事法一二号︵二〇〇〇年︶四四頁︒

6︶ 西田典之﹃刑法各論﹄︵弘文堂︑第五版︑二〇一〇年︶一七七頁︒

7︶ 植松正﹃再訂刑法概論Ⅱ各論﹄︵勁草書房︑一九七五年︶三九四頁︑曽根威彦﹃刑法各論の重要問題﹄︵成文堂︑第二版︑二〇〇六年︶一八

一八一頁︒ただし︑西田・前掲注︵−

6︶一七七頁は︑窃盗が既遂の場合でも︑最終的に財物を取り戻されたときは︑事後強盗罪の未遂

とする見解が妥当であると思われるとしつつも︑なお疑問を留保しておきたいとする︒

8︶ 曽根威彦﹃刑法各論﹄︵弘文堂︑第三版補正三版︑二〇〇六年︶一三〇頁︒西田・前掲注︵

6︶一七七頁は︑こうした見解を基本的に支持

しつつも︑疑問を留保するとしている︒

9︶ 山口・前掲注︵

23︶一三七頁以下︒

10︶ 林幹人﹁事後強盗罪の新動向﹂刑事法ジャーナル二号︵二〇〇六年︶四九頁︒

11︶ 山口・前掲注︵

3︶二三〇頁︒

12︶ 最決昭和六一年一一月一八日刑集四〇巻七号五二三頁︒これに対し︑町野朔﹃刑法各論の現在﹄︵有斐閣︑一九九六年︶一四一頁は︑二項

強盗罪の成立を否定する︒

13︶ 佐伯仁志﹁事後強盗罪の共犯﹂研修六三二号︵二〇〇一年︶六

− 七頁︒

14︶ 佐伯・前掲注︵

13︶七頁︒さらに︑佐久間修﹃刑法各論﹄︵成文堂︑二〇〇六年︶一九〇頁注一八参照︒

15︶ 古田佑紀﹁判批﹂研修四五四号︵一九八七年︶六八

− 六九頁参照︒

16 ︶ 大阪地判昭和五七年七月九日判時一〇八三号一五八頁︒安廣文夫﹁判解﹂﹃最高裁判所判例解説刑事篇昭和六一年度﹄︵法曹会︑一九八

九年︶三〇八頁︑内田文昭﹁二項強盗の限界

︵刑集四〇巻七号五二三頁最高裁昭和六一年一一月一八日第一小法廷決定・判例時報一二一−

六号一四二頁︶を機縁として﹂判例評論三四六号︵一九八七年︶五頁︑林・前掲注︵

10︶五〇頁︒

17︶ 最決平成一四年二月一四日刑集五六巻二号八六頁︑最判平成一六年一二月一〇日刑集五八巻九号一〇四七頁︒大谷・前掲注︵

1︶二三四頁︒

18︶ 大判明治四三年一一月二四日刑録一六輯二一二五頁︒大塚仁ほか編﹃大コンメンタール刑法第一二巻﹄︵青林書院︑第二版︑二〇〇三年︶︹米

 ︵二一一一︶

(21)

事後強盗罪の本質 四七四同志社法学 六二巻六号

澤慶治=髙部道彦︺三七九頁︑三九一

− 三九二頁︒

19︶ 山口厚﹁事後強盗罪再考﹂研修六六〇号︵二〇〇三年︶八頁︒

20︶ 山口・前掲注︵

19︶八頁は︑事後強盗罪が暴行罪・脅迫罪の加重形態であるとすると事後強盗罪の法定刑の重さを正当化できないと指摘

する︒さらに︑只木誠﹁判批﹂判例評論五三七号︵二〇〇三年︶四九頁参照︒

21︶ 佐伯・前掲注︵

13︶八頁︒

22︶ 増田隆﹁事後強盗罪の基本構造とその関与問題﹂早稲田大学大学院法研論集一一四号︵二〇〇五年︶一〇四

− 一〇五頁︒

23︶ 増田・前掲注︵

22︶一〇〇

− 一〇一頁︒

24︶ 金澤真理﹁財物奪取後の暴行・脅迫

− 事後強盗罪の構造

− ﹂﹃

刑事法学の現代的課題 阿部純二先生古稀記念論文集﹄︵第一法規︑二〇〇四年︶

三〇七頁以下︒松宮孝明﹃刑法各論講義﹄︵成文堂︑第二版︑二〇〇八年︶二一七頁は︑事後強盗罪に逮捕免脱・罪跡隠滅目的を加えておく

ことには再考の余地があるとする︒

25︶ 松宮・前掲注︵

24︶二一八頁︑金澤・前掲注︵

24︶三〇八頁︒

26︶ 金澤・前掲注︵

24︶三一〇

− 三一一頁︒

27︶ 古江賴隆﹁判批﹂研修四五七号︵一九八六年︶六七頁︒

28︶ 正田満三郎﹁一項強盗罪・二項強盗罪・事後強盗罪相互の関係について︵上︶

・一一最高裁一小決昭六一・一八を顧みる﹂判時一二八 −

六号︵一九八八年︶七頁︑山口・前掲注︵

19︶九

− 一〇頁︒

29︶ 内田・前掲注︵

16︶六頁︑林・前掲注︵

10︶四九

− 五〇頁︒

30︶ 山中・前掲注︵

2︶二八九頁は︑暴行・脅迫を用いて財物を強取するのも︑後に暴行・脅迫によって確保するのも︑犯罪心理学的には︑価

値的に同一である点︑および︑違法・責任の程度は低いが︑被害者の取返しや逮捕行為の︵緊急権の︶保護の必要性が高いので︑政策的に

同様に扱われるべきであるという点に︑事後強盗罪が強盗罪として扱われる根拠を求めている︒なお︑岡野・前掲注︵

5︶一二四頁注︵

1

参照︒

31︶ 吉田・前掲注︵

5︶四三頁は︑人身保護の必要性の観点から刑法二三八条が置かれたとした上で︑事後強盗罪は窃盗罪の加重類型であって︑

暴行罪・脅迫罪の加重類型ではないとする︒

32︶ 大塚仁﹃刑法概説︵各論︶﹄︵有斐閣︑第三版︑一九九六年︶二二一頁︑只木・前掲注︵

20︶四九頁︑内山良雄﹁強盗罪﹂曽根威彦=松原芳  ︵二一一二︶

(22)

事後強盗罪の本質 四七五同志社法学 六二巻六号 博編﹃重点課題刑法各論﹄︵成文堂︑二〇〇八年︶一一三頁︒

33︶ もっとも︑事後強盗罪は︑同時に︑身分犯でもある︒拙著﹃身分犯の共犯﹄︵成文堂︑二〇〇九年︶三二二頁以下︒

34︶ 古江・前掲注︵

27︶六三

− 六四頁︒

35︶ 大谷實﹃刑法講義総論﹄︵成文堂︑新版第三版︑二〇〇九年︶三七〇頁︒

36︶ 古江・前掲注︵

27︶六五

− 六六頁︑内山・前掲注︵

31︶一一四頁︒

37︶ 内田・前掲注︵

16︶六頁︒これに対し︑安廣・前掲注︵

16︶三〇八

︑二項強盗罪と事後強盗罪とに認定上の優先順位はない三〇九頁は−

とする︒

38︶ 林・前掲注︵

10︶五〇頁︒

39︶ 安廣・前掲注︵

16︶三〇八

− 三〇九頁︑林美月子﹁判批﹂法学教室八〇号︵一九八七年︶一二八頁︑林・前掲注︵

10︶五〇頁︒

40︶ 川端・前掲注︵

4︶三三八

− 三三九頁︑大谷・前掲注︵

1︶二二六頁︒

41︶ 林・前掲注︵

10︶四七

− 四八頁︒

42︶ 最判昭和二四年二月一五日刑集三巻二号一六四頁︒大塚・前掲注︵

31︶二一五

二一六頁︑大谷・前掲注︵−

1︶二二六頁︑曽根・前掲注

8︶一三五頁︒これに対し︑このような場合でも事後強盗罪を問題とすべきであるとするのは︑西田・前掲注︵

6︶一六七頁︑金澤・前掲

注︵

24︶三〇八

− 三〇九頁︒さらに︑吉田・前掲注︵

5︶四三

− 四四頁は︑強盗未遂罪と暴行罪・脅迫罪が成立するとする︒

43︶ 吉田・前掲注︵

5︶四三頁︒

44︶ 増田・前掲注︵

22︶一〇六頁︒

45︶ 林・前掲注︵

10︶四八頁︒

 ︵二一一三︶

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