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地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺 度の開発 : 妥当性と信頼性の検証

著者 李 彦尚

雑誌名 評論・社会科学

号 108

ページ 105‑124

発行年 2014‑03‑20

権利 同志社大学社会学会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013439

(2)

要約:本研究は,地域福祉計画のアウトカム評価に焦点をあてて,参画による住民意識の 変化を測定するための「福祉コミュニティ意識尺度」を開発することを目的とした。岡村 重夫の福祉コミュニティ論に基づき,福祉コミュニティ意識に関する質問項目を作成し,

内容的妥当性の検討や予備調査を行った。そして,272名より質問紙調査の回答を得,3 子二次因子モデルの構成概念妥当性を確認的因子分析により検討し,クロンバックのα 数を算出して尺度の信頼性を検討した。その結果,福祉コミュニティ意識尺度の妥当性と 信頼性が統計学的に有意であることが明らかになった。この尺度は,「少数者への関心」5 項目,「同一性の感情」3項目,「生活要求の充足に対する信念」4項目で,3つの構成概 念・12項目となっている。本研究を通して,地域福祉計画への参加によって住民意識がど のように変化したかを実証的に測定する尺度が提案できた。

キーワード:地域福祉計画,評価,福祉コミュニティ意識,尺度開発

目次 1.はじめに

2.地域福祉計画の評価と住民意識の変化 2−1.地域福祉計画の評価

2−2.住民の内的変容と福祉コミュニティ意識 3.福祉コミュニティ論

3−1.岡村重夫の福祉コミュニティ論 3−2.福祉コミュニティ論の継承 3−3.福祉コミュニティ論の展開 4.概念定義と調査方法

4−1.本研究における福祉コミュニティ意識 4−2.質問項目の作成・修正

4−3.調査・分析方法 4−4.倫理的配慮 5.結果

5−1.回答者の属性 5−2.構成概念妥当性の検討 5−3.信頼性の検討

────────────

同志社大学大学院社会学研究科博士後期課程

20131224日受付,査読審査を経て2014131日掲載決定

論文

地域福祉計画評価のための

福祉コミュニティ意識尺度の開発

──妥当性と信頼性の検証──

李 彦尚

105

(3)

5−4.福祉コミュニティ意識尺度 6.おわりに

1.はじめに

超少子高齢化の時代を迎え,社会サービスの増大による財政難や経済のグローバル化 に伴う政府機能の低下,そして官僚制の弊害を克服するため,ローカル・ガバナンスと いう考え方が注目されている。それは,行政と住民がパートナーシップによって地域の 問題を解決していくことであり,それを実現するツールとして「地域福祉」が脚光を浴 びている。新たな社会福祉のパラダイムである地域福祉に関して,武川(2008)は社会 福祉の世界を超えて日本社会に広がる現象,いわゆる「地域福祉の主流化」の時代に入 ったと述べている。

このような状況の中で,2000年(平成

12

年)には社会福祉法が成立し「地域福祉計 画」が法制化(社会福祉法第

107

条,努力義務)された。法律には,「地域における福 祉サービスの適切な利用の推進に関する事項」「地域における社会福祉を目的とする事 業の健全な発達に関する事項」「地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する 事項」という事項が規定されているが,地域福祉計画の目的は不明確である。なぜな ら,そもそも地域福祉計画というのは,地方自治の方策として自治体が住民と共に地域 性を十分に活かして策定する計画であるから,自治体別自由な目的・目標の設定が求め られるものである。

地域福祉計画が法制化されてからすでに

10

年経過した現在,地域福祉計画の進行管 理をはじめ,効果・成果をどう捉え,どう提示していくかが問われている。現在,地域 福祉計画策定に取り組んでいる市町村は全国で約

6

割にとどまっており,さらにその中 の

6

割の自治体のみが地域福祉計画の評価に取り組んでいるに過ぎない(厚生労働省

2012

(1);平野ら

2013 : 41)。地域福祉計画未策定の理由としては,人材・人員不足,財

源不足,既存計画での地域福祉の推進,そして策定する必要性を感じないなどの意見が 多い(武川ら

2013:Ⅶ)。このような状況で,理念的な訴えだけでは,テマヒマのかか

る住民参加型地域福祉計画の導入を促していくことは難しい。地域福祉計画における具 体的な住民参加方法のみならず,住民参加による計画づくりのメリットを具体的・実証 的に提示することが求められているのである。

しかし,住民参加による地域福祉計画策定に積極的に取り組んでいる自治体は少な く,地域福祉計画の評価にあたっても地域福祉計画の効果を実証的に検討することは稀 である。評価指標が十分に開発されていない状況では,地域福祉計画に盛り込まれた目 標の達成度のみの評価にとどまり,住民意識の変化についてまで実証的に評価した事例

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 106

(4)

はほとんど見当たらない。

地域福祉計画は,住民意識を変える地域福祉実践としての性格を持っており,さらに 意識の変化を通して,福祉コミュニティ形成を実現させることが期待されている。原田

(2008 : 24)は,地域福祉計画の策定を地域住民がエンパワメントされていく過程とし て捉え,その過程において住民意識を変えていく学習機能が大切だと指摘している。ま た,牧里(2006 : 67)は,地域福祉における住民の成長を測定する指標や尺度の提案が できるかという課題があると指摘している。すなわち,住民意識の変化に重点を置き,

地域福祉計画による効果を客観的・実証的に測定する指標や尺度の開発など,評価手法 に関する研究が喫緊の課題だといえよう。

本研究の目的は,地域福祉計画のアウトカム評価に焦点をあてて,住民意識の変化を 測定する福祉コミュニティ意識尺度を開発することである。岡村重夫による福祉コミュ ニティ論などに基づき,福祉コミュニティ形成を実現するための前提条件といえる住民 の福祉コミュニティ意識とは何かを明らかにし,質問項目を作成する。そして,福祉コ ミュニティ意識尺度の構成概念妥当性を検討するため,構造方程式を用いた「確認的因 子分析」(Confirmatory Factor Analysis)を行い,信頼性を確認するため「クロンバック の

α

係数」(Cronbach’s Coefficient Alpha)を算出し検討する。

本研究を通して,地域福祉計画に住民が参加することによって,住民意識がどのよう に変化したかを実証的に測定する尺度が提案できる。住民参加による地域福祉の推進が 継続的になされていない自治体や地域福祉計画の策定に消極的な自治体に住民意識の変 化という地域福祉計画の有効性を実証的に提示することにより,それが住民参加による 地域福祉計画に積極的・戦略的に取り組むきっかけになると考える。

2.地域福祉計画の評価と住民意識の変化

2−1.地域福祉計画の評価

地域福祉計画の評価は,計画の主体や目標の設定によって評価の視点・方法論が異な り,それにより評価結果も異なる。つまり,誰が主として何を評価するかが重要であ る。効率性を優先する行政サイドの発想で評価するか,もしくは民間非営利セクター・

住民の視点で評価するか,専門家などの第三者が評価するか,すなわち「評価主体」に よって地域福祉計画の評価が異なるのである。また,地域福祉計画の目標を,タスク・

ゴール,プロセス・ゴール,そしてリレーションシップ・ゴールに分けて考えてみる と,その「目標の設定」によっても評価の枠組みやその方法論が異なってくる。

タスク・ゴールに基づいた評価は,地域福祉計画書に盛り込まれた内容がどのように 成果をあげているのか,いわゆる達成度を評価することになる。そして,策定のプロセ

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 107

(5)

スに評価視点を置く評価や地域社会の変革を目標とするリレーションシップ・ゴールに 基づいた評価も可能である。地域福祉実践においては,結果とプロセスを総合的に評価 する視点が大事である。一方,地域福祉実践の特性上,目標に沿った効果と予想しなか った効果を含む概念としての波及効果を評価することも重要な意味を持っている。しか し,その波及効果の評価は難しく,効果を測定する手法の開発が課題となっている。

地域福祉計画の評価には,多様な評価クエスチョンの視点が存在する。〈表

1〉のよ

うに,川島ゆり子(2007 : 226−234)は,ロッシら(P. H. Rossi, M. W. Lipsey, H. E. Freeman

2004)が提示したプログラム評価階層を住民参加のプロセスに照らして,計画策定にお

ける住民参加の評価クエスチョンを提示している。川島の評価クエスチョンの枠組みは プロセス・ゴール,タスク・ゴールともに援用可能となる。本稿における「評価」は,

地域福祉福祉計画によって発生した効果の評価,いわゆるアウトカム評価(outcome

assessment)に焦点をあてている。

現在,地域福祉計画の評価は,行政・専門家の視点で,地域福祉計画書に盛り込まれ た目標・事業の達成度を評価したり,住民参加を強調した策定・実践のプロセスを分析 したりする場合が多い。また,半数以上の自治体は,質的目標のみ設定しており,量的 目標設定は

2

割にもならない(武川ら

2013 : 218)。これは,各自治体における地域福

祉計画の目標が不明確であり,地域福祉計画の効果に対する意識が弱い実態を示してい るのではないだろうか。

武川ら(2013 : 217)が

2013

年に実施した『社会福祉法に基づく地域福祉計画の策 定・実施・評価における課題に関する調査研究事業報告書』では,地域福祉計画の策定 効果として「地域の要望や課題が明らかになった」「地域福祉関連活動・事業の推進に つながった」「各種ネットワーク形成や連携強化のきっかけになった」「住民・行政等の 役割が明らかになった」「住民の地域福祉の理解が進んだ」「進捗状況や政策評価(進行 管理)を行うようになった」などが挙げられている。そして,平野ら(2013 : 45)が,2011

1 地域福祉計画への住民参加評価視点

計画策定 プログラム評価の階層 評価クエスチョン 構想計画

(Plan) ニーズの評価 地域福祉計画に住民参加がなぜ必要とさ れるのか

課題計画

(Program) プログラム理論の評価 住民参加は具体的にどのような効果をも たらすと想定されるか

実施計画

(Do) プログラム実施の評価 住民参加は課題計画で目指した理論に則 して効果を上げているか

評価

(See) アウトカムの評価 意図した改善がどの程度もたらされてい るか

出所:川島,2007, p 226

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 108

(6)

年に第

2

期地域福祉計画策定済みの

194

市町村に対して実施した「地域福祉計画の進行 管理に関する実態調査」では,「新たな住民組織の立ち上げ」「新たな事業展開」などの 効果があったことが明らかになっている。これは,行政職員による行政内部評価とし て,プロセスの評価には妥当であるが,住民意識の向上や地域環境の変化,そして組織 間連携の構造に関する評価は無理がある。今後,明確な目標の設定とともに,行政・専 門家の視点だけではなく,住民をエンパワメントする視点で地域福祉計画を科学的に評 価することが求められる。そのため,多様な評価の指標・尺度や評価手法の開発は欠く ことのできない課題である。

2−2.住民の内的変容と福祉コミュニティ意識

地域福祉の推進において住民の主体形成・参加が前提になることを勘案すると,住民 が望ましい福祉意識をもつことが地域福祉の鍵となる。したがって,地域福祉の評価に おいても,住民参加により住民にどのような変化が起こったか,すなわち住民の内的変 容という効果を実証的に提示しなければならない。松本すみ子(2012 : 179)によれば,

地域福祉における住民参加は,単なる福祉サービス量の増大につながるだけではなく,

「住民の内的変容」をもたらし,その結果,地域福祉の推進が図られると述べている。

ここで言う内的変容とは,住民参加による自らの価値観や意識,福祉への理解などの変 容のことである。地域に無関心であった住民が参画によって意識・態度が変容され,地 域福祉を推進する担い手となり,その結果として福祉コミュニティの形成が可能とな る。

住民意識の変化に焦点をあてて地域福祉計画を評価する際,欠かせない要素は,地域 福祉の目標・理念として言われている「福祉コミュニティ」という概念である。地域福 祉計画は,超少子高齢化・地方分権の時代を迎えて,地域福祉を推進するためのツール として導入されたため,住民・当事者による福祉コミュニティ形成を地域福祉計画の目 標として設定することは当然のことである。大橋(2001 : 27)によれば,地域福祉計画 が地域自立生活支援を目的として策定される以上,福祉サービス利用者を地域社会を構 成する一員として支え,支援できる福祉コミュニティづくりが重要な課題となると述べ ているのである。つまり,地域福祉計画は,福祉コミュニティ形成にあたり,核心的な ツールであり,協議の場である。地域福祉計画の策定・実行・進行管理における住民参 加が十分であれば,参画を通して住民意識が向上され,福祉コミュニティ形成が実現さ れる。

よって,福祉コミュニティ形成のための前提条件として「福祉コミュニティ意識」と いう新しい概念を設定し,その変化を地域福祉計画の効果として提示できるのではない だろうか。福祉コミュニティの形成にとって,それぞれのコミュニティに適合した福祉

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 109

(7)

サービス・施設等が用意されることは,必要条件であるが,しかしこれらのサービス・

施設等は,住民の意識・態度がそれなりに形成されないかぎりは十分なものとはならな

い(三浦

1982 : 385)。言い換えれば,住民の福祉意識の高さが福祉コミュニティ形成

に関連性を持っているのである。また,広井(2008 : 65)が

2007

5

月に実施した

「地域コミュニティ政策に関する質問紙調査」をみると,コミュニティづくりにおける 課題・ハードルとして挙げられたのは,「意識」や「関心」など,ソフト面の回答が多 かった。これらは福祉コミュニティ形成にあたり,住民意識の重要性を裏付けている。

本稿では,岡村重夫の福祉コミュニティ論に基づき,福祉理念を内在させた住民意識 としての「福祉コミュニティ意識」という新しい概念について整理し,それを実証的に 測定する尺度の開発を試みる。この尺度を地域福祉計画の評価に用いることで,住民参 加による地域福祉計画が持つ住民意識の向上という有効性を示すことができる。

3.福祉コミュニティ論

3−1.岡村重夫の福祉コミュニティ論

日本における福祉コミュニティ概念は,岡村重夫の『地域福祉論』(1974年)のなか で地域福祉の構成要素として提示された。岡村は,社会学によるコミュニティ研究を批 判的に継承し,イギリスの「シーボーム委員会報告」(1968年),日本の「中央社会福 祉審議会答申」(1971年)という二つの代表的なコミュニティ論を検討したうえで,

「社会福祉のためのコミュニティ論」(平川

2004 : 207)の必要性を主張している。

岡村(1974 : 69)によれば,一般的コミュニティは,多数の地域住民に共通な関心や 問題意識に従って成立するものであるから,地域における少数者の問題や要求は,一般 的なコミュニティを形成する契機とはなりにくいという傾向があると述べている。つま り,「地域組織化活動」を通じて地域コミュニティが形成されても,地域福祉問題は解 決できないのである。そこで,岡村は「福祉組織化活動」を通じて地域コミュニティの 下位コミュニティとしての福祉コミュニティを形成することが必要だと主張している。

そして,地域コミュニティと福祉コミュニティの両者の間に密接な協力関係のあること が望ましいと設定している。

岡村が定義した福祉コミュニティとは,コミュニティの一般的社会状況のなかで,と くにこれらの社会的不利条件をもつ少数者の特例条件に関心をもち,これらの人々を中 心として同一性の感情をもって結ばれる下位集団であり,社会福祉サービスの利用者な いし対象者の真実の生活要求を充足させるための組織体のことである(同:87−88)。

そして,福祉コミュニティのイメージは,すべての住民が,それぞれに生活上の障害や 不利条件をもつことを自覚して,相互に協力して,主体的人間性を守ろうとする人々の

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 110

(8)

自発的共同体であると述べている(松本

2012 : 11)。牧里毎治(1993 : 123−124)によれ

ば,福祉コミュニティの特徴は,①地理的に規定されてくる一定の地域社会の内部に存 在する機能的コミュニティ,②生活上の不利益,生活困難を最も強く受けやすい,福祉 サービスの顕在的・潜在的利用者(当事者)を中心にすえた組織体,③社会福祉サービ スの充実・開発にかかわって顕在的・潜在的利用者の真のニーズを明らかにし充足する ことである。

福祉コミュニティの第

1

の構成員は,サービスの受給者・対象者,いわゆる「当事 者」であり,福祉コミュニティは当事者を中心として広がるという特徴がある。第

2

の 構成員は,生活困難の当事者と同じ立場に立つ同調者や利害を代弁する代弁者,いわゆ る「ボランティア」であり,第

3

の構成員は各種のサービスを提供する機関・団体・施 設,いわゆる「専門職」である。上野谷加代子(2006 : 49)によれば,福祉コミュニテ ィは当事者の組織化,ボランティアの組織化,専門職の組織化・組織間連携などとこの 三者の連携,組織化をさすと述べている。

こうした福祉コミュニティ論は,「生活」を基本的要求の充足過程(松本

2002 : 19)

として捉えており,生活者としての住民・当事者の側に立った「主体論的アプローチ」

だといえる。そして,生活の現実性からみると,福祉コミュニティの形成は一般的なコ ミュニティ,いわゆる地域コミュニティの形成より重要な意味を持っている。

本稿では,岡村の福祉コミュニティの定義から,「少数者への関心」「同一性の感情」

「生活要求の充足」という

3

つの主な構成概念を抽出した。それらは,岡村の福祉コミ ュニティ論における主な概念として,多くの学者によってその概念が具体化されてきた といえよう。3つの福祉コミュニティの構成員と

3

つの構成概念の関係を〈表

2〉に示

した。

少数者への関心はサービスの受給者である当事者と密接な関係をもっており,同一性 の感情はボランティアによって,そして生活要求の充足は福祉サービスの提供者ともな る専門職によって支えられる(◎)。もちろん,各々の構成概念は,ただひとつの構成 員によって支えられるのではなく,3つの構成員すべてと連動している(○)。

2 福祉コミュニティの構成員と構成概念

少数者への関心 同一性の感情 生活要求の充足 当事者

(第一の構成員)

ボランティア

(第二の構成員)

専門職

(第三の構成員)

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 111

(9)

3−2.福祉コミュニティ論の継承

本稿では,こうした

3

つの構成概念を中心に,福祉コミュニティ論の継承についてま とめておきたい。

上野谷加代子(2006 : 49−50)は,福祉コミュニティは,人と人,人と組織,組織と 組織をつなぐ幾重もの重層的な回路をもち,「異なった他人の存在の承認」という違い を認め合う緩やかなネットワークの形成と「重荷を共に担い合う」協働の精神,行為か らなるものであると述べている。また,地域福祉計画策定において問われている「社会 的排除」に関する課題への接近にも福祉コミュニティのとらえ方が必要であると述べて いる。そして,福祉コミュニティづくりは,フォーマルサービスとインフォーマルサポ ートの包括的,総合的な形成を生活圏域としての地域社会に創出していくことこそが近 道であり,参加・参画の促進,協働の工夫・実践,ボランタリズムの尊重,地域に根ざ したボランティア学習と福祉教育,民の情報共有と発信などの方法を必要とすると指摘 している(上野谷

2012 : 174 ; 2006 : 51)。すなわち,上野谷は,「異なった他人の存在

の継承」「重荷を共に担い合う協働の精神・行為」「社会的排除」などのように,少数者 への関心や生活要求の充足に重点を置き,福祉コミュニティの概念を具体化させてい る。

牧里毎治(1993 : 123−124)は,福祉コミュニティについて,一般的に用いるコミュ ニティに対して,地域社会を基盤としつつ,ハンディキャップをもつ階層の福祉追求を 原点にサービス・施設の体系的整備とともに公私協働,地域住民の福祉意識・態度の醸 成を図ろうとする機能的コミュニティのひとつであると述べている。そして,地域ボラ ンティア組織である地区社会福祉協議会(以下,地区社協)が福祉コミュニティに該当 すると指摘している(牧里

2012 : 123)。すなわち,牧里は,福祉コミュニティを「サ

ービス・施設の体系的整備」「公私協働」「ボランティア組織である地区社協」などのよ うに,生活要求の充足や同一性の感情に重点を置いて福祉コミュニティを捉えている。

一方,地域福祉の推進における中心的な組織である全国社会福祉協議会(以下,全社 協)では,1979年の『在宅福祉サービスの戦略』を通して,福祉コミュニティについ て触れている。在宅福祉サービスの掲げる目標は,サービスの整備充実だけでは達成で きず,地域住民によるサービスの支持や協力,参加する態勢づくりが不可欠なことを指 摘し,そうした条件を備えたものを福祉コミュニティと呼んでいる(稲葉

2003 : 139)。

また,瓦井(2006 : 38, 47)によれば,1980年の『在宅福祉サービス組織化の手引』

(全社協)に公表された地域福祉の内容は,福祉組織化を関連する社会資源の動員およ び開発を目標とする組織化のことであると指摘している。すなわち,全社協による福祉 コミュニティの概念は,抽象度が高い市町村社協の目標・理念として,住民参加による 在宅福祉サービスの充実という生活要求の充足の側面が強い。

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 112

(10)

3−3.福祉コミュニティ論の展開

岡村によって提示された福祉コミュニティという概念は,前述のように岡村の概念定 義に基盤を持ちつつ継承されたり,若干違ったかたちでも展開されている。まず,社会 学者である奥田道大(2003:ⅰ

, 3)は,福祉コミュニティの発想を欠くコミュニティ

は,コミュニティの内実に値しないことになると述べている。これは,コミュニティの 本質の中に福祉コミュニティ的な属性がすでに含まれていることを示している。奥田 は,福祉コミュニティの発想の前提には,①「ひと」と「ひと」とのより自覚的,人格 的な結びつき,②地域生活の新しい「質」の構築,再構築を含んでいると述べている。

福祉コミュニティがこれまでの地域生活,社会のあり方の根底にふれるという意味で は,一つの「思想」運動としての側面をもち,地域福祉文化の観点からしたら,福祉コ ミュニティは,一つの「文化変容」に他ならないと指摘している。

稲葉一洋(2003 : 144−145)が提示した福祉コミュニティは,「地域性」への配慮や 人々の「共同性」を強調している点に特徴がある。福祉コミュニティの必須条件とし て,①日々の住民相互の交流や助け合い,②人々の願いや思いを形にするための協働活 動,③政策決定への参画などの蓄積を挙げている。そして,平川毅彦(2004 : 42)は,

福祉コミュニティという下位集団を中心とした地域コミュニティ形成を「福祉のまちづ くり」と名づけ,地域コミュニティの形成における福祉コミュニティの重要性を指摘し ている。福祉コミュニティの機能については,直接利害関係のある福祉政策に「参加」

するにとどまらず,そうした「政策立案」とそのための「調査活動」を行い,また「対 外的な広報活動」を進め,最終的に福祉コミュニティが「社会福祉サービスの運営主 体」になることだと述べている(同:215)。

最近では,岡本栄一(2010 : 78)が「なぎさの福祉コミュニティ」という新しい福祉 コミュニティの学説を提示した。「なぎさの福祉コミュニティ」とは,入所型福祉施設 があたかも陸と海との境界に展開する「なぎさ」のように,福祉施設を拠点としつつ,

一つの単位として,施設と地域社会の間に展開されるゆるやかで暖かな媒体的・公共的 領域である。その動的空間をベースに,地域住民の参加を得て,支え合いや交流,自己 表現あるいは育ちあいの場をつくりあげ,ノーマルな対人的・共同的な地域社会関係の 創造を目指すことをいう。言い換えれば,なぎさの福祉コミュニティとは,施設利用者 を中心にすえながら,地域社会に開かれた媒体的空間において展開される人と人とのつ ながりや交流を重視する地域社会関係の総体である。

このように岡村の提示した「福祉コミュニティ」の概念は,多様なかたちで継承ない し展開されてきた。その中でも明確なことは,福祉コミュニティがノーマライゼーショ ン的思想に基づき,住民相互の協働で福祉問題を解決する際に欠かせない要素として,

よりよい地域福祉を作り上げるための必要条件となっているということである。

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 113

(11)

4.概念定義と調査方法

4−1.本研究における福祉コミュニティ意識

岡村(1974)による福祉コミュニティ論などの先行研究に基づき,本研究では「福祉 コミュニティ意識」を次のように定義する。福祉コミュニティ意識とは,福祉コミュニ ティを形成するため,住民がもつべき必須条件として福祉理念(ノーマライゼーショ ン,ソーシャルインクルージョン)を内在させたコミュニティ意識として,地域社会と いう生活の場において日常生活上の困難をもつ少数者への「関心」「同一性の感情」「生 活要求の充足に対する信念」について個人が主観的に評価するものである。

福祉コミュニティ意識の構成概念として,「少数者への関心」「同一性の感情」「生活 要求の充足に対する信念」の

3

つの概念を採用し,次のように概念定義を行った。ま ず,「少数者への関心」とは,少数者が排除されない多様な文化が共存する社会をつく るため,日常生活上の困難をもつ高齢者,児童,障害者,母子家庭,生活保護受給者

(低所得者),難病患者,外国人,保護観察中の個人などへ抱く関心のことである。次 に,「同一性の感情」とは,地域住民・当事者が共有する価値観や生活態度,同じ仲間 だという感情として「連帯的な意識」「ソーシャル・インクルージョン」につながるも のである。こうした同一性の感情は,ボランティア活動を通し,また地域における集 会,運動会,祭りなどのイベントへの参加・交流などによっても促進される(岡本

2010 : 85)。そして,「生活要求の充足に対する信念」とは,住民や行政,専門職などが

協働することによって,地域住民・当事者の真のニーズを明らかにし,そのニーズを全 体的・包括的に充足させようとする信念のことである。

4−2.質問項目の作成・修正

福祉コミュニティ意識の質問項目(観測変数)に対して,大学で地域福祉を専門とす る教授から質問項目の内容的妥当性を

2

回(2013年

7

23

日,8月

20

日)にわたって 確認を受け,ネガティブな項目や偏見が含まれた項目,複数の対象が含まれた項目など を修正・除外した。たとえば,「地域の中で弱者の立場にある人びとの考えや意見を聞 いてみたい」から「心身の不自由な人びとの考えや意見を聞いてみたい」に,「生活保 護受給者,保護観察中の個人などが抱えている生活上の問題についてもっと知りたい」

から「経済的貧困者(生活保護受給者など)が抱えている生活上の問題についてもっと 知りたい」と修正した。そして,生活要求の充足に対する信念の「この地域では,住民 の福祉ニーズや生活要求が充足されている」を除外した。

こうした福祉コミュニティ意識の質問項目を使って,2013年

8

月〜9月にかけて

A

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 114

(12)

地域の地域福祉計画策定委員会・作業部会のメンバーを対象に,福祉コミュニティ意識 の予備調査(47名)を実施した。その結果に基づき,2つの逆点数処理の質問項目や複 数の対象が含まれた項目,回りくどい表現がある項目,「完全に」「誰でも」のような断 定的な表現がある質問項目について第二次修正を行った。最終の福祉コミュニティ意識 の構成概念と質問項目は,〈表

3〉のように「少数者への関心」6

項目,「同一性の感情」

6

項目,「生活要求の充足に対する信念」6項目で,3つの構成概念・18質問項目を準備 した。

4−3.調査・分析方法

平成

22

年度厚生労働省により「地域福祉計画優良事例」として選定された京都府相 楽郡精華町(2)を研究フィールドとし,2013年

10

27

日から

11

17

日にかけて,第

2

次地域福祉計画の「地区別住民懇談会」(2回)の参加者や「せいか祭り」の参加者,

合計

289

名を対象に「福祉コミュニティ意識」に関する質問紙調査を実施した。内訳は 地区別住民懇談会では

73

名,せいか祭りでは

216

名である(3)。それぞれの質問項目に ついて,「ほとんどそう思わない(1点)」「あまりそう思わない(2点)」「どちらとも言 えない(3点)」「まあそう思う(4点)」「かなりそう思う(5点)」の

5

件法で回答を求

3 福祉コミュニティ意識を測定するための質問項目

構成概念 質問項目

少数者への関心

co 1 心身の不自由な人びとの考えや意見を聞いてみたい

co 2 地域の中に外国人が住むようになると,他国の文化や生活を知る機会も多く なるので好ましい

co 3 経済的貧困者(生活保護受給者など)が抱えている生活上の問題についても っと知りたい

co 4 身寄りのない人のためのボランティア活動に参加したい co 5 障害・認知症の理解や人権教育なども含めた福祉教育が必要だ co 6 困っている人や助け合いの方法についての情報提供が欲しい

同一性の感情

co 7 この地域の人たちはみんな仲間だという気がする

co 8 私は,この地域に住む人々と価値観を共有し,ともに生きるという思想をも っている

co 9 障害をもっていても人間の尊さに違いはない

co 10 保護観察中の人も地域社会の一員として受け入れられる

co 11 誰でも,事故や病気でいつ障害者になるかわからないのだがら,障害者問題

は自分たちの身近な問題だ

co 12 外国人も地域社会にとけ込むことができる

生活要求の充足 に対する信念

co 13 地域福祉活動への参加を求められたら,できるだけ協力する

co 14 困ったことがあれば助け合える程度のつきあいが必要だ

co 15 自治体は,限られた予算の中でも福祉施設・サービスの充実に重点を置くべ

きだ

co 16 地域に虐待,孤独死などが発生した場合,住民はその問題を一緒に解決する

べきだ

co 17 条例,施策・事業,計画づくりなどの過程に当事者・住民が参加できる機会

が保障されることは重要だ

co 18 少数者に対する偏見や差別をなくすのは,地域全体の責任だ

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 115

(13)

め,1〜5点を与えた。

289

部の中で,欠損値を有さない

272

部を分析の対象にした。尺度の構成概念妥当性 を確認するため,「少数者への関心」「同一性の感情」「生活要求に対する信念」を第一 次因子,「福祉コミュニティ意識」を第二次因子とする

3

因子二次因子モデルを構築し,

その因子モデルのデータへの適合度を「確認的因子分析」により検討した。因子モデル の 適 合 度 は,χ2(Chi-Square),GFI(Goodness of Fit Index),CFI(Comparative Fit

Index),RMSEA(Root Mean Squares Error of Approximation)に基づき判断した。そし

て,尺度の信頼性を確認するため,「クロンバックの

α

係数」を算出し検討した。以 上の分析には「IBM SPSS Amos 21」という統計ソフトを使用した。

4−4.倫理的配慮

本調査研究は,「日本地域福祉学会研究倫理規定」(2010)や[同志社大学「人を対象 とする研究」倫理基準]に則って行った。調査協力者に対して事前に研究の目的や手 順,研究成果の発表方法などを文書にて説明し,調査結果の公表について許可を得てい る。本研究では調査対象者の氏名など個人の情報を伏せることにしている。

5.結 果

5−1.回答者の属性

回 答 者

272

名 の 属 性 を〈表

4〉に 示 し た。男 性 が 109

名(40.1%),女 性 が

162

(59.6%)で,男女の比率は四対六程度であった。平均年齢は,54.62歳(SD=17.94)

であり,65歳以上が

105

名(38.6%)と調査対象者が高齢者に偏っていなかった。居住 地は,精華町が

191

名(70.2%)であり,その他 の 地 域 が

78

名(28.7%)で あ っ た。

平均の居住年数は,22.80年(SD=19.42)であり,範囲は

1

年から

80

年まで多様であ っ た。10年 以 上

20

年 未 満 が 最 も 多 く

87

名(32.0%),1年 以 上

10

年 未 満 が

68

(25.0%),20年以上

30

年未満が

30

名(11.0%),そして,30年以上も

81

名(29.8%)

と対象者の

3

分の

1

を占めていた。こうした居住年数の差は,旧村地域と新興住宅地が 混在している地域であるためだと考えられる。

5−2.構成概念妥当性の検討

「少数者への関心」「同一性の感情」「生活要求の充足」の

3

つの構成概念を一次因子,

「福祉コミュニティ意識」を二次因子とする

3

因子二次因子モデルを構築し,確認的因 子分析を通して初期の因子モデルの適合度を検討した。その結果,χ(df)=518.4122

(132)GFI=.814, CFI=.870, RMSEA=.104といずれも統計学的に許容できる水準に達

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 116

(14)

していなかった。

そこで,因子モデルの検証に有効ではない質問項目(観測変数)を除外しながら,3 因子二次因子モデルの適合度を検討し,適合度が最大限のものとなるよう工夫した。観 測変数の削除は,次の基準で行った。標準化係数(因子負荷量)が「.5」以下の質問項 目,SMC(Squared Multiple Correlations)が「.4」以下の質問項目,質問項目間の相関 関係が高い項目,回答に著しい偏りがあって正規性を持たない質問項目である。不適切 と判断された質問項目は,「少数者への関心」の因子では,「co 2地域の中に外国人が住 むようになると,他国の文化や生活を知る機会も多くなるので好ましい」の

1

項目,

「同一性の感情」の因子では,「co 7この地域の人たちはみんな仲間だという気がする」

「co 11誰でも,事故や病気でいつ障害者になるかわからないのだがら,障害者問題は自 分たちの身近な問題だ」「co 12外国人も地域社会にとけ込むことができる」の

3

項目,

「生活要求の充足に対する信念」では,「co 13地域福祉活動への参加を求められたら,

できるだけ協力する」「co 14困ったことがあれば助け合える程度のつきあいが必要だ」

2

項目,合計

6

項目であった。

4 回答者の属性 (n=272)

カテゴリー 人数

性別 男性 109 40.1

女性 162 59.6

不明 1 0.4

年齢 〜10 19 7.0

20代〜30 37 13.6

40代〜50 65 23.9

60代〜70 140 51.5

80代以上 7 2.6

不明 4 1.5

平均値:54.62歳(標準偏差17.94),中央値:62

居住地 精華町(A中学校区) 84 30.9

精華町(B中学校区) 18 6.6

精華町(C中学校区) 89 32.7

その他 78 28.7

不明 3 1.1

居住年数 1年以上〜10年未満 68 25.0 10年以上〜20年未満 87 32.0 20年以上〜30年未満 30 11.0 30年以上〜40年未満 25 9.2 40年以上〜50年未満 21 7.7

50年以上 35 12.9

不明 6 2.2

平均値:22.80年(標準偏差19.42),範囲:1〜80年,中央値:15

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 117

(15)

6

項目を除きながら,再度分析を行った結果を〈表

5〉に示した。最終のモデルの適

合度は,χ(df)=131.216(51),GFI=.924, CFI=.953, RMSEA=.0762 と統計学的に許容 できる水準に達していた。最近の研究では,因子モデルの適合度の判断は,標本数に影 響 を 受 け に く い

CFI

RMSEA

を 基 準 に し て お り,CFIは「.9」以 上,RMSEAは

「.08」以下であれば,その因子モデルがデータをよく説明していると判断される(ソン ジジュン

2013 : 324−326)。本研究でもそれに基づいて 適 合 度 を 判 断 し た 結 果,CFI

=.953, RMSEA=.076と統計学的に有意であった。

最終の

3

因子二次モデルを次の〈図

1〉に示した。「少数者への関心」の因子から 5

つの観測変数へ引かれた標準化係数(因子負荷量)の範囲は,「.65」〜「.81」,また「同 一性の感情」の

3

つの標準化係数は,「.64」〜「.76」の範囲にあった。そして,「生活要 求の充足に対する信念」の因子から

4

つの観測変数へ引かれた標準化係数の範囲は,

「.79」〜「.80」に分布していた。福祉コミュニティ意識尺度における標準 化 係 数 は,

「.64」〜「.81」の範囲であり,統計学的に許容範囲にあることが明らかにされた。また,

すべての観測変数において

C. R.

1.965

以上,SMCは「.4」以上と適切な水準であっ た。

5−3.信頼性の検討

3

つの構成概念を福祉コミュニティ意識尺度の因子とみなした時の信頼性を検討する ため,クロンバックの

α

係数を算出し検討した結果を次の〈表

6〉に示した。「少数者

5 確認的因子分析の結果 (n=272)

モデル 項目 χ2 p CMIM/DF GFI CFI RMSEA 備考

初期の

モデル 18 518.412 .000 3.927 .814 .870 .104

1次修正

モデル 17 434.384 .000 3.745 .832 .879 .101 co 11

除外

2次修正

モデル 16 339.073 .000 3.357 .853 .902 .093 co 7

除外

3次修正

モデル 15 248.842 .000 2.860 .885 .929 .083 co 2

除外

4次修正

モデル 14 208.538 .000 2.818 .896 .937 .082 co 12

除外

5次修正

モデル 13 175.482 .000 2.830 .907 .939 .082 co 14

除外 最終

モデル 12 131.216 .000 2.573 .924 .953 .076 co 13

除外

判断基準 P>.05 2以下 .9以上

〜1

.9以上

〜1 .08以下 地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 118

(16)

への関心」のクロンバックの

α

係数は,「.850」,「同一性の感情」は,「.735」,「生活 要求の充足に対する信念」は,「.872」,12質問項目全体では「.917」と高い数値を示し た。つまり,福祉コミュニティ意識尺度の信頼性が統計学的に満たされていた。

5−4.福祉コミュニティ意識尺度

妥当性と信頼性が確認された福祉コミュニティ意識尺度は次の〈表

7〉である。「少

数者への関心」が

5

項目,「同一性の感情」が

3

項目,「生活要求の充足に対する信念」

4

項目となり,3つの構成概念・12項目の尺度である。それぞれの質問項目について

5

件法もしくは

4

件法で回答を求め,得点が高いほど福祉コミュニティ意識が高いと解 釈される。

1 福祉コミュニティ意識尺度の確認的因子分析の結果

6 最終の因子モデルの評価 (n=272)

構成概念 観測変数 信頼性(.7以上)

少数者への関心(5項目) co 1, co 3, co 4, co 5, co 6 α=.850 同一性の感情(3項目) co 8, co 9, co 10 α=.735 生活要求の充足に対する信念(4項目) co 15, co 16, co 17, co 18 α=.872 福祉コミュニティ意識(12項目) α=.917

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 119

(17)

6.おわりに

そもそも目標が明確でなければ,評価も明確にならない。評価における重要な作業 は,「目標−評価基準−評価指標・尺度」を論理的に立てることである。現在,地域福 祉計画の目標は,各自治体の地域状況によって異なる。問題となるのは,多くの自治体 における地域福祉計画の目標設定が,理念的な性格が強く質的な目標にとどまってお り,評価基準や評価指標・尺度も不明確となっていることである。さらに行政・専門家 中心の評価であり,計画書に盛り込まれた事業の達成度とか住民参加のプロセスを強調 した評価になっている。

地域福祉計画の評価における山積みの課題を解決するためには,まず目標設定の明確 化・数量化を図ることが求められる。そして,その目標に沿った評価基準や指標・尺度 を開発することが次の作業となる。その際,住民をエンパワメントする視点,いわば福 祉理念を内在させた住民意識の変化に焦点をあてて地域福祉計画の効果を提示していく ことが重要である。しかし,その視点や手法が地域福祉計画の評価にあたっては欠いて いると判断し,福祉コミュニティ意識という新しい尺度の開発を試みた。アウトカム評 価に焦点をあてて,岡村の福祉コミュニティ論から構成概念を設定し質問項目を作成 し,専門家による内容的妥当性の検討や予備調査を行った。そして,272名より回答を 得,3因子二次因子モデルの適合度を確認的因子分析より検討し,クロンバックの

α

係数を算出して信頼性を検討した。その結果,3因子・12項目の福祉コミュニティ意識 尺度の構成概念妥当性と信頼性が統計学的に有意であることが明らかになった。

7 福祉コミュニティ意識尺度

構成概念 質問項目

少数者への関心

1 心身の不自由な人びとの考えや意見を聞いてみたい。

2 経済的貧困者(生活保護受給者など)が抱えている生活上の問題についてもっ と知りたい。

3 身寄りのない人のためのボランティア活動に参加したい。

4 障害・認知症の理解や人権教育なども含めた福祉教育が必要だ。

5 困っている人や助け合いの方法についての情報提供が欲しい。

同一性の感情

6 私は,この地域に住む人々と価値観を共有し,ともに生きるという思想をもっ ている。

7 障害をもっていても人間の尊さに違いはない。

8 保護観察中の人も地域社会の一員として受け入れられる。

生活要求の充足 に対する信念

9 自治体は,限られた予算の中でも福祉施設・サービスの充実に重点を置くべき だ。

10 地域に虐待,孤独死などが発生した場合,住民はその問題を一緒に解決するべ きだ。

11 条例,施策・事業,計画づくりなどの過程に当事者・住民が参加できる機会が 保障されることは重要だ。

12 少数者に対する偏見や差別をなくすのは,地域全体の責任だ。

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 120

(18)

こうした本研究には,4つの研究意義がある。第一に,抽象度が高い「福祉コミュニ ティ論」を具体化したことである。40年前に岡村が提示した福祉コミュニティ論にお ける重要な概念である「少数者への関心」「同一性の感情」「生活要求の充足」が現在も 有効であり,福祉コミュニティ意識の構成概念として成り立つことが明らかになった。

第二に,福祉コミュニティ意識尺度は,地域福祉計画に住民が参加するによって,住民 意識がどのように変化したかを実証的に測定する一つの尺度として活用できることであ る。地域福祉計画の効果を実証的に提示することは,地域福祉実践の有効性を裏付ける ことであり,エビデンスに基づく地域福祉実践への貢献につながる。第三に,基礎自治 体が住民意識の変化という地域福祉計画の有効性を認識することができ,今後地域福祉 計画に積極的・戦略的に取り組むきっかけとなる。もちろん,地域福祉計画未策定の理 由として挙げられている「人材・人員不足」「財源不足」などの問題への解決策も必要 である。第四に,福祉コミュニティ意識尺度が,地域福祉計画の評価に限らず,汎用性 を持った地域福祉実践の評価ツールとして活用の可能性を持っていることである。実際 に,福祉コミュニティ意識尺度は,地域福祉実践に適用できる内容となっており,それ は尺度開発の始めから意図されたことである。

次に本研究の限界と今後の課題について述べる。第一に,福祉コミュニティ意識の変 化ということは,地域福祉計画による様々な効果の中でごく一部にすぎない。地域福祉 計画の多角的・包括的な評価のためには,多様な評価視点や手法,指標・尺度の開発が 求められる。第二に,本研究で行った「福祉コミュニティ意識」概念に関する理論的な 整理や測定尺度の因子モデルの更なる検討が必要である。特に,尺度の妥当性の問題 は,内容的妥当性と因子モデルの適合度の検討のみで,すべてが解決されるわけではな い。今後,基準関連妥当性などについても検討する必要があると思われる。第三に,本 研究では,ロッシら(2004)のプログラム評価の中,アウトカム評価に焦点をあてた。

それ以外にも,ニーズ評価やプログラム理論評価,プロセス評価,効率評価(大島

2007)に関する包括的な評価研究が求められる。

地域福祉計画は,少数者がもっているニーズに気づき,コミュニティの一員として同 一性の感情を持ち,地域の福祉問題を共に解決して行こうとする効果が含まれている住 民のエンパワメントそのものである。住民参加による地域福祉計画の策定・実施・進行 管理は,地域住民の福祉コミュニティ意識を向上させ,住民が地域福祉計画策定の主 体,地域福祉実践の担い手,福祉サービスの利用者・供給者となり,その結果,福祉コ ミュニティ形成が実現される。このような地域福祉計画の効果のプロセスを明らかにす るための基礎研究として,本研究は地域福祉実践の科学化に大きな示唆を与えるもので あると考える。

地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 121

(19)

⑴ 平 成24331日 の 時 点 で,市 町 村 地 域 福 祉 計 画 の 策 定 済 み:市 区79.0%(640),町 村41.4%

(386),計58.9%(1026),都道府県地域福祉支援計画の策定済み:85.1%(40)(厚生労働省「平成24 331日現在地域福祉計画策定状況等について」http : //www.mhlw.go.jp)

⑵ 精華町は,京都府11町村のうち,最初に地域福祉計画を策定した町である。20084月から2009 3月にかけて策定された第一次地域福祉計画には,策定委員会(20人),作業部会(35人),地区別住 民懇談会(3回,151人,610地域課題),フォーラム(2回),調査など,多様な住民参加の場が設け られていた。そして,地域福祉計画の進行管理を行う「地域福祉推進ネットワーク会議」もつくられ ている。現在,第2次地域福祉計画の策定中であり,筆者は,策定委員会をはじめ,地区別住民懇談 会,住民意識調査などに参加している。これは,「実践→研究→実践」という好循環を創っていくアク ション・リサーチだといえよう。

⑶ 本調査の場である「地区別住民懇談会」と「せいか祭り」は,中学校区ごとに組織されている「せい か地域福祉ドットコム」の主導で行われた。これは,福祉コミュニティの構成員自らの視点で,調査 活動や広報活動,計画策定が実施されたから,外部から調査するのではなく,「福祉コミュニティ調 査」(平川2004 : 218−219)として収集されたといえる。

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地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 123

(21)

This study is to develop a scale of sense of welfare community, focusing on outcome assessment of community planning for welfare. Search scale is for measuring participants’

change in awareness. Based on Okamura Shigeo’s community welfare theory, I created questions about sense of welfare community, assessed their content validity and made a preliminary examination. 272 answers taken through questionnaire survey went under 2 sets of investigation ; one is upon construct validity of 3 factor and a second-order factor model by Confirmatory Factor Analysis, and the other is upon scale’s reliability by calculating Cronbach’s Coefficient Alpha of it. This scale consists of 12 items of three constructs ; 5 items in [Concern for minority], 3 items in [Identity sentiment], 4 items in [Faith for satisfaction of living demands].

This study shows a scale measuring change in awareness by participating in community planning for welfare.

Key words: Community planning for welfare, Evaluation, Sense of welfare community, Development of scale

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地域福祉計画評価のための福祉コミュニティ意識尺度の開発 124

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