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橋本 健夫*・楠本 正信* *・林 朋美* * *

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くらしにお け る先端科学 の役割 につ いての理解 を 促進 す るための実践 的研 究

橋本 健夫*・楠本 正信* *・林 朋美* * *

(平成16年10月31日受理)

A practicalStudyontheClearUnderstandingofRolesoftheFrontierScience inour‑SDailyLife

TateoHASHIMOTO

*

・MasanobuKUSUMOTO

H

・TomomiHAYASH

I …

(ReceivedOctober31,2004)

Summary

Thehigh technologleSOfthefrontiersciencebroughtaboutgreatchangeinourlife.The progressofsciencemadeourlifemorecomfortable,butitbrouhttg heseriousproblems tous.ThissituationrequlreStheunderstandingsofhightechnologleS丘'om childrenwho aregoingtOliveinthefuture.

Therefore,theclassforunderstandingsofclonewasorganizedandpracticedinelementary schoolandhighschool.And,theclasswereevaluatedbythesepupils.

Thisattemptresultedinsuccess,becausethepupilshadgoodtimesintheclassaccording totheevaluation.Andtheevaluationoftheclassbymycolleaguebroughtseveraltasks brimprovement.

は じめに

自然科学が生み出 した先端技術 は,人 々の暮 らしを大 きく変えよ うと している その結 莱,従来の生活では見聞 き しなか った様 々な言葉が人 々の身近 なところで飛 び交 うよ うに な った。特 に生物分野 に関 して は,分子生物学や遺伝子工学 の発達 によ り生命 の誕生の仕 組みが解明 され る段階 にきてお り, その成果 を利用 した技術 は, 自然界の仕組みを越えた 新 しい生命を世 に送 るよ うにな った。 このよ うな状況 は,子 どもたちの世界を も巻 き込み, 彼 らの生活 に大 きな影響 を与 え始 めている

一方,子 どもたちの生活を支え る学校教育 は,社会の変化や進展 に即 した形で展開 され て きた。 それ は,社会が要求す る人 々を作 り上 げなければな らないとい う責務 を負 ってい るか らである このために 日本 に於 いては,中央教育審議会 などを中心 と して時代 を先取 りした形 で定期的 に学校教育 の内容が見直 しが検討 され,分か りやすい文言 を付 して答 申

*長崎大学教育学部 日 長崎大学教育学部附属小学校 ***長崎大学教育学部

(2)

44 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.44(2005年)

が出 され る仕組 み にな っている

1 0

年毎 に行 われ る学習指導要領 の改訂 は, その答 申を 具体的 に示す結果 とな っている。

しか し, 自然科学 の発達 は社会 の予想 を遥か に超 えた もの とな っている。 また, その成 果が,人 々の生活 に素早 く還元 され るとい う図式 も定着 し始 めて いる。従 って,時代 を先 取 り しているはずの学校教育 の内容 が,人 々の暮 らしの後か らつ いてい くとい う状況が生 まれ初 めて いる 特 に,食品 と して提供 され るものが,遺伝子工学 の産物 であることも少 な くない状況 にな っているが, それ らに関す る知識 を学校教育 で習得す ることは現在 の段 階で は難 しい。 さ らに, ゲ ノム分析 を利用 しての医療活動 も始 ま っているが, これ らの内 容 が学校教育 に組 み入 れ られ る可能性 は低 い。 それ は,現在 の学校教育 の中で理科等 に配 当 されている時間数 は徐 々に少 な くな ってお り, 内容 も大 き く削減 しなければな らない状 況 にな っているか らであ る

そ こで,暮 らしに合 った理科教育 のあ り方 を探 る意図で,現在 の小学校 の理科 には含 ま れない内容 を取 り上 げ,実践す る中でその組 み込みの是非 につ いて検討 したい と考 えた。

具体的 には,遺伝子工学 を取 り上 げ, ゲ ノム時代 といわれ る将来 の社会 を生 きる児童 の学 習 に適切 か ど うかを調べ ることに した。

社会や 自然科学の発展 と理科学習

近代科学 の誕生後 の社会 に大 きな影響 を与 えた産業革命 は,科学 と技術 の結 びつ きの大 切 さを人 々に実感 させ ることに成功 した。 その結果,人 々は科学技術 を身 に付 け社会 に大 き く羽 ばた こうと近代科学 の発展 を後押 しす る結果 とな った。 この時代 は,封建社会か ら 市民社会への転換期 で もあ り,社会 の発展 には自然科学が な くて ほな らない とい う認識が 定着す る始 ま りで もあ った。

近代科学 の誕生 や市民国家 の誕生 は,教育 とい う面 で も大 きな変革 を もた らした。市民 の子弟 を‑ カ所 に集 め,優秀 な教員 の もとで教育す るとい う学校教育 の考 え方 が急速 に広 ま ってい ったのであ る さ らに,初等段階での教育 の重要性 が認識 され,18世紀 の フラン スやイギ リスの初等教育法 の制定 に至 った。加 えて,初等教育 の内容が生活基盤 を作 ると い う考 え方か ら読 み書 きを中心 とす る内容 にな りが ちであ ったが,産業 の発達 とともに自 然科学 的な内容が付加 され るよ うにな った。 つ ま り,社会 の変化 とともに学校 の教育が変 わ ることが必要 であ るとの認識 もで きて い ったのであ る

日本 の学校 は, ヨー ロ ッパで作 られ た学校制度 を移入す ることか ら始 ま っ た。 自然科学 の教育 に関 して もその内 容 は ヨー ロ ッパで使 われて いる ものを 翻訳 して 女タ‑ トした。 そ して,明治

19年 に理科 とい う教科 を創設す ること によ って,徐 々に 日本的 な自然科学教 育 を展開 させて きた。 その一方 で, 自 然科学教育が国の礎 となるとい う考 え 方が生 まれて きた。 それ は,産業 を急

速 に発展 させなければな らない とい う 1 自然科学の発展 と理科学習及び市民生活

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命題 とも結 びっ いて発展 した。明治以降の歴史 は,科学 の発達が市民生活 を豊 か に, さ ら には多様 に して きた ことを示 して いる 特 に,第二次世界大戦 の敗戦 とい う心身共 に疲弊

した 日本社会 の蘇生 を下支 え して きた もの は, 自然科学 の発達 で生 み出された数 々の技術 であ る また, この中で見落 と して はな らない ことは, 自然科学 や技術 をスムーズに受 け 入 れ, よ り応用性 のあ る技術 に進化 させて きた市民一人一人 の教養 の高 さと活動力 に富ん だ精神 であ る つ ま り,新 しい自然科学 の成果 を十二分 に理解 して受 け入れ, それ らの危 険性 を も承知 した上 で, どのよ うに活用 して い くか とい う確固 たる信念 の共有 が不可欠 な のである。特 に,新 しい技術 の誕生 が,個人 の豊 か さに結 びつ く現代 において はなお さ ら であ る

振 り返 って,学校教育 に焦点 を当て ると, それ は社会 の変化 に即応す ることを苦手 と し て いる。 これ は,学習 の必要性 や着実性 の検討 に十分 な時間 をか けるシステムにな って い るか らで ある。社会 の変化が緩 やかであ るときは, この方式 も多 くの人 々か ら支持 され る と考 え られ る しか し,急速 な社会変化が もた らされ る時代 にあ って は,新 しい学習内容 に果敢 にチ ャレンジす る必要 もあ ると考 えて いる そ して, その結果 を分析 し,新 しい内 容 を組 み込 む工夫 を常 に怠 らないよ うにすべ きであ る

戦後, それぞれの時代 の教育 は,学習指導要領 の改訂 とい う作業 を通 して決 め られ,行 われて きた。 自然科学 の発展が緩 やかであ った時代 は, その作業 も円滑であ った。 しか し, 自然科学 の量 が多 くな り,発達 の速度 が加速 された場合 には, 自然科学 の成果 を学習 に取 り込 む ことは非常 に難 しくな った。 それ は, 自然科学 の基礎的 な ものを学習す るだ けで学 校 での時間が一杯 にな ったか らで あ る その結果 と して,図1に示す よ うに,市民生活 で の 自然科学 の成果 の利用 と学校教育 の内容 との不離 が進 む ことにな ったのである。

小学校理科 と先端科学 と しての遺伝子工学

遺伝子工学 の発達 は,従来 の医療技術で は手 の施 しよ うがなか った難病 や遺伝子疾患 に 対 して治癒 の朗報 を もた らす可能性 を生 み出 している その一方 で, それ は人間 に対 して 従来の 自然界では遭遇 しなか った危険を もた らす可能性 も生 じさせている 加えて, クロー ン技術 などを例 に挙 げ るまで もな く,従来 の道徳観 や倫理観 を揺 るがす事態 も見 られ るよ うにな った。

ただ,現在 の学習 内容決定 の システムか らは, この内容 をただ ちに小学校 の理科 の内容 と して取 り上 げる可能性 は少 ない。 それ は,生物学 とい う基礎がで きて いない子 ど もたち に先端 の生物学が学習 で きるはずがな

いとの考 え方 であ る その考 え方 は正 しい一面 を持 って いる しか し常 にそ のよ うに考 えていると,生活 の中に入 り込 んでい る先端科学 の成果 を何 の疑 問 も持 たず に利用す る市民 を育成す る 恐 れが生 じて くることにな る それで は,学校教育 の 目的が達成 され た とい うわ けにはいかない。時代が変われば,

その社会が求 め る人物像 も変化す る 2 小学校理科への先端科学の取り込み

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46 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.44.(2005年)

それに的確 に対応す る教育早急 に確立 されていかなければな らないはずである

情報化が進む社会 にあ って, よ り身近 にな って行 くであろう遺伝子工学への関心 をどの よ うに育て るべ きなのであろ うか。一つの答えは, よ り幼 い時代か らの学習内容 として組 み込 む ことである 遺伝子工学 に関す る簡単 な知識 は,現在 の ところ高等学校 の学習内容 として用意 されているが,将来的には中学校或 いは小学校 の学習内容 とな ってい くべ きも のである それを見据えて小学校での遺伝子工学 に関す る学習を試み ることに した。

小学校 における生物領域の先端科学の内容を学ぶ小単元の編成

まず,子 どもたちの生活 に入 り込んだ先端科学への関心 を芽生 えさせ,関心 を高め る学 習 をどのよ うに構成すべ きかについて検討 を加えた。 その結果,人の体 について学習 を済 ませた小学校6年生 を対象 に行 うことが妥当であろ うとい う結論 に達 した。 それは,5年 生で人や動物の誕生 について学んでいること, そ してそれまでに,運動 と体温,脈拍 など 体が様 々な環境 に適応 して どのよ うに反応す るかについて学 び,人の体 の不思議 さや素晴 らしさに関心が向いているであろうとい うこと, さ らには,少年期か ら青年期への自己の 体の変化 を感 じ始 め るころであることか ら学習への動機付 けの環境が整 っていると判断 し たか らである

加えて,学習 の導入 と しては子 どもたちが 日頃意識 しない もの,具体的 には 「生 きてい ること」 には欠かせない事象を取 り上 げ,彼 らの 目や思考 を引 きつ けたいと考えた。つま り

,

「生 きている

とはどのよ うな ことなのか

,

「生 き物」 とはどのよ うな特徴 を持 ってい るのかを導入部 に用 い, その後の展開の円滑化 を図 った。小単元 の時間数 としては,小学 校 の各教科等への配 当時間が厳格 に決 め られていることも考慮 して2時間 と した。2時間 の学習 の展開 は図3のよ うにな っている。

一万,本授業の目的を達す るためには子 どもたちが細胞や核 についての理解 を持っ必要 がある しか し, これ らはいずれ も中学校や高等学校での理科 の内容 とな っている そ こ で, それ らを家庭学習での課題 とし,

保護者 を巻 き込んでの学習 に した。 そ うす ることによって,本授業の目標 と す ることが家庭での話題 とな り,家族 の問題 と して先端科学‑の関心が高 ま ると考 えたか らである 授業後 の調査 によれば, この もくろみ はある程度成 功 したと考えることがで きる 従 って, 一般 の学校教育の展開にあた って も, 家庭学習の効果的な組み合わせを検討 すべ きとも考 えている

1時間 目 2時間 日

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I.7..{TpJ舟.rlJT.:

生き物の分類

細胞の観察

"

筆写 E.

3 小単元の学習展開の概要 小単元の学習展開にあた っての工夫

小学校 の子 ど もたちの特性 の一つ は,「これ はお もしろそ うだ」 と感 じた瞬間 にそれに 没頭す ることである その状態 を引 き起 こす もの としては様 々な ものが考 え られ る あえ て代表的な ものを挙 げるとすれば,教員の言葉であ り,提示 された事象であ り,用 い られ

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た ワーク シー トなどである そ こで, ワークシー トや授業 に用 いる図が彼 らの関心 を引 く よ うに工夫 を行 った。 い くつかを例示 したい。

○ ワークシー ト

子 どもたちの 目を引 きつ けるために教科書等 で試み られているキ ャラクターを登場 させ, 吹 き出 しをつ けて問 か けを した。 これ は, こど もたちに好評 で,授業 中に 「かわいい」

などの声が聞 こえて きた。 ただ,選択肢 を使 っての回答がな じまない と考 えたために,記 述が多 くな り6年生 といえ ど も負担 をか けたので はないか と考 えている 図4と図5は実践 に用 いた ワーク シー トである

4 ワークシー ト1 5 ワークシー ト2

○教材 と しての図

授業 の内容 が既習事項 で は理解 しに くい場合 には,仕組 みを説明す る図 を提示 して は理 解 を求 めた。 それ らを,図6‑ 9と して掲 げて いるが,難易度 は高 か もしれない。分か りやす いよ うに工夫 は したっ もりであ るが, それ に も限界があ る この点が今後 の課題 と して残 って いる ただ,子 どもたちに自分 に身近 な もの と して考 えて もらうために,学級 担任 の名前 を付 けた図 とな って いる。 これ は,担任が子 ど もたちとの会話 の中で家族 の こ

とをよ く紹介 して いるとい うことであ ったので, それを活用 したのであ る

○ ク ロー ン社会 を実感 させ るために用 いたお面

本単元 の終末部 に クロー ン社会 を実感 し, クロー ンに対 しての 自分 な りの考 え方 を持っ とい う時間を設 けた。 これ は,本学習 の 目的 を達成す るために不可欠 な時間であ る この

(6)

6 生き物 と遺伝子の説明に使用 した図

7 ヒ トの遺伝子の役割の説明に使用 した図

8 ヒ トの誕生の説明に使用 した図

図 9 クロー ンの誕生の説明に使用 した図

48簿No.44(2005)

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時間の効果的な持 ち方 について検討 を重 ねた。 その結果,子 どもたち全員が同 じ顔 になる ことによ って, クロー ン社会 を実感で き, その状況 に対す る彼 らの鋭 い感性 を引 き出せ る ので はないか と考 えた。次 に,誰 の顔 にす るか とい うことであ

るが,子 ど もたちに最 も身近 で親 しみを抱 いて い る学級担任 が 適切 であ るとの結論 に達 した。 そ こで,学級担任 の写真 をデ ジ カメで撮 り, それを実物大 にプ リン トし, 図10のよ うに ゴムひ もをつ けることによ って担任 のお面 を作 った。

このお面 は,学習終末部 に子 どもたちに目をっぶ って もらい, 彼 ら一人一人 に教員 の方 で装着 した。 彼 らが 目をあけた時,笑

い声が起 こるとともに, 「イヤ ダー

「気持 ち悪 い‑」 とい う声 も大 き く起 こった。

10 クローン社会を実感するためのお面 子 どもたちの学習への取 り組み

授業の最初 こそ緊張 した面持 ちであ ったが,次第 に慣れ活発 な意見 の発表がみ られ るよ うにな った。 また,大学 の教員が教壇 に立 ったためか,学習への意欲 は最後 まで途切れ る ことはなか った。 さ らに,家庭学習 に も積極的に取 り組み, イ ンターネ ッ トでの調査結果 も見 られた。 ワークシー トの記述 も予想以上 であ り,難 しくて投 げ出すので はないか との 授業前 の懸念 はその時点で消えた。 さ らに, にわか教員の問いか けに全員が積極的に答え よ うと して くれた ことは非常 に心強か った。

また,2時間 とい う短期決戦であるに も関わ らず,教材が幅広 くな りその理解 にとまど うので はないか とい う心配 も,授業進行中は感 じなか った。 これ らの ことは,授業の導入 部で 「生 きている」 ことを考 えさせた ことが有効 に働 いていたのか も知れない。

子 どもたちが最 も活発 にな ったのは,担任教員の顔のお面 を全員がつけた場面であった。

ここは,前 に も述べたよ うに, クロー ン人間が出現 した らとい う仮想世界を具体化 した一 場面 であ り, クロー ン技術 について考え るきっか けを作 ることを意図 した ものであ った。

彼 らは自分の周 りの顔が全て担任 の顔 になることによ って, クロー ン社会 の怖 さを実感 し たよ うである これによ って,授業 の 目標の達成への光が見えたと考えている

小学生の授業 に対する反応

小単元 の授業の構成や工夫点 については前述 した通 りであるが,子 どもたちはどのよ う に学習 に取 り組み どのよ うな変容 を したのであろうか。 ワ‑クシ‑ 卜の記述や授業後 のア

ンケー ト調査 などを もとに述べてみたい。

「生 き物」について,子 どもたちが本授業 の前か ら知 っていた ことと して挙 げているこ と, また,授業で知 った ことを挙 げて もらった結果が,図11である。 このよ うに,彼 らは

「生 き物」 を大 き くは 「呼吸す るもの」或 いは 「動 くもの」 と して捉 えている 授業後 に は, それが 「細胞があるもの」 や 「核 あるもの」 に変わ る。 これ は,本授業が細胞 レベル での実践であ った ことを考えれば至極当然 の結果である ここで問題 なのは,小学校低学 年 の頃か ら動物 の飼育や植物 の栽培 などを通 して動物や植物が次世代 を作 ることを学んで いるに も関わ らず,「生 き物」 と同時 にそれ らが浮かんで こない ことであ る 生物 にとっ て子孫 を残す ことは最重要課題であ り, そのための仕組 みや活動があること, またそれが

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50 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.44(2005年)

生物界 の多様性 を支 えていることの認識が必要 であ ると して,理科 の学習 内容 に繰 り返 し 取 り上 げ られて きた。 この意図が殆 ど理解 されないままにな っている現実が浮か び上 が っ た。 この状況 は,大学生 に も見 られ るのであ るが,小学生 の段階 も同 じであ ることは驚 き であ った。 「誕生」 の不思議 さ こそが,生物への理解 につ なが ると考 えて い るのは著者 だ けで はない と思 う また,本授業 で中心的 に取 り上 げた核 の役割 につ いて は,図

1 2

に示す よ うに生 き物 を作 り出すのに欠 かす ことがで きない ものであるとの認識 は持 たす ことがで きたので はないか と考 えて いる

そ して, クロー ン社会 を どのよ うに認識 したか につ いての問 い, 「クロー ン人 間を作 っ た方が良 い と思 いますか」 に対 して,97%の子 ど もたちは 「作 って はいけない」と答 えて いる 彼 らが何故 そのよ うに答 えたか につ いて は,図13に示す通 りである 多 くの子 ど も たちは 「個人 の良 さが失 われ る」, 「気持 ち悪 い」, さ らに 「同 じはいや」 とい うことを理 由に して い る

「こわ い」 とい うことを挙 げた子 ど ももい る このよ うに見てみ ると,差 が あることの大切 さを直感的 に学 んだ と考 え ることがで きる。生物 を理解す るにあた って は,多様であ ることの楽 しさの理解 も重要 であ る この一歩 が本授業 において認識 させ る ことがで きたので はなか ろ うか。

授業前か ら知 っていた こと〕

授業 で知 った こと〕

11 子どもたちが理解 している生き物の特徴

人数(名) 割合(鶴 ) 顔や鼻をつ くる (遺伝情報) 19 50

子孫をつ くる 4

遺伝子がある 4

指令を出す 4 ll

細胞に必ずある 3 8

̲̲̲ ̲̲圏山 風 ̲̲̲ ̲

クローンがつく れる

細胞に必ずある

退

()

12 生き物における核の役割

13 クローンをつくってはいけないと考えた理由

(9)

大学教員の授業への子 どもた ちの評価

本実践 は,大学 の教員が科学 の進歩 が急速 に進 む中で理科教育 をどのよ うに改善すべ き か につ いて試 みた ものであ る 従 って, いずれ この実践 を小学校 の教員 によ ってなされ る ことを想定 してい る。 そ こで,大学 の教員 の授業 を どのよ うに受 け止 めたか につ いて調査 す ることは将来 の理科教育 を考 え る際 に役立 具体 的 には図14に示す よ うに7種類 の評 価項 目を作 り,子 ど もたちに答 えて もらった。 ここに示 されているよ うに,各評価項 目と もに概 ね彼 らは好意的 に評価 を していた。1回限 りの評価 であ るため,十分 な ことは言 え ないが,小学生 に とって大学 の教員 の授業 は非常 に興味深 い ものであ るよ うである そ し て,普段以上 に意欲的 に学習 に取 り組 んだよ うであ る

小学生 が先端科学 の学習 をす ることは,教員 による事前 の準備 や教材及 び学習展開の工 夫 を必要 とす るものの,彼 らには効果的であ るとの感触 を得 た。 もちろん,一般 的 に言 わ れているよ うに既習事項 の積 み重 ねが な くて は学習 目標 の達成が難 しい ことも否定す るつ もりはな しか し,かれ らの生活 の中に入 り込んでいる事柄 につ いて,教科学習 の枠 と は離 れて教員 も子 ど もたち も楽 しむ形 で展開す ることがで きれば予想以上 の成果 を得 るこ とも可能 であ ると考 えて いる

核などについての授業は 楽しかった

授業の内容はよく理解できた

先生の説明は聞きやすかった 宿題をするのに困った

授業のことを友達や家で

舌した 団 非常にそう思 う 国 そう思 う

[

コ あま りそう思わな い 因 そ う思わない

14 子どもたちの本授業に対する評価

授業中の図やTJ像 は よく理解できた

大学の先生の授業をもっと 受けたい

(10)

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また,完 全 な理解 に結 びつ けな くと も関心、を高 め る とい うこ とに重点 を置 いた学 習 が展 開 されて も良 いので はなか ろ うか。 さ らに,小学校 の教員以外 の教員 が それを行 うことは, 子 ど もた ちの動機付 けを高 め るため に も効果 的で あ る と考 えて い る もち ろん, それ らの 実行 にあた って は,小学校 の教員 との緊密 な連携 を欠 かす ことがで きない。

この よ うな現場 で の実 践 の積 み重 ねす れ ば,変化 して い く社 会 の中で教育 を どの よ うに 変 え るか につ いて の方 向性 が確実 に掴 め るので はなか ろ うか。

高等 学校 にお ける生物領域 の先端科 学 の内容 を学ぶ授業 の編成

小学校 にお け る授業実践 を踏 まえて,高等学 校 で の実践 に取 り組 み,生 徒 の反応 か ら今 後 の授業 の あ り方 を さ らに追及 した い と考 え た。 実践 の概要 は次 の通 りで あ る

対象校 ・学年 :長 崎県立 高等学校 1年生32名

実 施 時 期 :平 成15年12月, 授 業 時 間 :45分 授 業 の 概 要

(a)授業 の 目的 先端科学 が人 々の くら しに与 え る影響 を理解 させ,一 人一人 が くら し の中で先端科学 に対 す る関心 を深 め, その利 用 につ いて深 く考 え る態度 の育成 を図 る その一方,生徒 の反応 か ら先端科学 の理科教育 へ の組 み込 み方策 を追究 す る

(b)生徒 の レデ ィネ ス 小 ・中学 校 の教 育 の中で生物 の体 の仕組 みや生 物 間 の相互 の関 連 を学 ん で きて い る また,論理 的思考 の発達 も進 んで い る もの と思 われ る。 しか し, 自然科 学 が どの よ うに発展 して い るか,又, その人 々の くら しに与 え る影 響 に つ いて は学習 を行 って きて いな い。 ただ社会科 の倫理 の中で生命倫理 を考 え る教材

と して ク ロー ン等 が学 習 され る予定 に はな って い る (C)授業 展 開

時間 生徒の活動 教員の活動

0

10

15 25 35

45 行 う〇ハサ ミやのりが必要であることを指核 の小学校や中学校で学んだことをもとに生きていることや生き物の定義を・ うごくもの・ 成長するもの など働 きを説明す る遺伝子が存在す る命令 をだす ところ染色体がある呼吸するもの 生き物が備えている特長を補足説明する○特に細胞「生きている」ことの説明を求めるo に焦点をあてるo

核の働きについて説明を求める○

核の働きをまとめ,遺伝子に焦点をあて,近年遺伝 子を佐憂さすることができるようになったことを 説明していくoその前に染色体に見たてたテープを 使って染色体を組み換えるためには何が必要かを 聞 くo

ハサミとのりが細胞内で見つかってお り,それを使

摘する○

同じ顔になったクラスを見て,その

感想を述べるo つて染色体の組換えができるようになったことを

説明するoさらにプロジェクタを使用 して遺伝子の 組換え植物やクローン技術を紹介するo

クローン社会を想定させるために目をつぶらせ,檀

(11)

高 等学校 生 の授業 に対 す る反応

実践後 の生 徒 を対象 と して, ア ンケ ー ト調査 を行 った。結 果 は次 の通 りで あ る。

a)科 学 の発達 は私 た ちの暮 ら しに大 き く関わ るよ うにな って きま した。 この状況 をあ な た は どの よ うに考 え ます か。 (複数 回答可/32人 中)

① 小 さ い頃 か ら科 学 を身 近 な もの と して と らえ,十 分 に理 解 した い。

② 科 学 の発 展 は長 所 ば か りで は な い ことに注意 した い。

③ 社 会 人 とな って も科 学 に関 す る事 柄 に注意 を払 いた い。

④ 科 学 の発 達 は社 会 で コ ン トロ ー ル すべ きで あ る

⑤ 社 会 の影 響 を余 り考 え ず , どん ど ん発達 させ るべ きで あ る

⑥ 科 学 に あ ま り関 心、が な い の で意 見 は特 にな い。

⑦ その他

・ 科学 だ けに と らわれ な いで ほ しい

回答者数 (複数回答)

35 30

25211005 rIIlI11 I

r

I I

. iI1IIIIJil

5

0 . 口 l

15 くらしを支える先端科学について

科学 が発達 して も っと細胞 の ことな どにつ いて詳 しく分 か って も,悪 い ことに は使 わ な いよ うにす る

環境 改善 な どプ ラス にな る科学 を発展 させ るべ き

b

) ク ローン人 間 を作れる技

が確立されようとしてい ます。クロ‑ン に関するあな

の意 見を教 え て下さい。(複

回答

/

3 2

中)

① ク ローン人 間を作る技術は確立 す べ きである。

② 人 間以外 の クローン動物 ・植物 を 作 る技術 に とどめ るべきである 。

③ ク ローンに関 する研究は中止す べ きである。

④ ク ローン人 間 を作 るべきである 。

⑤ その他

・ クロー ン人 間を一度作って み て, どうな るの か実験 をしてほ しい。

その結 果 ク ローン人間は危 険 か どうか判 断 して欲しい。

か し,

回答者敷 く複数回答)

12 iri

8

6 I.㍗ .‑1̲.i7i

4 H rit

16 クローンに対する意見及び感想 クロー ン人 間も一人の人間ということを忘れて はけ なの でい。

特 に 「ク ローン人間」には強 く反対 。

(12)

54 長崎大学教育学部紀要 教科教育学 No.44(2005年)

C)実践授業 に対 す る感想

回答者数

0 5 10 5 20 25 30 35

授業は楽しかつた 授業の内容はよく理解できた 授業で用いた図はよく理解できた教員の説明は聞きやすかつた 大学の教員の授業をもつと受けたい これからも科学の発達に関心を払いたいと思った授業のことを友人や家族に話したい

I.I ド .ll i

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槻宰拙.̲ I

甜蹴 卜 71...I

17授業の感想

ここに示 されて い るよ うに,実践 した授 業 に対 して は非常 に好意 的 に受 け止 め られて い る また 「これか らも科学 の発達 に関心 を示 した い」 や 「授業 の ことを友人 や家族 に話 し た い」へ の肯 定 も70%を越 えて い る これか らも授業 の 目的 の達成 が示 されて い るので は な いか と思 う ア ンケー トに は生徒 の 自由記述 の部 分 もあ り, それ らの分析 を行 ったが, 予想以上 に多 くの意 見 が寄 せ られ た。特 に最後 の担 任 のお面 をかぶ った全員 の様子 が 印象 的 で あ った ら しく, その点 に関す る記述 も多 か った。 なお, プ ロ ジェク タで用 いた図 も理 解 しやす か った との評価 も得 る ことがで きた。 したが って授業展 開 に関 して は余 り問題 が なか った と考 えて い る

しか し, この よ うな時間 を どの よ うに生 み出す か,又,教 員 の再教 育 を どの よ うにす る か な ど残 され た課 題 は多 い。

おわ りに

小学校 の児童 た ち及 び高等学 校 の生 徒 た ち は積極 的 に学 習 に参加 し,先端科学 へ の理解 を深 め よ うと努 力 して くれ た。 その結 果, 当初予想 した以上 に ク ロ‑ ンな どの理解 も進 ん だ と考 えて い る しか し, この手 法 を理科教育全般 に広 げ るわ けにはいか な い。 それ は本 授業実践 に も先端科学 を ク ロー ンで代 表 す る ことがで きるのか とい う検討 が十分 に行 われ て いな い ことな ど, 弱点 も多 い。 ただ,急速 に進 む科学 , そ して その暮 ら しへ の影響 を考 え た とき,学 習 内容 を時代 に即 して どの よ うに決 めて い くのか につ いて幅広 い実践研究 が 必要 で あ る

謝 辞

授業 を行 うにあた って協 力 して いただ いた小学校及 び高等学校 の諸先生方 に この場 を借 りて お礼 申 し上 げます。

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要 約

先端科学が生み出 した技術 は,人々の暮 らしを大 きく変えようとしている。 これは,人 々 の生活 を便利 にす る一方で深刻 な問題 を新 たに生み出 している この状況 は,将来 の社会 に生 きる子 どもたちに,先端科学 を誤 りな く理解す ることを要求 している。 そ こで,先端 科学が生み出 したクロー ン技術 に焦点 を当て, その理解が容易 になることを目標 に して, 小学校及 び高等学校での理科学習 を編成 し,実践 した。 そ して, その内容 の適否 を彼 らに 評価 して もらった。

その結果,学習材や学習方法 に工夫 を加 えれば,高等学校 はもちろんの こと小学校高学 年の理科学習の中にクロー ン技術 に関す る内容を組み入れることが可能であることがわか っ

た。 また,子 どもたちや教員 の評価か ら改善 に向 けた今後の課題 も明 らかにな った。

参考 ・引用文献

1)文部省 :小学校学習指導要領 (平成10年12月)開設,1999年

2)文部省 :中学校学習指導要領 (平成10年12月)開設,1999年

3)文部省 :高等学校学習指導要領解説 理科編 理数編,1999年

4)大月出博善 :ヒ トゲ ノムの ことが面 白いほど解 る本,中経 出版,pp.ト223,2000年

5)メイ ワン ・ホ‑ (小沢元彦訳) :遺伝子 を操作す る,三交社,pp.1‑406,2000年

6)井上兼生編 :生命倫理,教育出版,pp.1‑144,2000年

7)橋本 ・若杉 ・谷 口 :健康 をテーマと した総合的な学習 の編成 と実施 に関す る一考察, 長崎大学教育学部紀要,Vol.42,pp.1‑13,2004年

図 6 生き物 と遺伝子の説明に使用 した図 図 7 ヒ トの遺伝子の役割の説明に使用 した図 ‑ こ 蕪 、図8 ヒ トの誕生の説明に使用 した図 図 9 クロー ンの誕生の説明に使用 した図 48帥昂升焼津瑚朝洩琵姻簿望洋頑張No.44(2005常)

参照

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