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橋本健夫*・松尾真理子**・良永淳子***    枡田 忍****・久松邦夫*****

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(1)

49

楽しい理科授業への模索

(1)小学校における燃焼単元の学習

橋本健夫*・松尾真理子**・良永淳子***

   枡田 忍****・久松邦夫*****

(昭和59年10月31日受理〉

An Experin}ent for the Pleasant Science Teaching

(1)A Study on the Unit about Combution in Elementary School.

Tateo HASHIMOTO,Mariko MATSUO,Jmko YOSHINAGA     Shinobu MASUDA and Kunio HISAMATSU

(Received Oct.31,1984)

はじめに

 理科学習とは本来どうあるべきなのであろうか。それは児童が五感を通して自然現象を とらえ,自然に対する疑問や驚きを実験や観察によって解決していく過程であろう。その 過程においては児童が積極的に活動し,楽しい雰囲気が満ちあふれていなければならない と考える。しかし,現場からは「準備が大変」「準備を充分する割には児童の関心が今一つ」

等といった不満が多々聞こえて来る。我々はこの現状を打破し,教師にとっても児童にとっ ても楽しく,学習効果の上がる理科学習をめざして具体的な単元をとり上げ,現在行なわ れている理科の指導法を検討したいと思った。燃焼は児童,生徒の生活の中で重要な位置 を占めるとともに,物質の激しい変化を伴うために,非常に彼等の興味・関心を引く現象 である。またそれは光と熱の発生をともなう化学反応そのものであり,自然科学の基本概 念を学ぶ際に忘れてはならない現象でもある。ラボアジェの燃焼の理論が近代化学発展の 一基礎となり,ファラデーの「ローソクの科学」が一般市民に自然科学の啓蒙書として普 及したように,燃焼は近代自然科学の発展にも大きく寄与してきた(1)。日本においては,例

えば明治7年の「小学化学書」の「火」の項目でろうそくの燃焼についての説明がなされ,

明治25年の小学理科新書では酸素中の硫黄の燃焼等が述べられ(2),大正10年の尋常小学理 科書ではろうそくやアルコールの燃え方や炭火についての記載が見られる(3)ように,この 現象は,明治以降一貫して理科の内容として取り上げられてきた。特に「小学化学書」は

「ローソクの科学」の影響が大きく見られ(4),実験が前面に押し出されており,その後の燃

*    長崎大学教育学部理科教育教室, **  北九州市立葛原小学校,

***  久留米市立御井小学校,     ****小値賀町立小値賀小学校,

*****長崎市立西山台小学校

(2)

焼教材の取り扱い方の原型になったと思われる。現在の学校教育における燃焼教材の意義 づけや位置づけに関しては井手氏の報告に詳しいが(5)(6),小学校に関して述べるならば,2 年生で空気の存在に気付かせ,3・4年生で空気の物理的な性質を学び,5年生では燃焼 時の空気や酸素の役割についての知識を得,6年生で炎は気体が燃えるときにできること などを習得するようになっている(7)。このように小学校段階においては,燃焼と空気との関 係を理解させた上で,空気成分の酸素や燃焼生成物の二酸化炭素の性質を絡ませながら,

気体の燃焼に取り組ませることによって,中学校段階での化学的取り扱いへの素地を養っ ていると考えられる。一方,・燃焼を通しての理科学習は実験・観察が主となるため,分析 的思考や探究的な態度育成にも非常に効果があるものと思われる。我々は,これらのこと をふまえ,燃焼単元の楽しく,より効果的な構成を求め,具体的には小学校6年生の「気 体の燃焼」を取りあげ,現在一般に行われている単元構成やその中に含まれる実験・観察

に対する児童の興味・関心を調査した。次いでこれらの結果をもとに児童の活動を重視し た授業を立案し,実践して検討を加えた。

報告されている「気体の燃焼」の単元構成

 現在小学校6年生で「気体の燃焼」として扱われている単元がどのように展開されてい るのか,また展開されうるのかを知るために,研究紀要や雑誌等から実践例を集めた。入 手できた展開例は1973年が最初であるが,1978年に指導要領の改訂があり,この単元は「物 が燃えると,その物の質が変わることを理解させる」から「物が炎を上げて燃える様子を 調べ,炎は気体が燃えるときにできることなどを理解させる」という内容に変わり,具体 的な項目も燃焼したときの物質の変化や電熱線の発熱などがなくなり,次の3項目になっ

た(8)。

 ⇔り:炎は,部分によって色,明るさ及び温度に違いがあること。

 α):炎は,気体が燃えるときにできること。

 (ウ〉:木片を空気の入れ替わらないところで熱すると,燃える気体などが出て,後に木片    が残ること。

 そこで25の実践例をこれら3項の内容をどのような順序で達成しているか,またその時 用いられた学習形態や教材はどのようなものであったかという点を中心に分析した。その 結果,昭和53年の指導要領が改訂される前の実践では内容が多かったせいか全て上述の⇔り の項目,つまりろうそくの炎の観察から授業展開を始めているのに対し,改訂後の実践で はそのような傾向は見られず,多様な展開がなされている(9)〜(30)。改訂後の実践を上述の観 点からまとめたのが表1である。この表の備考欄は実践した各教諭の反省点を要約して記 載した。この表を見ればわかるようにのの項目,つまりろうそくの炎の観点から単元構成

を行った報告は5例と少なく,(イ)の項目からの単元構成が最も多く報告されている。又(イ)

の項目から単元構成を始める場合にはα)→(ア)→(ウ)という構成と,(イ〉→(ウ)→のという構成が あり,同数報告されている。しかしこれらの報告の中には(ウ)の項目から単元構成を行った 方がいいのではないかという反省も見られ注目される。一方(ウ)の項目つまり木片の乾留を 単元の始まりに持ってくる実践は5例と少ないが,いずれも児童の思考の流れを強調した 単元構成をねらったと報告されている。このように「気体の燃焼」に関しては,4種類の 単元構成がなされ実践されているが,単元時間数に注目すると,この単元の標準時間数と

(3)

51

楽しい理科授業への模索

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(4)

考えられる8〜9時間で全ての報告が終了しているのは ろうそくの観察 から単元構成 を行っている場合のみで,α)の項目からの場合も,(ウ)の項目からの場合も多少単元時間数 が増加する傾向にある。この単元で用いられた教材ではろうそくと木片(ワリバシを含む)

は全ての授業で使用されており,その他都市ガス,アセトン,燈油,サラダ油などが目に ついた。一方学習形態については,どの単元構成であっても全体討議から実験方法を決め,

グループで実験をさせていく形態が主をなしており,個人別,グループ別に個々に考え実

      艦

磁 為一

ろう

アルコールランプの燃 え方      (1

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アセトンの気化    (1時間)

→ 

ろうの気化

(1 時間)

  消火直後の煙への引火 時 間)

    →

量灘に薫凄

ろうそくの観察

(1 時間)

ほのおから気体をひく

ほのおの色,明るさ,温度

(2 時間)

δ

ほのおに空気を送る

γ餌

     

 〃

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木の乾留   (2時間)

図1 調査対象校で行われた授業展開

(5)

53 楽しい理科授業への模索

験していく学習形態は余り見られなかった。

「炎は気体が燃えるときにできること」から始まる単元構成における児童の反応  上述したように,この単元は(イ)の項目から単元構成をする場合が多いが,その展開にお いて児童はどのように学習を進めているのであろうか。このような単元構成で授業を受け た4小学校の児童253名を対象として,この学習で用いられた実験や観察に焦点をあて,そ の目的や結果の理解のようす(理解度),またそれらの実験・観察に対する興味・関心のよ うす(興味・関心度)を調査した。実施年は昭和56年10月〜11月であり,実施した場所は長 崎市と鳥栖市である。まず調査校で行われた授業の流れを図1として示す。このように調 査対象校では,アセトンの気化実験から炎は気体が燃えるためにできるのではないかと予 想させ,アルコールランプの燃え方やローソクの消火直後の煙への引火実験から,それを 確認していくとともに,ローソクの燃え方(固体→液体→気体)に移り,その燃焼が酸素と 関係しているようだとの予想を,炎の観察や,炎からの白い気体を引き火をつける実験,

そして炎にワリバシをつっこんでそのこげ方を見る実験から行い,炎に空気や酸素を送り こむ実験で確認する。続いて(ウ)の項目である空気の入れ替らない所での燃焼のようすを実 験・観察することによって学習を終っている。この一連の授業を行った全ての教諭(7名〉

は,この単元構成にほぼ満足しており,授業の成果並びに授業における児童の反応も非常 によかったと述べている。そこで授業で用いられた実験のうち アセトンの気化 ろう の気化 炎から気体をひく そして 木片の乾留 という4つの実験をとりあげ,それ

らの実験結果を各児童がどのように理解しているかを調査した。この調査にあたっては,

燃焼単元の現在の小学校理科における位置を考慮した。つまりそこでは,燃焼と空気との 関係が第1に取り上げられており,上述したように燃焼単元が始まる5年生までに空気に 関する物理的な学習を済ませるようになっている。この関係から燃焼単元は小学校におけ る空気に関する学習の最後としても取り扱われる(31)。だからこの単元においては燃焼と空 気との関係を正しく把握しなければならないと考え,各実験結果の理解を問う場合,空気

アセントの気体 ろ う の気体 炎から気体をひく 木片の乾留

2    27

 90

3 33

6    49

8

15 24

,覆孝 78

團:空気との関連もふまえ・正しく理解してし・た懸の割合   (図中の数字は割合(%)を示す)

國:空気との関連はふまえていない力藍・ほ旺しく理解していた児童の害1』合

□控気中の酸素が燃えて炎となる という誤答をした児童の割合

図2 実験結果の理解度

(6)

   表2 各実験に対する児童の反応   との関連を示す語句を入れないでほぽ正確に       実験結果を説明した文と空気との関連を示す       語句を入れて正確に実験結果を説明した文を       用意し,児童の理解の深さを調べた。その結       果が図2である。このように「アセトンの気       化」→「ろうの気化」→「炎から気体をひく」

      →「木片の乾留」と授業が進むにつれて燃焼       を空気と関連させて理解する児童が増加しな       ければならないはずであるが,結果はそのよ        うにはならず,かえって「空気中の酸素が燃       えて炎となる」という誤答をする児童の割合       が増加している。この結果は,上述の教諭側       の感触とは異ることになる。この原因はどこ       にあるのだろうか。我々は児童が授業で用い       た各実験に対してある種の不満を持ったので       はないかと考えた。そこでこの単元で用いら       れた実験に対する児童の興味,関心の度合を       調べた。その結果を表2に示す。この結果と       図2から考えられることは,もう少し時間を       かけたかったと感じた児童が多い実験ほど,

      その実験の結果について空気との関連まで踏       みこんだ理解ができていないようである。つ        まり児童自身,もう少し時間をかければはっ        きり理解できると自覚しているのに,学習は        どんどん進んでしまった結果,単元が終了し       た段階で,5年生の既習事項を踏まえた燃焼        に対する理解ができなかったのではなかろう       か。また表2から我々は児童がおもしろいと       感じ,もう少し時問をかけたかったと思った       実験については,この調査が(イ)の項目からの 授業展開の中での児童の反応ではあるけれども,この燃焼単元の学習を行う際に重視すべ

き実験ではないかと考えた。

実     験

配当時間 おもしろかっ

と感した 童の割合   (%)

もう少し時間 かけたかっ 児童の割合   (%)

1 17 9

2

1 3

/レ 16 8

17 16

1

8 10

3 13

2

2 8

6 6

2 30 27

「気体の燃焼」に関する新しい学習指導計画の編成と実践

 現在最も多く実践されていると思われる曾)の項目,つまり「炎は気体が燃える時にでき ること」を単元の最初に据える授業展開を調査し,検討したわけであるが,我々は次の点 に不満をもった。(1)学習が進むにつれて燃焼と酸素の関連が充分に把握されなければなら ないのにそれができていないこと。(2)児童の意志に反して実験に充分時間をかけていない こと。(3)児童の思考の流れというよりわかりやすさを前面に押し出し,指導する側がせか せる指導展開になっていること。我々は理科学習が児童にとっても教師にとっても楽しい

(7)

55

楽しい理科授業への模索

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(8)

ものでなければならないとともに児童の思考や活動が中断されることなく学習が進まなけ ればならないと考える。そこで上述の不満点の解消と我々の理科学習に対する考え方を踏 まえ,下記の観点から9時間の指導計画を作成し,実践することにした。1.児童の興味・

関心の高い実験を効果的に配置することによって,意欲的な探求活動を引き出す。1.発 展性の高い実験を単元導入部に位置づける。1.既習事項との関連が常に理解できるよう な状況設定を行う。1.学習を進めるにあたっては児童の思考の流れを大切にし,多様な 進展を考える。この実践は長崎市の小学校の6年生1クラス(40名)で行うことになり,ま ずその児童のレディネス調査を行った。調査内容は主に5年生の既習事項であり,それに ろうそくの炎のようすなども質問した。その結果,ろうそくの炎については部分的に色が 変わっていることを図示した児童が80%を占め,日常の観察の確かさを示していた。また

5年生で学習した二酸化炭素の 性質については1人を除いて全 員が理解していたが,燃焼時の 酸素の役割やその時生成される 物質については50%〜70%の児 童しか理解しておらず,この点 での再確認の必要性を感じた。

以上のことがらを踏まえ,単元 途中において児童の思考が中断 することのないように,変更可 能なルートも設定し,作成した 学習指導計画が表3である。こ

の計面は実践においても,ほと んど変更することなく学習を進 めることができた。まず5年生 の既習事項の確認と木片の乾留 実験への導入を兼ねて,木片と 木炭を酸素中で燃焼させる実験 から始まり,木片の乾留→ろう そくの燃え方→ろうそくの炎の 観察→液体の燃え方→木片の乾 留へと進むことになる。この様 子を図示したのが図3になる。

この流れの中で木片の乾留実験 を2度用いたのは,単元全体を 通した問題発見をこの実験で 行ったのであるから,学習終了 時にもう一度実験することに よって,自分の学習を振り返り 知識の整理をすることができる

 木片と木炭の燃え方(1時間)      木片の乾留(1時間)

  (ノ

〃し

ろう

ろうの気化(1時間)     ろうそくの炎のできるしくみ

         (1時間)

炎かり気体をひく

 (1時間) 炎の色・明るさ・温度

 (1時間)

   二

︑!■IL一91ー﹄﹂

炎に空気を送る   (1時間)

       木片の乾留(1時間)

 いろいろなものの燃え方(1時間)

図3 「気体の燃焼」の学習展開

(9)

57 楽しい理科授業への模索

と考えたからである。また一連の実験を組むにあたっては,実験結果が明瞭にでる工夫を 行った。その一つは乾留実験のガラス管の部分で,木ガスに含まれるタールが排気を妨げ ないようにガラス管を一部ふくらまして液ダメを作り,木ガスの炎がとだえることのない ようにした。また,ろうの気化の実験の所では凍結乾繰用アンプルを図3のように切断し,

ろうの炎がはやく大きく見えるようにした。さらに炎に空気を送る実験では,和ろうそく

(芯の中に穴があいたもの)のようなろうそくを自作し,その芯の中の穴を通して空気や酸 素を送り出し,炎を大きくした。続いてのサラダ油やタールを燃焼させる実験ではビンの 王冠を用い,アルコールランプを用いても早く燃焼し,あとかたづけも簡単にした。一方,

学習を進めるにあたっては,全体討議から予想や実験方法を決め,各グループで実験を行 い,その結果を各自が理科ノートに記録するとともに全体討議にかけ,確認をしていくと いう,ごく一般的に行われている形態をとった。また児童へのフィードバックや指導計画 の変更に対するチェックは各児童の理科ノートを点検することによって行った。理科ノー トには各実験の目的と結果だけではなく,各実験に対する楽しさ,疑問点等も記述させた ため,学習の進展を考えるにあたって非常に参考になった。授業実践にあたっては指導す る教諭の他に1人が児童の行動や発言の記録をとり,もう1人がVT Rで録画し,授業後 の検討に備えた。

実践授業に対する評価

 「気体の燃焼」単元の学習指導を編成するにあたって,意図したことがらが実践の中で生 かされ,楽しく効果的な授業であったかということを判断するために,授業をうけた児童

(40名)を対象に各実験の目的や結果の理解を問う調査と知識や概念等の獲得をみる事後テ スト等を行った。まず各実験の目的についての理解度の調査結果が図4になる。調査人数 に差はあるが(イ)の項目からの授業展開で学習した児童に対する調査結果と比較すると,本 研究の実践の方が,明確に実験目的を把握していた児童の割合が若干多いと言えるかも知

実  験 木片の乾留 ろ う の気化 炎からろうの気体をとり出す

・木片を空気の入れ替わらない ・ろうを熱するとどのように変 ・ろうそくの炎にガラス管をつ

っこみ気体をとりだすとどう

ところで熱するとどうなるか。 化するか。 なるカ)。

調 象校の授

,霧

69 89

﹇の授曲

71 80 95

國:正しく理解していた児童の割合

       図4 各実験の目的を理解していた児童の割合

(10)

実 験 ろ う の気化 炎から気体をとりだす 木片の乾留

ろうは熱すると液体から気体へ 炎のしん近くには, ろうの気体 木片を空気の入れ替わらないと

とカ)わり,空気とまじって炎と があり,それがとりだされてま ころで熱すると木炭・木タール・

なって燃える わりの空気とまじるので炎とな 木ガスに分解され, 空気中で木

って燃える ガスが炎となって燃える

調 対象・

33 24

あ授 49

88

展開 77 78

39

41

展開 75 80 80

國:ほぽ正しく理解していた児童の害り合團:空気との関連もふまえ,正しく理解していた児童の割合

         図5 実験結果を理解していた児童の割合 れない。

 また実験の結果をどのように理解していたかを聞いたのが図5であるが,この図から はっきりわかるように,学習が進むにつれて燃焼を空気と関連づけて理解している児童の 割合が,前の調査に比べて多くなっている。これは学習指導計画をたてる段階での意図が 十分に反映されたと見てよいのではなかろうか。一方知識や概念の獲得に関してはどうで あろうか。参考資料として掲げる試験問題を不充分ながら「知識・理解」,「観察・実験の 能力」,「科学的思考」の項目別に分類し,それぞれの集計結果を示したのが表4になる。

この表からわかるように「知識・理解」と「観察・実験の能力」に関する問題に対しては,

80%の児童が正答しているが,「科学的思考」に関する問題に対しての正答率は60%にすぎ ない。これは,文章を作成して解答しなければならなかったという要因も含まれると思う が,予想した水準(約80%〉を下回っている。しかし解答を詳しく調べると教師の簡単な助 言や指導で直ちに矯正できるものもある(約20%)ため,授業中の机問巡視の際の助言や発 問の工夫をしておれば予想水準に達していたものと思われる。以上のように実践授業に於 ては,授業の流れや実験操作についてほぼ学習指導計画編成時の意図が達せられたと考え られ,この学習を通して身につけなければならない知識・理解等も比較的ズムーズに獲得 されたと考えられる。ただ,炎の構造に関しては,森本氏らの改善に向けての提言がある が(32),今回はその提言を充分に授業の中に組み入れることができず,従来の内容と同じに なってしまった。次回にはそれを生かせる工夫をしてみたいと思っている。

楽しい理科授業の反省

さて,この9時間の「気体の燃焼」の授業展開は児童にとって本当に楽しいものであっ

(11)

59 楽しい理科授業への模索

たのだろうか。授業を観察した限りにおいては,児童が活発に発言や実験を行っていたた め楽しい雰囲気を感じた。しかし実践者からは授業の流れはスムーズで全体として楽しく 学習できたと思うが,一部の児童が十分に活動していなかったのではなかろうかとの意見

も出された。そこで授業観察者の記録や授業録画,そして授業後の調査等をもとに教師の 発問や児童の反応,そして知識・理解の獲得の過程を調べた。この調査にあたっては,この 授業が班活動を中心に進められていたため,各班毎に分析を行った。その結果,7班ある 中で1班の活動が極端に低下していることがわかった。この班(6班)に対して教師は他の 班と同様に指名して発言させており,机間巡視でも特に力を入れている様子が伺われる。

しかし,全体討議の挙手による発言数は他の班に比べて半数にすぎない。さらに班別の学 習過程をまとめたのが表5であるが,これを見ればわかるように第6班はこの学習に対す るレディネスは比較的高い水準にあるにもかかわらず,各実験の目的や結果の理解度は非 常に悪くなっている。その結果として,事後テストの正答率も7班中の最低である。つま

り第6班には学習効果がほとんど見られない。このことは実践授業が第6班(6名)の児童 にとって決して楽しいものではなかったということを物語っているのではなかろうか。こ の原因は,教師の適切な指導が充分に行き届かなかったためなのか,それともこの班は野 外学習等ではクラスをリードする一面も持っていることを考えると,実験室内での班構成

0 正. 100(%)

炎の部分の名称

外     炎 95

内    炎 95

炎     心 93

3

炎の各部分の空気(酸素)の供給量の違い 80

炎の中にガラス管を入れたとき出てきた白い煙

73

はろうの気体である

木片の乾留によって 気体の名称(木ガス) 63 80

分解された液体の名称(木タール) 65

炎の中に丸ばしを入れたときのこげ方 80

83

木片の乾留によって気体・液体・固体に分解する 73

木  炭  の 燃  え  方 83

・実

アセトンの入った試験管の[コに炎ができるのは

の能 湯に入れたときてある 100 1

炎の各部分の明るさの違い 70

ガラス管の先に炎がてきるのは炎心に入れたときであ 85

木片の乾留装置での試験管口の正しい位置 /90

アセトンの気体が炎となって燃えることの説明する 68 22

    5818〃

アルコールランプの炎のできる.しくみを説明する 43 45

丸ぱしのこげ方から炎の各部分の温度の違いを

58 5

説明する

」ひ、

木片を空気の入れ替わらないところで熱すると

65

木炭ができることを説明する

囮:正しく獲得していた児童の割合 □:教師の助言や簡単な指導で直ちに矯正できると考えられる誤答をした児童の割合

図6 事後テストの結果

(12)

第5学年での既習事 の理解の割合

     (彩)

各実験の目的を正し 理解していた児童 割合

     (%)

各実験の結果を正し 理解していた児童 割合

     (彩)

事後テストの正答率

     (%)

1 50

72 形94 92

2

80 87 87

笏須4

3

75 78 89 84

4

70

%93

93 79

5 34 67 50 67

6 75 67

33

63

7 67 93 87

髪70

図7 各班の学習過程

に問題があるのか,いろいろな可能性が考えられるが十分に解明できず,今後の検討課題 として残った。

おわりに

 小学校6年生の「気体の燃焼」単元に焦点をあて,その指導展開のされ方を調べ,最も 一般的な展開とそれに対する児童の興味・関心や知識・理解の獲得のようすなどを調べ,

それらをもとに楽しくかつ効果的であることをねらった学習指導計画をたて実践し,児童

(13)

61 楽しい理科授業への模索

の反応などを分析した。この結果,一部の児童にとっては楽しい授業とは言えなかったよ うであり,また知識・理解等の獲得においても全員の児童が完全に習得したとは言えなかっ た。実践した授業は児童の思考の流れに沿って展開しており,大部分の児童にとって学習 効果が上がっているのであるが,一部の児童にそれが見られないということは,その思考 の流れにのれない児童がいたということになり,教師の手当も充分な結果を結ばなかった ことになる。我々は授業の楽しさが児童の意欲の喚起につながる一歩であると考えている が, 全ての児童にとってのたのしさ ,このより深い追求の必要性を感じた。一方,児童 の興味,関心の最も高い実験を重視し,その中で発展性のある実験を単元の最初と最後に 持ってきて学習効果の向上をねらったことや,児童の思考の流れを尊重した授業展開は,

当初の意図達成に多少とも貢献したと考えている。

 児童が五感を通して現象をとらえ,それに対する疑問や驚きを実験や観察などによって 解決への工夫をこらしていく理科授業は,児童にとっても教師にとっても本来楽しいもの でなければならない。しかしながら現実にはそれとはかけはなれた状態で学習が進められ ている。そこで我々は現在行なわれている理科学習の改良を試みることにした。「物が燃え る」という現象は,児童の生活において頻繁に見られ,しかも生活の重要な部分を占める ことが多い。また,この現象を学習することは物質とエネルギーに関する自然科学の基本 概念を習得することにもなる。このため我国においても小・中学校の理科の中で一貫して とり上げられ,一つの大きな柱となってきた。そこで我々は楽しくかつ効率の良い理科学 習を達成するために,小学校における燃焼単元,具体的には6年生の「気体の燃焼」をと

り上げ,その改善を試みた。まず今までに報告されているこの単元の展開法を調べて4種 類のパターンに分けるとともに検討を加えた。次いでその中で最も報告例が多い展開法で授 業を受けた児童の,授業中に用いられた実験に対する興味・関心度や学習時の理解度を調査 した。その結果を参考にして,児童の興味・関心が最も高く,発展的な内容をもつ「木片 の乾留」実験から学習を始め,児童の思考の流れを重視し,5年生までの既習事項を常に 想起しながら燃焼を理解していく授業を展開し,もう一度この単元の整理を兼ねて「木片の 乾留」実験で締めくくる学習指導計画を立案した。そしてそれを6年生の1学級で実践す るとともに分析した。その結果,大部分の児童にとって楽しく効果的な授業であったと判 断したが,一部の児童にとっては学習効果が余り見られず,この点の解明が今後の検討 課題として残った。

引用文献

(1)M.ファラデー著,矢島裕利訳 ロウソクの科学 岩波書店 1933

(2)学海指針社 小学理科新書 集英堂 1892

(3)文部省 尋常小学理科書 第四学年児童用 大阪書籍 1921

(4〉板倉聖宣 日本理科教育史 第一法規 1968

(5)井出耕一郎  「燃焼」の教材論的検討 山梨大学教育学部研究報告 voL27 1976

(6)井出耕一郎  「燃焼」教材の意義とその構造 理科の教育 voL30 1981

(7)文部省 理科指導書 昭和53年改訂版

(8)文部省 理科指導書 昭和43年改訂版

(14)

(9)中兼喜和 物の燃え方 初等理科教育 vol.7 1973

(1①樋口大良 ひとり歩きの理科学習 一ものが熱えるときの変化(アルコール)一初等理科教育  vo1.10  1976

(11)上野直衛 6年 ものの燃え方 初等理科教育 vol.10 1976

(12)松本 剛 問題意識を高める指導 一6年 物の燃え方一 初等理科教育 voL11 1977 q3)吉則 1人ひとりを生かす理科指導を目ざして 一6年 物の燃え方一 初等理科教育vol.13  1979

(14)大庭典章 学ぶことに喜びをみつける子どもの育成 一6年「ろうそくの炎」の観察と問題づくり  一 初等理科教育 vol。14 1980

(E 熊谷光男 6学年の理科 ほのお 初等理科教育 vo1,14 1980

(1の 水原登志子 6学年の理科 物の燃え方 初等理科教育 vo1.14 1980

(17)加藤直行・大沢 勇 物の燃え方 理科の教育 vol.28 1979

(18)栗田敦子 こどもの理論を育てる一6年 物の燃え方一 初等理科教育 vol,13 1979

(19〉柳井昌彦 ほりさげの深い授業を求やて 一6年 気体の燃焼一 長崎市立新興善小学校紀要  1980

(20)浜松勝子どもが創り出す活動一6年生気体の燃焼一長崎市理科サークル紀要1980

(21)丸山綱男 年間指導計画の見直し 一6年 「物の燃え方」の実践例を中心に 初等理科教育 vo1.16  1982

(22〉高橋裕清 子どもの一貫した問題意識を中心とした授業展開を求めて 一6年 燃焼一 初等理科  教育 vol.14 1980

(23〉蛇沢道雄 楽しく学ぶ理科学習を目ざして 一6年 物の燃え方の学習を通して一 初等理科教育  vol.14  1980

(24)大田 隆  ろうそくからの脱皮  一6年 ほのお一 初等理科教育 voL l4 1980

(24)安田武彦 子どもの発想を生かす学習指導 一6年 ほのお一初等理科教育 vol.15 1981

(26)大森光三 子どもの思考の流れに乗った授業展開 一6年 ほのお一 初等理科教育 voL13  1979

(27〉芳田真一 ひとりひとりの意欲的な活動を高める学習指導法の研究 長崎市立勝山小学校紀要  1979

(28)横浜智也 問題解決を推進している情意面の変容過程の考察 初等理科教育 vo1。15 1981

(29)佐藤恵哲 小学校第6学年 ものの燃え方 理科の教育 voL30 1981

(30)戸田教一 小学校6年 物の燃え方の指導 理科の教育 voL32 1983

(31〉降旗勝信 空気教材の構造とその研究 理科の教育 vol.26 1977

(32)森本信也・栗田一良 炎の構造に関する一考察 ・日本理科教育学会研究紀要 vol.22 1981

(15)

63 楽しい理科授業への模索

〈参考資料〉

年  組  番 氏名

団 アセトンの入った試験管の口にマッチの火を近づけました。

       ⑦し   ④鉱

.奪≠禽.

 111ほのおを出して燃えるのは,⑦,④のとちらですか。

       (     )  12)ほのおになっているものは何てすか。 (      ) 圖 ろうそくのほのおについて調べました。

       111ほのおは,⑦,④,②の3つの部       分に分かれていました。⑦,④,◎

      の部分はそれぞれ何と呼びますか。

      ⑦(      )       ④(      )       ◎(      )  図 ⑦,④,②の部分では,色,明るさ,温度に違いがあること   に気づきました。明るい順に()に番号をつけなさい。

  ⑦(  ) ④(  ) @(  )  (31温度の違いを調べるために下の図のように,ほのおの中に丸   ぱしを入れてこげ方を調べました。黒くぬったところは,こげ   たところてす。

金奔島蕪奔

  oこげ方の正しいものを1つえらび()に○をつけなさい・

  oこの実験からどんなことがわかりますか。

 (41ほのおの色や明るさや温度の違いは,空気(酸素)の量に関   係があるのてはないかと考え,穴をあけたろうそくに空気(酸   素)を送る実験をしました。この結果から,⑦,④,⑤では空   気(酸素)の量はどうなっていたと考えられますか。空気(酸   素)の量が多いと思、う順に()に番号をつけなさい。

  ⑦(  ) ④(  ) ⑨(  ) 團       11)ろうそくのほのおの中に細いガラ       ス管を入れ,その先の様子や,マソ       チの火を近づけたときの様子を調へ

      人

      ました。カラス管の先から白いけむ       りがたくさん出て,マソチの火を近       づけると燃えるのは,⑦,④,@の       どこに入れたときですか。

      (     )  121出てきた白いけむりは何ですか。

      (     )

区]        アルコールランプがほのおをあげて燃えるし

圖11木片から木炭をつくるときの実験そうちとして正しいと思う   ものを1つえらび()に○をつけなさい。

 ばを書きなさい。

     /(木炭)一(固体)

  木片一( )…・( )      \

         (   )…一(   )

 すか。

12}実験結果を下の図にまとめました。()にあてはまること

個 てきた木炭を燃やしてみました。木炭はどんな燃え方をしま

︷4︶

 木片

』左の図のようにして金網の上に 木片をおいて下からアルコールラ ンプで熱しましたか,木炭はてき ませんでした。木炭かてきなかっ たわけについて考えられることを 書きなさい。

       /

参照

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